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店名 |
掲載保留
マルタカ
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ジャンル | うなぎ、どじょう、日本料理 |
住所 |
このお店は「荒川区南千住3-41-7」から移転しています。 |
交通手段 |
JR常磐線、東京メトロ日比谷線、つくばエクスプレス【南千住駅】西口 徒歩2分 南千住駅から127m |
営業時間 |
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。 |
予算(口コミ集計) |
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利用シーン |
こんな時によく使われます。 |
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初投稿者 | |
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荒川区南千住7丁目。南千住で美味い鰻を食すなら、名店との誉れ高い尾花の名前を挙げる人は多いだろう。こちら食べログレビュアーの投稿数も増える一方、まさに評価もうなぎ登りか。尾花に行ったことのない私が、この店を論評する資格はもちろんない。ただ今年の冬、昼間でも気温5度という凍えるような寒空の下。店の前を冷やかしがてら通り過ぎることはあったが、並んでいる人たちを見てつくづく感心したのを思いだす。5分以上店の外で並ぶくらいなら、登亭で充分だと思う私には、レビューする日は永遠に訪れないのかもしれない。
仕事終わりの平日の夜。JR南千住駅を降り立った私は、夕食をどうしようか途方にくれていた。私のお気に入り、南千住仲通りで食事を摂ろうかどうしようか考えながら、コツ通りを千住大橋方面へ歩いて行くと、油断しているとうっかり見過ごしそうなわき道を発見。松尾芭蕉じゃないけれど、光が灯るその先は奥が細道。
明りにつられてどんどん奥へと進んでいくと、うなぎどぜうと書かれた袖看板に気付く。丸のなかには「高」の一文字。まるたかと呼ぶのだろうか。外観も新しく、まったく事前情報のない店。ここは直感を信じて、引き戸を開ける。「いらっしゃいませ」、店内に響き渡る凛とした声。その声の主は、甚平タイプの白い板前調理服に身を包んだ40過ぎの若きご主人。カウンター内厨房にてこちらに振り向く。奥には70過ぎのおかみさん、髪をきっちりメイクもばっちり施したその女性は、ご主人の母親らしき年齢差を感じさせる。
店内は清々しい空間を保ち、鴨居には弓張り提灯が飾られて、江戸の風情を仄かに感じさせる。提灯には、屋号とうなぎ、どぜうの文字がそれぞれ描かれていた。後ろの壁にぶら下がるハンガーにコートを掛けて、入り口手前の誰もいないカウンター席に腰を下ろした。すぐさまおかみさんが、私の手元に割り箸と紙おしぼりを置く。せっかく店内の造りも悪くないのに、おしぼりはタオル地に拘って欲しかった。メニュー表を眺めると、うな重はなんと1種類のみ。そのほか蒲焼や白焼のメニューはあるものの、酒の肴を主体とした一品料理が並ぶ。そのラインナップから、こちらは鰻屋というよりも割烹料理の店と判断。まずは様子を見るために、レモンハイ(380円)とうな重(2100円)を頼む。
注文を受けてさっそくご主人とおかみさんが慌ただしく動き出す。おかみさんの手により、レモンハイが運ばれてきた。心地よい炭酸、割っているのはハイサワーかもしれないが、つまみがなくても間は持つだろう。注意深くご主人の作業を観ていたわけではないが、鰻はすでに捌いたものを使用しているのだろうか。ごそごそと鍋を動かしている姿が肩越しに見えた。
トイレに行きたくなって店内奥を除くと、突きあたりは座敷になっていて、揃えられた靴が並ぶのが見える。先客がいるのだろう。突き当り右奥のトイレへ向かう際、座敷には3人の客。上着を脱ぎベストにネクタイ姿の部長クラスか、恰幅のいい脂ぎった男性が上座に座り、その正面には20代らしい男女社員が並んでいる。部長らしき男性、清酒の入った升を持ったまま仕事論をぶっているのだろうか。うしろ姿で表情は読み取れないが、真剣に耳を傾ける二人。
席に戻り、カウンター脇に備え付けられたテレビでNHKの報道番組を見ていると、内側の調理場ではご主人が包丁を研ぎ始めている。砥石との擦れる音と、シューシューと蒸気の立つ音が重なりあう。手元の腕時計で確かめると、すでに15分近くは蒸しているようだ。しばらくしてタイマー音が鳴り響いた。ご主人は両側に取っ手のある大型鍋を持ち上げ、後ろのカウンター台に置き、調整バルブを緩め減圧しはじめる。そのまま放っておくこと数分。じっくりと蒸らしの時間なのだろう。火を起こす準備をしてから圧力鍋の蓋を開け、鰻が置かれた皿を取り出し焼き台へ。
そこからは焼きの行程へと進んでいく。こちらから手元が見えないが、うちわでパタパタパタと扇ぎはじめた。そして最後は左手でうちわを止める。それを小気味よくリズミカルに繰り返す。法則性はあるのかと思って、扇ぐ回数を数えてみたが、特に回数は決まっていなかった。それほど、テンポのいい所作にみえる。ときどき扇ぐのを止めうちわを小脇に挟み、顔を近づけ鰻の焼き加減を凝視する真剣な眼差し。レモンハイはほとんど空の状態。心地よく酔いが回ってきたせいか、うな重への期待度もゆっくりと螺旋状に上がっていく。
すでに焼きあがりは充分なのだろう。「はいっ」とおかみさんに声をかける。すでにセットされたお盆に乗せられたお重を手に取り、炊飯器からご飯をよそうのはおかみさんの役目。そのお重を息子に渡すのは愛情のバトンなのだろうか。背中で見えにくいが、鰻をお重に乗せているような動き。蓋を閉めて、お盆に乗せたうな重をおかみさんが運んでくる。「お待ちどうさまです」、若きご主人の一仕事終えた自信の窺える声と感じ取った。
注文してここまで、少なくとも25分は経っている。私にとって無名の鰻料理の店にも関わらず、ここまで時間がかかったのはこれまで記憶にはない。これは商店街の宝くじでいったら特賞を引き当てたかもしれない。期待度は酔いも手伝ってますます高まる。蓋を開けると香ばしい蒲焼の湯気が顔面を覆う。見た目からして焼き加減も良さそうだ。さっそく一口大の大きさで、箸を鰻の身に差し入れた。皮までしっかりと切れる。ご飯と身を一緒に口に含むと、川魚特有の香気が鼻腔を突き抜ける。蒲焼のたれは甘辛で少ししょっぱめ。個人的には許せる範囲だ。鰻の身はふっくらといった印象が強い食感。しばらく食べ進んでいくと、何故だか蒲焼とご飯のバランスが悪い気がする。ご飯の炊き方は私好みの固めだが、残り半分近く、鰻のたれが浸み込んだ飯粒を見つめること、砕けてしまった米粒がかなり目に付くのに気づく。原因は恐らくこれなのだろう。
それにしても仕入れている米の品質か、それとも炊き方に問題があるのだろうか。おかみさんやご主人も気づいていいはずなのだが、疑問も残る。結局あと一歩で私のイチオシリストに入り損ねてしまった。うな重と一緒に差し出された煎茶を飲んでいると、ご主人は調理場と飲食スペースを隔てる段差に腰掛けて、夕刊を読んでいるようだ。私の座る角度からは白い調理ズボンの足だけが、通路にはみ出て見える。足先には下駄と白い足袋が覗いていた。
残念な気持ちを断ち切るがごとく、コートをハンガーから取り出す。ごちそうさまですと声をかけると、腰掛けていたご主人はやおら立ち上がり、新聞を置いて調理場のいつもの定位置へ向かう。おかみさんからおつりを受け取り、出入り口まで歩いていく途中、「ありがとーございましたー」と、胸のすくような声でお見送り。
今夜はコートがなくても寒くはなさそう。この場所からはかなり距離があるが、自宅まで歩いて帰ることに決めた。常磐線の高架をくぐり抜け、隅田川貨物駅を囲むようにして形成される、ドナウ通りを歩いていく。すでに10分以上は歩いてきたが、お茶で口の中の脂をさっぱりと洗い流したにも関わらず、鰻の力強い香りは舌の上で未だ余韻を残していた。