たとえパクリでもコスパは文句ありません！ : 楽 餃子居酒屋 水道橋店

パクリと言うと、あまりいい聞こえ方はしませんよね。
とりわけ中国企業によるパクリは、もはや改めて説明するまでもないくらい世の中に浸透していますし、ある種の軽蔑感を持って眺められるケースが多いと思います。

しかしながら、パクリ＝模倣というのが重要な経営戦略であることは、経営学の教科書を見るとしっかりと書いてあるんですよね。

すなわち、競争地位の4類型（リーダー、フォロワー、ニッチャー、チャレンジャー）における”フォロワー”の戦略について、ある教科書には、「フォロワーはリーダーと比べて経営資源が質量共に劣るため、即座にリーダーの地位を狙える立場にないことから、上位企業の模倣が戦略のベースとなる。」と書かれており、更に、「下位企業の模倣製品が競争力を持つためには、低価格戦略が必要であり、そのためのローコスト・オペレーションが鍵となる。」とされています。

例えば、中国企業によるパクリ・キャラなんかを見ると、露骨だと思う一方で、流行をよく見極めており、価格設定も含めて巧みだということも同時に言えるケースがままあります。
ある人に言わせれば、「コピーすることは決して簡単なことではない。」とのことであり、つまり、日常的に、世界中の同業・他業種のビジネスについて情報収集し、更に、優れたビジネスを発見したら、即座に「どこが優れているのか」、「なぜその特長は実現できたのか」を分析することをルーチンワーク化し、そこに経営資源を投入できるかどうかでそのコピーの成否が決まってくるということかもしれません。

パクリまくる中国に日本が勝てないというのは決して気持ちの良いものではありませんが、なるべくしてなっているとも言えるわけですね。

飲食店を含む食品関連産業の世界でもパクリ＝模倣は日常茶飯事で、とりわけ中国資本によるパクリには目に余るものも見かけられますね。
幸いにして、資本面で脆弱な経営の多い飲食店の業界では、かけられるコストにも限りがあることから、パクリについても程度の低いものが多く見られ、それらは自然に淘汰されるので、あまりむきになる必要もないのかもしれませんが。

この日のランチで訪問した当店なども、恐らく大陸系中華関連資本によるパクリの一形態と思われます。
と言うのも、「楽」という店名、そして「餃子」というカテゴリーで見てみると、新橋に2011年9月にオープンした味噌だれ神戸餃子の専門店「神戸餃子 樂」が思い浮かぶからです。
私が同店を知ったのは、2017年5月に神田に2号店を出店した時のことになります(神戸餃子 樂 神田店）。
この神田店は閉店してしまったようですが、2020年11月には新橋に2号店を出店していますので(神戸餃子 樂 2号店）、現在も一定のブランド力はキープしているものと思われます。
当店と神戸餃子 樂の間には全く関係が無い可能性が高く、恐らく当店がパクったものと推察されます。

当店の場所は、白山通り沿いで、神保町交差点から水道橋方面へ300ｍ少々進んだ左手ビル（B-Lot Jimbocho Building）の2階になります。
同じビルの1階には「やよい軒 水道橋白山通り店」があります。

ビルの右手にある階段を上っていくと2階の右手に当店の入口があります。
この日は、12時10分前くらいの入店になりました。

店内は、若干のカウンター席はありますが、テーブル席が中心で、ちょっと入り組んだ造りもあって、狭苦しい感じもします。
席数は食べログ店舗情報（当店は店舗会員）によれば88席となっています。

店内はそれほど混んでおらず空席もかなりあったのですが、私が入店してから10分ほどの間に次から次へと後続客が入店してきましたので、そこそこ流行っている感じです。
私はカウンター席に着席しました。

卓上にはランチメニューが置かれており、それ以外にも壁メニューとして日替り定食やラーメン定食のメニューがあります。
メニュー等から見ると、店名（餃子専門店？）とは裏腹に典型的な大陸系大衆中華のお店と思われます。
そして、お値段はかなりリーズナブルです。
ランチのサービスとして、チャーハン、ライス、スープ、サラダ、漬物などはセルフサービスながら無料で振る舞われているのですが、加えて、定食メニューも、生姜焼き、レバニラ炒め、麻婆豆腐などは＠590円と破格の安さです。
例えば、生姜焼き定食だと生姜焼きに揚げ物一品が付き、さらにライス、スープ、チャーハン、サラダ、漬物が付いて590円ですから信じられないですね。

注文は、ランチメニューから、台湾刀削麺と焼き餃子（５個）のセット＠890円にしました。ランチメニューの中ではお値段高めですが、せっかくなら店名にある餃子を食べたかったので、これにしました。
注文時に多少お時間をいただきますとのお告げがありましたが、餃子の焼き時間でしょうか。
いずれにせよ、大陸系中華にしては珍しいですね。

待っている間にセルフサービスコーナーからチャーハン、サラダ、スープを取りにいきます。
セルフサービスものですので、クオリティには期待してませんでしたが、チャーハンは醤油の味付けが強めの黒っぽいチャーハンで悪くなかったです。

メインの台湾刀削麺と焼き餃子は、予告通り待たされて、11分ほどでの提供となりました。
台湾刀削麺は、いわゆる台湾ラーメンの麺を刀削麺にしたもので、台湾で本当にこんな料理があるのかどうかは不明です。
それでも、ひき肉とニラ、唐辛子、にんにくの台湾ラーメンのシンプルな味わいは、麺が刀削麺になったからと言って合わないわけはないですよね。
元々刀削麺は大好物だったことに加えて、素材それぞれの旨味に程よい辛さも加わって、なかなか美味しかったです。

焼き餃子は、比較的大振りの餃子が5個ですが、カリッと焼かれています。
皮のモチモチ感や具の詰まり具合も文句なく、具は変に調味料臭さの無い素材の味が生かされたもので、とても美味しかったです。

大陸系大衆中華の場合は、調理人の腕により、料理の味は大きく差が出る傾向がありますが、その点、当店は水準を十分クリアしていました。
となれば、このお値打ち価格ですので、当然満足度も高くなります。
まさに冒頭記した経営学の教科書で言うところの「模倣製品が競争力を持つためには、低価格戦略が必要であり、そのためのローコスト・オペレーションが鍵となる。」を実現していると言えるのではないでしょうか。

最近新たに出店してくる大陸系大衆中華は、差別化のために一ひねりきかせているお店が多くなってきた印象があったのですが、当店もその路線上にあるお店で、仮に店名がパクリであったとしても、このコスパはそれとは切り離して高く評価したいですね。
大陸系大衆中華というだけで一歩引いて評価する人もいるやに聞きますが、私は素直に評価したいと思いますし、CSが高ければパクリもむしろ積極的に評価すべきなのではないかということを改めて感じる結果になりました。