ここは別世界のよう。時間がゆったり流れています : YAMA

グルメな友人が、ここのお店が評判がいいので行きたいのよ～。と言っているのを聞いて、食べログで調べてみたところ大変評価が高い。静かな一軒家レストランということで、いつか特別な時に来ようと思っていました。

この日は私と主人の、１７回目の結婚記念日でした。
子供が生まれてからは、結婚記念日もお祝いするどころではなく…末娘が幼稚園に入ってから、ようやく二人で食事ができるようになって、これで４回目の結婚記念日ですね。
１年目はフレンチの「エル・ダンジュ」、２年目はイタリアンの「ル・ムー」、３年目は家族ででしたが「ブラッスリー　オコジュ」。いずれも記念日にふさわしいお店でした。さて今回は…。

人気の店と聞いていたので、２か月前に電話予約をしました。そこまでしなくても大丈夫なのかもしれませんが、３人の子供の帰ってくる時間が遅い日を考えるとなかなか行ける日がないので、早く手を打っておこうかと。
この時、ご主人が電話応対してくださったのだと思いますが、正直…ちょっと不安になりました。少し事務的で無愛想な感じがしたからです。行く当日にバスでの行き方を聞いた時も同じ印象でした。
でも、実際お会いして話してみたら、気さくで優しく、お話の楽しいシェフだったので、ほっとしました。うちの主人もそうなのですが、電話で話すのが苦手（顔が見えないからでしょうか）なタイプの方なのかもしれません。

この店は多摩市の中でもかなり行きづらい場所です。バスは通っているのですが、多摩センターから出ている一系統のみで、１時間に２本くらいしかないのです。駐車場はありますが、車で行くとお酒が飲めないし…。
一か八かで自宅近くからバスで多摩センターまで行ってみたのですが、お店のほうに行くバスが見えていたのに目の前で発車してしまい…、これでは予約時間に間に合いません。
多摩センターからはタクシーでワンメーター位だとお店のご主人に伺っていたので、タクシーに乗ることにしました。
タクシーに乗ってしまえば確かにすぐで、５分ほどで到着しました。ただ、かなりわかりづらい場所なので、「東京医療学院大学」を目印に来ると良いと思います。最寄りのバス停の名前も「東京医療学院大学」です。

タクシーにはカーナビがついていたので、住所を入力したら店の前でおろしてもらえましたが、降りてみても「本当にここ？」という感じです。普通の一般の家にしか見えない…というか、失礼ですが、ややボロな家に見えます。かなり築年数は古そうなうえに、ほぼツタに覆われています。庭も整えられていますが自然風で、けっこう草の多い感じです。
一軒家レストランということで、勝手に瀟洒な洋風の建物を想像していましたが、全然違って「日本の古い家」って感じです。
電話の印象があったので「大丈夫かな…、」と微妙に不安に。(笑)

しかし、中に入ったらその印象は一変しました。
白いしっくいの壁にややモダンなレンガ色のタイルがちりばめられています。端正に並んでいるテーブル、陰影のある室内。大きな絵も飾られています。全体的には南欧風なのでしょうか。
窓からは、外の庭の風景が絵画のように切り取られて見えます。外からはちょっとぼうぼうに見えたツタも、中から見ると「窓の額縁」の飾りになっていて素敵です。

店内にはクラッシック(現代曲のクラッシック風アレンジもありました)が流れています。
思わず深呼吸したくなるような、静謐感があります。

私と主人は店のオープン前に到着したのですが、その直後にもう１組、後から２組入ってきて、最終的に空いているテーブルはひとつだけとなりました。

ここはランチは１種類なので、頼む料理を考える必要はありません。
最初にドリンクを注文しました。スパークリングワインがよかったのですが、メニューになかったので（聞けばあったのかもしれませんが）ハウスワインの白ワインのデキャンタを注文。北イタリアのワインだそうです。
このワインは癖がなく飲みやすかったです。やや辛口で素直な味、味にふくらみがないのが少し残念でした。
デキャンタを頼んだのですが、ひとり一杯ついだら残りはほとんどなく…、せめて一人２杯くらいの量が欲しかったところです。ボトルがあればよかったのですが、メニューにはありませんでした。あるかどうか聞いてみればよかったかな。
結局デキャンタをもう１回おかわりしました。アルコールドリンクメニューはハウスワイン以外はビールとカクテルのみだったので、もう少しバリエーションがあってもいいのではないかと思いました。

最初に出てきたのが前菜盛り合わせ。３種類の前菜が美しく盛りつけられています。
イタリアサラミは上質なうまみのある味。かなり薄く切ってありますが、これだけで十分においしい。マグロのタルタルとえびはフレッシュな味わいです。ポークリエットは、主人いわく「なんかチャーシューみたいな味しない？」。確かにリエットにしては味付けが濃く、やや中華風の味がします。でもこれはこれでおいしく、お酒が進む味ですね。(笑)
添えられた野菜も新鮮で上質です。ミニトマトがぐっと冷えていて、ジューシィで美味しい！
この前菜だけで、この店のレベルの高さが見てとれました。この近辺ではかなり値段もレベルも高いほうのフレンチ（都心と比べたら安いのでしょうが…）「エル・ダンジュ」にひけをとらない感じです。

次は冷製のパプリカのスープ。オレンジ色のポタージュスープにコンソメジュレで模様が描いてあり美しいです。私と主人は違う模様でした（写真）。
最初はパプリカの苦みが少し気になりましたが、飲み進むとうまみのほうが感じられるようになり、なかなかおいしいです。

そしてメインの「きのこのデュクセル軽いクレマスパゲティーニ」。
サーブしてくれた奥様は「３種類のきのこが入っています。エリンギ、しいたけ、しめじを細かく刻んでソースにしたスパゲティです」とのこと。今調べたら「デュクセルというのは、マッシュルームをみじん切りにしてエシャロットや玉葱のみじん切りを加えてバターでゆっくりと弱火で炒めたもの」なんだそうです。あと「クレマ」は「泡」なんですね。そういわれてみればソースはちょっと泡立ってたかな？
このきのこのソース、おいしいです！パスタとよく合っています。きのこのパスタというと、けっこうきのこが大きく入っているものが多いですが、みじん切りだとスパゲッティにからみやすくていいですね。３種類のきのこが混然一体となっているので、何が入っているのか味だけだとなかなか判別がつかないのですが、そこがかえっていい感じです。
粉チーズもかかっていますが、粉チーズの味はあまり強くありません。コクが加わっている感じです。
ちょっとスパゲッティの麺のゆであがりが固めだったので、あと一息柔らかくてもいいと思いましたが、それ以外は◎をあげたい味でした。

最後にデザートの白梅のソルベとフルーツ。
なんとこの白梅のソルベ、庭で取れた梅を使ったものだそうです。すごく「梅の味」がします。主人いわく「こんなに野趣のあるソルベ食べたの、初めてかも…。」
まるで”おばあちゃんが庭で収穫してきた梅を「食べるか？」って言われてもらってそのままかじった感じ”なんですよ(笑)。けっこうすっぱくてパンチのある味です。これは多摩の店ならではって感じですね。都心の高級イタリアンではこんなデザートは出ないでしょうね(笑)。

ソルベに添えられているフルーツは、パイナップルとオレンジとメロン。美しく飾られてどれも上質な味でした。ソルベの味が強烈だったので、それと合っていたかというと微妙ですが…。(笑)
デザート好きな私としては、できればケーキとかティラミスとかが欲しかったので、ちょっとさっぱりしすぎかな？という感想です。

そして〆のドリンクは、主人がエスプレッソ、私がコーヒーを頼みました。
エスプレッソのカップがユニークです！（写真）イタリアの作家の作品でしょうか？こういう絵は日本人には描けないなあと思いました(笑)。そしてこのエスプレッソはかなり濃厚で、おいしかったです。
コーヒーもイタリアンらしく深煎りでコクのある味です。かなり色も黒いです。最近こういう感じのコーヒーはあまり飲んでいませんでしたがおいしかったです。上質な豆をとても丁寧に淹れていますね。

ひとつだけ気になったのが、奥様の接客が少し固く感じられたことです。料理内容などについてこちらから話しかけても、必要なことのみという感じで、あまり話がはずみませんでした。他のお客さん（たぶん何度か来ている方？）にはフレンドリーに接していらしたので、少し人慣れしないと固い感じなのかな、という印象でしたが…。サーブの仕方などは適切でしたので、もう少し、温かみのある接客だとなおよかったですね。
ご主人のほうは話したらとても気さくな方で、梅の話などいろいろ教えていただきました。あの電話の印象はなんだったのだろうという感じです。

店内はひとつのテーブルをのぞいてお客さんがいましたが、みなさん静かに食事をされていました。テーブルの間隔も広くゆったりとしているし、厨房はご主人だけ、サーブは奥様だけ。静かにクラッシック音楽が流れている、喧噪とは無縁の世界です。
時折、窓から見える緑に癒されながら、ゆったりと食事ができました。

欲を言えば、金額が上がってもいいので、品数はあと一品あってもよかったですね。もう少し長い時間、この空間で食べる幸せを味わっていたかった、という感じです。

店内の雰囲気はもちろん、料理もどれもおいしく、これでコース1890円はコスパがいいと感じました。ワインは量と質からすると少し割高な感じがしましたが、全体的にはとても満足のできる内容でした。
夜もきっと素敵でしょうね。いつかまたこの空間にお邪魔させていただきたいです。