『シリーズ「帰ってきた #だからワタシは嫌われる(その7)」蕎麦屋で蕎麦喰うとか、なにトーシロみたいな事、言ってンすか?! 』ムササビヒンソーさんの日記

【面白くって】もうぞこいてんなよ。【ためになる】

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ムササビヒンソー (60代前半・男性) 認証済

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旧い、照明がチョッと落ちた蕎麦屋の、食事用としちゃやや狭くてちっちゃいよなあ、と思わせる食卓におさまり、ツマミをひとつ、多くてもせいぜい二つとり、燗の点いた徳利を一本、二本玩弄し、猪口で口唇を潤し、うー、とか、あ゛-とか、意味不明な唸り声を上げる

……そんな真似に人生のヨロコビ、とまでは申さぬものの、愉快さ、面白みを覚え、月に数度は執り行わないと、なんだかムシャクシャしたココロモチになる「ような気が」するようになったのは、いつ頃からだろう?

たぶん若い頃は、渋好みというか、大人ぶり、粋がり、いわば「おぢさんコスプレ的」に背伸びしてやっていたんだと思う。

しかし、それだけじゃ間が持たないし、腹も膨らまないから、一応「晩酌風」の真似事をしてから、「種もの」と「もり」を両方やって、ようやく「気が済」み、

「ああ、蕎麦屋の勘定って、けっこういっちゃうネ」

なんてボヤいていた。バカだよね。

しかしまあ、こういうコスプレ「ごっこ」も、素振り千回。

丗年も続けていればそれなりに「型」が決まってくる。

というか、我ながらひとつひとつの所作(笑 に無駄がなくなり、滑らかになってき、同時に実際の年齢も、胃袋の容量も、動作に見合った「お疲れちゃん気味」になる。

そうすると酒を飲みながらで腹をクチくする、というのも面倒になってしまい、冒頭ご案内くらいの酒量と「食い物」足してもせいぜい「かけ」いっぱいで、そこそこ満足し、店を出るようになってしまう。

或いは最初から「種もの」……「玉子とじ」や「あられそば」冬であれば「牡蠣そば」とか「かも南蛮」とかネ、をとって、これらのアタマ(具)で酒を飲み、そのあと蕎麦と甘汁をすすれば、いつのまにやら晩酌と夕めしがいっぺんに終わってしまい、「きつねに摘ままれた」ような気分で勘定書きを持ってこさせたりする。

滞在時間せいぜい40分。

なぜかアタマのなかに「完全犯罪」の四文字が浮かんでいたり……なんだかなあ。

かくしてここ数年、蕎麦屋には頻繁に出入りしているものの、看板の「もり」「せいろ」は、ほとんど口にしていない。

酒器を使いながらだと、天ぷらも蕎麦も、いつ食べていいかわからない「天せいろ」の類は、ハナから注文しない。

冬場だと、「小田巻蒸し」だの「鍋焼きうどん」をとり、具をチマチマつまんだり、ノビてフガフガになったうどんを一本すすっては猪口を持つ手首を返してホッホいって喜んでいるから、もはや温冷かかわらず蕎麦すら口にしない。

蕎麦屋の符丁で、せいろを一枚、或いは、かけを一杯しかとらない客を「おヒネリ」といって「あんまり」喜ばないそうであるが、このような始末をお店側はどう思ってらっしゃるのかしら? 

考え直してみると、申し訳ないような気分にもなるけど、厚顔ムチムチと書いて中高年と読む年頃ともなると #いんだよ細けえ事は! とウソぶいて沙汰やみにしてしまう。

やだねぇ。

あ、そういえば!

廿数年前、まだ独身のころ、神田の蕎麦屋で冬の寒い時期にひとり、相も変わらず「小田巻蒸し」をとり、これと燗酒でホッホしていたら、相席で向かいに座ったお嬢さんから

それ? なんですか?

と尋ねられたのが縁で意気投合し、一緒に二軒はしごして、ケータイの電話番号とアドレスを交換(というのが時代である)し、その後も数度、デートしたっけ。

これ、社会通念上の「逆ナン」だったのかな? はは。

ですから男性諸君、蕎麦屋では「蕎麦以外」のモノをとったほうが、余程に費用対効果が高 #だからワタシは嫌われる
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