いただけば分かる京味の系譜なのだ、の巻 : 六寛

水曜日の夜です。

築地です。

今夜はフォロワーのドラミちゃんがオマカセで予約してくれたこちら、【六寛】さんにご一緒しました。

【六寛】・・・、知らんな。

早速、食べログると、築地。
なんかエエやないかい。それに意外に点数は高い。しかもブロンズで百名店やねん。

でも連絡先や住所が非公開か・・・！
なんだかうるさ方のご常連が多そな隠れ家かも。

レビューを読むと、かの有名な【井雪】さんがスッポンメインのお店としてオープンされたセカンドラインだとか。

スッポンね、好き。
エンペラのプニュプニュはちょっと苦手だけれど、付け焼きはうんまいもんな、アハッ\(//∇//)\

そして当日。
新橋駅から築地六丁目の交差点までタクシーで移動し、昭和通りから奥へノテノテノテ。

角に浮かぶ暖色系の灯りを発見。
看板は無く、足下の小さな行灯になんだか意味深なアイコンが控え目に浮かびます。

後でドラミちゃんに教えてもらったのですが、和服の柄などに使われる雪輪紋様なのだとか。よくよく見るとその輪の中に、【六】の文字に読めなくもなさそな意匠が光ります。

ええっ、ここかな？
でも、自信ないな、グフッ。

念のため食べログで外観写真を確認すると、うん、こちらで間違い無さそう。意を決して格子戸を手前に引くと、正面のカウンターにすでにドラミちゃんが着席中。

アイヤァ、短いぞ。四名ほどしか座れない。
聞けば、四名さままでの一組限定のお席なのだとか。以前は横に伸びていましたが、個室を増やすために内装に手を加えられたようです。

これはこれで正面は厨房だし、背中には格子戸もあるので、なかなか良い感じの半個室と言えなくもない。

ドラミちゃんに予約の御礼を伝え、先ずは生ビールで乾杯。

さてさてそれでは本題です。
料理のお写真は撮影禁止なので、ラッコの駄文でご説明します。長めになりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。

そしてご馳走さまでした。


＜まとめ＞
最初の芋茎の吉野葛餡で早くも既視感に襲われます。そのモヤモヤ、お酒の【天領 飛び切り】で霧が晴れ、お造りのお醤油で確信に変わりました。

『このお醤油って、御殿場のチョメチョメ泉ですか？』と控え目にお聞きすると、『ええっ、よっ、良くお分かりで・・・』と苦笑いする、えなりかずき似の脇板。
『京味で使われていたお醤油ですよね。味わいでわかりました』と、ニコニコしながら呟く還暦過ぎの爺さん。
ここから花板、脇板のお二人との距離が一気に縮まり、焼き物の銀鱈をスッポンのミツボネに変えるは、〆のご飯の薬味が追加されるは、なんとも素敵な築地の夜を過ごせました。

後で調べたら【井雪】の親方って西翁の右腕だったんですね。
なんも知らなかったラッコ。孫弟子にあたるのかな、こちらの花板と脇板。
西翁の教えの基本の基が、ここ築地の下街にもしかと息づいておりました。

＜コース内容＞
当初はスッポン抜きの懐石のようでしたが、そのスッポンの話をしているうちに花板から『焼き物をスッポンにいたしましょうか』なんて、なんとも素敵な申し入れ。
でも、待て！
『まさか白甘じゃないっすよね？』
『ハハハ、銀鱈です』
『お願いします！！！』と、二人して即答。
お客の会話を逃さず聞いては、状況に応じて臨機応変に対応できるその柔軟性と地力に、思わず感激してしまいました。

⚫︎生ビール：
小瓶はなく中瓶とのことなので、生の小グラスで渇いた喉を潤します。

⚫︎芋茎：吉野葛餡、イリコ出汁
同じ京味系の【味享】、【星野】、【礒田】と比べると、ひときわエッジのたった仕上がり。舌の鋭い隣のドラミちゃんがすかさず『イリコですね』と呟きます。
ちょうど餡を飲み干したラッコ。お椀の底にキラリと光る小さな銀鱗を見て、そうそうそう、イリコに間違い無し、と思わず膝をたたきます。
嬉しそうに微笑む脇板。
『コイツら、分かってんのかもしれない』と気合いを入れ直したのかも、アハッ\(//∇//)\

⚫︎飯蒸し：コノワタ、餅米
一晩水に漬けた餅米を蒸し上げ、コノワタをトッピング。この海鼠の内臓の塩辛がムッチリとした餅米に絡みつき、その旨味と塩味を注入。
これは麦酒を呑んでいる場合やない。冷酒を所望しようとすると、【天領 飛び切り】の純米酒が添えられておりました。
分かってるわぁ、アハッ（＾◇＾）

⚫︎唐墨餅
⚫︎穴子八幡巻き
お正月の名残ですね。まさかお節の余り物では無いでしょうが・・・
それにしても、唐墨の程よい塩味がモチモチの餅肌に吸い付いて、これはお酒を呼ぶぅー！
穴子の八幡巻きも、お節だったら冷えても美味しいように濃ゆい味付けだけど、こちらは違う。軽めの味付けで、まるで先ほど焼き上げたかのような香ばしさと人肌の温かさがことの他、口に合いました。

⚫︎天領：純米大吟醸、下呂
冷酒を所望すると、やはり京味系。天領の純米大吟醸と神亀のひこ孫純米吟醸の二種類だとか。迷わず天領の純米大吟醸を所望。厚みとキレが両立した銘酒ですね。

⚫︎松前漬け：
これもやはりお節からの流れか。
亡き家内が函館出身だったので、年末が近づくとその実家から送られてきておりました。懐かしい味わいに思わず目元が潤んでしまいます。

⚫︎香箱：
禁漁期間の香箱ですが、網に入れば放るわけにもいきません。そんな名残りというかたまたま捕まっちゃった運の悪い香箱でしたが、二杯酢のジュレで脚肉も内子も外子も美味しくいただきました。
付け添えは、キク科のかきのもとのお浸しと防風。

⚫︎揚げ物：
鹿児島産の筍と炊いてから素揚げした海老芋、空豆の三点セット。新筍の仄かな薄黄色、空豆の新緑色、海老芋の薄茶色に白磁のような結晶塩。それら四色の彩りに思わず漏れるオヤジのため息。

⚫︎手打ち蕎麦：
何故かここで花板が毎朝手打ちする二八蕎麦の登場。ええっ、蕎麦でまさかの箸休め？
山葵大根の薬味でズズズズズ、ズッパッパーーー！

⚫︎季節の天ぷら：
蕗のとう、タラの芽、白魚の登場。おおっ、春や、春！
先の新筍や空豆と同じく、結晶塩でいただきます。
ここで天領の純大吟を飲み干したラッコ。二杯目をお願いします。

⚫︎神亀：ひこ孫、純米吟醸、蓮田
ギヤマンかなぁ？
歴史ありそな素敵な酒器でした。

⚫︎お造り：四種
＜虎河豚：鉄皮巻き、皮剥肝ポン酢＞
トラフグの皮を身で巻き込みました。鉄皮（テッピ）巻きと呼ぶのだそうです。ポン酢でいただきますが、面白いのがその薬味にカワハギの肝を使われているところ。
『カワハギの身はまさか・・・』と呟くと、『まかないで食べちゃいました、アハッ』と、すかさず嬉しそうに呟く脇板。
ホントかどうかはともかく、分かっているやないかい、会話の妙。

＜煮凝り：虎河豚の皮＞
前の週にいただいた【勢麟】さんと比べるとやや濃い目の味付け。

＜水蛸＞
薬味は柚子胡椒。コリコリ食感がアクセントになりました。

＜中トロ＞
本山葵をたっぷりとのっけってお醤油でハムハムハム。うん、この醤油、【味享】さんとおんなじや！
切れといい旨味といい、御殿場のチョメチョメに違いない。聞けば、その通り。このお醤油、また取り寄せちゃお。

⚫︎お碗：薄氷仕立て
昆布と鰹の一番出汁に浮かぶ車海老真薯と鹿児島の新筍。丸大根の薄切りで蓋をします。ちょっと大袈裟だけれど、和食の美の極みかも。

⚫︎焼物：スッポン
後ろ足は塩焼きで、みつぼねはタレ焼きで供されました。
ドラミちゃんとの会話の中で、それとなくみつぼねの単語をしつこく呟いていたラッコ。その話を聞き逃すことなく、一頭に二個しか取れないみつぼねを二人に出してくださいました。
言ってみるもんやなぁ、アハッヾ(≧▽≦)ﾉ
あざとい、あざと過ぎるけど、還暦過ぎの生い先短い爺さんなので、許してくださいませ、グフッ(/・ω・)/

⚫︎炊き合わせ：お揚げ、加賀源助大根
3cmは有ろうかという加賀の源助大根の厚切り。内側にはたっぷりの一番出汁を含みます。お揚げの油で包み込んでハフハフハフ。胃の中から温まりました。黒七味の香りが合いますね。

⚫︎天領：純米大吟醸、下呂
ここで二本目の純大吟。ひこ孫と合わせて三合ほど。週の中日なので、お酒はここらへんで切り上げましょう。

⚫︎ご飯：一膳目
＜すき焼き：近江牛、サーロイン＞
付け添えの卵黄ソースに、京味系の矜持を垣間見ました。記憶が定かでは有りませんが、溶き卵を固まらないように低温調理し、その真ん中に温泉卵に似た卵黄の味噌漬けが浮かびます。この薬味だけでお酒が飲めちゃいました。

⚫︎ご飯：二膳目
＜鮭ハラス＞
釜炊きご飯の上に、これでもか、と炭火焼きのハラスをトッピング。ご飯粒が見えない・・・、アハッ。もちろん、細目の短冊状に丁寧に切られた鮭皮の炭火焼きもたっぷりポン。

これで打ち止めかと思いきや、やはりドラミちゃんとラッコの会話を聞いていた脇板。『時雨煮とジャコもご用意しましょう』と、一体全体、どんだけ食わせるんやねん、グフッヾ(≧▽≦)ﾉ

勿論、断るわけもなく、追加で所望

⚫︎ご飯：三膳目
＜牛肉の時雨煮とジャコ＞
うん、うんうんうん。こちらの時雨煮もウンマイ。ほど良い甘みがご飯に合う。ジャコの硬めの歯ごたえも良い意味でのアクセント。もうね、腹パンやねん。

⚫︎箸休め：蛸の南蛮漬け
御猪口にお酒が残っているのを見逃さず、ちょっとしたお酒のアテをさっ、と出してくれるところが、いやぁ、全くのスキ無しの構え。花板も脇板も手練れですね。

⚫︎香の物
⚫︎デザート：わらび粉100%の餅、丹波黒豆
⚫︎煎茶