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1回
昼の点数:4.6
2011/07 訪問
昼の点数:4.6
放ちつづける光 (*´∀`)ノ゜;.+*:゚+。.☆
2011/11/15 更新
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神戸でお食事といえば,まずフレンチをイメージされる方も少なくないかと思います。
神戸フレンチのグランメゾンについて語るとき,僕たちは受け継がれる3つの系譜についてまず確認しておく必要があるでしょう。
・美木剛ムッシュがひきい,伝説となった北野のジャン・ムーラン
・ジャン・ジャック・ブランさんや山口浩シェフひきいる,六甲ベイシェラトンのコートドール(巨匠ベルナール・ロワゾー氏の海外支店)
・そして,上柿本勝ムッシュのひきいた,ポートピアホテルのアラン・シャペル
もちろん,この3派以外にも,あまたの名店がありますが,それはとりあえずおいといて。
今回はその中の1つ,ポートピアホテルのアラン・シャペルさんにうかがいました。
ご存知のように,現在のグランシェフは佐々木康二シェフで,ポール・ボキューズの名を冠する国際的な権威あるフレンチ・コンテストである,あのボキューズ・ドールで,なんと世界8位&アジア1位という素晴らしい結果を残された,偉大なシェフです。
「新しい料理(ヌーヴェル・キュイジーヌ)」の旗頭として,フレンチの巨星と謳われたアラン・シャペルの支店が世界で唯一,神戸にあることが,まず奇跡。
そこで腕を振るわれるシェフと調理部門のみなさん,また,支配人M氏をはじめとするサービス部門のみなさん,それぞれが誇り高く,さらに上を目指して研鑽されている,その継続も,また奇跡。
それが今回,紛れもなく確信した結論でした。
まさに,「皿は人。食は真心の旅」。
心から味わい,よろこび,心と体をみたし,多くを得て,多くを学ぶ。
僕も,僕のお仕事を通じて,1人でも多くの方の笑顔と出会いたい。
何気ない毎日が続くという幸せを,神戸から放たれつづける光に,そっと祈りました。
■□■□■
お店の場所は,神戸市ポートアイランド。
ポートピアホテルの31階に位置しています。
公共交通機関を利用されるのであれば,三宮からポートライナーで,市民広場駅で下車です。
エレベーターで31階につくと,広いエントランスとさわやかなグリーンがなんともいえない高級感を漂わせています。
調度品や飾られている絵など,そこかしこに気品があふれてるんですね。
ランチ(デジュネ)でおじゃました。
前菜,お魚,お肉,デセールがそれぞれ選べるという,アラン・シャペルのプリフィクスランチ(6,000円+サービス料10%+税5%)をお願いしました。
最初にセットされたお皿とパン用のお皿は10角形です。
お上品で清潔さあふれるディッシュが素敵です。
銀食器,カトラリーに刻まれた文字は「アランシャペル」で,文字たち,カトラリーたちの誇らしげな表情が感じられました。
アントレは,明石のタコを使ったクロケットでした。
小玉のその見た目は,いってみれば,シャペル風の揚げたこ焼きといったところでしょうか。
中には細かく刻まれて風味と旨みの凝縮されたたこがつまっています。
表面のパン粉が細かいもので,食感でもタコとけんかせず,うまく調和していました。
見た目に派手さはないのですが,その分,逆になかなかのお口取りとの印象でした。
□パンとバター
天然酵母のパン,バゲット,ケシの実を使った丸パン
それぞれ表面の皮が特徴的でした。
さっぱりとしていますが,存在感のあるシンプルなパンです。
□前菜
・「明石産 天然鯛の軽いスモークとアスパラガス ブラッドオレンジのドレッシング」
僕は前菜で鯛を頂きました。
桜チップで軽く燻製した真鯛です。
身がふんわりするだけでなく,ほどよくしまっているのは,明石鯛の天然ものならでは。
もちろん,いかにもな「加熱」というよりも,まわりに香りと,旨み甘みをだすためのジューシーさや油分を引き出すための温めという加熱操作です。
アスパラがそのまま付けそえられていて,さらにムースになったものも並んでいました。
食感をダイレクトに頂く楽しみと,甘み・旨み・香りをより濃厚にしたムースの競演は楽しいですね。
・「神戸トマトと赤座海老の冷たいクリームスープ バジリックの香り」
同行者はスープです。
アカザエビが大好きな僕はおもわず1口味見をさせていただきました。
せっかくのシャペルさんですので,ぜひ泡(シャンパーニュ)あたりを頂きたかったのですが,またしても車でうかがっていたので,お水をお願いしました。
神戸のフレンチメゾンでよく見かける,「神戸ウォーター」を出していただきました。
□魚料理
こちらも2種から1皿選びます。
・「近海産 貝類と淡路産ウニのタルト アンチョビ風味の軽いソース」
同行者はウニと貝のお皿を選択しました。
アワビやつぶ貝などの旬の貝類が独特の食感でした。
タルトとのことですが,トマトとあわせてあることから,ブルスケッタに近い味わいでした。
・「瀬戸内海で獲れた鮮魚のポワレ カレー風味 地元産の豆類を添えて」
僕はポワレをお願いしました。
この日のお魚はイサキ。
ほうれん草を下に敷いていて,カレーをココナッツミルクと魚介スープでじっくりと旨みを煮詰めてとじこめた濃厚なソースでいただきます。
お豆が2種類添えられていて,お魚ともあうのですが,なによりソースとの相性がよく,このお豆とソースを合わせていただくと,別のお料理を頂いているように楽しめました。
スパイスでカレー風味をだしているのですが,旨みの弱いお魚ならその良さをへらしてしまうというリスクもないわけではありません。
が,さすが瀬戸内のお魚。
旨みと,やわらかいのに食べごたえのある食感といい,その過不足のなさに感服です。
さて,メインのお肉が運ばれてくる前に,ラギオールのナイフがセットされます。
持ち手が上品なウッドベースで,メインへの期待感が高まります。
□肉料理
お肉は3種から1皿それぞれ選べます。
僕はどちらのフレンチのお店ででもお願いする子羊を,同行者は鴨を選びました。
・「ニンニクの芽をピケした仔羊のトランシュ バジリックの香り」
・「仔鴨のロティ レタスのブレゼ 近海産の海老とマティニヨンレギューム」
・「神戸ポークとポテトのブーランジェール バニュルスヴィネガー風味のジュ」
僕の選んだのは子羊です。
加熱操作は,定温調理。
ソースのほかに,お塩(ディレクトールにお聞きしたところ「カマルグのお塩」とのことでした)がお肉にすこし載っていて,お塩だけで頂くと,お肉本来の味も楽しめました。
付け合せはクスクス,赤と黄パプリカ,ズッキーニなどがサイズをそろえて切ってありました。
で,肝心の子羊です。
これがかなり衝撃的なアニョでした。
定温調理のため,やわらかく,ジューシーで,質感とうまみがぎゅっとつまったお肉です。
これまでいただいた子羊のなかでもっともおいしかったのは,東京恵比寿のガストロノミー・ジョエル・ロブションでいただいた,スペシャリテコースの子羊だったのですが,僕の中でのランキングが変わりました。
僕のなかで,すばらしかった感動ものの子羊,新第1位です。
とにかくやわらかさと旨み,それと,子羊特有のあまい香りとのバランスがすごい!
あまりに驚くほどの子羊だったもので,お皿はパンでぬぐってピッカピカになってしまいました。
もつろん,その感動を,支配人にもお伝えしました。
同行者の鴨も1口頂きました。
牛とも羊とも違う,独特の濃厚な鴨をギリギリのラインの火入れで最大限食材のポテンシャルをひきだす調理操作に,またしても笑みがこぼれます。
笑顔とともに,心がうれしい気持ちでいっぱいになります。
□デザート
「二種類のシャーベットと二種類のアイスクリーム」
「フレッシュフルーツと葛餅のスープ仕立て 弓削牧場の牛乳を使ったシャーベットを添えて」
「パイナップルとコラントレーズン パッションフルーツのクレーム」
「桃のコンポート ココナッツのアイスクリームと赤いシャーベット」
「フレッシュチーズとイチジクのタルト 柑橘類のアイスクリーム添え」
僕はフルーツのコンポートとアイスを,同行者はイチジクのタルトを選択。
くずもちが4つのっていますが,色が単に透明なものだけでなく,かわいい風合いでした。
果物は10種以上使われていて,イタリアの黄色いトマトなどなかなかお目にかかれないフルーツたちもたっぷりです。
それと,弓削牧場のミルクシャーベットも牛乳そのものの旨みがぎゅっとつまって,濃厚でおいしいです。
とけずにいつまでも口の中にいてほしい,そんな味わい。
でも,もちろん,すぐにふわっと溶けてなくなります。
同行者のイチジクのタルトは,スフレに近いといってよいほどの軽い食感でした。
かんきつ類のシャーベットもさっぱりとしていて,イチジクにすごくあっていました。
食後のカフェは,お部屋を替えて,焼き菓子のプティフールとともに頂きました。
□かわいい小菓子
まずはプティフール(ミニャルディーズ)です。
6種の焼き菓子がかわいくお皿に盛られて運ばれてきました。
マカロン,ギモーブというマシュマロ,マドレーヌ,タルトなどがかわいくのっていました。
すでにおなかぱんぱんなのもあり,半分ほど頂き,残りは同行者に譲りました。
あのアラン・シャペルの味を世界で唯一,ミヨネー以外でも楽しめるということをうれしく,そして誇らしく感じます。
メニューも本店と熟考の上で決めているのだそうですが,それがシェフの縛りになってしまわないかと不安を感じなくもないです。
ですが,スポーツの演技種目で,規定演技と自由演技があるのはなぜかと考えると,なるほどと思います。
規定演技でこそ,シェフの技術,経験,手腕,センス,オペレーションの体制が,明確に反映されると思うんです。
それをお皿で体現されておられるシェフ,そして,サービススタッフのみなさんのホスピタリティに,プロフェッショナルであることの誇りを強く感じました。
僕自身も,1人の仕事人として,意識を高く持つことを心がけたいと思います。
■□■□■
神戸から,放ちつづけられる光。
そのまばゆさと品位の織りなす物語が,これからもはてしなく続きますように。