ご無沙汰の道 : 懐石 花懐道

新橋の人出も往時の8割程度まで回復しているのでしょうか。随分久しぶりに昼食難民化し、路地裏をぐるぐる。舞浜の行列に目を剥き、ハテサテどうしたものかと立ち止まったところの一角に長年見過ごしてしまっていた当店の入り口を見かけます。
そういやなぜだか入ったことなかったなと優に10年ぶり以上に暖簾をくぐると狭いカウンター席にひょいと通されました。
お茶とおしぼりがセット。愛想の良い配膳担当のオヤジさんから「メニューはこれから言いますからね～」とのことで、天ぷら定食は立て板に水の如く述べられた品の中から7品、それと天丼、豚の角煮、魚の煮付け辺りが￥800～￥1K程度とのこと。
穴子、海老、めごち、キス、鶏の中から穴子と海老をメインとして天ぷら定食をお願いしました。

調理担当のオヤジさんが手を動かし程なくしてモリモリの揚げ立て天ぷら、ご飯、味噌汁、副菜、浅漬け、一片のバナナが並べられます。
天ぷらは小ぶりの海老が4尾！穴子も小さいけど2切れ、ピーマン、茄子、よもぎ、雪の下あたりがまさに山盛り。よく言えば家庭的ですが（実家でやった天ぷらを思い出す）まぁ社会通念上は雑と言えないこともなく(笑)ただし揚げ立ての天ぷらが悪かろうはずもなくもう白米自動運転。問答無用にざくざく頂きます。
前述のように10年ぶりにくらいに入ったのですがそうそうこの店は激戦区新橋でも破格のランチだったことを思い出しました。冷静に考えれば目の前で揚げてくれる天ぷらがこんなにあって￥800て安いですよね。新橋からは撤退して久しいてんやよりも間違いなく安いと思われます。
価格だけでなく味噌汁や副菜（この日はキウリとツナの和え物）、果物（バナナはさすがに香りが強いけどね）まで付いてのこのランチは良心的。
激狭狭小物件＆私が覚えている限りも昔からのオヤジさんコンビということもあってのこの質量、価格なのだろうなと改めて思いました。

間違いなくひとを選ぶ雰囲気の狭い店ですが（感染症対策とされる一式は揃っていました…だからさらに狭い…笑）未だ元気なお二人のコンビネーションが魅力的な新橋の優良ランチ店。急峻な階段を上がった二階にはこちらも狭いテーブル席があったかと記憶します。たまに行くならこんな店、って感じで改めて記憶しておくこととしましょう。

新橋でも雑然とした飲食店が連なる一角。
初島や舞浜などの実力派ランチ処が犇めき合うエリアにあってここ花懐道も格安の充実ランチが食べられる穴場。まさに新橋オソルベシなのである。

店はお世辞にも綺麗とはいえない構え。
おじさん２人が忙しく立ち回る調理場がある１階はむりやり詰めてカウンターが６席。しかもかなり雑然としている。
狭い階段を上がった２階が小ぢんまりとしたテーブル席で、上がったことはないけれど３階は座敷になっているのだとか。ぐるなびを見るとなにやら綺麗な座敷が紹介されているが、ホントにこんな座敷があるのだろうか？ナゾ。

店舗の外には当日のランチが貼り出されている。いかにもやっつけ仕事みたいで期待をさせないものだが、７００円という値付けが目を惹くので読んで見ると、
・天ぷら２品＋魚のおかず＋松茸ごはん
さらに１２００円になると、
・てんぷら＋刺身＋おかず＋松茸ごはん
とのこと。
正直、今シーズン初松茸。松茸ごはんにカンタンに誘われて店に入ってみる。確か２度目ですね。

１階のカウンターは店内で移動不可のため、別な扉から入り込む。そうねぇ新橋であれば鳥九みたいな設えと言えばわかりやすいか。
天ぷらは穴子、めごち、きす、海老から２品を選ぶようで私はめごち＋海老を選択した。

ほかほかの松茸ごはん大振りの茶碗にタップリと。思いのほか大量の松茸が入っており、濃厚に香り立っている。噛み締めるとウマイ。こんなところで（失礼）初松茸にめぐり合うとは。

注文を受けてから揚げ始める天ぷらはぼってりとした衣で繊細さなどとは無縁だが、めごち３尾、大きな海老１尾、ナスとピーマンも一緒盛りの充実セット。

さらにオドロキだったのはセットのおかず。直前のお客で秋刀魚の煮付けが切れてしまったようで、松茸のお浸しが供された。
やや強めに味付けされた松茸が小鉢に盛られてきたのだが、結構な量があってしこしことした歯応え、鼻に抜ける香りを堪能できた。これで７００円では完全に原価割れしているのではなかろうか。

先日浜松町のおでん　め組で食べた１０５０円の充実ランチにも驚かされたが、ここ花懐道も驚くべきコストパフォーマンスだ。
店は穏やかなおやじさん２人で営まれているようで、１２：３０過ぎには品切れで閉店。のんびり後片付けをしていたが、夜は夜でこの雰囲気で懐石料理をコースで出すのだという。

店の入口には早くも“おせち料理”限定３３食の受付けスタートも告知してある。
ひっきりなしにお客が訪れるところを見ても昼夜ともに結構な常連が存在しているのだろう。