『理想と現実』お茶山さんの日記

お茶山の勝手にグルメガイド

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お茶山 (男性・山口県)

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 バーは寿司屋同様、サッと行ってサッと帰りたいもんだ。もちろん、良いバーであればあるほど、腰は重くなる。美味い酒を楽しみながら、居心地良く過ごせる気遣いがあるからである。しかし、飲み手として、それに甘えてはいけない。
 理想的には、仕事帰りに銭湯で汗を流し、馴染みの寿司屋に立ち寄って簡単な食事をすませ、さらにバーに立ち寄り、あまり長居しないで軽く飲みたい。
 仕事の話なんかしたくない。「よく来るけど、よくは知らない」客の一人として、店の人たちとも程よい距離感で付き合いたい。
 ・・・しかし、冬の寒さ厳しきこの盆地では、そんな美学どころじゃない。濡れた髪のまま、ウロウロなんてできるはずもない。冬はクマのように、ただひたすら、春を待つのみである。実際は古いマンションの一室で、日本酒を飲みながら、湯豆腐を食う生活を、また別の楽しみとして、味わうのみであった。
 しかし、どうだ。ホタルが舞い飛ぶこの季節。仕事をさっさと切り上げると、自宅に急いで帰り、シャワーを浴びる。友人からもらったシャワージェルのジュニパーベリーの匂いがたまらない。飲みてえええ、ジントニック。抑え切れない欲望が頭の中を駆け巡る。
 「・・・そんなに風呂上がりに飲みたいなら、部屋に常備すりゃいい。」とおっしゃる方もあるかも知れないが、それじゃダメなのである。
 バーに猛ダッシュ。ドアを開け、カウンターに腰掛けるや否や「ジントニック!」挨拶代わりの注文。
 「お茶山さん、風呂上がりですか?タオルが首に掛かったままですけど。」
 うっわー、忘れてた・・・店の人たちと程よい距離感で付き合いたいはずなのに、滅茶苦茶浮いている感じである。
 
 結論。大酒飲みに美学なし。
 ゲンズブールの台詞「スノビズムとは、げっぷになるか、おならになるか、ためらっているシャンパンの泡。」を思い出したお茶山である。
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