名店『八雲』系譜、似て非なるオリジナルの『中華soba』。 : 中華soba いそべ

実は今回は「下丸子」の「奈つやの中華そば」さん（「びぎ屋」さん出身の新店）に開店時刻の11:30ちょい過ぎに伺ったところ並びが無くてラッキーと思ったら土日は「整理券制」になっていて、女性スタッフさんに「今からだと15:10のお戻りとなります」と言われて断念。
整理券は9:00から配布されるようなので並んで9:00に整理券を受け取ったとしても11:30まで待たなければならないので訪問不可能店と認定されました。お店のX情報は事前に確認すべしとの教訓を改めて心に刻みました。

ということで、ここに書くべきではない前置きが長くなりましたが、そもそも訪問を悩んでいた「中華soba いそべ」さんへと思考をシフトしました。
こちらは老舗中華料理店の三代目店主さんが池尻の名店「八雲」さんでの修行を経て2016年にOPENされたお店で、行かねばならぬお店として長らくBMしていたのでちょうど良かったかも知れません。

駐車料金200円を捨てて車で移動し11:53に現着しましたが、店前に並びは無く、カウンター10席の店内には先客6名という状況でした。
券売機にて、「黒旨にこにこワンタン麺」1050円と「味付玉子」100円を購入し奥から2番目のカウンター席に案内されました。出自と比べて随分とコスパが良いですね。
こちらは間口の狭いお店ですが、奥に随分長く、カウンター席が割とゆったり目に10席直線で並んでいます。
店主さんと女性1名の2名でのオペレーションですが端の方の席だったので店主さんの所作等は遠くて見えませんでした。

着席から7分程で着丼です。
丼顔は「八雲」さんに似てますね。
綺麗な形の鶏豚チャーシューが1枚ずつと肉と海老ワンタンが2個ずつで「にこにこワンタン」です。
澄んだ醤油スープに控えめな鶏油が浮いています。

スープをいただくと、キレのある醤油の風味と煮干や節系の魚介が先行する感じでかなりあっさりな仕上がりです。
豚や鶏の動物系はあくまでベース的な感じで、節や昆布の際立つ和風にかなり寄ったスープに感じます。
いかにも無化調的な味わいで飲みやすく、パンチに欠けるとも言えますが丁寧に取られた出汁感たっぷりの味わいで美味いです。

麺は店内の製麺室で作られる自家製の中細ストレート麺で加水率は中程度と思われるツルシコ系の麺です。
啜り心地が素晴らしく良く、噛むと適度なハリと小麦の風味が感じられる美味い麺で、良い小麦を使っているのが素人の自分でも分かるくらい素材と技術が高次元で融合している感じです。
出自は自家製ではないので店主さんの拘りが感じられて素晴らしいです。

チャーシューは綺麗に同じ大きさに整った豚と鶏が1枚ずつ。
鶏は低温でローストしたような胸肉ですが、しっとりと柔らかくスープに合う味付けで美味いです。
豚はモモのように見えるもので、これも煮豚ではなく焼豚のようですが、吊るし焼きのような薫香のあるものではなく、しっとりとしていながら弾力のある歯応えで、繊維質もあり味わいも普通のモモの部位ではない印象でした。
今まで味わったことの無い感じのものでしたが美味いですね。

そして名物のワンタンですが、肉と海老が2個ずつ入っています。
海老の方からいただきましたが、海老のすり身と切り身が混じった餡がツルツルの皮にてるてる坊主のように包まれていて、プリプリの食感と控えめな味付けがスープを吸った皮と相まって美味いです。
肉ワンタンは豚挽肉と思われますが、こちらもしっかりと具が詰まったもので生姜の仄かな香りは嫌味が無く、上品な皮と一体化して美味いです。
これは出自へのリスペクトが感じられるもので技術の継承がしっかりとされているあたりが人気の秘訣でしょう。

極太のメンマはザクっとした歯ごたえですが容易に噛み切れる絶妙な固さに仕上がっていて、ほんのりと胡麻油の香りも感じることができる美味い逸品です。

中央に乗せられていた九条ネギには三つ葉がミックスされていて、そんな小技が意外と好きだったりもします。

味玉は今時100円という安さでしたが、一切の手抜きの無い絶妙な仕上がりのもので、ブランド卵ではないとは思いますが、味付けも茹で加減も完璧で美味かったです。

こちらは元々「たんたん亭」系譜の「八雲」さんの系譜ですが、「八雲」さん系譜のお店は最近どんどん増えていて、「かづ屋」さんのように一大系譜を連ねそうな気配すら漂います。
実際系譜の殆どのお店が食べログ3.7以上の評価を得ています。
中でもこちらは都内では系譜の最古参の貫禄とも思える「自家製麺」の採用や独自の焼豚等、随所にオリジナリティと進化が感じられます。

「八雲」さんの系譜となるともはや「たんたん亭」さんの気配は感じなくなってくるのですが、ラーメン文化の進化の為にはそれもまた良しではないでしょうか。
あちこちで美味いラーメンが食べられるようになるのはありがたいことでしかありません。

ごちそうさまでした。