"蛋黃（きみ）"稠密（つまり）て、"香莢蘭豆（ヴァニラ）"鼠（ねづみ）の狼藉（ちらか）したるがごとし : テラサワ・ケーキ・パンショップ

『uetro』にて"狗獾（あなぐま）"噉（くら）ひし折節（をりふし）、
暴（にはか）に閃（ひらめ）き想起（おもひおこす）は、
猿若町（さるわかまち）『テラサハ』"奶黃布甸（カスタード・プリン）"が評判（はなし）。
「すは、"奶黃布甸（プリン）"競（くらべ）せばや！」と、〆に"これ"も注文（たのむ）。

食後（くひをは）り、
その足（あし）にて、「觀音裏（くわんのんうら）」へと驀地（まつしぐら）。
淺草猿若町（あさくさゝるわかまち）を「觀音裏（くわんのんうら）」と表現（いふ）は、
聊（いさゝ）か不穩當（おだやかならず）歟（か）?

店頭（みせさき）には旣（すで）に客（ひと）の姿（すがた）も、、。
鐵面（あつかま）しく肆内（なか）へと闖入（おしい）り、
前述（くだん）の"奶黃布甸（しな）"に"あんホイップ・コロネ"＋"長棍麪麭（パン）"、
對價（あたひ）、七百卅四圓也（しちひやくさんじふしゑんなり）。

劈頭（いやさき）に"奶黃布甸（これ）"を御開帖（ぱかッ©毒さま✨.:*ﾟ:.｡:.）。
この御大盡（せんせ）の毒舌（いひかた）を捩（もぢ）るなら、
「"蛋黃（きみ）"の風味（あぢとかをり）稠密（つまり）て、
　"香莢蘭豆（ヴァニラまめ）"は鼠（ねづみ）"ふ●"を狼藉（まきちら）したるごとし。」

ま、的確（まとをい）て彫琢（ことばをたすこともひくこと）も不能（かなはぬ）。
「流行（はやりもの）」と一刀兩斷（きりすて）らるれば、
論駁（いひかへ）す筆舌（ことば）も無（みあたらぬ）。
でも、奴吾（やつがれ）が嗜好（このみ）には一無相違（つゆたがふことなし）。

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【暗匣】：富士膠片（Fujifilm）X-T4 無反光鏡可換鏡頭照相機（みらーれす）
【鏡珠】：福倫達（Voigtländer）NOKTON 1.2/35 @F2.8～F5.6
　　　　　安徽長庚光學（Venus Optics）老蛙（LAOWA）2.8/9 ZERO-D @F8

向島（むかふじま）より淺草（あさくさ）に向（む）かふ道（みち）すがら、
遙（はる）か彼方（かなた）に幟（のぼり）翩飜（へんぽん）とはためくを見（み）たり。
俄（には）かに心（こゝろ）ときめき、近寄（ちかよ）りてこれを檢（あらた）むれば、
紛（まぎ）ふ方（かた）なき、麪麭（ぱん）・洋菓子（やうぐわし）を商（あきな）ふ廛（みせ）。

夥（おびたゞ）しき數（かず）の惣菜麪麭（さうざいぱん）、轡（くつわ）を竝（なら）べ、
居多（あまた）菓子麪麭（くわぱん）、今（いま）や遲（おそ）しと出陣（でばん）を待（ま）つ。
傍（かたは）らに控（ひか）へしは色（いろ）とりどりの洋菓子（やうぐわし）。
洋菓子（やうぐわし）を覽 （み）る限（かぎ）りでは聊（いさゝ）か古（ふる）めかしき打扮(いでたち)。

廛（みせ）の奧（おく）には白髮天窓（しらがあたま）の麪麭職人（ぱんしよくにん）、
脇目（わきめ）もふらず只顧（ひたすら）臺（だい）に向（む）かひて生業（なりはひ）に勤（いそ）しむ。
女將（おかみ）に據（よ）らば、主人（あるじ）の弟（おと）ゝなむ。
氏族外戚（うからやから）ばかりによる甚(いと)細々（ほそぼそ）たる商賣（あきなひ）。

往古（そのかみ）より淺草（あさくさ）猿若町（さるわかちやう）界隈（あたり）に根差（ねざ）し、
日々（ひゞ）麪麭作（ぱんづく）りに勵（はげ）むは、實（げ）に心（こゝろ）洗（あら）はるゝ感慨（おもひ）。
この日（ひ）も、纏（まと）めて多（おほ）くの麪麭（ぱん）を沽（か）ふ民（たみ）の 姿（すがた）に加（くは）へ、
高名（なだか）き散策（そゞろあるき）番組（ばんぐみ）の色紙（しきし）も、、。

一番人氣（いちばんにんき）は『生凝乳（なまくりいむ）のコロネ』とのことなれど、
僕（やつかれ）、生凝乳（なまくりいむ）だらけの菓子（くわし）・麪麭（ぱん）の類（たぐひ）は苦手（にがて）。
あれやこれやと目移（めうつ）りするほどに、
まゝよと、『餡麪麭（あんぱん）』、『甜瓜麪麭（めろんぱん）』、『チョココロネ』を求（もと）む 。

蘆（あばらや）に戻（もど）り、先（ま）づは丈六（じやうろく）*)の佛前（ほとけ）にこれを供（そな）ふ。
三度（みたび）『南無阿彌陀佛（なむあみだぶ）』を唱（とな）へもやらで、
袋（ふくろ）に手（て）を伸（の）ばし、中（なか）を偸（ぬす）み覽 （み）、
剩（あまッ）さへ麪麭（ぱん）を一個（ひとつ）、兩個(ふたつ)、三個（みつ）と鷲摑（わしづか）み。

扨（さて）、これに取（と）り出（いだ）しましたる鏡玉（きやうぎよく）こそ、
其處（そこ）ら其所（そんじよ）にある安物鏡玉（やすものれんず）に見（み）えて安物（やすもの）にあらず。
焦點距離（せうてんきより）一寸六分五厘（いつすんろくぶごりん）微距（まくろ）F二點八（えふにてんはち）。
一寸六分五厘（いつすんろくぶごりん）とは、すなはち、五十粍（ごじふみりめえとる）に相當（あた）る。

焦點環（せうてんくわん）を廻（まは）し、狙（ねら）ひ定（さだ）むるわが眼精（まなこ）たるや、
さながら頭髮（づはつ）逆立（さかだ）てゝ憤怒（いか）る不動明王（ふだうみやうわう）、
否（いな）、女風呂（をんなぶろ）を竊視（のぞきみ）んとする池田龜太郎に彷彿（さもにた）り。
麪麭（ぱん）は潰（つぶ）れ、拉（ひしや）げ、歪（いびつ）なること惡鬼羅刹（あつきらせつ）に異（こと）ならず。

これを啖（くら）ふに、三品（みしな）とも中（なか）の餡（あん）は溢（あふ）れんばかり。
『餡麪麭（あんぱん）』の餡（あん）は漉餡（こしあん）ながら、聊（いさゝ）か粗野（そや）。
『甜瓜麪麭（めろんぱん）』には角（つの）ゝごときものが生（は）え、
卵黄凝乳（かすたあどくりいむ）は滑（なめ）らかさに缺（か）く。

この中（なか）では『チョココロネ』が白眉（はくび）か、、。
味（あぢ）の佳（よ）し惡（あ）しはともあれ、
かくのごとき街場（まちば）の麪麭屋（ぱんや）の次々（つぎつぎ）と消（き）え、
陳腐（つまら）ぬ連鎖店（れんさてん）の跳梁跋扈（はびこる）は、寔（まこと）に侘（わび）しきかぎり。

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*)虚談（うそ）

※因（ちな）みに、當店(こちら)の指南(あなひ)、↓の網路日誌(ぶろぐ)に最（もつと）も詳（くは）しい。
　　http://blog.livedoor.jp/taitopan/archives/51268040.html
　　http://blog.livedoor.jp/taitopan/archives/51283779.html