電車に揺られて鞍馬へ、早春の精進料理を食べてきました : 雍州路

年に１度か２度、観光シーズンを外して、または雨降りとか人出の少なそうな日に、ふらりと電車に揺られて鞍馬に行くことがあります。

この日もそうで、平日の午後、鞍馬寺の門前にある精進料理のお店へ、ランチ、を食べに出かけました。往復1時間ほど、食事に1時間弱。山の中ですが、電車が15分に1本あるのでお気軽です。

貴船口あたり、終点の鞍馬駅では梅が満開。市内より気温が低いので少し遅い春ですね。

駅を出て左に曲がると目の前には鞍馬寺の石段。奥には山門が見えます。
その石段の中ほどの位置に、本日のお目当て、予約なしでも気軽に精進料理が食べられる雍州路(ようしゅうじ)があります。天龍寺や妙心寺、大徳寺などでも食べられるのですが、予約や料金など敷居が高いもので、こういうお店は少ないのです。

この時間だから空いていると目論んでいましたが、少し温かくなって来たこともあるのか、まだ8割の入り。でも窓際のテーブルが空いていたもので、座ることが出来ました。

ほうじ茶を戴いて、2千円くらいからあるのですが、一番上の3千円少々をオーダーです。
この料理にはご飯の他に、温かい蕎麦がついている、これが食べたいもので選びました。

精進なので肉や魚はなし。豪華な料理でもありません。シンプル、素朴です。
でも季節感が盛られていて、いろいろな筍や湯葉など、お刺し身の代わりに近江八幡の赤蒟蒻とか、山菜とか、味つけは普通の京料理に比べるといくぶん濃いめです。

そうして待望の蕎麦。
山芋の上にとろろ芋、小豆や茗荷、香りの柚子が添えられた蕎麦。
この一椀でお腹もまったり。あぁ、来て良かったと思える瞬間でした。

いつも食後に食べるわらび餅は、お腹がいっぱい過ぎて、ありません。
これも絶品、美味しいのです。

帰りの電車ではさっそく食後の居眠り。最高です。
雨降りの一日など、数時間の旅にオススメでした。
お店の詳細は1回目に書いてきましたので参照下さいませ。

雍州路というのは　京の都へ続く路　のような意味合いで、中国の都に由来する。以前、博識のうんちくオヤジからそんなことを聞いた記憶があります。

駅前の細い道を山の方に進めば、花背峠を越え、さらにささり峠を越えて美山。その一山先に小浜があるので、これも鯖街道のひとつだったのかな、そんなことを思い浮かべながら鞍馬寺の石段を少し上がったところにお店はあります。

通い出してかれこれ15,6年くらいになります。

京都ですから精進料理の店は数多、妙心寺然り、大徳寺然り、天龍寺もまた然りです。
しかし、雍州路は料理を味わうというよりも、腹を満たす、精進料理な印象です。
おこわや蕎麦を基本に組み立てられた料理、食事になります。

一部に季節のものが使われてはいても、年間を通してメニューは同じで、予算というよりも、空腹具合で、花→くらま山→月の順に皿数が増えて行きます。

民芸調の木造の店内に入ると、最初に濃いほうじ茶が出されて、次いであつあつのおこわや蕎麦。
特に、おこわの中にはいっている　むかご。ミニじゃがいものようなものですけどね、これが好きで普段の食事ではなかなかお目にかからないので、嬉しくてついついこればかり探してしまう単純頭な自分が情けないなと、食べるたびに感じ入ります。

おこわを食べられれば腹具合は満足できるのですが、寒さ厳しい冬の午後などは温かい蕎麦もいいもの。そうして、食後に食べるわらび餅が、これもまたおいしい。白和え、炊き合わせ、田楽、ごま豆腐など素朴なものばかりが並ぶ精進。時間をかけて味わいたいものですね。

さて、春から紅葉までは、特に土日や祝日・秋は混みあいます。
今回は５月後半、相当な人出の休日でした。一人で入ると満員で、囲炉裏を囲む席でしたが、テーブルが空いた瞬間に、お姉さんはすかさず、お食事はこちらへどうぞ・・・気遣いはなかなかのものです。

しかし、一番好きなのは、紅葉の終わった頃から2月の寒い季節。
訪れる人も少なく、何も予定のない休日は、出町から電車に乗って居眠り。
鞍馬について静かな店内でのんびりと食事。
また、電車に揺られて居眠り。
静かで落ち着いていいものです。

鞍馬のお店は地元ばかりで、街道沿いの狭いところですから、昔からほとんど変わることはありません。その分、食事処は少ないのです。
地元の知人の話では、駅を出たすぐの店で、山椒ラーメン、珍味でいける・・・というお話くらいで食事を愉しみたいのなら貴船かなぁ。
時間のある時に、ゆったりとお出かけください。

写真は8年前の冬の食事、と、今年の食事です。