今や行列店に！ キッチン「フジランチ」の名物ハンバーグカントリー。 : フジランチ

　ヤキメシ、ウインナーカントリー、ミックスランチ……もうメニュー表にはありませんでした。確か「ミックスセット」が最高峰で唯一1,000円越えのお品だったと記憶してます。

　しばらく青春の笑い話にお付き合いください。30年ほど前にフジランチにはスタンプラリーがありました。確かスタンプ20個？集めるとその最高峰定食「ミックスセット」が無料で食べられるものでした。当時お店の主力は500円台〜800円台。学生にとって高嶺の花だったミックスは1,000円超。絶対に手が出ないわけでもありませんが、友人たちと暗黙の掟でスタンプが貯まったら初めてその高嶺の花に触れていいことになっていました。そんなに外食を頻繁にするほど経済的余裕はないのですが、バイト代が入ればスタンプを貯めに通ったのです。ミックスをオーダーしてしまえば済むのに、結果的に何千円もかけてスタンプを貯めていくのです。いや実際はスタンプが目的ではありませんよ、ボリュームある洋食料理のトリコだったのです。ちなみに私は2回に1回は「ヤキメシ」でした。
　とある日、3人で食べに行くことになっていましたが仲間の1人が広島出身の友人を連れてきて4人で行った時のことです。それぞれ「ハンバーグカントリー、ひとつ」「ヤキメシお願いします」「チキンカツのライス大盛りで」などとオーダーをします。最後のひとり、その広島の彼はこともあろうに「ならわしゃミックスじゃ。お母さん、わしゃミックス！」……そ、そんな簡単に…ダメェ…
　数ヶ月後に私たちは何とかスタンプ20個集めてミックスをいただくことができました。最高の優越感と満足感に浸った記憶はありますが具体的に何がミックスされていたのかは今となってはよく覚えていません。とにかくミックスセットは私たちの夢だったのです。現在はスタンプもミックスもありません。

　…その前に第一、国分寺北口、変わりすぎでしょ！ 国分寺スターレーンはどこ行ったのさ。
　あと関係ありませんが武蔵境にもフジランチ支店がありましたが今はどうでしょうか。あそこも一度訪問したことがあります。

　さて回顧を終えます。冬の雨、傘を持たずに家を出た私は濡れながら外で15分ほど待ちました。なんと今や行列店とは知りませんでした！ 細々と経営されているかと思ってきた私に、喝！ 大繁盛店じゃないですか。なんか嬉しいですね。
　そのキッチンの扉を開ければ…おおお！ 確かシェフはH原K也さん、奥様はS子さん！ 変わらぬシルエット！ アンチエイジングの極み！ お元気そうで本当に嬉しく思います。本当に良かったです。
　店員がお一人増えています。息子さんでしょうか、バイトの学生さんでしょうか。もし息子さんだとしたらぜひこのお店の味を継承して欲しいと切に願います。これこそ一子相伝。


●「ハンバーグカントリー」¥800
　女将さん曰くこれをオーダーするのは古いお客さんなんだそうです。ズバリです。ちなみにハンバーグカントリーとはひき肉の玉子炒めです。昔はウインナーカントリーと、確かもう一つカントリー系があったように記憶しています。
　ナポリタンの上にハンバーグカントリーがどっかりとプレートを覆っています。これこれ！ このケチャップも懐かしー。このケチャップそんなに酸っぱくないんです。おそらくオリジナルのデミグラスとのミックスソースかと勝手に推察しております。ハンバーグの形はなく、ハンバーグを作る過程のひき肉を玉子と混ぜて炒めるというそれほど複雑な調理の料理ではないのですが、試しに家でやってみたのですがこの深みは出ませんでした。舌の上でライスと絡み合う禁断の抱擁。うんまい！ むしろ昔より美味しいのではないか？
　昔のように量は食べられないのでライスは小ライスです。それでちょうど良し。

　黙々と粛々と食べ進めます。食べている最中は昔のことなど思っている余裕はなく心から集中して目の前のカントリーと、そしてフライパンを操るマスターの背中と対話しています。いつもより食事が長い時間に感じました。


　ごちそうさまでした。女将さんに昔の思い出をお話しすると嬉しそうに返して下さいました。もちろん私を覚えているわけはないのですが、ヤキメシやスタンプのことなど懐かしんでいるとマスターも嬉しそうに会話に参加してくださいました。とにかく変わらずお元気でいてくれたことが私には何より嬉しかったです、と伝えました。
　お店にとっては現在のご常連こそ感謝すべきお客さんなのだと思いますがオールドファンも大切にしてくださる温かいご夫婦です。とても良い時間を過ごせました。これからもお元気で。