仙台せり鍋、たらきく : 佗び助

初回訪問は2023年。仙台の佗び助で"せり鍋"を堪能しつつ、名物女将のもてなしを受けました。良店です。

佗び助は予約困難店。1ヶ月前に電話したのにどの時間枠も埋まってて、最終20:30枠で辛うじて受け入れて貰えました。ぎりぎりセーフです。

予約当日に訪問すると店は満席。といっても2人テーブルx5卓、カウンター6席の小さな店なので、予約がすぐに埋まっちゃうのも頷けます。

せり鍋をいただく前に先ずは肴3品で乾杯です。
　・たらきく）淡いピンクは新鮮の証し。ポン酢を潜らせて、もみじおろしを乗せて、舌の上で溶かして愉しみます。東北の鱈菊ウマし。
　・にしんの切り込み）鰊が好き。糀が好き。酒が進みよる。
　・クリームチーズ味噌漬け）たぶんKiri。よ～く漬かってて美味。

そしてメインの仙台せり鍋が登場。この店は女将の山田美緒子sanが鍋奉行してくれるので、客は鑑賞モード。いな穂や蔵の庄など他のせり鍋屋と違ってセリの葉/茎/根をシャブシャブする秒数を自分で計らなくて良いです。上げ膳据え膳です。

あと注目すべきは用意されたセリの美しさ。他の店とは全く別物で、根っこがあまりにも太くて立派。ゴクリッと見惚れてしまいます。

女将が炊いてくれた鍋は、せりと合鴨のみ。鰹&昆布出汁のスープに鴨肉の旨みが加わって、もろにセリを味わえます。特に太い根っこのシャキシャキ歯応えがスンゴイの。香りも甘みも申し分ないです。

このセリを見せられたら質問しない訳にはいかないよね。以下は女将との会話です。

　私　：白くて太くて長い見事な根っこですね。他のせり鍋屋で見たことない上モノで、朝鮮人参みたいな根っこですね。
　女将：気付いて貰えて嬉しいわ。ウチは名取の契約農家から仕入れてるの。もっと言うと農家に根の太いセリの栽培を勧めたのは私なのよ。
　私　：？？？どういうこと？

　女将：この白い根っこのセリは秋田の"三関せり"がルーツなのよ。私が三関の農家に頼んで株を分けて貰って、名取の農家に栽培を勧めたの。
　私　：三関せりって美味しいよね。きりたんぽ鍋で好きです。秋田の人からするとパクられた感じですか？
　女将：そんな事ないわよ。今でも交流してるもの。でも秋田の人の価値観だと、セリの根は生薬にして販売するのが本業で、根っこを鍋に使う発想はあまり無いようね。ほら、秋田県の佐竹知事が殿様役で龍角散のCMに出てたでしょ。それ系が秋田の本業よ。
　私　：あぁ、愛媛のジャコ天を「貧乏くさい」と言い切った人ね。じゃあ、朝鮮人参の根っこ。という印象もあながちハズレじゃないのね。

　私　：でも、なんで佗び助のセリだけ見事なんだろう。他の店もこのセリを欲しがるんじゃないの？
　女将：そうね。でもこの品質のセリを作ってる農家は名取に3軒しかないの。生産量が少ないのでウチみたいに古くからの付き合いがないと仕入れられないのよ。
　私　：ほぉ。勿体なーい。新規参入農家がこのセリを作って生産量を増やしたら、セリの食文化が広がってもっと活性化するのに。
　女将：ところがね。せり鍋って最近はブームでしょ。東京からの引き合いも多くて、黒くて細くて短い根っこのセリでも、新規の農家はスグに儲かるらしいのよ。ベンツが買えるくらいに。

　私　：そりゃあ、イカンがな。この立派なセリを作る動機がない訳やね。悪貨が良貨を駆逐するの典型じゃん。近い将来、せり鍋がブームで終わっちゃうよー。
　女将：良いセリを作ってる農家が報われる仕組みが必要よね。
　私　：出荷するセリの等級格付けはどうなってるんですか？
　女将：その辺が課題らしいのよ。

鍋上手、話し上手の女将に乗せられて、仙台せりのことを沢山教わりました。20:30の最終枠だった為か、女将の接客を独占できてラッキーでした。

その後は、溶き卵うどん、卵雑炊と進んでご馳走さま。卵雑炊にチョイ掛けする"ごまらぁ油 by山田製油"も風味と辛みが美味しかったです。

そうそう。女将の自慢をもう一つご紹介。それは、この店のバイトは全員が東北大学の学生さんとのこと。バイト採用のブランド志向ってか。笑

バイトの店員さんに聞いてみました。
　私　：なんで佗び助でバイトするの？家庭教師とかもっと割のイイのあるやん。
　店員：この店はまかないが美味しいんです。他の店とか有り得ないです。
　女将：がっちり胃袋を掴んでるのよ～♪

なるほど。花より団子ってことね。学生さんってば利発だねぇ。
美味しくて楽しい時間を有難うございました。また寄らせて下さいな。
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たらきく(\980),にしんの切り込み(\550),クリームチーズ味噌漬け(\500),
仙台せり鍋,うどん,雑炊,卵(\1,900x2),お通し<きんぴら>(\335x2)