3回
2018/05 訪問
センスのいい料理と真心を感じる価格設定。季節ごとに訪問したくなる大人の隠れ家。
5月22日(火)18時30分くらいに訪問。
黄昏時の町をたわいもない話をしながら歩いていると、小川の向こうに風にたなびく暖簾が見えて、、、
僕
『ここが今、僕が一番美味しいと思う蕎麦を食べさせてくれるお店なんだ。。。』
彼女
『、、、雰囲気のいいお店だね!』
店内に入ると温かな電球の明かりに照らされたご主人が、挨拶をしてくれました。日本酒を色々飲もうと日本酒のリストを持ってきてもらって、先ずは『鍋島』を一合頼みます。
僕
『香り高いけど、すごく濃醇な印象のお酒だね』
彼女
『私、日本酒のことわかんない 笑!』
その日のコース料理は、
❶雲丹と出汁のジュレのかかった蕎麦豆腐
❷あさりの茶碗蒸し
❸甘鯛、車麩、ズッキーニと蕎麦がきのお吸い物
❹色々な盛合せ
・スナップえんどう他のおひたしと姫皮のゼリー寄せ?
・ローストした鴨
・ゴリを揚げて甘辛くしたもの
・ホタルイカ
・よもぎふ、フキの炊いたん、大根の甘酢漬、
・焼いた筍
・金目鯛の焼き物
・ウドのきんぴら
・鮎の甘露煮
・鮭ハラスの南蛮漬
・空豆の甘く炊いたん
❺天ぷら(白えび、ヤングコーン、コシアブラ)
❻お蕎麦
❼デザート(抹茶ジェラート、白玉、粒あん)
と言ったランイナップ。
どの料理も細やかな配慮がされていて、出汁の旨味や季節感が感じられて美味しかったんですが、特に印象に残ったのが、ホタルイカです。
彼女
『私、ホタルイカダメかも。。。味噌だけ、ちょっと食べてみよっかな。。。』
僕
『(ホタルイカを食べて、、、)んんんっ!!
柔らかい。味噌も木の芽かなぁ。。。騙されてと思って食べみて、全然生臭くないから』
彼女
『えぇっ。。。(ホタルイカを食べて、、、)これなら大丈夫かも 笑!』
ホタルイカが苦手な人も大丈夫だと感じる美味しさ。素材の新鮮さが感じられて、味噌の風味もワタの苦味を引き立てます。
その他にも脇役級のヤングコーンの天ぷらだったり、お店手作りの抹茶のジェラートだったりまで、プチ感動級の美味しさで、、、
僕
『いい店でしょ。美味しいもの食べてると、好きな人にも食べさせたいって思うことってない?
ここは、一度君を連れて来たかったんだ』
彼女
『結構食べたよね。もうお腹いっぱい 笑』
ご主人に伺ったところ、料理は季節ごとに変わっていくそうです。6月くらいから夏の食材が登場して、7月になると夏っぽいメニューになるそうなので、次回は7月頃、夏を感じにきたいと思いました。カウンターに座って美味しい料理を食べながらお酒を飲んで過去や現在や未来について静かに会話を楽しみます。古民家風の店内は妙に落ち着く雰囲気があって、誠実で真摯に蕎麦に向き合うご主人はちょうどいい距離感で、お客さんの側にいてくれる印象で、『土家』さんは僕にとって最高の隠れ家です。
肝心のお蕎麦ですが、、、香り高く、滑りを感じるような喉ごしで、前回よりも美味しく感じました。色んなお蕎麦屋さんに行きましたが、僕はここのお蕎麦が一番美味しいと思います。
2018/05/24 更新
2018/02 訪問
ご主人の細部まで行き届いた心遣いに感動。
2月16日(金)18時に訪問。
僕
『さっきはすみません。なんか早く着いちゃって』
ご主人
『この近所、時間つぶすとこなかったでしょ?』
僕
『お昼ごはん、抜いて来たのに、さっきホッピー飲んじゃいました 笑!』
民家を改築した店内は落ち着いた雰囲気で、広くとられた台所には昔ながらのご飯釜も見えます。僕が座った真っ正面には伊勢エリア特有のしめ縄がかけられていて、、、
僕
『、、、あのしめ縄って、伊勢のものですよね』
ご主人
『後輩からもらったんです。なんかご利益がありそうだから、あそこにかけてるんですよ』
広間とトイレに向かう途中に生花が飾られていて、お客様をもてなしたいという気持ちがヒシヒシと伝わってくる。この場の雰囲気だけでも、お蕎麦が美味しくなりそうです。
先ずは地元東村山の地酒、豊島屋酒造さんの『おくのかみ』を一合注文。無調整生だけにシュワシュワとした微発泡を舌先に感じます。
この日の料理(コース制のみ)
⑴飛龍頭と鴨のみぞれ煮
⑵オニオンポタージュ雲丹入
⑶そばがき、鰆、湯葉他のお雑煮風
⑷白魚の天ぷら、人参の梅煮、鯖の南蛮漬、花豆など
⑸マグロの漬けと蕪の素揚げ
⑹粗挽きそば
⑺デザート
どの料理も手が込んでいて、とても美味しいです。そばがきには、肉厚の鰆を入れて季節感を演出したり、梅の形に抜いた人参は梅と一緒に炊かれていたり、出汁感のあるポタージュスープの底に雲丹をしのばせていたり。
次の清酒は青森県の地酒『鳩政宗』を頼みました。ご主人はこのお酒をマイルドだと表現されましたが、スズのチロリに入れてスズのお猪口と一緒に提供してもらいました。
僕
『まるみのあるお酒をだから、スズの酒器にしてくれたんですか?』
ご主人
『山形の方で手作りされてるらしいんですよ』
スズのチロリで燗をつけるとお酒のカドがとれて丸くなります。冷酒をスズのチロリで提供してもらったことも初めてでしたが、スズのお猪口がある事を僕は知りませんでした。
お酒のアテで、ご主人が稚鮎のちりめん山椒と蕗味噌を出してくれました。
僕
『最後にもう一合飲みたいんですけど、おまかせしてもいいですか?』
ご主人
『、、、それでは手取川(石川県)をらどうぞ』
白地に赤い寒椿のラベルが、この時期の空気感に共鳴します。よく見ると、お猪口にも寒椿の柄が見えて、、、
ご主人の心遣いは、お酒選びに料理とのマリアージュを考えるのはもちろん、ラベルや酒器にまで行き届いていて、もてなしのレベルの高さに感動します。
特に美味しいと思ったのは雲丹の沈んだオニオンポタージュとサービスで出してもらった。稚鮎のちりめん山椒です。カタクチイワシのちりめん山椒と味は大差ないのかもしれませんが、これほど小さな鮎を食べるのは初めての経験で、その一匹一匹が鮎である事を愛くるしく思います。
そのあと提供された粗挽きそばは、九一で茨城産常陸秋そばを使われているそうです。控えめに主張する蕎麦の香りは常陸秋そばに特有の個性かもしれませんが、細く端正に切られた蕎麦にご主人のストレスを感じます。
僕
『薬味にネギは出されないんですか?』
ご主人
『ウチではネギは出しません。塩が欲しいと言われば、塩はおだしします』
僕
『この蕎麦は塩で食べたいです』
ネギは繊細な香り全てに干渉するようなイメージがあって、ご主人のこだわりに共感を覚えます。『土家』さんではずっと常陸秋そばを使われているそうです。
僕
『お蕎麦も美味しいですね』
ご主人
『、、、いや、でも難しいんですよ。蕎麦は本当に奥が深くて。たぶん、一生かかっても納得のいく蕎麦は打てないかもしれない』
僕
『美味しいお蕎麦を作られる方ほど、そうやって言われますね』
ご主人
『水加減だったり、こねだったり、、、ちょっとした動作一つで変わるんですよ。本当に難しいですよね』
時々美味しい蕎麦を食べると、それを打った方の優しさとか、苦悩とか、ストイックさとか、そんなココロを感じる事がある。そして、『土家』さんのお蕎麦にももっと納得のいく蕎麦が打ちたいというご主人のストレスや苦悩を感じる。もっと香り高く、もっと喉越しよく、そして美しく、、、そんな真摯なご主人の仕事にかける姿勢を僕はとても好きだと思った。蕎麦は難しいって言うけど、ある程度以上のレベルに達すると、それは『もてなし』の料理であり、蕎麦を打った職人の人柄を愛でる食べ物なんだと思う。頃合いを見計らって出してもらった、蕎麦湯はあったかくてほっこりココロにしみた。
ここで飲んだ蕎麦湯が今までで一番美味しいと思った。
また来たいと思ったけど、この店は奥さんとか、親友とか、落ち着いて話が出来る、価値観の共有できる人と一緒に来るか、いっそ1人でゆっくりと楽しむか、そんな隠れ家的に来るべきお店だと思う。
ここは今の僕なりの最高得点のお店です。
2018/02/17 更新
9月22日(土) 夜の訪問。
僕
『お久しぶりです!』
土屋さん(奥さん)
『すみません。先日はエアコンが壊れてしまって、、、次の日には直ったんですけど、、、』
土屋さん(ご主人)
『昼もヤバかったんですよ、、、』
僕
『いえいえ、しょうがないです。。。』
嫁
『あなた、汗っかきだから良かったじゃない?』
僕
『う、、、、うん。。。』(^_^;)
春に訪問して以来、夏を感じる料理も食べたいと思ったんですが、何度か電話したものの生憎予約がとれず、、、折角とれたと思ったら、
『エアコンが壊れてめちゃくちゃ熱いので、やめといたほうがいいです』
と土屋さんから連絡があって、すっかり夏をとばして秋になってしまいました。僕たちは前回と同じようにカウンターの端っこに座って、その日も暑くて喉が渇いていたので、まずはビールを頼みます。
僕&嫁
『お疲れさま』
そう言って乾杯すると、
嫁
『なんかさ、奥さん、 茉奈&佳奈に似てない?』
僕
『、、、誰だっけ 笑? 直接聞いてみたら?』
その日、土屋さんが振舞ってくれた料理は、牡丹海老あり、松茸あり、雲丹あり、の贅沢な品々で、2人分のさまざまな蕎麦前たちを配膳してもらったときの高揚感も相変わらずです。
❶牡丹海老と焼きなすの冷たい茶碗蒸し(柚子風味のジュレのせ)
❷そばがき(秋刀魚のつみれとつるむらさき、松茸のお椀で)
❸そば豆腐(汲み上げ湯葉と雲丹にそばつゆの餡をかけて)
❹さまざまな蕎麦前たち
・松茸と冬瓜の炊いたん(キンキンに冷やして)
・イクラとモロヘイヤ
・カマスのたたき
・帆立しんじょうの揚げたん
・中津川風栗きんとん
・秋刀魚の柔らか煮
・野菜たちの煮びたし
・鴨焼き
・山東菜のおひたし
・メヒカリの塩焼き
❺天ぷら(太刀魚、舞茸、万願寺とうがらし)
❻もりそば
❼そば茶と巨峰、マスカットのゼリー
牡丹海老のお刺身と焼きナスをのせた冷たい茶碗蒸しは柚子風味のジュレがのせられていて、とても爽やかに全てが調和していてトップバッターにふさわしい一皿。秋刀魚のつくねと松茸のお吸い物が入ったそばがきのお椀はかぼすが効いていて、秋の到来を感じます。。。
僕
『どーしよ。何から食べよ。わかんなくなるから一緒のもの食べようよ』
嫁
『うーん。これかな』
妻はまずエリンギに箸をのばしました。その選択肢がなかった自分は意表をつかれた感じがしつつ、エリンギを食べます。松茸みたいな食感が美味しいです。
僕
『このメヒカリって魚、食べてみ。脂のっててめっちゃうまいよ!!』
嫁
『ホントだぁ。うまいね!!』
妻は帆立しんじょうを揚げたんが気にいったみたいで、それは『モンスーンカフェ』の『海老トースト』を帆立にチェンジして、油切れを良くしてヘルシーにしつつ、旨みは凝縮させているような味です。。。うまく伝わっていないような気がするけど、、、。冷たい冬瓜にも松茸がのせられていて、昆布の旨みをたっぷりと感じるイクラはモロヘイヤのねばねばと一体化して、香り高い淡麗辛口の日本酒によく合います。カマスは皮目に醤油をうすく塗って炙られていますが、ほんのり醤油の香ばしさを感じる白身魚のたたきは、こちらも日本酒によく合います。
嫁
『太刀魚の天麩羅、めっちゃふわふわしてる』
僕
『新鮮だとこんなふわふわするのかなぁ。。。肉厚だし美味しいね。あ、、、そうそう、カミさんが奥さんが茉奈佳奈 に似てるって言ってるんですけど、、』
土屋さん(奥さん)
『(下を向いて顔を見せないようにして)、、、たまに言われます。。。』
僕
『(僕は妻の方を向いて)、、、だってさ!』
嫁
『、、、、、』
その後、本日の主役、もりそばを配膳していただきました。以前食べた時よりも麺に力強さというか、凛とした雰囲気があって、粗挽きで黒い星がところどころに点在する常陸秋そば100%の細切の生粉打ち蕎麦です。まずは何もつけずに麺を手繰ります。。。もともと僕は土屋さんの打った蕎麦が日本で一番おいしいと思っていて、それはデリケートな常陸秋そばと向き合う土屋さんの謙虚な生き方に共鳴する部分もあったんですが、その日食べた蕎麦は、優しさの中にも強さを感じるような、柔軟なようで頑固な一面もあるような、そんな雰囲気に変化していて、蕎麦の香りは以前より個性を主張するように鼻に抜けて、喉ごしも滑らかです。
僕
『前より、美味しくなっている気がする。。。外苑前のお蕎麦屋さんより、やっぱり土家さんのほうが美味しいかもしんないな。。。』
嫁
『私さ、実をいうと蕎麦の香りはよくわかんないんだけど、ここの蕎麦は一番美味しいと思うよ』
、、、
僕と妻は『土家』さんのお蕎麦が本当に美味しかったと土屋さんに伝えて、お店を後にしました。
土屋さん夫妻は玄関先まででて、僕たちを見送ってくれました。
僕
『この店、外苑前のお店のだいたい半分の値段だった。こういう店がミシュランなんかで評価されるべきだと思うな』
嫁
『あなた、この店、何点にするの? 私に言わせたらこの店こそ5点満点だね。美味しいし、隠れ家っぽい店の雰囲気は落ち着くし、第一あの料理全部ご主人が作ってるんでしょ。すごいと思うな。奥さんのサービスだって押しつけがましくなくて、そういうのが本当のサービスなんだよ』
僕
『そんなほいほい5点つけてる人とかあんまりいないよ。。。』
嫁
『じゃあ、どこが悪かった? 言ってみ』
僕
『、、、、、そんな悪いとこなんか、ないよ』
カウンター5席とテーブル1卓の店なんですが、僕の場合だと1か月前くらいにピンポイントで予約の電話をして、3回に1回くらい予約がとれる感じの店です。2人でビールを中びんで1本、日本酒を4合(180ml×4)、そば焼酎の蕎麦湯割りを2杯頼んで、一人税込10500円。現金払いになりますが、料理はどれも美味しいです。
蕎麦は、たまたま全部訪問したことがあるので、食べログの蕎麦ランキングの直近の1-9位(+ランク外)であえて順番をつけると、僕の順番はこんな感じです。。。
1位(4.12)土家
2位(4.28)いち太
3位(3.94)慈久庵
4位(4.00)じゆうさん
5位(3.90)せきざわ
6位(4.01)らすとらあだ
7位(4.13)ふじさわ
8位(3.87)野中
9位(3.97)山の実
10位(3.84)かね井 ※カッコ内は平成30年9月末の食べログポイント
下記の店舗はポイントは高いんですが、個人的にはトップ10には入りません。
(4.08)仲佐 ・・・ 特筆した個性がないような
(4.11)宮本 ・・・ 量が極端に少なく価格が高い
(4.07)玉笑 ・・・ 都心部で内容以上に評価が先行
(4.06)やざ和・・・ 評価される理由がわからず
『土屋』さんはそばを慈しむようにデリケートさと対話をしながら凛とした蕎麦を打たれていて、しなやかで香り高いです。蕎麦には好みのあると思いますが、蕎麦前を含めたコストパフォーマンスも『土家』さんがダントツだし、店内の雰囲気、料理の美味しさ、サービスの水準などなど、満足度も『土家』さんが僕は一番高いと思います。お蕎麦が好きな人たちにはもちろん、隠れ家のようなお店なので落ち着いた雰囲気でデートをしたいカップルにもお勧めします。