日式とも大陸式とも違う優しい中華 : 広味坊 千歳烏山本店

初訪問。
千歳烏山駅から徒歩7〜8分ぐらい。　静かな住宅地にある少しお高めの中華(?)料理店。


某洋菓子屋に行く前にコチラで昼飯にします。昼営業開始直後に二人でフリー凸。どうにか入れましたが、なんとソコで満席。店内空席あるよに見えたが、全て予約席だったようで後から来たお客さんは断られていました。　他のテーブルの様子を見ると、アラカルト注文でも予約できるみたいなんでランチでも予約推奨ですなこりゃ。


店内は少し洒落た空間。とはいえ緊張するほど豪華ではなく、さりとて町中華のよな雑多な空間でも無くて 日常の中で少し背伸びをして行くよな雰囲気の店だ。


平日ランチは定食メニューがあるそうですか、土日祝のランチはアラカルト又はコース料理。　私は汁ソバに炒めモノや点心追加で考えてましたが、メニューを見ると気になる料理が色々あるな……
豚ヒレ青椒肉絲?
リンゴの肉巻き酢豚?
スミイカと春野菜の塩炒め?
これはコースにしてアレコレ食べるほが楽しめさうだと思い、アラカルトからコースへ目標変更。　残念ながら一番安いコース(水餃子鍋？！)は要予約との事だが、中間の価格のコースは予約無しでもオーダー可能(ただし2名様〜)との事なのでソレで決定。

前菜
点心
肉料理
魚料理
野菜料理
〆炭水化物
デザートという構成で4378円(だったハズ)。会計額からしてサービス料無しのようだ。
飲み物は温かいお茶を淹れてくれましたのでソレで済ませる。　このお茶も単なるお茶ではなくて、お花か何かの爽やかな香りのするお茶でした。


最初のお料理提供まではけっこう待たされましたが、そこからはテンポ良くお料理が出てきました。
まずは前菜盛り合わせ。
翡翠茄子の冷菜
よだれ鶏
ヒラメの中華風刺身サラダ
中華風刺身サラダは正直凡庸といった印象だっが、茄子とよだれ鶏はけっこう旨いな。
茄子は蒸してからちょっとピリ辛のタレで合えてあるのだが、茄子がよい具合にタレを吸い込んでたまらん旨さになっている。蒸し加減もドンピシャだし、タレの味も四川のよなバリバリに主張するカラシビでわなくて控えめなピリ辛で私の好みドンピシャだ。

よだれ鶏はしっとり蒸した(茹でた?)鶏肉に辛味ダレがかけてあるのだが、このタレが独特。一凛とかのよなシャバシャバした辣油ベースのタレでわなくて、甘味噌をベースに辣油とナッツと大蒜チップを加えた粘度のあるタレになっている。甘味噌ベースなので辛いというよりはむしろ甘い。で、後からちょっぴり辛いタレ。痺れはほとんど無い。粘度のあるタレなので肉との絡みも良いし、しっとり仕上がった肉も良い状態だ。これもかなり美味しい。　というか、四川料理店で食べる本式よだれ鶏よりも私はコチラのが好きだわ。
前菜のあまりの旨さに負けて生ビール追加発注。これは酒あったほが絶対に良いヤツだ。


続いて登場の点心。
長ネギと香菜のタレで味付けした水餃子だ。
水餃子はぷっくり丸々と太った独特のフォルム。中には香味野菜を多めに加えたと思われる豚肉のアンがみっちり詰まっている。
皮が美味しい(⁠灬⁠º⁠‿⁠º⁠灬⁠)⁠♡　表面は滑らかなんだけど、適度な弾力と厚みのある皮だ。たぶん自家製の皮だなコレ。アンの出来も良いが、皮のテクスチャの心地良さのほうが印象強い。
タレは醤油の色は濃いが、食べてみると塩分はかなり控えめの優しいお味。ネギと香菜の香り主体ですね。先ほどの前菜達もだが、ここんちの優しい調味は私の好みに合ってるわぁ。　
またこの時点でピンと来たのだが、ここまで課長さんの存在を全く感じない。もしかして無化調かココ?


お肉料理は何かと思っていたら……
なんと北京ダックが出てきたΣ(ﾟ∀ﾟﾉ)ﾉｷｬｰ
この価格のコースで北京ダックとは良い意味で予想外だわさ。
お店の人の説明によるとシンガポール式北京ダックとの事。皮だけでなく肉もついてるし、マンゴーを一緒に巻いて食うのも初体験。　味噌やキュウリは一緒やけど。
これも旨いなぁ♪
肉付きなので北京式に比べてやや脂が多いんだが、家鴨の脂ってそれだけで販売するぐらい旨いヤツだもんね。マンゴーを一緒に巻く事で脂っぽさも消えるって寸法か。
またピンの食感が良いね。パサっと乾いた感じのないピンはココでこまめに焼いてる事の証。こゆ部分で手を抜かない店は信用できるよ。
にしても昼から北京ダックとは贅沢やな（笑）


お魚料理はスミイカと春野菜の塩炒め。
春野菜の緑色が綺麗に出ていて鮮やかな色彩の皿ですね。イカへの細かい包丁細工も見事。しかも海老まで入ってやがる。
イカは適切な火入れで甘味を引き出されているし、野菜達はそれぞれ持っている香りがきちんと活かされている。
野菜やイカを殺さぬよに塩味は控えめ。
これも良いなぁ。　イカは頭　胴体　脚と色んな部位入っていて食べごたえあるし、百合根で食感のアクセント加えてあるのも巧みだわ。　海老がイマイチだった事が惜しい。


ラストは野菜料理。
筍とマコモダケの炒め物。　ずいぶんシンプルな炒め物だなぁ……と、提供時にはテンション↓だったが食べてみたらコレがこの日の一番でした!!
筍は下処理バッチリでエグ味もなく香りしっかり楽しめるし、マコモダケと筍で微妙なテクスチャの違いを楽しめるのも良い。木の芽で香りを高めてあるのもナイス過ぎる。筍には木の芽だよな（笑）
味付けは塩味ベースなんだが、野菜だけの炒め物にしてはしかとした旨味を感じる?　とはいえ課長さんには頼ってないみたいだし…
たぶんコレ、干し貝柱の旨味だな。　干し貝柱そのものか、もしくは干し貝柱ベースで作った醤とかそれ系でコクを出しているんだな。これまた良い味付けだなぁ。


〆炭水化物は炒飯か麺かのチョイスだったので麺で。
麺は辛いのか辛くないのかのチョイスだったので辛くないので。
で、出てきたのが椎茸ソバ。
いや椎茸の厚み……　こんな分厚い椎茸あるんですね。　分厚い椎茸をオイスターソース風味で味付けしたのがドンっと乗ってる汁ソバです。
オイスターソースはそこまで効かせずに椎茸そのものの旨味をしかと楽しめる程度に抑えてある。　シンプルに椎茸が美味ですわ。
またスープも良いね。ベースは上湯のようだが、そこに椎茸の旨味が合わさり凄く深みのあるスープになっている。　こんなん完飲するわ!
麺が平凡過ぎるのが惜しいが、それでも良くできた〆だと思います。

デザートの杏仁豆腐を食べて終了。ちな杏仁豆腐は良くも悪くもありませんでした。ソコが大事なんやけどなぁ…


ぶっちゃけ、某洋菓子屋のついでに寄った店だったのでしたがコレが大当たり。課長に頼らずに素材本来の味を活かした優しい調味という点では「ジーテン」に似た部分ありますね。ジーテンが好きな私には当然コチラもストライク。
コテコテの中華や、課長出しゃばり町中華がお好きな人には向かない店かもしれませんが素材感や季節感を中華の技法で楽しみたい人にはオススメできます。
私もユウササゲ行く時の昼飯はココにしようっと。もちろん予約は忘れずに…ね。


あまりに美味しいので帰宅してから調べてみたら、実は中華では名門と言える店だったのね（汗）
ここんちの創業者の娘さんで二代目が五十嵐美幸さん。TV番組・料理の鉄人で陳健一と名勝負を繰り広げたことでも知られる有名料理人さんですね。幡ヶ谷や熱海に「美虎」という店を出店したため、本店は代替わりして五十嵐 創(イガラシ ツクル)シェフが厨房に立っている。
彼は若手料理人の登竜門的なRED U-35 で
2017 SILVER EGG
という逸材。
だうりで旨かったワケだ……