2回
2021/12 訪問
ジャストサイズ京料理店…良店
2022/05/06 更新
2018/05 訪問
誠実でお値打ち感横溢の昼餉
過日、業務途中の昼餉。千代田線を途中下車して、以前から気になっていた当店に一見フリでふらりと伺う。
代々木八幡駅から代々木八幡宮へ山手通りを北上。しばらく行くと右手に見えてくる瀟洒な引戸。周辺は大通りに面したマンション銀座。勤労者の昼餉利用はあまり見込めないと思われる地の利の無い場所。店内はカウンター席5席とテーブル席の小体な構え。やや照明を落としてあり、落ち着いた静謐で適度な緊張感の和の設え。
お昼は基本的にワンメニュー「煮おろし定食」。カウンターに座ると、「苦手なものはありませんか」と問われ「ありません」と答えると、若い主人が厨の中で手を動かし始めた。
カウンター席から垣間見た主の所作がイイ。純白の染みひとつない調理衣着用で、磨き上げらえた厨の中、真剣なまなざしでひとつひとつ丁寧に味見を交えつつ、雪平のやっとこ鍋を駆使しながら調理を進めてゆく姿に、期待値のハードルが上がる。
15分ほど待って一つの盆にて供された本日の定食。お造り、煮物、揚物、小鉢、香の物、白飯、赤出汁とどれもがきちんと日本食の骨法を踏まえたもの。煮おろしは、大根おろしで仕上げられた揚げ鶏の煮びたし風。茄子、南瓜の素揚げとお餅。ほどよい甘味の出汁との取り合わせがよろしく、白飯との相性抜群。微かにおこげの薫りを醸す白飯がとても美味しい。最後に供された水菓子、苺の乗った峰岡豆腐まで、質量ともに十分な満足感。
確認したわけではないけれど奥方と思しきご婦人の応接も、つかずはなれず自然な笑顔が嬉しく好感度高い。
上記内容で1,800円(税込)は一般的なファミレスでハンバーグ定食とパフェを頂く値段と変わらないことを思うと、お値打ち感横溢。
食事を終えて勘定を済ませると、店の外まで主が見送ってくれた。
夜の会席利用にも十分期待を抱かせる、再訪必至の良店。
2018/05/10 更新
過日、数え日の夕餉。事前予約の上相方と伺う。残念ながら今はお休み中のランチに以前伺っていつか夜伺おうと思っていた。忌まわしいコロナ騒動の影響もありずっと再訪叶わなかったのだけれど、やっとの機会にいそいそと。
店内は和モダンコンパクトにまとめられ、やや照度を落とした機能的で落ち着いた意匠。大将との距離も近く、絶妙の囲まれ感が嬉しい。とりあえずの瓶ビールを頂いて、本日の饗宴スタート。冷酒を所望すると、大将お任せのよろしき地酒がテンポよく。
和の骨法を踏まえた数々の料理。大将の調理をライブで観ながら楽しめる僥倖。本日は鰆の焼き物が白眉。きちんと炭を熾しているところに主の矜持。辛子醤油が添えられた冬鰹のたたき、主人の郷里徳島産の藁で燻されとても美味しい。椀物はその御出汁の味わいに何とも言えない品性が感じられるもの。菊菜のお浸しのシャキシャキとした歯応えのよろしさ、真薯椀の塩梅のよろしさ、どれもが滋味深くきちんと美味しい。そして釜炊きの白飯。厚みたっぷりの味噌カツからの玉子掛けご飯という流れの食事、既にほぼ満腹だったのだけれど、その旨さにつられてさくっと腹の中に。〆の美味しい苺まで、隙の無いコース構成でありながら何故だか癒し効果あり。
大将は客と気安い会話を交わしつつ、厨での立居振舞、お弟子さんや奥方への指示等は職人気質を感じさせる清々しいもの。痩身長躯のお弟子さんの応接もきちんとしていて好感。客層もよろしく、食事が進むにつれダイニング全体に一体感のようなものが生まれてくる不思議。
以上、清酒を3種、品のイイ片口でたっぷり頂いて、本日のお勘定36,000円はお値打ち感横溢。そりゃこのお値段だから、走り名残の高額食材が供される訳ではないけれど、グランメゾン級シェフが誠意を込めて提供する料理をビストロ価格と雰囲気で頂ける…そんなジャストサイズなまごうことなき良店。
いやぁ、こんなことならもっと早く夜伺うべきだったなぁ…といった感慨。翌月某日の予約を入れてから店を出たことはいうまでもない。