【千夜一夜物語】　アリババと四十人の盗賊 : アリババ

西川口という街は今、大きな変化を迎えています。
埼玉県外の方には風俗の街という印象が強いかもしれませんが、関係機関による街の健全化が図られており昔の面影は僅かしかありません。しかし、そのために町全体が地盤沈下したとも言われ、すこし前までは空きテナントが目立つようになっていました。
それがこのところ、特に外国の方の居住が増えることにより中国人街として再度活性化しているようです。食べログのレビューでも本格的な大陸中華のレビューを多く見ますし、なにより新たな料理店の出店情報も目立ちます。これ自体は食いしん坊にとってはとても素晴らしい事です。
しかし、同時にゴミ出しや不法滞留などの問題も目立つようになってきました。労働人口減に悩む日本の事情の一端を表す街となっているのです。

さて、そんな西川口ですが、どうしても行ってみたい店がありました。それが当店【アリババ】です。
【アリババ】は約10年ほど前に開店していたのは知っていました（※正確には11年になるそうです）。上記事情により何度も調査目的で訪問していた時期で、駅にほど近い場所に雰囲気の良いステーキ店が出来たのを見て、永く続いて欲しいなんて思ったものです。
ただし、訪問目的の大抵は西口（風俗街もそちらがメイン）でしたので、残念ながら利用する機会はありませんでした。

月日が流れ、食べログにお世話になるようになって２年目を迎えます。
色々な目的でレビューを続けておりますが、アラビアンナイトの話で構想を練っていたら、当店の店名がアリババ（と40人の盗賊）であるのを思い出しました。そして鉄板焼きのお店であることも。
そう思うと、男の子らしく頭がステーキ肉で一杯になり、腹が減って腹が減って仕方がありません。早速、吾郎君を誘ってランチを企画します。休日の11時45分頃の訪問です。

店内に入ると女将さんと思われる女性が、黒を基調としたシックなユニフォームを着て出迎えていただきました。他にホール担当は若い女性がもう一人。とても丁寧な接客です。

席はL字型になったカウンター席に案内されます。先客は4組ほどで、カウンターは私たちでほぼ満席になりました。
他にはBOX席が３テーブル用意されていて、どの席でもテーブルの中央に鉄板があることから、目の前での調理を楽しめる趣向になっているようです。これは良いですね。

カウンターの正面には少し体格の良い男性が白衣を着て調理中です。
HP情報によれば、目白のフレンチ「大都会」出身の支配人が、修行したフレンチの技を取り入れて開店したのが当店【アリババ】なのだそうです。
メニューを見ると美味しさを追求した華やかな料理が揃いながら、個人店らしい安価な価格設定をしています。また、好みに合わせた対面料理の店だけに、接客姿勢もお客様ととても近く、丁寧な言葉の中に家族的な優しさも感じました。

そのおかげもあって、従業員さんとの会話も軽やかです。
先客、後客の訪問理由も楽しい会話の中で聞くことになりました。

定期的な外食としてお子さんを連れて来ている家族グループ。
高齢の母親を連れて親孝行と思われる食事をしているご夫婦。
そして、結納だか何だかの言葉が出ているカップルには、お世話のお姉さまが付いていて、今後の事について色々打ち合わせをしています。
彩ちゃんとの距離が先週の大喧嘩でちょっと微妙になっているがらっ八の吾郎君は、ちょっと苦笑いしながらの食事になりました。

注文はランチCコース（￥1,980・税別）にします。
牛フィレステーキをメインにした、前菜・サラダ・ライス・香の物・みそ汁のセットです。

お肉用には三種の調味料がついており、かなり香辛料（黒胡椒？）の効いた味噌、瀬戸内の塩、ポン酢が用意されていました。使用はお好みですが、当店のフィレであれば塩で十分です。また、ディナーともなれば相応の値段となりますが、ここはご飯のお替りで大切に頂きました。

ちなみに、調理はそれぞれの目の前で行っていただけるため、従業員さんと少し話しながらゆっくり待つ時間が存在します。店名が【アリババ】である理由を聞いたのもその時の会話です。

店名はやはり、アラビアンナイト（千夜一夜物語）と呼ばれる物語の一つ、「アリババと四十人の盗賊」からとったのだそうです。当店の席数は何と40席。確かに4つのテーブル席を数えてみれば、盗賊の人数とぴったり一致します。
つまり、店主自身がアリババ、来店するお客様を40人（の盗賊）に模して、店の中には華やかな料理という「宝物を用意しております」という趣旨で付けられた店名なのです。
私と吾郎君は思わず手をたたいて喜んでしましました。そして、今回の訪問の主旨とアリババと四十人の盗賊の新物語を軽く説明しました。


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（コメント欄に移設しました）


一気に当店の名前にちなんだ創作物話を語り終えた平次でしたが、しゃべり過ぎて喉が渇いてしまいました。
ただ、笑ってしまったのは、店名がアラビアンナイトの物語からとったのは半分は本当ですが、もう一つ現実的な理由も聞くことが出来ました。
アラジンであれば「ア」「A」で始まる言葉だから、電話帳で上の方に表記されるから、、、だそうです。思わず「フーム」と唸ってしまう私たちです。やっぱり個人料理店は必死で頑張ってるんです。
聞いてます？中のエライ人。

その従業員さんから400円の追加でデザートが楽しめますとの案内です。
つまらない長話をしてしまった私たちですから、もはや否の選択肢はありません。

部屋のひと隅には鉄板の無い喫茶席？が用意されていました。私たちは席を移動し、
・アプリコットのシャーベット
・ココアのシフォンケーキ
とコーヒーを頂きます。

ふとテーブルをみると綺麗な花が活けてあります。こんな気遣いに私たちは対価を払いたいと思うんですよね。
再生で頑張っている地方都市に咲いた、本格的な個人料理店です。

今度はディナーでしっかりワインも頂くために訪問したいと思いました。
ごちそうさまです。