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店名 |
家谷酒店(いえたにさけてん)
|
---|---|
ジャンル | 立ち飲み |
お問い合わせ |
03-3891-3183 |
予約可否 |
予約不可 |
住所 | |
交通手段 |
JR常磐線三河島駅より徒歩8分 三河島駅から504m |
営業時間 | |
予算(口コミ集計) |
~¥999
~¥999
|
支払い方法 |
カード不可 電子マネー不可 |
席数 |
6席 |
---|---|
個室 |
無 |
貸切 |
不可 |
禁煙・喫煙 |
全席喫煙可
2020年4月1日より受動喫煙対策に関する法律(改正健康増進法)が施行されており、最新の情報と異なる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。 |
駐車場 |
無 |
利用シーン |
|
---|---|
サービス | テイクアウト |
初投稿者 | |
最近の編集者 |
|
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▪️お前らM型だな!
1次会の時間まで、かなり空きがあり、友人と立ち飲みでも行こうという話になった。せっかくならディープな三河島をと思い、立ち飲みで検索して出てきたのがこちら。
酒屋ですから立ち飲みといっても角打ちです。
駅からスマホの地図を頼りに、目印の銭湯を目指す。
「あったあった。ここだね。」
中へ入ると、店主と常連さんとおぼしき人がひとり。
「こんばんは。お酒飲ませてください。」
初めての角打ちは勝手がわからず緊張する。入って戸惑っていると、
「こちらどうぞ」
棚の横に案内される。店内は雑然としており、棚の酒もホコリをかぶっていたり、正直綺麗ではない。
角打ちなので、自分で冷蔵庫からビールを取り出し、つまみを選ぶ。ビールはアサヒスーパードライ瓶、つまみはカシューナッツを選ぶ。
店主のオヤジさんは静かに、コップを用意してくれ、ビールの栓を開けてくれた。
まずは乾杯。
カシューナッツの袋を破ろうとしていると、オヤジさんがハサミを取り出すのが見えた。でも、その時にはすでに袋を開けていた。するとオヤジさんはテーブルにある紙を一枚取り出して渡してくれた。新聞広告の裏紙を切った紙。ナッツをそこに出して食べるようにオヤジさんの無言の気づかいである。
見知らぬの客を迎え入れた店内に緊張感が走る。何を話したらいいかわからないまま、少しの時間が過ぎた。
「お前ら、M型だな」
沈黙を破ったのは常連さんである。
僕らは何のことか分からず、きょとんといていた。
「俺は、O型だ。まぁいいからそこに座れ。」
見るとビールケースか何かにダンボールが敷いてあり腰掛けになっている。
「お前ら、リアップ使ってるか?」
ようやく、先程の言葉の意味がわかった。
「お前らは、おでこからハゲるM型だ。俺はてっぺんからハゲるO型だ」
常連さんの口調はきついが顔は優しい。
「リアップは使ったことないですよ」
「あれは効かねーよ。知ってるか?20で成長が止まるって言うけど、頭蓋骨は成長するんだ。頭皮が薄くなるとハゲるんだ。こうやって指で触ってみろ。ハゲてるところは骨を感じるだろ。」
両手の指を立てて、触って見る。
「ほんとだ。薄い気がする。」
友人は髪の毛のあるところは、その分厚みがあるから当然だと、小声でいう。ちなみ友人は髪の毛はフサフサである。
「こいつなんか、80なのに髪の毛バリバリだよ。」
常連さんは、店主のオヤジさんを指差す。
「遺伝なんだよ。薬なんて効きゃしない。俺は薬には詳しいんだ。」
そう言って笑う。
前の銭湯の話や政治の話し、老人の自動車事故の話をしていると結構な時間が過ぎた。帰る時間になったのか
「じゃあ、これで」
と、さっさと帰ってしまった。
なぜか急に寂しくなった感じがする。
少し間をおいて、オヤジさんが話しかけてくる。
「お風呂に入りに来たの?」
どうやら、前の銭湯に入りに来て、ついでによる人がいるらしい。しかし、過去のレビューを見たら、同じように聞いていた。初めての客には、そう切り出すのが常のようだ。
「いえ、この後韓国料理屋さんに行くんです」
「山田屋さんかい?あそこは美味しいよ。肉が違う。毎日トラックで、荷台が沈むくらい仕入れるんだよ。」
「すごいですね。山田屋さんではなく、この先の通りの店です。」
また、静かな時間がくる。
「常連さんは多いんですか?」
「いまはもう減ったね。今の人は一日3回くるよ。この前、アド街にでてからいろんな人が買いにくるよ。北海道からも買いに来た。珍しいお酒があるんだって。うちは、古い酒が多いから。」
「このワインなんかいつの頃?なんて感じですね。」
棚のホコリだらけのワインを見ていうと
「それはもうだめだね。買いに来るのはウイスキーだよ。うちは廃業した店から引き上げたりしてたから古いのが倉庫にたくさんあったんだよ。でも今ほとんどうれちゃったかな。仕入れた当時の値段で売ってるからね。この前、ダンボールを4つも5つも持って買いに来た人もいたよ」
「すごいですね。」
オヤジさんは、奥から雑誌や本を取り出してといって見せてくれた。散歩の達人や吉田類の本だった。
「雑誌にも出たんだよ。もう少しうしろのページ。取材に来たモデルさんは、この後3回くらい来てくれてお酒も買ってくれたよ」
「なかなかいい人ですね。」
オヤジさんはとても嬉しそうだった。
「今日も取材の電話があったよ。息子が出たからよくわからないけどね。料理は何がありますかって聞かれたから、お店で売ってる乾きものを買って食べるって言ったら、また連絡しますだって。」
最近の角打ちは立ち飲みブームでちょっとしたつまみを出すところも多い。だからオヤジさんはうちは飲み屋じゃなく酒屋だって言いたかったのだろう。
「昭和元年創業なんだよ。親父が始めたんだよ。お前がつげって言われて。だから俺だけ商業高校出だよ。」
そう言って今度は奥から古い写真を出してきた。
「これは戦前の店の前」
そこには、3歳くらい子供と兄弟、家族が写っていた。
「これオヤジさん?かわいい。」
「そうだよ。僕らは小さいから戦時中は疎開したんだよ。これは姉と兄。これはもっとあとのね。」
そう言って別の写真を取り出した。
「お姉さん、美人ですね。女優さん見たい。」
古い写真を見ていると実家に帰るといつも古い写真を取り出して説明する母親のことを思い出した。
オヤジさんは嬉しそうだった。
「うちは古いお酒があるから懐かしがってくる人もいるよ。このロバートブラウンなんか45年前に仕入れたんだ。ラベルは汚いけどね。こっちは棚にあったからタバコのヤニで真っ黒。こっちは1級の方だね。当時売れなかったよ。」
「どうしてですか?」
「背が高いんだよ。店の棚に入らないんだ。オールドが売れてたからオールドの高さに合わせて棚を作ってたからね。」
「オールドはよく飲んだな。ちなみにお幾らなんですか?」
「1500円。昔のままだよ」
「じゃあ、お土産にいただきます。」
オヤジさんは、汚れたボトルを綺麗に拭いて、袋に入れてくれた。
「そろそろ時間なので、おいくらですか?」
「500円」
「ごちそうさまでした」
僕らはウイスキーと飲み代を払い、店を後にした。
いつまでも残って欲しいお店である。
※後で調べたらロバートブラウンジュニアは古酒専門店で2000円ちょっと。当時の販売価格は1700円。
ウイスキーは瓶の中で熟成するらしい。45年前のウイスキーはどんな味なのか楽しみでもある。