そこにあるのは温度の妙 : 天ぷら 元吉 的場

2020.8.

外苑前にある「天ぷら 元吉 的場」に再訪。ここは外苑前にある元吉 和仁さんが店主を務める「天ぷら 元吉」で、土曜日のランチタイムに的場 大樹さんが揚げてらっしゃる時のみ屋号を変えているお店です。前回は桜の時期だったので八重桜が咲き誇る拵えでしたが、今回は店内に鈴虫が鳴く雰囲気の中で、天麩羅をいただきます。

今回の献立

宮城県気仙沼産 鰹
厚みがあるのでモチモチとした食感を存分に楽しめ、大根おろしと葱を混ぜた薬味が爽やか。

車海老の脚
鉄板のスターター。

車海老①♡
最初は塩で。咀嚼の度に甘味が引き出されていくようで、衣も軽やか。

車海老②♡
2本目は衣を多めにつけているので、天つゆで。

アスパラガス♡
栃木県産。国産はほぼ今季最後というアスパラガスは、まず何もつけずにいただきます。新緑のような香りが立ち込め、断面から溢れるジュースが凄い。塩をつけると、甘味が引き出されていきます。

アスパラガスの軸♡
コレもまずはそのまま。より甘味と旨味が素晴らしい。

白鱚♡
東京湾で的場さんご自身が釣ってきて、4日間寝かせたもの。軽い仕上がりで、そのままでも食べても十分に旨味を感じられて美味しい♡

舞茸
衣で閉じ込められた香りが口の中でブワッと広がります。この香りが広がる瞬間がたまらなく好き。

鱧♡
上には鱧の卵を塩漬けにした鱧の子が盛られており、絶妙な塩加減と旨味をプラスしていて、実に美味しい。

伏見とうがらし
京都府産。種を取って揚げており、断面から立ちのぼる青臭さがとても爽やか。

鶏魚♡
天かすを使った口直しは珍しい。酸などの口直しはよく見られますが、これは魚の甘味！

新蓮根①
シャキシャキと小気味よい食感で、瑞々しく甘味も強い。

新蓮根②♡
特許を取得したという荒熱を取る機械「北風」で温度を下げたもの。味わいが落ち着いて、より甘味を感じられます。

えぼ鯛♡
神奈川県松輪産。干物で有名な魚ですが、実は歴とした江戸前の魚。水分量が多いので、ふわりとした身質が楽しめ、美味しい♡

トウモロコシ♡
北海道産のゴールドラッシュ。コレも特許を取られている夏のスペシャリテ。茹でた？蒸した？トウモロコシを捥いで四層に成型して揚げたもの。甘味が素晴らしく、実に美味しい。

穴子♡
肉厚で食べ応えもあり、生姜の甘酢漬けを乗せて食べることを勧められるちょっと変わったスタイルの穴子。サクっとした衣の食感を楽しむと腹の部位はとろけるようで、尻尾の部位はホクホクとした感じ。

こはくいも♡
通常コースには含まれていなかったので、追加。生の状態から仕上げるので、非常に手の込んだ調理を施しています。食べたいならば、一番最初に注文するのがマストです。9月くらいから初物が出るので、コレは貯蔵していた残り少ない貴重な芋だそう。水分もよく抜けており、しっとりとした滑らかなシルキーな舌触りで美味しい♡

かき揚げ丼
〆は天丼・天茶・かき揚げとご飯から選べる中で、やはり天丼を。器の大きさも7種類から選ぶことができ、ご飯の量も調節して下さるので、一番大きな器にしてご飯を少なくしていただきました。
かき揚げはシンプルに才巻海老のぶつ切りのみ。丼に仕上げる際に柚子を忍ばせているみたいで、ふわりと香ります。衣はサクサク、海老はプリプリで食べるのが実に楽しくなるかき揚げ。

甘味♡
牛乳プリンにマスクメロンソースをかけたもの。牛乳プリンの甘さとマスクメロンの甘さが絶妙に絡み合います。常備したい♡

今回も温度変化による味わいの変化や素材の香りを楽しむことができました。前回は春に訪れたのですが、夏よりも春の方がより香りを楽しめる山菜や新玉葱など食材があるので、個人的には春の食材の方が好きかも。それでもやはり旬の白鱚・トウモロコシ・鱧などは実に美味しかったです。

次回は晩秋か初冬くらいに伺えたらいいなと思っています。的場さん、今回もご馳走さまでした。14680

2020.4.

「大人のお花見しませんか？」
そんなお誘いを受けてやってきたのが、外苑前にある天麩羅の名店「天ぷら 元吉」です。店主の元吉和仁さんは母親の得意料理であった天麩羅に魅了されて、大阪の割烹などで研鑽を積み、天麩羅＝熱いものという固定概念を打ち壊すような斬新な発想のもとで、旬の種を揚げてらっしゃる天麩羅職人です。31歳の若さで開いた店内には和花の老舗「花長」から教えを乞いつつ、桜・新緑・紅葉と四季折々の風景を設えているそうで、今回はその桜を見ながら天麩羅を食べようという趣向です。

…しかし、今回揚げ場に立つのは元吉さんではなく、2番手を担う的場大樹さん。毎月土曜日のランチタイムだけ「天ぷら 元吉」は「天ぷら 元吉 的場」と屋号を変えて営業されているそうで、そこにお誘いを受けたわけです。
定刻になって招き入れられた店内には八重桜が咲き誇るかのように設えてあり、想像以上の美しさでびっくり。素晴らしい雰囲気の中、春の天麩羅を楽しみます。

今回の献立

湯葉
先付。甘味の感じられて美味しい。

海老の足
やはりスターターはコレですね。

海老①
衣はちょっと厚め？その中はぶりんとした海老の食感と甘味を感じます。

海老②♡
衣を多めに付けて揚げているので、天つゆを勧められます。天つゆの甘味と海老の甘味が累乗するかのようで好み。

アスパラガス
栃木県産。何も付けずに食べると、緑の息吹のような青臭さを感じられ、塩を付けると甘味を感じられます。

アスパラガス軸の部位
軸の部位はより瑞々しく、より甘味もあり美味しい。

鱚
神奈川県産。数日寝かせているそうで、何も付けずにそのまま食べると凝縮した旨味が感じられます。熱がこもるフワフワ食感が魅力的。

タラの芽
天然もの。苦味などは微塵もなく、軽やかな衣の中でふわりと香りが鼻から抜けます。

新玉葱♡
目の前で揚げたてを半分に切られると、甘い香りが立ち込めます。それを噂に秘密兵器「北風」で粗熱を取り仕上げられた新玉葱。まずは塩で。香りと甘味が素晴らしく映えます。そして、お勧めの醤油。なるほど。醤油の香りもふわりと立ち、実に素晴らしい。

白海老
富山県産。揚げたものの上に更に生の白海老を乗せて供されます。熱を加えたことで失った甘味を生のものと一緒に食べることで補う一工夫ある天麩羅。

椎茸♡
大きくて分厚い食べ応えのある椎茸。パリッとした衣を包丁で切ると、中から立つ香りが凄い。火傷覚悟で頬張りたい一品。

帆立♡
北海道野付産。むっちりした歯応えの中で、溢れる甘味が美味しい。火入れも素晴らしいグラデーションです。

帆立の磯辺巻き♡
同じ帆立を切り方を変えることで食感の変化与えて、更に海苔の香りを乗せたもの。実に美味しい。口にすると、海苔の香りがぶわりとして、その後に帆立の甘味が追いかけてきます。

蓮根①
サクサクとホクホクが同時に味わえる名残の蓮根。甘さと香りに唆られます。

蓮根②♡
粗熱を取り、温度の違いで変わる味わいを楽しみます。こんなにも違うのかと思うほどの違いに驚く。より香りが立ち、甘味が安定した感じ。

穴子♡
厚みのある穴子で、実に食べ応えもあります。フワフワとした布団のような食感の中、立ち込める穴子の香りすらも美味しい。

こはくいも♡♡
一番初めの段階で揚げていた薩摩芋が〆。しかしこの揚げ方は実に個性的というか、変態的な揚げ方です。
まず衣を付ける為に一度揚げ、それをペーパーで包んで暫く置きます。火入れの為に寝せるのかと思ったら、その状態のままもう一度揚げてから今度はアルミホイルに包んで、高温の油を染み込ませたペーパーを上から被せて休ませます。それを裏表行い、最後にサッと油に通して仕上げるという手間のかかった薩摩芋。
その味わいは…衝撃的に甘い！しかしながら、焼き芋のようなホクホクという感じではなく、シルクのような滑らかさがあり、実に美味しい♡

かき揚げ天丼♡
最後の〆ご飯は、天茶か天丼を選ぶことができ、また大きさもマトリョーシカのような器の中から選べます。私は大好きな天丼で。
かき揚げはたっぷりと海老が入れられており、丼汁をかけられてもサクサクとした衣が楽しめて、実に美味しい。

デザート
『おおきみ』という苺とヨーグルトアイス。アイスの上には天かすが散らしてあります。

最初の海老の衣が想像よりも厚く感じたので、好みじゃないかもと一瞬思いましたが…そんなことは杞憂に終わり、香りを閉じ込めるような厚めの衣でもサクッと音を立てて、実に美味しかったです。天麩羅の経験値はほぼゼロに近いのですが、同じ食材でも温度による味わいの変化を楽しめたりする仕立ては面白い。特に『新玉葱』や『蓮根』など目の前で切られると、その香りがふわりと届いて食欲を掻き立てられました。あまり野菜系の天麩羅は興味がなかったのですが…旬の味わいと香りが楽しめ、更には温度による違いで変化する味わいは興味深い。季節を変えて、また伺いたいです。15790