Dinner on November 11, 2023 : 雲仙観光ホテル・メインダイニング

有馬キリシタン遺産記念館を訪ねた後は聖母マリア観音と小高い丘の上から
原城跡と有明海に浮かぶ天草四郎の談合島→ 本田屋かすてら本舗 でお買い
物をしてホテルに戻る途中〜山道で私の目にカトリック雲仙教会という文字
が目に飛び込んできました。U-ターンして細い坂道を上がって行きますとク
ルマが５台ほど停まれる小さな砂利敷の駐車場があって〜その上に西陽に輝
く立派な教会が！扉の前に暫し佇んでおりますとご高齢の男性が出てらして
”今 明かりを点けますので” と、お聖堂に招いてくださいました。スリッパ
に履き替えて中に進むと両側に初期教会から２５０年間に亘る潜伏時代の信
仰を描く美しいステンドグラスがあり１９８１年６月ローマ教皇ヨハネ・パ
ウロ２世の長崎訪問を機に献堂式があった雲仙教会の長い道のりと殉教者達
の祈りが伝わって参ります。資金不足の為、ステンドグラス完成ミサは２０
０４年３月で原画は松田猛氏とシスター木村美由紀によって描かれイタリア
人サンテ・ピッツォール氏が制作と戴いた’碧の祈り’に書いてありました。
聖フランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸した１５４９年８月以降に宣べ伝
えられたキリストの教えは戦国時代にあった日本で拡がりザビエルが日本を
去った４５年後〜有馬領内には７万５０００人のキリシタンがいて４５の教
会がありましたが現在この教会に所属する信者は僅か１０名で、ご案内して
くださった方に洗礼名を伺うとアントニオです！→ 私はチェチーリアです。
ご夫婦で教会の管理をしていらして御ミサは島原教会で９pm のミサを終え
た神父様が第一と第三の日曜日に１１amから〜月に２回なんですね・・ス
テンドグラスを見ていると涙が止まらず、翌朝〜大浦天主堂まで行って大浦
教会で御ミサに与る予定なんです、とお話しするのが精一杯でしたが全てを
ご存知、全能の父であるかのような彼の目には敬虔、謙遜、霊性が輝き心が
洗われるような時間でございました。

ホテルまでは１０分ほどで石畳の先に前日のチェック・イン時にはなかった
クリスマス・デコレーションがあって２回目の夕食は美しい秋の彩りで始ま
りました。前菜は器の中に小浜産ニンジン葛プリンとラペ+キャビア（ラン
プフィッシュの卵）帆立貝のスモークと紫キャベツのザワークラウト、トリ
ュフ香る太陽卵の巻き物、玄米のクラッカーで作った器にハムのムース、長
崎県産牛ロースト焼き茄子のルーロー・白味噌クリーム添え、殻付き姫サザ
エのエスカルゴ風、安保柿のバターサンド・唐墨パウダー、海藻ジュレで楽
しむ天使の海老とイクラのクルードで一品一品丁寧に作られています。ワイ
ンはグラスでイタリア・ヴェネトのピノ・ノワール（¥１９３６）雲仙島原
の天然水を使用した温泉レモネード（¥５００）の復刻ラベルに香好・味滋・
快爽と入っていてホテル創業当時が甦ります。よいアイディアですよネッ！
続く秋ゴボウの焼きリゾットの上に載っていたのは橘湾で釣れた穴子の白焼
きで山椒香る醤油ソース→ お魚料理はやはり橘湾産渡り蟹と鯛のムースを
ビスクで〜♬ 島原野菜入りビーフ・シチューのパイ包みも大変結構でござ
いました。塩味キッチリ！（ジャガイモではなくサツマ芋でカボチャも入り
ますのでともすれば甘みが強くなりがち）パイ包みの魅せ方も素晴らしく、
お料理のみの高得点評価で締め括りたいところですが前日に続いてデザート
に寂しいものがあり、せっかくワゴン・サービスでお互いに顔がわかる２日
目のディナー終わりにも関わらず ”お料理はいかがでしたか？” とか ”今日
はどこを周られましたか？” とかなんとか・・一切会話なし、笑顔もなしで
’注文の多い客’ と承知の上で書きますがもう少しサービスにホスピタリーが
あってもよいのではないでしょうか？

私はゴルゴンゾーラのチーズケーキをリピートして無花果のタルト（お味は
満点〜♬）リーチェパパはモンブランとアイスクリーム２種でしたがパウン
ドケーキを追加したところ世にも小さなカットで目を丸くしておりました。
そもそも！ワゴン・サービス自体が ’おもてなしの極致' たるもので ”どうぞ
全部召し上がってください！” で笑いをとるくらいでなければ意味がありま
せん。近々のワゴン・サービスは六本木の オステリア で、会話の達人イ
タリア人ですから並べて比する訳には参りませんが本当に嬉しそうに ”全部
美味しそうでしょ？明日の朝まで迷っていいですヨ！” パティシエだって〜
お客様の為に心を込めて作ったデセールをこんな風に紹介されたら嬉しいに
決まっています！日本のクラシックホテル・ベスト１０に入る雲仙観光ホテ
ルナだけに（私が期待し過ぎていたのかもしれませんが）なんとも呆気ない
フィナーレでございました。ディナー後ライトアップされているに違いない
と確信して外に出てみるとバンビのようなトナカイに明かりが灯ってエント
ランスを明るく照らしていました。日本初の国立公園に指定された雲仙は古
くから外国人避暑地として親しまれてきましたが昭和に入ると外国人観光客
誘致の国策として日光金谷、箱根富士屋、軽井沢万平、奈良ホテルなどが次
々にオープン〜雲仙観光ホテルのオープンは昭和１０年１０月→２００３年
１月以降は国の登録有形文化財として今日に至ります。

朝食は予約時に一名は和食でお願いしていて私の洋食はキッシュ、ハム、サ
ラミが載った前菜、プレーン・ヨーグルト、青汁かと思ったのは小松菜とリ
ンゴのスムージー、パンプキン・スープに続いて選べる卵料理でスクランブ
ル、新鮮な地元野菜のサラダに光るものがありパンはクロワッサンとトース
トというオーソドックスな朝食コース、一方〜和食は高さのあるプレゼンで
半月盆に載っていたのは雲仙野菜の小鉢、鯨の肉じゃが、自家製温豆腐、太
陽卵の玉子焼き、島原そうめん、長崎近海で獲れたマトウ鯛の味醂干し、千
々石の棚田米の鯛めし（マトウ鯛）で〜♬ 前日 六兵衛 の駐車場から山の麓
に広がる田園風景を堪能させて戴きましたので！千々石で収穫された棚田米
には親近感がありますし島原そうめんも走行中に何度も看板で見て参りまし
たので島原名物であることがすぐにわかります。お味噌汁は橘湾で採れた青
さ入り〜鯨は昔から大浦湾に入って来るそうで映画 CAVE がちらっと・・
がぜ味噌（内蔵を入れて作る味噌）で、島原そうめんはアゴ出汁風〜六兵衛
のお汁でも感じたようにお出汁で一気にローカル色が濃くなります。飛行機
に乗って此処まで来なければ味わえない朝食〜♬ サービス・スタッフの顔ぶ
れは前日のディナーと変わりありませんが卵料理以外はワン・タイムで済む
為、タイミングの取り方に大きな失望はなく無事終了！

朝食後は雲仙ロープウェイに乗ってみようということで雲仙国立公園の仁田
峠展望台から１９９０年１１月の噴火で形成された溶岩ドーム・平成新山、
その下に広がる島原市街地、有明海の向こうに熊本の山々〜その奥に阿蘇山、
右に天草諸島〜♬ 有明海を行く小さな船が見える光景はカプリ島まで定期便
が往復するソレントから毎朝見た海の景色と同じ！ロープウェイで山頂まで
上がると雲仙ゴルフ場の横に昨日写真を撮ったおしどりの池が見えて絶景を
満喫〜♬ 妙見岳山頂にある妙見神社（標高１３３３メートル）まで歩き南島
原市の有馬キリシタン遺産記念館でキリスト教伝来から徳川幕府の鎖国政策
を加速させるきっかけとなった島原・天草一揆までと其の後のキリシタン史
の光と影、宣教師不在の中〜神道や仏教、当時の社会と関わりながら信仰を
守り長崎の大浦天主堂でプティジャン神父の ’信徒発見’ に至るまでの苦難の
歴史を辿り〜砲弾から作ったロザリオや貝殻の十字架などの出土品の展示や
パネルを通して２５０年もの潜伏時代に思いを馳せることになりました。１
６世紀末に有馬領の口之津港に来航した南蛮船はマカオを拠点にしたポルト
ガル船とマニラを拠点にしたスペイン船でしたが１６２４年にスペイン船が、
３９年にポルトガル船が来航を禁じられるとオランダが貿易を独占すること
になります。１８６４年１２月パリ・ミッションのフランス人司祭らによっ
て竣工した教会は翌２月に聖堂が完成→ 献堂式が行われ浦上のキリシタンか
ら信仰告白を受けたプティジャン神父が信徒発見をバチカンに報告→ 横浜天
主堂が１９０６年に旧外国人居留地から山手に移転後建て替えられた為、大
浦天主堂が国内最古の教会建築となり１９３３年国宝に指定され１９７５年
隣接地に大浦教会が新築されました。１９８１年にローマ教皇ヨハネ・パウ
ロ２世初来日で来訪を受け２０１８年に長崎と天草地方・潜伏キリシタン関
連遺産として世界文化遺産に登録され現在に至ります。

チェック・イン時にディナーは６pm か７pm のどちらになさいますか？と
聞かれ初日は７pm でお願い致しました。ダイニング・ルームの手前にバー
があってピアノの前に大きな銅鑼が！古き佳き時代ディナー・タイムの合図
は銅鑼だったのでしょうか？ディナー客を誘うピアノ・プレーヤーもいたに
違いありません。ホテルの創業者・橋本喜造氏が船会社を経営していたこと
から氏が理想とされたのは大海原を航海しながら快適な旅を演出する客船の
イメージだったのかもしれません。バーは金・土・日と休日前日の８pm か
らで未だ灯りは点いていませんがエントランスを入るとすぐ小さなワイン・
セラーがあってアールを描く梁が美しいダイニング・ルームは正にグランド
・ホテルの趣き〜♬ 壁に掛かるタピストリーにホテルの歴史が香ります。

地産地消ディナーのアミューズは雲仙産和栗と雲仙ポークのブランケットで
白インゲン豆のモンブラン仕立て〜♬ 紙ではなく光沢のある布でお洒落な魅
せ方！お料理も素晴らしいのに！サービスが今ひとつ（サーヴの所作が美し
くなく足取りが重くもったり〜サーヴァーの歩き方が最後まで気になりまし
た）残念！オードヴルはセロリの球根・フランス産キャビアとチュイール・
近海活伊勢海老・南島原産フィンガーライム・海ブドウ添え、ビーツのピュ
レとパッションフルーツで美味しいのですがパンとバターがこのタイミング
でテーブルに載らないとフレンチの味にならず・・続く一品は諫早産狩猟猪
と山椒のラグーでフォア・グラのソテーと大根のコンソメ→ お魚は地魚のイ
トヨリ鯛の炙り焼きに雲仙キノコ、ラフランスのピュレ、リーフパイが添え
られています。漁師が生け捕りにする魚は網にかかった魚とは元気さが違う
そう〜驚いたことに！パンが供されたのが柑橘と柘榴のグラニテがテーブル
に載った時でお料理が申し分なくてもサーヴに問題があっては全てが台無し
になってしまいますよね・・お肉料理は長崎和牛ロースに雲仙野菜とフロマ
ージュ、ソースはデミグラスで西山文一料理長のキャリアが光る一品でござ
いました。ワインはコート・デュ・ローヌ（キャラフ ¥５０８２）で！

デセールはワゴン・サービスで供され私は最後のグラス半分でゴルゴンゾー
ラのチーズケーキを堪能すべく・・１１月１１日は４１回目の記念日で４１
と入れて戴きましたが直前にお願いしたとは言え、もう少しなんとか？ベア
トリーチェと一緒に楽しんだ昨年の ビーチエンド・ヴィラ のプレートの方
がずっと華やか〜♬ プリンも期待していた卵感と質感がなく ジタン のクラ
シック・プリンに軍配が上がりますが、金箔のせチョコレート・ケーキのグ
ラサージュは素晴らしく、お味も上々で魅せ方にもう少し喜びがあったら、
と思いました。皆様ディナーは６pm からで私達がラスト・テーブル〜ノリ
タケ製クラシックなデザインのショー・プレートで始まったディナーを終え
ディナー前にレセプションでお願いしていた大浦天主堂近くの駐車場の件を
伺ってみますと地図のプリントアウトができていて ”ここからは２時間みた
方が安全だと思います” 翌々日の日曜日は朝早く出て大浦教会の御ミサに与
りたく、駐車場探しで焦りたくないと思っていたのです。”すぐ近くにもカ
トリック教会あるんですよ〜でも、やはり大浦天主堂〜行きたいですよネ！
カトリック信者の方でしたら１０メートルの高さを誇るマリア観音と原城跡、
南島原キリシタン記念碑もぜひご覧になってください”→ はい、楽しみに〜♬