©Loroさんのマイ★ベストレストラン 2011

Loro piana。の食べ歩る記 備忘録

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マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

マイ★ベストレストラン

1位

千松しま (本塩釜、東塩釜、西塩釜 / 日本料理)

2回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 ¥8,000~¥9,999

2017/11訪問 2017/12/30

塩竃おもてなし料理の味に舌鼓…『千松しま』

塩竈の高台に佇む赤本の宮城2017特別版にて⭐︎(ひとつぼし)に輝いた『千松しま』さん。今回は色川店主に無理を申し上げてのカウンター席にひとり陣取り『北大路魯山人』と室町三井家に伝わる『江戸時代の器と酒器』を使わせて戴き亭主 色川さんならではの『塩竈おもてなし料理』を堪能させて戴きました。全ての料理が美味しかったことは言うまでもありませんが懐石料理の華であり料理人の腕の見せどころでもある椀物。直前に削られた節で引かれた出汁は銘店『招福楼』系譜の実に素晴らしく清らかな吸い地。椀種には『アコウ(荒神目抜け)』と『粟餅』と菊花。口に含むとふっと鼻腔から抜ける削りたての節と羅臼昆布の上品な旨味は秀逸。向付は二段構えで前半は地物の『塩竈ひがしもの』と称されるメバチ鮪の赤身、中トロ、トロの三種味比べとアオリ烏賊、後半は通称『白川』とも呼ばれる幻級の『白甘鯛』の造りを漁師風の厚切りにて。舌にねっとりと絡みつく『白川』には卸たての山葵を載せ『岩塩』で味わいます。口に運ぶと凝縮された旨味で得も言われぬ口福感で満たされます。そして箸休めの酒肴『鱗煎餅』はやはり『招福楼』さん譲りの鱗を立てぬ若狭焼の焼き方でパリッパリに。『鯨』は自家製のベーコンにして実山椒とともに閖上の本玉の『赤貝』は肝まで味わい『牡蠣』は〆の食事の吸物や自家製の牡蠣豆腐にまでも使われ『秋刀魚』は凌ぎの飯蒸しと言ったように地の旬の食材と所縁の食材をフルに使いつつ食べ手の肩肘の力を自然に抜いてゆく酸いも甘いも知り尽くした色川亭主の料理に改めて魅せられた至福な夜でありました。
今年の生誕記念日の昼餉は東北六県に数多ある料理店の中でも全国の食道楽の方々から注目を集めている
塩竃の"千松しま"さんにて店主である"色川御夫妻"や友人に祝って戴いての思い出深い宴を催して戴きました。

"千松しま"さんの魅力につきましては既に語り尽くされている感もありますので割愛させて戴きますが料理の味
も宛ら『塩竃流のおもてなし』に訪れられた多くの方が感銘されリピーターとなっている東北屈指の料理店である
ということは疑う余地はなく個人的には郡山に店を構えられている"らん亭"さんと當店の二軒は東北では別格の
立ち位置にある料亭であると思います。

この日の料理は『先付』の三種から…、生誕日を祝って供された『赤飯』には贅沢にも『生口子』が添えられ店主
の言葉が添えられた蓋付の器の中には大きな黒鮑を使って作られた『鮑の酒蒸し』と生松藻、他に『蛸の桜煮』。

椀物は『玉子豆腐と蓴菜』を椀種に使い紅白の寄せものが添えられた椀。吸い地の味は従来、當店で供される
ものとは故意犯的に変えられており滋味優先の味わい。

塩竃流の『造りの盛込み』には漁師風に厚めに切り分けられた塩竃ヒガシモノと呼ばれるブランドものの鉢鮪に
金華山沖で水揚げされた金華鮃、太平洋の赤いダイヤ『喜知次』の湯霜造り、水蛸料理に定番料理の饅和え等。
中でも特筆すべきは『喜知次の湯霜造り』、脂ののりは申し分なく特に皮目の部分から溢れ出る旨味と脂、正に
口福』の瞬間が訪れます。焼物は『鴨ロース』に『筍の木の芽焼』、炊き合せ代わりに喉の部分が黒いことから
ご當地では"のどぐろ"と称されている『赤めばる』系の煮魚、味は『喜知次』と『めばる』を足して二で割った
ような感じ、箸休めに麹と無花果のゼリー寄せが供された後、『ぼたん海老の真丈揚げ』に同鬼殻焼と料理が続き
〆の食事は『鮑と鮭と若布の雑炊』、存在感のある『黒鮑』がゴロゴロと入った贅沢な雑炊を余すことなく堪能。
水菓子はイラ粉で作られた和菓子と桜餅を『お薄』とともに味わい今回の昼餉のコース料理はひと通りです。

心からのおもてなしを受け一品入魂の美味しい料理に舌鼓、京都や東京のソレとは異なる『塩竃おもてなし料理』。
一年前の大津波がまるで夢の様な静かな千賀ノ浦の湾を遠くに臨みゆっくり寛いで愉しませて戴いた極上のひと時、
三陸塩竃に"千松しま"という名店ありにけり。

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2011/08のレビュー
昼餉は"たまき庵"さんで蕎麦とうどん三昧、そして夜の食事は今や東北を代表する料理店であり全国区的の
知名度を誇る"千松しま"さんへ。3.11の震災以来、畏友とともに當店を訪れるたのは今回が二度目のこと。

あの日から既に五ヶ月の月日が経ったとはいうものの被災地の石巻は復旧すらままならず市街地の信号機の
灯りは消えたままであり各交差点に立たれた警察官の手旗信号の誘導で未だに車が往来しているという現実。

塩竃エリアは街を見たかぎりでは復興が進み以前の状況に戻りつつあるようにも見えるものの未だ厳しい状況。
いかに魚貝類の宝庫といえども市場が正常に稼動されていないので食材の調達もかなり制約があり難儀な筈、
そんな中でも店主の色川氏は『』や『海鞘』、『喜知次』に『金次郎鰈』(目板鰈)、『鱶鰭』、『牡蠣』、『秋刀魚』と
塩竃ひがしもの』と称される『鉢鮪』など前浜で水揚げされたものを集めて我々一行を歓待してくださいました。

料理は涼しげな『車海老と鯛のゼリー寄せ』からはじまり淡雪の如く口の中で消えて行く〆の『鯊の天丼』まで
一品入魂の渾身の料理、個人的に粽の『喜知次のすし』と今から四年前に初めて當店へ伺った際に供された
毛蟹の甲羅揚げ』が強く印象に残った料理、特に『毛蟹』は三陸産のものではなく北海道雄武産の1㌔アップ
の最高のものが用意されており脚肉の味、かにみその濃厚な味ともに身体が思わず仰け反る美味しさに言葉
を失い無我夢中で味わいました(笑)

當店の魅力を語るにあたり、これ以上、単に賛辞の言葉だけをならびたてても仕方のないことでしょう。

"千松しま"さんの塩竃流の『おもてなし料理』と女将さんのまごころのこもったおもてなしに触れられると、きっと
福沢諭吉』さん一枚の価値観が変わることと思います。後はご自身の五感でそれを味わってみてください。
            
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2011/06のレビュー
突然ですが…と日本テレビの製作担当者の方から"mixi"のメッセージを通じてアプローチがありました。

その内容はといいますと"Tabelog"に掲載している画像の借用許可と東日本大震災の復興の一助として
青森~盛岡~仙台~福島の東北太平洋エリアでグルメ番組の収録をするにあたり『地産地消』をひとつ
のキーワードとして、お奨めの料理店を何軒かピックアップして欲しいという内容のメッセージでした。

仙台では一期一会の"陸女鮨"さんに、塩竃おもてなし料理の當店"千松しま"さん、前浜のひがしものと
呼ばれる鮪を味わえる"すし哲"さんに天ぷらの"水谷"さんと絶対外せない"萬み高橋"さんの五軒をお奨
めさせて戴ききました(笑)

放送は今月の七月三十日(日)の午後2時30分~3時55分の一時間半番組、日本テレビ系列の福島
中央テレビの製作番組~東北グルメの今を調査せよ~日本テレビ系列局全国22局でオンエアとなります。 

そんなことで仙台編では當店"千松しま"さんでの八時間にも及ぶ収録が無事に終了された模様です(笑)

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2011/05のレビュー
震災から早二ヶ月が経った、五月のと或る日に塩竃にある"千松しま"さんへ畏友とお見舞いに伺ってみた。

店は高台にあることから無事ではあったものの店内の壁に入ったヒビなどが揺れの大きさを物語っていた。

現在、店は休業中ではあるが今月中旬より営業再会の模様、休業中は色川店主の味を"お取り寄せ"にて
味わうことが出来るという明るいニュースを耳にし早速にオーダーして家路に、数日後に届いた品物が画像
のもの、四千円の詰合せを送って戴いたのですが紐解いて驚愕『鮑の磯煮』、『牡蠣の燻製』、『鰻の山椒煮
というリッチな内容であり、これで本当に四千円でいいのですか?と正直思いました。

鮑の磯煮』は別名『甲州煮貝』とも呼ばれる鮑の柔らか煮、醤油ベースで味付けされた鮑はうま味たっぷり、
これに臍と呼ばれる貝殻との接合部分と肝も添えられており、これ一品だけでも三千円の価値はあると思う。
国産の鮑の持つ豊潤な肉質と口の中に広がる磯の香りと肝独特の舌触りとほろ苦さは輸入物の安価な鮑
モドキのロコ貝ではこうはいきません。
付け合せに『くきわかめ』と『昆布』が添えられていますが、この二品は『鮑の煮汁』で炊かれたものであり
佃煮屋の甘ったるいソレとは一線を画す味です。鮑は海の中で海藻を食べているので理に適った付け合せ
といえるでしょう。

牡蠣の燻製』は仙台味噌を使い一度、味噌漬けにした牡蠣を桜のチップでスモークしたものを濾した梅干で
酸味を加えるという非常に手の込んだもの。単なる燻製で終わらないところが如何にも色川さんらしい一品。
口に含んだ瞬間に薫香が広がり歯を立てると味噌の香味が更に重なり喉を過ぎてから梅の清涼感が後追い
してくるという完成度の高い一品で箸が止まらなくなってしまう程に後を惹く味。

そして當店の『鰻の山椒煮』は何度が戴いており既にレイティングもしているので細々とした説明は割愛させて
戴くが安定感のある一品、炊き立ての白いごはんの上にのっけて食べても良し出汁をかけて茶漬けとして味わ
っても良し、色目からは濃ゆい味付と思われる向きも居られるかもしれないが、ごはんの友にはもってこいの味、
滋味溢れる美味しさが愉しめます。

四千円で名店"千松しま"の味を試すことが出来るこのチャンスをお見逃しなく…、自宅用として買い求めるのも
勿論のこと来る『父の日のプレゼント用』として送られるのもきっと悦ばれること間違いなしかと…。

商品代金は仕入れ状況によって多少の変動はあるようですが、この内容で品代が五千円以下となれば買わぬ
手はないでしょう。詳しくはこちらを… http://o.tabelog.com/rvwdtl/70732/

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2010/12のレビュー
東北エリアにも個人的に大好きな料理店や割烹、鮨店が何軒かありますが料理店では文句なしに一番好きな
"千松しま"さん。御縁とは摩訶不思議なもので店主の色川氏より千賀の浦産の天然鰻が手に入ったという
吉報の電話を戴いたのですが実にタイミングが良いことに自分は仙台に居たのであります。
これってほんとうに不思議ですよね。都内より友人一行が食べ歩きの旅に来た際には仕込みや準備の関係で
五名が限度と云われ自分は友人達と一緒に食事をすることができなかった。
已むを得なく自分達は近くの"きくち"さんという料理店で別個に食事をし"水菓子"だけを"千松しま"さんで
皆と一緒に戴いた時以来のこと…。あの時、友人達に供された料理もとても美味しそうだった。

その際、店主より『千賀の浦産の天然鰻』の話を少しだけ伺っていたのですがまさかこのタイミングで連絡を
戴けるなどとは努々思いもよらぬこと、きっと何かが袖を惹き合ったのでしょうね。

電話口で前ゞ夜に"銀たなべ"さんで天ぷらを戴いたけれど""も"銀宝"も食べることが出来ずに残念
だったという話をしたところ昼過ぎまでに用意してくださるとのこと、えっ、それって冗談でしょうと思いながらも
色川さんのこと、きっとどうにかされるんだろう~と期待をして再訪、カウンター席に腰を下ろすや否や厨房より
仕込みを終えたばかりの"銀宝"と""を手にした店主が顔を出された。

何とかこれだけですが用意させて戴きましたよ…。これだけって? いやー凄い、感謝感激雨霰です。
ということで"天ぷら"とビールで半分、残りを"天丼"で全て綺麗に胃袋に収めさせて戴きました。

銀宝を食べずして天ぷらを語る無かれ』という格言がありますが正にそのとおり、"銀宝"といえば夏場が
旬と思っていましたが當地では十月~十二月まで味わうことが出来ることにも二度驚きです。

""の天ぷらは口の中で淡雪の如く消え去り"銀宝"の天ぷらは穴子よりも淡泊な味わいですが旨みという
点では比較にならぬほど上を行く美味しさ、『借金をしてでも銀宝の天ぷらは喰え』という諺も食べてみれば納得
というもの。

""、"銀宝"の天ぷらを存分に満喫し身も心も腹も満足となったところで別腹で絶妙な塩加減の"塩辛"で
即興の"塩辛ごはん"を戴き至福の食事は終了となった。

八寸等にも使われる"田螺"は店主自らが採りに行かれているものだと知りまたまた驚き… 超稀少な天然鰻は
山椒煮にされたものを寝城に持ち帰り後日少しづつ味わせて戴きましたが絶品でありました。
何っといっても""がゴリッパであり言葉では云い表されぬほど美味しかったです。

大好きですね"千松しま"さん、自分の中で★★★★☆(4.5)という評価にしておく意味がなくなりました。
レビューの更新とともに評価を★★★★★(5.0)に上方修正させて戴きます。

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2008/07のレビュー
京都から盛岡に戻り一番最初に伺ったのは塩竈にある當店【千松しま】さんであります。
ご存知の方も多いと思いますが【紫式部】が書き綴った【源氏物語】から今年は千年目の年と云われ京の都では
【源氏物語千年紀】のさまざまなイベントで盛り上がりを見せています。

【源氏物語】の主人公は【光源氏】で、光源氏のモデルは嵯峨天皇の第12皇子【源融(ミナモトノ トオル)】と語り継がれ
ている。

それがどうした【塩竈】と何の関係があるんだ~と云う声もどこからともなく飛んできそうでありますが…

京都に御住まいの方々や土地勘のある方々であれば御理解戴けることと思いますが【五条大橋】の先に下京区
【本塩竈町】と【塩竈町】と云う町名が京都の街に現存しており、これが何を意味するか?

【光源氏】のモデル【源融】は現在の宮城県塩竈市融ヶ岡に邸宅を構え国府【多賀城】で東北を監視する要職の
【陸奥出羽按察使】で赴任されていたと云伝えられており【光源氏】のモデルの主は【塩竈の千賀ノ浦】の風景を
忘れることができず帰京後に六条の辺りに【塩竃の千賀ノ浦】を模した大庭園を築かせたのだそうであり、これが
現在の五条大橋から烏丸通に向う手前の五条通を挟み【本塩竈町】と【塩竈町】という町名として現存していると
いう事実。

【京都に移された塩竈】、【平安ロマンの縁】で繋がっている…という嘘のような本当の話なのです。

(閑話休題)

今回の再訪では【千賀ノ浦】という【光源氏】がこよなく愛した眺めを明るい時間に一望したいという思いから昼の
時間に伺い前回同様に料理は壱万円也のものを戴きました。

先附の【仙台七夕】と【お月見】をイメージして作られたという茗荷、蓮芋、御芋、小豆を使い出汁のジュレがかけ
られた料理からはじまり、大皿に四人分盛り込まれた【粽】と一見【鱧】と思いきや何と【海蛸 (ほや)の寿司】。
個人的に【海蛸(ほや)】を好んで食べることはなませんが口に入れ噛みしめ喉を越えた後から独特の甘みと清涼
感が後追いしてくる感じがなんともいい感じでした。

【粽】は笹をほどいてみますと中は【ぐじ(甘鯛)】の寿司で、この【ぐじ】の寿司が美味いのなんのって…。

店主の色川さんは名門【招福楼】さんの流れを汲む祇園の老舗割烹【味舌】さんで磨かれた確かな
腕前で美味しい料理を舌を楽しませてくれます。

そしてこの日のサプライズ第一弾は、こんなに立派で大きな牡蠣が存在するのだろうかと目を疑う【八年もの】の
天然もの牡蠣』、画像では上手く牡蠣の大きさが伝わらないと思いますが長さ25㌢幅が15㌢程のデカくて、
ぶ厚い牡蠣ながら大味ではなく濃厚な海のミルクがギュッーと濃縮された滋味溢れる味、これを特製の薬味と
ともに戴くと思わず口元が緩んでしまいました。

【椀物】は鯒、水茄子、粟餅、茗荷の吸物ですが素晴しい吸い地であります。

【鯨と山葵菜】の小鉢、蔓紫、長茄子、牛蒡、昆布、笹に包まれたものが大皿に盛込まれて登場。
笹の葉に包まれたものは【鯊の蒸し寿司】、炙られた笹の香ばしさが加味されてとても美味でした。

【牡丹海老と西貝】の小鉢は八角の風味が印象的、西貝とは螺貝やばい貝、九州の赤西貝の仲間なのでしょうが
コリコリとした食感は小気味良いものの味は和の粋を越え大陸的な味わいでした。

【造り】は【がぜ海栗】と【金次郎鰈(目板鰈)】、【鮪】、【海老ともずく】の酢の物と定番の【鯊のぬた】。

そして、この日のサプライズ第二段は【がぜ海胆】と呼ばれる殻に入った【ムラサキ海胆】であり【ムラサキ海胆】が
また尋常な大きさのものではなく海胆の身の一片の大きさが小振の握り鮨程の大きさがありましたが【千賀ノ浦】
で極少量獲れるとても稀少なものらしく【ムラサキ海胆】と云っても味は濃厚であり口の中に甘みを残しすっーと
消えて行きました。

今回、思わず呻った料理は【海蛸(ほや)の揚物】。
【海蛸(ほや)】を大葉と穴子で包んで揚げたもので口中に磯の香りがパァーと広がり後から不思議な甘みが押寄せ
てきます…。まるで【千賀ノ浦】に寄せては消える波の如し…。

そして食事は【鯊と冬瓜の雑炊】、香の物と【海蛸(ほや)の珍味】とともに戴きました。

【水菓子】を戴き、ほうじ茶を戴いて、ふう~。今回も食べに食べたり。【抹茶】を戴き御馳走さま。

【京都】と【塩竈】は平安の時代から【平成の時代】に時は移っても、やはりしっかりと繋がっていた。

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2007/12のレビュー
Tabelogの東北六県の全エリア、全部門で最上位評価の店であり敬愛するウィーンの森の物語氏に奨められて
いた料理店であり年内訪問を目標に掲げていた店でありましたが二名~の完全予約制の店ということと立地が
立地だけに色々とハードルが高く誘う相手選びにも難航し今の今まで未訪となっておりましたが、年の瀬となった
と或る日に東京と盛岡の友人達が加わり夜の部に初訪問することが出来ました。

JR本塩竈駅よりタクシーで3メーター程の距離 "塩竈神社"の更に高台の塩竈の港内を一望できる最高の眺望
ロケーションの臨める住宅地の中にひっそり佇むように店が構えられておりました。

店名の【千松しま】の由来は以前、店を構えられていた【松島】に由来するそうであり【松尾芭蕉】もその景観に
感動したという【松島】に立つ【千本の松】を謳った【朝霧や跡より恋の千松しま】と謳われた【千松しま】から名付けら
れたのだということを女将さんから伺いました。

そして戴きましたのは 壱萬円のおまかせ料理であり供された順に記すと下記のとおりとなりますが料理の画像は
掲載可能枚数に制限がある為に一部分を抜粋しております。

【供された料理】
・めじ鮪のカマトロの炙りと酒蒸し鮑の薬味のせ、・数の子と山牛蒡、・牡蠣、・じゃこと青唐辛子、・焼魚、・生海苔を
炊いたん、・つと豆腐と粟饅頭の汁物、・水蛸、石なぎ、めじ鮪、岩牡蠣、鯊のぬた。
大皿に焼いた石が敷かれ朴葉の香りづけがされた野趣溢れる料理と・鯨の山椒醤油づけ、つとで包まれ蒸された
おこわ、・牡蠣と鯊の天ぷら、・毛がに甲羅揚げ風の揚げ物、・なます風の酢の物、・焼穴子、・喜知次(きちじ)、里芋、
水菜の炊き合わせ。・花無花果、蕪、胡瓜の香の物、・鰻のしぐれ煮ごはん。
口直しに百合の根を飾った麦香煎を固めた手造り羊羹風の寄せ物と抹茶。

料理の味が旨かったのは云うまでもありませんが椀物に使われた藁で包んで作られた【つと豆腐】や麦こうせんを
固めて羊羹にも見間違える和菓子まで全て店主ひとりで作られていることに驚きと感動を覚えました。
それぞれの料理は一見、地味に見えますが惜しみない手間がかけられ作られているということは云うに及ばず…。

前菜で供されました【カマトロの炙り】と酒蒸にした【鮑】は絶妙の味でしたし、【カマトロ】の薬味には香味野菜や旨味
を凝縮させゼリー状に固められた出汁の固形物がのせられており仏蘭西料理にも通じるような味わいに仕上げられ
ておりました。

他にも【鯊のぬた】風の料理や毛蟹の甲の中に蟹味噌とたっぷりの毛蟹のほぐし身、歯応えのある椎茸など毛蟹の
旨みが封じ込まれ【毛がにの甲羅揚げ】はいい味してました。

前浜である【千賀ノ浦】の新鮮な海の幸を店主である【色川秀行】氏の【京都】の某割烹仕込みの技と業、料理に
込められた【一期一会】のもてなしの心で口福な料理が昇華し完成されている。

供された料理は品数も多かったのですが、それぞれの素材の持ち味を最大限引き出され味の濃淡や抑揚のつけ方
は流石に京都仕込であり最後の一品まで口飽することなく戴くことができたことと女将さんの最高のおもてなしの応対
にふれることが出来、噂に違わぬ素晴しい店でありました。

當店より優れた料理店は全国に数多くあることは充分に承知しておりますが【壱萬円】で、こんなにも手のかかった
料理を供して戴ける店はそうそうはないと思います。

【千賀ノ浦】を臨む洋風のテーブルが置かれた個室と、ゆったりと寛げる和室が各一部屋づつ用意されています。

【一日二組】までの塩竃流の心のこもったおもてなし、総合評価は初訪問につき★★★★☆(4.5)とさせて戴きましたが
気持ち的には★★★★★(5.0)に相当するほどの感動を受けた店であります。

  • 白川(白甘鯛)の造り
  • 塩竃ひがしもの味比べ
  • 鱗煎餅

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2位

萬み高橋 (勾当台公園、青葉通一番町、広瀬通 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2010/12訪問 2011/05/12

"萬み"にて四季の味を喰らう至福のひととき … 『萬み高橋』。

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               がんばろう 八戸・岩手・宮城・福島、力を合わせて復興を…
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大晦日を数日後に控えた十二月、仙台空港発の翌朝一便めで京都の寝城に戻る前泊で兼ねてより一度
足を運んでみたいと思っていた『鮪と野菜と日本酒』をウリにされた"鮪菜酒酎てなんご"さんで撃沈寸前の
鮪料理』を供されてしまい、どうにも収まりがつかなくなってしまった。
翌日の出発が早いとは云えこのまま仙台の夜を〆ることは何か腹ただしく思いホテルへの帰り道にあり
国分町で最も自分が信頼の置ける"萬み高橋"さんへ遅い時間に予約なしで立ち寄らせて戴いた。

予約なしではあったが店に顔を出すと女将さんがニッコリと迎えてくださり店主や弟子の健太郎くんも歓待
してくださった。

京都へは何時?』という店主からの問いに明日からと答えると驚いた顔をされていたけど店主も十一月の
半ばに上洛し"萬亀楼"さんへも顔を出してこられたと話されていた。

伺った時間が時間だっただけに萬みさんもカウンター席はひと段落し自分ひとりで占領させて戴いたが奥の
座敷ではプロパー系の接待と思われる数人のセンセーが居られた。

ところで何処かで食事はもう済ませて来たのか?』と問われたので正直に先に立ち寄った店のことを話す
と軽く一笑に付されてしまったのであります(笑)

材料は使い切ってしまったけど、アルモノで軽くつまめるのを少し出すわ』ということで無事に仙台の夜を
仕切り直すこととなったのでありますが自分的には、このアルモノこそがお宝なのであります。

一応、供された画像を追加アップしましたが、これはアルモノで即興で作ってもらったものなので参考には
されないでください(笑)

料理は『地物のなめこと三つ葉の椀』からはじまり『』の造りに本来は店主のマカナイになる筈だった『
の端材、この鮪、見栄えは余りイケテませんが味は先に立ち寄った店の鮪とは格段に違いきっちり鮪本来
の味がしました(笑)、『』は寝かされて旨みを最大に引き出された食べ頃のもの。

焼物は一夜干しの『柳鰈』を軽く炙ったものに大根おろしを添えて、炊き合わせは『』と青菜とお揚げさんを
炊いたん。で大好きな『黒龍』の純米吟醸と味わい先の悪夢のような出来事も忘れ今宵も満足、満腹。

京都の話題で盛り上がり仙台の夜は静かに終わりを告げるのでありました(笑)

余談ではありますが凱旋門ビルの向かい側にある公園のイルミネーションがとても美しく、しばし足を止め
見とれてしまいました。

明朝は仙台空港より朝一の便で伊丹空港へ向けフライト、そしてエアポートリムジンにて一路、京都の寝城
へと…。年末年始はゆっくりと京都にて過ごすのでありました。

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2009/09のレビュー
當店は定期的に再訪している店であり店主の作りだす料理は一見シンプルな料理に見えますが、
実に滋味深い味わいの料理であり "東北で右にでるものはなし" ではと真面目に思っております。

最終レビューより一年以上経過致しましたので先月伺った際に供された【おまかせ料理】の最新の
料理の画像の追加アップとレビューの更新をさせて戴きます。

尚、レビューの文字制限の関係上、個々の料理の説明は割愛させて戴きますが料理は【甘鯛の
昆布〆】からはじまり【鯛茶漬】まで全十二皿、特筆すべきは【ぐじ(甘鯛の昆布〆】、そして當店の
スペシャリテのひとつである絶品の【鮑の柔らか煮】、そして〆に供された【鯛茶漬】の三品です。

昆布の旨みを纏った【ぐじ(甘鯛)の昆布〆】は見た目も美しく身も程良く締まっており振り柚子で
香りづけされた身はそのまま口にしても卸したての本山葵を載せて口に運んでも最高です。
特に甘鯛の"腹身"の部分の旨さに悶絶しました(笑)

【鮑の柔らか煮】は大きな鮑を丸ごと一個、贅沢に使われたものであり鮑の煮汁を煮詰めて作ら
れた"旨みのジュレ"が鮑にかけられ供されました。
鮑の柔らかさといい滋味深い鮑の味といい、これ以上の【鮑の柔らか煮】は世の中に存在しない
のではないだろうか。と思える程、五感すべてに訴え身震いするような味わいのひと皿でした。

鯛の身を削ぎ切りにし薄口醤油をからめられ器のごはんの上に綺麗にならべられ擂りたての胡麻
がふられたものの上から熱々の出汁が注がれ更に風味のある焼海苔と卸したての本山葵を上に
のせ"海苔蒸し"風の〆の【鯛茶漬】。
ほんのりと火が入った鯛の身の旨さは天然ものの鯛ならではの旨さで〆には最高の一品でした。

その他の料理も素材の旨みを最大限に引き出した直球勝負の料理であり、これぞプロの料理人
が造り出す "御料理" と呼べるものではないでしょうか。

先日、立寄った京都の【萬亀楼】さんの大女将からの言伝と同店出身で以前、三条京阪上ルに
店を構えられていたという【萬井中川】さんの店主との関係についての確認の件もあって今回は
再訪させて戴きましたが四季の移り変わりの都度に通いたい料理店です。

京都の御大レビュアー氏より他店のレビューに書き込まれた、その中川氏とは當店の高橋店主が
萬亀楼】さんの二番手として腕を揮われている時の板場の一番下におられた方であったという
ことも判明し、すっきりとした次第(笑)

単に"腹を満たす食事"とは一線を画す"御料理"を口にできる仙台の方が羨ましく思う今日この頃、
塩竃に店を構える料理店【千松しま】さんとともに東北を代表する京仕込みの真っ当な料理店です。

翌日の昼は仙台で食事を済ませ夜には再び京都に上洛し気になっていた店を彷徨い歩きます(笑)
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2008/06のレビュー
仙台の街中で夜に旨いものを食べるならば當店【萬み高橋】を外すことはできないと思います。

店主の【高橋 正博】氏は京都の老舗料亭である【萬亀楼】さんで腕を揮われていた方であり、
旬を食らう】"萬みの四季"と云う某新聞に連載されていた人気コラムを一冊の本にまとめられ
た著書も発刊されている。

さて、この日の昼は【小判寿司】にふらりと訪れ鮨を喰らった後、夜は仙台出張が決まった時点
で予め予約をしておいた當店【萬み高橋】の暖簾を久しぶりにくぐってみた。

店は仙台の夜の歓楽街、国分町の立派な門構えの飲食店ビルの一階右手奥に構えられている。

先ずは冷えた瓶ビールで喉を潤し料理はいつも通り店主の【おまかせ】でお願いした。

目の前の厨房は良く手入れが行き届いておりピカピカ輝き、いつ伺っても感心させられてしまう。

この店に一歩足を踏み入れカウンター席に腰を下ろすと京都の祇園あたりのカウンター割烹に
居るような錯覚を覚えてしまうのは決して気の所為ではない。

當店の【おまかせ料理】は完全なストップ制であり何品か料理が供された後に腹の具合を尋ね
られ客側の箸の進み具合と食べ具合を見計らって頃合で軽い食事で〆となる流れとなります。

京都の某割烹料理店を【○○劇場】と喩えたことがありますが當店も店主が見事な手捌きを
見せてくれる、まさしく【萬み劇場】を体感することができる店です。

今宵の"萬み劇場"の幕開けは、【干し貝柱】と【若布】を炊いたものから供されました。
云うまでもなく【干し貝柱】も生の帆立貝柱から店主の手によって作られたものであり、この出汁
はとても濃厚であり出汁の香りが鼻腔の奥を強烈に刺激、汁を口に含むと口元が思わずニヤリ
と緩んでしまう旨さでした。

続いて【ふっこの昆布〆】。昆布で飴色に色づいた【ふっこ】。【ふっこ】とはご存知のとおり【鱸】の
幼魚にあたる魚であり身の質は鯛に似ており柔らかくて癖もなくあっさりしている白身にしっかりと
昆布の旨みが身の隅々まで滲み込んだもので、"あーあ~本当に旨いなぁー"酒だー酒をおくれと
体が求めてくる味わいです。

【磯自慢】の純米大吟醸を湯呑茶碗程の大きさのある猪口に注いで酒肴とともに戴く至極の時間。

【焼物】は【赤むつ】所謂【のどぐろ】です。
身を口に運ぶと"ジワッー"と旨みと油脂分が口の中に広がる様は、これぞ "口福の瞬間"です。
香ばしく焼きあげられた皮目の部分は "のどぐらー"には最高の御馳走です。

【焼物】と【揚物】の合間には【大根おろし】が供されますが、これは焼魚に添えて戴くも良し、大根
おろしだけを口にするも良し、自分は揚物を口にした後に大根おろしを口に放り込んで戴きます。

そして【揚物】は夏野菜の代表格の【隠元】を【天ぷら】で供されましたが、この【隠元の天ぷら】は、
乾いたままの天ぷら粉を【隠元】に先にまぶすように付け後から水を少量注し和えるように混ぜ合
わせてから油で揚げられたもので溶いた天ぷら粉に種をつけて揚げる天ぷら屋の天ぷらとは揚げ
方が全く違うのですが余分な衣もなくて素揚げに近い状態で揚げられたものも、とても美味でした。
塩で戴くのも良いでしょうが何もつけず熱々を口に放り込み後から大根おろしを口に入れても美味。

揚物の後に【椀物】代わりで【鯛の潮汁】が供されました。
鯛の頭は、まな板の上、包丁でザクッザクッと音を立てながら割られ熱湯に軽くくぐらせ湯霜にされ
た後に氷水でザザーと〆られ昆布出汁に酒が適量足され灰汁をとりとり炊かれることしばし綺麗に
澄んだ【鯛の潮汁】の登場となるのですが何と云う上品な味わいでしょう~見ている側からはとても
簡単に作られているように目に映るのですが…。

潮汁に続いて供されたのが店主お得意の通称【玉ちゃん】と呼ばれる小ぶりの【新たまねぎ】を
出汁でコトコト炊かれたものと【茄子の煮浸し】が供されましたが、この単純に見える【玉ちゃん】は
半端じゃないくらい美味なのです。
玉葱を鯖のなまり節などと一緒に炊かれたものも好きですが【玉ちゃん】はとても滋味深い味です。
そして【茄子の煮浸し】ですが【茄子】と【油】は物凄く相性が良いことは誰でも知っていることですが
【油煮】にされて出汁が利いた、この煮浸しはキリリと冷されており言葉にあらわせぬ美味しさです。

いやぁ~供されるもの全てがストライクゾーンど真ん中にビシビシ来ています。
そうこうしていると店主が "loroくん河豚食べる?"と、えっ この時期に河豚ですか?と言葉を返す
と【夏河豚】だけど【天然のとら河豚】だけど良かったら食べてみない?と… 勿論、戴きます(笑)
【河豚】は寒い時期に喰らうものと勝手に思い込んでいましたが、この河豚も歯に小気味良い弾力
と適度な噛み応え… そりゃー寒い時期の【とら河豚】には適わないとしても"養殖もののトラちゃん"
とは別格ものです。

ここで店主より腹の具合の確認があり、"もうちょっと入りますよー"と答えると【鱧】いってみる?
【鱧】ですかぁ~ 勿論いくいくですよー、目の前でザッザッ、ザッザッと骨切りの音を響かせながら
捌かれていく様を眺めていると、まるで京都の料理屋さんにでもいる錯覚を覚えます。

【鱧】を出汁で軽く食べてみて…と云って出汁で軽く炊かれた【梅雨 鱧】も滅法美味しいものであり、
出汁は生臭さがあるかもしれないから"呑まなくても良いよ"と云われるもゴクゴクと全部戴きました。

"お腹の具合はどう?"、"えーぼちぼちです"と云ったところで、これ何か判る?と供されたのが
【醍醐】でした。奈良から送ってもらった【酥】と話されておりましたが【酥】⇒【醍醐】』じゃないですか
と云うと、うんうんと頷く店主。

じゃぁこれ食べてみて何か判るかな?と供されたものは【あらそ】。
【のどぐろ(赤むつ)】の中骨や軟骨をコトコトと炊いたものなそうで【萬亀楼】時代は【まかない】で
こう云うものを作って食べてたんだよ。と教わりましたが、これって酒のアテには最高な一品です。

〆の食事には【胡瓜】と【大根】の【香の物】と小振りの【塩むすび】が一個供されました。

これも単なる【塩むすび】と思いきや流石にそんな訳はなく、ひとひねりあるものでまたまた感心。

熱い【ほうじ茶】を戴いて今宵の【おまかせ料理】はひと通りとなりました。

萬み高橋】劇場のかぶりつきの席で実に愉しい二時間半を過ごさせて戴くことができました。

自分の知るかぎりでは現在、東北の地で當店店主の右に出る料理人は居られないと思う。

総合評価は本当は★★★★★(5.0)でも良いのだけれど劇場のかぶりつき席八席の内、左側から
三席が喫煙席となっており今回も紫煙を燻らせる方と遭遇してしまったので雰囲気の評価を減点し
総合評価を ★★★★☆(4.5) とさせて戴いた次第。

  • 地物のなめこと三つ葉の椀。
  • 鮃と鮪のブツ(笑)
  • 鮪は見栄えはブツやけど味は間違いなし(爆)

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3位

陸女鮨 (黒松、八乙女 / 寿司)

1回

  • 昼の点数: 4.8

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.8
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 3.9 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥10,000~¥14,999

2013/12訪問 2014/01/15

一日二組の贅沢なひと時、御座敷鮨のおもてなし … 『陸女鮨』。

三年ぶりに『陸女鮨』さんへ畏友とともに久しぶりに寄せていただきました。住宅地の中に佇む當店へは
八乙女駅よりタクシーでワンメーターの距離、徒歩でも充分に伺える距離ではあるものの12月の仙台の
風は肌身に沁みる。神経痛になっても困ってしまうので無理せずタクシーにて向かわせて戴いた次第。

そんなこともあって予約時間のam11:30より少し早めに店に到着、タクシーの音で気づかれたようで女将
さんがわざわざ出迎えてくださいました。寒いですから中へ入ってお休みください。と既に寒さを感じない
程度に温められた部屋に通していただき所定の時間までしばしのウェイティングタイム。

程無くして お待たせしました。いらっしゃいませ。お久しぶりですね。という声とともに店主の登場、先ずは
赤星のラガーで喉を潤し、ひと呼吸措いたところで本日の厳選素材の種でひととおり握って戴たくことに。

鮨は"大間の本鮪"と"塩竈ひがしもの"という脂ののったバチ鮪の中トロの食べ比べからのスタートです。
脂の濃度と味の奥深さでは大間の本鮪に軍配が上がりましたが口の中でのトロケ具合や上品な旨みと
いう点では塩竈ひがしものも全く引けを取らぬ美味しいものでした。この時期ならでは鮪の味比べ、山葵
は当然ながら卸したての本山葵、百戦錬磨の店主の手で握られた舎利は鮨種と見事に一体化しつつも
口の中での解け具合は御見事。上質な鮨種に卸したての本山葵、熟練店主のゴットハンドで手数少なく
握られた鮨、これぞ御座敷鮨の最高の極みとおもてなしと称するに相応しい握りと云えるでしょう。

最初に味の濃い鮪を供された店主の脈略は如何に?次の一手は何か?など頬を緩ませニヤケながら
考えていると見事な"本玉"を手にされた店主、かつては日本一とも称された閖上産の正真正銘の赤貝
であるのだが震災後に"本玉"は枯渇してしまい通称、ジャリ玉とも呼ばれる繁殖力の強い赤貝モドキを
大量に撒かれた閖上の赤貝には以前程の魅力は感じないのであるが、この赤貝は稀にみる上物であり
香り味ともに往時の閖上の赤貝を彷彿させるもの。店主自身も久しぶりにこんな上物を手にしたと話され
ておられたが噛み締めた歯を弾き返すような弾力と味の濃厚さはこれぞ"本玉"の味。 感謝感激雨霰。
更に本玉の"紐"が貝の下に射込まれていたことも一度で二度美味しい思いをさせて戴いた気分でした。

そして赤貝の向こう側に置かれた鮨は一見、何か判らなかったが口にして"のどくろ"であることが判明。
味の濃さでは先に口にした大間の本鮪には敵わぬものの上品な脂の美味しさは日本海の赤いダイヤの
称号に恥じぬもの。然もこの"のどぐろ"滅多にお目にかかることのできぬ大物でありこんなにも美味しい
のどぐろを口にしたのは何時以来のことだろうか?弥が上にも気分はハイテンションになるのでした。

絶妙なタイミングで娘のアキコさんが本日の地酒をお持ちしました。と四本の日本酒を抱きかかえ登場。
定番の伯楽星や綿屋の他に普段余り目にすることのない地酒も用意されており"綿屋の純米大吟醸酒"
から順に呑み比べさせていただくことに。

次の握りは"いくら"と"穴子"、いくらは時期的にピンポン玉のように皮が硬くなってくるころだと思いきや
柔らかく適度に脂のある美味しいものであり軍艦巻に使われていた海苔はパリッとした歯切れで口溶け
も申し分のないものでした。 一方の"穴子"はかなり肉厚のものでしたがフワットロとした食感に仕上げら
れた松島産のもの。 『すが井本店』さんで供された活穴子の造りのコリッコリとした食感も印象的でしたが
口の中でトロケル穴子の食感はやはりたまりません。

賢者の方は既にお気づきのことと思いますが鮨には自家製のガリが二種、鮨種によって使い分け供され
ていることと箸休めとして供された一見、何の変哲もないと思われる香の物にもひと仕事されており全てが
緻密な計算と経験値からはじき出され供されていることに改めて感銘を受けた次第です。

次いで供れた鮨は"墨烏賊"と"バフン海胆"の軍艦、この時期こんなにも綺麗で濃厚な味わいの海胆を口
に出来ること自体、奇跡的なことだと思いますが甘みが強く濃厚な味の海胆が惜しげもなく存分に使われ
ており正に口福とはこんな状態のことを云うのでしょう。

そして"活の才巻き"と鰤と見間違えた正体は"シビ"のトロ。海老は熱を加えられることで甘みが立つもの
という既成概念を覆すような美味しさにまたまた仰天、単に活海老を握ったのではなく"酔っ払い蟹"ならぬ
"酔っ払い海老"として供されています。仮眠状態で喰らう海老は身が極度に締り硬くなることもなく柔らか。
才巻き海老を超レアな天ぷらとして口にしたことはありますがこんな食べ方ははじめての経験です。

鰤と見間違えた"シビ"のトロは本鮪の幼魚でありサラッとした脂のりと鉄分の酸味がその醍醐味のひとつ。
最初に供された大間の本鮪と塩竈ひがしものの中トロはこの"シビ"の味を愉しませるための店主の脈略で
あったことにこの時点で気付かされるのでありました。

焼きたて熱々の才巻きの鬼殻焼で一献傾けていると立派な大きさの"蛤"を使った椀の登場、これ程まで
食べ応えのある蛤は滅多にお目にかかることが出来ません。"蛤"の出汁と旨味が引き出された潮汁の味
の濃度や塩加減も理想的な物でした。

この椀の登場でいよいよ握りも佳境、最終コーナーヘ向かうことを何気に感じ取ることが出来ます。店主が
繰り出した鮨種は北日本の冬の味覚のひとつである"北寄貝"と丸々肥えた金華山沖ノ特大サイズの"鯖"。
小気味良い食感と甘みが愉しめる北寄貝に見ただけで美味さが伝わる"金華鯖"、もう最高の気分です。

〆に鉄火巻でも行きましょうか?とのことでしたが敢えて此処ではANAの機内誌にも掲載された"干瓢巻"
で〆るのが正解でしょう。勿論たっぷりの本山葵を入れてもらった"鉄砲"であることは云うまでもないこと。

口直しの林檎を戴いて今回の御座敷鮨はひと通り。 鮨道の奥深さを感じさせてくれる"おもてなし"に感謝。

気が付けば時計の針は午後2時を少し回っていた。あっという間の二時間四十分、恐悦至極のひと時でした。

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2010/12のレビュー

ANAの機内紙で當店のことを知ってから、ずっーと行きたいと思っていた"陸女鮨"さん、昼夜二組限定
2名~の事前予約というある意味、高いハードルがありなかなか行けそうで行けなかった"陸女鮨"さん。
ひとりであれば直ぐにでも行けるのですが誰か一緒に行ってくれる方となると當地では居そうで居ないと
いうのが実情…、東京や京都であればこんなに困ることはないのでありますが此処は仙台ですからね。

本当は大阪のVくんと何時か一緒に…と約束していたのですがフライングして、と或るレビュアーさんに
無理を申して付き合って戴き念願が叶い今回、昼の時間に初めて伺うこととなった次第です。

目的の場所は閑静な住宅地の中にひっそりと佇んでおり途中に道案内のような目印板がありましたが、
NAVIなしの車ではきっと辿りつくのに相当難儀するのではないかと思われます。

山門をくぐり玄関先でチャイムを鳴らすと中から店主の奥様と思しき方が出迎えてくださり玄関先で靴を
脱ぎ左手の居間の前を通り過ぎ中庭を臨むことの出来る奥の和室に通して戴きました。

庭の手前には店主が座られるつけ場、T字の型を描くように配置された天然木一枚板の立派な座卓に
背もたれつきの座椅子、御座敷天ぷら。じゃありませんが、これぞ初体験である"お座敷すし"の趣です。

つけ場のまな板の上には立派な本山葵と卸し金、しばらくすると店主"伏見俊雄"氏が姿を現し着席一礼、
ようこそ御出でくださいました。と丁重なる挨拶の後、見るからに斬れ味が良さそうな名刀の如く手入れが
行き届いた包丁が二本取りだされ目の前にならべられました。

そして山葵を静かに卸しだした店主、それでははじめさせて戴きます。の声とともに木製の種箱の中から
塩竃産の通称"塩竃ひがしもの"と呼ばれる"ばち鮪"の中トロに包丁を入れ次に"幻の鯖"とも称される
"金華さば"を手にされ超稀少な1キロものの鯖のお披露目、小骨があたらぬように丁寧に骨抜きされた
後に厚めに包丁で引かれ、いざ握りへ… 手数少なく握られた寿司はすし桶の中に収められ供されます。

"塩竃ひがしもの"というブランド名を持つ塩竃産のばち鮪の中トロは見るからに赤身と脂身のバランスが
理想的なものでしたし幻の鯖という異名を持つ"金華さば"はレア感を残し極浅に〆られたものと目に映る
もので無類の鯖好きとしては涎垂もの、早速、口に放り込んでみると舎利は口の中でホロリと解け寿司種
と一体化、ばち鮪の中トロは本鮪ほどの濃厚さはありませんが上品な味わい、鯖は持ち味を殺さぬように
塩と酢の加減はギリギリのところで寸止めにされたもので、かなり絶妙な味わいであり上々の幕開けです。

店主が次に手にされたのが丸々と肥え見るからに脂ノリノリの気仙沼の""もはや余計な言葉は不要で
しょう、たっぷりと脂を抱えた腹身の部分を厚めに切りつけ握られた鰹は下手な本鮪のトロなどより美味、
正に"トロ鰹"と呼ぶに相応しい逸品、これに江戸前の仕事を施した"槍烏賊"の印籠詰にはコク味のある
ツメが塗られ供されました。

次いで供された寿司は宮城県が全国に誇る厳選素材のひとつ日本一とも称される『閖上』の活けの"赤貝"
と最近ますます入手困難になってきた稀少な"ぶどう海老"の二品、これは素材の味をストレートに愉しめる
にぎりで流石に閖上の赤貝は香り高い、しかし素材に単に頼った寿司ではない、細かく包丁を入れ歯応えを
調整という仕事が施されています。ぶどう海老は舌にねっとり絡みつく食感であり甘みが強く濃密な味わい。

そして甘みのある"海胆"と歯切れの良い海苔で包んだ海胆の軍艦と皮目の美味さを残すために松皮造り
にされた""と続いた後、非常に肉厚な三陸産の"沖穴子"は身は柔らかく脂がのっており口の中でトロケ、
軽く湯霜にして甘みを増した"北寄貝"と口の中が休むまもなく悦びっぱなしで思わず頬が緩みます。

いよいよ握りも佳境に入り酢洗いにして適度に脂を落として握られた""、最初に登場した塩竃ひがしもの
と称される鮪の赤身の表面を湯霜にして半日程漬け込まれた江戸前の伝統の仕事が感じられる"鮪のづけ"
蓋つきの曲げわっぱの中には干瓢に卸したての山葵をたっぷり効かせた通称"鉄砲"にて、おまかせ握りは
ひととおり、"鯛ときのこの潮汁"に箸休めの香の物、食後の水菓子までついて昼のコースは六千五百円也。

贅沢な空間で店主をふたりじめにして極上の素材を使った寿司を満喫、お酌には娘さんのアツコさんと至れり
尽くせりのサーヴィスにメロメロ、これぞ御座敷すしの贅沢の極みナリ、ビール四本に日本酒を二合を楽しんで
トータルの支出はひとり壱萬円に満たぬという食後感の良さは驚愕に値するのではないでしょうか?

私感ではありますが仙台市内で一世を風靡した『蓑寿司』系譜の"すし蓑"さんや"岩井"さんで使われている
寿司種より上質のものが使われているように感じましたし支出額は両店の半額程度ですから費用対満足度の
高さでも當店に分があるよう感じた次第、東北エリアの寿司屋さんでは青森の"寿司一"さん以来の衝撃を受
けた店であり2010年度に伺った寿司屋さんでも強く記憶の中に残っている一軒であります。

事情が許されるのであれば東北の地を離れる前に、も一度立ち寄ってみたいと感じた"大人の隠れ家"です。

  • 大間の本鮪と塩竈ひがしもの(目鉢鮪)の食べ比べ。
  • 先ずは赤星で喉を潤します
  • のどぐろと閖上産の本玉。

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4位

徳うち山 (東銀座、築地、銀座 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 ¥8,000~¥9,999

2014/09訪問 2014/12/09

銀座での生涯行きつけの店にしたい … 『徳うち山』。

銀座界隈で最も好きな店が當店"徳うち山"さん。僭越ながら『loropiana。の神出鬼没の食べ歩る記』10傑の
中の1軒であり足を運ぶ度に何らかの感動を与えてくれる店です。 店主の『工藤淳也』さんと店主を支える
『栗原大輔』さんのぴったり息の合った絶妙コンビが繰り出す料理は自分の嗜好と方向性がどんぴしゃり。
懐石料理の流れを踏襲しつつ時流に合ったエッセンスを加え供される料理は単に美味しい料理に舌鼓を打つ
ばかりではなく自分への御褒美や癒しといった要素もありますからエンターテインメント性も不可欠なもの。
割烹料理店の醍醐味は料理人との言葉の掛け合いや調理模様が伝わるライブ感等も重要なファクターの一つ
であるのでそれらが体感できるカウンター席が自分にとっての特等席。當日も定位置の席に陣取り至極の宴
の時間を存分に愉しませて戴きました。先ずは生ビールで喉を潤します。サーバーの洗浄は完璧であることは
云うまでもありませんが薄くて軽いグラスに注がれ供されるので唇のあたりが最高です。さて、料理は丁寧に
裏漉しされた『南瓜のすり流し』から秋の味覚の秋刀魚のつみれを嫁に喰わせちゃあかん焼茄子の上に鎮座
かと思いきやその中に『松茸』を薄切りにされたものが挟まれ上から柑橘系のジュレを掛けた目と舌に晩秋
を感じさせてくれる料理でした。薬味の針生姜と芽葱がなかなかの役回りを演じていました。次に供された皿
には御馴染の焼き胡麻豆腐に無花果のコンポート添え。濃厚な味わいの定評の胡麻豆腐にコクのある胡麻ダレ
の組合せは思わず皿ごと嘗め回したい衝動に駆られるほど。そしてコース料理の最大の見せ場であり料理人の
技量があらわれる椀物は『牡丹鱧と松茸の椀』名残りの鱧は葛粉が打たれ見事な『牡丹鱧』に。出逢いものの
『松茸』との相性の良さは云うまでもなく。昆布を気持ち強めに効かせた吸い地に振り柚子が加わえられ椀に
口をつけると鼻腔を通じ松茸と柚子の香がすっーと駆け上がってきます。あまりの牡丹鱧の美しさに思わず箸
を入れるのを躊躇してしまう程。造りは二段構えで前半には天然モノのマツカワ鰈の造りと香ばしい鱧の焼霜、
後半に鮑の柔らか煮と墨烏賊に海胆の三点盛。養殖モノとは月と鼈の繊細で上品なマツカワの味にうっとりと
しつつ焼霜造りの鱧に酔う。旬の墨烏賊と北海道産の甘く濃厚な味わいのバフン海胆、大原の黒鮑の柔らか煮と
半端なく上質な素材使いが視覚からも充分に伝わってくるのは勿論のことその味わいに口福感もひとしおです。
思わず日本酒が進みますが更にこの後の皿には立派な『鮑の肝』に『ばちこ』に新いくらと酒盃の速度を加速
させるような怒涛の珍味に酒のメーターは上がりっぱなしで思わずトランス状態に陥る寸前で我に返ると目の
前にはコースの佳境を知らせる焼物の皿、迸る脂からも美味しさが伝わる鴨ロースは山椒で〆られ滅多に口に
することのない『本九絵』を木の芽焼にし大粒の藤九郎を添えた贅沢な内容です。九絵は造りや鍋として戴く
ことは今までありましたが焼物として味わったのは初めてかもしれませんが此れは美味。その味わいの余韻を
しばし愉しんでいると目の前にセットされた小鍋で米沢牛のしゃぶしゃぶの演舞。そして〆の食事は『松茸』
と太刀魚の炊き込みごはん。松茸がコレデモか?と云わんばかり使われており贅沢の極み。松茸の香に包まれ
つつ炊き立てを味わい残りはいつもの如くオミヤにして戴き翌朝の愉しみに(笑)。食後の水菓子は和歌山産の
『黄桃』にピオーネ、和栗のアイスクリームに定番の黒糖プリンを戴き恐悦至極の濃密な時間を相方と二人で
満喫させて戴きました。そして家路についてオミヤの折を仕舞おうとした相方から驚嘆の声が、、。どうしたの
と覗きこむと其処には大好きな"徳うち山"さんの『鯛茶のたれ』が瓶に収められているではありませんか(嬉)
いやぁ~至れり尽くせりの心遣いに感無量。

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2012/03のレビュー
都内には魅力的な日本料理店が数多あり中でも新橋から東銀座の間には無数の店が軒を連ねられているのは
ご存知の通り。その数は定かではありませんが激戦区の銀座界隈で最も好きな店が當店"徳うち山"さんです。
この日は昼餉の時間帯に寄せて戴き『鯛茶漬』目当てに訪れられたマダム連に囲まれた中で昼餉のコースの
料理を堪能させて戴きました。

料理は『豌豆のすり流しに車海老と海胆』のジュレがけのとても優美なひと皿から次いで『焼き胡麻豆腐』、
焼き胡麻豆腐と云えば"うち山"さんが"あさみ"さんで修行時代に残った胡麻豆腐を焼いて食べてみたところ
美味しかったことから生み出された料理という嘘のような秘話もありますが、それ以来多くの料理店でこの
料理が供されていることは云うまでもありませんが個人的には"うち山"さん、"朱雀"さんと"徳うち山"さん
で供されるものが好きです。共通して云えることは胡麻豆腐は焙煎強めの胡麻で作られておりそのまま口に
運んでもコクのある濃厚な味わいと絶妙な弾力が愉しめること。更に胡麻だれは洗練された上品な味わいで
他店にて供されるモノとはひと味違うものであり円やかさと滋味をまったり味わえる一品です。

コース料理の華でもあり料理人の腕の見せどころである椀物は『ぐじ(甘鯛)』の桜蒸しの椀。吸い地は清汁
仕立てではなく旨味と滋味がたっぷりと味わえるもの天盛にされた卸したて山葵が堪りません。
造りは『鯛の腹身』一品という潔さ。脊髄〆にされ河岸へ運ばれた鯛は活かった弾力とダルンダルンとした
食感が愉しめるもの。あれこれと嵩増しのものをつけず『鯛』単品で供される辺りがとても好ましい。
焼物には『鱒の木の芽焼』にたらの芽の天ぷらを添えて。料理の合間に繋ぎの箸休めに供された『蛍烏賊と
味噌のミンチがけ』、『毛蟹』の剥き身と脚肉に蟹みそから作られた濃厚ソースに香り高き浅草のりの味の
余韻に浸っていると『稚鮎』を軽く湯引きし梅肉ソースでさっぱり味わう料理で口内をリセット、炊き合せ
は筍に菜花に『浅蜊』の剥き身に平貝にパン粉を塗して揚げたもの。〆の食事は『米沢牛とうるい』の炊き
込みごはんでこれは絶妙な味わいてでした。"徳うち山"さんの昼餉と云ったら忘れてはならぬのが『鯛茶漬』
先の炊き込みごはんはオミヤとして包んでもらい『鯛茶漬』を追加で供して戴いた。鯛の身自体も美味しい
ものが使われていますが鯛茶漬の『胡麻だれ』の味が最高に美味です。例によって一杯目は『鯛のづけ丼』
として二杯目は茶碗の淵から静かに出汁を流し入れ鯛茶として堪能。食後の水菓子は『桜のジェラート』に
イチゴ、『黒糖プリン』の三段構えと今回も身も心も充分に満たされました。
銀座界隈で今最も大好きな店"徳うち山"さん。生涯行きつけの店にしたいと思わせる店が此処にもあります。
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2011/12のレビュー
當店"徳うち山"さんも現時点で自分の都内でのお気に入りの日本料理店の五傑の中の一軒に数えられる店。
料理の味は勿論ですが店主の工藤さんとの相性が良いということもその理由のひとつではありますが二番手
として店を支えられている栗原さんもなかなか素晴らしい気遣いをされる方で気持ち良くして返してくれる
からついつい此処に足が向いてしまんです。目下のところ銀座界隈の日本料理店では當店が一番好きです。
今回も旬の素材を使った料理で目と舌を存分に楽しませてくれました。先付は湯ぶり仕立て熱々の『くもこ』
をロール仕立ての白菜の御浸しの上にのせ『あおさ』のジュレをかけた一品で温と冷の異なる温度帯の素材
をシャキシャキと濃厚でトロける正反対の異なる組み合わせで愉しませてくれるという如何にも店主らしい
一品から始まり定番の『焼き胡麻豆腐』。都内の料理店では"くろぎ"さんをはじめ焼き胡麻豆腐という料理は
さして珍しいものでは
ありませんが自分の舌には當店のものと"朱雀"さんの焼き胡麻豆腐が嗜好にあったもので良く馴染む味です。
手間隙惜しまず綺麗に剥かれた『香箱がに』は旬の味覚であり次いで供された椀物は京の雑煮を髣髴させる
白味噌仕立、椀種には弾けぬばかりにぷっくりと膨らんだ海のミルクの異名を持つ超大粒の『牡蠣』。造りは
『河豚』と『めじ鮪のトロ』の炙りの二段構え。焼物は『真名鰹』の上にたっぷりの海胆をのせたものに生と
炙りの二種類の『からすみ』の味比べに柿を添えたもの。そして陸のトロとも称される『松坂牛』のA5クラス
の肉を軽く炙った牛肉の炙り、そして絶妙な出汁感だった『金目鯛』と茸の小鍋立と続き〆の食事は炭火で焼
いて余分な脂を落とされた『鰤』と『いくら』の炊き込みごはん。箸休めに『ちりめん山椒』、軽く焼きを入れ
たお揚げさんと三つ葉の赤だし椀、香の物は青菜漬に温海蕪といった店主の故郷 山形の味が添え供されました。
そして食後の水菓子は三段構えの充実もの『紫芋のアイス』に『プリン』にほのかな酸味を感じる林檎という
ように今回もたっぷりの海の幸と山の幸を満喫させて戴きました。炊き込みごはんの残りは翌朝、寝城での朝餉
用にと詰めて戴き持ち帰りさせて戴きました。冷めた炊き込みごはんは味が良く浸み込み馴染んでおり温かい
時のものとはまた違った美味しさであり一度で二度楽しませて戴きました。
"徳うち山"さんは味良し、サーヴィス良し、雰囲気良し、気遣い良し、値段良し、気分良し。と六拍子揃った東銀座
の佳店です。
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2011/10のレビュー
新たに東銀座に店を構えらた"徳うち山"さん。その店名からお察し戴けると思いますが店主の『工藤淳也』氏は
は"うち山"さんの二番手として長らく店を支えられていた方であると同時に実に興味深い経歴の持ち主でドイツ
の日本大使館の料理長としての海外での経験も持たれた方で形にとらわれぬ柔軟な発想から作り出される料理は
かねてより定評があり自分自身も注目していた一軒でした。初訪は既に馴染客となっている友人に予約を入れて
もらい昼のピーク時間を避け午後一時から通常メニューとは異なる『昼懐石コース+α』のアレンヂした内容の
料理を供して戴きました。料理は湯葉豆腐の下に海胆ソース、湯葉豆腐の上に『生海胆』と山のキャビアとも称さ
れる『とんぶり』をのせ海胆ソースが添えられたミルフィーユ仕立ての濃厚な味わいが舌の感度を優しく目覚め
させてくれる一品からはじまりました。次いで供された料理は"うち山"さん仕込の噂の『焼き胡麻豆腐』です。
焼き胡麻豆腐は都内の何処の店で供されるものより上品な味わいで自分好み。"くろぎ"さんのインパクトのある
ある焼き胡麻豆腐ともふた味違うものであり修行先である"うち山"さんのものを更に洗練させた味わいは称賛に
値する味わいでした。そもそも焼き胡麻豆腐とは内山さんが"あさみ"さんで働かれていた頃に残ってしまった
胡麻豆腐を有効活用するため生み出された料理と云われており京都の"じき宮ざわ"さんもそれを模したとされて
いる料理の一品で最近、若手の料理人の店へ行くと必ずといって良い程お目にかかる料理ですが、その味わいには
店々の特徴があって個性を感じる一品です。味覚の分かれ目は添えられた胡麻ベースのタレの味にもよって大きく
左右されますが當店のものは醤油の角を殆ど感じぬ円やかな味わいであり完成度の極めて高いものでした。
懐石料理の華であり料理人の腕のみせどころである椀物には直前に目の前で骨切りされた『鱧』と出逢いものの
『松茸』を使った椀が供されましたが吸い地の味は京都の料理店のソレと比較すると確信犯的に昆布出汁を強め
に効かされたものでしたが見た目とは打って変った優しい味わいの吸い地は程良い甘みと振り柚子の香味が気分
をホッと緩めてくれる美味しい椀でした。造りは二段構えで藁焼きで薫香がつけられた鰹に肉厚の甲烏賊、〆鯖の
三点盛と『鱧の落とし』の二皿であり、いづれも上質な素材が使われておりましたが特筆すべきは鱧の落としに
添えられたタレ。一般的には『梅肉』だれを添えられるのでしょうが、これは何と『トマトベース』のタレで卸し
たての本山葵とともに味わうと今まで味わったことのある鱧の落としとはひと味もふた味も違う味わいに驚きを
覚えました。八寸には菊花、青菜、えのき茸の煮浸しに『ぐじ(甘鯛)』の西京焼、青銀杏にばちこ、大原産の極上の
『鮑』と鮑の肝という隙のない陣容。『ぐじ』も美味しかったのですが特筆すべきは『鮑』の出色の味わいです。
蓋ものは薩摩芋で作られた真丈に茄子の揚げだしとしめじ、出汁の味がとても優しいもので胃の中にすんなりと
収まりました。コースの食事は本来は『炊き込みごはん』のようでしたが當方のリクエストで昼に當店で供され
人気の『鯛茶漬』を先にひと口、戴きました。この『鯛茶漬』も銀座界隈では"あさみ"さんや"うち山"さんのもの
などが特に有名ですが鯛の質では全く引けをとらず。むしろ胡麻だれの味では先の胡麻豆腐同様に當店のものが
自分の嗜好する味に最も近いもののように感じた次第です。そして『焼き秋刀魚』のほぐし身に『いくら』を加
えた『炊き込みごはん』が炊き上がりお目見え、秋刀魚出汁によって炊きあげられたごはんがこれまた滅法美味。
『いくら』も脂がのったものが使われており上品な味付、茶碗を思わず抱えて夢中になって戴きましたが木耳と
筍の食感が良いアクセントとなっておりとても美味しいものでした。赤だしの椀種はお揚げさんでしたが此れも
単に刻んだ揚げを使っているのではなく一度焼きを入れて香味と食感を引き出すという細やかな仕事が施された
ものでしたし香の物も手抜かりのないもので程良い酸味の山形の温海蕪にシャキシャキとした食感の山形の芭蕉
菜に炊いた昆布と箸休めには余りあるものでした。口直しの水菓子も二段構えで『南瓜のアイス』と沖縄の黒糖
で作られた『プリン』でいづれも美味しいものでした。都内には雨後の筍の如く新しい料理店が次から次と出来て
おりますが久しぶりに今後益々期待の出来る店に出逢うことが出来たように思います。こんな気持ちになったのは
久しぶりのことであり京都の"光安"さんや浜松の"いっ木"さんで感じた以来のこと。そんなこともあって総合評価
は初訪ながら異例の★★★★☆(4.5)とさせて戴きました。
『鱧の落とし』に『トマトベース』のソースを合わせるというような斬新なアイデアから作られる料理は創作色
が一見強いように感じられる方も居られると思いますが基本がしっかりと出来ていての変化球ゆえこれはこれで
面白いものと思いますし店主の感性の豊かさは計り知れず。東銀座での行きつけの店にしたい一軒であり既に年末
の予約と年明け一月の予約を済ませ店を後にしたのでありました(笑)

  • つきだし。
  • 生ビール。
  • 南瓜のすり流し。

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5位

くろぎ (湯島、上野広小路、上野御徒町 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 ¥1,000~¥1,999

2011/12訪問 2012/02/19

味の積算で東人(あずまびと)の心をくすぐる … 『くろぎ』。

盛岡を後にして東京へと戻った十二月二日の夜は湯島の隠れ家"くろぎ"さんでの宴、この日は仕事絡み
での利用だったのでカウンター席は敢えて避けて一階の奥の個室をはじめて使わせて戴きましたが此の
スペースの居心地の良さもすっかり気に入ってしまいました。

美味しい料理に旨い酒のお蔭で話もトントン拍子に進み有意義且つ楽しい時間を過ごさせて戴いたことに
心より感謝申し上げます。

供された料理画像は既にアップ画像が百枚を超えておりますゆえ全てを御披露出来ぬことが残念でなり
ませんが以前の画像を三枚削除しこの時の画像を新たに三枚アップさせて戴きました。

當日供された料理は先付で画像の『香箱がに』とずわい蟹、海鼠腸飯蒸しに焼き胡麻豆腐、吸物代わりの
海老真丈の椀、大間の鮪に豊後水道のピチピチの魚の造りの盛合せ、柚子釜にばち子、焼物には画像の
蝦夷鹿焼』炊き合わせに身も心もほっこり温まる『かぶら蒸し』、そして丹波栗の炊き込みごはんに蟹出汁
の味噌汁と香の物、紫芋のモンブランという内容でした。

味の積算で東人(あずまびと)の心をくすぐる店主の黒木さん、来春には新たなる夢に向かって更に飛躍を
されることでしょう。都内の料理店で自分の好きな店の五本の指に数えられる一軒です。ご馳走さまでした。

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2011/10のレビュー
昼餉は浦和の関西割烹を名乗られたナンチャッテ料理店にて予想外のハズシに見舞われ夜は気分一新
湯島にて確固たる不動の地位を築かれた"くろぎ"さんへと久しぶりに伺わせて戴いた。

時は九月の最終日である三十日のことですが一日フライングして『十月一日』の内容で料理を供して戴
きました(爆)

既にアップ画像が100枚を超えており追加でのアップが不可能でしたので過去の画像を四枚削除して
新たに今回四枚の画像と差換えさせて戴きました。

當店の魅力につきましてはイマサラ記することもないと思いますが店主である"黒木 純"さんを筆頭に
女将やオールスタッフの細やかな心遣いと気遣いが多くのくろぎファンを生みだし、その心を強く掴んで
離さないのやと思います。

當日の料理画像を全てご披露することが出来ず残念ですが出色の一品は黒木氏イチオシの『迷い鰹』、
対馬沖で水揚げされた通称『根付きの鰹』と呼ばれるもの。魚体は理想的な大きさの4㌔程度のもので
あり身の色艶も抜群、色目は鮪の赤身をも凌ぐ濃い赤色でありながら脂も適度にのっており旨味が凝縮
されたその味には思わずハッとさせられました。その後の鮪の赤身、中トロ、トロの味比べには舌が悦び、
これぞ正に口福という名の至極の時間を過ごさせて戴きました。

料理の味の傾向は最初に味のトーンを持ってきたものであり、ひと口目から美味しいと感じるように敢て
作られており京都の滋味優先で食べ終える頃に味の照準を合わせた料理とは全くの別物ですが濃い目
の出汁を好む関東の人間にはむしろこの方が判り易いということで確信犯的にそのような味付けをされ
ているようですが馴染になると何も云わずとも微妙な加減をして供してくれるあたりが実にニクイところ。
さまざまな見方があると思いますが相対的な満足度は都内でも屈指の店であるのは間違いないでしょう。

既に十二月の予約を済ませておりますが追加画像のアップも叶わぬのでどうしたら良いのでしょう(苦笑)
これという料理があった場合のみ古い画像と差し替えさせて戴きます。

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2010/10のレビュー
2010年10月1日既にご存知のとおり"湯島 一二一"という店名から"くろぎ"へと改称された同店。
改称された初めて迎える週末土曜日の夜に御祝いを兼ね友人とともに再訪をさせて戴きました。

とりあえず"當日の献立書"の画像もアップさせて戴きましたが供された内容は献立書の内容を
超越したものでありリクエストとおりの"松茸"を惜しげもなく使った"松茸の宴"となった次第です。

明らかに隣席の方々とは料理内容が異なりエコヒイキやズルイと揶揄される向きも居られるとは
思いますが支払額も全く異なりますので何卒、寛大な気持ちで御理解を戴きたいと思います(笑)

何よりも圧倒的な松茸の量に同席戴いた某京姫は歓喜の声をあげ満面の笑みを浮かべ松茸を
頬張られ悦ばれて居られたので無事に今宵の約束を果たせたのでは… と理解しております(笑)

松茸の前に"天然の舞茸"を供して焦らす辺りも心憎い演出であり、その後の怒涛の松茸料理
がより一層インパクトを与えたことは云うまでもありません。

"鱧と松茸の土瓶蒸し"には裕に一本分の松茸が使われており、揚げ物は敢えて天ぷらではなく
"松茸のフライ"を供する辺りが黒木氏の味覚センスの良さを感じさせてくれる一面と思います。

時期的に天ぷら屋さんに足を運べば間違いなく"松茸の天ぷら"が供されますが個人的に松茸は
天ぷらで戴くよりも"フライ"として戴いた方が美味しいと感じるから余計にうれしい料理でした。
牡蠣や鯵や牛肉などにも同じことが云えると思いますが天ぷらより断然"フライ"の方が美味しいと
感じる素材はある訳であり"松茸"もそのひとつではないかと思います。

そして"松茸のすき焼き"に"松茸ごはん"と松茸、まつたけ、マツタケ、松茸のオンパレードです。

勿論、"国産"の松茸です。築地や大田市場での當日の相場は1㌔十萬円の値がついていました
ので正に贅沢の極みの宴でありました。

万が一のことも考え産地の盛岡の業者にも岩手山産の松茸を準備しておいてもらい数本買い求めて
バックに忍ばせての帝都への帰還でしたが、そんな心配も何処吹く風でありました(笑)

松茸のことだけ記述させて戴きましたが例えば"造り"をとってみても使われている素材の質の向上が
明らかに認められるものでしたし、目の前で引いた刺身を盛り付けた後に乾かぬようにと細かな配慮
や演出等も以前とは異なります。

日本料理の聖地であります京都にて"未在"さんをはじめ数軒の店を自らの舌と五感にて体感されて
来られた黒木氏、いづれ行き着くところは茶懐石となることでしょう。

諸事情により味の評価とCPの評価は差し控えさせて戴いておりますが総合評価は★★★★★(5.0)
でも足りないくらいかもと思えます今日この頃、新生"くろぎ"さんの更なる飛躍を祈念しまして當店の
レビューの更新は、これにて完結とさせて戴きます。

※古い画像を削除して最新の画像に入れ替えをさせて戴きましたこと御理解くださいませ。

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2010/5のレビュー

既に画像の追加アップもレイティングも許容値に達しましたので以後のレビュー更新はありません。

"鱧でございます"と鱧を持つ手を左右に広げお披露目する料理長の"黒木"氏は茶目っ気も
あり場の雰囲気を和ませてくれ都内の料理店では自分にとっては居心地の良い屈指の一軒です。

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四月某日、この日は先月の生誕記念日に戴いた花束等の御礼をひと言どうしても申し上げたくて
"丈参"さんの後に一軒店を挟み三軒めに少しの時間だけお邪魔させて戴いた。
玄関先で我が顔を見るなり"おかえりなさい"という店主"黒木"氏の言葉が何よりもうれしかった。
先に何軒かの店に立寄っていることは時間からみてもお見通し日本酒のアテに腹にたまらぬ料理

を少量供して戴き翌月の予約を済ませて、この日は店を後にさせて戴きました。
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2010/03のレビュー
三月某日、この日は不肖"loropiana"がこの世に生を受けまして何度目かの記念日でありました。

當店へ週に1~2回という物凄い頻度で通われている心優しき友人や店の代表である黒木 純さん
を筆頭にスタッフの方々の温かい心遣いやご配慮、そしてカウンター席で同席戴いた紳士淑女の
皆様方にこの場をお借りして心より感謝御礼申し上げます。

皆さんで御唱歌戴きました"♪HAPPY BIRTHDAY♪"の歌に心と目頭が熱くなった一日でした。

この日は個人的な記念すべき日ということもあってなでしょうか気の所為かもしれませんが料理の
品数はいつもより明らかに多く感じましたが勿論、何ひとつ残すこともなく全て胃袋の中に有難く、
収めさせて戴きました。

京都の割烹では京都の内さんに顔を向けるように東京にある店ゆえに東京の内さんにしっかりと
顔を向けた仕事をされている店であり料理の味付も東京の客に合わせ敢えて濃い目に塩分も出汁
も強めにされているようです。


京阪神の割烹を食べ歩きされている方には明らかに濃い味と感じられることと思いますが何度か
店に足を運び馴染になることで何も云わずとも味や出汁の濃淡は好み通りに、しっかり調整されて
いることに気づかれると思います。

計算し尽くされた上での味の積算と料理と料理を確信犯的に敢えてぶつけ味の消し込みは技アリ

黒木氏の繰り出す一筋縄ではいかぬストーリー溢れる料理の展開を舌と心で感じながら美酒と
ともに愉しむ時間は至福のひと時、一度や二度の訪問では、その魅力を測ることは自身も出来ず
三度め以降に、その魅力の虜になりました。


既に當店の評価を自分の中では★4とか★4.5とかということは超越してしまいましたので総合評価
とサービス評価、CPの評価を★★★★★(5.0)と上方修正してレビューを更新させて戴きました。

以後の更新は供された料理画像のみを追加アップさせて戴くこととします。

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2010/02のレビュー
なんだかんだと云いながら最近、月1or月2、多い時には月3回のペースで"夜の部"に伺ってます(笑)

2010/02 と或る日に當店に週1or週2のペースで足繁に通われている超上客であろう常連の友人
の招きの席にで"Night and Day"に戴きましたスペシャル料理画像の追加アップとともにレビューの
更新をさせて戴きます。

料理の内容は一般的に夜に供される8,800円のコースの内容や昼に供されます御値打ち1,000円の
鯛茶漬の内容とは些か異なると思いますが、そのあたりはどうか大人の目線で御覧戴きますよう
平にお願い申し上げます(笑)

個々の料理の説明は割愛させて戴きますが、この日は"山陰但馬"の"浜坂港"で水揚げされた
名残りの"松葉がに"と"消しゴム"よりも ぶ厚く切られたゴリッパな"からすみ"を酒肴として〆の
食事の"からすみごはん"のおかわりで鼻ぢが出るほどたっぷりと戴きました(笑)

料理に合わせて日本酒は"獺祭"の純米大吟醸や"亀甲花菱"の美山錦、"春鹿"の超辛口などを
合わせ、この日も大いに愉しませて戴きました。

料理の味付は酒呑みや若い客層向けに確信犯的に塩分強めで味しっかり目にされておりますが
味の濃淡、塩分の強弱は店に通い馴染になることで阿吽の呼吸、何も云わずとも自分には味付は
薄め、塩加減抑え目の淡い味付のものが供される点も非常に気に入っております。

現在まで評価は差し控えさせておりましたが、この時点で総合評価は★★★★☆(4.5)と評価させて
戴きます。

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2009/11のレビュー
何かにつけて都内で今、最も注目を浴び、そして話題にこと欠かないのが當店ではないでしょうか?

それを裏付けるかのように、いつの間にやら実に多くのレビュアーさんによって異口同音ながら賞賛
され夜の予約の競争率も激化しているという日本料理【湯島 一二一】さん。

自分が當店に強く興味を惹かれたきっかけは と或るレビュアーさんの書かれたレビューにコメントを
書き込んだ時からでありますが、その時点では未だ當店のレビューは三件だったと記憶しています。

その後にもリアルの世界の友人三名が次々にレビューを書かれ火に油を注ぐ形になりヒートアップ。

時系列に沿って伺った店を順番にレビューアップしている間に既に二十数名の方々が書かれており
完全に出遅れちゃいましたが遅ればせながら當方も一筆書かせて戴きます(笑)

一番最初に當店へ伺ったのは九月某日の昼に【鯛茶漬】を戴きに伺ったことがはじまりであり、その
時に夜の献立を拝見し直ぐにでも、その日の夜に伺ってみたいと思ったのですが當方、現在、京都、
東京、盛岡の三箇所の寝城を転々としている身ゆえ、いつでも直ぐ行けるという訳にはゆかず東京
滞在中の希望の日時に予約が入れることが出来ず已む無く翌月の予約をして泣く泣く摩訶不思議
なる食文化の地であります盛岡に一時、戻ってきたのであります(笑)

九月某日に戴いた【昼】に戴いた【限定二十食】の【鯛茶漬】、メインである【鯛】は濃厚な【胡麻だれ】
に絡まれて供されます。【鯛】は前日の落としを使っていると料理長である【黒木 純】氏は話されており
ましたが【鯛茶漬】で有名な都内の【銀座うち山】さんや【あさみ】さんで供されるものと単純に比較して
みましても【胡麻だれ】の香味や【鯛】の質と食感では一歩も引けをとらぬ味わいのものであると
いうことは紛れもない事実であり【鯛茶漬】以外にも【小鉢】に【出汁巻玉子】、【味噌汁】、【水菓子】と
ついて良心価格で供されていることには本当に頭がさがる思いであります。

そして真骨頂である十月某日に戴いた【おまかせのコース料理】の内容をざっと書き記してみますと、
【先付】の【焼き胡麻豆腐】から酒が悦ぶ【三大珍味盛】の【汐うに】、【からすみ】、【ばち子】の三点盛
に【鮟鱇の肝】と【くもこ(鱈の白子)】のぽん酢仕立、【椀物】は【○吸い(すっぽん)】、【凌ぎ】の【鯖寿し】
と【蛸の柔らか煮】、【焼物】は【生のししゃも焼】、【煮物】は【海老芋】と蕪、菊菜に栗の炊き合せと続き
【寒鰤】、【鯛】、【烏賊】、【鮪 中トロ】の【造りの四点盛】、そして自慢の【和風の牛タンシチュー】と驚愕
の旨いもんのオンパレードの後の【食事】は【牡蠣の炊き込みごはん】に香の物と【鯛の味噌椀】、口直
しに目の前で作りたての【葛切り】を黒糖蜜で味わいひと通りとなりました。

個々の料理の味に関しましては画像をご覧戴けさえすれば敢えて詳細な説明は不要と思いますが、
とても 悩ましい程に【尿酸チック】な一夜でありました(笑)

料理長の【黒木 純】氏は【吉兆】、【京味】という、ある意味輝かしい修行先での修行を積まれており、
経歴と修行先に極度に拘る経歴フェチの方には堪らぬ料理人でありサブを務める【たかし】君も同じ
経歴を歩んでいるだけあって二人の呼吸は阿吽の域に達しており傍から見ていても安心感すら感じ
られました。

食事を味わいながら黒木氏との料理談義にも華が咲いたのですが黒木氏自身が今一番行ってみた
い料理店は京都の【未在】さんということで、あれこれと尋ねられ愉しい時間を過ごさせて戴いた。

料理屋の評価をする上で値段やCPが云々などという話は無粋ではありますが當店で使われている
素材の質や味と接客等をトータルで考えますと料理代アンダー壱萬円の店としては用賀の【花邑】さん
同様に當店も費用対満足度が相当に高い店であると思います。

現時点で當店を評価しましても味の評価、総合評価とも楽に、★★★★(4.0)+の評価をすることが
出来ますが今回は評価を差し控えさせて戴きます。

何故に評価を差し控えるのか?
それは年明け友人の予約の席に二回ご相伴させて戴くことになっておりまして、その後にゆっくりと
評価をさせて戴こうと考えたからなのです。

何しろ、その友人 "自分と行けば有得ないスペシャルな内容になります" と断言されておりますから
ぶっちぎりの内容の料理画像のアップとレビューを書いた方がインパクトも大きいと思ったからです。
ただ旬の店の流れに余りにも乗り遅れてもいけませんから、とりあえずレビューをアップしました(爆)
ということで次回の更新レビューまで評価の方は、お待ち下さいまし(笑)

  • 香箱がに&ずわい蟹。
  • 蝦夷鹿焼き。
  • かぶら蒸し。

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6位

いっ木 (第一通り、新浜松、遠州病院 / 日本料理、ふぐ、すっぽん)

2回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.3
    • | サービス 4.7
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 ¥6,000~¥7,999

2018/01訪問 2018/05/02

滋味優先のプレの無い味わい…『いっ木』

素晴らしい御縁をいただき前夜は10kgアップの『九絵(クエ)』にはじまりAOCブレス産の『シャポン』に1kg超の『伊勢海老』、『吉浜鮑(キッピンアワビ)にヨシキリザメの『鱶鰭(フカヒレ)』に『上海蟹(シャンハイガニ)』、西表島産の『カマイ(猪)』という高級食材を惜しげもなく使われた超悶絶級の中国料理を知る人ぞ知る会員制の『飛龍』さんにて堪能させていただきました。そして興奮覚めやらぬ翌日は約七年ぶりに寄せていただいた『懐石いっ木』さんへ。昼のミニ懐石のコース料理とともに品書きには載せていない『初亀』かすみざけ、『國香』中汲み無濾過生原酒、『英勲』愛山ノ山廃等、一木さんの隠し酒を楽しませていただきました。料理は『赤烏賊(アカイカ)の真薯』に『蓮根饅頭(レンコンマンジュウ)』、『車海老(クルマエビ)』に『鶏松風(トリマツカゼ)』に『トラ河豚』の煮凝り、『地金目』に『氷見の鰤(ブリ)』の造りに『越前蟹(エチゼンガニ)』に『猪肉(シシニク)』の小鍋立。前夜は『飛龍』さんで西表島産のカマイ、そして『いっ木』さんでは井伊の尼小僧様と直虎様で一躍有名になった井伊谷産の罠掛けで獲られた『猪肉(シシニク)』とジビエづいています。炊きたてのごはんで『海老芋(エヒセイモ)』の雑炊、二種の水菓子に抹茶にて昼のミニ懐石の料理はひと通り。突発的な前日夜の予約でしたが折角、浜松に来られたのですから。と休日を返上し温かく迎え入れてくれた一木さん。二時間超えの一木さんと二人きりでの料理談義に酒談義、京の雅な話と会話は尽きることなく贅沢な時間を愉しませていただきました。『菊乃井』さん仕込の食べ終える頃に味のトーンを持ってくる『滋味優先』のブレの無い味わいは未だ健在。
何を隠そう浜松に途中下車したのは決して『あつみ』さんの『白焼重』や『鰻』だけが目的だった訳ではなく本当の目的は静岡一とも称されるカウンター割烹である當店『いっ木』さんへ寄せていただくことが主でありあくまでも『あつみ』さんの『白焼重』はその序であったと悔しいから嘯いてみます(笑)さて、當店の店主である『一木 敏哉』さんは京都の『菊乃井本店』さんにて研鑽を積まれた後、浜松の地に自身の店を構えられた新進気鋭の若き料理人という噂はかねてより聞及んでおりました。いつの日か伺ってみたいと思っていたものの飛び道具の飛行機での移動が多く浜松に行くことはなかなか簡単そうでありながら現実的にはかなり難しく今まで伺うことが叶いませんでしたが今回は不可抗力により全行程、新幹線での移動。この機会を逃しては次に何時行けるか判りませんので浜松で途中下車して一泊することに初めから計画していたのでありました。店は白壁塗りのシンプルな店構えで掲げられた『いっ木』の暖簾は修行先の『菊乃井』さんから贈られたものらしく『贈 菊乃井』の文字が。暖簾をくぐると石畳、手前に掘りの座敷席その奥手に全六席のカウンター席。カウンターは目を瞠るような立派な無垢の一枚板、店主との距離感は極めて近く移転する前の西木屋町の『食堂おがわ』さんの距離感に近いものが感じられ個人的に好きな雰囲気の店でした。何せカウンター席がゆったりとした間隔が空けられて全六席というのが良い。これだと店主の目が行き届きますし美味しいものを戴くにも丁度良い席数だと思う次第。座り心地の良い椅子に腰を預けると先ずは『おぶ』が供された後ひと呼吸措いてから飲物が問われ瓶ビールを取り敢えず所望、料理は細魚の昆布〆に煮凝りの上に甘海老と海老の子、うすい豆に蕨という先付から順に椀物は五月ということで『鯉』の素揚げと菜花を使った吸物、そして目にも楽しい八寸は小鉢や豆皿に珍味や酒を呼ぶ酒肴が色々、静岡らしい酒盗や山葵菜に『菊乃井』さん譲りの烏賊の身の中に唐墨(カラスミ)を詰めた印籠詰(インロウヅメ)、鼈(スッポン)のエキスがギュッと凝縮された滋味溢れる○出汁のゼリー寄せ粽(チマキ)の中には鯛ずし出汁で炊かれた車海老、鞘豌豆(サヤエンドウ)に麩には思わず頬が緩みました。料理に合わせ戴いた日本酒は磯自慢、初亀、開運、喜久酔、菊姫、國香といった静岡を代表する地酒がずらり何から戴こうかと悩んでいると三種類の酒がお任せで供される『利き酒セット』がお奨めと伺い店主に委ねることに。何といっても店主は日本酒のソムリエとも喩えられる利き酒師の資格を持たれている方、自ら作られる料理の味と酒とのマリアージュは誰よりも判っている筈であり身を委ねるのが賢明でしょう。選ばれた酒は英君の特別純米酒、志太泉と國香の純米吟醸酒が180㍉入のグラスの七~八分まで注がれて供されたのでこれだけで二合強の量ですから量的にも充分かと。続いて供された料理は造り、二皿に分けて供され一皿めは鯛の腹身と『のどぐろの炙り』、二皿めは炭火で皮目を焼いた鰹に藁燻で香りづけをしたもので厚切りにされた鯛の腹身はコリコリとした歯応えと適度な脂が楽しめ『のどぐろの炙り』は言葉は不要、脂ノリノリの『のどぐろ』に自称『ノドグラー』歓喜、鰹は腹身ではなく背の真っ赤な部分に藁燻をつけれたもの。こってりした『のどぐろ』にさっぱりした『鰹(カツオ)』の組合せは濃淡の味覚のメリハリだけではなく視覚、臭覚までをも考えられたもの。焼物は贅沢に『河豚(フグ)の白子焼』に鮑(アワビ)の上に『海胆(ウニ)』をたっぷりのせ焼き目をつけたものというこんなのアリという超豪華版。目を閉じて想像してみてください。不味い訳などある筈がありません(笑)豪華な海の幸の味の余韻に酔いしれていたところ次に供されたのが『黒鯥(クロムツ)』に茸のたまご餡をかけ粉山椒と花山椒でピリリと全体の味を締めたもの。『のどぐろ』は学術名は『赤鯥(アカムツ)』、赤鯥の後に黒鯥の料理を供されたのは確信犯的と思える店主のセンスに脱帽です。〆の食事は『鯛の子のぞうすい』、鯛の子がこれでもかという程に入れられておりました。水菓子は二段構え店主自ら点てたお薄を戴きコース料理はひと通り。料理の味付や椀物の吸地はあくまで滋味優先で食べ終えるころに味のトーンを合わせたもので同じ『菊乃井』さん出身で今や人気絶頂で予約が取り辛くなってしまった『中善』さんの味付けとは対極のもの。今回戴いた料理は九千円也の料理、都内なら用賀の『花邑』さんや『本城』さん、赤坂の『詠月』さんといった人気店と同価格帯。京都であれば『中善』さんや『大渡』さん、『とくを』さんあたりと比較することになると思いますが上記の人気店と比べても一歩も引けを取らぬ内容。個人的には『光安』さん以来の感動を覚えました。一木店主の人柄も素晴らしく、しばらくの間、京都に戻る際には浜松で途中下車を繰り返すこととなる可能性も無きにしに非ず。初訪ながらも総合評価は★★★★☆(4.5)と評価させて戴きました。おまかせのコース料理は七千円から壱萬五千円まで四コース今回は上記の内容で下から二番目の九千円ですからその上を頼んだら一体どんなことになるのやら(笑)浜松に『いっ木』アリ、久しぶりの佳店です。

  • 猪肉の小鍋立
  • 蓮根饅頭
  • 赤烏賊の真薯

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7位

小判寿司 (中豊、磐城棚倉 / 寿司)

8回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.2 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 ¥20,000~¥29,999

2023/06訪問 2023/06/29

東北を代表する進化を続ける江戸前鮨…『小判寿司』

美食を求めて訪れた福島県。前夜の『丸新』さんでの御馳走の波状口劇の興奮覚めやらぬ中、朝食は『丸新』さんの御持たせの折の炊込みごはんで済ませホテルのチェックアウトの時間前には郡山を離れて往時、天領の地であった棚倉町へ。そして向かった先はTabelog Award受賞の常連店でありTabelog寿司部門の百名店にも名を連ねられる今や北日本を代表する江戸前鮨の一軒であり全国から数多の鮨好きが大挙して訪れる人気鮨店『小判寿司』さんです。カウンターの向こう側で腕を揮われるのは店主の和知慎吾さん。サーヴィスと裏方は奥様の弥生さんと長男のヨシ君の三名で切盛りされています。いつものカウンターの末席に席を取らせいただき先ずは『MASTER'S DREAM』の生ビールで渇いた喉を潤します。サーバーの清掃と手入れが行き届いた肌理細やかな泡でを覆われた麦汁はとても美味。料理は前半は酒肴を中心に後半はにぎりといういつものお任せコースでお願いしました。料理は裏磐梯で朝摘みされた『蓴菜(ジュンサイ)』と『平貝(タイラガイ)』の酢の物から。程良い酸味で胃壁と食欲中枢を刺激された後に大好物の『煮鮑(ニアワビ)』を鮑の肝ソースと共に味わい、造りには『眞子鰈(マコガレイ)』、超特大サイズの『ボタン海老(エビ)』、閖上産の『本玉(ホンダマ)』≒『赤貝(アカガイ)』を酢橘(スダチ)と眞子鰈(マコガレイ)の肝醤油(キモショウユ)、卸したての山葵(ワサビ)と天然塩、自家製の海老(エビ)みそを使い分け味わいました。ボタン海老(エビ)に載せられた蝦卵(エビノタマゴ)の醤油漬(ショウユヅケ)はキャビアに勝るとも劣らぬ美味しさ。更には炙られることで表面に脂が浮き旨味が高められた『眞子鰈(マコガレイ)』の縁側(エンガワ)の炙りと続き三陸産の身入りの良い殻付きの『ムラサキ海栗(ウニ)』と『槍烏賊(ヤリイカ)』の微塵切り(ミジンギリ)を混ぜた舎利玉(シャリダマ)が添えられて供されました。『海胆(ウニ)』は天然塩で甘みを高め味わい更には和知店主の薦めで殻の中に舎利玉(シャリダマ)を投入し烏賊海胆飯(イカウニメシ)として一度で二度愉しみ海のパイナップルとも称される三陸産の天然物の『海鞘(ホヤ)』と更に進化した『鮟鱇の肝(アンコウノキモ)』で五味五感を刺激され合せて供された仁井田本家の秘蔵の酒とのマリアージュを愉しませていただき大きいサイズの釣り物の『鮎(アユ)』の一夜干しを鮎の肝ソースとともに珍味のウルカの風味で味わい前半の酒肴は終了。後半はにぎりで『九絵(クエ)』から順に細やかな隠し包丁が施され軽く炙りを入れた『北寄貝(ホッキガイ)』、天然『本鮪(ホンマグロ)』赤身、〆加減が秀逸な『小鰭(コハダ)』、天然『本鮪(ホンマグロ)』トロ、『鰹(カツオ)』藁炙り、『煮蛤(ニハマグリ)』、ブランド物の『のどぐろ』紅瞳(ベニヒトミ)、茹で加減が絶妙なレア感を残し茹でられた『車海老(クルマエビ)』、軽く炙り旨味が高められた脂のりが半端ない『目光(メヒカリ)』、ふわっとろの『穴子(アナゴ)』、スフレ風のカステラ玉と厚焼の二種類の『玉』に山葵(ワサビ)を利かせた『干瓢巻(カンピョウマキ)』に『蜆(シジミ)の味噌汁(ミソシル)』に水菓子に自家製のミルク感たっぷりのジェラートに三種の桜桃(サクランボ)で締められた大満足の内容の料理とともに福島県の地酒中心に選んだ日本酒をいただきペロンペロンに気持ち良くしていただきました。青森の名店『寿司一』さん亡き後の東北の寿司業界を牽引されるであろう『小判寿司』さん。正に天領 棚倉町の至宝です。
そして今回の福島遠征の締めは郡山を離れて水戸行きの水郡線にて往時、天領の地であった棚倉町へ。そして向かった先は『The Tabelog Award 2022』にてBronze受賞店であり今や北日本を代表する江戸前鮨店であり全国から数多の鮨好きが訪れる人気鮨店『小判寿司』さんです。カウンターの向こう側で腕を揮われるのは店主の和知慎吾さん。サーヴィスと裏方は奥様の弥生さんと長男のヨシ君の三名で切盛りされています。いつものカウンター席に席を取らせいただき先ずは『Rococo Tokyo White』で渇いた喉を潤します。料理は前半は酒肴を中心に後半はにぎりというお任せコースを所望しました。酒肴は神経締めにされた三陸産の『水蛸(ミズタコ)』の桜煮(サクラニ)からスタート。柔らかさの中にも咀嚼感が楽しめる一品の後は北海道厚岸産の牡蠣(カキ)『仙鳳趾(センポウシ)』。酢洗いされた牡蠣(カキ)は身締まりが良く濃厚且つクリーミー。そして『ズワイガニ』の玉締めは玉締めの上にたっぷりの銀餡(ギンアン)と蟹(カニ)の剥き身(ムキミ)。『ズワイガニ』の香味が楽しめるとろっとろの一品で玉締めは思わず飲み物?と言いたい程の柔らかな口あたり。更に福島常磐産の『寒鮃(カンビラメ)』と炙った『鮃(ヒラメ)縁側(エンガワ)』宮城県閖上産の香り高き『赤貝(アカガイ)』を肝醤油(キモショウユ)と岩塩(ガンエン)と卸したての本山葵(ホンワサビ)で味わった後にふわっふわの『鮟鱇(アンコウ)の肝(キモ)』と奈良漬(ナラヅケ)と茶ぶりにされた『赤海鼠(アカナマコ)』にて前半は終了。後半は『真鱈(マダラ)』の『白子(シラコ)』と自家製『唐墨(カラスミ)』の小丼から。白子(シラコ)と舎利(シャリ)と唐墨(カラスミ)を良く混ぜ和えて口に運ぶと上質なチーズを口にしているような錯覚に見舞われます。そしてにぎり鮨へと移行。にぎりは通称『白川(シラカワ)』と称される『白甘鯛(シロアマダイ)』から順に軽く湯霜にした『北寄貝(ホッキガイ)』、幻の海老『葡萄海老(ブドウエビ)』、江戸前鮨の代表種『小鰭(コハダ)』、三陸塩釜産の天然『本鮪(ホンマグロ)』赤身(アカミ)、『〆鯖(シメサバ)』は棒ずしにて。脂の甘みに思わず身体を仰け反らせた三陸塩釜産の天然『本鮪(ホンマグロ)』のトロ、春の訪れを告げる『細魚(サヨリ)』、『のどぐろ』はブランドものの赤鯥(アカムツ)紅瞳(ベニヒトミ)。梅雨時期の入梅鰯(ツユイワシ)に勝るとも劣らぬ脂のりの『真鰯(マイワシ)』、北海道産の『バフン海胆(ウニ)』と『ムラサキ海胆(ウニ)』の味比べ。そして江戸前の仕事が光る『煮蛤(ニハマグリ)』、常磐産の『目光(メヒカリ)』は一夜干しにして炙りをかけたもの『煮穴子(ニアナゴ)』を炙りたてのふわっトロを塩と煮ツメで味わい、寝かせて旨味が凝縮した『石垣鯛(イシガキダイ)』、『槍烏賊(ヤリイカ)』はコリコリとした食感が楽しい烏賊(イカ)のエンペラ(耳)は二枚重ねで。前半のものとは締め加減を変えた『小鰭(コハダ)』、三陸塩釜産の天然『本鮪(ホンマグロ)』の中落ちは手巻きで味わい締めは出汁巻(ダシマキ)とスフレ仕立ての2種類の『玉(ギョク)』。上質な粉茶。そして食後の摘みたての大粒の『いちご』にて、お任せのにぎりはひと通りです。世の中は赤酢(アカス)の舎利(シャリ)がもてはやされる中、白酢の舎利に拘られる和知店主。久しぶりに口にした江戸前鮨の味に此れぞ鮨だよねと鼓舞し福島県産の『飛露喜』、『冩樂』純米酒、『会津中将』純米吟醸、『一歩己』純米無濾過生原酒と酒どころ福島を代表する銘酒に酔いしれた天領 棚倉での口福な時間に感謝。
郡山を後にして向かった先は江戸時代には天領として盛えた磐城棚倉町に店を構えられる和知慎吾さんと奥様の弥生さんと御子息のヨシ君のご家族三名で切盛りされる『小判寿司』さんです。東京から磐城棚倉町に来るようになって既に十六年余の歳月が経ちました。今では全国から『小判寿司』さんを目指し棚倉町に多くの鮨好きが訪れられるようになりましたが十六年前に誰がこの姿を想像出来たことでしょう?郡山から新白河へ新幹線、新白河からJRバスで棚倉へ見馴れた風景を車窓越しに眺め約1時間の道のりを経ていつものカウンター席へと腰を下ろし先ずは地酒の『田村』からスタートです。酒肴には『蓴菜(ジュンサイ)』の酢の物で胃袋を刺激した後に脂がたっぷり載った『梅雨鰯(ツヤイワシ)』、生ハムの食感に近い『鰆(サワラ)』、久しぶりに口にする『葡萄(ブドウ)ボタン海老』に特製の海老ペーストに一瞬『キャビア』と間違えた『葡萄(ブドウ)ボタンの卵、身入りが素晴らしい『殻付きの海胆(ウニ)』に濃厚な味わいが酒盃を傾ける速度を早める『鮟鱇(アンコウ)の肝(キモ)』と柑橘ジュレのなめろう風にされた肝和えに相馬沖で水揚げされた800㌘超の塩蒸しの『鮑(アワビ)』を鮑の肝ペーストとともに味わい更には残った鮑の肝ペーストに舎利と絡めて味わうのが一度で二度美味しい『小判寿司』スタイルです。にぎりは『鯒(コチ)』から順に今が旬の『とり貝』、能登産の『本鮪(ホンマグロ)』の赤身、藁の薫香が鼻腔を刺激する『鰹(カツオ)』、『煮蛤(ニハマグリ)』に『小鰭(コハダ)』で前半から後半への折返しです。後半は宮崎県産の天然『本鮪(ホンマグロ)』のトロからスタート>このトロの旨味を受け止めるのは大好きな『鍋島』純米大吟醸です。次に供された『葡萄(ブドウ)ボタン』の昆布締めは舌にねっとりと絡みつき『甘海老(アマエビ)』の昆布締めとの海老&エビの味比べ。『鯵(アジ)』に『鱚(キス)』、『バフン海胆(ウニ)』の手巻き、ふわっとろの『煮穴子(ニアナゴ)』は塩と煮ツメで半々味わいスフレ風と出汁巻の二種類の『玉(ギョク)』の食比べを愉しみ締めの椀物には贅沢過ぎる『喜知次(キチジ)』の潮汁(ウシオジル)、水菓子は奥様の弥生さんお手製のブルーベリーが添えられたレアチーズケーキをいただき三時間余の口福な時間を過ごさせていただきました。更には絶品の『おいなり』さんを明日の朝にでもどうぞとお持たせでいただいき天領 磐城棚倉を後にしたのでありました。
郡山を後にして向かった先は江戸時代には天領として盛えた棚倉町に店を構えられる孤高の鮨職人 和知慎吾さんと奥様の弥生さん、そして和知家ご嫡男のヨシ君のご家族三名で営まれる『小判寿司』さんです。東京から棚倉に来るようになって既に十六年余の月日が流れました。今では全国から『小判寿司』さんを目指し多くの鮨好きが訪れる全国区の知名度を誇る『小判寿司』さんへと一気に駆け上がられたことは當店の1ファンとしては嬉しい限りでもありますが内心は実は穏やかではなかったりもします(笑)この日のお目当はズバリ塩竈産の『本鮪(ホンマグロ)』です。久しぶりに郡山市場に入荷した『81.8㌕』の極上の天然本鮪を仕入れられたとの知らせを受け急遽、郡山から新白河へ新幹線、新白河からJRバスで棚倉へ見馴れた風景を車窓越しに眺め約1時間余の道のりを経ていつものカウンター席へと腰を下ろし先ずはセラーの中から選んだChampagneからスタートです。酒肴には来店時間に合わせ茹でられた山形県産の『ずわいがに』からはじまり貝出汁で軽く湯霜にされた『牡蠣(カキ)』、『皮剥(カワハギ)』は卸したての山葵(ワサビ)とペースト状にされた皮剥の肝とともに味わい更には、その肝に舎利を加え味わいます。蒸し物に供された『くもこ』は『九絵(クエ)』の粗で摂った出汁で炊かれたもの。そしてお目当の『本鮪(ホンマグロ)』は『背かみ』、『背なか』、『背しも』の部位まで三種類の中トロの味比べ。この本鮪の濃厚且つクリアな味わいは久しぶりに口にする上質な味わいです。更には蒸したての『鮟鱇(アンコウ)の肝(キモ)』をなめろう風にされた肝とともに酒盃を傾けます。締め時間を変えた金華山沖の『真鯖(マサバ)』は棒ずしと造りで味比べ。更には両羽船長の『藍の鰆(サワラ)』を贅沢にも焼きで味わい『唐墨(カラスミ)』、『煮鮑(ニアワビ)』、鮑の肝を舎利と絡めていただいた後に宮内庁御用達の海苔とともに『玉珧(タイラギ)』の磯辺巻にて鮨へと移行します。にぎりは『九絵(クエ)』から順に軽く炙り裏側に飾り包丁を入れられた『北寄貝(ホッキガイ)』、『本鮪(ホンマグロ)』赤身づけ、『小鰭(コハダ)』、『槍烏賊(ヤリイカ)』のエンペラー、『太刀魚(タチウオ)』の炙り、『本鮪(ホンマグロ)』中トロ、『煮蛤(ニハマグリ)』に『本鮪(ホンマグロ)』トロの手巻き、『鯵(アジ)』、『鰆(サワラ)』、『赤貝(アカガイ)』の紐、Hand to Handで『海胆(ウニ)』に『白海老(シロエビ)』、『本鮪(ホンマグロ)』赤身の鉄火巻に中落ち巻を半々、『穴子(アナゴ)』を塩と煮詰め、カステラと厚焼きの二種類の『玉(ギョク)』、そして『本鮪(ホンマグロ)』トロを惜しげもなく使った太巻に青さの味噌汁にてひと通り鮨に合わせて大好きな『鍋島』に『一歩己』とともに楽しませていただいた三時間超の口福な時間に感謝。
南東北を代表する孤高の鮨職人『和知慎吾(ワチシンゴ)』さんが腕を揮われる福島県東白川郡棚倉町に店を構えられる『小判寿司』さん。『小判寿司』さんと言いますと仙台市の文化横丁内に同名の店がありますが店主の和知さんは先代の『鞠子 仁(マリコ ヒトシ)』さんに従事され唯一、暖簾分けを許された方。仙台の『小判寿司』の現店主である『鞠子行雄(マリコユキオ)』さんとは兄弟弟子という間柄です。さて、文月(シチガチ)と言えば『新子(シンコ)』の季節です。『新子(シンコ)』は御存知の通り『小鰭(コハダ)』の幼魚であり出世魚。この時期の鮨屋にとっては意地と誇りの見せどころとともに見栄を張る鮨種でもあります。何せハシリの新子の仕入価格はあの小さな魚体の魚が近海物の天然本鮪にも匹敵するのですから鮨屋さんにとっては本当に厄介な鮨種のひとつかと。前泊した郡山からam9:18発の水郡線に乗り込み電車に揺られること約1時間20分余り、磐城棚倉駅で下車し『小判寿司』さんの開店時間まで駅前のスーパー等を散策し時間を潰し頃合いを見て店へ。開店口開けの客で訪れ、いつものカウンター席に陣取ります。豊国酒造の日本酒『一歩己(イブキ)』を所望。お任せで供される酒肴は『海胆(ウニ)』と『蓴菜(ジュンサイ)』の涼しげな先付から藁焼(ワラヤキ)にされ薫香(クンコウ)が付けられた『鰹(カツオ)』の土佐造り、鼈甲餡(ベッコウアン)が掛けられた『帆立水柱(ホタテカイバシラ)』玉〆は卵の黄身の味がとても濃厚、九州から直接、店へと送られてきた放血神経締めの『九絵(クエ)』の造りに常磐沖で水揚げされた特大サイズの『鮑(アワビ)』は塩蒸しにされ硝子の小鉢で供された特製の肝だれとともに味わいます。脂乗り抜群の北海道産の『真鰯(マイワシ)』で三つ葉のお浸しを巻いて海苔巻きにした小鰭のガリ巻ならぬ『鰯の三つ葉巻』と続きます。先に供された『鮑』を食べ終えた『鮑(アワビ)』の『肝だれ』の硝子の小鉢の中に舎利を入れ良く混ぜ和えられた『鮑の肝ごはん』は一石二鳥の美味しさであり店側も客側も双方良しの一品。更に『槍烏賊(ヤリイカ)』を『ボタン海老』の味噌で造られた特製の海老味噌とともに味わい滅多にお目にかかることのない大きさの『ボタン海老』の造りに『岩牡蠣(イワガキ)』と酒を呼ぶ酒肴の波状口劇にもうメロメロです。そして此処から本番のにぎりへと移行。白身の『眞子鰈(マコガレイ)』のにぎりからはじまり色の薄い『石垣貝』、鮨屋泣かせであり鮨屋の店主の心意気で供される『新子(シンコ)』に近海物の『本鮪(ホンマグロ)』の赤身ヅケ、酒肴でも供された『真鰯(マイワシ)』と続き高級ブライドである長崎産の『紅瞳(ベニヒトミ)』が使われた『のどぐろ』の蒸しずし、『煮蛤(ニハマグリ』に茹でたての『車海老(クルマエビ)』、『本鮪(ホンマグロ)』トロ、『蛸(タコ)』柔らか煮、『海胆(ウニ)』、『穴子(アナゴ)』は塩とツメで半々、山葵を効かせた『干瓢巻(カンピョウマキ)』に二種類の『玉(ギョク)』でひと通りです。今回供されました酒肴は全て美味しかったことは言うまでありません。そして本業のにぎり鮨の根幹を成す舎利は本家筋である仙台の『小判寿司』さんが二代目の現店主の『鞠子行雄』氏が十年程前から『赤酢』使いの舎利に変えられたのに対し當店の店主の『和知慎吾』氏は修業時代からの白酢一本で頑なに貫かれており握りのフォルムは流線形で美しく口に運ぶと鮨種と一体化してほろりと解ける理想的なにぎり。使われている『本鮪』の質を見れば鮨屋の格が大凡判ると良く言われますが當日の『本鮪』は近海物の天然本鮪の上物。酒肴・鮨ともにいつの日にも増して素晴らしく充実した内容でした。
『棚倉の奇跡』として全国の鮨好きの方々から熱い注目を浴びる『小判寿司』さんへ久々に寄せていただきました。今回は誕生日の間近だったということもあり小布施ワイナリーの『2014 Sogga Nagano Ordinaire Chardonnay』をひと足早い誕生日祝いとしてコルクを抜き白ワインに合わせて作って置かれたという自家製の『加治木鮪(カジキマグロ)』の生ハム仕立の酒肴とともにはじまった弥生三月の『和知劇場』は『鮑(アワビ)』と『牡蠣(カキ)』を『蛤(ハマグリ)』の煮汁で炊いたという蓋物は日本料理店のソレを凌駕する五臓六腑に染み渡る美味しさ。これぞ滋味溢れる一品の言葉が相応しい煮物椀風の炊合せで一気にテンションが上がりました。造りには舌にねっとりと絡みつく『九絵(クエ)』にコリコリとした食感が小気味良い『螺貝(ツブガイ)』、放血神経締めの『鯖(サバ)』は軽く酢洗いしたレアなものと焼網で表面を香ばしく焼いた焼鯖との味比べ。更には大粒の『牡蠣(カキ)』のオイル漬、寒締め菠薐草(カンジメホウレンソウ)の御浸し(オヒタシ)、活けの子持ちの『ボタン海老』は造りと敢えて火入れして味と食感に変化を愉しませ蒸したて熱々の『鮟鱇(アンコウ)の肝(キモ)』で頬を緩ませ自家製の『唐墨(カラスミ)』を経てにぎりへと移行。旨味を充分に引出された『石鯛(イシダイ)』から順に走りの生の『とり貝』、気持ち強めに〆られた『小鰭(コハダ)』に本鮪(ホンマグロ)の赤身ヅケ、『蛸(タコ)』の桜煮に『煮蛤(ニハマグリ)』、本鮪(ホンマグロ)トロ、茹でたてでほんわか温かい『車海老(クルマエビ)』に炙って甘みがました『玉珧(タイラガイ)』に脂の旨味が際立った『金目鯛(キンメダイ)』の炙りに明礬(ミョウバン)を使わぬ甘さが秀逸な『バフン海胆(ウニ)』、『細魚(サヨリ)』、『白烏賊(シロイカ)』、『〆鯖(シメサバ)』、余りの美味しさに幾度も身体を仰け反らせた『のどぐろ』の炙りに『穴子(アナゴ)』は塩とツメで半々に山葵を利かせた『干瓢巻』に二種類の『玉』、追加の『鉄火巻』まで緩急をつけた内容で存分に愉しませていただきました。鮨の根幹を成す舎利は更なる進化を遂げられていたように感じられました。
久しぶりに新幹線やまびこ号に乗り新白河駅にて下車。そこから更にJRバスに乗り換えて揺られること小一時間余。都内から凡そ二時間半程の時間を掛けて磐城棚倉駅にてバスを降り足早に店へと向かう。目指すは南東北を代表する孤高の鮨職人『和知慎吾』さんが営まれる『小判寿司』さん。周囲を山に囲まれた此の地からはとても想像出来ぬ素晴らしい鮨を愉しませてくれる佳店であり今やその名声は全国に響き渡り各地より磐城棚倉を目指し多くの鮨好きが店を訪れる人気店となりました。カウンター席奥に陣取り當日もいつも通り酒肴・鮨ともに総て和知さんへのお任せ。先付で供された酒肴は自家製の『烏賊の塩辛』と『牡蠣のオイル漬』を小布施ワイナリーの『Sogga pere et fils』の 6号酵母の日本酒をワイングラスにてゆるゆるとスタート。次いで『眞子鰈』と〆たての浅〆の『〆鯖』と〆て三日目の『〆鯖』の食べ比べ。そして常磐沖の『黒鮑』をたっぷりと使った『蒸し鮑の銀餡がけ』で胃袋を温めた後にたっぷりのおろしたての本山葵とともに大間産の『本鮪』の中トロ、カマトロ、トロの味比べを愉しみ『唐墨』、『本鮪』のねぎ間焼、ぷりっぷりの『くもこ』のボン酢、柔らかさの中にも微量の咀嚼感が愉しめる『煮蛸』と絶品の酒肴を少しづつ福島を代表する地酒の『冩樂』、『飛露喜』の純米吟醸酒とともに存分に楽しませていただき鮨へと移行。にぎりは徳島のカリスマ漁師の『村』さんから直送されてきた丸々と肥えた鳴門海峡産の神経締めされた『真鯛』の腹の部分から順に大間産の『本鮪』の赤身づけ、氷見産の『寒鰤』、『小鰭』、『鯵』と続きます。中盤に入り軽く昆布〆にされた『甘海老』、『真螺』、『煮蛤』、自称ノドグラーも思わず身体を仰け反らせた皮目を軽く炙り脂を引き出された長崎産のブランド『のどぐろ』、大間産の『本鮪』のトロと続き終盤には千葉勝浦産の『金目鯛』、『海胆』、『いくら』小丼、ふわっとろの『穴子』は塩と煮ツメで半々、山葵を効かせた『干瓢巻』に二種類の玉子焼、そして『鯛の潮汁』でひと通りとなりました。にぎりには新進気鋭の『一歩己』の純米酒を合わせ味わいました。鮨の根幹を成す舎利は本家筋の仙台の『小判寿司』さんが途中から赤酢使いの舎利に変えられたのに対して修業時代からの白酢一本で頑なに貫かれており握りのフォルムは流線形で美しく口に運ぶと鮨種と一体化してほろりと解ける理想的なにぎり。使われている『本鮪』の質を見れば店の格が判ると良く言われますが當日の『本鮪』は一本釣りされた青森 大間産の180㌕アップの上物。これを造りで味比べ、筋の強い部分を『ねぎ間』焼、そして赤身はヅケでトロには隠し包丁を施し素材の持ち味を存分に楽しませていただきました。酒肴・鮨ともにいつの日にも増して素晴らしく充実した内容で三時間超の口福な時間を満喫させていただき感謝。
福島県は戊辰戦争後に岩代国、磐城国、陸前国、陸中国、陸奥国の5国に分割され現在では『中通り』、『浜通り』、『会津地方』という呼称で三つの縦割りエリアに区分けされています。通称『浜通り』は文字通り、いわき市等の太平洋沿岸を指し鮨屋では『鮨いとう』さんがあります。『中通り』は中央部を指し郡山市や県庁所在地の福島市、そして古くは江戸幕府の直轄領であった棚倉町もその中通りに分類され當地には福島一とも称される『小判寿司』さんが店を構えられています。浜通りのいわき市にしろ中通りの棚倉町にしろ決して交通の便が良い場所とは言えませぬが最近では噂を聞きつけ北は北海道、南は九州、沖縄から多くの鮨好きが訪れ、自分自身も年に2~3回寄せて戴いています。今回は約半年ぶりの再訪で昼の時間帯に寄せて戴きました。いつもの時間にいつもの席に陣取りいつもの通り店主 和知さんに全て身を委ね酒肴と鮨を愉しませていただきました。二~三日前に『粋・丸新』さんで小布施ワイナリーの『Sogga pere et fils』の 6号と7号酵母の呑み比べをさせて戴いた話をしますと6号酵母はウチにもありますからお好きなだけどうぞとワイングラスとともに瓶がどんと脇に置かれてのスタートです。最初に供された酒肴三種盛には尻高、もずく酢、海鞘酢の三品から『鮃』と『ボタン海老』の造りは塩と山葵と『肝醤油』を使い分け戴き『殻付き海栗』は持ち味の甘味を最大限に引き出すよう半分はそのままで残り半分を塩で味わいました。そして當日の酒肴の白眉は塩蒸しにした『蒸し鮑』に煮汁のジュレを掛けた皿、目に美しいばかりでは無くクニュッとした絶妙な歯応えと鮑特有の香りと滋味が味わえました。鮑は柔らか過ぎる煮貝よりも噛む咀嚼感も楽しめるものの方が好きです。その後も『蝦蛄』の爪に『蛸の桜煮』、脂のノリが半端無い『のどぐろ焼』とともにグラスを三杯程いただいたところで鮨へと移行。にぎりは季魚の『新子』の六枚付から順に活かった身質に飾り包丁を入れ食感を調整した美味なる『真鯛』の腹身、今期最終漁の『とり貝』、三尾付けの『甘海老』、〆加減が秀逸だった『春子』、藁焼の薫香が心地良い『鰹』、海老同様に茹でたてが最も美味しい『蝦蛄』はひと肌の温かさ、『鮪』は市場入荷の最上物の腹上一番の赤身とトロ、『新子』との対比で成魚の『鮗』、ねっとりと舌に絡みつく艶めかしい『金目鯛』に天盛の薬味によって昇華された『真鯵』、最大限の甘みを愉しむために海苔を使わぬたっぷりの『海胆』のにぎりは芸術の域、笹焼された『穴子』はツメと塩で、干瓢巻に二種類の『玉』、塩加減が絶妙な『鯛の潮汁』そして口直しに『いちごのジェラート』をいただきひと通り。自分にとって良い鮨やさんとは鮨種の質や舎利の味も大切ですが最も重要なことは店主との相性ではないかと思います。そういう点では店主の和知ご夫妻とは公私ともにお付合いをさせて戴いており信頼度も別格ゆえ、今回も御釈迦様の掌の上にいる状態にて目一杯、愉しませていただいております。
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2016/01のレビュー
新幹線なすの号で新白河駅で下車、そこからJRバスに乗り換えて揺られること小一時間余。磐城棚倉駅でバスを降り目的の地へ足早に向かう。目指すは孤高の鮨職人『和知慎吾』さんが営む『小判寿司』さん。周囲を山に囲まれた此の地からはとても想像出来ぬ素晴らしい鮨を愉しませてくれる佳店です。いわき市に店を構えられる『鮨いとう』さんと共に『福島県』を代表する超人気店。この日、新白河駅前からバスに乗られた客は10名余り、そして磐城棚倉駅で降車された人数は自分も含め六名。後で気が付くこととなるのですが此の六名全員が目指した店が同じ店だったという奇遇。三名は都内より二名は隣県から定期的に再訪される馴染みさんでした。そんなことからのっけからL字型のカウンター席は超フレンドリーな雰囲気に包まれての宴のはじまり。いつもの通り酒肴も鮨も総て和知さんへのお任せで。先付で供された酒肴は『鮟鱇の肝』と茶ぶりの『海鼠』。となると當然ビールではなく日本酒が欲しくなるもの。会津の『泉川』を合わせスタート。次いで神経締め浅〆の『鯖』と三日目の『〆鯖』の食べ比べ、そして徳島のカリスマ漁師『村 泰伸』さんから直送されてきた丸々と肥えた鳴門海峡産の神経締め『真鯛』の粗を昆布蒸しにした絶品の肴をいただいたところで鮨へと移行。村さんの『真鯛』の腹須からはじまり同じく村さんの一本釣り活〆の『鰆』、酒を同じ蔵の『冩楽』に変え『小鰭』、『本海松貝』と続く。この日の『鮪』は『那智勝浦産』、赤身、中トロと味わい酒は『山の井』へとスイッチ、『煮蛤』、『たいら貝』の磯辺巻、早春を告げる『細魚』、〆の酒は『寶劔』を選び茹でたての『車海老』は味噌を射込み朧掛け、長崎ブランドの『のどぐろ』(紅瞳)は皮目を軽く炙り脂を引き出され口に運ぶと身が仰け反る旨さに自称『ノドグラー』も悶絶。『海胆』は軍艦ではなくてんこ盛りの握りで、『穴子』は塩とツメ半々で、『芽ねぎ』、山葵を効かせた『鉄砲』、そして『鯛の潮汁』でひと通り。今回も充実した内容で二時間半余りの時間を満喫させていただき感謝。勘定を済ませカウンター席の六名は再び縦列歩行にて磐城棚倉駅へと向かいJRバスにて新白河駅へと移動。車中は気持ち良さげな寝息の競演。いやぁ~今回も実に楽しい小旅でありました。
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2014/09のレビュー
2013年の改装前に訪問した際の画像と2014年の改装後に訪問した際の画像を同時にbefore and afterでアップさせていただきました。七年ぶりに寄せていただいた『鮨いとう』さんの店内も大幅に改装されておりましたが一年ぶりに寄せていただいた棚倉の『小判寿司』さんは入口から店内まで大幅な改造が施されており、つけ場周りのみならず店自体が全くの新しい店へと生まれ変わっておりました。改装前に伺ったのは夜のこと。今宵は時間を気にせずに心行くまで楽しもうということで一泊での訪問、多種多様な酒肴と美味しい鮨と酒で持て成していただき感無量、忘れられぬ棚倉の夜を満喫させて戴きました。そして改装後の訪問は昼に、といっても折角、棚倉まで足を延ばしたのですから鮨だけつまんで帰るのは勿体無い。という勝手な論法で昼酒を愉しみつつ鮨を主体に堪能させて戴きました。寄せて戴く度に何らかの感動を与えてくれる店主の『和知慎吾』さんと優しい奥様の弥生さん。薀蓄や理屈は抜きに美味しい鮨を供し気持ち良くして返してくれる佳店です。同じ鮨種が供されても或る時は『生』で或る時には『湯霜』で、また或る時には『炙り』でというように、その都度、変化をつけて供されることも写真を見比べるとお判りいただけるかと。今回の訪問では特に宮城の『金華鯖』が出色、使われる素材は同じでも〆の
時間を変えたものを食べ比べさせてくれたり白板昆布を使い小袖ずし風で供されたり松前風にして供されたりと常に変化をつけて供されることにも関心させられます。伝統的な江戸前の仕事をしっかりと守りつつ現代風の見せ方、供し方等、とても勉強熱心な和知さん。毎週水曜日の定休日には近県のみならず都内まで足を延ばし和洋折衷の料理店を食べ歩き常にアンテナを高く張られているからこそ成せる業。舎利の酢と塩の効かせ具合に舎利の温度、手数は少ないが綺麗な流線型で供される鮨は種と舎利の一体感や舎利の解け具合等、都度、卸される山葵の質。それなりに鮨を食べ込まれている方であれば丁寧な仕事ぶりが御理解いただるかと。味良し、値良い、気持ち良し。と三拍子揃った佳店です。棚倉という近そうで遠い街で志高き孤高の鮨店『小判寿司』さん。出来ることならば季節ごとに寄せて戴きたいと感じさせてくれる大好きな鮨店の一軒です。
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2010/12のレビュー
福島県東白川郡棚倉町。福島県南部に位置する人口1万5千人余りの町であるが遥か昔 縄文・弥生の時代から高い文化が発達していた地であることが知られており奈良・平安時代には福島の文化の中心地であったという歴史を持ち織田信長の家臣であり安土城築城の責任者を務めた丹羽長秀の子である長重が棚倉城を築城し関東と東北の境界線の要であったと伝えられている。帝都 東京から當地までは北へ約200キロ。『京雀』さん、『LINN HOUSE』さんで楽しい時間を過ごした翌日は前夜の酒席での話の成り行きから以前より一度寄せて戴きたいと思っていた當店『小判寿司』さんへ鮨を食べに行こう~ということになり、相方と二人、浦和より突発的に東北自動車道を車で北上。途中、今から2時間後に2名で伺いたいという予約電話を入れ目的地を目指したのであります(笑)東北の中でも福島は岩手と同様に広大な面積を有する県であり岩手は縦に長いのに対し福島は横に広く会津地方、中通り、浜通りという大きく分けて3つのエリアに分別され當店のある棚倉町は微妙な位置にあり簡単に行けそうでなかなか行けそうにない場所。郡山から水戸へと続く水郡線というローカル線で一時間半余というロケーションゆえアクセスは結構厄介なのです。この機会を逃しては生涯行けぬかもしれぬ未踏の地へ心弾ませ一路車を走らせたのでありました。予定通りジャスト2時間で無事到着。店横に設けられた駐車場に車を滑り込ませ外観をデジカメに収め、ひと呼吸措いて暖簾をくぐったのでありました。迎えてくださったのは優しそうな女将さんと見るからに人の良さそうな店主の『和知 慎吾』氏、予約の名を告げると"お待ちしておりました"とカウンターの中央の席に案内された。店内の雰囲気は地域密着型の寿司屋さんという感じの店でしたが目の前の冷蔵ケースに目を向けると質の高そうな鮨種がずらりと綺麗にならべられており一気に期待値のボルテージは上がったのであります(笑) 相方の呑んでもいいよ。の言葉に甘え生ビールで12時間越の乾杯、酒肴に美味しそうなところを少し切ってもらった後に鮨に移行してもらいたい旨を伝えて幕開け、目の前の唐津焼の皿に大根の剣を盛り大葉を添え『本鮪』の中トロとトロ、右側に『煮鮑』と『細魚』、左手に『鯖』が盛付け供されました。『本鮪』はチューボウより少し大きめの50キロ超えの鮪の腹カミの部分を味を見てから買付けたと話されておられましたが見るからに美味しそう。口に運んでみると『中トロ』は酸味と甘みのバランスが良い感じであり『トロ』の部分は見た目は脂が強そうに目に映りますが脂はサラリとした上品なもの。養殖ものや蓄養ものの鮪のようなイヤラシイ脂ギッシュのトロとは全くの別物。『鮪』も上質なものでしたが添えられた『本山葵』も立派なサイズのものをリズミカルなテンポで卸されたもので山葵自体もとても上質なものが使われておりました。『煮鮑』は香り高く適度な噛み応えを残したもので『細魚』は昆布締めにしたものを糸造りで、『鯖』は豊後水道のものを塩で軽く〆たものであり脂のうま味が際立つ美味なる鯖でした。酒肴が美味しかったことは云うまでもありませんが陶器カップで供されたビールの味も雑味がなくサーバーの手入れも手抜かりがないことが感じ取れました。ビールの後は自然に日本酒へと移行、酒もツボを抑えた品揃えがされており何を戴こうかと目移りし悩みましたが地酒の限定品でレアもの『奈良萬』の純米生酒をオーダー。目の前にRiedelのワイングラスが置かれ女将さんが中程まで静かに注いでくれました。無濾過の生原酒で米の味がしっかりとするやや辛口の酒であり魚との相性はバッチリ、それにしても『Riedel』のワイングラスで供されたことにはちょっとだけビックリした次第(笑)適当なところで、いよいよ鮨へ。握りは『鮃』から氷見の『鰤』、『たいら貝』に『小鰭』、『赤身』のづけに『鮪』のトロ、『〆鯖』は造りには浅く締めたもの鮨にはしっかりと締めたものを使い分け、『煮蛤』に才巻サイズの『車海老』は活の海老を直前に茹でたもの、『槍烏賊』の印籠詰に手鞠ずし風の形の『海胆』、『玉』は出汁巻きとスフレのようにふわふわのカステラタイプの二種、『穴子』は煮つめと塩で半々、干瓢巻は山葵を利かせて鉄砲で。これにてひと通り。追加で『赤貝の紐』、食べ比べのために造りで供された浅締めの『〆鯖』、『小鰭』を戴き、あら汁仕立の味噌椀を戴いて終了。供された鮨は形は綺麗な流線型で美しく種と舎利の比率や一体感は申し分ナシ、口の中での舎利の解け具合も良好であり、或る意味感動を受けた鮨でした。鮨種にはそれぞれ仕事が施され、しっかりと仕込まれたものであり『鮨』と呼ぶに相応しい。単に切って握っただけの刺身寿司とは別物、魚の仕入は築地市場と地場の郡山市場の両方から仕入をされているとのことでしたたが冷蔵ケースの中には確かに質の良さそうな鮨種がならんでおりました。そして鮨の根幹を成す『舎利』に使う米は米屋に任せるのではなく玄米を自家精米して使っているという拘りよう。確かに仕込まれた鮨種の土台となる『舎利』の味はビシッと決まっておりました。福島では、いわきの『鮨いとう』さんが自分の嗜好に最も合う鮨を戴ける店と思っておりましたが當店の鮨はそれをも上回るものでした。店主の『和知 慎吾』氏は山形に店を構える『石山寿司』の店主『石山 忠』氏とともに仙台文化横丁の『小判寿司』さんで先代店主の『鞠古 仁』氏の下で八年余の修行を積まれたとのこと、そうなると現在の『小判寿司』の店主『鞠古 行雄』氏とは兄弟弟子ということになるのかもしれません。昨年の十二月には仙台の『陸女鮨』さんと棚倉の『小判寿司』さんと全く期待を裏切らぬ素晴らしい二軒の鮨屋さんに出逢うことができました。先の東日本大震災に原発事故で何かと大変な状況下にある福島ですが折を見て當店へは是非とも夜に再訪してみたいと考えております。

  • 九絵
  • 北寄貝
  • 本鮪 赤身

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8位

食堂 おがわ (京都河原町、祇園四条、三条 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥6,000~¥7,999 -

2011/05訪問 2011/05/28

新生"おがわ"更にパワーアップし始動、ライブ感もアップ … 『食堂おがわ』。

不慮のもらい火という被災により長い間、休業となっていた"おがわ"さんですが年の瀬の昨年12月に
以前の店舗より30㍍程下がった場所に新生"おがわ"として目出度く新たなる船出をされました。

以前は店内の広さが5坪という超小体の店でありましたが移転後の店舗は以前の約三倍の広さとなり
店内環境は大幅に改善されましたが『食堂』という冠はそのまま継承、カウンター割烹の醍醐味である
目の前で繰り広げられる調理のライブ感は更にパワーアップ、距離感の近さも移転前の店と変わらず。

肩肘張らずに美味しい料理に舌鼓、そして美酒に酔いしれるひと時、ラフさ加減は木屋町にあって稀少。

久しぶりに伺ったこの日、用意されていた席は、かぶりつき席、もとい店主の正面の席、先ずは好物の
ぐじ(甘鯛)』をオーダー、目と鼻の先の場所で、オトボケ顔の甘鯛を下ろしはじめる店主の『真太郎』氏。
調理のライブ感は"阪川"さんの『阪川劇場』をも凌ぐ『真ちゃん劇場』の幕開け、程無くして供された造り
は画像のもの、洛中には数多の割烹があり、あちこちの店で『ぐじ(甘鯛)の造り』を戴いてはおりますが、
これ程に立派で見事なものには滅多に出逢うことはありません。

出汁巻たまご』はたっぷりの出汁を抱えたものでふわふわ、断面を見れば一目瞭然ですが幾重もの輪
が綺麗に重ねられており職人技が感じられる一品です。

そして好物の『○鍋』は"たん熊"さん系譜の店で供される清らかに澄んだスープとは対極の表面に脂分
が浮いたコクがあり濃厚で、うまみたっぷりの『○鍋』です。
すっぽんのエンペラーに肝、たっぷりの白葱に焼餅と、この鍋ひとつで力が漲ってくる感じがする滋味溢れる
味わいの『○鍋』も必食ものです。

そして『真ちゃん劇場』は更に続きます。『鯖ずし』は奥が深いよね。と自分が発した言葉が店主のハート
に火をつけてしまった訳ではないのですが自分が無類の鯖好きであることを知っている店主は『鯖ずし
食べます?と當方の顔を覗き込んできたので、ウン。と答えると丁度、食べ頃の状態に〆られた鯖を取り
出し秒速の速さで皮剥き、半分は追い酢をして辛味大根のおろしをのせた『きずし』として残りの半分は、
舎利の合わせが終わった後で胡麻をふり『鯖ずし』として供されましたが、どちらも呻ってしまう美味しさ。
特筆すべきは『鯖ずし』、卸し立ての『本山葵』をたっぷりと使い『』と舎利の比率がほぼ同率のもので、
寿司屋さんの鯖ずしとはまた違った美味しさ、鯖ずしのお供に作ってもらった葱たっぷりの『赤出汁椀』は
山椒がキリリと効いて味が締まったもので酒席の最後に戴くに相応しいものでした。

痒いところに気がつく涼子ちゃんのキレ味の良い接客に絶妙な距離感を保ちながら美味しい料理を供して
くれる真太郎氏、無事に第二章の幕が切って落とされた新生"食堂おがわ"さん、益々、自分好みの一軒
へと更に進化中ですあります(笑)

今回の再訪では不慮の火災にて前回の予約が水の泡になってしまったということもあり、ここには書けぬ
ような色々なサーヴィスや心遣いを戴きましたのでサーヴィスの評価を★★★★(4.0)⇒★★★★☆(4.5)へ、
移転とともに店内が広くなり居心地が随分改善されたので雰囲気の評価を★★★(3.0)⇒★★★☆(3.5)へ
とそれぞれ上方修正させて戴きました。

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2010/08のレビュー

大好きな一軒だった"食堂おがわ"さん。何ということでしょう~七月三十日に二階の他の店からの
出火の消火作業の巻添えで店内は水浸しになってしまい當分の間、臨時休業、本来であれば八月
のこの日の再訪を楽しみにしていただけにとても残念、前月に伺った際に戴いた料理画像を追加
アップしようかとも考えましたが事情が事情だけに見合わせて戴くことと致しました。

新たなる復興新生"食堂おがわ"さんの再開を心待ちにしつつ、被災の御悔みとさせて戴きます。

ということで不可抗力により急遽予定が変更となってしまい他に行きたい店は当然ながら今からの
予約では席を確保することも出来る筈もなく…ということで以前"中善"さんの店主の佐々木さんから
話を伺い少し気になっていた"らんど"さんという店へ伺うこととなったのであります。

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2010/04のレビュー

【"食堂"という文字を見て決して侮るなかれ … 『食堂おがわ』】。

"食堂おがわ"という店名を見聞きされて皆さま方は一体どのような店を想像されますでしょうか?

今回のレビューは決してウケを狙ってのものではありません。世の中には見栄を張って"割烹"とか
"日本料理"や"京料理"という看板をやたらに掲げたがる店が数多ありますが當店は逆バージョン
の店なのであります。

店主の"小川真太郎"氏は未だ三十二歳という若き料理人ですが祇園"さヽ木 "さんや"さか本"さん
といったミシュランの★獲得の人気店や先斗町の隠れた銘店"余志屋"さん等での修行経験があり
腕前は確かなモノを持たれているもののそれぞれの修行先では黒子として裏方仕事をすることが
多かったということから特定の御贔屓さんも持たれないままに独立。となると当然当初はフリー客を
相手に店を営むこととなる訳であり誰でも気軽に入り易いようにと敢えて"食堂おがわ"と名乗った
そうでありますが結論を先に申し上げますと當店は"羊の皮を被った狼"のような店であり先に記し
ましたような名前先行型の似非なる割烹や似非なる料理店のような"名ばかりの店"と対極に位置
する店なのであります。

調理場と客席を合わせても、たった"五坪"という店内に全八席の凹型のカウンター席が設けられて
いる為に店主との距離感は良くも悪くも極めて近く、まるで友人宅のダイニングでもてなしを受けて
いるかのような錯覚すら覚えます。

本来の割烹使いが出来る店でありボードに書かれた本日のアラカルトメニューから好みの料理を
選び酒のアテとして一品料理を味わうのも良し、造り、汁物、焼物、揚物、食事と自分オリジナルの
コース仕立として料理を愉しむも良しと、楽しみ方はその日の気分に合わせて利用できる店です。

この日は品書きの"造り"から"ぐじ(甘鯛)"と"よこわのトロ炙り"、"汁物"から"若筍煮"、"焼物"から
"ぐじ(甘鯛)"と自家製の"鴨ハム"、"揚物"から"新生姜のかき揚げ"、"食事"に"〇ぞうすい"を
選び自分仕様のコース仕立の料理を最近、一番お気に入りの日本酒"蒼空"とともに味わいました。

先ず"造り"で供されました"ぐじ(甘鯛)"の色を良くご覧になってみてください。
一般的な"ぐじ"の身は白身ですが今回供されたものは極稀に見る赤身がかった超稀少な"ぐじ"で
あり、これは海を回遊せず湾内に留まっていた"若狭ぐじ"の中でも通称"根ぐじ"と呼ばれ滅多には
市場に出回らないものなのだとか?
比較対照のために一般的な"ぐじ"の身をならべてみましたが紅白の色の違いは明確、一般的な
白身のものも赤身がかった身も共に昆布の旨みと香味が身に軽く移る程度に"昆布〆"にされた
ものですが両方食べ比べてみますと赤身がかったものの方が味が濃厚であり美味さがギュッと凝縮
されているように感じました。

"よこわのトロの炙り"は東で呼ぶところの"めじ鮪"、適度に脂ののった腹身の部分を鰹のたたき風
に焼霜造りにされたもの六切とともに赤身の部分が二切、一緒に供されました。
成魚である本鮪程ではないものの流石に本鮪の幼魚、身は柔らかく腹身の部分の味は格別であり
赤身の部分も爽やかな鉄味と酸味が愉しめ養殖ものや蓄養ものの本鮪を戴くよりは個人的に好み
山葵も勿論、卸し立ての本山葵、脂ののったトロと本山葵の相性の良さは云うまでもなく。

"若筍煮"はトロトロととろける若布と筍のゴールデンコンビ、筍は勿論、朝堀りものが使われており
若布の風味が筍の旨みを引き出してくれる旬の味、筍には隠し包丁が入れられており出汁が良く
滲み込んでおり木の芽の香味が添えられた美味しいものでした。

"くじ(甘鯛)"は頭の部分と身の部分と2ポーション遠火の強火で、こんがり狐色に焼かれたもので
きちんと立てられた鱗が焼の技量の高さを物語っています。ひと塩され軽く干したものを焼かれた
甘鯛の身は甘く鱗の部分はシャリシャリと、勿論、頭も身の部分もつき(骨つき)の方です(笑)

もう一方の焼物は店主渾身の自信作の"鴨ハム"、たっぷりの脂を抱いた身を塩水に浸し絶妙な火
加減で焼き上げたもので実山椒と粉山椒で香味づけされた鴨ハムは柚子胡椒との相性抜群です。

"柚子胡椒"は九州発祥で今や全国区の調味料ですが當店の店主"小川真太郎"氏も"大渡"さんの
店主の"大渡真人"氏同様の"博多っ子"ゆえ純情で使い方は誰よりも心得ているのです(爆)

"揚物"の"新生姜のかき揚げ"は千切りにした"新生姜"の他に薩摩芋にうすい豆にコーン 軽めの
揚がりで塩を適量パラパラふりかけて戴きますとさっぱりして不思議と後を惹く味です。

"食事"の"(すっぽん)ぞうすい"は鼈の滋味溢れる味わいで目茶ウマ、"香の物"の中の"長芋"と
""も美味しかったです。

余談ですが"(すっぽん)ぞうすい"には希望により"味ぽん"が添えられますが鼈のエキスと繊細な
味を愉しむならば何も加えず、そのまま戴くことをお奨めします。
味ぽんって結構味が濃いですから塩気が足りないと感じた時には食塩を少量加え戴いた方が折角
の味を損なうことなく良いでしょう。
最初から味ぽんを入れて食べるなんて言語道断持っての外、味が台無しになってしまい勿体ないで
すから…、勿論、自分は何も一切加えませんが。

  • ぐじ(甘鯛)の造り。
  • 真ちゃん劇場 其の一。ぐじ(甘鯛)編。
  • ぐじ(甘鯛)の造り。全体はこんな感じです。

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9位

赤坂 詠月 (赤坂見附、赤坂、溜池山王 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2011/03訪問 2011/07/06

赤坂で尿酸チックな夜の宴 … 『詠月』。

三月に伺った料理店の中で記憶の中に最も強く残った店がソシアル赤坂の四階という意表を突くロケーションに
店を構えられていた當店"詠月"さん、店主の"岩崎 秀範"さんは京都でも知る人ぞ知る割烹"あじ花"さんで店主
である"田中元章"さんの下で腕を磨かれた方であり『滋味優先の料理』のイロハを身につけられている都内でも
数少ない料理人のひとり、畏友から久しぶりに良い店を見つけた。と奨められた料理店で當日は常日頃から京都
で美味しいものばかり食べている某女史を誘って初訪させて戴いた。

料理は『飯蛸』を炊いたものから、飯蛸の胴の部分には飯(たまご)がびっしりと詰まっており口の中に飯が広がる
春ならでは旬の味わい、飯蛸の持ち味を引き出すような淡い味付で上々、飯蛸の由来は胴の中の飯の形が米粒
に似ていることから"飯蛸"と呼ばれるようになったと云い伝えられています。
普通の蛸や烏賊ならば、たまごを抱えていると"子持ち"と呼びますが『飯蛸』の場合は『たまご』=『』と呼びます。
決して子持ち飯蛸とは云いません(笑)

焼き蚕豆』は外皮が焼かれ中の蚕豆は蒸し焼きとなりホックホク、京料理では食べられないものを客に供すること
はないので外皮も問題なく食べられる筈ですが過去に試してみたけれど美味しくないので中の蚕豆だけを戴きます。
焼き枝豆を蚕豆に置き換えたと思えば判りやすいかと…。

椀物には好物である『○吸い』、『』=『』であり鼈の吸物のことを通称『○吸い』と呼ぶのですが當店で供された
○吸いは"あじ花"さん譲りの滋味優先の味わい、帝都 東京に居ながらにして心は既に京都。鼈のエンペラーから
首肉、肝臓に丸太切りにした焼き葱が使われており色々な食感が愉しめる完成度の高い『○吸い』でした。

造りは『赤貝』、『』、活けの『車海老』の三点盛と別の器で『海胆』、赤貝は活けの貝から剥いたもので紐の部分は
勿論のこと『』までと余すところなく供されましたが赤貝は香り高く身には弾力があり肝まで美味しく戴きましたし鯛
は腹の部分で食感も味も申し分のない上物、昼に某処で供された鯛の薄造りとは全く対極のものであり京都の目線
で選ばれた、これぞ鯛の造りと呼べるもの、車海老は尾の部分を熱湯に入れ赤く色づけられたもの活けの車海老の
身はコリコリとした食感とほのかな甘みが醍醐味、海胆は明礬の味がする板うにではなく塩水漬にされたもの、身が
しっかりとしており甘みもあって美味しいものでした。

焼物は『真魚鰹』の西京焼、皮目からゆっくりと弱火で焼かれたもので身はしっとりとしており美味、次いで供された
小鍋立ては春に旬をむかえる白魚を使った『白魚の玉〆』、九条ねぎにたっぷりの白魚をふんわりゆるゆる絶妙な
玉〆加減、好みで黒七味か粉山椒をふりかけ味わいますが、これもしみじみ美味。

ここまでの料理は奇を衒わぬ日本料理の流れで来ておりましたが次に供された油ものが変化球の『ビーフコロッケ』、
流石に一瞬、驚きましたが鹿の子揚げ風にザックリと生パン粉で揚げられたコロッケは塩で味わうと男爵芋の甘み
が増しこれはこれで旨いから難いことは抜きで…変化球の後は"あじ花"さん譲りの『汲み上げ湯葉』、『粟麩の胡麻
味噌焼
』と素朴な料理ながら京料理の真髄を感じさせてくれる料理が続いた後、再び『牛肉網焼き』、フルーツトマト、
焼きチーズ』と遊び心を感じさせる料理が続き、そしてひと呼吸措いて供された『毛蟹』、毛蟹は一般的には冬が旬
と思われがちですが三月の流氷明けの毛蟹の味は格別、身の詰まり具合もさることながら蟹の身の味が濃厚です。
天盛りにされた『蟹みそ』も甘みがあってクリーミーな味わいに感激、思わず日本酒の速度が加速してしまいますが
更に大好物の『河豚の白子焼』で追い討ち、外は香ばしく中はトロトロととろけるような口あたりで味は超濃厚であり、
目を閉じると口福の瞬間が訪れます。たぶん今年の食べ修めであろうと思われる『河豚の白子焼』はうれしかった。

〆の食事は時間を見計らって土鍋で炊き上げられた『鯛めし』、香の物には勿論『紫葉漬け』入り、『鯛めし』は『
の方は奥のテーブルの団体さんへ自分達には『中骨』で炊かれたものが供されましたが見栄えは間違いなく『』の
方が立派に見えますが実は『中骨』の方が旨味がでて味はワンランク洗練されているように個人的に思うので歓迎、
香の物には抜かりなく『紫葉漬け』がつけられてました。『鯛めし』と『紫葉漬け』の組合せは『鰻重』と『奈良漬』と同じ
ように双方の味を昇華させる気っては切り離せない黄金の組合せ、食べ切れぬ分はオミヤにして戴いて翌朝寝城
で朝餉として戴きました。食後の水菓子はイチゴの下に『自家製のキャラメル』というように遊びの要素を入れたもの。

"あじ花"さんで学ばれた京料理の基本がしっかりとされているから合間に変化球や遊び心のある料理を入れても
大きな違和感を感じずむしろ色々な味を楽しませて戴いて食後感も満足の行くものでした。
そして何よりも特筆すべき点は費用対満足度の高さでしょう、口にしたものの質や味、品数を勘案しますと赤坂の地
で壱萬円未満のコース料理でこれだけのものを供されるとは予想外だったので随分得をした気分にさせて戴き、ふと
湯島にある人気店の"くろぎ"さんが"湯島一二一"さんという看板を掲げられていた頃のことを思い出しちゃいました。
當店へは機会を見て間違いなく再訪させて戴きたいと思う一軒で噂以上の佳店に出逢え今宵も満足。

三月は他に広尾の"広尾一会"さん、"二戀"さん、四谷の"うえ村"さんの他に数軒の店へ予約を入れておりましたが
東日本大震災の関係で全て予約をキャンセルすることとなり順延となってしまったことが唯一の心残りでありますが
秋の風が吹き山海の食材が出揃う頃に改めて訪問させて戴く予定です。


  • 飯蛸。
  • 焼き蚕豆。
  • 椀。

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10位

紀茂登 (県庁前、元町(JR)、元町(阪神) / 日本料理)

1回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥8,000~¥9,999

2011/05訪問 2011/08/30

神戸にて"桜田"仕込みの料理に舌鼓 … 御料理『紀茂登』。

神戸のランドマーク的存在"山手ザ神戸タワー"のトアウエストの一角に店を構えられている御料理"紀茂登"さん。
店主である"木本 泰哉"さんは『吸い地』の完成度の高さでは京都でも屈指と称される"桜田"さんで腕を磨かれた
気鋭の料理人と高く評価されている方。

店構えは日本料理屋というより洋風のレストランのような雰囲気、しかしドアの向こうは木の香り漂う贅沢に白木
を使った上質な空間にカウンター全六席というギャップの大きさに驚かされます。

五月のと或る日に昼餉を戴きに神戸在住の友人と初訪、戴いたのは昼のおきまりのコース五千円のコース料理。

先付には車海老、帆立貝柱に季節の野菜を使った程良い酸味が爽やかな一品からスタート、そして次に椀物の
登場、椀種には淡雪の如くフワフワな食感の卵白に包まれた『白魚の真丈』、吸い地の味は流石"招福楼"さんの
流れを汲む"桜田"さん仕込み、澄んだ出汁の感じといいキレの良さといい、いい感じに仕上げられた椀物でした。

造りはもっちりとした食感が堪らない明石の鯛と舌にねっとりと絡みつく針烏賊の二点盛り胡瓜を刳り抜いたもの
に蕨添え、八寸には独活と独活の芽の揚げ物に一寸豆、表面を軽く炙った『すり身入り』の濃厚な味わい玉子焼、
舌触りの感じは密度の高いカステラ仕立、スプーンにのった球状の白いものは『百合根』の中にクリームチーズの
味噌漬けを射込みしたもので粽の中は『甘鯛のすし』見た目以上に手の込んだ料理で舌を愉しませてくれました。

炊き合わせは花山椒で味のアクセントをつけ、食事はうすい豆のごはんに赤出汁の椀、ごはんのおかずには炭火
で塩焼にされた鱸、食後の水菓子は二段構え、メープルリキュールのブラマンジェと清美オレンヂに柑橘系の果汁
を加えたひと口サイズのフレッシュジュースの他に蓬餅の中に小豆餡を射込ん和菓子、これにお薄が供されコース
はひと通りです。

料理の味付は京都の料理屋さんなみの薄味仕立、しっかりとした味付をされる店が多いといわれる神戸の地では
稀少、店主自身が濃い味の料理は苦手ということも勿論、関係していると思いますが神戸にて京都のエッセンスを
感じられる料理、これで五千円はお値打ちもの。

和装姿の女将さんの接客もなかなかのものであり付かず離れずの間合いで好感がもてるものでした。昼のコース
はあくまで店を知ってもらうための有料試食のようなものでしょうが夜伺っても決して期待を裏切られるようなことは
ないことは供された料理からも窺い知ることができました。次回は夜にゆっくりと伺ってみたいと思わせる一軒です。

神戸で日本料理となりますと"吉兆"さん仕込みの"直心"さんか"招福楼"さん仕込みの"子孫"さんの二軒がお気
に入りでしたが當店"紀茂登"さんが加わり選択肢が広がったのはとてもうれしいかぎりです。

  • 車海老、帆立貝柱に季節の野菜を使った爽やかな先付。
  • 白魚真丈の椀。
  • 針烏賊と鯛の造り。

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