「ぞろ芽コース」はバラエティに富んでおり中々楽しめる : うなぎ 目白ぞろ芽

　最近きちんとした鰻を食べていないなと思い、選んだのは馴染み深い目白に在るこちら。
　2.3日前に予約を入れて、日曜日の夕刻の早い時刻に向かう。
　17時ちょうどに駅脇の石段を下り、中腹の入口に掛かる暖簾をくぐる。

　私には入って右手に並ぶカウンター奥、炭火が熾った焼き台の前の席が用意されていた。
　まずは生ビール（アサヒ熟撰）をもらう。
　席だけの予約のため品書きを眺めると、蒲焼・白焼きはじめ鰻料理の数々、さらにそれ以外の料理も数多く並んでいる。
　目を引いたのが一通りの仕事が集約された「ぞろ芽コース」で、1万円のタイプは一人でも注文可能とのことで、こちらをお願いする。

　内容は次の通り。
＊先付「蛍烏賊の酢味噌和え」で、小振りの蛍烏賊5.6個と小海老のボイル、胡瓜の薄切りが小鉢に盛り合わされ、酢味噌が掛けられている。
　蛍烏賊・海老ともに味と食感が良く、薄くスライスして塩もみされた胡瓜の丁寧な仕事も光る。

＊前菜は、「白和え」「イクラおろし」「うなぎハム」「蚕豆塩茹で」「ひれ巻」の5品の盛り合わせ。
　白和えはシメジ・春菊・蒟蒻が入る穏やかな味わい。
　うなぎハムは歯触りと柚子の風味が好ましい。
　ひれ巻は多数の鰭が韮と共に串に巻かれてタレ焼きにされており、中々の食べ応え。

　日本酒は＇おすすめ＇が15種類ほど。
　その中からまず「作」を1合。
　すっきりとした飲み口と、穏やかに広がる味わいが心地よい。

＊「共水地焼」は共水鰻の半身（腹の方）がじっくりと焼かれており、敢えて白焼きと呼ばないのは綺麗な焦げ目が所以と思われる。
　歯応えしっかりで、素材の良さをストレートに味わうと言った趣。
　塩と本山葵のおろしの他に、2種の付けダレ（鮎の魚醤に鰻の肝を混ぜ合わせたもの・醤油もろみ）が添えられている。
　一口サイズにカットされているため、色々と味変させて食べ進めるのは中々楽しい。

＊季節の一品は「新じゃが芋揚げ煮」で、皮付きの新じゃがを一旦油で揚げてから、出汁で煮含められている。
　新じゃがならではの瑞々しさと歯触りも残っており、添えの菜の花も好ましい。
　さらに天盛りされたバターの風味が効果的。

　追加の酒は山口の「五橋」。
　爽やかな口当たりと、しっかりした旨味が印象的。

＊「共水蒲焼」は地焼きにした残りの半身と思われるが、当然ながらこちらは蒸しを効かせた江戸前。
　カリッとした地焼きに比べ箸を入れるとスッと入り、一口食べるとフワッとした舌触りと濃い旨味が感じられる。
　一尾の鰻が調理法が異なると、これほどの違いが出ることに改めて感心。
　早速一緒に出された小丼の「ご飯」にタレごと乗せて「うな丼」として食べ進めるが、タレの加減も丁度良く実に美味い。

　吸い物は「肝吸い」で、丁寧に処理されたプリッとした肝と麩と三つ葉、さらにとろろ昆布が入っているのが特徴。
　「香の物」はべったら・胡瓜醤油漬け・キャベツ浅漬けの盛り合わせで、気が利いているが合いの手にしては量が多いので、全部平らげると鰻の印象が薄まってしまうのではと思うほど。
　甘味は「林檎のシャーベット」で、自家製と思われ中々美味しかった。

　コースはこちらの仕事がコンパクトにセットされており、中々の満足感。
　共水鰻を2通りで味わえ、他の品々にもレベルの高さが窺える。
　この内容で1万円はリーズナブルである。
　
　接客はマネージャー然とした男性と女性2人だが、丁寧な応対ぶりは好感。
　調理場は表の焼場担当がご主人のようで、他に奥にもう一人職人が居り上手に連携がとれており、そちらから出される一品料理から確かな腕前が感じられる。
　
　改めて目白には、各ジャンルの粒ぞろいの店が集まっていると思う。
　バス一本で行ける至便さから、これからもちょくちょく利用したい。

　この連休は暫くご無沙汰していたり、なかなか足を運びづらかった蕎麦屋を集中して廻るようにしたが、偶には別のものをと鰻屋に行ってみた。
　選んだのは、我が家から行きやすい目白のこちら。
　最近方々から良い評判を耳にするので、一度寄ってみたいと思っていた。

　場所は目白の駅を出て左に向かうと、すぐに石段がありそれを下った便の良い所。
　店は横に長く、右手にカウンターが伸び、左手の様子はよく分からなかったがテーブル席や座敷が有るようだ。
　開店時刻の11時を少し回ったころだが、テーブル席にはすでに何組かが居る気配。

　私はカウンターの一番奥の席に通された。
　品書きで目立つのは写真入りのランチメニューで、その中の鰻の他に刺身やいくつかの副菜も付く「ぞろ芽御膳」と言うのがなかなか面白そう。
　通常は3,000円だが、その中の「うな丼」をプラス2,000円で「うな重（上）」に変更できるので、これでお願いする。（さらに2,000円プラスすると「共水うなぎ」になるとのこと）
　合わせてビール（プレミアム熟撰）を注文。

　ビールのグラスを傾けるうちに、うな重以外の料理が角盆に乗って登場。
　「刺身」の内容は、鯛と平目が3切れと鮪トロ1片で、いずれもなかなかの上物で包丁技も冴えている。
　魚類は愛媛から直送されていることを、スタッフと他の客との会話から聞こえてきた。
　つまなどの添え物もきちんとしており、生のビーツが添えられているのが面白い。

　副菜は日によって変わるようで、この日は「菜の花のお浸し」「ぜんまいと蒟蒻の煮物」「切り干し大根煮」の3品。
　煮物類が温かいのは良かったが味付けが似通っており、ぜんまいはやや筋張っていて長いまま。
　大根も同様に長すぎて、ちょっと食べ難かった。

　鰻は少し時間が掛かるようなので、酒を一合追加。
　土佐の「酔鯨」を選ぶが、料理を肴にしてゆっくりと楽しむ。

　タイミングよく「うな重」の一式が登場。
　蓋を開ければまずまずの大きさの一尾分が、きちんと収まっている。
　焼き色にも斑が無く、箸を当てればすっと入り皮が剥がれるようなことも無い、江戸前伝統の丁寧な仕事。
　鰻自体の味は比較的あっさりしており、たれも甘さの少ないさっぱりとした味わい。
　ご飯は硬めの炊き加減で、たれの掛かり具合も丁度良い。
　山椒を挽くミルが卓上に置かれているが、出が悪くあまり感心は出来なかった。
　
　「吸い物」には肝は「肝焼き」に回すためか入っていないが、控えめな加減が好ましい。
　「香の物」は大根・胡瓜・キャベツなどの盛り合わせで、定法の奈良漬けが無いのは残念だが、浅漬けの「べったら」のような大根の味と歯触りが良かった。

　ミニコース的に色々と味わえて、まずまずの満足感。　
　料理の内容には一長一短は有るが、刺身の美味さと質に良さは印象に残る。

　メインの「うな重」の出来も上々。
　こちらのご主人は、神楽坂の「志満金」出身とのこと。
　すっきりとした「たれ」の味に、その片鱗が感じられる。

　勘定はビールや酒を含めて、内税で6,500円はリーズナブルに感じる。
　我が家からは便が良く、これからも寄ってみたいと思う。