「がんねソフト」、「岩国れんこん お好み焼き」、「岩国れんこん きんぴら」、「岸根栗とアーモンドのパウンドケーキ」 : FAM'Sキッチンいわくに

　ある平日、岩国インターチェンジ近くの某所での用務が予定より早く終わり、お昼少し前に解散。新岩国駅から乗る予定の予約変更不可の列車まで時間がある。その間に昼食をとりたい。
　その前の週、新岩国駅前の外食環境が暗澹たるものであることを思い知ったので、この日は新岩国駅までの途中のお店を狙ってみることにした。

　そこで白羽の矢が立ったのが、こちら「FAM’Sキッチンいわくに」。農協が手掛ける販売所と飲食店の複合施設らしい。
　歩行者を危険に晒す道路及び交差点の構造や運転者達に難儀したが、距離そのものはたいしたことはなく、歩くこと数分で目的地へ到着。

　さっそくイートイン部門へ行ってみると、食事の提供と店内飲食は休止中。あちゃ～。ソフトクリームの持帰りのみの営業とのこと。
　選択の余地なし。「がんねソフト」（290円）を買い、寒空の店外でいただく。
　「がんね」とは、近くの美和町の「岸根栗」という銘柄栗らしい。たしかに栗の味がするソフトクリームだった。うまいことはうまい。でもこのソフトクリームで凡百の栗と岸根栗との違いは自分には分からない。
　ソフトクリームが食べたい人は栗の味がすることは面白く感じるかもしれない。栗を味わいたい人はソフトクリームに織り込むのは勿体ない気がするかもしれない。自分はどちらかというと後者だろうか。

　何か他に腹の足しになるものはないかと物販部門を覗く。
　商品は生鮮農作物や一次加工済食材が主だが、わずかながら総菜コーナーのようなものもあり、すぐ食べられる料理の完成品が弁当形式で少し並んでいる。そこで好物のお好み焼を見つけたので飛びついた。
　それが「岩国れんこんお好み焼き」（300円）である。
　他に「岩国れんこんきんぴら」（92円）もピックアップ。
　また、洋菓子やパンの売場に並んでいた「里山カフェ　HAKU」製の「岸根栗とアーモンドのパウンドケーキ」（2,160円）もお土産に購入した。クレジットカード決済可。

　食事にも使えるテーブルが、いつも閑散とした新岩国駅内にあることを思い出したので、思いのほか混雑していた「FAM’Sキッチンいわくに」をサッサと退出し、新岩国駅へ向かった。
　地図で確認した最短コースを辿るも、途中の御庄橋が全面通行止めになっていた。引き返して下流の新御庄橋へ迂回する破目になった。ずいぶん余計に歩かされたから、鞄の重さをはじめ、ありとあらゆるものを呪った。畜生め。それでも新岩国駅へは想定の範囲内の時間で着いた。ここでれんこん料理二品をいただく。

・「岩国れんこん お好み焼き」
　新岩国駅や岩国インターチェンジは山の中だが、南岩国駅あたりには低湿地が広がっている。そのあたりでれんこんが盛んに栽培されている。れんこんは岩国の名産品とされている。
　それを活かすべく開発したお好み焼らしい。
　混ぜ焼の長方形のお好み焼が二枚重ねになっていた。
　二枚とも上面にはオタフクソースを思わせるソースが塗られている。上側の一枚には、マヨネーズと青海苔もかかっている。
　躯体を構成するものは、白菜、キャベツ、岩国産れんこん、小麦粉、卵、かつおぶし、塩こしょう。れんこんだけでなく白菜も入るのがもうひとつの特徴といっていいだろう。
　れんこんは、微塵切りにされたようなものが見て取れる。ただ、れんこんは「すりおろし」と謳われているから、ほかに、完成品を見ただけではわかりにくい擂りおろしたものも生地に混ざっているかもしれない。
　粉は少なめだろう。
　野菜の骨格を萎びさせず腰砕けにしていないし、そこに生じる野菜同士の空隙を生地で埋め尽くさず保持し、でもバラバラにならないよう綺麗に全体を一つにまとめているという、なかなか見事なもの。
　食感は軽やかにして滑らか。微塵切りのれんこんは、強すぎず邪魔にならない程好いサクサク感を発揮している。ほのかな粘りもいいし、もちろん味もいい。意外とふわふわ感もあるのは、ひょっとすると、れんこんには山芋と似たような効果もあるのだろうか。
　また、白菜も旨みの供給源として巧く使われていたように感じられた。
　奇をてらうだけの企画モノに終わらず、想像以上にしっくりくる、纏まりのいい、そしてちゃんと特色の利点を感じられるという、上々の出来栄えだったと思う。レシピを考えた人のセンスのよさに感心する。
　これはぜひアツアツをいただいてみたい。このレシピで食べさせる飲食店はどこかにないのだろうか。あるいは、自宅での自作で再現を試みても面白いかもしれない。

・「岩国れんこん きんぴら」
　れんこんの中薄の輪切りのきんぴらである。少しだけにんじんも混じっている。
　れんこんの食感をストレートに楽しめる。モチモチタイプではなくシャキシャキタイプのれんこんが使われている。粘りは程よい。鷹の爪が効いていてピリリと辛いのがやたらに嬉しい。ごま油の風味もよくあう。

　帰宅してから、家族で「岸根栗とアーモンドのパウンドケーキ」をいただいた。
　直方体の躯体の内部に栗を仕込み、表面には薄切りのアーモンドと砂糖が散らされている。
　製造者のパンフレットによると、以下のようなことが謳われている。
　「小麦粉、バター、砂糖、卵の4つの材料は地元や国産にこだわる。卵は、山代地鶏の有精卵であり、山間の広い敷地を走り回って育った地鶏の卵。発酵バターは、特有の風味とコクがあり、香ばしい焼き上がり。砂糖は、きび砂糖で、ミネラル豊富で素朴な風味とソフトな甘みが特徴。栗は、美和町の岸根（がんね）栗。和栗の中で最大級。大粒でつややかな実は甘みが強く質・量ともに希少的存在。一週間かけて熟成させた渋皮煮を大増量して使用。」
　生地は、ほんのり軽い甘さ、しっとりとした食感だった。香ばしさとやらは感じない。内部に仕込まれた岸根栗なる栗は、たしかに大きめ。数も奢られているほうだろう。渋皮煮ということだったが、素材の味を隠してしまうほどの強い味付けではなかったのが自分にとっては幸いだった。また、いただく前はアーモンドと栗が同居して焦点がぼけたりしないのだろうかと思ったが、いただいたらそうでもなかった。