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この口コミは、さむそんめいんどりぱすさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。
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1回
昼の点数:4.6
2006/11 訪問
昼の点数:4.6
男子三日会わずんば即ち刮目して見よ 鮨さわ田
2007/01/24 更新
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この鮨店に対する評価は両極端に分かれるかもしれない。
飲んで食べて一人3万5千~4万円。「高くて旨いは当たり前」という人はハナから問題外だろうし、2時間半~3時間のおまかせコース一本(所謂さわ田劇場)に反感を持つ人も少なくないだろう。
何時~何時までと時間指定され、客全員が同じものを食べていく「システム」に私も拒絶反応を禁じえず、長らく足が向かなかったのであるが・・・。
或る日、「さわ田、平日のお昼なら握りだけでも出来るみたいよ。行ってみない?」と鮨喰妻デリラ。物言いこそ穏やかだが、「黙って連れて行け」なる有無を言わさぬニュアンスが秘められている。
例によって予約電話でお店の力量を推し量る。澤田氏が直接出る。予想外の腰の低い電話応対ながらフレンドリーさも。それでいてソツのない確りした応対は流石である。この男の握る鮨なら間違いはないだろう、と思わせる。前述のさわ田独自の方針は、一見お店本位の「ご都合主義」のように捉えられるが、じつはそうではないことに気づかされた。
中野から銀座の一等地に進出し、この12月で丸二年になるという店内は清潔感に溢れ、寸分の隙も見当たらない。引き戸を開けると真正面にドンと立派な檜の氷蔵庫と銅の羽釜。そしてカウンター、漬け台、俎板が一体となった見事な総檜造りの設えには暫し見蕩れてしまった。
グラスビールで喉を潤す。其々の客の様子を見計らい、徐に山葵を擂りだす澤田氏。弥が上にも期待は高まる。
鮃、鯛、小鰭(二枚付け)、鱚昆布〆、細魚、鯖、赤貝、海松貝、赤身(漬け)、中トロ、大トロ、墨烏賊、槍烏賊、墨烏賊下足、鰹、鰤、カマス棒鮨、縞鯵、小柱、イクラ、海胆(赤白二種)、車蝦(茹で上げ)、穴子、玉子、鬼灯
熟成に拘った鮪はじめ全てのネタは極上。特に藁でスモークされた鰹と鰤の旨さは筆舌に尽くし難い。酢飯は固すぎず柔らかすぎず。握りは手早く手際よく姿形も美しい。だが、ひと言でいうと「濃厚な鮨」である。鮨でこのような濃厚な食後感はこれまで味わったことが無い。些か表現が不適切かもしれないが、例えば水谷の鮨は「毎日でも食べたい!」という鮨なのに対しさわ田のそれは「もう当分鮨は結構」という鮨なのである。悪い意味ではなく、これは澤田氏独特のもてなし方とでもいおうか、来て頂いたお客様に十二分に堪能して頂こう、私の鮨でお腹いっぱい満足して帰って頂こう、という気持ちの表れなのだろう。
ビールと冷酒(磯自慢)二合戴いて一人2万4千円。当然一般庶民である私の一回の食事代としての閾値を遥かに超えている。だが然し。所要時間約2時間、まさに「俎板の上の鯉」状態であったがじつに心地よい至福の時間が過ごせた。この満足度の高さからすれば至当な料金と思う。
毀誉褒貶相半ばする店主の澤田幸治氏だが、じつに気骨溢れる男である。今が伸び盛り/働き盛りの三十代半ば。氏の握る姿勢からは鮨に対する意気込み/直向さがヒシヒシと伝わってくる。中野時代は無論、銀座移転当初の頃も存ぜぬ私だが、鮨一本に寝食忘れ試行錯誤を繰り返してきたであろうことは想像に難くない。
これからのさらなる成長/進化が大いに楽しみである。