小籠湯包も牛肉捲餅も、粉ものが抜群に旨い、高雄自強路の佳店。 : 厚得福湯包麵食專賣店

夕暮れ、高雄自強路(ジーチャンルー)の賑わい。
超高層・シンテックス85ビルを間近に望む狭い通りを、クルマにバイク、それに大勢の歩行者が行き交います。

そんな自強路でも、屈指の人気を誇る「厚得福湯包麺食」さん。
何時も、店頭では小籠包づくりを実演。
騎楼を行き交う人も思わず足を止めて、熟練の技を見入って、そして店内に吸い込まれていきます。

先ずは台湾の菜っ葉を前菜がわりにたっぷり！
「龍髭菜」は、まるで龍の髭みたいにたくさんのツルが伸びる、ご当地ならではの旨い青菜。
独特な、ワラビのような食感です。
「空芯菜」は、説明不要のご当地野菜で、最近では日本でも栽培農家が増えてきましたね。
ニンニクの効いた、熱々を！

「蟹黄湯包」(TWD140)
蒸籠の蓋をとると忽ち香る、濃厚な蟹味噌の風味。
薄く打たれたもちもち皮に、スープをたっぷり湛えた、上出来の湯包(ダンパオ)ですね。
天辺にちょこんと黄色い蟹味噌が鎮座。
肉餡にも、たっぷりのスープにも蟹味噌がばっちり効いています。

「鮮肉湯包」(TWD80)
たっぷりスープの定番小籠包です。
肉はきめ細かく挽かれ、新鮮な肉餡ならではの良い風味が立ち込めます。

「牛肉捲餅」(TWD90)
これがまた、此処ならではの自慢料理。
店頭の平鍋に油を敷いて、葱油餅などとともに焼き上げた生地に、牛肉の叉焼、葱などを味噌と一緒にくるくる！
幾らでも食べられてしまう旨さです。

店の隅にはおかず(小菜)が並ぶケースがあって、お値段はそれぞれだけど、まあ心配するほどのものではありませんから、思う存分！
掘りたての筍をさっと湯がいて甘いマヨネーズをつけて食べると、しゃきしゃきして、堪らない旨さ！

それ以外に、魚の料理が多いのも、此処の特徴で、鮒とか鯰みたいなのが良く置いてあるから、淡水魚に強いのかな？

ちなみに此処では、豆漿や甘いお茶がウォータークーラーに何時もたっぷり冷えていて、いくら飲んでもタダ！
こういうところに、庶民的な台湾食堂としての立ち位置が垣間見えるのです。
旅の道中に何ともありがたい「無料豆乳」の恩恵にあずかるのを、くれぐれも忘れませんよう。

帰宅を急ぐ人とクルマとバイクが慌ただしく往来する、高雄・自強路(ジーチャンルー)。
夕暮れの混沌とした賑わいの中、道沿いの飲食店はまさに書き入れ時ですね。
台湾や中国南部独特の建築方法である「亭仔脚/騎樓」は、建物のピロティ部分を歩道に活用して風雨をしのぐ、南国らしい景観。
店前の賑わい溢れる騎樓を、人や物を避けながら歩いていくのは、楽しいながらも結構難儀しますね。
そんな街かどで、この騎樓いっぱいに作業台を設えて、粉をふるい捏ねて延ばして、小籠包や葱油餅を手作りするお店が。
この自強路では誰もが知っている名店中の名店「厚得福」さんです。

お店の中を覘くと、広い店内はまさにご家族連れやグループ客がぎっしり、満員御礼。
店名に「湯包麵食專賣店」と名乗るだけあって、店頭で次々作られる、所謂「粉もの」料理は、本当に旨そう。
円卓に相席をお願いして、いくつか食べて行くことにします。

さてさて、先ずは小籠包から。
普通の蝦小籠包がTWD80なのですが、ここは奮発して「蟹みそ」を頼みます。
それでもTWD120ですから、台北永康街の有名店に比べればまだまだ安い・・・
蒸篭には、コロンと小さめの小籠包が７個。
皮は、この値段にしては比較的薄手だけれど、しっかり打たれていておいそれとは破れません。
口にすると、濃厚なスープが溢れて、芳醇な蟹みその風味が味わえます。
最近、小吃店で肉まんみたいな小籠包ばかり食べていたのですが、この手の技巧派小籠包、やっぱり旨いものですね。

蒸餃もしかり。
騎樓で手作りする様子を眺めていたのだけれど、まさに熟練の職人芸。
これで旨くない筈がありません。
皮そのものの弾力と旨み、そして具の旨さと全体調和・・・・
小籠包を上回るジューシーな旨さに、もう参りました。

そして、このお店の真骨頂と思われる品々を頼んで、いよいよ佳境です。
まずは「烙餅」(鹹・TWD60)を。
ふわふわ、サクサクと、こりゃ旨い！
幾層にも折り畳まれた生地を齧るたび、香ばしい胡麻油の香りがふわりと。

そして「葱油餅」(TWD45)。
屋台小吃でもお馴染みの一品だけれど、こうして専門店で食べてみると、これまた旨さの再発見。
噛みしめる度に香ばしく、本当に旨い！
ボリュームもかなりのもので、家族連れがシェアすることが前提なのかもしれません。

全部平らげたら、もうはちきれそうで、他にもいろいろ食べたいものがあったけれど、断念・・・
フリーサービスの豆漿や甜茶をたっぷりいただいて、帰路の街歩きに備えます。
お店の人は、「なんだ、せっかく日本から来たんだからもっと食べて行かないのかい？」と残念そうだけれど、こればかりは仕方ない。
このお店には、いずれまた必ずお伺いしたいものです。

それにしても、こういうものを食べてしまうと、やはり中華圏の粉ものは文化の深さが違うと、しみじみ。
しっかりと拵えられた粉もの料理は、図太い芯が突き刺さっているかの如き剛健さで、粉の旨み、麦の旨みがガッツリ襲ってくる。
熟練の職人たちは、粉を扱わせれば右に出るものなし！と胸を張っているかのよう。
異国の地にして、あらためて粉ものの「底力」を感じますね。