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逍遥遊
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tenkin (50代後半・男性・東京都) 認証済
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1回
昼の点数:4.0
2016/09 訪問
麒麟と狐
麒麟山に行ってみようと思い立ったのは少々込み入った理由だ。 松原のすし屋の磯勘でお酒を頼むと、冷でも燗でも麒麟山を出す。これが昔風の旨い酒で、ついつい飲みすぎる。なんでも板前さんの故郷の酒とのことだ。これはどこの酒なんだろうと調べたら、新潟県の津川という町のものだった。麒麟山酒造、そして由来となった麒麟山という山、同名の温泉もあるという麒麟尽くしの町だ。その麒麟山温泉から見た阿賀野川の風景写真はまさに水墨画だ。交通至便の町というわけではないが、どうも行きたくてたまらなくなった。 東京から津川に行くには、関越の新潟経由で磐越か、東北道の郡山経由で磐越か、どちらもあまり変わらない。我々は関越を長岡で下りてしまって、三条や五泉を通って津川を目指した。 津川は山中の川沿いに少ないながら平地が開けた小さな町だ。しかし、その中心にある麒麟山酒造はなかなか立派な工場をもつメーカーで、町の造り酒屋レベルではない。直売所などはないので、近くにある大きな酒屋さんで、お土産の麒麟山を仕入れる。さすがにフルラインナップだった。麒麟山という山は阿賀野川に突き出した中須の上にある丘のようなものだ。川の浸食を免れた岩なのだろうか。登山するような山ではない。その麒麟山を見ながら東へ、山と川に挟まれた細い地帯に麒麟山温泉はあった。 温泉からの眺めはまさに写真のとおりだ。都会の人間は大きな河川が人工の土手に囲まれていない状態を見ることがない。阿賀野川は水量豊富な川だが、人の手が加わっていない自然な風景を保っている。これが水墨画のような風情を感じさせる。日が暮れて川沿いの温泉につかってると、対岸を磐越西線が真っ暗な林の中に光を引きずっていく。なんとなく宮沢賢治的メルヘンを感じてしまう。 ということで温泉を堪能した翌朝、朝食で出た新潟の旨い米以上に感心したのが、味噌汁だ。甘い味噌ではない。どちらかというとしょっぱいくらいだが、得も言われぬ渋く深い味がする。色はこげ茶色に近い。この枯れた風味というのはあまり経験したことがなく、心を掴まれた。朝食の案内に地元宮川糀やの味噌を使用と、わざわざうたっている。宿の人に場所を確かめ、出立後に買いに行くことにする。 店に行く前に、のどかな津川市内を散歩する。狐を先頭に、猿や犬を従えて嫁入り行列をする、かわいらしい石像が置いてある。津川は狐の嫁入りで有名なのだ。昨日の夜汽車に感じたメルヘンは、狐火を狐の嫁入りに見立てたこの地の伝説の再見だったのか。そんな雰囲気が町に溢れているような気がする。 宮川糀やは十字路に面したわかりやすい場所にあった。米どころの町には、必ずといっていいほど、造り酒屋、味噌屋、醤油屋がある。昔は各町で消費する分は、自分の町で作っていたのだろう。立派な店が多いのも特徴だ。店内では鰊の糀づけや野菜の味噌漬けも売っている。味噌は「狐戻みそ」と称する。麒麟山は狐さえ登れないほど険しいので、別名「狐戻し」と言っていたそうだから、そこから取った名前であろうか。 うちではすっかりこの味噌が気に入ってしまい、お土産を消費した後にも、通販で買っている。通販といっても、津川に電話をかけて注文し、宅配時に代引きという、非常にオーソドックスな方法である。ちょっと手間がかかるので、多めに注文して、冷凍庫に入れてある。味噌は凍らない。したがって解凍は不要なので便利だ。この味噌で味噌汁を作れば、あの津川の風景が浮かんでくる。不思議なことに、味噌汁からもメルヘンの香がする。
2017/11/07 更新
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麒麟山に行ってみようと思い立ったのは少々込み入った理由だ。
松原のすし屋の磯勘でお酒を頼むと、冷でも燗でも麒麟山を出す。これが昔風の旨い酒で、ついつい飲みすぎる。なんでも板前さんの故郷の酒とのことだ。これはどこの酒なんだろうと調べたら、新潟県の津川という町のものだった。麒麟山酒造、そして由来となった麒麟山という山、同名の温泉もあるという麒麟尽くしの町だ。その麒麟山温泉から見た阿賀野川の風景写真はまさに水墨画だ。交通至便の町というわけではないが、どうも行きたくてたまらなくなった。
東京から津川に行くには、関越の新潟経由で磐越か、東北道の郡山経由で磐越か、どちらもあまり変わらない。我々は関越を長岡で下りてしまって、三条や五泉を通って津川を目指した。
津川は山中の川沿いに少ないながら平地が開けた小さな町だ。しかし、その中心にある麒麟山酒造はなかなか立派な工場をもつメーカーで、町の造り酒屋レベルではない。直売所などはないので、近くにある大きな酒屋さんで、お土産の麒麟山を仕入れる。さすがにフルラインナップだった。麒麟山という山は阿賀野川に突き出した中須の上にある丘のようなものだ。川の浸食を免れた岩なのだろうか。登山するような山ではない。その麒麟山を見ながら東へ、山と川に挟まれた細い地帯に麒麟山温泉はあった。
温泉からの眺めはまさに写真のとおりだ。都会の人間は大きな河川が人工の土手に囲まれていない状態を見ることがない。阿賀野川は水量豊富な川だが、人の手が加わっていない自然な風景を保っている。これが水墨画のような風情を感じさせる。日が暮れて川沿いの温泉につかってると、対岸を磐越西線が真っ暗な林の中に光を引きずっていく。なんとなく宮沢賢治的メルヘンを感じてしまう。
ということで温泉を堪能した翌朝、朝食で出た新潟の旨い米以上に感心したのが、味噌汁だ。甘い味噌ではない。どちらかというとしょっぱいくらいだが、得も言われぬ渋く深い味がする。色はこげ茶色に近い。この枯れた風味というのはあまり経験したことがなく、心を掴まれた。朝食の案内に地元宮川糀やの味噌を使用と、わざわざうたっている。宿の人に場所を確かめ、出立後に買いに行くことにする。
店に行く前に、のどかな津川市内を散歩する。狐を先頭に、猿や犬を従えて嫁入り行列をする、かわいらしい石像が置いてある。津川は狐の嫁入りで有名なのだ。昨日の夜汽車に感じたメルヘンは、狐火を狐の嫁入りに見立てたこの地の伝説の再見だったのか。そんな雰囲気が町に溢れているような気がする。
宮川糀やは十字路に面したわかりやすい場所にあった。米どころの町には、必ずといっていいほど、造り酒屋、味噌屋、醤油屋がある。昔は各町で消費する分は、自分の町で作っていたのだろう。立派な店が多いのも特徴だ。店内では鰊の糀づけや野菜の味噌漬けも売っている。味噌は「狐戻みそ」と称する。麒麟山は狐さえ登れないほど険しいので、別名「狐戻し」と言っていたそうだから、そこから取った名前であろうか。
うちではすっかりこの味噌が気に入ってしまい、お土産を消費した後にも、通販で買っている。通販といっても、津川に電話をかけて注文し、宅配時に代引きという、非常にオーソドックスな方法である。ちょっと手間がかかるので、多めに注文して、冷凍庫に入れてある。味噌は凍らない。したがって解凍は不要なので便利だ。この味噌で味噌汁を作れば、あの津川の風景が浮かんでくる。不思議なことに、味噌汁からもメルヘンの香がする。