ご主人孤軍奮闘の朝 : ドム

散歩をしていたら喫茶店の「ドム」の前に立っていた。
ナポリタンで遅めの朝にするのもいいなと思ってふらっとはいった。シニアご夫妻がやってる店でところが今日はご主人おひとり。壁に奥さんが闘病中にてひとりで営業、サービスが行き届かないことご容赦くださいと貼り紙があった。
お大事なければよいけれど…。定休日もなくまるでお店が生活の場のようでもあったからひとりで営業しなくちゃいけないのは不自由以上にさみしいだろうなぁ…、って思った。
常連さんが心配顔でちらりほらりとやってきてご主人と会話を交わす様子がやさしい、あたたかい。

ナポリタンにアイスコーヒーを選んでたのむ。
タバスコや粉チーズの容器にお冷、コースターがまず並び、具材を刻む音がする。
しばらくすると野菜を炒める湿った音。
麺が入るとバチバチ爆ぜるような音がして、おいしい匂いがやってくる。

いかにも喫茶店的なナポリタンです。
太めの麺にピーマン、玉ねぎ、ハムに缶詰マッシュルーム。
色は薄めで、ケチャップまみれというよりもケチャップを薄塗りしたような感覚。
麺のところどころが焦げて仕上がり入念に炒められているって感じがひと目でみてとれる。まずはたっぷり粉チーズをふりかけパクリ。
やわらかな麺、油の香りにほどよい酸味に甘みが口に広がっていく。

昔、ナポリタン味の粉末ソースがついた真空パックの茹で麺があった。どことなくそのナポリタンの味がするのね…、ちょっとモサモサする食感もどこか似ていてなつかしい。
タバスコをバシャバシャかけます。辛味以上にスッキリとした酸味がケチャップ味をひきたてて大人味になるのがたのしい。
フォークにキレイにからみつきます。ただ麺は絡みつくのだけど具材が置いてきぼりになっちゃう。フォークにからめた麺を食べつつ具材をフォークでさして味わう。主食とおかずみたいな感じでたのしい。
ナポリタンを食べたらのんびりアイスコーヒー。あらかじめ甘く仕込んだコーヒーが朝の頭のよき営業。おごちそうさま…、オキニイリ。

今日はひんやり、雨が降る朝。ゆっくりゆっくり、踏みしめるようにゆっくり歩く。
歩道に書かれた注意喚起のさまざまが濡れるとすべることがある。踏んで滑って転ばぬようにと、注意しながらそろりそろりとゆっくりと。
そういえば今日はやってらっしゃるかしらと新宿御苑の「ドム」に来てみる。
先日来たとき、定休日ではないはずなのにお店が開いていなくって、ちょっと心配になったんです。
お歳を召したご夫婦でやってらっしゃる喫茶店。だから不意のお休みにはドキッとします。
今日はあいてて、おふたり元気でらっしゃった。
晴れた日には外の光が眩しくて座ることをためらう窓辺のテーブルをもらってのんびり。
外には植木、窓に雨粒。カーペンターズの「青春の輝き」が流れてきました。愛に臆病な青春の歌。歳をとるともっと臆病になるんだからね…、って思いながら一緒に歌う。

ナポリタンをお願いします。
お供にアイスコーヒーの甘いのを。
厨房の方からジャジャーッと麺を炒める音が聞こえて、おいしい匂いがやってくる。
そういえばここのお店の名前のドム。
もしかしたら「プラシドドミンゴ」が由来なのかも…、だってメニューにドミングスパっていうのがあって、一番推しにみえるもの。
ファンでらっしゃるのかなぁ…、なんて思ったりする。
厨房の音が静まり料理は完成。
ハムに玉ねぎ、ピーマン、缶詰マッシュルームと具材たっぷり。茹でおきの太めの麺はところどころが焦げて仕上がりケチャップをしっかりまとってもったりフォークにからみつく。
ナポリタンにはなめらかソースがたっぷりの「飛び散る系」と少なめソースがからみつく「飛び散らぬ系」があってここのは飛び散らぬ系。麺とソースの一体感がおゴチソウ。

香りも味も甘酸っぱい。これぞナポリタンっていうド直球の味わいで、タバスコたっぷりバシャバシャかける。粉チーズもばっさりと。麺をクルンと巻き取って口に運ぶとなつかしい味。
ナポリタンのような料理は工夫しすぎるとおいしくならない。贅沢な素材を使って作ると別の料理になっていく。シンプルだからこそのおいしさ。ありがたい。
スパゲティーって具材が最後にたくさん残る。ハムと野菜のケチャップ炒めに麺が混じったようになり、そこに再びタバスコ注ぎヒーハー味にして食べる。
甘みがコーヒーの苦味、酸味をおいしくさせるアイスコーヒー。まだ外は雨。しばらくのんびりいたしましょう。

それにしても今日は寒い。しかもときおり雨が降る。傘をさすほどでもない小さな雨粒の雨の木曜。
ドミンゴを試すのにいい天気だなぁ…、と思って新宿御苑の「ドム」にくる。
タバコの吸える喫茶店。ナポリタンやカレー、煮込みハンバーグと食事メニューも豊富に揃った気軽なお店。
今日はかなりのにぎわいでした。６人ほどの先客があり、けれどタバコを吸う人はたったひとり。かつて喫煙者はマジョリティだったけど、今やすっかりマイノリティ。空気がキレイでホッとする。
スパゲティーが今日の人気で、厨房の中ではご主人が麺をジャジャっと炒める音。大病を患われた奥様が今日はゴキゲン。ニコニコしながら働いている。なんだかちょっとホッとする。
向かいのソファの背中にテーブルがくっついたふたり並んで座れるテーブル。昔、名曲喫茶で「アベックシート」と呼ばれてた、不思議と居心地良いテーブルで料理を待ちます。

たのんだ料理は目当ての「ドミンゴスパ」。
袖看板に名前がある。
メニューボードの一番上にも書かれてる。
スープスパゲティだということだけは知っていて、今日がはじめて。
ボウルに入ってやってきました。
殻付きアサリにエビにワカメ。
ピーマン、コーンに千切りにした薄切りのハム、缶詰マッシュルームに玉ねぎと具材たっぷり。
乾燥バジルの香りがふわりと漂ってくる。
スープはコンソメ味。胡椒がたっぷり、粉チーズもふりかけられててバジルの香りも手伝ってイタリア的な味がする。
麺は茹でおき。一度炒めてから使ってるのかなぁ…、香ばしくって油がスープに混じってる。

アサリはプリプリ。エビはむっちりほどよき状態。わかめやコーン以外の具材はナポリタンでも使われていてる食材で、シャキシャキとした玉ねぎが歯ざわりよくって、食べ心地が良い。
よく考えられてるなぁ…、って思ったのが麺が短く切られていること。スプーンですくって食べられる、しかもフォークで巻ける短さというのがステキ。
最初はやさしい味だったのに、どんどん胡椒のスパイシーさが舌に積もって、食べ終わったら口や唇がヒリヒリしてた。
甘いアイスコーヒーにミルクをのっけてゴクリとのんで、口のほてりを収めます。
なかなかおいしく、でもなんでこれをドミンゴって呼ぶんだろう。プラシドドミンゴが好きだったようには思えず、ドミニカ共和国の首都、サントドミンゴの名物料理とも思えぬ不思議。
ポール・サイモンの「恋人と別れる５０の方法」からはじまったＢＧＭが「冬の散歩道」を経由して「動物園にて」に移ろっていく。のんびり歩いて帰ります。

朝から雨が降ったりやんだり。雨で煙る景色がなんだか切ない。
新宿御苑の「ドム」でランチをとろうと思った。
歳を召された夫婦ふたりでやられている店。ここのナポリタンが大好きでくるたびそれを食べていたけど、メニューを書いた立て看板からナポリタンがなくなっていた。
しょうがないから定食メニュー。
ジンジャーライスを選んでたのむ。お供にアイスコーヒーもらってランチセットが１０５０円。
タバコが吸える店だけど、今日はタバコを吸うお客様がひとりもおらず空気がキレイ。
おなじみさんがカウンターに陣取ってテレビを観ながら静岡界隈は大変だなぁ…、って心配顔で独り言。それに答えてご主人が東京もこれから雨が強くなってくみたいですよ…、と世間話があったかい。

壁には、値上げしたこと。
奥さんが病気でちょっと大変なことが正直に書かれてる。
とはいえ今日の奥さんはとても元気で笑顔が明るい。
いろいろ苦労もあるのだろうけど、ふたりでいればなんかなるんだろうなぁ…、って思う。
なんだかちょっとうらやましい。

ジャジャっと湿った音と一緒に肉とソースが焼けるおいしい匂いがしてくる。
お待たせしましたとメインのお皿に生姜焼き。ご飯と味噌汁がやってくる。
ちょっと集めの豚ロース。こんがり焼けたタマネギと醤油ベースのタレがたっぷりお皿を満たす。千切りキャベツにレタスの葉っぱ、小さなトマトが彩り添えて食欲湧かす。

お皿に盛ったご飯のかたわらにタクワンが二切れ添えられているのがちょっとあいらしい。
甘めのタレは生姜の香りがしっかりとして、脂控えめの豚肉がざっくり歯切れる。タマネギしゃきしゃき前歯をくすぐり顎を使って食べるタイプの生姜焼き。ポークジンジャーと生姜焼きのいいとこ取りって感じがするのがオモシロイ。
タレに浸かった千切りキャベツがまたおいしくて、ご飯を誘う。手切りで細さ、厚さが不揃いなのがまたいい感じ。
もりもり食べて、食後のコーヒー。あらかじめ甘く仕上げたアイスコーヒーに小さなピッチャーに入ったミルク。どれも昭和なゴチソウで、気持ちがホッとあったまる。

老夫婦ふたりでやってる喫茶店。
今日もふたり揃っていらっしゃる。奥さんは病気のせいで体が不自由。
ひとりで生活はできない状況でだからいつもご主人がかたわらにいる。
仕事がひと段落するとカウンターにふたり並んで座ってぼんやりしている様子がとてもステキ。

ここのナポリタンがボクは好き。
甘いアイスコーヒーとお供にもらった。厨房の方からジャジャッジャジャッと麺や具材を炒める音。ジューッとひときわ大きな湿った音がしたと思うと、ケチャップが焼ける甘酸っぱい香りが漂ってきて、お待たせしましたと出来上がり。
太くもなく細くもない普通のスパゲティーニベーコン、玉ねぎ、ピーマンに缶詰マッシュルームとナポリタンに入っていて欲しいものはもれなくたっぷり。焦げてこんがり仕上がっている。

ナポリタンには「飛び散る系」と「飛び散らない系」の２種類があって、ボクが作るとケチャップたっぷりの飛び散る系になってしまう。ここのは必要十分なだけのケチャップを使って炒めて炒めて、味を麺に乗せるスタイル。ケチャップ味の焼きそばみたいな感じ。
焦げた香りが香ばしい。麺は硬めで歯ごたえがよく、噛めば噛むほど味が麺の中から染み出してくるって感じがおいしい。これも良い。
粉チーズをたっぷりのせる。タバスコをたっぷりかけてどっしりヒーハー味にしてパクパク一気にお腹に収める。アイスコーヒーにミルクを混ぜてゴクリと飲んで、フーッと大きく息をつく。またまいりましょう…、お元気で。