【五十嵐美幸シェフが来た】 : 熱海美虎 本店

あの五十嵐美幸シェフが来て、特別メニューで作るというので、予約を入れて熱海の「美虎本店」に来てみた。
税込11000円、とリーズナブル。

まずはご当地生ビール「静岡麦酒」をいただきスタート。

最初の料理は「網代の鯵、静岡茶、静岡産山葵」を素材に作った一品。なるほど、静岡縛りなんだな。…五十嵐さんのご主人が熱海出身なので静岡愛が今日もいっぱい。
食べてみるとニンニクも効き、上品に美味しい。お茶の使い方が面白い。しかし、これは中華なのかな？ヌーベルシノワ？ほぼ和食？まっ、どうでもいいか、センス良く美味しいから。

続いて「天城黒豚、山葵菜、イワシ節、乾燥エノキ」…エノキを乾燥させて、XO醬のような使い方のエノキXO醬が面白い。山葵菜も一緒に豚肉に巻いて食べる。豚肉自体に濃厚な旨味があって、イワシ節、エノキXO醬がアクセントとなって美味しい。
天城黒豚は疫病予防のためどこの場所で作られているかも秘密だそうで、幻の黒豚と言われているとか…。

「熱海焼売、春巻」…焼売は熱海では有名な熱海焼売。これを食べるのは前回に続き2回目。油揚げの中に食感も美味しい蓮根などが入る。
食べる辛子の出汁辛子が添えられていてそれをつけていただく。
　春巻は沼津の塩鯖と三島の枝豆が中に入る。味付けはあえてされていないが、素材が持つ味で十分。辛子醤油につける必要はなく、少しの『出汁辛子』もしくはオリジナルの『山葵漬けのソース』で楽しむスタイル。この二つの薬味は酒のアテにもよく、市販したら売れそう。

「静岡県産の原木椎茸、ジャンボニンニク、麻辣ソース掛け」の料理。…唐辛子も添えられていたが、これは飾りらしく少し齧ったらえらく辛かった。ジャンボニンニクには甘味がたっぷりで辛味ソースと合わさるとめちゃ美味しい。原木椎茸も優しい辛さで美味。

「油淋鶏ソース掛け、鶏の揚げ物」…イワシ節、カイワレ、青ネギを使ったオリジナルソースがかかっている。…ザクっとした唐揚げした硬めの食感の衣と旨みある鶏肉、味わいのあるソースのコンビネーションが絶妙。

〆は麺。
「茄子の出汁、オイスターソース煮込み麺」…出汁には鯖節、鰹節、宗田鰹節の3種とオイスターソースを使う。…熱々の器とスープ。スープはこれだけ和風出汁を使っているので中華とは思えない和のお味。上品で上質。麺は細麺。茄子は熱々、焼きネギとともに甘味がある。
　スープも美味しかったので飲み干して完食。

デザートは「マンゴーとみかんのプリン、パッションミルクソース掛け」…甘さと酸っぱさの絶妙な組み合わせ。口の中で今までの流れが切れてリセットされる。美味しいフィニッシュ。

最後に美幸シェフとご主人が各テーブルに挨拶に回って来てくれて、しばし談笑。
　昔話やら、とある人物の話やら。

料理に人柄が出ている。
ご主人の故郷、静岡を愛しその食材を使い、体に気遣いをして極力味付けは食材そのものの味を活かし、優しい味わいの料理。
　医食同源を標榜している五十嵐さんの料理ゆえ食後、身体に全く負担のこない軽やかな料理。前回のレビューでも書いた体と心に優しい料理。

五十嵐美幸シェフが直接腕を振るったのは僅か2日間（8月10日、11日）だけ。既にかなり前の時点で予約満席はさすが。

こういう味の優しい中華だと知って食べないと、味のインパクト自体はガツンと来るものではないので、町中華の調味料に慣れていると物足りなく感じる人もいるかもしれない…。

料理の鉄人という番組で25年前に鉄人陳健一さんと「胡瓜対決」で惜しくも負けたものの話題になった女性シェフの五十嵐美幸さんプロデュースの店。
その後、体調不良やら数々の苦難もあって、自分自身、素材へのこだわり、医食同源へ関心を向けることになる。毎日でも食べたい料理。心と体に優しい料理を目指すこととなる。

そんな五十嵐美幸シェフがご主人の出身地でもある「熱海」への想いも募り、熱海駅前にラーメン・焼売専門店「熱海美虎 ラーメン・シュウマイ 駅前店」を昨年2021年4月に開業。続いてその3ヶ月後の7月「熱海美虎 本店」オープン。
そのオープン準備中、あの伊豆山土石流被災が起こり、より熱海のために何かしようとネット販売含めてシューマイがひとつ売れる毎に10円寄付をする活動を始める。
それが今日いただく「熱海シューマイ」。

いずれにしても、心の中華なのかも。

この日は「熱海美虎の出汁中華コース12品（税込5800円）」を予約して18時半に訪問。
先客はゼロだったが、19時にはテーブル一つを残し個室含めて満席になっていた。

僕らは地元のビール「静岡ビール（…本来は伊豆高原ビールが好みで飲みたいのだけれど、なかなか出す店が少ない）税込650円」で乾杯スタート。

セントラルキッチン方式を採用していて五十嵐さん本人は店には立ってなかったけれど、厨房内、サービスの若い方々が一生懸命に動く姿は気持ち良い。

まずは「前菜5種盛合わせ」から。
ヨダレ鶏黒ニンニクソース…柔らかくも肉質のしっかりした鶏によくある辛さを全面に出したヨダレ鶏ソースではなく、穏やかな旨みと辛味のある黒ニンニクソースを使うオリジナルな一品。
クラゲの和え物…コリコリ食感は当たり前だが、味付けが胡椒の塩漬けも使って上手。
海老とトマトの辛味和え…優しい辛味
茄子の香味ソース…ひと手間かかった一品
金柑の生姜和え…甘いだけじゃなく食べやすい。

続いて「点心2種盛り」…ひとつは件の「熱海シューマイ」。もう一つが「揚げ海老シューマイ」…「熱海シューマイ」は揚げで巻かれている。卓上に置いてある『出汁からし』と言う辛子と出汁を混ぜ合わせた調味料でいただく。なるほどこう食べさせるのは旨い。蓮根も入ってシャキシャキ食感が良い。
◎「揚げシューマイ」は別の『旨辛醬』でいただく、皮はこんがりきつね色に揚げられカリカリサクサク美味い。…振り返ると僕的には今日イチの味。

追加で「海老マヨ春巻き（一本税込550円）」…皮がパリパリサクサクで美味い。海老マヨ自体は想定内の味。

「本日の野菜料理」は…茄子のオイスターソース炒め…オイスターの感じがしない…？？なんだろ結構あっさり目の味。挽肉が入っているが醤油っぽい味付け…

「蒸し魚の葱油ソース」…使う魚は鯛。
レタスのシャキシャキ感良し…とっても美味しいのだが、優しさゆえひと押しパンチが足りない。酸味？コク味？旨辛醬を加えると少し味に深みが出て良くなる…。なので、卓上にある『旨辛醬』を加えると、パンチも出て強い味になり、より美味しくなる。

「豚角煮（揚げ）柚胡麻和え」…肌の角煮揚げが五十嵐さんは得意のようでアラカルトでも、ご飯ものでも用意されている。肉質柔らかく旨みがある一品。ボリュームもたっぷり。

〆は下記7種から。
①名物「魚出汁担々麺」②「海老ワンタン麺」③「チャーシュー麺」④「辛ネギチャーシュー麺」⑤「豚角煮揚げ飯」⑥「チャーシュー飯」⑦「上海蟹麺（＋800円）」
…ハーフサイズがデフォルトで追加料金を払えばフルサイへの変更も可能。

僕は人気の「海老ワンタン麺」を選択…筍、青梗菜が入り、さっぱり和風出汁風味の海老ワンタン麺。ワンタンの中にはとうもろこしが入りしっとりシャクッとした食感が楽しい。

店の名物の「魚出汁担々麺」を知人が選択。干し海老の旨味がたっぷり含まれ、ガツンとくる辛さはないがちょうど良い辛さの味付け。

最後のデザートは「杏仁豆腐」…甘さ控えめで、ちょっと僕には物足りなかったけど、きっと健康のためにはこのくらいの甘さが良いんだろうな、と思いつつ完食。

確かに食べた後には舌も心も穏やかな気分になっていて、明日来ても食べられる中華料理になっている。

…なので、この日食べられなかった「海老炒飯（税込1320円）」を明日のブランチ用に購入。…海老の醬、干し海老等が使われて半日経ってもとっても美味しくいただく事が出来た。味付けがとても良い塩梅。

ご本人がいなくてもこれだけのレベルが保てるならば、セントラルキッチン方式もアリだな、と思えるほど。ご馳走さまでした。