ここはチャーハンのお店だな : 龍朋

東京を離れる前に行っておきたいお店を選ぶときに、広い意味で「宿題」があるお店を中心に選ぼうと考えた。
今後しばらく、東京へ来るときは東京駅から中央線で多摩地方へ、という動線が主になるだろうから、そこから外れるお店は行きにくくなるだろうし、単価の高いお店はわざわざ交通費を払って来ようという気になっても、単価の低いお店はそれを目的に来にくくなるだろう、という観点を次に入れると、東京下町の華たる町中華は、今が行き時だろうという結論に。

ここ〈龍朋〉は、チャーハンが有名な店で3年前に訪れてみたら、お店の看板にはラーメン屋だという主張が強く押し出されていたり、メニューの札にあった〈ネギラーメン〉が心に刺さり、次はあれを試そうと思ったまま、時間が過ぎた。どのみちここのチャーハンは食べ収めておきたいなという気持ちもあったりで、仕事上がりに一路、神楽坂へ。
両方を行くのには躊躇があったが、神楽坂は今後、来にくい場所になってしまうだろうし、迷ったならばいっそ両方だ、と、カロリーも気にせず〈チャーハン〉と〈ネギラーメン〉をいただく。
注文から爆速で〈チャーハン〉が供され、半分ほどいただいたところで〈ネギラーメン〉。
〈チャーハン〉は、美味しいながら、何だか味の奥行きが感じられずに、あれ、こんな感じだっけな、と思っていたのだが、〈ネギラーメン〉のスープをいただきながら追っかけでいただいてみると、香ばしさの奥から割り下のような旨味のある甘辛さを感じるように。さすがスペシャルだと二回目だけど大納得。こういうのが必要なんだな。
そして、試してみた〈ネギラーメン〉は、白ネギをどっさり乗せたやつで、スープが何だかチャンポンというか、シャバめの豚骨ラーメンというか、なスープ。ちとイメージと違う。悪くないけど。
うーん。
最後に来られて、これで思い残すこともなくお別れできるけれど、このお店はやっぱり、チャーハンが旨いお店なんだろうな。

連休の2日目の昼。なんかの雑誌の炒飯特集で知ったのは結構前、中々踏ん切りがつかずにここに到る。
炒飯というと、幼い頃から食べ慣れていた数年前に店を畳んでしまった実家の近くの中華屋（まだ「町中華」という言葉も無かった時代の町の中華屋）の炒飯のかわりになるものを無意識に追い求めてしまう。パラパラではなくしっとり。レンゲを入れるとほぐれていく、シンプルで主張の強い武骨な炒飯。醤油由来の香ばしさが次から次へ煽るやつ。
たたんでしまった中華屋の炒飯は思い出補正もあるので替わるものを求めるのは如何かとも思うのだが、有楽町の某所とかはかなりよかったのだが、平日限定で夜の店仕舞いも早く、私にとっては使い勝手がよくないので、時々行けるところに行きたいと思っていたところ。

11:30過ぎに神楽坂駅に着き、外へ出てコンビニのあるカドを曲がって、下って行く坂の途上にある。店名の横に「Lahmen」と大書。そうか、ここはラーメンの店なのか。と、少しくらい待つかなと覚悟していたのが、店前に待ち人なし。吸い込まれていった客に続いてくぐってみると、壁に貼られた札、お目当ての炒飯が目に入る。店内を見回すと、「炒飯大盛り970円」の文字。水を持ってきたお姉さんが私の一歩先に入った隣の客の注文を取ったついでに私に注文を促してくる。今日は迷うことなく炒飯。そして勢いで大盛り。
ふと冷静になって、勢いで大盛りにしちまったが、食えるかどうか不安になりつつ、店の中のメニューを見回しているうちに炒飯が出される。ほぼ待ち時間なし。繁盛店なのに待ちがないのはこの手際のよさか。
大盛りにしたせいでこんもり。その威容に圧倒されながらレンゲを入れる。少ししっとり。こうこう、これこれ。正しき昭和炒飯の食感に喝采。ネギとチャーシュー、卵だけで作られたシンプル炒飯。チャーシューもしっかりごろごろした食感を感じる。チャーシューの煮汁に茶色く染められた、写真映えしない感じもまた頼もしい。香ばしさと豪快だけど飽きの来ない味付けに、次から次へと煽られるように食べる。大盛りで正解。

食事を終えようとしたとき、体格のいいスーツ姿のお兄さんが、店内に導かれるなり、着席前に「炒飯大盛り」。だよね、だよね。
昔ながらの炒飯が恋しくなったらまたここに来よう。日曜は休みだが、土曜と祝日に開けてくれているだけで十分。