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友人に今回一部内装が新しくなったパリ『ランブロワジー』の話をしていたら
「へー、『ランブロワジー』ってパリ最古のミシュラン三ツ星でしょ?孤高のグルメ星昔から大好きだっていってたからいつか僕も行ってみたいんだよね。 あそこそんなにすごいんだ?ん?パリの食べログっていうのがあるじゃん?ならさ、今の話を食べログにそのまま書いてよ!」
とせがまれたのでそのまま書いてみます。
簡単にいってくれちゃって(T_T)
その友人曰く、普段東京フレンチに関して色々仰っている有名レビュワーの方々のレビューがパリの三つ星フレンチに全くないのがとても不思議らしいです。
そんなバカな?∑(゚Д゚)
パリの三つ星フレンチといえば日本のフレンチ好きには真っ先にレビューされるお店の1つでしょ?
私より遥かに歴の長いレビュアーの皆様なら当然ご存知だとは思うのですが、海外版食べログの存在って知られてないのかな?
確かに不思議(°_°)
さて、ということで今日はパリのグランメゾン、ミシュラン三ツ星レストランの話。
『ランブロワジー 』という店名は神に捧げる料理というギリシャ語由来。
「パリを世界で一番美しい街にしたい」という思いでアンリ4世が1612年に造ったパリで最も古いこの広場を取り囲む建物の赤いレンガの美しさが印象的です。
昼間は賑やかなヴォージュ広場の公園は夜は締められ、その公園をぐるりと囲うこの建物はルイ13世が住んでいた建物。その後色々な人達が沢山住めるように改築が繰り返され、1800年代1900年代にはゴーチエやヴィクトル・ユーゴー達も住んでいたことで有名です。
そんな建物の一角にあるのがこちらのお店。
ぼわんと暗闇の中に柔らかく光り浮かび上がる石板に刻まれた店名を確認して店内に足を踏み入れるとスタッフ達が素早く近づいてきて、予約名を確認すると同時に我々の上着を受け取ってあとはそのまま奥へ。
最初の部屋の壁面に飾られている美術館レベルのタペストリーがある内装は変わらず、奥の部屋がアール・デコ調のデザインに変わっていました。使われているガラスはアンティークのものだといっていたような?
2022年時点でパリにはミシュラン三ツ星店が30店程。
フレンチの元はイタリアの宮廷料理が母体となったとはいえ、なんたってフレンチ/仏料理ですからね。
パリの1~2つ星レストランを比較するのでしたら、私の好みを除いて考えても正直近年の日本のフレンチのほうが生魚の扱いに長けていて繊細な分、遥かにレベルは高いと思っていますが、やはり3つ星となると別です。
上述した文章を「和食」「鮨」に置き換えたら伝わり易いと思いますが、美食の国「フランス」としての威信がかかってますから、他の国に抜かれていることに甘んじるわけにはいかないわけです。
そういう凄みが、パリの特にクラッシック系三ツ星フレンチを提供されるお店にはあります。
私のレビューを読んでちゃんと理解して、尚且つ「いいね!」を押してフォロワーになってくださっている、性格の良い知的聡明グルメンな皆様はご存知の通り、イタリアやフランスを筆頭としたヨーロッパの牛乳/生クリーム/バターは日本のそれとは別次元に美味しいです。
本当に、本当にとてつもなく美味しいのです(*´Д`*)
日本で有難がられているエシレバターはこれだけインフレが進んでいるフランスでもまだ7ユーロ程で、はっきり申し上げてフランスバターの中では中の中レベル。
食材の基本レベルがそうなのに、さらに三ツ星レベルになりますと、上の上ではなく、特上とでもいいますか、そういった高級デパートにも決して並ばない別次元の素材の美味しさだけでもいつもうっとりとしてしまう私です(チーズやパンの差はそこまでではありません)。
はっきりいって乳製品に反則に近いほどの差が素材の時点であるわけですが、彼らはそこに甘んじることもなくさらに一切手を抜かず卓越した技術とセンスに裏打ちされた料理が進行してきます。
『ランブロワジー 』はそれまでパリ『タイユヴァン』に勤められていたベルナール・パコー氏が現在は白金高輪『コート・ドール』のオーナーシェフである斉須政雄氏と共にノートルダム寺院の向かいで、わずか26席の小さなレストランを開きすぐにミシュラン星を獲得したのがスタート。
その数年後には現在のパリ4区ヴォ―ジュ広場の一角へ移転し、以来35年以上ミシュラン三つ星を獲得しています。
入り口でお会いしましたがパコー氏は相変わらず表情は気難しく憂鬱そうな哲学者のようで、ただ、眼の奥には大きな優しさを宿す、そんな印象を相手に与える御方です。
35年連続でミシュラン三つ星を背負う重圧だなんて他人に理解できるはずもないですね。。。
パリのミシュラン店は常に伺っているつもりですが、その中でも『ランブロワジー 』は私にとってはやはり特別なお店です。
なんといいますか、「安心」するんですよね。
「安心?緊張となでなくて?」と思われるかもしれませんが、私は「安心」するんです。
このレストランにいるととても落ち着きます。
それは、普段自分が食事/料理において感じている他の方々との大きな違和感やその違和感から派生する孤独感をこのお店は完全に満たしてくれるからです。
私の料理に対する感覚/考え方を極めて普通の当たり前とした上でさらにそこから圧倒的に研鑽して磨き上げてさらなる上を志している超一流の料理人やスタッフ達がいてくださるお陰で、彼らに完全に総てを委ねて眼の前の料理やワインを満喫できるからです。
我々が日本人だと分かったからでしょうか、最初に日本語を話せるフランス人スタッフがお水を注ぎがてら軽妙な自己紹介と挨拶をしてこちらを和ませてくれます。
次にソムリエが来たのでサロン/Salonの1997年物をオーダー。本当はリストにある1999年物が良かったのですが、今は在庫が1997年しかなかったので仕方なくそうしました。1996年だったら最高過ぎますが、当たり年のワインを飲むことだけが良いことではないですからね。
それにしても私がサロン/Salonを注文したときのソムリエの嬉しそうな顔、確かにその日空間を共にする周囲のテーブルのシャンパーニュやワイン達を見渡すと納得。
今回の旅程としては、最初日本から直行でパリで3日間程過ごし、その後にスイス/イタリアに1ヶ月間滞在してまたパリから直行便で帰国という流れにしたのですが、そんなパリに戻ってくる前の5日間をシャンパーニュ地方として有名なランス/Reimsのジャック・セロスのオーベルジュ『Les Avises』で過ごしました。
昼夜常にセロスの様々なシャンパーニュを飲んでいたので、口の中はすっかり世界一のRM(レコルタン・マニュピランの略:自社畑で収穫したブドウを使用し、醸造も手掛ける小規模生産者のこと。 )に慣れている今の私の口腔内。
ちなみにRMの反対をNM(ネゴシアン・マニュピランの略:生産者から購入したブドウや果汁、原酒を醸造してシャンパンを造る大手メーカーや個人がこれに当たります。自社畑を所有している場合もあり、シャンパンの生産者の大半を占めています。モエ・エ・シャンドン、クリュッグ、ヴーヴ・クリコ、サロン、ボランジェetc)といい、両者それぞれに良さがあります。
世界一と称されるRMを日夜飲みまくり口がすっかり慣れている中で、三ツ星レストランにおいて世界一のNMであるサロン/Salonで今回のパリ最後の夜を締めくくろうというわけです。
蔵出しサロン/Salon(1997年物)がこの円安の中で1200ユーロ?
Oh,yes(=´∀`)!
ソムリエと相談して、その時に最高の状態のシャンパーニュ/白/赤/貴腐ワインで4種類以上のボトルを開けて、1/4~1/5の量はそのお店のソムリエ達のために残すというのが理想的ですが、そんなことをグランメゾンでしたら飲み物だけでゆうに300万円を超えてしまうので、それが叶わないシチュエーションにおいては、私は2人で伺うグランメゾンにおいては最初のシャンパーニュに相応のお金をかけることが総合的観点から良いと考えています。
このクラスのレストランに来てお値段ばかりを気にして総てグラスワインにする気持ちも理解できますが、やはりお金には使い所というものがあるわけで、本当に信用に足るお店においては最初にしっかりシャンパーニュにお金をかけておくと良いです。
それは
---------------------------
・皆が頼みがちなリーズナブルな泡やワインが断トツで割高である
・美味しいシャンパーニュは美味しい白ワインの要素も兼ね備えているので白ワインを飲まなくても良くなる
・やはりどんなに来店者をフェアに扱う素晴らしいお店であろうと扱いが明確に変わる
・そのあとの赤ワインをグラスワインで色々と堂々と愉しめる
-------------------------
という理由からです。
強調しておきますが、こちらのお店はベルナール・ペコー氏の「総てのお客様を平等にそして誠実に」という理念が隅々まで行き渡っていますので、そんなことで来店者達を悪い意味で差別したりは致しません。
さて、、、
ソムリエがシャンパンクーラーをセッティングし、セラーにサロン/Salonを取りに行っている間に次に細身なベテランスタッフが注文を取りにきてくれます。
私「こんばんは。今日は牡蠣とキャビアのお料理と、フォアグラと、手長海老のお料理と、あとスペシャリテのスズキのお料理!で、オマール海老のお料理と、え?オマール海老は来月から?がーんっ!じゃー、鳩/ハトはありますか?バッチリ?じゃー、今日は鳩/ハトにします。え?今日は最高級白トリュフでいいのが入ってるですって?我々はつい先日までアルバ村の白トリュフ祭りにいって散々白トリュフ料理食べてきたんですってばー、今回の旅行も白トリュフ祭りがメインなんですよー(笑)。ま、わかりました、白トリュフはその時の流れで、あとはサロン/Salonでゆっくり楽しんで、そのあと白ワインお願いするかもしれないのですが、連れの方があまりお酒飲めないのでおそらくメインディッシュの前に赤ワインをグラスで1-3杯ずつお願いすると思います。」
スタッフ「ムッシュ、お料理の内容やバランスは素晴らしいと思います。ただ申し訳ありません。今日は牡蠣の例のお料理はないんです。」
私「えーっ!?今日は連れの方が牡蠣を食べたがっていたのでこちらの例のこの時期の牡蠣料理を食べさせたかったんですよぉ(泣)」
スタッフ「申し訳ありません、ムッシュ。」
私「えー、もー、、、了解しました、では牡蠣料理以外を先程申し上げた感じでお願いします。」
そんなやり取りの反対右側でソムリエが眼をキラキラさせながら自分で味見したのち、グラスにシャンパーニュをテイスティング用に少し注いでくれます。こんな既に良い香りがしてるのにわざわざ形式的に一口飲む必要なんてない。僕は香りを嗅いで、あとはソムリエにそのまま注いでくださいの目配せ。
ということで、牡蠣料理はありませんでしたが他も素晴らしいのでひとまず乾杯しましょー♬
70日間お疲れ様でした!(=´∀`)人(´∀`=)
くぴり。
はふぅ、、、。
あー、最高ランクのシャルドネの高貴な香り。
やっぱりサロン/Salonは本当に典雅で美味しいなー、大手メゾンの中で断トツに美しい、、、。
シャンパーニュには今までの人生で随分お金を使ってきましたが、素晴らしく美味しい個性的なシャンパーニュは多々あれど、美しさではサロン/Salonに敵うモノはないでしょう。
ひと口口に含むや否や、シュワシュワシュワ~という柔らかい刺激と共に黄金色の液体が舌の奥まで流れこんで、完璧複雑に調和の取れたシャンパーニュの甘み/香り/酸味を舌全体から鼻腔にかけて感じた瞬間に今度は返す波の如くに舌奥から舌先へゆっくりとそれらの余韻が流れ戻っていきます。
ふぅ、、、。
今の僕を他の方がみたら、僕の口元からは黄金色の柔らかい光が口を開くたびに漏れ出ているに違いない。
そこで先ほどの細身ベテランスタッフが颯爽とお皿を運んできてくれます。
えーっと、フォアグラだったかな?
ということでお皿を見ると「牡蠣」。
あー、食べたかった例の牡蠣じゃん(๑˃̵ᴗ˂̵)!!
<牡蠣/かき>
先ほどは今日はないといっていた牡蠣が運ばれてきました。
本当は5~6個/皿あるんですけどね、各人に1個ずつです。
でも今日の我々にとってはこれで充分。
完全なるサービスとのこと。
これはサプライズ。
ビッグサプライズ。
これぞサロン/Salonパワー!?
少し離れた壁際に戻った細身スタッフを見ると、彼がにやりとウインクしてきます。残り2個だけ提供に足る生牡蠣があったのでわざわざ無理を言ってソースも急いで作ってくれたということです。
素晴らしい、なんて粋な計らい!
よっし、幸先良いなー(๑>◡<๑)
なぜ僕がこの牡蠣料理が好きか?
別にフランス産の牡蠣だからですとか、生牡蠣が好きだからという理由で今更こんなに騒ぎません。
フランス『ランブロワジー 』のこの牡蠣料理が僕は大好きなんです。
説明しましょう。
画像の通り、お皿の上には氷が敷かれ、その上に牡蠣の殻が置かれて中央で2つに切られた牡蠣の身があります。
上からはグリーンのソース、上には大粒のキャビアがたっぷりと乗った一品です。
あー、なるほど、良く冷えた生牡蠣にほろ苦み系のある葉物の冷製ソースの苦みと野菜中心の出汁の旨味をぶつけて、そこに最高級のキャビアでネットリ濃厚な旨味を加えてるんでしょ?
ってちょっとグルメンな方なら一瞥してそう思うことでしょう。
やるじゃないですかーヽ(*´∀`)
でもランブロワジー の牡蠣料理は違うんですよ。
それくらいじゃー、僕は特別にこのお皿を好きにはならないです。
この牡蠣、口に含むと熱いんです。
しっかり加熱してあるんです。
見た目も限りなく生牡蠣なのに、です。
緑のソースは冷たいのですが、下に隠れている牡蠣は熱いのです!
スプーンですくったときの見た目は生ガキなんですけどね、口に含むと45~50度位に加熱された牡蠣なんです。
当然冷たいと思って口にいれます、ぱくり。
ぷりじゅばぁっ!!!
と適温で加熱して活性化された牡蠣の旨味がお皿に敷かれた氷とよく冷えた殻で冷たい生牡蠣と思いこまされた私の口の中で弾けて口の中から鼻腔を抜けて直接私の大脳を揺らしてきます。
このギャップ、、、。
牡蠣の旨味の1つであるほろ苦さに野菜系の出汁で引き延ばされた小松菜系クレソン系のグリーンソースがぶつけられて、雑味皆無の美しい牡蠣の旨味だけが立体的に浮き上がり、そこに成熟ぎりぎり一歩手前のキャビアの魚介類系グルタミン酸の旨味が加わって、どーんっ!
ふと隣を見やると初めて来店した連れは驚きで口を開けたまま声もでず眼を大きく見開いたまま静止。
そうだよ×2、僕も最初はそうだったとシャンパーニュを一口飲んでにんまり(≧∀≦)
それにしてもさすがサロン/Salon、牡蠣と合わせてもキャビアと合わせても微塵も生臭み発生させず。
なんだっけな、この特別な充足感。
そうだ、僕は今、パリに戻ってきたんだ!
あぁ、あと牡蠣があと半身しか残ってない。
その前にこの緑のソース、あー、ソース単体でも青臭さ全然なく美味しいなー。
あ、そうだ、パン食べなきゃ、バター×2♬
はぁ、そしてランブロワジーのバターだよね、バター。
美味しいパンには相当の耐性ついているけどこのバターのすごさたるや、ひゃーっ!
日本のカルピスバターも充分美味しいし、エシレバターだって充分に美味しい。
でも、北イタリアやフランスの三ツ星レストランで頂くバター/生クリーム/牛乳っていうのは本当に別物なんですよね、、、。
はぁ、当たり前だけどこのバターとサロン/Salonも超合うし。
牡蠣の残りも頂くか、あー、美味し過ぎるっ!
やばい、もう満足しそうな自分がいる( ˊ̱˂˃ˋ̱ )。
<フォアグラ>
うわー、厚み5cm直径10cm近くあるフォアグラ。
外側には辛み成分を意図的に飛ばした複数種類の黒コショウか。下には洋風出汁で炊かれた大根系の根菜類。
このあたりに日本人シェフの感性を感じます。
あー、余分な油脂を全然感じない。
下の大根があるとはいえ、なぜこんなに大きなフォワをパクパクいけてしまうのか?
当然、サロン/Salonとも完璧。
あー、厨房では我々が飲んでいるお酒が何かまでしっかり把握してくれてるんだろーなー、この連携、すごいよなー。
<手長海老>
低温調理されたきめ細かい繊維の手長海老が白胡麻のフィヤンティーヌで挟まれています。
下の黄色いソースはカレー風味。
パリッと割れる白胡麻のフィヤンティーヌは簡単に申し上げるとお煎餅のようなモノ。
白胡麻の上品で香ばしい香り。強く焼き目が入った胡麻は一粒もありません。カレーソースはこれまたフォンと生クリームで引き延ばされたであろうモノ。僅かなターメリックとスパイスのみで、カレー風味とは認識するもののアジアンな香辛料を全面に感じさせるなんて野暮なことはしてありません。あくまでこのお皿の基調で白/パステルカラーの黄色/明るいベージュからは一切逸脱することなく、低温加熱された手長海老を存分に楽しめます。
はぁ、美味しいシャンパーニュってほんと美味しい白ワインにも成るからいいよなー、なんて美しいペアリングなんだろう。
あぁ、、、もうサロン/Salon無くなるか、、、というところでソムリエが私の元に。
ソムリエ「ムッシュ、次のワインはいかがいたしましょう?」
私「うーん、濃厚な白といいたいところですが、お相手様が結構良い感じに酔ってるので次は鳩/ハトですし、このまま赤にしようかなと思ってます。グラスで頂きたいのでお任せします。あ、そうですね、そのお勧めのボルドーとブルゴーニュで一杯ずつください。」
ソムリエ「素晴らしいご判断かと存じまず。今、オーダーに沿った最高のワインをお持ち致します。」
キュッキュッ、トゥクトゥクトゥクトゥク。
大ぶりなボルドーグラスに透明感のある紅い液体が注がれました。
成る程、ローヌもボルドーグラスでねー。
うわ、このボルドーはまた香りがエレガントだなー。今この瞬間ならこっち。でも少し時間が経ってきたらこのコートロティ(ローヌ一エレガントなシラー中心の畑)だろうなー。ラッキー、タンニン大好きなお連れ様はボルドー選ばれたのでこのコートロティは僕のか!娘さんがあとを継がれたんだっけかな?低温でこの気品ある香りとお味だなんてなんて素晴らしい後継者でしょう。
とここで大事そうに小さな箱を抱えた女性スタッフが各テーブル席をまわって我々の席に。
彼女が大切に抱える発泡スチロールの小さな箱からはその香気が視覚化できるほどにとてつもない香りが漂ってきます、、、
げっ、こんな手のひらいっぱいの大きな白トリュフはアルバ村の白トリュフ祭りでも見てないんだけど、、、っていうか、うわー紛れもないこの強烈な白トリュフの香気は、、、本当に気を失いそうになるほどの高貴ムンムン鮮烈さ。。。
巷のトリュフオイルとかトリュフ塩のような石油から作られたケミカルな偽トリュフの香りや粗悪トリュフの香りとは比較すること自体ナンセンス。
はぁ、ため息しかでない、え?あ、はい、ですね、この白トリュフはリゾットでと思わず追加注文。多分そのリゾットだけで3万円/皿はするだろうなー、いいよ、もー好きにして(笑)。
ふひゅう、、、アルバ村の最高の白トリュフは最初から祭りには並ばず超一流店へ直送、か。。。
でもなー、おかしいなー、最高のアルバの白トリュフってトスカーナ産などと違って表面を砂で洗わないから香りは切ったりするまで外に漏れないと聞いていたけど、軽く湿らせた布でくるんであるからかな、表面に細かい傷もないのにもう既にとてつもない香りを放ってたな、あれが世界最高ランクか、なるほど。
<スズキのキャビアソース>
この分厚い大きなスズキのポーション。
下にはクリームソースがほぼ見えなくなるほど敷き詰められたキャビア。
スンとひと嗅ぎ。
身はもちろんのこと、スズキの皮目のどこにもメイラード反応の香りはありません。しかしスプーンがプッツリと皮目から身のほうへゆっくり下のキャビアソースのほうへ入っていきます。
ほんと大胆なことやってくるよなー。これ、工程のどこかでほんの少しでも何かを間違えたらあっという間に僅かながら生臭みや魚臭さが発生してこんな量食べれなくなるのに、単調になりがちなのにこんなにしっかり盛り付けてきてさ、、、。
まずは、そうだな、スズキの切り身の部分だけ頂こう、ぱくり。
しっとりジューシーに丁寧な加熱。皮目は意図的に乾燥させたかのような加熱を施してして、スズキの身の部分だけジューシーに。皮目部分はスプーンにも口の中でもまったくひっかからない。スズキの魅力ばっちり。
で、下は魚介系の出汁で丁寧に引き延ばされたであろう生クリームベースのソースにたっぷりのキャビア。
博多の柔らかくて美味しい新ごぼうの9割が中国産であるのと同様に、今はフランスのフランス料理店で頂く9割以上のキャビアは中国産なのが実情ですが、このキャビアはフランス産だろうな、この香りこの味わい、もはや確かめようとも思わない。
だって全然違うから。
このお皿には、ソースと共にたっぷりよそわれているじんわり低温加熱した大きなキャビア達は、この大きさ、この成熟一歩手前じゃないと成立しないです。普段に日本で販売されている缶に入った青緑に美しく輝くあの粒の大きさでは、あの食感では成立しません。
そんな世界最高ランクのミルクや生クリーム系のソースと成熟直前の加熱されたキャビアと先ほどのスズキを一緒に口に入れてと、、、、ぐう、、、、(๑>◡<๑)。
冒頭の牡蠣の一品の冷たいキャビアとはまた全然違うキャビアの魅力が見事に活性化されて引き出されてる。こんなじんわり加熱のお料理、日本料理なら葱とか生姜とかそういう類で少しでも生臭み魚臭さ発生の芽を積んでおきたいものだけど、一切そんなことはせず、そんなことは感じさせず、ただただ口の中で温かいままにそれぞれの良さを満喫。
このキャビアの旨味がー、このスズキの旨味がー、この温度とクリームソースで一体化されてー、、、こんな単調になりがちな料理をこんなに大胆なポーションで提供さているのに余裕でパクパク食べれてしまうから、ほら、僕より少食な僕の連れも完食!
すごいなー、すごいなーっ(((o(*゚▽゚*)o)))!!
目新しいことしなくても、さりげなくとてつもない技術のオンパレード。
あ、グラスにわずかに残っていたサロン/Salonが終わった、ソムリエ達残せずごめん!
くぴりと赤ワインを一口。
温度も完璧。
あれ?
この赤ワインでも生臭み魚臭さの発生皆無ってマジかよ、ある程度は覚悟して口に含んだのに。。。
赤も徐々に開いてきたーっ!
<鳩/ハト>
で、ここでいよいよ本日のメインディッシュ。
パリの超一流店って格好良いんですよねー、鳩などのお肉も全部オーダー後にフライパンで焼き上げるんです。
真空パックして温度設定した低温調理器具でボタンをぽちり、仕上げに焼き目つけて完成なんてことしない。
僕はそんな低温調理されたお肉も大好きなのですが、そうするとやはり「点」のタイミングでは出せないんですよね。真空パック低温調理は素材の大量の旨みが外に出てしまうから、その旨みをソースにもう一回戻さなくてはいけないので、超高次元なレベルにおいては食材とソースのバランスなど色々ズレてしまう。
だからピンポイントで合わせてくるために、フライパンでそれをやるってわけです。
食べ手側の料理進行をスタッフ達と連携して把握しながら逆算してずっと前から加熱調理してのこれですよ。
目の前のお皿はまさしくこのテーブルのためだけ作り上げられたということです。
ぷりん×2なのにナイフはスッと断面はジューシーしっとり。赤色を想起される鳩肉ならではのヘモグロビンたんぱく質の旨味。隣には鳩のその他の部位をヨーロッパでよく見るシワシワきゃべつ(Chou frisé(シューフリゼ))で包んだもの。パリでは2€/個のなんてことないお野菜も東京ミッドタウンの地下食品売り場では3,000円/個超え。僕はロールキャベツでもなんでもこっちのキャベツでビチッと包んだほうが好き。
っていうことはこのフォン自体も鳩の骨と野菜から抽出してるってこと?
この一皿で冬の鳩/ハトを満喫ってことか。
このお皿が完全に我々だけのために調理されていることを随所に感じます。
「あのテーブルは最初何飲んでたの?シャンパーニュ?で今は?年齢や国籍は?ふーん、日本人か。ってことはソース/sourceはこれがピンポイントってことか。この鳩2時間近く前から加熱してるけどさ、ソムリエ達、こっちはあと何分後に仕上げれば良さそう?15分後?オッケー!」
って感じ。
いやー、赤ワインが進む×2。
両方のクラス感というか気品がぴったり合ってるなー、ぐわわわわ、お見事!
スタッフがチーズはどうかというご提案。
あ、チーズは今日は必要ないのでそのままデザートをお願いしゃっす。
スタッフ「かしこまりました、ムッシュ。」
〈デザート〉
フォンダンショコラとスフレを最初から切り分けてServeくださいます。
はぁ〜、、、スフレはふわぷる、フォンダンショコラは外は薄くパリッとサクッと、で、中はトロッとカカオ風味豊かに甘い、、、濃厚、、、大満足。
このままの口内で帰宅したかったので最後は飲みたくなかったですが、ハーブティーで締めます。
ふぅ、、、、相変わらずスゴい、、、、。
テーブルチェックして少し間を置いて出口に向かい、上着を着せてもらって「ムッシュ、今日もありがとうございました。See you soon!」の声と共に見送られて今回のパリ最後の夜は終わり。
ホテルまでの帰り道、ヨーロッパの石畳の上を歩きながら僕は毎度こう思うのです。
あぁ、なんで僕は毎日パリの三つ星フレンチを食べ歩きできないんだろう。
なんでイタリアの三つ星リストランテを毎日まわれないんだろう。
なんでデンマークやペルーまでプライベートジェットでひとっ飛びで食べたい時に行けないんだろう?
なんで空港のフライトボードを見てから旅先や日程を決められないんだろう。
なんてことを思いながら、自分がすべきことを日々ちゃんとやろうと改めて思うわけです。
まー、あれです。
好き嫌いといった個人の感想はそれぞれ自由なんですが、やっぱり何かの意見を強く主張するっていう場合はそこに「責任」というものが生じるわけで、本物の料理人の方々というのはそれぞれが自分が最高だと思う料理を提供されてるんですから、そのお皿はいわば彼らの人生そのものと過言ではないわけです。
ならばせめて最低限のエチケットとして、相手への敬意として、お料理を頂くこちら側も何かを強く明言する場合にはしっかりコンディション整えて、最低限の知識/経験/感性や覚悟を備えておくことは必要だと思います。
逆もまたしかりで、東京フレンチの素晴らしさを理解するにはやっぱりフランスの三つ星フレンチを色々食べて経験しておいたほうが、一つ一つの表現や説得力においてやっぱり色々違うんですよね。
フレンチに対して説得力をもった何かを発言されたい方は、やっぱりパリのミシュラン三つ星店は色々と食べ歩いておいたほうがいいです。私にご自分の好きな日本フレンチのことを熱く語ってくださるそのお気持ちは嬉しいですし、きっとその感性や感動は間違いなく本物なのでしょう。だからこそフランスやイタリアの三つ星にも足を運びましょう。
個人の感想、されど個人の感想。
やはり言葉にするならそこに何かしらの責任は生じます。
きっとその経験はそんな貴方の今後の言外の強力な説得力/evidenceになります。
日本で頂く和食が1番であるように、三つ星フレンチは、特に仏三つ星フレンチだけは、やっぱりフランスのフレンチがずば抜けてます。
パリ『ランブロワジー 』などの三つ星フレンチの多くは特に、フレンチ好きが何度も何度も季節ごとに伺う価値のある世界最高レベルのグランメゾンです。
もちろん良いワインもそこで堪能しましょう。
時間が無ければ白金高輪『コートドール』に行かれても良いのでしょうが、あちらも素晴らしいお店ですが、それでもやっぱりどうせならパリに行かれるのが良いと思います。東京から1泊3日の弾丸旅行でだっていいんですよ、このクラスのお店にはそういう価値があるんですから。
パリの街並み、パリの空気、フランス芸術などに囲まれて、作られてからほぼ蔵出しに近い状態でセラー保管されている最高のワイン達をしかも東京の半額以下で最高のServeのもと頂く喜び。極上の食材の上にあぐらをかくことなく、さらなる探究心と古典への敬意を払った一点の曇りもない本場フレンチを完璧なServeの元で堪能する喜び。
仮にそんな旅では肉体的に疲れるかもしれませんが、きっと心は大満足されるはず。
生きる糧になるはずです。
今回はサロン/Salonが1200ユーロだったので、お料理と合わせて全部で2,500ユーロ/2人。
150円/ユーロ換算だと40万円弱。
高い。
金額的には確かにお高いですが、満足度的には最高なのでとてもお得に感じます。
内装に関しては食べログ評価4.8pt程ですが、他に関しては全て満点5.0pt。
人間は認知したモノしか目に映っておらず理解できません。
テレビや本で見たら聞いたりしただけではその対象を本質的に理解することはできないのです。
現地で人生が変わる特別な体験を是非 ♬
※こちらのお店はEmailや電話での問合せはできないので、HPからのオンライン予約の際にこちらの要望を伝えるスタイルです。
※予約時に600ユーロ/2人がデポジット/depositされ、直前キャンセルした場合にはそのままそれが取られます。
※予約後、翌日以降に確認の電話がきます。
※男性はジャケット必須です。
※唯一マイナス点があるとすれば今回新しくなった内装に関して、ただそれは私の個人的好みの話で、それ以外は完璧です。
※パリの三つ星フレンチはどこも素晴らしく素敵です。
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