自信あふれるシェフの中華 : M Mugen

昨年秋、銀座にオープンした中国料理店です。

シェフ、内田達仁さんは、上海在住15年。

そのうち13年は、自らお店をやっており、

「上海レストランアワード」で、３回１位を

獲得したとのこと。

食事の終わりに、「M Mugen」と言う店名の由来を

伺ったところ、シェフがこんな話を始めました。

「中学のときにワルをやっていて、半ば家出のように

実家を出て、この道に入ることになりました。

横浜中華街の「重慶飯店」で修行後、

上海へ。　上海で大学にも通い、

皆が遊びに行く中、一人、とにかく

勉強をしました。

中国語もマスターし、中国料理については

日本人はもちろん、中国人をいれても、自分ほどの

知識がある人はいません。　その自分が、

日本という食材の宝庫で、お店をやるのですから、

無限の可能性がある、というわけです。

中国では、「情熱大陸」の中国版のような

番組にも出演し、通りを行き交う人に

声をかけられたりもしました。」とのこと。

このあとも、今まで日本に伝わった

中国料理といわれるものが、いかに

現地のものと違うか、とか、

大御所の料理も、そもそも現地と素材が

違うなどなど・・・、そういうことを

日本人はなにも知らない、と。

なるほど、すごい自信です。

店名の由来はよくわかりましたが、

なにか、話を聞いていて、違和感を

感じました。

日本には、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」

という言葉があるように、

あまり、自分がいかにスゴイか、を自ら

吹聴するカルチャーは、馴染みません。

本当に実力があれば、自分で言わなくても、

周囲が認めてくれるので。

私は、自信があることはいいことだと

思いますが、それは、お料理に反映すれば

いいことだと思います。

２０代から１５年、中国で暮らしていらした

ので、日本の古来からの美徳については、

学ぶ機会がなかったのだとすると、

残念です。

しかし、とてつもなく、負けず嫌いな

性格で、それがいい方面に活かされた、

ともいえ、その努力の賜物が、内田シェフの

お料理なのだと。


さて、こちらのお店は、

フレンチの「unis」を経営する会社と同じ経営。

店内は、アールのカウンターが、キッチンを囲み、

「unis」を彷彿とさせる設計です。


コースは、28000円の1コース。

シェフは、上海にいらしたのですが、

得意料理は、麻婆豆腐で、他にも、

四川方向の料理がいろいろ。

では、この日の内容です。

１，水晶毛蟹
　　北海道産毛蟹とバフン雲丹
　　トマトのジュレ
　　赤酢のジュレ
　　フィンガーライム

２，佛跳牆
　　あまりのおいしさに、
　　お坊さんが壁を飛び越えた、と
　　言われる、有名なスープです。
　　予約をしないと、なかなか
　　作ってくれるところが少ないです。

　　ナマコ、干貝柱、クコ、黒木耳、
　　白木耳、フカヒレ、鮑、金華ハム、
　　など、高級素材をふんだんに使った
　　出汁ですから、お坊さんでなくても
　　飛びあがりたくなります。

３，酔牡丹虾
　　酔っ払いボタン海老です。
　　紹興酒、白酒、ブランデー、陳皮に
　　2日間漬けたもの。
　　ブランデーをいれるのが、オリジナル。
　　2日と思えない濃厚さ。

４，酥炸春季蔬菜
　　鶏胸肉の清湯と柚子の天つゆに、
　　こごみ、こしあぶらの天ぷら。
　　天ぷらは、衣が日本のものとは違い、
　　小麦粉、卵黄、ラードを発酵させたもの、
　　とのことですが、重くはなく、軽やかな
　　食感。
　　天草の塩に、花椒を合わせたもので。

　　天つゆのコクが素晴らしい。

５，至尊烤排翅
　　フカヒレです。
　　ヨシキリザメで、
　　一度煮てから、オーブンへ。
　　紅焼ソースで。
　　
６，蜜汁叉焼
　　焼きたてです。
　　広東風。
　　塩麴、胡麻ペースト、五香で
　　味付けし、醤油は不使用とのこと。
　　金木犀に漬けた杏と。

７，韭黄炒扇貝
　　大粒の帆立貝のXO醤

８，錫包寛花魲魚
　　ヒラスズキを香出汁
　　（椎茸、昆布）で蒸籠蒸しに。
　　ライムを添えて

９，宮保煎牛扒
　　牛ヒレのステーキ
　　鹿児島の黒花牛です。
　　宮保は、ゴンバオという役人の名前で、
　　料理人に作られたのが由来。
　　姫茸、カリフラワーのピリ辛
　　青唐辛子の塩漬け

10、什錦炒飯
　　しらす、菜の花、高菜漬けのような
　　漬物を、あきたこまちで。

11、麻婆豆腐
　　自家製の豆板醤、辣油、
　　山椒オイルを使用しています。
　　これが、最もお得意料理。
　　予想より、辛味はありません。

12、茉莉花冰其淋
　　ジャスミンのアイス
　　茉莉花の粉に、茉莉花のリキュール。
　　下のクランブルは、茶葉にバターを
　　合わせたもの。

13、凍頂烏龍茶


お供は、2種の紹興酒
・澄龍
・純龍（キャラメルフリー）


佛跳牆が、最も心に残りました。

丁寧な仕事です。


こちらは、1回転ののち、9時ごろから、

ワインバーとなります。

グランドハイアット出身のソムリエ

によるワインと、

2番手による、点心など。


さて、今後、どんな進化を遂げていくのか、

楽しみです。