問診票 : 栄寿司

① 食べたい時が行きたい時派である。 はい／いいえ
② ネタには仕事が施されていて欲しい。 はい／いいえ
③ シャリは多少水分が多くても気にならない。 はい／いいえ
④ 接客は丁寧でハキハキしてるのが好きだ。 はい／いいえ
⑤ ネタの産地にはあまり拘らない。 はい／いいえ
⑥ 昔ながらの街場寿司屋な雰囲気が好きだ。 はい／いいえ
⑦ かといって暗ったい照明はいやだ。 はい／いいえ
⑧ 俺が俺が的な主人に合わせるのは面倒だ。 はい／いいえ
⑨ 価格はお酒を嗜んでも1.5万以内に抑えたい。 はい／いいえ
⑩ 寿司屋はコースだけでなくお好み対応もすべきだ。 はい／いいえ

全て「はい」の貴方、すぐに行かないと大変な事になりますよ。お大事に（笑）
ごちそうさまでした♪

皆様のレビューを拝見して、予約の取りやすさも含めて確実に自分の好みだろうなと訪問の機会を窺っておりました。空梅雨気味で蒸し暑い折に、寿司気分が舞い降りて前日予約し突入です。浅草5656会館裏手の住宅街に佇む風情ある外観。意外なほど明るい店内は右手につけ場とそれを取り囲む様に白木のL字カウンター9席、左手に小上がり座敷がありますが使用しておらず荷物置場として、そして点けっ放しのテレビ置場として落ち着ける昭和の寿司屋という雰囲気を醸し出しております。非常に丁寧で腰が低く感じの良い御主人と笑顔の素敵な奥様、そして大女将の三名体制でやってらっしゃいました。「つまみからおまかせで」と告げて頂いたのは以下の品々であります。

～つまみ～
「卵黄の味噌漬け」　◎・・・寿司屋にしてはインパクト強いスタートである。白味噌ベースのたれと卵黄の相性に悶絶。
「たたみいわし」　○・・・酒がススム君。早くも焼酎の緑茶割り（焼酎多め）で二回目の乾杯。因みにボトル焼酎は店側で客の好みの飲み方に一杯ずつ作って頂ける。
「がり/大根の醤油漬け/はじかみ」　○・・・握りのお供だろうが、酢が立ったはじかみが肴としていい仕事をしている。
「おつまみ盛り合わせ：かすご甘酢漬け/とこぶし煮/鯵の茗荷巻き/かわはぎの肝和え/青柳の塩焼き/平目昆布〆/えんがわポン酢のせ/茹で蛸の梅肉のせ」　◎・・・全てのネタに仕事が施され、こちらの所謂”江戸前”ぶりを堪能できた。特にかわはぎ肝の上品な濃厚さと青柳の香り、鰺やかすごの絶妙な酢通し加減で一気にこの店の虜になる。
～握り～
「本鮪はらかみのトロ」　○・・・とろスタートのインパクト。煮切りは濃厚なタイプ（二種類の煮切りを使い分ける）でタップリと塗られる。こちらは穴子も中盤に登場し、その後に”づけ”という一風変わった順番で興味深い。
「こはだ」　○・・・さっぱりタイプの煮切りを塗って供される。締めも酢も強めの昔風の方向だが素材が良いのかちゃんと口の中で解ける。
「穴子」　◎・・・ふっくらとほろほろに炊きあがり、下処理もきっちりなされている穴子。ツメは濃厚だが甘さ控えめでさっぱりとしたもの。
「づけ」　○・・・香りは今ひとつもねっとりしてシャリとのバランスが良い。
「車海老」　○・・・水槽から取り出して生か茹でかを問われる。茹でを選択したが、おぼろは噛ませていないが甘くてプリプリして美味であった。
「栄巻き」　○・・・店名を冠しているが所謂”とろたく巻き（胡麻入り）”である。もしかしてこの店が発祥？。
「かっぱ巻き」　○△・・・細切りの胡瓜。そうしないと柔らかいシャリとのバランスが悪いと思われる。
「玉子」　◎・・・泡立てたメレンゲのような滑らかな食感である。おそらく山芋が投入されているのだろう。玉子焼きに切れ目を入れてその中にシャリを忍ばせるスタイル。御主人曰く柔らかくて普通の握りだと端の自重に耐えられないからだそう。
～追加～
「平貝の磯部焼き」　○・・・旨いが煮切りを塗り過ぎ。
「白いかの握り」　○・・・塩と酢橘で。
「干瓢巻き」　◎・・・濃い目の味でゴリゴリした食感を残す大好きなタイプ。山葵との相性もさておき海苔も風味が良く、とどめを刺された気になる。
「玉子焼き」　◎
「豆腐の吸物（蛤出汁）」　◎・・・煮蛤で出た煮汁を吸物として余すところなく使っている。白髪葱と豆腐というシンプルな具に蛤の味わいが優しく移り込む。

これに「大瓶ビール」（800円）「ボトル麦焼酎」（4800円）を3名で嗜み、ひとり1.3万円。CPは非常に優れています。

仕事の施されたネタはほぼ間違いなしですが、シャリはやわらかく少しべっちゃりしてるのが味で唯一惜しいところでしょうか。そのシャリの味わいは塩も酢も控え目で、それはおそらく拘りの煮切りを生かす為かと思われます。煮切りを二種類用意しているのも、多めに塗って供するのもシャリの塩加減を敢えて少なくしている事と無関係ではなさそうですね。
鮪の産地も「わかりませんね～。鮪屋さんに任してありますからw」という具合に、後は自分の仕事に徹するだけという潔さが印象的でありました。食べた時に単純に”美味しい”とか”幸せ”と思えるのが一番ですからね。

そしてこちらの素晴らしさは接客である事は一度訪れてみれば分ると思いますが、一見でも常連でも分け隔てない丁寧さと愛想の良さ、老舗なのに非常に腰の低いところ、そしてカジュアルさと老舗感を併せ持つツボを心得た設えなどなど。皆さん書かれている様に非常に居心地が良いのであります。

味・接客・雰囲気・CP、なにひとつ突出する事はありませんが、全てが高いレベルで仕事の施された、それでいて肩の力が抜ける素晴らしい一軒であります。
ごちそうさまでした♪