©Loroさんのマイ★ベストレストラン 2010

Loro piana。の食べ歩る記 備忘録

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マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

コメント

2010年の食べログ『ベストレストラン2010』のMY BEST10の店をエントリーするにあたり先ずは10軒に絞り込むということに大変苦労致しました。
その中でも特に京阪神エリアの割烹料理店の実力は拮抗しており正直、甲乙をつけることが非常に困難であり再訪させて戴いた店をも含めて
レイティング済の店の中から強く印象に残った店を10軒選びエントリーさせて戴きました。
新年早々に伺った香住の『まる屋』さんで供された柴山港の献上蟹レベルの圧巻の大きさと質の高い蟹の美味しさに感激をした日からはじまり
本年も北は北海道から南は九州まで美味なるものを求め全国各地へ足を運びました。
レビューのレイティングが間に合わず今回のエントリーには含まれておりませんが『京星』さんの天ぷらの味や金沢の『つる幸』さんの懐石料理
の味も舌と脳裏の記憶にしっかりと残っております。
この一年間も和食を主体に食べ歩きをしましたが日本料理は相変わらずの『西高東低』基調、やはり日本という国の美意識が雅やかに凝縮さ
れております京都の日本料理のレベルは味ばかりではなく、一期一会の心や器に写る料理の美しさ等、総じて高く改めてクオリティの高さ礼節
の素晴らしさを感じ入った次第です。
2011年度も京都を中心とした京阪神エリアに加え、金沢、福井、富山の北陸エリアへも足を延ばし山海の幸を食べ尽くしたいと考えております。

マイ★ベストレストラン

1位

未在 (東山、蹴上、祇園四条 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2010/08訪問 2010/11/10

"茶懐石"料理店の頂点に君臨される店 … 御料理『未在』。

ちょうど一年振りの"未在"さん。御存知のとおり二年連続ミシュランでは最高位の★★★評価を
受けた店であり全国の食通だけではなく同業の著名な料理人までもが店主"石原"氏の供される
料理を味わいに訪れる店であり全国の頂点に君臨する懐石料理店と云っても過言ではないでしょう。

前月伺った"竹馬"さんの店主"西岡長久"氏の御言葉を拝借すると往時"吉兆"さんに"石原"氏が
弟子入りで入門された際に店主の"湯木貞一"氏は"物凄いやつが今度うちに入ってきたわ…"と
真顔で本当に云ったのだそうであります。

例により外の待合席にて小梅のリキュールが供され、しばらくして店内へ…席に着くと店主"石原"
氏より、ひと組ごとに"ようこそいらっしゃいました"と顔を見ながら、ひととおり軽く挨拶を受けます。

料理は折敷が手渡され飯、汁、先付という茶懐石に則ってのスタイル、自分は二度目ということもあり
特に驚きはないものの多分はじめて伺った方はこのスタイルに一瞬、戸惑われることでしょう~。

全国の銘店の設計を手がけられている杉原デザイン事務所による内装の設え、凛とした空気が漂い
もてなしを受けるこちら側も思わず背筋を正されます(笑)

紅白の水引で結ばれた蓮の葉の中の蓮根餅の先付からはじまり、一文字によそわれた飯と赤だしの
味噌汁、その後に店名を冠した酒を一献、造りは真鯛と蛸、本鮪のトロと大トロ、槍烏賊、鱧おとしの
五種をふた切れづつ、椀物は鮑と鮑の肝の葛湯仕立、焼物は黒毛和牛の炙り、○(すっぽん)の煮凝
りを間に挟んで子鮎焼と焼物が再び、八寸には鯛の笹巻き寿し、鰻の印籠煮、鱧&焼鮎のムース状
の料理、八幡巻に糸もずくの海胆のせ、賀茂茄子と赤万願寺の炊き合わせを戴き食事は土鍋で炊き
上げられたごはんを赤蕪、水茄子の香の物で先ずは戴き次に焦がし湯を茶碗に注いで戴き茶漬風に。
食後の水菓子はわらび餅、店主自ら一服づつ点ててくださる御薄、フルーツカクテルに生姜のソルべ
と戴いてコースはひととおりです。

料理の美しさに目を瞠るものがあるのは云うに及ばずですが使われている器も見応えがあります。

今回は同じ時期に伺ったということもあり供された料理は一年前のものとだいぶ被っているようにも
レイティングしながら思ったのでありますが料理を戴いている際には、そんなことは余り気にもならず、
その辺が"石原"さんの凄いところなのでしょう…、"未だ在らず"="未在"さん。茶懐石に興味
をお持ちの方は一度訪れてみても良いと思います。次回は季節を変え春に伺ってみようと思ってます。

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2009/08のレビュー

"【1111】件目のレビューに最も相応しい京都でひときわ注目を浴びている … 御料理『未在』"。

個人的に【1111】件目の節目のレビューに何処の店をレビューしようかと、ずっと考えておりました。

客の懐勘定を瞬時に見抜き、"こちらには丹波の松茸を、あちらには岩手の松茸を…"と自分のよ
うにボッーとしている客には全く悟られぬように素材の産地や質を変えて特定の馴染み客に"お客
様は別待遇です
"的な京都式愛想のエッセンスを利かせた応対で客の心を巧みにくすぐる東京を
代表する某料理店をもってくるべきか、はたまた日本料理の聖地である京都でいろいろな意味で
今注目を浴びている當店【未在】さんにするべきかと無い頭を悩ませましたが賛否両論あります
"ミシュラン格付本"の京阪神版が間もなく発売されることから年末年始にかけ多くの食道楽の熱い
視線を浴びる京阪神エリアの料理店の中から個人的な節目の通算【1111】件目のレビューに僭越
ながら當店を選らばさせて戴いた次第です。

直近で伺ったのは盆休み初日の八月十一日のこと、京都の友人を誘い所定の時間に伺いました。

午後六時、この日の予約客十名が全員席に着いたところで店主である【石原 仁司】氏が表舞台
であるカウンター内のステージに登場し一礼の後、驚愕の料理コースの幕が切っておろされました。

"【未在】さんは本来、店内や料理の撮影は一切禁止でありますが今回は【1111】件めのレビュー"
に辺り店主【石原】氏に特別了承を得て"本邦初公開"で店内の様子も撮影をさせて戴きました。

料理の画像も何枚か写させて戴いたのですが他店で、その料理スタイルを模擬模造されても店に
多大なる迷惑を掛けてしまいますので自己判断にて掲載は自粛させて戴きますこと御理解ください。

先ずは大きな蓮の葉に包まれ紅白の結び紐で結ばれた先付けが供されますが、この一品目の演出
に大半の方は息を呑みド肝を抜かれてしまうに違いありません。

蓮の葉の紐を解いてみますと葉っぱが上下左右に開き中には"蓮の露"に見立てたプルンプルンの
【蓮根餅】が出汁のジュレと"ずんだ(枝豆)あん"が添えられ供されます。

茶懐石の作法に従ってでしょうか石原店主の故郷である【島根県】の米を使った時間に合わせて炊
きあげた炊き立てたての一口ごはんと順才の赤出汁椀を腹に収めたところで店主よりオリジナル酒
である"未在"が光栄なことに奥の席に座った自分から順に一献づつ振舞われていきました。

赤出汁椀には別皿で和辛子が一口ごはんにも別皿で葉唐辛子が添えられ供されましたが懐石料理
に精通されている賢者の方々は意味が、お解り戴けることと思いますので説明は割愛致します(笑)

そして店主から見た客のイメージに合わせて器が選ばれて盛込まれた【御造り】の鉢が供されます。
涼しげな硝子の大鉢から魯山人の稀少な器まで、さまざまな器が使われています。

この日の造りの内容は【槍烏賊】、槍烏賊の耳に切り胡麻を和えたもの、【明石の蛸】、海を越えて
ボストン沖で水揚げされた【ミナミ鮪のトロ&大トロ】、【鱧おとし】、【明石の鯛】という内容でした。

正直申し上げて割烹や料亭などで供される【お造り】や【刺身】類には余り期待などしておりません。
それは刺身に関しては魚種も豊富に揃う【鮨屋】で食べた方が美味しいに決まっている。と個人的に
思っているからなのですが當店で供された【造り】は、そんな概念を払拭する質の高いものが供され
ある意味うれしい誤算です(笑) 
単なる魚の鮮度が高いとか質が高い。というだけのものではなく、それぞれの刺身に相応しい薬味と
"あしらい"が添えられているということでしょうか。

例えば、脂のりの強い【ミナミ鮪のトロ】には【本山葵の葉】、【山芋の短冊】を添え【針生姜】とおろし
たての【本山葵】、ウリのひとつでもある【出汁醤油の煮凝り】を合わせて食べさせたり【鱧のおとし】は
【もろみ醤油】と【梅肉だれ】、【鯛】は【鯛の肝と柚子胡椒を練り合わせて作った薬味】と【塩水だれ】と
いった具合なのです。ひとつの素材で二度美味しい店主よりの提案です。
それは一般的な常識に囚われない店主ならではのセンスで今まで味わったことのない素材と薬味の
マリアージュを堪能できることが間違いなくできるということです。

その後の【椀物】は【鮑】と【鮑の肝】の大根の葛湯仕立、【マイクロトマト】とトマトと【バジルシード】を
使った【トマトの冷製】、【賀茂茄子とささげと錦糸瓜の炊き合わせ】、【八寸】は団扇の漆器を使い
【鱧の子のムース】と【焼鮎のムース】、【絹かつぎ】、【茶豆(山形だだちゃ豆)】、【八幡巻】、【鯛の笹巻
き寿し】に【焼き大名唐辛子】、小鉢で供された【明石の蛸の吸盤と針生姜のジュレがけ】に【近江牛の
炙り】に【木の芽のペースト】と【辛味大根おろしのソース】、焼物は【子鮎焼】に蓼酢のペーストをのせた
田楽風の料理といった"和洋伊仏折衷"のあらゆる調理法を駆使して造りあげられた料理が、"ジャスト
インタイム"にて供されます。

料理の味は云うものでもなく日本はおろか世界まで視野に入れられた卓越したものであり、京都の
某人気割烹店の店主に"こんな料理は自分には到底造ることができない"と云わしめる程、その料理
のクオリティは驚愕ものの連続であり、これは食べた者だけが理解できることであって文字や言葉で
は到底綴ることのできぬものです。

食事は土鍋で炊き上げられたごはんを胡瓜、赤蕪、水茄子の香の物で軽く戴いた後に "焦がし湯"
を茶碗に注いで御茶漬風にしてサラサラと…。

店主が突然、loroさん 【久絵】ちょっと食べてみますか?というので黙って頷くと、じゃあ特別ね。と
云って40㌔程大の【久絵】が現われ身は軽く炙り、胃袋と腸は炭火焼にして供してくださいました。
炙られた久絵の身の皮ぎしはコリコリとした食感で噛みしめると脂分と旨みが口中にジンワリと広
がって至福のひと時です。

口直しの水菓子は何と三段構え、【10種類のベリーフルーツ寄せ】、【わらび餅】、そして店主が一服
づつ点て順に供される【お薄】、〆にさっぱりとキレのある【生姜のシャーベット】で今宵の茶懐石の
コース料理は、ひととおりとなりました。

當方の稚拙なレビュー表現では残念ながら當店の素晴らしさを全てお伝えすることができません。

論より証拠でビジュアル画像でご覧戴けないことが残念でありますが前述したとおりの問題発生が
懸念、思慮されますので、どうか御了承ください(笑)

【日本料理】に関しましては間違いなく"西高東低"という流れは揺ぎ無い事実ではないでしょうか。

特に京都の日本料理店の層の厚さや奥行きの深さは東京の日本料理店の比にあらずと感じます。

本当に心から感動する日本料理を喰らうのなら、やはり京都に足を運ぶしか術はなし。ですね。

日本料理をこよなく愛される方は是非、京都へ、そして都内の多くの次世代を担う日本料理店の
店主がこぞって京都で伺ってみたい店として真っ先にその名をあげる【未在】さんで五感をフルに
使い、その料理を味わってみてください。料理とともに使われている器も良くご覧になってください。

今まで思い描いていた日本料理の概念が根底から覆されることと思います。

日本を代表する京都の老舗料亭の店主や祇園料理倶楽部の一部の重鎮さんからは、"未在は、
やり過ぎ
" という声も発せられているそうですが、基本を踏まえた上での"やり過ぎ" は客としては
ある意味歓迎すべきことではなかろうかと思う次第です。

今、現在、京都に措いて自分の背筋がピーンと伸びる思いがする料理店は下鴨にある【吉泉】さん
と円山の【未在】さんの二軒、この二軒の室礼と料理のセンスは都内の如何なる日本料理店より
現時点では輝いていると思います。

料理には二種類の酒蔵で造られている"未在"の名を冠した日本酒がベストマッチ、友人と二人で
ビールと、この二種類の未在を六合も呑んで二人で六萬円也。

決して安いお値段ではありませんが何故か"安かった"と客側が感じてしまうから不思議なんですね。

あとは、ご自身の眼と舌で… 

勘定を済ませると店主と御弟子さんの丁重な見送り、御弟子さん二人が提燈を提げて円山公園の
階段まで送ってくれました。これも京都ならではの風情と妙味です。

  • 先ずは入口で小梅のリキュール。
  • 店の外観。
  • 杉玉。旨い酒が呑めそうな気がしますね。

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2位

日本料理 櫻川 (京都市役所前、三条、三条京阪 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 ¥8,000~¥9,999

2010/07訪問 2010/10/10

前田料理長の斬新な料理センスに【料理の精華】をみる … 『木屋町 櫻川』。

おことわり】當店は現在、料理ならびに店内の撮影は"全面禁止"となっておりますので悪しからず。
供されます料理の傾向につきましては以前戴いた料理画像を御参照戴き想像して戴ければ幸甚です。

ミシュラン★獲得後に多くの客が全国より訪れるようになり店に入るなりデカイ銀カメでフラッシュをパシャ
パシャと焚いて連写される方や携帯のカメラでピロピロロ~ンと音を奏でながら料理画像を写される方が
激増されたことにより店内での一眼レフのカメラは無論デジタルカメラや携帯電話のカメラなどの使用は、
貸切又はそれに類ずる状態の時以外は"全面禁止"というスタンスを現在、已む無くとられております。

自分も良く料理画像を撮らせて戴きますが、先ず撮影の了解を求めノーフラッシュ、無音という最低限の
ルールは守らせて戴いております。

當日のカウンター席の過半数は當方の顔見知りの客と友人がならんでおり尚且つ、自分は一番奥の席に
座らせて戴いたので撮っても良い状況ではありましたが、ここで新しい画像を追加アップすることはそれを
モトにあれこれと店側に難癖をつけられる方の口実とも為り兼ねないと判断して自重させて戴きました。

現にアップされた画像を盾にとって料理の皿数が少ないという御夫人や素材の使い方、品数が少ないから
作り直せなどという滅茶苦茶なクレームを発せられる、いい年をした旦那衆も居られるというから驚きです。

Tabelogを利用されている賢者の方々にはそんな方は居られぬとは思いますがファーストフードの店や全国
連鎖の画一的な食べ物を供する店は別としましても、ご贔屓の馴染とイチゲンさんが全く一緒の扱いという
ことはないと思いますし、まして此処は京都でありますから…、確かに一期一会という言葉もありますが一度
の訪問で全く同じように美味しい思いが出来るものと考えること自体、如何なものかと…(苦笑)

(閑話休題)

この日は祇園祭のハイライトの"山鉾巡行"、夕方から"神幸祭"三基の御神輿がそれぞれのコースを巡行
して盛り上がる一日であります。

料理画像の代わりに"やました"さんと當店"木屋町 櫻川"さんの間で錦の御神輿が最高潮を迎えた画像
をアップしておきますので暑くて熱~い夜であったことを、そちらから感じ取り戴ければ幸甚であります。

同時刻にマイレビュアーさんが"やました"さんで食事をされていることで御神輿が店前を通るころに店を飛び
出す約束をしており、その通り店を飛び出してみたのですが店主の山下さんとはバッタリと逢ったのですが、
"やました"さん御贔屓のTちゃんさんとはお逢いすることが出来ず残念(笑)

料理は焼鱧を鱧の骨で摂った出汁のゼリーを混ぜ合わせて戴く料理からはじまり鱧の子、蛸の子、半生
のこのこ、新薩摩芋の炊き合せ、"鱧と松茸のしゃぶしゃぶ"、あこう鯛の造りと由良の海胆を車海老から
作られた海老塩で味わい、"(すっぽん)の飛龍頭を○出汁"で堪能、揚げたてで熱々の"鮑の素揚げと
松茸のフライ"に冷たい水茄子と牡蠣の燻製を添えられた一皿の味に呻り、鯉を揚げたものに白芋茎と
冬瓜、食事は"鱧の粽の蒸籠蒸し"、水菓子はフライパンで温めた白桃とアイスクリームという内容の料理。

いづれの料理にもキレがあり、いつものことながら新しき調理手法に果敢に挑戦されている姿勢には感服。

画像をアップしないという約束のもと"しゃぶしゃぶ"と"松茸のフライ"に使われた"松茸"の量は誰が
見ても尋常ではないことになっておりました(笑)

"鱧と松茸のしゃぶしゃぶ"は軽く炒って甘みを引き出した玉ねぎベースの和製オニオンスープのようなものの
中を泳がせて戴くのですが鱧と松茸の旨みが溶け出したつゆは後で出汁でのばして一品として供されます。

松茸の時期ともなれば松茸の天ぷらを供される料理屋さんもありますが松茸は水分を抜いてゆく天ぷらより
玉子でコーティングし風味と旨みを閉じ込めたフライの方が個人的に断然に美味しい調理法と思います。
この揚げたて熱々のフライを単にウスターソースで味わうのも一興ではありますが車海老の殻から抽出した
海老のエキスと岩塩で作られた"海老塩"で食べさせるあたりが前田さんの泣かせるところ。

京都には新進気鋭で感性豊かな若手料理人から天才や神様とまで崇められるベテラン凄腕料理人さんまで
事欠かぬほど数多の料理人が居られますが當店の料理長も間違いなく今後益々注目を集めることでしょう。

六月六日に挙式を挙げられた"前田料理長"、奥様は現役の美人ソムリエであり前田さんの実兄も現役の
ソムリエ、そんなことからも水菓子の日仏融合テイストの味わいは一層ブラッシングされていくことでしょう(笑)

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2009/07 再訪レビューと画像の追加アップ。
前回は、昼に【とくを】さん、夜に當店 木屋町【櫻川】さんへ伺わせて戴きました。
今回の上洛では前夜に【とくを】さん、翌昼にこちらの【櫻川】さんへと昼夜真逆にして
の再訪となり、この日は大阪から朝、京都に上洛された敬愛なる友人二人とともにの再訪となりました。
勿論、前もって予約済での再訪であると云うことは云うまでもありません。

この日は【昼懐石】五千七百五十円也を予約、供された料理の内容は下記のとおりです。

先ずは【生とり貝と山芋のすり流し生海胆入り】。
いきなりデザートのムースが供されたなんてことは思いませんが一見、何なのか判りません。
これは山芋とともに【生のとり貝】をすり流したものを【生海胆】の上に掛け、その上から出汁
のジュレを添えたものでありであり料理長の斬新なセンスがキラリと光る料理に一同驚嘆です。

そして【鱧寿司と新○十の甘煮、茗荷の甘酢漬】。
夏の京都の寿司と云えば、やはり【鱧寿司】でしょう~ 茹だるように暑い京都の夏、【祇園祭】の
時期には【鱧寿司】と云う位、この時期の京都ではなくてはならないもののひとつでしょう~。
卓越した鱧の骨切り後に鱧寿司用につけ焼され棒寿司にされた鱧は、ふっくらとしています。
鰻よりも穴子よりも身はしっかりしており脂も軽めです。
【新○十の甘煮】は上品な甘みで薩摩芋は、しっとりしつつ栗のようにほっくりとしており美味。
茗荷の甘酢漬の味と食感がいいアクセントになっていました。

【海老、海老、加茂茄子、オクラ、錦糸瓜に梅じそのジュレがけ】は出汁で含め煮された素材と
甘酸っぱい梅じそジュレとのマッチングの妙味が愉しめるものでした。

そして【鱧のしゃぶしゃぶ】は茶筒程の陶器に熱々の出汁をはり鱧をしゃぶしゃぶして戴きます。
軽く出汁の中をくぐらせ花が咲いたような身になったら食べ頃です。
鱧に余り熱を加え骨過ぎてしまうと逆に身が固くなってしまうので、"しゃぶしゃぶしゃぶ"と三回
心の中で唱えたくらいで充分です。
そして鱧の旨みと脂が溶け出した出汁は別の器に移し変えて吸物がわりに戴きます。

造りは【甘鯛(ぐじ)の昆布〆】の単品に【南瓜のけん】が添えられ供されました。
上品な味わいの甘鯛の身に昆布の旨みと香味が染み込んだ身は舌にねっとりと絡み絶妙な
味わいに仕上げられたものでした。
個人的に割烹で供される造りは、鮪や烏賊や海老などありきたりのものが供されるよりも鯛の
腹身とか目板鰈の食味食感の良いものを少量供されるか昆布〆したものを供された方が料理
屋さんらしくて好きです。今回供された【甘鯛の昆布〆】はそういう意味でうれしいものでした。

【稚鮎焼】は和歌山【有田川】の活の稚鮎を使い【蓼】の燻香焼にされたもので頭からカブリと
かぶりついてもサクサクとした食感で特段【蓼酢】を使わなくとも充分に美味しいものでした。
稚鮎焼とともに供された蓮華の上にのせられたものは【鱧の玉子】と【鱧のすり身】を練り上げ
作られた【鱧の蒲鉾】で、鱧の玉子料理のひとつです。

本来はコースには入っていない料理ですが當店の揚物の【スペシャリテ】の【岩牡蠣のふらい】。
一度、湯通しして旨みを閉じ込めた湯霜の岩牡蠣に細目パン粉をつけて揚げたものなのですが、
これが美味いのなんのって… 断面を見て戴ければお判りになって戴けることでしょうが岩牡蠣
の旨みが中にギュッと凝縮されていました。

優しい味わいの【加茂茄子と小芋の素揚げ、信田巻、さやえんどうの炊き合せ白髪ねぎ天盛】の
炊き合せを戴いた後に香の物が供されて〆の食事となりました。
食事は【鱧と鱧の肝の【煎りだし】ごはん】です。
骨切りした鱧と鱧の肝に片栗粉を薄めにつけて揚げた【煎りだし】を炊きたてのごはんの上に
オンザライス。程良い塩味がついており、そのままでも美味しいのですが、お好みで、ほうじ茶を
上から注いで茶漬風にしてサラサラと戴いても良いでしょうね。

食後の水菓子も本来は【ドラゴンフルーツ】と【ピンクグレープフルーツアイス】 or 【あん春巻】から
二者択一となるのですが、どちらもと無理云って供して戴きました。
ドラゴンフルーツとピンクグレープフルーツアイスの味は敢えて申し上げなくとも想像がつくと思い
ますが、【あん春巻】は【黒ごま】+【こしあん】に【シナモン】が隠し味に使われており【亀屋清永
の【清浄歓喜団】にも似たヤミツキとなる味わいの口直しの菓子でした。

今回戴きました【昼のおまかせ料理】は最初の【生とり貝と山芋のすり流し生海胆入り】の斬新な
発想の料理に先制パンチを喰らい【あん春巻】で〆るという最高の内容でした。

前田料理長のキレのある腕前と料理のセンスは前回伺った時に素晴しいと感心させられたので
すが今回の昼に供された料理を戴き感心が確信に変わりました。

當店の懐石料理も昼夜のおまかせコースをともに味わいましたので評価は暫定評価から正式な
評価に変更をさせて戴きました。

當店の前田料理長との付合いは、これからが長くなりそうな予感がします(笑)
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2009/05 のレビュー
永い間、料理長を務められていた廣嵜榮二さんが独立され【食工房ひろさき】と云う店を
開店されたのを契機に【木屋町 櫻川】の全ての指揮を執る料理長が代わられて五ヶ月余。

新たに當店の料理長になられたのは生粋の京都人でもある【前田祐治郎】氏である。
自分が知るかぎりでは現在の京都の日本料理界では最も若き料理長ではなかろうか?
端正な顔立ちと板場での立ち振る舞いは必殺仕事人の松岡昌○くんと重なってしまう(笑)

以前の【木屋町 櫻川】の夜のコース料理は一番安いものでも壱萬五千七百五十円~の
設定をされていたが料理長が代わられ、壱萬五百円~と使い易い価格帯の店になった。

今回、戴いたのは、とりあえず様子見も兼ねて最も安価な壱萬五百円の料理を戴いてみた。
事前に電話予約の際に嫌いな食材はないか?とか、苦手なものはあるか?等 當方の嗜好、
希望等、会話の中でさりげなく確認されていたので後は大舟にのったつもりで供される料理を
ただ戴くだけである。最も當方、嫌いな食材や苦手なものは特にないのだけれど…。

【先付】 【山芋】のすったものと粗切りを寒天で寄せたものの上に【海胆】、彩りに【一寸豆】。
【山芋】はすり卸したトロトロと粗切りのシャキシャキと云う、ふたつの異なる食感がひとつに
なってひと味変わった舌ざわりと食感が面白く感じられた。
【青豆】は塩茹でして味を含ませたものに淡い出汁のジュレがかけられ供されたが、これは
見るからに目に涼しげな一品だった。

【椀物】には【穴子】を揚げたものと【芋茎】が椀種として使われていた。
澱みの無い澄んだ吸い地は出汁の加減、塩分ともに 【櫻田】さんで供される椀物に近い。
考えてみれば【櫻川】と【櫻田】、【櫻】は同じで川と田の一字違いと店名も似通っている。
それもその筈、両店とも 【招福楼】の流れを汲む料理店故に似ていると云うことだろうか…

【造り】は【鮑】一品。
料理を戴いている間に塩蒸しされた大きな【鮑】の荒熱を取られたものが造りとして供された。
鮑の肝を裏漉しして造った【肝ぽん酢】と醤油と出汁で造った【割り醤油】の二種類を好みで
使い分けて戴くのですが、どちらも甲乙つけがたく共に旨し。

【焼物】は【太刀魚の源平焼】。付け合せに万願寺唐辛子と丸太切りにした白ねぎ。
太刀魚を【柚庵だれ】の照焼にして木の芽で風味づけ、もう一方は白焼風の塩焼にしたもの。
これまた、どちらも美味しいが、木の芽の風味づけの方が味の印象が強かったかので平家、
いやもとい源氏の勝ちか?(笑)

【強肴】は【蛸】とホワイトアスパラとたらの芽を使った冷製。
【蛸】は細工仕事が施されたものであり目と舌を愉しませてくれました。
ホワイトアスパラとグリーンアスパラと云うアスパラ×アスパラの組合せではなく敢えて緑に、
たらの芽を持ってくる辺り若き料理長の感性の高さを感じずにはおられません。

【煮物】は【真鯛】と【鯛の子】と【聖護院蕪】の炊き合わせ。
見栄えは地味に見えるが上品な味わいの炊き合せは滋味もあり旨し…。

【食事】は【香の物】が供され一膳めは、さっぱりと【梅紫蘇ごはん】、もう一杯は【ちりめん】と
【牛肉】を時雨煮にしたものを茶碗の上にのせ、熱いほうじ茶を上から注いでサラサラと…。

【水菓子】は【白玉&アイス】と【イチゴ&プリン】。

若き料理長 【前田祐治郎】氏であるがユーロ圏で包丁を握られていた経験をも活かしつつ、
日本料理のツボをしっかりと抑えながらも柔軟な思考で料理を昇華させている。

これからが大いに愉しみな日本料理店 【木屋町 櫻川】さん、目と鼻の先にはTabelogでの評価
やジモティの食通の間でも評価が高い 【やました】さんがある。

この界隈にはガイド本に載らぬ底力のある実力店がひっそりと店を構えられているのです。

  • 夕暮れの御池通、この情景が好きです。
  • くるぞ来るぞ…
  • 店の前で錦の御神輿

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3位

光安 (丸太町(京都市営)、烏丸御池、京都市役所前 / 日本料理)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥8,000~¥9,999

2010/08訪問 2010/11/10

ひとつひとつ丁寧に作られた料理は美味ナリ … 『御料理 光安』。

店主"光安 裕一"さんの供される料理は実に丁寧に作られていると信頼できる筋より以前より噂を訊いて
おり何度か予約の電話を試みておりましたが希望日になかなか予約を取ることが出来ず、ずっーとお預け
状態になっておりました"御料理 光安"さんに八月のと或る日に念願叶いやっと訪問することが出来ました。

戴いた料理は昼の五千二百五十円也のコース料理ですが結論から先に申し上げますと久しぶりに滋味を
最大限に活かした料理の味に舌が悦びました。

先ず唯一用意されているビール、エビスの小瓶で喉を軽く潤し伏見の""の純吟冷酒に即移行、料理は、
先付の"山科茄子の揚げ茄子"、見た目はシンプルな一品ですが、その味わいは奥が深い、茄子と油の
相性の良さはイマサラ云うに及ばずでありますが茄子にかけられたジュレ状の出汁醤油とたっぷりと天盛
された糸削りと三位一体となって醸し出される味は想像した以上に美味しく思わず呻ってしまった次第です。

椀物は"ちり鱧の椀"、蓋を外し湯気がたったところでのワンショットゆえ画像はピンボケとなっておりますが
焼いた鱧の骨から摂った出汁は滋味深いものであり皮目を香ばしく焼いた焼き鱧は脂ののりも良く丁寧な
下処理の仕事ぶりが窺がえるものでした。

次いで供された"夏野菜の白和え"は目に涼しげ、湯剥きトマトに無花果、スライスされた生の玉蜀黍に小芋
最上段には隠元の素揚げがのり南京の花が添えられています。
南京の花は飾りものではなく、この中に白和えが詰められており花ごとそのまま戴きますがトマト、無花果、
玉蜀黍、小芋の各素材には各々別の味が含ませられており細かな仕事と仕込みのひと手間が見事に味に
反映されており、これまた感心させられた一品でした。トマトの程良い酸味が味のアクセントになってました。

箸休めに供された"卵黄の味噌漬"は後を惹く味わい、味噌の風味をしっかりと感じつつ味醂の甘さを感じ
舌に絡みつくような卵黄の濃厚な味わいが同時に愉しめる一品で酒のアテには最高の一品です。
炊きたての熱々のごはんの上にのせたら、さぞや箸が進むことでしょう~ 酒は勿論、急に進みました(笑)

焼物は一枚板の上に並べられた天然物の"子鮎焼"、子鮎は確か淀川のものと伺ったような気がしますが
腹の部分にガブリと齧りつくと苦玉の苦味や腸の味も当然ながら養殖ものとの差は歴然。

そして京都を感じる"白味噌椀"、椀種は"そばがき"で天に和芥子、そばがきも美味なれども何と云っても
白味噌の味がしみじみ美味で五臓六腑に甘みと旨みが染み渡ります。練りたての和芥子のツーン効いた
辛味が全体の味を程良く締るのにひと役かっています。

〆の食事は好物の"くじ(甘鯛)の炊き込みごはん"、米の立ち具合といい出汁加減といい、これぞ炊き込み
ごはんナリの御手本の出来、天に盛られた茗荷が大人の味を演出、見事ど真ん中を射抜かれました(笑)
オコゲの部分も何ともいえぬ風味であり、もろみ味噌が添えられた胡瓜と水茄子の香の物も手抜かりなし。

食後の水菓子は二段構え、沖縄の玉砂糖を使い作られた自家製の羊羹に白桃とマスカットのゼリーがけ
デザートに到るまで今回供された料理は全品◎。

この味わいと内容で料理代、五千二百五十円也は超御値打ちです。それにも益して昼は一日二組だけの
予約しか取られぬという姿勢にも恐れ入りました。儲け度外視で真心のこめられた料理を広々とした席で
寛ろぎ時間をかけて戴くという最高の贅沢、それなりの料理店をそれなりに食べ歩いてきたつもりですが、
久しぶりに感動を受けました。次回はぜひ夜に伺ってみたいものです。


  • 先付。
  • 山科茄子の揚げ茄子。
  • 酒器。

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4位

日本料理 とくを (河原町、祇園四条、清水五条 / 日本料理)

2回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 ¥10,000~¥14,999

2022/11訪問 2022/12/20

徳尾さんの良心を感じる昼のお任せコース…日本料理『とくを』

11月最終の土曜日の昼餉は京都を代表するMichelin⭐️⭐️⭐️の人気割烹『前田』さんの前田店主や⭐️⭐️の『祇園にし』さんの西店主等、数多の敏腕料理人を育て輩出されている日本料理『とくを』さんヘ久しぶりに寄せていただきました。女将さんの満面の笑みで出迎えていただき店内へ。用意されて席は徳尾店主の正面のカウンター席。先ずは生ビールのグラスで渇いた喉を潤し昼餉のコースのスタート。料理はたっぷりの鰹節(カツオブシ)が削りかけられた原木椎茸(ゲンボクシイタケ)と菠薐草(ホウレンソウ)の御浸し(オヒタシ)と丹波黒豆(タンバクロマメ)を使った生湯葉(ナマユバ)の生海胆(ナマウニ)載せの先付から。向付には身が口の中で飛び跳ねるかのような活かった身質の明石産の天然『真鯛(マダイ)』に那智勝浦産の『本鮪(ホンマグロ)』トロ、『剣先烏賊(ケンサキイカ)』の『海胆(ウニ)』載せ。椀物代わりには大好きな『◯(スッポン)鍋』の小鍋立、強肴には鹿児島産の黒毛和牛(クロゲワギュウ)のフィレ肉の炭火焼、箸休めと酢の物代わりには絶妙な〆加減の『真鯖(マサバ)』に追い酢(オイズ)をした『きずし』、焼物には『真魚鰹(マナガツオ)』の味噌幽庵焼(ミソユウアンヤキ)に一年寝かせた『唐墨(カラスミ)』と大根(ダイコン)と酢取り茗荷(スドリミョウガ)の付合せ、蒸物には名残の『鱧(ハモ)』と占地茸(シメジ)の霙卸し(ミゾレオロシ)。締めの食事には極小の『ちりめんじゃこ』のごはんに香の物に滑子(ナメコ)の味噌汁(ミソシル)、水菓子にはたっぷりの黄金黄な粉(オウゴンキナコ)とぷるんぷるんの蕨餅(ワラビモチ)。焙じ茶(ホウジチャ)にて昼餉のコース料理はひと通りです。多くの店がコース料理の値段を右肩上がりに改訂されている中、五年前から価格据え置きでやられている徳尾店主。某社のF.Dの味噌汁CM等でも全国区の知名度を誇りながらも以前と全く変わらぬ物腰の柔らかさと語り口の柔らかさに懐の広さと余裕さえ感じられます。祇園から僅か5、6分の下木屋町でアンダー10,000yenで奇を衒わぬ素材の持ち味を活かした滋味優先の日本料理を供される『とくを』さん。京都の割烹ははじめてというビギナーの方からかなり食べ込んでおられる食通の御仁まで満足させてくれる店であると思います。

"祇園祭"で熱く盛り上がる京都へ上洛、今宵は"宵山"、昼餉は軽めに"たかばし第一旭"にて
済ませた後、京の寝城に荷物を置き早速、作務衣に着替え先ず"八坂神社"へ昨年授かった粽の
返納と参拝"蘇民将来子孫者也"と記された今年の""を授かり身も心も清らかになったところで
"長刀鉾"の粽を戴きに伺い総ての用事を終え西木屋町にある"とくを"さんへ向かったのであります。

打ち水をされた入口は清々しく暖簾をくぐると、いつもにこやかに出迎えてくださる店主の徳尾さんと
女将、この店のカウンター席に腰を下ろしますと不思議と身は寛ぎ心は安らぎ京都に戻ってきたぞー
という気持ちになるんです(笑)

今回は夜のコースの真ん中、壱萬円のコース料理、瓶ビールで喉を潤し、ひと呼吸措いた頃合で
先付の三種盛から料理の開始、造りは鮪赤身、鯛の腹身、鱧落とし、たいら貝、針烏賊の五点盛、
鱧の霙掛け、"のどぐろ"焼と八幡巻、海老と白芋茎の椀、濃厚な滋味が愉しめた能登の岩牡蠣に
四国の順才、"揚物"には極上の"鯨のさえずり"を贅沢に使い揚げたもの、食事にはワザありの
"鰻ごはん"、水菓子にプルンプルンの"わらび餅"でコースはひととおり。

自称のどぐろ好きの"のどぐら~"、日本海の赤いダイヤとも称される"のどぐろ"は脂ののりも抜群
"鯨のさえずり"の揚物は昭和の時代の鯨カツとは一線を画す上品な味わい、食事の"鰻ごはん"は
一見何の変哲もなき…とも思われますが雪平鍋でごはんとタレを和風ピラフの要領で炒めたものに
焼きたての"鰻の蒲焼"を加えたもので名古屋の"ひつまぶし"とも違った味わいに舌が悦びました。

奇を衒わぬ直球勝負の潔い料理に舌鼓で癒されるひと時は至極の時間、祇園祭で賑わいをみせる
七月の京都、自分の場合いつも"とくを"さんの料理からはじまります。

自分にとってとても居心地の良い店であり総合評価は★★★★☆(4.5)に上方修正させて戴きました。

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2009/07 【夜】再訪レビュー 画像追加アップ。

前回、夜の予約がとれず已む無くして昼に伺い初訪ながら店主の人柄にすっかりと魅了されて
しまい、新たにお気に入りの一軒となった【とくを】さん。
次回の夜の予約を済ませ店を後にしたのですが、その予約を入れていた日の夜が訪れて再訪。

今回は大阪から上洛した當店初訪となる友人と現地待合わせにて合流しカウンターのほぼ中央、
店主の真ん前の席でコース料理を戴きました。

今宵戴いた料理は【夜のおまかせコース】の七千五百円、壱萬円、壱萬五千円の中の一番上の
壱萬五千円也の料理を戴いてみました。

先ずは前菜の三種盛【鱧の子の翡翠寄せ、山芋すり流し海胆のせ、蛸のジュレがけ】が供され
次いで【鮑、鮪、鯛、鱧おとし、たいら貝の造り】の造り五点盛が供されました。
造りは鮪がやや熟成が進み過ぎた感があるものであったが【鮑】や【鯛】、【鱧おとし】は質が高い
ものであり久しぶりに口にした【たいら貝】は食味も良いものでした。
海の幸の五点盛に続いては綺麗な脂の霜降のサシが入った熊本阿蘇産の【馬刺し】に舌鼓。
阿蘇の馬刺しは、とても身が締まっており程良い脂のサシもコクのある美味しいものでした。

そして、この時期の京都では欠かせない鱧と松茸の出会いもの【鱧と松茸のしゃぶしゃぶ】には
香り高き【松茸】と見事に等間隔に骨切りの包丁が入れられ花が咲いたようにふわっと綺麗に
開いた【鱧】の味は適度な脂もあり格別なものでした。
鱧の後には、やはりこれも京都では欠かせない料理【甘鯛(ぐじ)の若狭焼】です。
強火の遠火で焼き上げられた甘鯛は脂ののりも良く中の身は、しっとりとして、ほのかな甘みが
あり淡白上品。"うろこも"もパリパリと食べられるものでした。

御凌ぎで供された【鱧寿司と鯛寿司】の二種類の寿司は、この時期の"京寿司"の定番ですね。
舎利はもっちりもちもちとしていますが変に甘過ぎるということもなく、これはこれで好きな味です。

寿司の後には當店の看板メニューのひとつの【○鍋】の小鍋立。
【鼈(すっぽん)】、丸太切りの焼葱、すっぽんのエキスをたっぷりと含んだ豆腐と焼餅。
【○鍋】は流石に看板メニューのひとつに掲げられているだけのことはあり美味なるものでした。
トロトロな濃厚スープの味は、しょっぱいとか濃過ぎるとかと云うことは勿論無く味わいは洗練
された円やかな味わいのものであり隠し味の生姜の絞り汁が全体の味を引き締めています。
程良く冷房が効いた部屋で熱々の【○鍋】をふーふー云いながら戴くのは至福のひとときです。

小鍋立を戴き身も心も温まった後には山陰産の【岩牡蠣】を蓮華の中に入れられた"ぽん酢"の
ジュレとともに戴きましたが牡蠣の身はプリプリで濃厚でクリーミー、岩牡蠣を "海のミルク" と
例えた方は偉い。まさにその言葉がぴったりとくる滋味溢れる味であり、"ぽん酢"のジュレもキレ
のある味わいのもので美味しく戴きました。

食事前に供された最後の料理は本日二品めの肉の皿【近江牛のヒレ肉のたたき】です。
肉汁を閉じ込めて焼き上げられた【ヒレ肉のたたき】は柔らかな口あたりで、しっとりした舌ざわり。
凝縮された本物の牛肉の旨味が愉しめるものでした。

そして香の物、なめこの味噌汁とともに供されたごはんは口の中に清涼感が広がる【新生姜の
炊きこみごはん】でした。香の物も抜かりのないものであり、なめこの味噌汁も山椒の隠し味が
利いた美味しい味噌汁でした。

食後の口直しは2品で、一品はイチゴとキウイが添えられた【ココナッツミルク羹】。果実の酸味
とまろやかな【ココナッツミルク羹】の味のバランスが秀逸なものでした。もう一品は適熟し丁度、
食べ頃となった【マスクメロン】でこちらも美味しく戴きました。

店主自慢の欅一枚板で造られたカウンター席で寛ぎながら戴く【とくを】さんのキレのある料理
に良く合う酒も豊富に揃えられています。品書きに載せてない、とっておきの酒も用意されており
ますので、店主に料理に合う酒をお任せするのも良いでしょう~。

個人的に下木屋町では當店【とくを】さんは割烹ビギナーの方から懐石料理を相応に食べ込ま
れている方まで幅広い方が愉しめる料理店であると思います。

昼夜双方の料理を戴きましたので暫定評価を正式な総合評価★★★★(4.0)とさせて戴きます。
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2009/05 【昼】初訪レビュー

今回の上洛で一番伺ってみたいと思っていた日本料理店 【とくを】さんに初めて伺った。
本当は夜に伺いたいと思っていたのですが予約が出遅れてしまったこともあり今回の京都
滞在期間中の夜の時間帯は全て既に先客の予約で埋め尽くされており已む無く昼の時間
に伺うこととなったのですが昼に一度伺って気に入ったら次回は夜に伺うと云う流れの方が
自然の流れで、むしろ好都合だったような気もする。

昼の時間帯は基本的に、【おまかせ料理】五千円也のひとつのコースでの営業されている。

伺った日の昼も全ての席が予約でうまっておられたようであるが當方の予約はam11:30~
でお願いしており他の客は誰一人居られない間に早速、料理を供して戴いた。

飲み物は例により瓶ビールから日本酒への華麗なるリレーで愉しませて戴いた。

【先付】は小さな切子鉢で、【一寸豆】、【汲みあげ湯葉と海胆】、【鯛の子】の三種。
【一寸豆】は【青煮】仕立で色も鮮やかで食感、味の含め方もとても良いものだった。
【汲みあげ湯葉と海胆】は湯葉のふわふわとろとろとした風味とほのかな甘みが海胆本来の
持ち味を引立たせる名わき役ぶりを発揮していたし、【鯛の子】を炊いたものには、あしらいに
木の芽。この組合せも定番であり無くてはならぬ存在ですね。海胆も上質なものが使われて
おりましたし【鯛の子】の味の含ませ方も素晴しいものだと感じました。

【造り】は【よこわ(鮪)】、【鯛】、【烏賊】の三点盛。
山葵は目の前で卸したての【本山葵】が添えられ供されたことは食べ手側としてはうれしい。
往々にして昼は混ぜ山葵を添えられる店が多いものであるが當店のスタンスは素晴しい。
【よこわ(鮪)】は至って普通のものであったが、【鯛】は天然物の上質なものが使われていた。
【烏賊】は甘みがあって平均的にみて美味しい部類のものだった。

【煮物】は【筍】と【若布】の【若筍煮】。
筍は【先】に近い部分と【台】の部分の二つの異なった食感が愉しめるように配慮されていた。
【若布】はトロトロではなく若干の歯応えを残した炊き方であり特に【台】の歯応えのある筍の
食感との相性が良く感じられた。煮物の出汁の按配はとても素晴しいものだと思います。

【焼物】は【鰆の幽庵焼】と【たいら貝】を炙ったものに、ほろ苦い山の息吹が添えられていた。
【鰆の幽庵焼】の食欲をそそる色艶と【たいら貝】の貝柱の色の配色が目を楽しませてくれる
こと勿論、焼き加減も味にしても何も不足の無いものでした。

【椀物】は下煮された【海老】と【白芋茎】にとろみをつけた椀が供された。
生姜の隠し味が身体を内側からほんわかと温めてくれる役目と箸を進めさせると云う二役を
担っていた。吸い地に関しては隠し味の生姜の味に負けぬ程度の鰹出汁の印象が残った。

【揚物】は一瞬、【鱧】がキタッーと思いきや食感が愉しい【穴子の変わり揚げ】と【小茄子】。
サクサクとした歯にあたる食感が小気味良く穴子はふわふわとした食感に加え身厚で食応え
もあり熱々のものを美味しく戴きました。

【食事】は【香の物】、【ちりめんじゃこのごはん】、【赤出汁椀】。
【赤出汁椀】の椀種は、【順才】。
【ちりめんじゃこのごはん】のごはんの上には、【とくを】さん特製の【ちりめん山椒】が
たっぷりとかけられ青じそを刻んだものがのせられ供されました。
この【ちりめん山椒】が一般的なものや他所のものとは、ひと味も、ふた味も違うんです。
一度炊いたものを天日干しにされたものでパリパリ、カリカリとした独特の食感と干された
ことにより【じゃこ】の味が凝縮されたように感じられるもので面白い程、ごはんが進みます。

この【特製ちりめん山椒】は御土産でも販売されており帰りにひと箱買ってまいりました。

食事の後に【水菓子】の【イチゴとキウイと豆乳羹】を戴いて昼の五千円のコースは終了。

店主の【徳尾 真次】氏は生粋の京都人。
日本料理の銘店【たん熊】、京料理の銘店【いな梅】で修行された腕前は相当なもの。
店主を筆頭に奥様もとても感じの良い方であり二番手、三番手の職人さんも愛想が良く、
自分が京都で知っている料理店の中では最も和める店であるように感じました。

檜の一枚板で造られたカウンター席は、とても手入れが行き届いており一見の価値有り。
時計やブレスレットなどでうっかり傷をつけたりしないようにしないといけませんよ(笑)

今回は初訪問であり、昼の五千円の料理しか當方は戴いておりませんが夜に伺っても
相当愉しめる店であることは肌身で感じられました。

夜の部には女将さんが店に出られないことが個人的に残念ですが次回、夜に伺ってから
評価を修正させて戴くことにして、暫定的に評価は、★★★★(4.0)とさせて戴きました。

  • 明石産の天然真鯛、那智勝浦産の天然本鮪のトロ、剣先烏賊の海胆載せ
  • きずし
  • 名残の鱧と占地茸の霙卸し

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5位

祇園 大渡 (祇園四条、河原町、三条京阪 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2010/05訪問 2010/07/24

祇園では今この店から目が離せません … 祇園 『大渡』。

5月定期再訪時の料理画像を追加アップさせて戴きます。
一品目の"鮑とホワイトアスパラ"の料理でグッと心をつかまれ絶妙な間合いで供される料理の数々、
会話を愉しみ美味しい料理とともに酒盃を傾けて過ごす至福の時間、好きですねー"大渡"さん。

l料理が全て終わった後に同席させて戴いた當店の開店以来の馴染みさんの大渡さんへのオミヤ
"一和"さんの"あぶり餅"まで御裾分け戴き寛いで過ごした三時間、感無量ですね(笑)
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2010/4のレビュー
"祇園 大渡"さん。全八席のプラチナシートをひとりで仕切られてるのは店主の"大渡真人"氏です。

惜しまれつつ昨年四月で店を閉められた大阪 新深江の銘店"季節料理 津むら"の"津村眞次"氏
に十三年間余仕従され腕を磨かれた祇園いや京都でも今、注目を浴びている若き料理人のひとり
であり何かと話題に上る旬の店であります。

このレビューを書いている時点で既に當店へは三度伺っておりますが時系列順にレビューをアップ
しております関係上、先ずは四月初旬に伺った時のことについてレイティングさせて戴きます(笑)

古民家を改造した入口の暖簾をくぐり進みますと真正面に"一生懸命"と書かれた襖が目に飛び
こんできます。玄関先の土間で靴を脱ぎ板間を奥へと進み突き当りを右に折れますと某設計事務所
の手による設計だろうと思われる設えが目の前に広がります。
譬えは不適切かもしれませんが "未在"さんと"なかひがし"さんの内装と設えを足して二で割った
ような雰囲気と設えと便宜上、失礼ながら書き記させて戴きます。

料理は"おまかせ"の1コースのみですが旬の素材を取り入れた料理は京都式の割烹のスタイルの
"きまりごと"に必ずしも捉われぬ料理構成と展開が目新しさと新風を感じさせつつも訪れた客の舌
を魅了し呻らせ着実に馴染さんの数を日増しに増やされている勢いを感じる人気割烹であります。

四月上旬に供されました料理内容は画像のもので先ず "ホワイトアスパラ、独活、蛍烏賊、こごみ"
と"一寸豆の翡翠煮"の"先付"二品から料理がはじまりました。
次いで鮭のマリネ風のものは"幻の鱒"の異名を持つ琵琶湖産の"琵琶鱒"を軽く酢洗いにした
ものとたらの芽、そして鱒の下には"鯛の白子"が忍ばせられておりました。
"琵琶鱒"はその名のとおり琵琶湖で釣り上げられた天然の鱒、琵琶湖の鮎や小海老を食べている
魚だけに不味い訳などありません旬の夏程ではないものの薄い脂がのった身は充分に美味でした。

"凌ぎ"に供された"穴子ずし"は棒寿司ではなく江戸前鮨風に"煮穴子"をにぎりとして供された
のですが柚子の香り薫る、とろける穴子の味と酢を効かせた舎利の美味さには驚愕させられました。

"造り"は明石産の"真鯛"、身の弾力と美味しさは東京や関東で喰らう真鯛とは全く比較にならぬ、
上質なものでしみじみ美味しいものでした。
鮪や鰹といった赤身の魚は東高西低と思いますが""や""といった白身の魚は圧倒的に西高
東低
ということを改めて思い知らせてくれるものでした。魚の旨みが凝縮された皮岸の部分は軽く
湯霜にされ卸し立ての山葵とともに添えられ供されました。
一番美味しい皮と身の間のゼラチン質たっぷりの皮岸の部分を仕事の効率を優先する余り何気に
廃棄に回してしまう店が多い中これは嬉しかったですし、"本山葵"も立派な太さのものが使われ
ていたことにも感心させられました。

"椀物"は"鯉と蓮根餅とくちこの椀"、四月ということもあり椀種は愛魚女か油目だろうと想像して
いたのですが翌月は"五月の節句"ということもあり少し早めに""を使われたのでしょう~。
ただ""と云っても食用に養殖されたものであり泥臭さ等は全くなく細かな骨も綺麗に取り除かれた
上に素揚げされているので小骨が口にあたるという心配もなし、蓮根餅も完全にすりおろした蓮根
に賽の目切りにされた蓮根のシャリシャリとした食感のアクセントが加えられたもので歯にも愉しく
天盛にされた軽く炭火で炙られた"くちこ"と針茗荷が椀に風味と華を添えておりました。

"煮物"はシンプルに木の芽を添えた""を炊いたもの"焼物"はたっぷり脂がのった"のどぐろ焼"、
何処ぞの小魚味醂干紛いの"のどぐろ焼"とは別物でありまして余りある脂の味を中和させる意味
で天盛にされた白髪ねぎは実に有意義なものでした。

その後に"ちりめん"、"香の物"が供され、お竈さんで炊かれたピカピカの銀舎利で"食事"となるの
が一般的な京都の割烹のコースの流れですが、ここからが大渡さん流の展開がはじまるのです。

"ちりめん"でごはんを一膳戴いたあとに呼び戻しの料理(笑)、この日は"伊賀牛"の霜降肉と切干
大根を炊き合せて"中村農場"の卵で作った"温玉"を添えた大渡氏云うところの"牛丼の具"です。
なんと贅沢な"牛丼の具"でありましょう~、"三嶋亭"さんや"モリタ屋"さんも真っ青ですわ~(笑)
二膳目は、この贅沢な具材をごはんの上にのせリッチなプチ"牛丼"として、そして三膳目はとって
おきの"鯛そぼろ"をごはんにかけてもらい出汁を注ぎ卸し立ての山葵を天盛にした"鯛茶漬"です。

何が美味いって、この"裏メニュー"の"鯛茶漬"が一番ですね(笑)

三つの味わいの食事を戴き、お腹も身も心も充分に満たされた後は"わらび餅"と"お薄"を戴いて
コース料理はひととおりとなります。

本当は未だ"スペシャリテ"の皿が一品供されましたが、それは試験的に作られたものでありまして
"一般公開は御容赦を…"ということで御披露目することは叶いませんがご賢察戴ければ幸甚です。

店主の"大渡真人"氏は福岡市城南区生まれの三十五歳、年は若いが九州男児らしく、しっかりと
した理念を持たれて居られます。

惜しまれつつ暖簾を下げられた修行先である銘店"季節料理 津むら"さんの味を継承しつつ自分
のスタイルを今まさに祇園の地で大輪開花させようとしている要注目店であり北白川の"中善"さん
西木屋町の"食堂おがわ"さんとともに毎月定期的に顔を出させて戴いている料理店であります。

  • 鮑の食感が絶妙、炙ったホワイトアスパラに悶絶
  • 一寸豆。
  • 子鮎焼。

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6位

肉料理 荒川 (京都河原町、祇園四条、三条 / 焼肉)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 ¥5,000~¥5,999

2010/08訪問 2010/11/15

京都で焼肉を食べる時には此の店と決めています … 肉料理『荒川』。

本日、11月15日は明治維新に最も影響を与えた幕末の志士"坂本龍馬"の旧暦での生誕記念日であり、
同時に何の因果か判りませんが盟友である"中岡慎太郎"とともに往時の"近江屋"にて謎の刺客の
手によって命を絶たれてしまった日でもあります。

旧暦では生まれ出でた日が天保6年11月15日で他界された日が慶応3年11月15日であるとされておりますが
西暦表記では1836年1月3日生まれで没年が1867年12月10日と異なるということを先ずは御理解戴き度く候。

先ずもって"坂本龍馬"氏と"中岡慎太郎"氏の御霊のご冥福を祈念申上げます。

これは洛中の旧家に嫁がれた親愛なる友人から御教示戴いたことであり、おそらく京都の方は口を噤んで
滅多に話されない話題とも思われますが友人が帝都の東京より古都 京都に嫁いだ時に驚いた事があった
のだと教えてくれたことを一筆したためさせて戴きます。

友人が嫁いだ時の京都の旧家の風習では家の中で"肉"を戴く時には御先祖様の他界された日ではないと
いうことが先ず第一条件であったという話を伺った記憶があります。

その話を訊いた時に京都は日本の雅と歴史を凝縮した都であることは云うに及ばず御先祖様を敬う心構え
や古くから伝わるしきたりや慣わしまで現代に受継がれている街であるということを改めて感じた次第です。

自分の遠い祖先も元々は京都に居を構えており、その後、滋賀の大津、そして帝都 東京へと居を移したと
いう事実から京都には強い思いがあるのですが前述の話を友人から訊いた時には解るような気もしました。

そういう前ブリを書きながらも盆休の時期に焼肉を喰らいに行った理由は二つ、ひとつは日の高い昼だった
ということと盆休の中、市場は休みであるものの料理屋御用達の魚屋さん等は稼動はしているものの生簀
で生かしていた魚介類を流通するだけであり、とれたての新鮮なものを口にすることか出来ないということの
二つの理由から…、また京都の肉屋さんのレベルは相当高いということは賢者の方々であれば御存知の筈、
個人的に"焼肉"なら"なり田屋"さんや"荒川"さん"ステーキ"や"ハンバーグ"なら"くいしんぼー山中"さん
ごはんのおかずとなる"和風すてーき"となれば迷わず"丸太町十二段家"さん、酒のアテなら""さんの
"牛肉の炙り焼"、"ビフカツサンド"ならば"はふう"さんと足を運ぶ店は決まっており間違ってもツーリストさん
御用達の店"M"さんや"M"さんへは万が一にも自発的に足を運ぶということは有り得ないのであります(笑)

この日は久しぶりの"荒川"さん、通常は夕方から店を開けられる店でありますが未だ日の高い昼の時間帯に
店主の"荒川一道"さんにお願いして特別に店を開けて戴いたのであります。

寝城より店へ向かうその足で今はCVSの店舗に変わってしまった往時の"近江屋"跡地に立ち寄り龍馬さん
と慎太郎さんの御霊のご冥福を祈り手を合せた後、木屋町へと足を進めました。

(閑話休題)

店に到着し先ずはギンギンに冷えた赤星のラガーで火照った喉と身体をクールダウン、ビールのおともには
セットのつきだしとして供された枝豆、茹でた枝豆をそのまま居酒屋のように単に皿に盛り供するのではなく、
料理屋さんのように鞘の両側をキチンと切り落としたものが供される辺りも見逃してはいけません。

料理は"イチボ"と"ミスジ"の"刺身"からはじまり、ロースターの上では"グリーンアスパラのホイル焼"をセットし
点火、キムチと温野菜とともに"焼肉"は生の"牛タン"と"上ミノ"、そして"上ハラミ"と"上ロース"で肉の美味しさ
を存分に満喫し"三角バラ"、"ヒレ"、"ロース"と美味しい肉を少しづつ"食事"は絶品の味わいの"テールスープ"
と"ガーリックライス"、水菓子代わりに食後にフレッシュジュースを戴いて"店主おまかせコース"はひと通りです。

"荒川"さんの魅力のひとつは肉質の良さも然ること美味しいものを少しづつ色々と味あわせて下さるという贅沢、
ひと言で云い表せば、この言葉に尽きると思います。

特筆すべきはギューっと旨味が凝縮された"テールスープ"と香味高き"ガーリックライス"の味は絶品、水菓子
代わりの食後のフレッシュジュースは先代が良く通われていたという"千花"さん由来の味。

木屋町の大人の隠れ家で戴く焼肉の味は最高です。


  • イチボとミスジの刺身。
  • 枝豆(つきだし)のセット。
  • グリーンアスパラのホイル焼。

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7位

くずし懐石 縁 (今出川 / 日本料理、創作料理)

2回

  • 夜の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.3
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 3.9
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.3
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP 3.9
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 ¥10,000~¥14,999

2016/09訪問 2017/01/06

滋味優先、これぞ京料理の心…『くずし懐石 縁』。

久しぶりの上洛となった日の昼餉場所に選んだ店は『袖触れ合うも多生の縁』ということで『』さんへ。店主の鈴木さんの供される料理は『なかひがし』さんの中東さんの作られる料理同様、御馳走オンパレードを求められる方には向かないように思います。本当に料理が好きな方はその意味を御理解戴けると思いますが如何にも御馳走という料理スタイルではなく『滋味優先』の料理が供されるからであり今時の若手のイケイケの料理人さんのような派手な演出もパフォーマンスもないものの確かな腕から造りだされる料理は季節感が失われつつ昨今でも頑なに走り、旬、名残という四季の季節感を大切にし、ちょうど食べ頃を迎えると思われる素材を使った洛中のウチサンが好む内容の料理でありツーリスト向けの料理ではないということ。そのことを踏まえた上で派手さはありませんが昔から京に伝わる調理法で作られた料理を堪能することが出来る数少ない一軒かと思います。當日は事前に『活鱧』の料理を所望していましたので『鱧』の料理が数品組み込まれての料理です。目の前で〆られる活鱧。鱧には専用の骨切り包丁を使うというのが一般的でしょうが鈴木さんは薄刃包丁で骨切りをしてしまいます。凄い技術です。下された鱧は滅多に口にすることの出来ぬ『造り』に王道の『落とし』凌ぎとして『飯蒸し』コースの華である『椀物』として堪能させていただきました。他にも平政、目板鰈、活蛸の造りや鮎の塩焼や小芋と湯葉の炊合せ、〆はシンプルに白いごはんと香の物に鯨の塩漬と茄子と茗荷で作られた『くじら汁』での食事、口直しに柑橘ジェラートが供されひと通りです。個々の料理の説明は割愛させて戴きますが、これぞ『滋味優先』の料理、これこそが『京料理のこころ』ナリかと。最近は京都以外のお客さんからも色々と問合せや予約の電話が入るようになったと戸惑いを見せる鈴木さん。最近は皆さん料理の写真を撮られて変えられるからと苦笑いされる鈴木さん。供されている料理の内容を良く見比べていただければ何を言わんとしているかは賢者の方はお判りいただける筈かと。當店はソトサンさんではなくウチサンにしっかりと顔を向けられた商売をされている店ですから。
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2010/09のレビュー
蒸しの工程が入れられた所謂、ふわっとろの白焼や蒲焼を江戸焼であるとか関東風と呼び蒸しの工程を入れず皮目をパリッと焼く地焼きスタイルのものを関西風として大別されていますが京都には元来、関東風でもなく関西風でもない伝統の『京焼き』という調理法があったのだとか?。『京焼』と聞きますと陶磁器のことかいナ?と思わず聞き直してしまいましたが、そんな興味深い話を耳にしてしまったものですから食道楽の端くれとしましては一体それはどんなものなのか、もう気になって気になって仕方がありません(笑) 余りにも手間がかかることから伝統の『京焼き』の手法で活鰻を食べさせてくれる料理店は数多の料亭や割烹が軒を連ねる京都の料理界でも次代への継承者は殆ど居られないとのこと。何処かで『京焼き』の鰻を口に出来ないものかと色々とあたってみたところ當店店主の鈴木健夫氏が昼であれば。ということで受けてくださった。用意して戴いた活鰻は岡山『児島の天然鰻』と浜松の養殖鰻の特Aクラスのもの、目前で割かれた活鰻を見比べてみますと、その差は歴然。いかに天然物に近い養殖物と謳われていても身質には月と鼈の差が。見事な包丁捌きによる解体ショーから串打ち、そして謎の『京焼き』までとくと拝見。その『京焼き』とは炭火の上で焼くのですが皮目に手桶で湯を掛けては焼き また湯を掛けては焼くという工程が繰替えされて焼かれるのですが、それは焼きで表面に浮いてきた余分な脂を湯を掛けて流すということと湯を掛けることで蒸し焼きのような効果をも兼ね備えた焼き方であり関東と関西の双方のいいとこどりのような感じで天然物の鰻はこの工程を頭部も尾部も四回繰り返され養殖物の鰻は頭部が三回、尾部は二回繰り返してちょうどいい感じに焼き上げられました。確かに手間隙のかかる仕事であり焼き上がりの見栄えは蒸しの工程が入れられた関東風のような美しさはありませんが、その味はなかなか侮れません。『天然ものの鰻』は沼や池で獲れるものよりも川で獲れたものの方が上物であり更に急流で獲れた鰻の方がの方が上質で秋に捕れる俗に言う『下り鰻』は格別と言われおりますが河口の海の餌で育った『海鰻』はその上をいく別格ものと称されます。今回用意して戴いた『児島』の鰻は正にそれ。味わいは脂肪分が多いのだけれど脂ギッシュの味ではなく臭いや癖もなく旨味が濃く『養殖ものの鰻』は特Aの最高グレードのものですが些か小骨が気になり天然物に比べて身は脂っぽく感じられました。ちょうど前日の昼に都内屈指の鰻料理店『尾花』さんで最高の『鰻重』を戴いていただけに養殖物の鰻であれば充分な蒸しの工程を入れた関東風の調理法の方が美味しく味わえると確信した次第です。幻の『京焼き』の鰻の味を満喫することができ感無量。余談ですが『鰻肝』も魚屋さんからかき集めてくださり鼻血が出るんじゃないかという程の量が供され、昼から思いっきりウナっちゃいました(笑)
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2010/07のレビュー
西花見小路の巨匠が営まれる『竹馬』さんで懐古的かつ茶懐石に則った料理を味わった翌日の夜は美味しいものが大好きという高名なと或る芸術家の某女史とともに再訪。當日はシンガポールから二回目の訪問という御家族連れ四名様と通訳兼ガイド役の日本女性とで店内は満席で賑やかな宴。『鱧祭り』とも称される『祇園祭』の期間とあって料理は『鱧』の味が満喫できる内容。先ずは蛸の梅肉和え、鯛のほぐし身、鮴(ごり)の佃煮の三品から料理ははじまり鱧の頭と中骨から摂った出汁で作られた冷やし鉢、造りは鯛、鮪のトロと『鱧のたたき』の三点盛、この『鱧のたたき』は鱧の造りと焼鱧双方のいいとこどりの料理。中心部へ七割方の火入れで外側はほのかに香ばしい焼鱧であるが内側はレアな造り、一度で二度愉しめる味に舌鼓。『椀物』は『焼鱧と蓴菜の椀』で吸い地の按配は鱧出汁の濃厚な旨みと絶妙な塩の塩梅、食べはじめには若干薄いと感じる吸い地は食べ終える頃にしみじみと旨みが感じられるように計算されたもので生臭い出汁や水臭い吸い地とは一線を画すもの。焼物は琵琶湖の半養殖の小鮎焼でしたが、この時分の鮎としては天然ものよりも半養殖の方が美味しいかもしれません。小芋を炊いたん、そして滋味溢れる『鱧ごはん蒸籠蒸し』、竹取物語よろしく竹の中からは白胡麻の風味が効いた葛豆腐、筒切りにした鰻を使った印籠蒸し、香り風味、弾力と三拍子揃った『蒸し鮑』は絶品、香の物、青梅甘露煮で酒盃を重ね今回は〆の食事はスルーして水菓子を戴きひととおり。料理には派手さこそありませんが根底に息づく『京料理の心』、しみじみ美味しい料理をいただき今回も満足満足。
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2010/04のレビュー
『烏丸一条角』という地番から『[a:26015091,とらや]』さんや『虎屋菓寮』さんを思い浮かべられる方も少なくないと思いますが日本料理好きの方であれば忘れちゃならない一軒が當店『くずし懐石 縁』さんでしょう。店主の『鈴木健夫』氏は京都流の洒落で自称『ねこや』と名乗られておりますが御方、京を代表する名門料亭『瓢亭』さんのOB会の重鎮であり京の日本料理会ではその名を知らぬ料理人はモグリとまで言われる御仁であります(笑)では『ねこや』とは?何故かと申しますと察しの良い方は直ぐ御理解戴けることと思いますが『[a:26015091,とらや]』さんから二軒隣に店を構えられており向うは全国区の知名度やから、こちらは『ねこや』ですねん。と戯けて話されますが酸いも甘いも知り尽くした店主の作り出す料理には京料理の真髄が脈々と流れております。當店へは既に昼夜と複数回伺っておりますが画像とレビュー内容は四月の最終日の昼の五千円のコース料理についてであり料理は『先付』の『蕨の朧和え』からはじまり『造り』には『煽烏賊』、『鯛』、『縞鯵』と『とり貝』を黄身酢で『椀物』は葛打ちした『愛魚女』を椀種に使い四月の最終日ゆえに木の芽を天に盛り、『焼物』は『早鮎の塩焼』、『蒸物』は『海胆と一寸豆の飯蒸し』、『煮物』は『小芋、湯葉、焼穴子、絹さやの炊き合せ』、箸休めに『あぶらめの新子の南蛮漬』が供された後に『ちりめんじゃこ』とごはん、赤出汁の食事と続き、『水菓子』でコース料理はひと通りとなりました。結論から先に申し上げますと昼の五千円のコースの料理と言っても、どの皿も一切の手抜きはなく季節感を大事にしつつ丁度、食べ頃を迎えた素材の使い方は流石のひと言に尽きると思います。戴いた料理の中で印象に残ったことを簡単に寸評にて書き記しますと造りの『煽烏賊』≒『あおりいか』は身が厚く舌にねっとりと絡み、とろけるような強い甘みが口の中に残るものでしたし漁獲してからの取り扱いで味が決まると言われる『真鯛』は野締めされたものなのか活け締めされ少し寝かされたものなのかは判りませんがジャストの熟成具合、しっとりとした身質であり強い旨みは『天然ものの鯛』ならではのものであり養殖ものの鯛ではこうはいかないもの。活け締め直後のコリコリ感のある鯛の身は勿論、自分も好物ですが久しぶりに旨みを存分に引き出された鯛を口にしたように思います。相反して『縞鯵』は活け締め直後のもので色艶と輝きが鮮度の高さを物語っており身の弾力と濃い旨みが味わえるもの。やはり縞鯵も真鯛と同様に市場には養殖物が数多く出回っている高級魚の代表格のひとつですが自然の恵みは美味しさが全く違います。この造りの三点盛のキモは口飽きせず食べ疲れせぬよう熟成ものと締め直後のものと二つの食感のもので変化をつけているところであり白身の魚は必ずしも鮮度至上ではあらず。ということを無言で語りかけてくれるような一皿でした。『愛魚女』≒『あいなめ』の椀は椀種に葛打し鰹出汁で軽く下茹でされたもので椀ものの生命線である『吸い地』は一番出汁に愛魚女のアラから摂った出汁が加えられており出汁感、塩分ともに絶妙椀種の愛魚女は小骨を綺麗に抜かれた後、細かく包丁の目が入れられ更には食べ易いように身の真ん中にも二度引きの包丁を入れるという実に丁寧な仕事が施されている椀物でありました。炭火で焼かれた『早鮎の塩焼き』は上品な見栄え焦げめもなく美しく鮎は時期柄、琵琶湖の天然ものに限りなく近い半養殖ものでしょうが箸を付けると身はホクホク、腸はほろ苦く口に含むと脂も思ったよりもあり季節感の先取りを満喫することができました。『凌ぎ』を兼ねた『海胆と一寸豆の飯蒸し』は蒸しあげられた海胆と一寸豆を良く混ぜ合わせて戴きますが何とも言えぬ風味が愉しめましたし、『小芋、湯葉、焼穴子、絹さやの炊き合せ』も素材それぞれの持ち味が引き出されており、ほっと肩の力を緩めてくれるような鰹出汁と昆布出汁の優しい味わいが印象的な炊き合せでした。稀少な『あぶらめの新子の南蛮漬』を戴いたところで酒盃を置いて食事、水菓子でコースはひととおりとなりました。供される料理は祇園の若手が営まれる料理店のように何が使われているとかという細かな説明等は一切加えられませんので、どちらかと言いますと『玄人ウケ』のする料理店と言えるかもしれませんが、こういう店のカウンター席にしっくりと馴染み似合う男になりたいものだと痛烈に感じる今日この頃、『袖触れ合うも多生の縁』。単なる洒落好きの『ねこや』などと侮ってはいけません(笑) レイティング自体は初めてとなりますが総合評価の★★★★(4.0)は複数回伺った上での評価であり夜のコース料理の内容につきましては時系列ごとに順を追って紹介させて戴きたいと思っております。
久しぶりの上洛となった日の昼餉場所に選んだ店は『袖触れ合うも多生の縁』ということで『』さんへ。店主の鈴木さんの供される料理は『なかひがし』さんの中東さんの作られる料理同様、御馳走オンパレードを求められる方には向かないように思います。本当に料理が好きな方はその意味を御理解戴けると思いますが如何にも御馳走という料理スタイルではなく『滋味優先』の料理が供されるからであり今時の若手のイケイケの料理人さんのような派手な演出もパフォーマンスもないものの確かな腕から造りだされる料理は季節感が失われつつ昨今でも頑なに走り、旬、名残という四季の季節感を大切にし、ちょうど食べ頃を迎えると思われる素材を使った洛中のウチサンが好む内容の料理でありツーリスト向けの料理ではないということ。そのことを踏まえた上で派手さはありませんが昔から京に伝わる調理法で作られた料理を堪能することが出来る数少ない一軒かと思います。當日は事前に『活鱧』の料理を所望していましたので『鱧』の料理が数品組み込まれての料理です。目の前で〆られる活鱧。鱧には専用の骨切り包丁を使うというのが一般的でしょうが鈴木さんは薄刃包丁で骨切りをしてしまいます。凄い技術です。下された鱧は滅多に口にすることの出来ぬ『造り』に王道の『落とし』凌ぎとして『飯蒸し』コースの華である『椀物』として堪能させていただきました。他にも平政、目板鰈、活蛸の造りの三点盛や鮎の塩焼や小芋と湯葉の炊合せ、〆はシンプルに白いごはんと香の物に鯨の塩漬と茄子と茗荷で作られた『くじら汁』での食事、口直しに柑橘ジェラートが供されひと通りです。個々の料理の説明は割愛させて戴きますが、これぞ『滋味優先』の料理、これこそが『京料理のこころ』ナリかと。最近は京都以外のお客さんからも色々と問合せや予約の電話が入るようになったと戸惑いを見せる鈴木さん。最近は皆さん料理の写真を撮られて変えられるからと苦笑いされる鈴木さん。供されている料理の内容を良く見比べていただければ何を言わんとしているかは賢者の方はお判りいただける筈かと。當店はソトサンさんではなくウチサンにしっかりと顔を向けられた商売をされている店ですから。

  • 牡丹鱧と蓴菜の椀
  • 鱧のおこわ
  • 鱧落とし

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8位

京都岡崎 いく田 (東山、神宮丸太町、三条京阪 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 3.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2010/06訪問 2010/09/03

平安神宮の西側、岡崎の地に良心的な割烹の佳店アリ … 『いく田』。

平安神宮に程近い岡崎の地に京都ブライトンホテルの京懐石店""さんにて料理長として腕を揮われて
いた"生田一雄"さんが今から五年前に独立開業された割烹料理店"いく田"さんがあります。

當店"たまご好き"の間ではちょっとした有名店なのですが、その秘密は後述することとしまして六月の
と或る日の夜に戴きました、おまかせのコース料理についてレイティングさせて戴きます。

先付は大納言小豆入りの胡麻豆腐、酒が妙に進む"特製焼き味噌"、うま味たっぷり自家製の鯨ベーコン
の酢味噌がけがテンポ良くポンポンポンと三品続いて供された後、椀物は鱧真丈と順才の椀、造りには鯵の
混ぜ和え、"本田鰈と鮪のトロ"、鱧のおとしと三立て全四品、箸休めに泉州水茄子、焼物は脂のり抜群な
"のどぐろ焼"、蒸し物代わりに目にも鮮やかなオマール海老、アスパラ、椎茸、薄い豆のすりながしと続き
食事は窯炊きごはんに店主の実の伯父さんが放し飼いされている地鶏の卵を選んで"たまごかけごはん"、
香の物に味噌汁、水菓子に二度煎りのきな粉を使ったわらび餅でひと通りです。

料理の中で特に印象に残ったものはミンチ肉にねぎ等を加え作られた香ばしい味噌の香りが食欲をそそる
"特製焼き味噌"で思わず日本酒を欲してしまう味わい酒との相性の良さは云うまでもないのですが、ごはん
ととも味わったならば、さぞや箸が進むことでしょう。

造りの"本田鰈と鮪のトロ"、幻の鰈とも呼ばれる稀少価値の高い本田鰈は身のうま味に締まった身の食感
ぶ厚い縁側の脂のりは最高、噛みしめると脂の旨みが口中に広がり過去にこんなにも見事な本田鰈を口に
した記憶はなく、ひと切れ添えられた鮪のトロも肌理細やかなサシが入り脂の旨味もMAX、目の前で直前に
すりおろされた山葵も立派な太さのものであり味、風味とも申し分なし。造りに野菜類を添えるのが生田流。

そして自称"ノドクラー"が余りの美味しさに歓喜の声を発し身体を仰け反らせてしまった"のどぐろ焼"は文句
なしに今年、口にした"のどぐろ"では群を抜いた脂のりが良く絶品の美味しさでした。

〆の食事は冒頭に書き記した"たまご好き"の間ではちょっとした有名店の所以である"たまごかけごはん"
しかし、この"たまごかけごはん"が単なるものではないのです。
ずらりとならべられた卵の画像をご覧戴ければお判りになるでしょうが青い殻色のアローカナの卵や烏骨鶏
の卵、名古屋コーチンの卵に近江軍鶏の卵と揃えられている卵は数種類、この卵は全て店主の伯父さんが
信楽で放し飼いで育てている地鶏の卵であり産みたてで新鮮で安全な卵ばかりなのです。
リクエストをすれば自らも"たまご好き"という店主の目にも留まらぬ秒速超高回転の卵をかき混ぜる神業も
目の前で拝見することも出来ます。
基本は、ひとり一個のようですが、この日は二個までOKということで自分は近江軍鶏と名古屋コーチンの卵
の味比べ二者択一するとすれば近江軍鶏の卵の方がコクのある味わいで美味しかったです。

食後の水菓子は二度煎りきな粉のわらび餅、ほのかに甘みを含んだ香ばしいきな粉にプルプルのわらび餅
を戴き今宵も口福な時間を過ごさせて戴きました。

さて當店の最大の魅力は良心的な価格設定、驚くなかれ上記の内容で料理代はアンダー壱萬円、料理代は
そこそこの値段に抑えられても酒代が高く結果、相応の支払いになってしまう店が多い中、ビールや日本酒の
値段もとても安価な設定、祇園をちょっと離れただけでこうなるのが京都の常、個人での利用や気が置けない
友人との食事であれば當店は選択肢のひとつに入れておいて損のない佳店です。


  • 小豆入りの胡麻豆腐。
  • 特製焼き味噌。
  • 自家製くじらベーコンの酢味噌がけ。

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9位

京洛肉料理 いっしん (祇園四条、三条京阪、三条 / 牛料理、日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥6,000~¥7,999

2010/06訪問 2010/09/02

肉好きであれば一度は訪れてみたい"肉懐石" … 『いっしん』。

京都で肉といえば必然的に牛肉を指すということはご承知のとおり、當店"いっしん"さんは"肉懐石コース料理"の
第一人者と申しあげても一向に差支えないでしょう。

"肉懐石"とは余り聴き馴れぬ言葉であると思いますが、それは厳選された近江牛の雌牛の極上の肉を使い単に
刺身やステーキといった形で供するのではなく肉そうめん、パストラミや味噌漬、吸物にすしに煮込みというように
懐石料理に倣い立派な一品料理に昇華させ供される肉料理で、きっと肉に対するイメージが変わることと思います。

先ずは"百聞は一見に如かず"我こそは肉料理好きという方にはぜひ一度は訪れてみて戴きたい一軒であります。

この日のコース料理は先付の"肉そうめん"からで、これは牛肉を素麺に見立て細かく包丁を入れたものに山芋
のすりおろし、浅葱、懐石仕様の極細のきざみ海苔、天に山葵、それに出汁を注いだものですが肉の甘みと旨みが
同時に味わえる所謂、和風のユッケと云っても良いもので単なる牛刺しとは、ひと味もふた味も違います。

二品目はローストビーフ、ミノの酢味噌和え、みすじの味噌漬とパストラミ風味の三種盛、湯引きにしたミノと三つ葉
を酢味噌和えにするとは実に柔軟な発想、コリコリしたミノとシャキシャキとした三つ葉の食感が小気味良いもので、
ローストビーフの完成度は画像の輝きからもお判り戴けることでしょう。
みすじの味噌漬とパストラミ風味も美味なるものでビールグラスを傾ける速度を明らかに加速させる料理でした(笑)

次いで供された椀物は自家製の飛龍頭と順才を椀種にした吸物であり、これは一見、正統派の割烹仕立の椀か?
と思いきや飛龍頭の上に塩漬けのタンがのせられたものでしたが思いのほかタンと吸地の相性は良くビックリです。

四品目は湯引きされたみすじと野菜の霙和え、軽く湯引きされたみすじは綺麗なピンク色、肉は甘く頬が緩みます。

凌ぎに"牛トロすし"の三種盛、猪口の中にはダイス状にカットされた特製だれに浸け込まれたトロのづけ小丼に
トロとアボガドの巻物、そして圧巻は陸のトロの呼称がぴたりとくるトロのにぎりの三品、自身が口にしたことのある
牛トロの寿司は岩手の前沢町にある"助八寿司"さんで戴いた味が一番記憶の中に残っておりますが當店のもの
は勝るとも劣らぬ美味しさ、ひと口サイズのトロのづけ丼はおかわりをしたい一品でしたしトロとアボガドの巻物と
トロの握りは噛まずとも口の中の温度で肉と脂が溶け消え去ってゆく感覚は圧巻です。

テールの煮込みは、これまた口の中でトロケル食感、カレー風味が食欲中枢を微妙に刺激したところで〆の食事へ
と移行、ごはんの上には牛肉の時雨煮、脇役は香の物、そして主役は肉料理の王道のステーキ、絶妙な火加減で
焼きあげられた肉はミディアムレア、口に運ぶとジューシーな肉汁が溢れ出し口福感も絶頂に達します。
ステーキが絶品だったことは云うまでもないことですが時雨煮の下のごはんも美味なるもので香の物も手抜かりの
ないもので全く非の打ちどころナシ。

食後の水菓子は、きな粉のブリュレと西瓜とキャラメルのアイスクリームが供されましたが、これも完成度はとても
高い、何せ店主は元々フレンチのシェフ、この手のものはお手の物、コース料理の最後は奥様の手により直前に
豆を挽いて淹れられた珈琲、香り高き珈琲を戴いて昼のコースはひと通りとなりました。

京都には数多の肉料理店が軒を連ねられておりますが界隈で自分が好んで足を運ぶ店は當店と"荒川"さんの
二軒ですが理由は至って簡単、上質な肉を安価な値段で供してくれるからです。

祇園で昼に肉料理となったなら當店がイチオシ、夜なら"安参"さんと使い分けすれば二倍、三倍に愉しめるでしょう。

  • 肉そうめん。
  • 三種盛。
  • 自家製の飛龍頭と順才、天に塩漬けのたん。

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10位

啐啄 つか本 (祇園四条、京都河原町、三条京阪 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2010/06訪問 2011/08/02

料理には安定感があり女性ファンが集う祇園の割烹 … 『啐啄 つか本』。

【はじめに】
基本的に"啐啄つか本"さんは店内でのデジカメ使用と撮影は基本的に禁止というスタンスを取られています。
身内だけで貸切の時とか早い時間帯で他の客が誰も居られない時は問題はないそうですが、その他の場合には
何方様であろうともオコトワリを貫かれているようで、赤い洋服をいつも好んでお召しになられ"京都 美味案内"
などの著書も発刊されている、かの某女性ジャーナリストさんでさえ最近は同じ扱いを受けておられる様で他の客が
居られる時には料理画像の撮影等、現在は一切御断りされているようですから今回はプライベートでの利用ですが
レビューには珍しく料理画像は1枚もございませんので予め御了承ください(笑)

よって自分の脳下垂体と海馬の中に残った記憶を信じレイティングさせて戴きますが何ぶん日々、稚拙駄文を書き
綴っております身ゆえ當店の魅力を上手くお伝えすることができませんし毎度のことながら美酒を戴きながらのこと
にて記憶違いや勘違いもあるやもしれませんので予めその辺は御了承くださいますよう(笑)

供された料理は先付の"海胆豆腐"から水菓子の"アップルマンゴー"まで怒涛の力作全十四品で下記の順番の
とおりで、海胆豆腐からはじまり、鳴門産の鮑の塩蒸し肝ソース添え、アスパラガスにマスタードソース、鱧と順才の
椀物、能登産の岩牡蠣、鮪トロ浜防風加減酢のジュレがけ、穴子餡かけ寿し、豌豆のすり流しに蒸し帆立、琵琶湖の
鮎塩焼、加茂茄子の揚げ煮浸し、鮪背トロの鉄火ひとくち丼、○(すっぽん)ぞうすい、小玉西瓜、アップルマンゴー、
ほうじ茶で〆という充実の内容でした。

料理は店主である"塚本英雄"氏が全てひとりで作り弟子の料理人が盛り付け供すという完全なる分業制、店主
が弟子の料理人に対して発せられる"お出しして…"という穏やかな表情の中にあって語尾を強める口調が耳の
中に随分と残りました。

デジカメが使えないなら料理に集中して食べるしかない訳であり、冷たい料理は冷たいうちに温かい料理は温かい
うちに戴くとなりますと我々一行は他の方より食べるのが相当早い分、次ぎの料理が供されるまでに合間が空く訳
でありまして、それに気づかれた店主は料理を作る手を早めるも盛り付けと給仕が全く追いつかぬという事態となり、
"大神"さん程の罵倒口調ではないにしろ"早く、お出しして…"の言葉に煽られ急げば急ぐ程、手が追いつかず
焦れば焦るほどに手につかず、で見ているこちら側が何か気の毒になってしまい、急がなくても良いですから… と
労いの言葉をかけかけ三時間超にも及ぶ長丁場の宴を堪能させて戴きました。

供された料理の素材はいづれも上質なものが使われていることは、ひと目見て判りましたし味付けに関しても各地の
修行先で腕を磨かれた"塚本英雄"氏の作られる料理には安定感すら感じました。

凌ぎとして供された"穴子の餡かけ寿し"は、ふわとろに仕上げた穴子を胡麻を混ぜた舎利で台を作りガスバーナー
で軽く炙り餡を上からかけたものでしたが個人的にガスバーナー使いの調理法は余り好まないということもあり、この
一品だけは嬉しくない手法の料理でしたが"鱧と順才の椀物"の吸い地などは出汁使いと塩加減が秀逸、滋味優先
で食べ終えるころに丁度良い按配になるあたりは流石と云わざるを得ません。

東京育ちで整った顔立ちで料理にもキレのある店主、女性陣には人気があって然るべきですが予約がなかなか取れ
ないところが玉に瑕、店主の魅力から味重視というよりは、どちらかと云いますとミーハー系の方にウケるであろうと
思われる店はカウンター全八席、正面の硝子越しに見える坪庭は趣があり良いのですがアジアンテイストの植木鉢
は何ともミスマッチな印象を受けるも凛とした空気が漂う店内の雰囲気は悪くはありません。

次回は画像アップのため八人の面子を揃えカウンター占領状態にて伺うことに致し店を後にした次第であります(笑)

  • 暖簾。
  • 燈籠。
  • 店の外観。

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