今が旬 "芸術的な燻し焼き"の妙味 … 『とり喜』。　 : とり喜

泣く子も黙る『とり喜』さんの"芸術的な燻し焼"の焼鳥｡単なる焼鳥だろう～などと決して侮るなかれ。

例の髭のMY御仁も呻り身体を仰け反らした都内屈指の焼鳥は口にすればその凄さに気づかれる筈｡

初レビューから数え切れぬ程､寄せて戴いている店ですが六年ぶりにレビューの更新をさせ戴きます。

當店の焼鳥を語る上でもはや賛辞の言葉を並べても意味がないことと思われます。最高の美味しさ
を味わってもらう為に惜しまぬ手抜かりのない仕事。今も尚､進化し続ける店主"坂井康人"氏の燻し
焼きの妙味は素晴らしいのひと言に尽きます｡

『攻めの焼鳥』の代表格であった"蒼天"さんやその流れを継承される"鳥恵"さんの焼鳥も美味しい
ものですが唯一無二の『燻し焼き』の焼鳥はもはや芸術的の極み､素材の持ち味を最大に活かす火入れ
の加減は名人の域に今や達しようとされているのではないでしょうか？

『白レバー』や『ちぎも』は超一流のグランメゾンで供されるフォアグラのソレを凌ぎギリギリまで水分
を飛ばした脱水気味に焼かれた『砂肝』はフランス人の舌も魅了する美味さ､焦げ目のない『かしわ』
や『せせり』の美しさは正に溜息ものです。

直前に鮫皮を使い卸された『本山葵』を添え供される『さび焼』も見事。混ぜ物入りの似非ものや論外な
チューブ入りの山葵などを使う下劣な店とは一線を画す静岡産の立派な『本山葵』が使われています。

串打ちされた鶏肉は『大山地鶏』と『丹波地鶏』を使い分けられています。使う素材にも一切の妥協なし。

〆の食事の名物の『きじ丼』はテイクアウトも可能ですが『鶏スープ』とともにその場で戴くのがベスト。

"目は口程に物を言う"ではないが美味いものは画像からも伝わる筈であるが反対に不味いものは
どんなに頑張っても不味そうにしか写らない｡六年前の画像と見比べてみると供される焼鳥の形が
洗練されてきたことは明らか｡心技体､今が最も『とり喜』さんの焼鳥の食べ頃､どんなに優れた料理人
にも旬の時期というものがある筈､その時期を逃がすことなくぜひ味わって欲しいと思う次第である。

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2007/08のレビュー
ホームグラウンド錦糸町。毎晩のようにこの界隈で友人達と酒を酌み交わしていたものである。

"錦糸町にとても美味しい焼鳥屋がある"とと或る口の肥えた知人から興味深い話を伺った。

都内でも錦糸町は隅々細部まで土地勘のある地であり目を瞑っていても何処でも行けちゃうと
自負していたのであったが、しかし錦糸町にそんなに美味しい焼鳥屋があるとは自分の記憶の
中には全くなかった。

たぶん勤務地が日本橋だったということもあり神田界隈で呑むことが必然的に多くなり時の流れ
とともに錦糸町も明るい街に生まれ変わてから出来た店に違いないだろう。

食べ歩きの友人、知人に訊いてみても異口同音ながら皆、総じて美味しい焼鳥と絶賛されている。
ということで噂の焼鳥を食べに行くことになったのだが店はJR錦糸駅の北口から徒歩で2～3分の
自分が良く知る場所に構えられており、まさに灯台下暗しの状態であった(笑)

早速、店内へ…先客の食べ終えた皿等の後片付が終わるまで店外でしばしの間、ウェィティング。
外から店内を覗いてみると随分と明るく綺麗で小洒落た雰囲気の店だったが昔は此処に何の店
が有ったのか俄かには思い出すことが出来なかった。
向かい側には山形出身の山形弁を発する女将が仕切る滅法美味しい小料理屋があったのだが
既にシャッターは閉ざされていた。

そうこうしていると"おまたせしました"の声で呼ばれ店内へ、座席の椅子は荷物の収納ボックス
も兼ねているというアイデアものだった。

普通、焼鳥屋と云えば少々薄暗く独特の燻した香りが店に足を一歩踏み入れた瞬間に感じるもの
であるが當店は全く焼鳥屋らしい？臭いがしない。
友人曰く､カウンター内の炭火焼の焼台の傍に強烈な排気用のダクトが設置されているので油臭
さや焼鳥臭と云ったものが全く無いのだと云う…。確かにそのとおりだった。

カウンターの冷蔵ケースの上の籠に盛られた大量の松茸に一瞬目を奪われた…何と『早松茸』、
早旬の味、『早松茸』が山積み涎垂ものである。

瓶ビールで喉を潤し、つきだしの漬物を戴きながら品書きに目を通し『かしわ』(もも正肉)、つくね、
『ちぎも』(レバー)、かわ、すなぎも、あいがも、はつ、『早松茸』をオーダー。

先ず最初に供された『かしわ』を口に入れた瞬間に衝撃が走った、何と表現すれば良いのだろう
備長炭で焼かれた焼鳥は外はしっとり中はふっくらと絶妙な火の通し加減で焼かれたものだった。
炭火焼特有の焦げた香ばしさはないが、とても不思議で上品なる焼鳥に度肝を抜かれてしまった。

たれの味はとても円やかで鶏本来の味を損なうことなく鶏肉も、たれも真に上品そのもの文句なし。

若き店主は大きな団扇を持ち手を休めることなく終始ゆったりとした速度で左右に扇で居られた。
まるで可愛い赤子を団扇で扇いで眠りにつかせるようにパタパタと焼鳥が焦げぬよう細心の注意
を払い一本、一本、実に丁寧に焼き上げられ一本焼き上がる度に新しい皿にのせられ供された。

戴いた焼鳥は総じて美味しかったのは云うまでもないのですが特筆すべきは『ちぎも』、口に
入れた瞬間に噛まずともスーッと消えていく不思議な感覚、こんな味わいはたぶん初めての経験。
『フォアグラ』にも優るとも劣らない絶品の『b:白レバー]』でした。

『松茸焼』は一串に一本と半分の松茸が使われ店主の奨めで最初の松茸は、そのままの素焼
の味を味わい二つ目の松茸には酢橘を絞り三つ目の松茸は醤油少々で三種の食べ方で戴いた。
真に贅沢な早旬の先取り…、『酢橘』を絞って戴いた松茸が自分的には好みの味でした。

戴いた焼鳥はいづれも美味しいもので自分の持っている焼鳥の既成概念を根底から覆す驚愕の
焼鳥でしたが強いて云えば『鶏かわ』は、もう少しパリッと焼めをつけて焼いてくれれば良いのに…
と思った程度です。

焼鳥と酒で腹の中はある程度満たされていましたが隣席の方が頼んだ『きじ茶漬』がとても旨そう
に見えたもので思わず店主に自分にも『きじ茶漬』を下さい…、隣席の友は良く喰う奴だと半ば
呆れ顔だったが、これまた茶漬の出汁加減が絶妙、焼鳥とは異なり焦げめをつけた鶏肉、獅子唐
は香ばしく食欲中枢をかき立てるものでした。
余りにも美味しい美味しいと食べていたところ隣の友も余程気になったらしく、ひと口味見をさせて
と云って自分の丼を抱え食べはじめると丼をなかなか返してくれなかったことからも、それがいかに
美味しかったかということが想像できると思います(爆)

『ちぎも』と『きじ茶漬』は★★★★★(5.0)、『かしわ』は★★★★☆(4.5)。

素材は勿論、上質の物が使われているが更に手間隙を惜しまず一本、一本、丁寧に焼き上げて
いく姿勢は、ある意味で一流の江戸前鮨店の店主の握りに通じるものを感じた次第。

こんな上質な焼鳥屋さんが住まいの近くにあったなら間違いなく週二ペースで通ってしまうだろう。