オペラシティでのコンサート後に : 覇王樹 さぼてん本店 東京オペラシティ店

　日曜日の午後、初台のオペラシティに向かう。
　毎年この時期にこちらのコンサートホールで「日本音楽コンクール」の本選が催されるが、この日はピアノ部門の本選。
　先日の「ショパンコンクール」で2位という快挙を遂げた反田恭平君も、9年前にこのコンクールで優勝したことが飛躍のきっかけとなった経緯があり、彼のような新しい才能の発掘への期待を持って臨む。

　20歳前後の4人の若者がコンチェルトで本選に挑むが、曲目はコンテスタント自身が選ぶので得てして曲目が被ることが有るが、この日はチャイコフスキー・モーツァルト・ラベル・ラフマニノフというバラエティに富み、なおかつ私好みの組み合わせ。
　このご時世のため満席とせず、チケットはひとつ置きに発券されて両隣が空いているので、終始寛いだ姿勢で視聴。
　そのおかげで競演に耳を傾けると同時に曲そのものもしっかり堪能出来て、中々楽しいひと時が過ごせた。

　開演時刻は16時で通常の演奏会に比べ変則的で終演も18時半頃なので、その後に食事をして帰るにも丁度良い。
　昨年は「赤垣」で美味い鰻を食べたが、この日は早めに演奏の余韻に浸りたく地下の食堂街にやって来た。
　結構な軒数が入っており平日は上のオフィス階からのサラリーマンで混み合うが、さすがに日曜の夜は空いている。

　その中で選んだのは、コンサートの折に数回訪れたことの有るとんかつ専門店。
　「さぼてん」という店名は都内随所で見掛けるが、こちらも以前は普通の「さぼてん」で、4.5年前にリニューアルされた際に店名の前に「覇王樹」が付くようになった。
　経営するグリーンハウスの本社がこの上の方の階に入っているそうで、創業50年を機に核となる店舗を設けたいと言う気持ちで、こちらの高級化が図られた。
　内装は他の店よりも豪華で素材にもこだわっているとのことだが、メニュー内容や値段に違いは無いようだ。

　一人だったが壁に鏡が張られた、奥の4人用のボックスシートに通された。
　メニューにはブランドポーク使用のとんかつはじめ、これからの季節のカキフライなどが写真入りで並んでおり、いずれもご飯や味噌汁がセットとなった＇御膳＇が基本。
　
　普段家に居る時、夜には酒は飲むが炭水化物はなるべく控えるよう心掛けているが、今回は外食だがとんかつなので、それに準じて御膳では無く料理を単品で頼むことにする。

　注文は「熟成三元豚豚ロースかつ115g」と「大粒カキフライ2個」。
　これにはキャベツは付かないようなので、別に「春菊の和野菜サラダ」をもらう。
　繊切りキャベツはとんかつには付き物ではあるが、水に晒してビタミンが流れ出た残骸とも言えるので、今回は栄養のバランスも考えてサラダを付けた。

　ビール（ヱビス中瓶）をもらい喉を潤すうちに、10分ほどで網に乗った2種の揚げ物が登場。
　まずはレモンを絞っただけの「カキフライ」から一口。
　粗目のパン粉の衣が立っており、サクッとした食感。
　大粒を謳っているもののそれほど大きくは無いが、中は結構ジューシー。
　小皿に添えられたタルタルソースもまずまずの出来。
　
　ロースカツは1.5㎝ほどの厚さで、肉と衣が一体となった揚げ上がりで、断面を見るとしっかりとした均一な火通り。
　最近はポークをレアで仕上げる手法も有るようだが、豚はきちんと火を通すものと教えられて来た人間には抵抗感がある。
　こちらは十分に加熱されているが、ブランドポークだけあって思いほかしっとり柔らかい。
　最初は塩と卓上に置かれた小袋入りの練り辛子で食べるが、旨味が濃い。
　
　こちらでは昔から、炒り白胡麻が入った小振りのすり鉢に小さな擂粉木が添えられ、これに卓上のソースを混ぜたものでカツを味わわせるスタイル。
　実際に胡麻をあたったすり鉢に、水差し状の器からソースを少量垂らしてみたが、これがドロドロで甘ったるい所謂「とんかつソース」。
　私は昔から素材の持ち味を殺しかねないウスターソース系の味付けを好まず、お好み焼きも自分で焼く時はソースは使わず少量の醤油で仕上げるし、ソース焼きそばも進んで食べたいとは思わず、とんかつやフライ物でも味変させる時に少量使う程度。
　卓上にはキャベツ用の2種類のドレッシングが置かれており、その中から「柚子ポン酢ドレッシング」を足して調合してみたが、これが結構良い味でこれを少量ずつ付けることでとんかつをさっぱりと頂けた。
　
　サラダは文字通りざく切りの春菊と水菜の上に、酢漬けにされた野菜（胡瓜・人参・大根・パプリカ）とグレープフルーツの小角切りが散らされており、醤油味の「山椒ドレッシング」が別添えになっている。
　春菊は青臭さも無く、ドレッシングを加減して掛けると美味しい。
　ピクルスはそれぞれしっかりした味と食感で、良いアクセントとなっていた。

　追加で「デュワーズ ハイボール」をもらう。
　フライ物とサラダは結構なボリュームで、これらを肴での一杯は中々楽しい。

　勘定は3,000円ちょっとで、内容からすればリーズナブル。
　食事処としてはそれなりの値段となるが、呑みが結構安く上がったのは意外。
　エビス中瓶は580円、ハイボールは400円（いずれも税込み）で、デパート内のレストランなどに比べても安めの居酒屋価格。
　小奇麗な店に変わっても、サラリーマンが勤め帰りに気軽に一杯やれる価格設定が維持されているのは、競争が激しい食堂街であることと同時に、上に本社が入居しているせいかも知れない。