根岸にある住宅地の中のステーキの名店です。 : 定谷

実は、ホントーはいつも拝読させて頂いている「ともぞー」様のレビューを見て、根岸の和ビストロへ行くつもりだった。
相方とタクシーで向って店の近くで降りてみたら「がび～～～んっ！」（両目をらせん状に飛びださせて、舌をギザギザに飛びださせた青田赤道状態）、なんと、定休日だった、、、。

人様のレビューをさんざんチェックしておいて、カンジンの店舗情報をマッタク見ていない、こーゆーいい加減さをＢ型のせいにしたら世の中のＢ型の人に失礼ですな。
ガッカリでしたが、この辺りはワリとコダワッたお店が多いエリアなので、気を取り直して辺りを見渡すと、「黒毛和牛ステーキ懐石のお店」というネオンが目に入った。
ネオンの矢印に従って歩くと細い路地をドンドン住宅街の中に入っていく。
突き当り曲がるとさらに道幅は狭くなり、さらには「この先行き止まり」のカンバンまで。
「これは食い物屋がある環境じゃないよな～」っと言ったが、すると相方が遠くにさっきのネオンと同じカンバンを発見、「あった、アソコじゃない？」と言った。確かにその店だ。
とても目立たない佇まい、「一見客を相手にしてません」というカンジのニオイがプンプンしてる。
「うわ、コレは賭けだな～。デモ面白そうだから入ってみよ～」といってドアを開けた。

「２人で予約ないケドいいかな～？」と言ったら、カウンターの中にいたコックさんの格好をした店主らしきオヤジが「お客さん、Ｂ型でしょう？普通一見さんでＢ型の人以外そのドア開けられないんだよね～」ときた。
「コレはますます面白そうだ、じゃ入るよ」といってカウンターに座った。
「ウチはメニューが無いのよ。飲みたいモン言って、あるモンは出すし無いモンは出さない。料理もそうね。コースもあるよ、１２０００円、１５０００円、２００００円、後は俺ッチがどんだけボッタクルかで変わってくるけどね。で、どーします～？」
もう俺は期待でワクワクしてきた。
カウンターの隅にデッカイ松茸を発見、「じゃあまずそのマッタケ焼いてよ、後は肉をドカっと焼いてくれればいいや。飲み物はまずは白ワインのソーダ割り、次にロマネコンティの一番のヤツね、ソレで行こ～っ！さあ、ボッタクれっ！」と言った。
店主もニカっと笑って、「この人やっぱりＢ型だよ。」と妙にしたり顔、こーゆー店主に一瞬でもひるんだらコッチの負け、一歩も引かないカクゴで受けて立つコトにしました。

しかしこの店主、ホントーに面白い。
ギャグ、オヤジギャグ、自虐ギャグ、ブラックジョーク、下ネタ、なんでもアリです。
フロアにはこの店主の自称「内縁の妻」と称するとっても美人なマダムがいて、フォローしながら細やかな給仕をしてくれる。
コッチも負けずにギャグで応酬しながら俺と相方、店主とマダム、４人で大笑いしながら宴が続きました。
白ワインソーダ割りが終って、ボトルに「吉四六」と書かれた無色透明なロマネコンティーをロックで飲んでいると、「いただきまーすっ」と言って店主も飲みだした。まだ肉を焼いてる途中だというのに、誰も勧めていないし。しかし、ここでヒルんではコッチの負け。なのでマダムに「マダムは何がいい？」って聞くと「じゃあワタシはビールでっ」ときた。
「アンタも飲むんかいっ！」とオキマリの突っ込みをしたが、どうも幾らボッタクられるかはこのマダムのさじ加減ひとつのようなので、俺は丁寧にお酌をした。
「かんぱ～いっ！」と言って大笑いの宴は続いた。
しばらくすると、「よし、これからみんなでカラオケに行こう。お客さん、早く食べちゃってよ」と店主が言いだした。
マッタク、なんちゅーオヤジだ。本来なら受けて立つトコロだが、相方が若干カゼぎみだったのでそれだけは断った。

さて、料理の話ですが、こんなんでも料理は一級品です。
大振りなマッタケは香りを楽しむというよりは歯応えを楽しむサイズ。
炭火で炙って酢橘を絞って出してくれた。
とってもジューシーで、カブリつくとマッタケのジュースが口の中に溢れます。
肉は黒毛和牛のシャトーブリアンの塊。
まずフライパンで表面を焼き締めて、それから炭火とオーブンを駆使して丁寧に焼かれます。
肉の熟成具合もカンペキ、焼き加減は何も言わずとも俺好みのミディアムレアだった。
コレは旨いステーキです。
肉の選択、下処理、焼き方、どれをとっても一級品の極上ステーキです。
付け合わせのマイクロトマトも旨かった。

皿やグラスもとってもオシャレでいいモノが使われている。箸なんかも極細なんだけどしっくりくる、これもケッコウいいモンなんじゃないかな～。
「写真撮ってもいい？」と聞くと、「どーしよかな～？今日メイクしてないし」と店主、「誰もアンタを撮るなんて言っとらんわっ！」「ぎゃーっはっはっは～」一事が万事こんなカンジです。
とっても明るくて面白い店主だが、聞けばこの道４０年、しっかりとした経験とウデがあるからこそのヒョウキンさ、素敵なオッサンです。
場所が場所だけに恐らく常連さん以外はメッタに来るコトはないだろうな。
でも、こーゆー店にタマタマ行って、タマタマ他に客がいなくて、スッカリこの店の良さを堪能することが出来たコトはとってもラッキーだったと思います。
ヤバい、コレは今後も通っちゃいそう、そんなカンジのお店でした。