『シリーズ「帰ってきた #だからワタシは嫌われる」(その9)平家・海軍・国際派』ムササビヒンソーさんの日記

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ムササビヒンソー (60代前半・男性) 認証済

日記詳細

エチゴにもタイヤ屋さんがやってきて、漫画ゴラクの風俗記事よろしく「あそこは何点、アレはまぁまぁ、ココでは愚息も昇天! 」なんて風に番付をした。

昨年のはなし、今回の疫病禍さわぎの始まるか始まらないかの頃。

個人的には贔屓の店にだけ繰り返し訪問して、うまいうまいとやっていればよく、物見高くミーちゃんハーちゃん、たべものや千人斬りの儀を執り行う必要はないのだけれど、こちらもアキンドである。

人気のあるもの、ハヤリのものは、自ら見て、味わって、感じてみる、というのが、アキナイの道理であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー(世界基準©副島隆彦)である事、いうを待たぬ。

と、いう訳で、昨年から今年にかけ、星が二つ付いた店一軒、ひとつの店一軒、ともにおすし屋さんに予約をとり、訪問してみた。
(ちなみに「2020年エチゴ版」で三ツ星の店はゼロでした)

いずれも今はやりの完全予約制(ご案内の通り「星付き」になったので予約自体がとりにくくなっていた)にしてオマカセ方式。

先付が出てきてオツマミがじゃんじゃか出てきて、お鮨一式が波状攻撃で続き、二時間かけて職人の親方が、ねっちりと面倒を見てくれ、腹いっぱい、というスタイル。

その間、こちら側は、といえば、カウンタ席に納まり、酒器を使って中身をすすっているか、出されたものをモグモグやって、うーとか、はーとか言ってるだけという有様。

二つ星のほうに至っては、ふわりと握ったものは、形が崩れやすいからと、コチラが出した掌に、刷毛で手酢がサッと塗られるが早いか、ポン! と直接乗せられて、ウロタえさせられる。という演出付き。

そのうち直接、口に「あーん」と挿れてくれる「エンターテイメント」ぶりを発揮しだすかもしれない。

そしてどれもこれもこってりとしてい、強く、濃厚な味付けをしてくる。

どちらの店でも、握りずしには「煮切り」を刷かず、そのままもらったのであるが、とにかくたねの寝かせ具合、そしてすし飯自体の味付けが強く、なんだか舌の上に鉋を掛けられたような気になる。

一つ星のほうなど、ドコサヘキサエン酸ムレムレというか、青魚の油気を残したままの仕事をしてくる(有体に言えば肝油くさい)ので、パンチ力やインパクトといわれる「当たり」を好む若い人には佳いのかもしれないが、中高年のワタクシはもう、辟易としてしまう。

一通り出されると、舌は鈍磨し、酒で脳は煮え、腹ぱんぱんでボーっとしてしまう。

予め引き受けるお客の数を固定し、濃厚でたっぷりな、しかし誰に対してもおんなじものを、ゆっくり時間かけてケレン味たっぷりに提供し、しかも味が強いから喉が渇き、酒の注文はじゃんじゃん入る、というのだから、

売上=値段x数量

  =(原価+粗付加価値)x(顧客数xリピート率)

  =(仕入x歩留率+高くてインパクトのつよい食材を食べている「ような気に」なる効果)x(星効果により集客xエンタテイメント性でひきつけ、腹いっぱいにさせて満足させる)

と、すべての方向に手が打ってあり、なるほどエゲツないシノギもとい、効率的なビジネス・モデルであるな、と大いに感服した次第。

でもさぁ

ひとつのところに座りっぱなしで、長い時間延々と、与えられるものを無批判にがぶがぶ食べ続け、その間ずっと「飼い主」に面倒見てもらうっているのは、なにかに似てる。

ひと昔前のバブル時代、ぜいたくになったニッポンジンは盛んに海外旅行に出るようになり、その際、座席に縛り付けられたまま空中小姐に面倒見られながら、みんなで同じメニュをこなす「機内食」のありさまを、養鶏場のブロイラー、或いは/及び、フォアグラづくりの強制給餌(ガバージュ)、もしくは養豚場の分娩クレート https://www.hopeforanimals.org/pig/10reason-to-stop-sow-stalls/ に例えて、揶揄する向きもあったけれど、今の世の中、「予約の取れない人気のおすし屋」で、おんなじような事をされるのを嬉々として受け、大喜びしているというのだから、まぁ、平和である。

いや、

座ったまま濃密なサーヴィスを受けつつ、出されるものを無批判に、もぐもぐ食べてご満悦、というのは、今に始まった事ではなく、70~80年代、出張で駐在で半島に遊んだオトウサン方が愉しんだキーセン・パーティの人情に通底するところがあり、結局、東アジアの民にとっての贅沢、豪奢、おタノシミというのは、そもそも「こういうもの」なのかもしれない。

世の中の本流にならぬ、反主流派、傍流の生き方、暮らしぶりを「平家・海軍・国際派」というそうであるが、本流の

「キーセン・パーティ・うっしっし」

に乗れず、辟易としてしまうワタクシは、もしかすると「そっち側」なのかもしれない。

国際派なんてトンでもない、土蜘蛛の系譜のハズ、なんだけどね。

#だからワタシは嫌われる。
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