2回
2017/12 訪問
異能
青山緑水
澄んだ素麺から始まりました。緑茶の香りをうつした油を使われているとのこと。ほっこりと落ち着くご挨拶をいただいた印象。端正ながらも奥深い調律に、これから始まるコースを楽しむためのこちらの解像度を上げていただけたような気がしました。
酔大閘蟹
酔っ払い上海蟹。甲羅の見た目の鮮やかさに驚きました。蟹の質、漬け具合共に最高だと感じました。このお皿の時点で再訪を決意したことを覚えています。
酸橘海蜇
酢橘の中に海月がぎっしり詰まっています。蓋の酢橘を搾って。食感が心地よく。紹興酒の名残から爽やかにニュートラルに主線に帰還します。
雉雲呑湯
雉の出汁のみで取られたスープ。滋味が染み渡ります。雉と上海蟹の雲呑はとても優しく、白菜と円やかに連弾します。
聖誕脆鶏
手羽先です。が、只ならぬ手羽先です。根元には鼈の煮込みが入っています。かぶりつくと、手羽先の脂と鼈の旨味が混ざり合って無心でかぶりつくことしかできなくなります。火入れの妙というのでしょうか。極めて水準の高い計算と技術に感服。
ここで箸休め。洋梨と梅干しのシロップ漬け。こちらのささやかなディテールにシェフの卓越した感性を感じました。
蒸功刀鱒
くぬぎ鱒の蒸し物。鱒の概念が変わるような鱒でした。素材の潜在的な質を最大限に引き出していただけていることが鋭敏に伝わってきました。
鴛鴦蒸蟹
陽澄湖産上海蟹蒸し。蟹を食べると無言になると言いますが、無我夢中になります。豪速の直球。
蟹黄魚翅
上海蟹と気仙沼産青鮫の魚翅の煮込みにアルバの白トリュフをかけていただきました。味覚と香りに陶酔しました。
魚翅と上海蟹をリゾットに。今度は黒トリュフをかけて。筆舌に尽くし難い恍惚の匙五口でした。
広東白菜
大蒜油でシンプルに。シンプルが故に白菜の一枚一枚が舌に快楽を伝えてくれました。中国野菜が素材としてこんなに美味しいと感じたのは初めてでした。
孜然羊肉
もはや何がメインか分からないくらいすべてのお皿が私にはメインでしたが、こちらがメインとのこと。骨付き羊肉をマーラーウェイとクミンの香味とともに。とんでもなく美味でした。脱帽。
最後に美しい清湯そばをいただいて。スープと麺だけでも鶏の出汁が奥深く美味なのに加え、上海蟹の蟹身を添えると更に奥行きは倍増し、器は一瞬で空に。
デザートは、苺のタピオカ、温冷二種の杏仁豆腐、棗餡白玉とプーアル茶。いずれもとことん気が利いていてプーアル茶をすすり終わった際の軟着陸の印象まで完璧でした。
私はお酒を飲みませんが、コースの進行に合わせて中国茶をペアリングしてあわせてくださり、そちらも料理の厚みをさらに増強し、コースを完璧なものにしていただけた印象でした。
亜細亜の旬と滋味を未知の次元で堪能させていただける。そんな才が東京に在する幸せ。次なる演目への期待に胸を膨らまさざるを得ません。出会えてよかったです。
2018/09/09 更新
師走の茶禅華。
一年の愉しみ。上海蟹をいただきに。
鳳凰単欉
繊細な中国茶でお迎えを。
黄金皮蛋
初めて見ました。黄金色の皮蛋。フォトジェニック。
蟹黄春捲
極めて濃厚な春巻き。内部はずっしり。外部は軽やかにパリパリ。
酔大閘蟹
一年に一度お会いできる歓び。
柚子海蜇
細やかなディテールをコリコリと。師走の柚子の中で。
雉雲呑湯
滋味。身体に染み入ります。
四川鳥翅
鮮烈なる手羽先。身体中が喜びます。
鴛鴦蒸蟹
旨味は蒸されて香りとともに歓びとして。
蟹黄魚翅
鱶鰭は黒トリュフとともに雑炊に。
翠玉白菜
美しいオブジェ。
重慶排骨
排骨は一度解体されて再構築。創造的な一皿。
さらに麺でお腹を満たし無論デザートも。
二〇一八年は年間通して大変お世話になりました。
東京にこちらのお店があって本当に良かった。
より創造的王道への進化に期待が膨らみます。