『シリーズ「帰ってきた #だからワタシは嫌われる」(その12)何を今さら』ムササビヒンソーさんの日記

【面白くって】もうぞこいてんなよ。【ためになる】

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ムササビヒンソー (60代前半・男性) 認証済

日記詳細

「ひとり当たりGDPが」とか「労働生産性が」とか「安いニッポン」とか今さら言わんでもイイのコト。

↓は今話題? のいにしえ系SNS「mixi」に13年前に書いた日記。当時から「すでにそうなっていた」んだよな。

ちなみにこの「事案」を機に、鶴印の利用はやめ、全日本空輸に宗旨替えしたのは、言うまでも、ない。

ま、どっちでもたいした違 #よけいなことをかいてはいけません

(以下、本文。原題「出来栄えと値段」2010年1109日投稿。29230213日一部加筆訂正。)

昨日、中国入りのため成田へ。

搭乗前に鶴印のラウンジに行き、あさめし代わりに同社と提携しているスープストック・トウキョウ謹製のオニオン・ポタージュをビュフェの什器からレードルですくい、口にする

…と、電気式の湯煎機の調子が悪いのかヌルい。具体的には燗酒の「ぬる燗」よりチョッと上くらいの温度領域。

気を取り直して、自動ビア・サーバでビールを

…これも機械不調で、六割しか注がれない。

直接飛行に関係ない事ではあるが、メンテナンス費用をかなり削りこんでいるような印象を持ち、ちょっと不安になる。大丈夫か、鶴印?

と、言っているうち、時間になり飛行機に案内される。

機内食のひるめしは「まだしも」な選択で洋食。味わいはま、機内食なので文句は言わぬ。が、最後のコーヒーになり、カップ&ソーサとともに運んでこられたティ・スプーンを無意識に手に取ると、なにか違和感がある。

ん?と、スプーンの皿ではなく軸(ハンドル)部分に目を落とすと、軸の片側にプレス打ち抜き時のガジリが、仕上げ研磨後だと言うのに、しっかりと残っている。

明らかに金型セッティング時のミスで、左右のバランスが崩れ、片側だけがクリアランス不足を起こしている状態だ。

結果、軸に無理な力がかかり、わずかではあるが ーしかしわかる人にはわかる程度にー 軸全体がネジレている。

へぇ! こんな代物よく出荷前検品でハネられなかったねぇ…と思いつつ、シゲシゲとブツを眺めていると、

「あのお客様、なにか不具合が?」

と空中小姐が、心配そうな顔をして声をかけてくる。

いや、なんでも…と口の中でモゴモゴしてると、教えてくれ、と言われたので、上の事を伝え、とはいえ、別に交換がいる訳ではない旨申し上げる。

が、小姐、何を考えたのか、ギャレーからティ・スプーンを何本も持ってきて、好きなものを使ってくれ、と、言う。

そういうこっちゃないんだけどな…と思いつつ、持ってこられた数本に目を通す。と、やはり二割ほどの製品に左右非対称ブランキング由来の「不具合」が目につく。いやはやなんとも。

ま、こんな事、金属加工業の端っこにしがみついている奴しか、気にしなかろうがな、と、ニガワライしつつ、一方で、この程度の品質水準のもの=つまりかなりの安物、しか、鶴印航空輸送社が仕入れられなくなっている事に、同社の台所の苦しさと、いささか大げさだが、本邦の将来に思いをはせずには、いられなくなる。

東アジア、東南アジア、そして欧州やオセアニアで商いをしていて有り難く感じるのは、かの地の顧客諸君が「日本の製品は質が佳い」「日本に行けば、偽物ではなく本物が買える」と、こちらが頼まなくても「勝手に思ってくれている」点である。

いや実際、本当に! 

これは別に幻想ではなく、先の設備のメンテナンス、匙の握り一つへの「わかる人にしかわからぬ」品質管理がこれまでは、やや病的なほどしっかり徹底されていて、その積み重ねが、「佳いニッポンのしなもの」を具現しており、これがかの地の皆様にもご評価頂けていたんだと思う。

ところが、である。

不景気とデフレがこの積み重ねられるべき「ひとつひとつ」の出来栄えを、鶴印社には「買えないほど高いもの」にしてしまい、又、貧すれば鈍するで、買う側も、廉くて質が「それほど」落ちてなきゃいいじゃん! と、文字通り易きに流れる。

と、結果として、「佳いもの」であったはずのニッポン式サービスや品物はその「出来栄え」を失い、よそのものと変わるところがなくなり、埋没していく事になるんじゃねぇかな?なんて、思ったわけである。

人の手によるアレコレを、人件費=コストで判断するのは、経済上の合理である。また、そのアレコレに対する、時間当たり、工程ごとのコストを「最も値が張らないところ」へ持っていき、廉価に仕上げようとするのも、同様。

又、市場が必要としない、オーバー・クォリティを提示して、高い値段をつけても売れないぜ! という意見もあろう。

しかし、わたしたちの先輩が、戦後数十年かけて築き上げた「本邦の価値」=うりもの、自体をかえりみず、単に廉価な「ブツ」を仕入れ、これを本来の「うりもの」を欲している層に「安売り」という名の「押し売り」をしている、というのは、さてショーバイとして合理なのか?あるいはそんなモノを押しつけ続けていたら、そのうち誰からも見向きもされなくなるんじゃねぇの?

…ってな事を思っているうち、上海浦東空港に到着。中国東方航空に乗り換え、成都に向かう。

機中の空中小姐の、「心遣い」のきめの細かさにビックリする。これってもともとは、ニッポンの航空会社の「お家芸」だったんだけど、な。

だからワタシは嫌われる。
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