©Loroさんのマイ★ベストレストラン 2009

Loro piana。の食べ歩る記 備忘録

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マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

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2009年は食べログ 関西版レストランガイド本の初出版にミシュラン京都・大阪版の発売と何かと関西地区に注目が集まりましたが、
やはり日本という国の美意識が雅やかに凝縮されている街であります京都の日本料理や茶懐石の一期一会の心と研ぎ澄まされた
感性は素晴しく器に写しだされる料理の美しさや五感で感じる味とクオリティの高さ礼節等、総じて京都の店が突出しておりました。
完成度の高い料理を目の当たりにすると背筋がピーンと伸び身震いする感覚を覚えるものでありますが京都にはそういった店が
何軒もあり2009年の食べ歩きでは京都の奥深さを改めて実感させられた次第です。

マイ★ベストレストラン

1位

未在 (東山、蹴上、祇園四条 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2010/08訪問 2010/11/10

"茶懐石"料理店の頂点に君臨される店 … 御料理『未在』。

ちょうど一年振りの"未在"さん。御存知のとおり二年連続ミシュランでは最高位の★★★評価を
受けた店であり全国の食通だけではなく同業の著名な料理人までもが店主"石原"氏の供される
料理を味わいに訪れる店であり全国の頂点に君臨する懐石料理店と云っても過言ではないでしょう。

前月伺った"竹馬"さんの店主"西岡長久"氏の御言葉を拝借すると往時"吉兆"さんに"石原"氏が
弟子入りで入門された際に店主の"湯木貞一"氏は"物凄いやつが今度うちに入ってきたわ…"と
真顔で本当に云ったのだそうであります。

例により外の待合席にて小梅のリキュールが供され、しばらくして店内へ…席に着くと店主"石原"
氏より、ひと組ごとに"ようこそいらっしゃいました"と顔を見ながら、ひととおり軽く挨拶を受けます。

料理は折敷が手渡され飯、汁、先付という茶懐石に則ってのスタイル、自分は二度目ということもあり
特に驚きはないものの多分はじめて伺った方はこのスタイルに一瞬、戸惑われることでしょう~。

全国の銘店の設計を手がけられている杉原デザイン事務所による内装の設え、凛とした空気が漂い
もてなしを受けるこちら側も思わず背筋を正されます(笑)

紅白の水引で結ばれた蓮の葉の中の蓮根餅の先付からはじまり、一文字によそわれた飯と赤だしの
味噌汁、その後に店名を冠した酒を一献、造りは真鯛と蛸、本鮪のトロと大トロ、槍烏賊、鱧おとしの
五種をふた切れづつ、椀物は鮑と鮑の肝の葛湯仕立、焼物は黒毛和牛の炙り、○(すっぽん)の煮凝
りを間に挟んで子鮎焼と焼物が再び、八寸には鯛の笹巻き寿し、鰻の印籠煮、鱧&焼鮎のムース状
の料理、八幡巻に糸もずくの海胆のせ、賀茂茄子と赤万願寺の炊き合わせを戴き食事は土鍋で炊き
上げられたごはんを赤蕪、水茄子の香の物で先ずは戴き次に焦がし湯を茶碗に注いで戴き茶漬風に。
食後の水菓子はわらび餅、店主自ら一服づつ点ててくださる御薄、フルーツカクテルに生姜のソルべ
と戴いてコースはひととおりです。

料理の美しさに目を瞠るものがあるのは云うに及ばずですが使われている器も見応えがあります。

今回は同じ時期に伺ったということもあり供された料理は一年前のものとだいぶ被っているようにも
レイティングしながら思ったのでありますが料理を戴いている際には、そんなことは余り気にもならず、
その辺が"石原"さんの凄いところなのでしょう…、"未だ在らず"="未在"さん。茶懐石に興味
をお持ちの方は一度訪れてみても良いと思います。次回は季節を変え春に伺ってみようと思ってます。

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2009/08のレビュー

"【1111】件目のレビューに最も相応しい京都でひときわ注目を浴びている … 御料理『未在』"。

個人的に【1111】件目の節目のレビューに何処の店をレビューしようかと、ずっと考えておりました。

客の懐勘定を瞬時に見抜き、"こちらには丹波の松茸を、あちらには岩手の松茸を…"と自分のよ
うにボッーとしている客には全く悟られぬように素材の産地や質を変えて特定の馴染み客に"お客
様は別待遇です
"的な京都式愛想のエッセンスを利かせた応対で客の心を巧みにくすぐる東京を
代表する某料理店をもってくるべきか、はたまた日本料理の聖地である京都でいろいろな意味で
今注目を浴びている當店【未在】さんにするべきかと無い頭を悩ませましたが賛否両論あります
"ミシュラン格付本"の京阪神版が間もなく発売されることから年末年始にかけ多くの食道楽の熱い
視線を浴びる京阪神エリアの料理店の中から個人的な節目の通算【1111】件目のレビューに僭越
ながら當店を選らばさせて戴いた次第です。

直近で伺ったのは盆休み初日の八月十一日のこと、京都の友人を誘い所定の時間に伺いました。

午後六時、この日の予約客十名が全員席に着いたところで店主である【石原 仁司】氏が表舞台
であるカウンター内のステージに登場し一礼の後、驚愕の料理コースの幕が切っておろされました。

"【未在】さんは本来、店内や料理の撮影は一切禁止でありますが今回は【1111】件めのレビュー"
に辺り店主【石原】氏に特別了承を得て"本邦初公開"で店内の様子も撮影をさせて戴きました。

料理の画像も何枚か写させて戴いたのですが他店で、その料理スタイルを模擬模造されても店に
多大なる迷惑を掛けてしまいますので自己判断にて掲載は自粛させて戴きますこと御理解ください。

先ずは大きな蓮の葉に包まれ紅白の結び紐で結ばれた先付けが供されますが、この一品目の演出
に大半の方は息を呑みド肝を抜かれてしまうに違いありません。

蓮の葉の紐を解いてみますと葉っぱが上下左右に開き中には"蓮の露"に見立てたプルンプルンの
【蓮根餅】が出汁のジュレと"ずんだ(枝豆)あん"が添えられ供されます。

茶懐石の作法に従ってでしょうか石原店主の故郷である【島根県】の米を使った時間に合わせて炊
きあげた炊き立てたての一口ごはんと順才の赤出汁椀を腹に収めたところで店主よりオリジナル酒
である"未在"が光栄なことに奥の席に座った自分から順に一献づつ振舞われていきました。

赤出汁椀には別皿で和辛子が一口ごはんにも別皿で葉唐辛子が添えられ供されましたが懐石料理
に精通されている賢者の方々は意味が、お解り戴けることと思いますので説明は割愛致します(笑)

そして店主から見た客のイメージに合わせて器が選ばれて盛込まれた【御造り】の鉢が供されます。
涼しげな硝子の大鉢から魯山人の稀少な器まで、さまざまな器が使われています。

この日の造りの内容は【槍烏賊】、槍烏賊の耳に切り胡麻を和えたもの、【明石の蛸】、海を越えて
ボストン沖で水揚げされた【ミナミ鮪のトロ&大トロ】、【鱧おとし】、【明石の鯛】という内容でした。

正直申し上げて割烹や料亭などで供される【お造り】や【刺身】類には余り期待などしておりません。
それは刺身に関しては魚種も豊富に揃う【鮨屋】で食べた方が美味しいに決まっている。と個人的に
思っているからなのですが當店で供された【造り】は、そんな概念を払拭する質の高いものが供され
ある意味うれしい誤算です(笑) 
単なる魚の鮮度が高いとか質が高い。というだけのものではなく、それぞれの刺身に相応しい薬味と
"あしらい"が添えられているということでしょうか。

例えば、脂のりの強い【ミナミ鮪のトロ】には【本山葵の葉】、【山芋の短冊】を添え【針生姜】とおろし
たての【本山葵】、ウリのひとつでもある【出汁醤油の煮凝り】を合わせて食べさせたり【鱧のおとし】は
【もろみ醤油】と【梅肉だれ】、【鯛】は【鯛の肝と柚子胡椒を練り合わせて作った薬味】と【塩水だれ】と
いった具合なのです。ひとつの素材で二度美味しい店主よりの提案です。
それは一般的な常識に囚われない店主ならではのセンスで今まで味わったことのない素材と薬味の
マリアージュを堪能できることが間違いなくできるということです。

その後の【椀物】は【鮑】と【鮑の肝】の大根の葛湯仕立、【マイクロトマト】とトマトと【バジルシード】を
使った【トマトの冷製】、【賀茂茄子とささげと錦糸瓜の炊き合わせ】、【八寸】は団扇の漆器を使い
【鱧の子のムース】と【焼鮎のムース】、【絹かつぎ】、【茶豆(山形だだちゃ豆)】、【八幡巻】、【鯛の笹巻
き寿し】に【焼き大名唐辛子】、小鉢で供された【明石の蛸の吸盤と針生姜のジュレがけ】に【近江牛の
炙り】に【木の芽のペースト】と【辛味大根おろしのソース】、焼物は【子鮎焼】に蓼酢のペーストをのせた
田楽風の料理といった"和洋伊仏折衷"のあらゆる調理法を駆使して造りあげられた料理が、"ジャスト
インタイム"にて供されます。

料理の味は云うものでもなく日本はおろか世界まで視野に入れられた卓越したものであり、京都の
某人気割烹店の店主に"こんな料理は自分には到底造ることができない"と云わしめる程、その料理
のクオリティは驚愕ものの連続であり、これは食べた者だけが理解できることであって文字や言葉で
は到底綴ることのできぬものです。

食事は土鍋で炊き上げられたごはんを胡瓜、赤蕪、水茄子の香の物で軽く戴いた後に "焦がし湯"
を茶碗に注いで御茶漬風にしてサラサラと…。

店主が突然、loroさん 【久絵】ちょっと食べてみますか?というので黙って頷くと、じゃあ特別ね。と
云って40㌔程大の【久絵】が現われ身は軽く炙り、胃袋と腸は炭火焼にして供してくださいました。
炙られた久絵の身の皮ぎしはコリコリとした食感で噛みしめると脂分と旨みが口中にジンワリと広
がって至福のひと時です。

口直しの水菓子は何と三段構え、【10種類のベリーフルーツ寄せ】、【わらび餅】、そして店主が一服
づつ点て順に供される【お薄】、〆にさっぱりとキレのある【生姜のシャーベット】で今宵の茶懐石の
コース料理は、ひととおりとなりました。

當方の稚拙なレビュー表現では残念ながら當店の素晴らしさを全てお伝えすることができません。

論より証拠でビジュアル画像でご覧戴けないことが残念でありますが前述したとおりの問題発生が
懸念、思慮されますので、どうか御了承ください(笑)

【日本料理】に関しましては間違いなく"西高東低"という流れは揺ぎ無い事実ではないでしょうか。

特に京都の日本料理店の層の厚さや奥行きの深さは東京の日本料理店の比にあらずと感じます。

本当に心から感動する日本料理を喰らうのなら、やはり京都に足を運ぶしか術はなし。ですね。

日本料理をこよなく愛される方は是非、京都へ、そして都内の多くの次世代を担う日本料理店の
店主がこぞって京都で伺ってみたい店として真っ先にその名をあげる【未在】さんで五感をフルに
使い、その料理を味わってみてください。料理とともに使われている器も良くご覧になってください。

今まで思い描いていた日本料理の概念が根底から覆されることと思います。

日本を代表する京都の老舗料亭の店主や祇園料理倶楽部の一部の重鎮さんからは、"未在は、
やり過ぎ
" という声も発せられているそうですが、基本を踏まえた上での"やり過ぎ" は客としては
ある意味歓迎すべきことではなかろうかと思う次第です。

今、現在、京都に措いて自分の背筋がピーンと伸びる思いがする料理店は下鴨にある【吉泉】さん
と円山の【未在】さんの二軒、この二軒の室礼と料理のセンスは都内の如何なる日本料理店より
現時点では輝いていると思います。

料理には二種類の酒蔵で造られている"未在"の名を冠した日本酒がベストマッチ、友人と二人で
ビールと、この二種類の未在を六合も呑んで二人で六萬円也。

決して安いお値段ではありませんが何故か"安かった"と客側が感じてしまうから不思議なんですね。

あとは、ご自身の眼と舌で… 

勘定を済ませると店主と御弟子さんの丁重な見送り、御弟子さん二人が提燈を提げて円山公園の
階段まで送ってくれました。これも京都ならではの風情と妙味です。

  • 先ずは入口で小梅のリキュール。
  • 店の外観。
  • 杉玉。旨い酒が呑めそうな気がしますね。

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2位

京懐石 吉泉 (出町柳、元田中 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2009/07訪問 2009/09/09

水の聖地【糺の森】に佇む【美味探究】の料理店 … 京懐石 『吉泉』。

賀茂川と高野川が合流する中州に広がる【糺の森】は古くから【水の聖地】と語り継がれています。

"日本料理の全ての根幹を成すものは【出汁】であり、【出汁】のベースと成るは聖なる【水】である。"

と云っても決して過言ではないのではないでしょうか。

【水の聖地】と語り継がれる下鴨【糺の森】に佇む知る人ぞ知る【美味探究】の料理店【吉泉】。

予約時間が近づいてくると客の出迎えの為に道路端には、お弟子さんが立ち門をくぐり入口に足を
踏み入れると何と"裃姿"の案内人が出迎えてくれるという現代社会から時空を越えた世界に一瞬、
タイムトリップしたかのような錯覚さえ覚えてしまう出迎えに先ずはド肝を抜かれてしまうと思います。

京都には長い歴史を誇る素晴らしい料亭や格式高き割烹などの日本の料理界を代表する銘店は
数多あり、そのような店に伺うと客側といえども思わず背筋がピーンと伸びてしまうという経験を誰し
も一度や二度は経験したことがあると思いますが自分がそれを経験したのが當店でありました。

料理店の出迎えで【裃】姿ということにも驚かされてしまいますが一輪の花、一幅の掛軸という室礼
と徹底された一期一会のもてなしの心と姿勢は、ある意味、他に類をみないのではないでしょうか。

舞台は六人収容の個室 "階の間"と名付けられたカウンター席に當方ひとり、店主【谷河吉巳】氏
の創りだす料理を さながら店主との真剣勝負、五感をフルに使いきり堪能させて戴いた次第です。

今から丁度、十年前の七月に店主は一世を風靡した料理バトル番組【料理の鉄人】にて旬の食材
の【鱧対決】で当時の"和の鉄人"であった【森本正治】氏に審査員満場一致にて勝利を収められ
たということは親愛なるレビュアーであるウイーンの森の物語どのがレビュー文中で書かれておられ
るとおりの事実。

今回は予約の際に十年前の【鱧対決】で実際に作られた【鱧料理】を可能なかぎり再現して戴きたい
旨を伝えており期待に胸を膨らませ【鱧】+αの料理を戴きに伺いました。

"階の間"の雰囲気は臨場感溢れるカウンター割烹とも中庭の造園を臨みながら味わう料亭の趣き
とも明らかに異なる雰囲気であり、まるで道場の中で心静かに対戦者の到着を待つような心境と凛
とした空気が漂っております。

さて、供された料理はアップした画像をご覧戴いた方が當方の稚拙な文章表現よりお判り戴けると
思いますが要所要点のみ簡単に書き記させて戴きます。

先ずは乾燥した【莫大】を水戻しして膨張させた【莫大海】を裏漉しして出汁のジュレを加えたものが
供され、これを一気に呑む干しました。【身土不二】に基づいた薬膳料理から入ってこられました。
通常【莫大海】は造りや刺身のあしらいとして添えられるものと思っておりましたが、こういう使い方
もあるんですね。シャリシャリとした独特の食感を出汁のジュレとともに程良い喉越を愉しみました。

瓶ビールは個人的に好きなハートランド一種類のみ置かれており、これは何気に嬉しいことだった。

そして蓮の葉の上に、ほうずきが五個、無造作に並べられたものが供されました。
最近、鮨屋の口直しに最後に供す"食用のほうずき"が、いきなり供されたわけではありません(笑)

ほうずきの中には、【煮鮑】や【鱧の焼霜】、【稚鮎の甘露煮】、などの前菜が仕込まれておりました。
緑と赤と云う自然の色彩を愛でながらも、なかなか芸が細かい演出と供し方に感心させられました。

【とうもろこしのすり流し】所謂、"和製のコーンポタージュ" となるのでしょうが【とうもろこし】には胃腸
の調子を整えるという効用があるそうですから、やはり薬膳としての食を考えられているのでしょう。
冷製仕立ではありますが極端に冷た過ぎるものではなく、とうもろこしの自然の甘みが最も舌に感じ
られる温度を計算して供されているようです。
なめらかな口あたりで、ひと口、口に含むと、ふっーと肩の力が抜け気持ちが、ほっと癒されました。

そして季節の出逢いものである【鱧】と【松茸】の椀代わりの【土瓶蒸し】。
近頃は【鱧】や【松茸】の【小鍋立】のスタイルや吸い地を張って【椀物】として供される店が主流の中
敢えて【土瓶蒸し】として供されたようです。確かに【小鍋立】や【椀物】として供された方が視覚効果
も食べ易さという点でも理に適っているようにも思いますが、この【土瓶蒸し】で味わう香味は何もの
にも代え難いものでした。

【松茸】と【鱧】の【土瓶蒸し】といっても細かく割かれた松茸が申し訳程度に少し入っているようなもの
では松茸の香りのたち方も弱いのでしょうが當店で供された【土瓶蒸し】の中には、これでもかという
程、【松茸】が隙間なく詰め込まれておりました。
時期的に流石に未だ【丹波産】とはいきませんでしたが【岩手産の早松茸】がたっぷり使われており、
この味には酢橘も何も不要ですし折角の松茸の香りを柑橘で消してしまうのは勿体なさ過ぎますね。

無論、柑橘は最後の一杯に香り付けする程度にだけ使い大半はそのままの味で愉しみました。
土瓶蒸しの【吸い地】の味は店主曰く "真味只是淡"。もてなしをきわめた真の味とのことですが、
確かに、その言葉とおり絶妙な味わいのものでした。

【鱧】のふんわりとした食感と淡白な味、【松茸】のしっかりとした歯ごたえと何ともいえぬ香り、互いの
良さを存分に引き立てあうこの二つの素材は、まさに最高の"出逢いもの"ですね。

【造り】には【鱧おとし】、【烏賊】、【生とり貝】の三点盛。
この【造り】の盛合せ、飾りの割りに内容は大したことがなさそうな構成にも見えますが、この三点盛
には店主の思いが込められており【生とり貝】は【舞鶴】のもの。
賢者の方であれば、それが如何程の値のするものか御理解戴けることでしょう~ 。
下手な産地ものを名乗る本鮪や伊勢海老などの甲殻類を供されるより余程有難かったです(笑)
云うまでもなく梅肉をのせられた【鱧おとし】は美味ナリです。

次に供されたものは【御凌ぎ】で【鱧寿司】と箸休めの【鱧の玉子】です。
【淡路産】の身厚な【真鱧】に拘って使っていると話されておられましたが これ本当に身厚の鱧です。
江戸前の高級鮨店のように"指拭き"とともに供されましたが、こんなにも食べ応えのある【鱧寿司】
は随分久しぶりに口にしましたし、こんなにも【鱧寿司】が美味しいと思ったことも記憶にありません。

【鱧の玉子】は塩漬けしたものを青豆と合わせられたものであり箸休めには最高の一品でした。

続いての料理は【鱧しゃぶ】ですが町方の料理屋さん風にカセットコンロの上に鍋をかけて、しゃぶ
しゃぶ。というのでは流石に味気なくこの場の雰囲気も台無しになってしまいます。

風呂桶のミニチュア版のようなものが運ばれてきたと思ったら、これはまさしく樽、桶で有名な京都
【たる源】で作られた風呂桶型の【鱧しゃぶ】用の木桶です。
これで、"しゃぶしゃぶ"すると鱧の身も思わず、"いい湯だな"状態になるでしょう~
いやぁとても趣ありますよ~ この木桶は…。
【鱧】の骨切りも正確な等間隔で完璧な状態であり口には全く骨があたるということもなく最高です。

そして季節のものと云うことで【稚鮎焼】が供されましたが、これまた、ひとひねりされていました。
【稚鮎】は【琵琶湖】もので【御茶の葉】を燻し焼にされた鮎焼は香味がひと味もふた味も違います。
勿論、頭からサクサクと尻尾の先まで戴くのですが【茶葉燻】の香りと独特の風味が酒盃を傾ける
速度を妙に速めさせるものでした。奨められるままに酒盃を傾けると完全に呑み過ぎになります(笑)

そして食事には"料理の鉄人"の審査員全員が無言になって食べたという伝説の【鱧ぞうすい】です。
細かく刻まれた【鱧】と【半熟玉子】のメインのぞうすいです。
あっさりとしていながらも濃厚な旨味で、後を引く味わいのぞうすいであり無言になるのも解ります。
更に【半熟玉子】が一層ぞうすいの味を円やかな味わいにする役目をきっちりと果たしておりました。
これは文句なしに美味しかったです。

【鱧ぞうすい】とともに供された【香の物】もぬかりのない味わいのものであり中でも加賀胡瓜と瓜の
浅漬けはとても美味しいものでした。

食事が終わり【水菓子】が供されましたが最近、二種類の水菓子を供する店も珍しくはありませんが
當店は三段構えです。
【グレープフルーツゼリー】、手造りの餅系の【和菓子】と【干し菓子】を店主が心をこめて点ててくだ
さった【薄茶】とともに味わい今宵の料理は、ひととおりとなりました。

當方、"料理の鉄人"の審査員ではありませんがジャッジメントは文句なしに店主の完全勝利です。
今宵は感服いたしました(笑)

食後に、オトモの車が到着するまでの間、ほうじ茶を啜りながら店主としばし談笑させて戴き帰り際
には御土産にと【ちりめん山椒】を持たせてくださった。

何とも云えない至極、贅沢な時間を過ごさせて戴きました。

オトモの車が到着し一礼を述べ席を立つと表には御弟子さん三名の他に店主、女将、裃の案内人
の六名での御丁寧なる見送りをして戴き店を後にしました。

大喜久】さんの店主の卓越した包丁使いで供される【鱧つくし】の料理のとは、また違った意味で
感心させられましたし、料理の凄みとキレでは【未在】さんにも勝るとも劣らない凄みのある圧巻の
料理を供して戴ける店であると思います。

当然のことながら料金もそれなり要しますが銀座の【京料理】を謳う店とは味、質、もてなし、設え
ともに別格であり、本来【京料理】とは京都の水を使い京都の空気を吸いながら味わう料理である。
という当たり前のことを教えてくれる店ではなかろうかと思われます。

  • 愛でしき自然のスタイルで供される前菜
  • ひざ掛け。
  • 一輪の花、そしてバカラのグラス。

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3位

もめん (心斎橋、長堀橋、大阪難波 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2009/05訪問 2009/05/25

レビュー1000件めの記念にぃ~v (^o^)/ 【大阪で一番好きな料理店】 … 『もめん』。

★レビュー通算1000件めのフシメに、大阪で一番好きな店を書かせていただきましたぁ~☆

☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・

ぉ店ゎ、大阪のミナミ、そごうや大丸がある心斎橋の通りから一本裏手に入った通りからぁ~
さらに一本ロージーにはいると左手にひっそりと構えられています♡
ロージーの曲がり角には焼鳥屋さんがあるのでお鼻の効く方はわかると思います。

このぉ店を知らないとミナミでゎ、ぁなたゎ、モグリちゃいまん?云われちゃうんですよ~。

ただぁー いつでも誰でも入れる ぉ店ではないので事前に予約が必要な店なんですぅ~☆

飛び入りでゎ、絶対に入ることができないしぃー、ぉ金にものを云わせても絶対に入れません
ので、ご注意くださーい。

店主の【木綿清次】さんゎ、客を選好みするような方ではありませんが、カウンター席9席ゎ、
いつも激しい席の争奪戦となりぃ実質、一見さんゎ、入ることができないんです(><)

木綿さんゎ、大阪を代表する日本料理界の巨匠なので、ここの料理を食べずにしてぇー
大阪の日本料理ゎ、何も語ることができないと思います~o(^o^)o

そて、この日のぉ料理ゎ、勿論ぉまかせ料理です(●^o^●)
このぉ店でゎ、壱萬弐千円のぉまかせ料理しかありませんので我が侭云ってもダメです(><)

一品めのぉ料理は、【三陸のぁわびと白芋茎を炊いたん】が供されましたぁ~☆
ぁわびゎ、これ以上でもこれ以下でもダメなぁ柔らかさに仕上げられたものでぇ、こんなにも
美味しい、ぁわびゎ、久しぶりにぃ戴きましたぁ~
ムニュムニュしたぁわびとぉ白芋茎のシャキシャキシャキーンとした食感は、ぉみごとで、ぉ出汁
の味ゎ、文句のつけようがない程の美味しさでしたぁ~o(^o^)o
ぁわびの肝の滋味溢れる味も最高でしたぁ~v (^o^)/

二品めゎ、【鯛のにゅー麺】を戴きましたぁ。
麺ゎ、とても細いけど手延べなので伸び伸ーびしていませーん。
【鯛】ゎ、ものすごく味があり、ぉ出汁もぉいし過ぎて全てゴックンしちゃいましたぁ~。 
四国の某料亭で以前たべたぁ【鯛そうめん】もぉいしかったけれど、もめんさんの【にゅー麺】も
最高でぇ→す☆

そして三品めゎ、【めいた鰈と海胆のぉ造り】でしたぁ。
【鰈】ゎ、さっきまでビンビンしてたものでコリコリがすんごーーい☆
【海胆】ゎ、薬臭くないもので、すんごーーく甘くて頬っぺたが、ぉちちゃいそう~でしたv(^ ^)v

四品めゎ、【鰊と茄子の煮浸し】です。
なーんだ【鰊】かとぉ思いの方もいらっしゃるでしょうが、そこらの店の【鰊】とは手間が違います。
【鰊】はただ煮たものでもなく炊いたものでもなく手間のかかる【蒸し焼き】なんです。

煮炊きすると骨も柔らかくなり余り気になりませんが【蒸し焼き】の場合は小骨をピンセットで
一本一本ぜーんぶ抜きぬきしなければなりません。
とても気が遠く手間隙のかかるぉ仕事ですが、もめんさんの、ぉ料理は一見地味に目に映っても
実ゎ、とても丁寧な前仕事をされたぉ料理が戴けるので僕は大好きなんです。

五品めゎ、【稚鮎のふらい】でしたぁ。一寸豆で彩が添えられ、ぉいしそうです。
稚鮎さんのぉ腹の部分にだけパン粉をつけて揚げたものですが火の入れ加減が神ワザです。

そして、ごはんゎ、ぴったりと時間を合わせて土鍋で炊いた白い銀舎利の御飯です。
ぉ米ひと粒ひとつぶがピーンとたっていてぉ米は硬すぎず柔らか過ぎず甘みがあって最高です。
ごはんゎ、勿論おかわりできます。

ぉかずにゎ、ふっくらと焼かれたぷっくりとした【太刀魚の照焼】で、ぉ醤油の香ばしさで食欲が
すすんじゃいましたぁ~★

ぉ味噌汁ゎ、赤出汁で山椒の味がピリリと効いており好みの味でした。

水菓子のメロンちゃんとイチゴちゃんを戴き、今宵もご馳走様でしたぁ~★

もめん】さんのぉ料理ゎ、量と見栄えだけで、ドキドキさせるようなぉ下劣なものではなく、
店主の卓越したワザと積み重ねられた経験に基づき料理素材を最高の状態に昇華させて、
食べさせてくれる、最高のぉ料理です。

京都のカウンター割烹とは、また違った意味での魅力を感じる店であり、この店で食事できる
ことに、僕ゎ、幸せを感じずにはいられません (^o^)丿

ぉ酒の品書きゎ特になくぉ料理にあう酒を店主が選び供してくれますが、【黒龍】をはじめ
【磯自慢】や【菊姫】などの大好きなぉ酒がひととおり揃っているのも魅力のひとつです。

もめん】さん大好きです~ (●^o^●)

☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・☆、。・:*:・゚`★.。・:*:・

イラッとくる文章に最後まで、お付き合い戴きまして、ありがとうございました。

最後までお読み戴きました方、どこのどなたかは存じませんが愛してます。

俗に云う五月病で、思考回路と言語中枢に障害をきたしてしまったようです。

レストランレビューとお取り寄せレビュー合わせて1,000件アップに免じてどうかお許しください。

僕は、正真正銘の【loropiana】 であり影武者でもゴーストライターでもありません。

  • 三陸産の煮鮑と肝と白芋茎を炊いたん。
  • 御椀。
  • 鯛にゅー麺。

もっと見る

4位

萬み高橋 (勾当台公園、青葉通一番町、広瀬通 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2010/12訪問 2011/05/12

"萬み"にて四季の味を喰らう至福のひととき … 『萬み高橋』。

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               がんばろう 八戸・岩手・宮城・福島、力を合わせて復興を…
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大晦日を数日後に控えた十二月、仙台空港発の翌朝一便めで京都の寝城に戻る前泊で兼ねてより一度
足を運んでみたいと思っていた『鮪と野菜と日本酒』をウリにされた"鮪菜酒酎てなんご"さんで撃沈寸前の
鮪料理』を供されてしまい、どうにも収まりがつかなくなってしまった。
翌日の出発が早いとは云えこのまま仙台の夜を〆ることは何か腹ただしく思いホテルへの帰り道にあり
国分町で最も自分が信頼の置ける"萬み高橋"さんへ遅い時間に予約なしで立ち寄らせて戴いた。

予約なしではあったが店に顔を出すと女将さんがニッコリと迎えてくださり店主や弟子の健太郎くんも歓待
してくださった。

京都へは何時?』という店主からの問いに明日からと答えると驚いた顔をされていたけど店主も十一月の
半ばに上洛し"萬亀楼"さんへも顔を出してこられたと話されていた。

伺った時間が時間だっただけに萬みさんもカウンター席はひと段落し自分ひとりで占領させて戴いたが奥の
座敷ではプロパー系の接待と思われる数人のセンセーが居られた。

ところで何処かで食事はもう済ませて来たのか?』と問われたので正直に先に立ち寄った店のことを話す
と軽く一笑に付されてしまったのであります(笑)

材料は使い切ってしまったけど、アルモノで軽くつまめるのを少し出すわ』ということで無事に仙台の夜を
仕切り直すこととなったのでありますが自分的には、このアルモノこそがお宝なのであります。

一応、供された画像を追加アップしましたが、これはアルモノで即興で作ってもらったものなので参考には
されないでください(笑)

料理は『地物のなめこと三つ葉の椀』からはじまり『』の造りに本来は店主のマカナイになる筈だった『
の端材、この鮪、見栄えは余りイケテませんが味は先に立ち寄った店の鮪とは格段に違いきっちり鮪本来
の味がしました(笑)、『』は寝かされて旨みを最大に引き出された食べ頃のもの。

焼物は一夜干しの『柳鰈』を軽く炙ったものに大根おろしを添えて、炊き合わせは『』と青菜とお揚げさんを
炊いたん。で大好きな『黒龍』の純米吟醸と味わい先の悪夢のような出来事も忘れ今宵も満足、満腹。

京都の話題で盛り上がり仙台の夜は静かに終わりを告げるのでありました(笑)

余談ではありますが凱旋門ビルの向かい側にある公園のイルミネーションがとても美しく、しばし足を止め
見とれてしまいました。

明朝は仙台空港より朝一の便で伊丹空港へ向けフライト、そしてエアポートリムジンにて一路、京都の寝城
へと…。年末年始はゆっくりと京都にて過ごすのでありました。

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2009/09のレビュー
當店は定期的に再訪している店であり店主の作りだす料理は一見シンプルな料理に見えますが、
実に滋味深い味わいの料理であり "東北で右にでるものはなし" ではと真面目に思っております。

最終レビューより一年以上経過致しましたので先月伺った際に供された【おまかせ料理】の最新の
料理の画像の追加アップとレビューの更新をさせて戴きます。

尚、レビューの文字制限の関係上、個々の料理の説明は割愛させて戴きますが料理は【甘鯛の
昆布〆】からはじまり【鯛茶漬】まで全十二皿、特筆すべきは【ぐじ(甘鯛の昆布〆】、そして當店の
スペシャリテのひとつである絶品の【鮑の柔らか煮】、そして〆に供された【鯛茶漬】の三品です。

昆布の旨みを纏った【ぐじ(甘鯛)の昆布〆】は見た目も美しく身も程良く締まっており振り柚子で
香りづけされた身はそのまま口にしても卸したての本山葵を載せて口に運んでも最高です。
特に甘鯛の"腹身"の部分の旨さに悶絶しました(笑)

【鮑の柔らか煮】は大きな鮑を丸ごと一個、贅沢に使われたものであり鮑の煮汁を煮詰めて作ら
れた"旨みのジュレ"が鮑にかけられ供されました。
鮑の柔らかさといい滋味深い鮑の味といい、これ以上の【鮑の柔らか煮】は世の中に存在しない
のではないだろうか。と思える程、五感すべてに訴え身震いするような味わいのひと皿でした。

鯛の身を削ぎ切りにし薄口醤油をからめられ器のごはんの上に綺麗にならべられ擂りたての胡麻
がふられたものの上から熱々の出汁が注がれ更に風味のある焼海苔と卸したての本山葵を上に
のせ"海苔蒸し"風の〆の【鯛茶漬】。
ほんのりと火が入った鯛の身の旨さは天然ものの鯛ならではの旨さで〆には最高の一品でした。

その他の料理も素材の旨みを最大限に引き出した直球勝負の料理であり、これぞプロの料理人
が造り出す "御料理" と呼べるものではないでしょうか。

先日、立寄った京都の【萬亀楼】さんの大女将からの言伝と同店出身で以前、三条京阪上ルに
店を構えられていたという【萬井中川】さんの店主との関係についての確認の件もあって今回は
再訪させて戴きましたが四季の移り変わりの都度に通いたい料理店です。

京都の御大レビュアー氏より他店のレビューに書き込まれた、その中川氏とは當店の高橋店主が
萬亀楼】さんの二番手として腕を揮われている時の板場の一番下におられた方であったという
ことも判明し、すっきりとした次第(笑)

単に"腹を満たす食事"とは一線を画す"御料理"を口にできる仙台の方が羨ましく思う今日この頃、
塩竃に店を構える料理店【千松しま】さんとともに東北を代表する京仕込みの真っ当な料理店です。

翌日の昼は仙台で食事を済ませ夜には再び京都に上洛し気になっていた店を彷徨い歩きます(笑)
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2008/06のレビュー
仙台の街中で夜に旨いものを食べるならば當店【萬み高橋】を外すことはできないと思います。

店主の【高橋 正博】氏は京都の老舗料亭である【萬亀楼】さんで腕を揮われていた方であり、
旬を食らう】"萬みの四季"と云う某新聞に連載されていた人気コラムを一冊の本にまとめられ
た著書も発刊されている。

さて、この日の昼は【小判寿司】にふらりと訪れ鮨を喰らった後、夜は仙台出張が決まった時点
で予め予約をしておいた當店【萬み高橋】の暖簾を久しぶりにくぐってみた。

店は仙台の夜の歓楽街、国分町の立派な門構えの飲食店ビルの一階右手奥に構えられている。

先ずは冷えた瓶ビールで喉を潤し料理はいつも通り店主の【おまかせ】でお願いした。

目の前の厨房は良く手入れが行き届いておりピカピカ輝き、いつ伺っても感心させられてしまう。

この店に一歩足を踏み入れカウンター席に腰を下ろすと京都の祇園あたりのカウンター割烹に
居るような錯覚を覚えてしまうのは決して気の所為ではない。

當店の【おまかせ料理】は完全なストップ制であり何品か料理が供された後に腹の具合を尋ね
られ客側の箸の進み具合と食べ具合を見計らって頃合で軽い食事で〆となる流れとなります。

京都の某割烹料理店を【○○劇場】と喩えたことがありますが當店も店主が見事な手捌きを
見せてくれる、まさしく【萬み劇場】を体感することができる店です。

今宵の"萬み劇場"の幕開けは、【干し貝柱】と【若布】を炊いたものから供されました。
云うまでもなく【干し貝柱】も生の帆立貝柱から店主の手によって作られたものであり、この出汁
はとても濃厚であり出汁の香りが鼻腔の奥を強烈に刺激、汁を口に含むと口元が思わずニヤリ
と緩んでしまう旨さでした。

続いて【ふっこの昆布〆】。昆布で飴色に色づいた【ふっこ】。【ふっこ】とはご存知のとおり【鱸】の
幼魚にあたる魚であり身の質は鯛に似ており柔らかくて癖もなくあっさりしている白身にしっかりと
昆布の旨みが身の隅々まで滲み込んだもので、"あーあ~本当に旨いなぁー"酒だー酒をおくれと
体が求めてくる味わいです。

【磯自慢】の純米大吟醸を湯呑茶碗程の大きさのある猪口に注いで酒肴とともに戴く至極の時間。

【焼物】は【赤むつ】所謂【のどぐろ】です。
身を口に運ぶと"ジワッー"と旨みと油脂分が口の中に広がる様は、これぞ "口福の瞬間"です。
香ばしく焼きあげられた皮目の部分は "のどぐらー"には最高の御馳走です。

【焼物】と【揚物】の合間には【大根おろし】が供されますが、これは焼魚に添えて戴くも良し、大根
おろしだけを口にするも良し、自分は揚物を口にした後に大根おろしを口に放り込んで戴きます。

そして【揚物】は夏野菜の代表格の【隠元】を【天ぷら】で供されましたが、この【隠元の天ぷら】は、
乾いたままの天ぷら粉を【隠元】に先にまぶすように付け後から水を少量注し和えるように混ぜ合
わせてから油で揚げられたもので溶いた天ぷら粉に種をつけて揚げる天ぷら屋の天ぷらとは揚げ
方が全く違うのですが余分な衣もなくて素揚げに近い状態で揚げられたものも、とても美味でした。
塩で戴くのも良いでしょうが何もつけず熱々を口に放り込み後から大根おろしを口に入れても美味。

揚物の後に【椀物】代わりで【鯛の潮汁】が供されました。
鯛の頭は、まな板の上、包丁でザクッザクッと音を立てながら割られ熱湯に軽くくぐらせ湯霜にされ
た後に氷水でザザーと〆られ昆布出汁に酒が適量足され灰汁をとりとり炊かれることしばし綺麗に
澄んだ【鯛の潮汁】の登場となるのですが何と云う上品な味わいでしょう~見ている側からはとても
簡単に作られているように目に映るのですが…。

潮汁に続いて供されたのが店主お得意の通称【玉ちゃん】と呼ばれる小ぶりの【新たまねぎ】を
出汁でコトコト炊かれたものと【茄子の煮浸し】が供されましたが、この単純に見える【玉ちゃん】は
半端じゃないくらい美味なのです。
玉葱を鯖のなまり節などと一緒に炊かれたものも好きですが【玉ちゃん】はとても滋味深い味です。
そして【茄子の煮浸し】ですが【茄子】と【油】は物凄く相性が良いことは誰でも知っていることですが
【油煮】にされて出汁が利いた、この煮浸しはキリリと冷されており言葉にあらわせぬ美味しさです。

いやぁ~供されるもの全てがストライクゾーンど真ん中にビシビシ来ています。
そうこうしていると店主が "loroくん河豚食べる?"と、えっ この時期に河豚ですか?と言葉を返す
と【夏河豚】だけど【天然のとら河豚】だけど良かったら食べてみない?と… 勿論、戴きます(笑)
【河豚】は寒い時期に喰らうものと勝手に思い込んでいましたが、この河豚も歯に小気味良い弾力
と適度な噛み応え… そりゃー寒い時期の【とら河豚】には適わないとしても"養殖もののトラちゃん"
とは別格ものです。

ここで店主より腹の具合の確認があり、"もうちょっと入りますよー"と答えると【鱧】いってみる?
【鱧】ですかぁ~ 勿論いくいくですよー、目の前でザッザッ、ザッザッと骨切りの音を響かせながら
捌かれていく様を眺めていると、まるで京都の料理屋さんにでもいる錯覚を覚えます。

【鱧】を出汁で軽く食べてみて…と云って出汁で軽く炊かれた【梅雨 鱧】も滅法美味しいものであり、
出汁は生臭さがあるかもしれないから"呑まなくても良いよ"と云われるもゴクゴクと全部戴きました。

"お腹の具合はどう?"、"えーぼちぼちです"と云ったところで、これ何か判る?と供されたのが
【醍醐】でした。奈良から送ってもらった【酥】と話されておりましたが【酥】⇒【醍醐】』じゃないですか
と云うと、うんうんと頷く店主。

じゃぁこれ食べてみて何か判るかな?と供されたものは【あらそ】。
【のどぐろ(赤むつ)】の中骨や軟骨をコトコトと炊いたものなそうで【萬亀楼】時代は【まかない】で
こう云うものを作って食べてたんだよ。と教わりましたが、これって酒のアテには最高な一品です。

〆の食事には【胡瓜】と【大根】の【香の物】と小振りの【塩むすび】が一個供されました。

これも単なる【塩むすび】と思いきや流石にそんな訳はなく、ひとひねりあるものでまたまた感心。

熱い【ほうじ茶】を戴いて今宵の【おまかせ料理】はひと通りとなりました。

萬み高橋】劇場のかぶりつきの席で実に愉しい二時間半を過ごさせて戴くことができました。

自分の知るかぎりでは現在、東北の地で當店店主の右に出る料理人は居られないと思う。

総合評価は本当は★★★★★(5.0)でも良いのだけれど劇場のかぶりつき席八席の内、左側から
三席が喫煙席となっており今回も紫煙を燻らせる方と遭遇してしまったので雰囲気の評価を減点し
総合評価を ★★★★☆(4.5) とさせて戴いた次第。

  • 地物のなめこと三つ葉の椀。
  • 鮃と鮪のブツ(笑)
  • 鮪は見栄えはブツやけど味は間違いなし(爆)

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5位

日本料理 櫻川 (京都市役所前、三条、三条京阪 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 ¥8,000~¥9,999

2010/07訪問 2010/10/10

前田料理長の斬新な料理センスに【料理の精華】をみる … 『木屋町 櫻川』。

おことわり】當店は現在、料理ならびに店内の撮影は"全面禁止"となっておりますので悪しからず。
供されます料理の傾向につきましては以前戴いた料理画像を御参照戴き想像して戴ければ幸甚です。

ミシュラン★獲得後に多くの客が全国より訪れるようになり店に入るなりデカイ銀カメでフラッシュをパシャ
パシャと焚いて連写される方や携帯のカメラでピロピロロ~ンと音を奏でながら料理画像を写される方が
激増されたことにより店内での一眼レフのカメラは無論デジタルカメラや携帯電話のカメラなどの使用は、
貸切又はそれに類ずる状態の時以外は"全面禁止"というスタンスを現在、已む無くとられております。

自分も良く料理画像を撮らせて戴きますが、先ず撮影の了解を求めノーフラッシュ、無音という最低限の
ルールは守らせて戴いております。

當日のカウンター席の過半数は當方の顔見知りの客と友人がならんでおり尚且つ、自分は一番奥の席に
座らせて戴いたので撮っても良い状況ではありましたが、ここで新しい画像を追加アップすることはそれを
モトにあれこれと店側に難癖をつけられる方の口実とも為り兼ねないと判断して自重させて戴きました。

現にアップされた画像を盾にとって料理の皿数が少ないという御夫人や素材の使い方、品数が少ないから
作り直せなどという滅茶苦茶なクレームを発せられる、いい年をした旦那衆も居られるというから驚きです。

Tabelogを利用されている賢者の方々にはそんな方は居られぬとは思いますがファーストフードの店や全国
連鎖の画一的な食べ物を供する店は別としましても、ご贔屓の馴染とイチゲンさんが全く一緒の扱いという
ことはないと思いますし、まして此処は京都でありますから…、確かに一期一会という言葉もありますが一度
の訪問で全く同じように美味しい思いが出来るものと考えること自体、如何なものかと…(苦笑)

(閑話休題)

この日は祇園祭のハイライトの"山鉾巡行"、夕方から"神幸祭"三基の御神輿がそれぞれのコースを巡行
して盛り上がる一日であります。

料理画像の代わりに"やました"さんと當店"木屋町 櫻川"さんの間で錦の御神輿が最高潮を迎えた画像
をアップしておきますので暑くて熱~い夜であったことを、そちらから感じ取り戴ければ幸甚であります。

同時刻にマイレビュアーさんが"やました"さんで食事をされていることで御神輿が店前を通るころに店を飛び
出す約束をしており、その通り店を飛び出してみたのですが店主の山下さんとはバッタリと逢ったのですが、
"やました"さん御贔屓のTちゃんさんとはお逢いすることが出来ず残念(笑)

料理は焼鱧を鱧の骨で摂った出汁のゼリーを混ぜ合わせて戴く料理からはじまり鱧の子、蛸の子、半生
のこのこ、新薩摩芋の炊き合せ、"鱧と松茸のしゃぶしゃぶ"、あこう鯛の造りと由良の海胆を車海老から
作られた海老塩で味わい、"(すっぽん)の飛龍頭を○出汁"で堪能、揚げたてで熱々の"鮑の素揚げと
松茸のフライ"に冷たい水茄子と牡蠣の燻製を添えられた一皿の味に呻り、鯉を揚げたものに白芋茎と
冬瓜、食事は"鱧の粽の蒸籠蒸し"、水菓子はフライパンで温めた白桃とアイスクリームという内容の料理。

いづれの料理にもキレがあり、いつものことながら新しき調理手法に果敢に挑戦されている姿勢には感服。

画像をアップしないという約束のもと"しゃぶしゃぶ"と"松茸のフライ"に使われた"松茸"の量は誰が
見ても尋常ではないことになっておりました(笑)

"鱧と松茸のしゃぶしゃぶ"は軽く炒って甘みを引き出した玉ねぎベースの和製オニオンスープのようなものの
中を泳がせて戴くのですが鱧と松茸の旨みが溶け出したつゆは後で出汁でのばして一品として供されます。

松茸の時期ともなれば松茸の天ぷらを供される料理屋さんもありますが松茸は水分を抜いてゆく天ぷらより
玉子でコーティングし風味と旨みを閉じ込めたフライの方が個人的に断然に美味しい調理法と思います。
この揚げたて熱々のフライを単にウスターソースで味わうのも一興ではありますが車海老の殻から抽出した
海老のエキスと岩塩で作られた"海老塩"で食べさせるあたりが前田さんの泣かせるところ。

京都には新進気鋭で感性豊かな若手料理人から天才や神様とまで崇められるベテラン凄腕料理人さんまで
事欠かぬほど数多の料理人が居られますが當店の料理長も間違いなく今後益々注目を集めることでしょう。

六月六日に挙式を挙げられた"前田料理長"、奥様は現役の美人ソムリエであり前田さんの実兄も現役の
ソムリエ、そんなことからも水菓子の日仏融合テイストの味わいは一層ブラッシングされていくことでしょう(笑)

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2009/07 再訪レビューと画像の追加アップ。
前回は、昼に【とくを】さん、夜に當店 木屋町【櫻川】さんへ伺わせて戴きました。
今回の上洛では前夜に【とくを】さん、翌昼にこちらの【櫻川】さんへと昼夜真逆にして
の再訪となり、この日は大阪から朝、京都に上洛された敬愛なる友人二人とともにの再訪となりました。
勿論、前もって予約済での再訪であると云うことは云うまでもありません。

この日は【昼懐石】五千七百五十円也を予約、供された料理の内容は下記のとおりです。

先ずは【生とり貝と山芋のすり流し生海胆入り】。
いきなりデザートのムースが供されたなんてことは思いませんが一見、何なのか判りません。
これは山芋とともに【生のとり貝】をすり流したものを【生海胆】の上に掛け、その上から出汁
のジュレを添えたものでありであり料理長の斬新なセンスがキラリと光る料理に一同驚嘆です。

そして【鱧寿司と新○十の甘煮、茗荷の甘酢漬】。
夏の京都の寿司と云えば、やはり【鱧寿司】でしょう~ 茹だるように暑い京都の夏、【祇園祭】の
時期には【鱧寿司】と云う位、この時期の京都ではなくてはならないもののひとつでしょう~。
卓越した鱧の骨切り後に鱧寿司用につけ焼され棒寿司にされた鱧は、ふっくらとしています。
鰻よりも穴子よりも身はしっかりしており脂も軽めです。
【新○十の甘煮】は上品な甘みで薩摩芋は、しっとりしつつ栗のようにほっくりとしており美味。
茗荷の甘酢漬の味と食感がいいアクセントになっていました。

【海老、海老、加茂茄子、オクラ、錦糸瓜に梅じそのジュレがけ】は出汁で含め煮された素材と
甘酸っぱい梅じそジュレとのマッチングの妙味が愉しめるものでした。

そして【鱧のしゃぶしゃぶ】は茶筒程の陶器に熱々の出汁をはり鱧をしゃぶしゃぶして戴きます。
軽く出汁の中をくぐらせ花が咲いたような身になったら食べ頃です。
鱧に余り熱を加え骨過ぎてしまうと逆に身が固くなってしまうので、"しゃぶしゃぶしゃぶ"と三回
心の中で唱えたくらいで充分です。
そして鱧の旨みと脂が溶け出した出汁は別の器に移し変えて吸物がわりに戴きます。

造りは【甘鯛(ぐじ)の昆布〆】の単品に【南瓜のけん】が添えられ供されました。
上品な味わいの甘鯛の身に昆布の旨みと香味が染み込んだ身は舌にねっとりと絡み絶妙な
味わいに仕上げられたものでした。
個人的に割烹で供される造りは、鮪や烏賊や海老などありきたりのものが供されるよりも鯛の
腹身とか目板鰈の食味食感の良いものを少量供されるか昆布〆したものを供された方が料理
屋さんらしくて好きです。今回供された【甘鯛の昆布〆】はそういう意味でうれしいものでした。

【稚鮎焼】は和歌山【有田川】の活の稚鮎を使い【蓼】の燻香焼にされたもので頭からカブリと
かぶりついてもサクサクとした食感で特段【蓼酢】を使わなくとも充分に美味しいものでした。
稚鮎焼とともに供された蓮華の上にのせられたものは【鱧の玉子】と【鱧のすり身】を練り上げ
作られた【鱧の蒲鉾】で、鱧の玉子料理のひとつです。

本来はコースには入っていない料理ですが當店の揚物の【スペシャリテ】の【岩牡蠣のふらい】。
一度、湯通しして旨みを閉じ込めた湯霜の岩牡蠣に細目パン粉をつけて揚げたものなのですが、
これが美味いのなんのって… 断面を見て戴ければお判りになって戴けることでしょうが岩牡蠣
の旨みが中にギュッと凝縮されていました。

優しい味わいの【加茂茄子と小芋の素揚げ、信田巻、さやえんどうの炊き合せ白髪ねぎ天盛】の
炊き合せを戴いた後に香の物が供されて〆の食事となりました。
食事は【鱧と鱧の肝の【煎りだし】ごはん】です。
骨切りした鱧と鱧の肝に片栗粉を薄めにつけて揚げた【煎りだし】を炊きたてのごはんの上に
オンザライス。程良い塩味がついており、そのままでも美味しいのですが、お好みで、ほうじ茶を
上から注いで茶漬風にしてサラサラと戴いても良いでしょうね。

食後の水菓子も本来は【ドラゴンフルーツ】と【ピンクグレープフルーツアイス】 or 【あん春巻】から
二者択一となるのですが、どちらもと無理云って供して戴きました。
ドラゴンフルーツとピンクグレープフルーツアイスの味は敢えて申し上げなくとも想像がつくと思い
ますが、【あん春巻】は【黒ごま】+【こしあん】に【シナモン】が隠し味に使われており【亀屋清永
の【清浄歓喜団】にも似たヤミツキとなる味わいの口直しの菓子でした。

今回戴きました【昼のおまかせ料理】は最初の【生とり貝と山芋のすり流し生海胆入り】の斬新な
発想の料理に先制パンチを喰らい【あん春巻】で〆るという最高の内容でした。

前田料理長のキレのある腕前と料理のセンスは前回伺った時に素晴しいと感心させられたので
すが今回の昼に供された料理を戴き感心が確信に変わりました。

當店の懐石料理も昼夜のおまかせコースをともに味わいましたので評価は暫定評価から正式な
評価に変更をさせて戴きました。

當店の前田料理長との付合いは、これからが長くなりそうな予感がします(笑)
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2009/05 のレビュー
永い間、料理長を務められていた廣嵜榮二さんが独立され【食工房ひろさき】と云う店を
開店されたのを契機に【木屋町 櫻川】の全ての指揮を執る料理長が代わられて五ヶ月余。

新たに當店の料理長になられたのは生粋の京都人でもある【前田祐治郎】氏である。
自分が知るかぎりでは現在の京都の日本料理界では最も若き料理長ではなかろうか?
端正な顔立ちと板場での立ち振る舞いは必殺仕事人の松岡昌○くんと重なってしまう(笑)

以前の【木屋町 櫻川】の夜のコース料理は一番安いものでも壱萬五千七百五十円~の
設定をされていたが料理長が代わられ、壱萬五百円~と使い易い価格帯の店になった。

今回、戴いたのは、とりあえず様子見も兼ねて最も安価な壱萬五百円の料理を戴いてみた。
事前に電話予約の際に嫌いな食材はないか?とか、苦手なものはあるか?等 當方の嗜好、
希望等、会話の中でさりげなく確認されていたので後は大舟にのったつもりで供される料理を
ただ戴くだけである。最も當方、嫌いな食材や苦手なものは特にないのだけれど…。

【先付】 【山芋】のすったものと粗切りを寒天で寄せたものの上に【海胆】、彩りに【一寸豆】。
【山芋】はすり卸したトロトロと粗切りのシャキシャキと云う、ふたつの異なる食感がひとつに
なってひと味変わった舌ざわりと食感が面白く感じられた。
【青豆】は塩茹でして味を含ませたものに淡い出汁のジュレがかけられ供されたが、これは
見るからに目に涼しげな一品だった。

【椀物】には【穴子】を揚げたものと【芋茎】が椀種として使われていた。
澱みの無い澄んだ吸い地は出汁の加減、塩分ともに 【櫻田】さんで供される椀物に近い。
考えてみれば【櫻川】と【櫻田】、【櫻】は同じで川と田の一字違いと店名も似通っている。
それもその筈、両店とも 【招福楼】の流れを汲む料理店故に似ていると云うことだろうか…

【造り】は【鮑】一品。
料理を戴いている間に塩蒸しされた大きな【鮑】の荒熱を取られたものが造りとして供された。
鮑の肝を裏漉しして造った【肝ぽん酢】と醤油と出汁で造った【割り醤油】の二種類を好みで
使い分けて戴くのですが、どちらも甲乙つけがたく共に旨し。

【焼物】は【太刀魚の源平焼】。付け合せに万願寺唐辛子と丸太切りにした白ねぎ。
太刀魚を【柚庵だれ】の照焼にして木の芽で風味づけ、もう一方は白焼風の塩焼にしたもの。
これまた、どちらも美味しいが、木の芽の風味づけの方が味の印象が強かったかので平家、
いやもとい源氏の勝ちか?(笑)

【強肴】は【蛸】とホワイトアスパラとたらの芽を使った冷製。
【蛸】は細工仕事が施されたものであり目と舌を愉しませてくれました。
ホワイトアスパラとグリーンアスパラと云うアスパラ×アスパラの組合せではなく敢えて緑に、
たらの芽を持ってくる辺り若き料理長の感性の高さを感じずにはおられません。

【煮物】は【真鯛】と【鯛の子】と【聖護院蕪】の炊き合わせ。
見栄えは地味に見えるが上品な味わいの炊き合せは滋味もあり旨し…。

【食事】は【香の物】が供され一膳めは、さっぱりと【梅紫蘇ごはん】、もう一杯は【ちりめん】と
【牛肉】を時雨煮にしたものを茶碗の上にのせ、熱いほうじ茶を上から注いでサラサラと…。

【水菓子】は【白玉&アイス】と【イチゴ&プリン】。

若き料理長 【前田祐治郎】氏であるがユーロ圏で包丁を握られていた経験をも活かしつつ、
日本料理のツボをしっかりと抑えながらも柔軟な思考で料理を昇華させている。

これからが大いに愉しみな日本料理店 【木屋町 櫻川】さん、目と鼻の先にはTabelogでの評価
やジモティの食通の間でも評価が高い 【やました】さんがある。

この界隈にはガイド本に載らぬ底力のある実力店がひっそりと店を構えられているのです。

  • 夕暮れの御池通、この情景が好きです。
  • くるぞ来るぞ…
  • 店の前で錦の御神輿

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6位

大神 (祇園四条、三条京阪、三条 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2012/01訪問 2012/04/27

大神さんのコース料理は驚愕かつ圧巻です … 『大神』。

実に三年ぶりのレビュー更新となりますが、その間の2010年の1月と8月、2011年の1月と計三度伺っておりますが
2010年の画像は某寿司店で湯呑みの中にデジカメを水没させてしまい消失、そして昨年の画像は収めた盛岡の
寝城に置いていたノートPCが先の大震災で転倒したテレビの下敷きとなり無残にも壊れてしまいデーターの復旧も
出来ずと不可抗力が重なって更新することが叶わぬ状況に陥っておりました。

初レビューから四年連続で毎年『一月二日』に伺っているということもあり"大神"さんからは『一月二日の男』と
呼ばれるようになってしまいました(笑)

満を持しての今回の更新レビューは今年の一月二日に伺った時のもの、毎年同じ日に伺っているからこそ感じる
ことなのですが正月に供される料理内容には大きな違いはないものの豪華な食材を惜しげもなく大胆に使い供さ
れるスタイルは四年前も今も同じ。

今年の料理もいつもの如く壱の膳から食事の八の膳まで圧巻の料理の数々、特に印象に残った料理は弐の膳の
河豚の白子焼とからすみ』を組合わせた妙に尿酸チックなひと皿と正月期間にも関わらず素晴らしい弾力のある
真鯛』が用意されておりこれを何と『キャビア』と海苔佃煮で味わうという斬新な食べ方で戴いた二つの料理です。

他にも飛龍頭の上にこれでもかと云わんばかりに半端できない量の『生海胆』が乗せられた料理や『近江牛』の
A5クラスの肉を使って供された小鍋立ての『すき焼き鍋』等も舌の味蕾と脳裏に強く印象に残った料理です。

〆の食事には今回は『牡蠣』の炊き込みごはんをチョイス、それは昨年の未曾有の大震災と津波によって三陸産
の養殖がきが壊滅的被害を受け殆ど牡蠣を口にすることが出来なかったことから敢えて選んだ訳ですが使われて
いた牡蠣は小ぶりな広島産の牡蠣ですが味は濃密、いつものことながらオコゲを多めに作って戴き都合二杯味わ
い食べきれなかった分は寝城へのオミヤとして持ち帰らせて戴きました。

壱萬壱千円という予算で『河豚』に『』、『』に『近江牛』とこれ程まで高級食材をオンパレードで供される店も滅多
にないことでしょう。まして祇園でこれをやられる訳ですから凄過ぎるの一言に尽きます。

都内で確固たる地位を築かれた湯島の"くろぎ"さんの料理の供され方は何となく"大神"さんのスタイルに似ている
と感じるのはおそらく自分だけではないでしょう。

ようけ食べさせてしまってすみません』の言葉を地で行く"大神"さんの圧倒的なコース料理の組立ては日本広しと
いえども唯一無二ではないでしょうか?

来年の一月二日もきっと此処で酒盃を傾けていることでしょう~(爆)
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2009/01のレビュー
正月ということもあり昼餉は"阿じろ"さんで『精進料理』に舌鼓、夕餉は人気割烹ゆえ座席確保の競争率が高く
最近では希望日に予約を取ることは先ず無理と云われている祇園の"大神"さんへと寄せて戴きました。

元旦から営業されている"大神"さんもある意味、商魂逞しいとも思いますが當方の上洛日に合わせタイミング
良く予約を入れ席を確保しておいてくれていた友人のV君に心より感謝です。

當店の魅力については既に先行レビュアーの方々の数多のレビューで語り尽くされている感もありますが今回、
足を運んでみて感じたことは料理の味、質、値に関して界隈では『一頭地を抜いている』と云うことは紛れも無い
事実であるように思います。

店主を個性的とも称される方も少なくありませんが接客についても決して異質な訳ではなく我々にはむしろ好意
的に接して戴いたという好印象を受けました。

供される料理に関しましては一品ゞ丁寧に説明をして下さりましたが店主の間合いで話をされるので不慣れな方
は多少違和感を感じてしまうのやもしれません。

そんなことからゆっくりとした口調で柔らかな語り口で話される方の多い京都の割烹店の店主の中ではやや異質
で闊達な存在と思い込まれてしまうのも理解できます(笑)

店内に一歩足を踏み入れると奥に向かい横一線に伸びた厚みのある白木のカウンターが目に飛び込んできます。
席に着きますと白木のカウンターは良く手入れが行き届いていることが判りますし総座席数10席はカウンター割烹
としては理想に近い席数であるように感じられました。

店主の『大神 淳』氏の他に男女各ひとりづつの御弟子さんが向かい側に立たれ當日は三名で店を切盛りされて
いました。

とりあえず瓶ビールで乾ききった喉を潤しひと息ついたタイミングで店主の酌により一献の食前酒が振舞われた後
料理は一品ごと供されるのではなく御膳に二~三皿の料理がのせられ御膳単位で供されましたが、一つの皿の中
に色々な素材を使った料理が少しずつ盛り込まれているので品数以上の満足感が得られるというのも當店の特徴
のひとつでしょう。供された料理は下記の通り。

一の膳』は正月らしく御節の縁起ものの、ごまめ、牛蒡、車海老、真魚鰹焼、もろこ、黒豆、ちょろぎ、柚子釜の中
には炙った貝柱と菜花、そして別皿で数の子が供されました。

弐の膳』の『』は『ぐじ』と『からすみ』の飯蒸し、『』には湯葉のすり流し揚げ蓮根のせ。『飯蒸し』は上品な出汁
に豪華な食材の取り合わせで美味。

参の膳』は造りと椀物。『造り』は新年を祝い紅白二種類の海胆を使い分け目出度さを演出した『鯛の海胆巻』と
シビのトロ』の二点盛、『椀物』は『焼鰆と胡麻豆腐の吸物』。造りには余分な手を加えず素材の良さを全面に出し
口福をもたらしてくれるものでシビのトロの上にのせられた薬味のジュレの味が絶品でした。
椀物』の吸い地は京都の料理店としてはやや出汁が濃いめに感じましたが『焼鰆』と『胡麻豆腐』という椀種には
これぐらい輪郭がしっかりした吸い地を合わせないと逆に味がボヤケテしまうかもしれぬので敢えて濃い目にされ
ているのでしょう。

ここで『大神』氏のパフォーマンス、『大神劇場』の開演です(笑) 活きた『伊勢海老』を手づかみで持ちあげて一度、
我々にその活きの良さを披露した後に出刃を使いガリッ、バキッ、バリッという豪快な音を響かせながら目の前で
伊勢海老を捌きはじめ臨場感を楽しませてくれます。

茹で上げられた『ずわい蟹』へも同様に包丁が入れられ瞬く間に次々と皿に盛られていく様は圧巻そのものです。
大神さんにその『』は『間人の蟹』ですか?と敢えて尋ねてみたところ『高い蟹はうちでは使えません。北海道産
のずわい蟹を使わせて戴いてます
』という返答が返されました。

四の膳』は先ほど目の前で豪快に捌かれた『伊勢海老の鬼殻焼』と茹で揚げられた『ずわい蟹』が鬼の面のよう
にも見える鬼面型の陶器で供されましたが『伊勢海老の鬼殻焼』はガスバーナーで炙られたものでほんのりと磯の
香りが身から溢れ出る旨味と味噌が絡みあう野趣味が楽しめる一品。『ずわい蟹』の身は甘く身入りも上々、間人
や越前の蟹と比べれば味の濃厚さは劣るものの充分に蟹を味わっているという満足感が得られるものでした。

五の膳』は伊勢海老の形をした器に『干し柿の白和え』、蒸し物は『かぶら蒸し』、隠元、たらこ、慈姑、人参などの
炊き合せと『いくら』。寒い京都の冬の夜に味わう『かぶら蒸し』は格別です。

六の膳』はグツグツと煮立ったコラーゲンたっぷりの『』をたっぷり使った小鍋立の『○鍋』。好物の『○鍋』で身も
心もポッカポカとなり幸せ気分も絶頂です。

七の膳』は『河豚づくし』の膳。『河豚の唐揚』に『てっさ』、『河豚のヒレ』を使った鰭酒ならぬ『河豚ヒレ入りスープ』。
てっさ』を『梅肉』で食べさせるというのが"大神"さんのスタイル、河豚に梅肉?の組合せ。と頭の中では疑問符が
浮かび上がっていましたがいざ戴いてみるとこれは驚き。コリコリとした河豚に梅肉を合わせる。この食べ方は充分
にアリです。

しかし次から次へと入れ替わり立ち代り御膳が出てくる出てくる。 色んなものを少しづつ供して戴くことは個人的に、
とってもうれしいことだが一体どんだけ食べさせるつもりなのだろう~(笑) と頭を過ぎったところで店主より後は食事
の準備をさせて戴きます
。との言葉。 食事は炊き込みごはんとなりまして鯛、蛸、穴子、百合根に… と例の間合い
で釜めしの種類を説明してくれました(笑)

鯛の炊きこみごはんも捨て難いし穴子の炊きこみごはんも魅力的でしたが今回は『明石の蛸の炊きこみごはん』を
炊いて戴きました。

二十分程で炊き上げられた『蛸の炊きこみごはん』に香の物、『伊勢海老の味噌汁』が『八の膳』として供されました。
蛸の炊きこみごはんは『オコゲ』をたっぷり入れて…と當方が所望したこともあり画像は『オコゲ』が沢山入っている
ものをアップしておりますが當然オコゲ抜きで供して戴くことも可能ですが釜炊きの醍醐味は香ばしいオコゲの味を
愉しめることもひとつであると思いますのであとは好みの問題かと…。『伊勢海老の味噌汁』は伊勢海老の旨みが、
たっぷりの贅沢な超濃厚海老出汁味噌汁。きっとこれ以上に濃厚な海老出汁の味噌汁は世の中には存在しないで
しょうと思われる程の濃密な味わい。香の物もしっかり手抜かり無く作られたもので料理は総じて美味しく戴きました。

食後に『林檎ゼリー』と『ココナッツとレモンのシャーベット』が水菓子として供され今宵のコース料理はひととおり終了。

料理を食べ終えての感想は料理の美味しさも然ることながら使われている器がまた素晴しいということ。『魯山人』を
はじめとして名立たる作家ものの器が何気に使われておりビールグラスにも『バカラ』のアンティークものが使われて
いるなど器に対する店主の強い拘りがひしひしと感じられました。

雑居ビルの一階という立地であり箱庭の景色を眺めながら…という料亭のような風情こそありませんが器と料理が
目と五感を存分に愉しませてくれます。

しかし何と云っても恐れ入ったのは當店の驚異的なCPの高さ。壱萬壱千円という予算でこれだけの質の高い料理を
祇園で供されるとは驚きのひと言です。『ようけ食べさせてしまってすみません』の言葉は伊達ではありません(笑)

自分が知るかぎり"大神"さんは祇園の中で最も費用対満足度の高い一軒であると思います。此処はお奨め店です。

  • 壱の膳。
  • 鯛と貝柱の椀。
  • 蓋も素晴らし

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7位

萬亀樓 (丸太町(京都市営) / 日本料理、弁当)

1回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥10,000~¥14,999

2009/07訪問 2009/09/07

祇園を離れ静かな西陣の老舗料亭で寛ぐのもまた一興 … 『萬亀楼』。

カウンター割烹で戴くライブ感溢れる料理は勿論好きですが時には静かな場所で気の置けない
友人と、ゆったりと寛いで料理を味わうと云う贅沢な時間を過ごすことも格別なものだと思います。

そんな時には、やはり割烹よりも料亭の方が良いとなる訳ですが料亭となるとどうしても敷居が
高く気後れしてしまう方も多いことと思われますが當店は西陣の静かな一角に店が構えられて
いる京都を代表する老舗料亭の一軒ですが料亭の味と雰囲気を手軽に愉しめる"竹篭弁当"も
用意されておりますので何かと足を向け易い一軒になるのではないかと思います。

當店では、"生間流式包丁"にて宮中の節会の席で供される"有職料理"や茶にちなんだ京懐石
の料理が戴けますが今回は昼の懐石料理についてレビューさせて戴きます。

通された部屋は目の前の中庭を臨みながら静かに食事を愉しむことのできる八畳の和室です。

料理は調理場で作られたものが女将さん、若女将さん、仲居さんの手によって絶妙な間合いで、
一品づつ席に運ばれてくるのですが、途中【鮎の塩焼き】は中庭に焼き台を持ち込み若い板前
さんが目の前で活鮎に串打ちをして焼く。という演出も途中取り入れられ料亭+αの愉しみ方を
体感させてもらいました。

料理に関しましては細部にまで全て料亭らしい仕事がきちんと施されておるもので料理の旨さを
舌で愉しみながら使われているそれぞれの器と盛付の妙味を同時に愉しませて戴きました。

例えば器の妙味では【賀茂茄子】を使った料理で実際に蓋は本物の賀茂茄子の上部を使い器の
色といいその形状といい上賀茂の賀茂茄子に色彩がぴったり合い本物と見間違うような器が使わ
れていたり、造りの皿に添えられた、あしらいの花穂のゼリー寄せの美しさといい盛付の妙味では
【八寸】の盛られた団扇型の皿にさり気なく配置された料理の数々の色彩感といい、そして味では
【鱧と冬瓜の吸物】の輪郭がはっきりとしたキレのある吸い地の旨さや【煮穴子と小芋の炊き合せ】
の味の旨さと云ったら流石に料亭らしい品格のある味わいのものであり町方料理の"おばんざい"
の炊き合せとは、ひと味もふた味も洗練された料理の妙味を味わうことができました。
食事として供された【海苔蒸し】も酒の後、お腹に収めるには量的にも丁度良いものであり使われ
ている海苔の上質な香味と海苔の口溶けと出汁の味加減は格別なものでした。

また女将さんの接客は一本、筋がピンと通ったものであり自分が知る限り京都の料亭の女将さん
の中では、その身振る舞いのしなやかさと軽やかさでは京都一ではと思われる素敵な女将です。

丁度、仙台で時どき利用させて戴いております【萬み高橋】の店主は、こちらの【萬亀楼】さん
の出身であり女将さんとの話しの中で偶然、その話題となり話が大いに盛り上がったことは云うま
でもないことですが、そんな御縁から祇園祭で実際に"菊水鉾"の山鉾とともに京の町を周回して
きたという稀少価値の高い、"厄除け粽"を帰り際に持たせて戴くなど色々とお気遣い戴き愉しい、
ひと時を過ごさせて戴くことができました。

そんな御縁から、また翌週、仙台の【萬み高橋】にも足を延ばすこととなるのですが、"食べ歩き"
は料理の旨さや飾りつけの美しさだけではなく、人と人との巡り合いの愉しさをも教えてくれるもの
であるということを改めて感じさせてくれる素晴しい女将さんでした。

きっと来年は授けて戴いた、"厄除け粽"の返納の為に、また當店を訪れることになるのでしょう~。

今回戴きました料理は、壱萬円の昼懐石ですが料理代の他に奉仕料と諸税にて勘定には二割
相当の金額が加算されますが、中庭を臨みながら、ゆっくり寛ぎながら料理を戴くことを考えますと
決して高くはないと思います。

京都で、"料亭、初デビュー"と考えられている方には安心してお奨めできる料亭の一軒です。

  • おぶ。
  • 前掛。
  • 上賀茂の賀茂茄子を茄子型の器で

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8位

日本料理 とくを (河原町、祇園四条、清水五条 / 日本料理)

2回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 ¥10,000~¥14,999

2022/11訪問 2022/12/20

徳尾さんの良心を感じる昼のお任せコース…日本料理『とくを』

11月最終の土曜日の昼餉は京都を代表するMichelin⭐️⭐️⭐️の人気割烹『前田』さんの前田店主や⭐️⭐️の『祇園にし』さんの西店主等、数多の敏腕料理人を育て輩出されている日本料理『とくを』さんヘ久しぶりに寄せていただきました。女将さんの満面の笑みで出迎えていただき店内へ。用意されて席は徳尾店主の正面のカウンター席。先ずは生ビールのグラスで渇いた喉を潤し昼餉のコースのスタート。料理はたっぷりの鰹節(カツオブシ)が削りかけられた原木椎茸(ゲンボクシイタケ)と菠薐草(ホウレンソウ)の御浸し(オヒタシ)と丹波黒豆(タンバクロマメ)を使った生湯葉(ナマユバ)の生海胆(ナマウニ)載せの先付から。向付には身が口の中で飛び跳ねるかのような活かった身質の明石産の天然『真鯛(マダイ)』に那智勝浦産の『本鮪(ホンマグロ)』トロ、『剣先烏賊(ケンサキイカ)』の『海胆(ウニ)』載せ。椀物代わりには大好きな『◯(スッポン)鍋』の小鍋立、強肴には鹿児島産の黒毛和牛(クロゲワギュウ)のフィレ肉の炭火焼、箸休めと酢の物代わりには絶妙な〆加減の『真鯖(マサバ)』に追い酢(オイズ)をした『きずし』、焼物には『真魚鰹(マナガツオ)』の味噌幽庵焼(ミソユウアンヤキ)に一年寝かせた『唐墨(カラスミ)』と大根(ダイコン)と酢取り茗荷(スドリミョウガ)の付合せ、蒸物には名残の『鱧(ハモ)』と占地茸(シメジ)の霙卸し(ミゾレオロシ)。締めの食事には極小の『ちりめんじゃこ』のごはんに香の物に滑子(ナメコ)の味噌汁(ミソシル)、水菓子にはたっぷりの黄金黄な粉(オウゴンキナコ)とぷるんぷるんの蕨餅(ワラビモチ)。焙じ茶(ホウジチャ)にて昼餉のコース料理はひと通りです。多くの店がコース料理の値段を右肩上がりに改訂されている中、五年前から価格据え置きでやられている徳尾店主。某社のF.Dの味噌汁CM等でも全国区の知名度を誇りながらも以前と全く変わらぬ物腰の柔らかさと語り口の柔らかさに懐の広さと余裕さえ感じられます。祇園から僅か5、6分の下木屋町でアンダー10,000yenで奇を衒わぬ素材の持ち味を活かした滋味優先の日本料理を供される『とくを』さん。京都の割烹ははじめてというビギナーの方からかなり食べ込んでおられる食通の御仁まで満足させてくれる店であると思います。

"祇園祭"で熱く盛り上がる京都へ上洛、今宵は"宵山"、昼餉は軽めに"たかばし第一旭"にて
済ませた後、京の寝城に荷物を置き早速、作務衣に着替え先ず"八坂神社"へ昨年授かった粽の
返納と参拝"蘇民将来子孫者也"と記された今年の""を授かり身も心も清らかになったところで
"長刀鉾"の粽を戴きに伺い総ての用事を終え西木屋町にある"とくを"さんへ向かったのであります。

打ち水をされた入口は清々しく暖簾をくぐると、いつもにこやかに出迎えてくださる店主の徳尾さんと
女将、この店のカウンター席に腰を下ろしますと不思議と身は寛ぎ心は安らぎ京都に戻ってきたぞー
という気持ちになるんです(笑)

今回は夜のコースの真ん中、壱萬円のコース料理、瓶ビールで喉を潤し、ひと呼吸措いた頃合で
先付の三種盛から料理の開始、造りは鮪赤身、鯛の腹身、鱧落とし、たいら貝、針烏賊の五点盛、
鱧の霙掛け、"のどぐろ"焼と八幡巻、海老と白芋茎の椀、濃厚な滋味が愉しめた能登の岩牡蠣に
四国の順才、"揚物"には極上の"鯨のさえずり"を贅沢に使い揚げたもの、食事にはワザありの
"鰻ごはん"、水菓子にプルンプルンの"わらび餅"でコースはひととおり。

自称のどぐろ好きの"のどぐら~"、日本海の赤いダイヤとも称される"のどぐろ"は脂ののりも抜群
"鯨のさえずり"の揚物は昭和の時代の鯨カツとは一線を画す上品な味わい、食事の"鰻ごはん"は
一見何の変哲もなき…とも思われますが雪平鍋でごはんとタレを和風ピラフの要領で炒めたものに
焼きたての"鰻の蒲焼"を加えたもので名古屋の"ひつまぶし"とも違った味わいに舌が悦びました。

奇を衒わぬ直球勝負の潔い料理に舌鼓で癒されるひと時は至極の時間、祇園祭で賑わいをみせる
七月の京都、自分の場合いつも"とくを"さんの料理からはじまります。

自分にとってとても居心地の良い店であり総合評価は★★★★☆(4.5)に上方修正させて戴きました。

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2009/07 【夜】再訪レビュー 画像追加アップ。

前回、夜の予約がとれず已む無くして昼に伺い初訪ながら店主の人柄にすっかりと魅了されて
しまい、新たにお気に入りの一軒となった【とくを】さん。
次回の夜の予約を済ませ店を後にしたのですが、その予約を入れていた日の夜が訪れて再訪。

今回は大阪から上洛した當店初訪となる友人と現地待合わせにて合流しカウンターのほぼ中央、
店主の真ん前の席でコース料理を戴きました。

今宵戴いた料理は【夜のおまかせコース】の七千五百円、壱萬円、壱萬五千円の中の一番上の
壱萬五千円也の料理を戴いてみました。

先ずは前菜の三種盛【鱧の子の翡翠寄せ、山芋すり流し海胆のせ、蛸のジュレがけ】が供され
次いで【鮑、鮪、鯛、鱧おとし、たいら貝の造り】の造り五点盛が供されました。
造りは鮪がやや熟成が進み過ぎた感があるものであったが【鮑】や【鯛】、【鱧おとし】は質が高い
ものであり久しぶりに口にした【たいら貝】は食味も良いものでした。
海の幸の五点盛に続いては綺麗な脂の霜降のサシが入った熊本阿蘇産の【馬刺し】に舌鼓。
阿蘇の馬刺しは、とても身が締まっており程良い脂のサシもコクのある美味しいものでした。

そして、この時期の京都では欠かせない鱧と松茸の出会いもの【鱧と松茸のしゃぶしゃぶ】には
香り高き【松茸】と見事に等間隔に骨切りの包丁が入れられ花が咲いたようにふわっと綺麗に
開いた【鱧】の味は適度な脂もあり格別なものでした。
鱧の後には、やはりこれも京都では欠かせない料理【甘鯛(ぐじ)の若狭焼】です。
強火の遠火で焼き上げられた甘鯛は脂ののりも良く中の身は、しっとりとして、ほのかな甘みが
あり淡白上品。"うろこも"もパリパリと食べられるものでした。

御凌ぎで供された【鱧寿司と鯛寿司】の二種類の寿司は、この時期の"京寿司"の定番ですね。
舎利はもっちりもちもちとしていますが変に甘過ぎるということもなく、これはこれで好きな味です。

寿司の後には當店の看板メニューのひとつの【○鍋】の小鍋立。
【鼈(すっぽん)】、丸太切りの焼葱、すっぽんのエキスをたっぷりと含んだ豆腐と焼餅。
【○鍋】は流石に看板メニューのひとつに掲げられているだけのことはあり美味なるものでした。
トロトロな濃厚スープの味は、しょっぱいとか濃過ぎるとかと云うことは勿論無く味わいは洗練
された円やかな味わいのものであり隠し味の生姜の絞り汁が全体の味を引き締めています。
程良く冷房が効いた部屋で熱々の【○鍋】をふーふー云いながら戴くのは至福のひとときです。

小鍋立を戴き身も心も温まった後には山陰産の【岩牡蠣】を蓮華の中に入れられた"ぽん酢"の
ジュレとともに戴きましたが牡蠣の身はプリプリで濃厚でクリーミー、岩牡蠣を "海のミルク" と
例えた方は偉い。まさにその言葉がぴったりとくる滋味溢れる味であり、"ぽん酢"のジュレもキレ
のある味わいのもので美味しく戴きました。

食事前に供された最後の料理は本日二品めの肉の皿【近江牛のヒレ肉のたたき】です。
肉汁を閉じ込めて焼き上げられた【ヒレ肉のたたき】は柔らかな口あたりで、しっとりした舌ざわり。
凝縮された本物の牛肉の旨味が愉しめるものでした。

そして香の物、なめこの味噌汁とともに供されたごはんは口の中に清涼感が広がる【新生姜の
炊きこみごはん】でした。香の物も抜かりのないものであり、なめこの味噌汁も山椒の隠し味が
利いた美味しい味噌汁でした。

食後の口直しは2品で、一品はイチゴとキウイが添えられた【ココナッツミルク羹】。果実の酸味
とまろやかな【ココナッツミルク羹】の味のバランスが秀逸なものでした。もう一品は適熟し丁度、
食べ頃となった【マスクメロン】でこちらも美味しく戴きました。

店主自慢の欅一枚板で造られたカウンター席で寛ぎながら戴く【とくを】さんのキレのある料理
に良く合う酒も豊富に揃えられています。品書きに載せてない、とっておきの酒も用意されており
ますので、店主に料理に合う酒をお任せするのも良いでしょう~。

個人的に下木屋町では當店【とくを】さんは割烹ビギナーの方から懐石料理を相応に食べ込ま
れている方まで幅広い方が愉しめる料理店であると思います。

昼夜双方の料理を戴きましたので暫定評価を正式な総合評価★★★★(4.0)とさせて戴きます。
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2009/05 【昼】初訪レビュー

今回の上洛で一番伺ってみたいと思っていた日本料理店 【とくを】さんに初めて伺った。
本当は夜に伺いたいと思っていたのですが予約が出遅れてしまったこともあり今回の京都
滞在期間中の夜の時間帯は全て既に先客の予約で埋め尽くされており已む無く昼の時間
に伺うこととなったのですが昼に一度伺って気に入ったら次回は夜に伺うと云う流れの方が
自然の流れで、むしろ好都合だったような気もする。

昼の時間帯は基本的に、【おまかせ料理】五千円也のひとつのコースでの営業されている。

伺った日の昼も全ての席が予約でうまっておられたようであるが當方の予約はam11:30~
でお願いしており他の客は誰一人居られない間に早速、料理を供して戴いた。

飲み物は例により瓶ビールから日本酒への華麗なるリレーで愉しませて戴いた。

【先付】は小さな切子鉢で、【一寸豆】、【汲みあげ湯葉と海胆】、【鯛の子】の三種。
【一寸豆】は【青煮】仕立で色も鮮やかで食感、味の含め方もとても良いものだった。
【汲みあげ湯葉と海胆】は湯葉のふわふわとろとろとした風味とほのかな甘みが海胆本来の
持ち味を引立たせる名わき役ぶりを発揮していたし、【鯛の子】を炊いたものには、あしらいに
木の芽。この組合せも定番であり無くてはならぬ存在ですね。海胆も上質なものが使われて
おりましたし【鯛の子】の味の含ませ方も素晴しいものだと感じました。

【造り】は【よこわ(鮪)】、【鯛】、【烏賊】の三点盛。
山葵は目の前で卸したての【本山葵】が添えられ供されたことは食べ手側としてはうれしい。
往々にして昼は混ぜ山葵を添えられる店が多いものであるが當店のスタンスは素晴しい。
【よこわ(鮪)】は至って普通のものであったが、【鯛】は天然物の上質なものが使われていた。
【烏賊】は甘みがあって平均的にみて美味しい部類のものだった。

【煮物】は【筍】と【若布】の【若筍煮】。
筍は【先】に近い部分と【台】の部分の二つの異なった食感が愉しめるように配慮されていた。
【若布】はトロトロではなく若干の歯応えを残した炊き方であり特に【台】の歯応えのある筍の
食感との相性が良く感じられた。煮物の出汁の按配はとても素晴しいものだと思います。

【焼物】は【鰆の幽庵焼】と【たいら貝】を炙ったものに、ほろ苦い山の息吹が添えられていた。
【鰆の幽庵焼】の食欲をそそる色艶と【たいら貝】の貝柱の色の配色が目を楽しませてくれる
こと勿論、焼き加減も味にしても何も不足の無いものでした。

【椀物】は下煮された【海老】と【白芋茎】にとろみをつけた椀が供された。
生姜の隠し味が身体を内側からほんわかと温めてくれる役目と箸を進めさせると云う二役を
担っていた。吸い地に関しては隠し味の生姜の味に負けぬ程度の鰹出汁の印象が残った。

【揚物】は一瞬、【鱧】がキタッーと思いきや食感が愉しい【穴子の変わり揚げ】と【小茄子】。
サクサクとした歯にあたる食感が小気味良く穴子はふわふわとした食感に加え身厚で食応え
もあり熱々のものを美味しく戴きました。

【食事】は【香の物】、【ちりめんじゃこのごはん】、【赤出汁椀】。
【赤出汁椀】の椀種は、【順才】。
【ちりめんじゃこのごはん】のごはんの上には、【とくを】さん特製の【ちりめん山椒】が
たっぷりとかけられ青じそを刻んだものがのせられ供されました。
この【ちりめん山椒】が一般的なものや他所のものとは、ひと味も、ふた味も違うんです。
一度炊いたものを天日干しにされたものでパリパリ、カリカリとした独特の食感と干された
ことにより【じゃこ】の味が凝縮されたように感じられるもので面白い程、ごはんが進みます。

この【特製ちりめん山椒】は御土産でも販売されており帰りにひと箱買ってまいりました。

食事の後に【水菓子】の【イチゴとキウイと豆乳羹】を戴いて昼の五千円のコースは終了。

店主の【徳尾 真次】氏は生粋の京都人。
日本料理の銘店【たん熊】、京料理の銘店【いな梅】で修行された腕前は相当なもの。
店主を筆頭に奥様もとても感じの良い方であり二番手、三番手の職人さんも愛想が良く、
自分が京都で知っている料理店の中では最も和める店であるように感じました。

檜の一枚板で造られたカウンター席は、とても手入れが行き届いており一見の価値有り。
時計やブレスレットなどでうっかり傷をつけたりしないようにしないといけませんよ(笑)

今回は初訪問であり、昼の五千円の料理しか當方は戴いておりませんが夜に伺っても
相当愉しめる店であることは肌身で感じられました。

夜の部には女将さんが店に出られないことが個人的に残念ですが次回、夜に伺ってから
評価を修正させて戴くことにして、暫定的に評価は、★★★★(4.0)とさせて戴きました。

  • 明石産の天然真鯛、那智勝浦産の天然本鮪のトロ、剣先烏賊の海胆載せ
  • きずし
  • 名残の鱧と占地茸の霙卸し

もっと見る

9位

割烹 やました (京都市役所前、三条、三条京阪 / 海鮮、日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 ¥10,000~¥14,999

2009/07訪問 2009/09/05

【アラカルト料理】でこそ真の魅力を愉しむことができます … 割烹 『やました』。

今度こんどと云いながら、なかなか行けずじまいでおりました割烹【やました】さん。

やーと行くことができました。と云うか、やっとレビューアップの順番がやってまいりました(笑)

時は【祇園祭】のクライマックスである山鉾巡行と神幸祭で盛り上がった とある日まで遡ります。

丁度、世の中では【土用丑の日】を二日後に控え鰻だ、蒲焼だ、白焼きだ、鰻丼だ、鰻重だと
鰻の催事で賑やかになる日を控えた とある日のこと。

割烹【やました】さんは當店をこよなく御贔屓にされているレビュアーさんや他のレビュアーさん
により、その魅力は既に語り尽くされておりますが遅ればせながら當方も【祇園祭】で上洛していた
七月十六日~二十日の間に都合、二度、昼と夜にそれぞれ一度づつ伺ってアラカルトで美味しい
魚を色々と味わってまいりましたので、その時の模様を少しだけご披露申し上げます。

土用丑の日】を間近に控えて京都一美味しい魚が集まると云われている當店で戴いたのは
【天然物の鰻】を使った鰻料理や店主直々に目の前でひと切れづつ焼いてくださった【鱧の焼霜】、
久しぶりに口にした自称 "ノドグラー"の大好物である【のどぐろ】のつけ焼や御凌ぎの【鯖寿し】、
【鯛のあら炊き】や【鴨饅頭】などをアテに美味しい酒と酒肴と食事を存分に愉しんできました。

【天然物の鰻】は都内赤羽橋に店を構える"釣り針注意"の某鰻料理店で使う鰻と同一の問屋
より、この日に合せて数尾仕入されたものの中から【白焼】、【蒲焼】、【鰻丼】として戴きました。
活鰻を割いて竹串打ちをして関東風に蒸しの工程を入れて供された鰻は程良い脂ものりつつ
身はふっくらふわふわ、口に運ぶと油脂分と滋味がパァーッと口の中に広がり文句なしに美味。
【白焼】には勿論、たった今すりおろされた本山葵が添えられ供されました。

なかなか他所でお目にかかることのできぬ特注の炭火焼の焼台は特徴的な形をしており一見
の価値があり焼台の前では焼き方さんが真剣な面持ちで鰻と向き合い仕上げられ供されました。

二番手さんの"こんなに質の高い天然鰻を割いたのはとても久しぶりのことです。"の言葉とおり
今年、自分が口にした天然ものの鰻では文句なしにNo.1の鰻に京都で出会うとは何か不思議な
感じもしましたが "旨けりゃいいやん"ということで…。

【蒲焼】や【鰻丼】に使われたタレは即興で作られたものなので味の円やかさにはやや欠けるもの
でありましたが変に甘いタレではなく関東風のキリッとした辛口系のタレであったことが嬉しかった。

そして【活鱧の焼霜】は店主【山下 茂】氏の見事な包丁捌きとザクッザクという小気味良い音を
響かせての骨切りを目の前50㌢程の位置で愉しみ、こちらの食べ進み具合に合せて炭の焼台の
上でひと切れひと切れ焼いて供してくださいました。薬味には針生姜と針茗荷を添えてさっぱりと。
【鱧】は韓国産の鱧と【淡路産の鱧】と使い分けをされているようですが當方に供して戴いたのは
【淡路産の鱧】です。韓国産の鱧に比べると脂ののりは薄いようですがやっぱり鱧は淡路でしょう。
淡路の鱧も最近生態系に異変が見られると云われておられましたが、こうして戴けることに感謝。

そして、自称 "ノドグラー"が泣いて悦んだ絶品の【のどぐろ】。
時期的なことを考えますと今時分こんなにも脂のりが良くてジューシーな【のどぐろ】を供すことの
できる店は全国的に見ましても、そうはありはしない筈です。

なるほど京都一美味しい魚が集まる店。とは良くぞ云ったものですね。
金沢出身の二番手の板前さんの魚の目利きは素晴らしいと思います。
彼が此処の店に居られるかぎりは間違いのない魚を戴くことができると思います。

他にも【鯛のあら炊き】や【鴨饅頭】等の煮炊きものも戴いてみましたが素材の良さは感じられる
料理ではありましたが味付けに関しましては特に突出したものはありませんでしたが相応に満足
できる料理ではありました。

今回は京都の友人と二人で伺い好きなものを何品かアラカルトで頼み供して戴き自分的には、
とても満足することができました。

他の方々は大半の方がコース形式の料理を召し上がられているようでありましたがコース料理は
4人の職人さんの完全分業制で全て流れ作業で作られたおりました。
その作業と仕事ぶりを見ていますと、それなりの店で懐石料理を食べ込んで居られる方であれば、
當店ではコース料理ではなく"アラカルト"で自分の好きな素材を好きな調理法で作ってもらい味わ
うという使い方をされた方が當店の真の魅力を体感することができると思います。

尤も京都のカウンター割烹初デビューの方やビギナーの方々には全てお任せで供されるコース
料理の方が何かと楽であり手軽で良いと思いますが本当に旨いものを食べたいと思ったならば
アラカルトの料理で自分の眼力に磨きをかけることを怠ってはいけないと思います。

店内は奥に伸びるカウンター席が全15席、店主を筆頭に四名の職人さんが腕を揮われる活気に
満ちたカウンター割烹です。"是非とも、【アラカルト料理】で愉しんでみてください。"

高瀬川沿い木屋町御池を上がった【やました】さんで "癒された時間" は愉しいひと時でした。

  • 鰻 白焼。
  • 鰻 蒲焼。
  • つきだし。

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10位

丸太町十二段家 (丸太町(京都市営)、烏丸御池、二条城前 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥5,000~¥5,999

2015/09訪問 2015/10/08

器で目を料理で味蕾を愉しませてくれる … 『丸太町十二段家』。

定期的に寄せていただいている"十二段家"さん。既に訪問回数は両手両足の指の数では収まらず(笑)久しぶりに画像
の追加アップとともにレビューの更新をさせていただきました。"瓢亭"OBの『秋道』さんの料理の真骨頂を楽しむ
のであれば旬の素材を使った一品料理が味わえる『菜の花』を頼むべき。外さんは宿泊先のホテルで供される朝餉で
お腹は満たされているので昼餉はお茶漬けだけで軽く済まそうとされる気持ちも決して解らぬ訳ではありませんが、
茶漬けだけの『すずしろ』では勿体ないです。時間と事情が許されるのであれば昼のピーク時間を外し一献傾けつつ
京の本質の料理の味を楽しんで欲しいもの。折角の旅行であるのだから、、、。
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2012/01のレビュー
久しぶりにレビューの更新をさせて戴きます。勿論『通常利用』でのレビューではありますが今回と同じ料理が
供されることはたぶんないと思いますので『通常利用外』のレビューにチェックを入れさせて戴きました(笑)
當日は京阪神エリアで御交誼戴いておりますレビュアーさん五名でのプチ新年会、供された料理は正月期間
ということもあり『御節料理』+『菜の花』の茶漬のコースという変則的な内容。
この『御節料理』は本来、馴染さんの予約分のみが作られるものであり滅多に口にすることは出来ぬものです。
最も豪華なスペシャリテの三段重の御節は確か五萬円だったと思いますが今回はその中の一部の料理を特別
に振舞って戴きました。
どの料理も美味しかったのは云うまでもありませんが超特大サイズの『子持ち鮎の有馬煮』は圧巻、"瓢亭"さん
のソレを凌ぐ味と云っても過言ではないでしょうか?そして京都の正月らしく『餅花仕立て』で供された料理の
中の『卵黄の味噌漬』の味と完成度の高さは"光安"さんのソレを軽く上回る美味しさ。『有精卵』を使って作られた
と思われる『卵黄の味噌漬』はねっとりと舌に絡みつく半熟加減といい粘度といい味といい自分が今まで口した
どの店のソレよりも美味しいものでしたし、たっぷりの『銀餡』で味わう『かぶら蒸し』も絶妙な味わいでした。
料理の味もさることながら使われていた『』がこれまた凄く見る方が見ればお判り戴けることでしょう『造り
に使われていた『鶴皿』などは一枚○萬円の器、料理で舌を楽しませてくださり器で目を愉しませてくれる粋なる
計らいにも感銘を受けた次第です。
語り合い酒を酌み交わし料理を存分に堪能させて戴いた口福な時間、店主の『秋道』さんはじめ奥様、御子息
さま楽しい場を遅くまで提供してくださり本当に有難うございました。この場をお借りして御礼申し上げます。
余談ですが数日前のTVに店主の"秋道 賢司"氏が出演さられておられましたが折角、京まで足を延ばされるの
でしたなら番組内で紹介されていた『すずしろ』より絶対に『菜の花』を頼まれることをお奨めします。
特に関西エリア以外から訪れられるツーリストの方々にはぜひとも『鯛の造り』を味わって戴きたいものです。
活かった『天然もの』の『』がついてくる『菜の花』のコースを口にされたらその意味がお解り戴けるかと。
東北や北海道では先ず口にすることの出来ぬ本当に美味しい『鯛の造り』、この時期はこれが狙い目なんです。
きっと『鯛の造り』の虜となることでしょう(笑)
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2009/07のレビュー
前回戴くことができなかった『近江牛のすてーき』を戴くために再訪させて戴きました。
今回のつきだしは椎茸のどんこと胡瓜を練りゴマで和えた『どんこ椎茸と胡瓜の胡麻和え』、涼しげな『氷鉢』の
中には『』、『鱧のおとし』、『鱚の昆布〆』の造りの三点盛を梅肉だれと割り醤油を好みで使い分け戴きます。
山葵は勿論、卸したての『本山葵』が添えられていたことは云うまでもありません。
古伊万里』の器で供されたものは、すりおろした山芋に出汁を加えた『山芋のすり流し』、とてもなめらかな口
あたりであり出汁は料理屋さんらしく上品なものでした。
京都の夏の寿司と云えば『鱧寿司』でしょう~そして京の寿司の代名詞でもあり忘れちゃならない『鯖寿司』。
この時期でこれ程に身厚な鯖に出逢えたことに先ずは驚き更に『』と『舎利』との『黄金比』に驚嘆。
賀茂茄子の煮浸し』には賀茂茄子の揚げたしの他に『煎り穴子』と『獅子唐』、大根卸しが添えられ削りたての
鰹節と針茗荷が天盛りされたものに仕上げに振り柚子。   
鯛と京夏野菜の冷製仕立』は衣揚げにした鯛の酢漬けに山芋に万願寺唐辛子の和風の野菜とズッキーニに
トマトと云う洋伝来の野菜とのコラボで和出汁+トマトのジュレがけの和洋折衷の創作料理であり暑い京都では
程良い酸味に身体が悦びそうです。
そして今回のお目あての『近江牛のすてーき』はロース肉の中でも最高級品で肉の旨味と肉の柔らかさが絶品
といわれる稀少部位の『本ロース』が使われグリーンアスパラのソテーがつけあわせに、ごはんのおかずに良く
合うようにと溜り醤油ベースのたれで焼かれておりとても香ばしいものでした。
このステーキとアスパラを茶碗のごはんの上にオンザライスで自作で『特注のすてーき丼』を作ってみました(笑)
ちりめん山椒』のじゃこは柔らかくしっとりと炊かれておりましたし出汁巻き玉子、香の物、赤出汁は前回同様
とっても美味しいものでした。
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2009/03 のレビュー
今回の上洛では絶対に伺ってみたいと思っていた"丸太町十二段家"さん。
人気店ゆえ當日は万難を排し開店 30分前に店前に着いたのですが既に先客が三名程並ばれておりました。
開店前に店前にならぶのは都内にある人気ラーメン店"麺屋 吉左右"さん以来のことですが美味しいものを戴く
ためとあらば全く苦にはならぬもの。
今回こちらの店にはじめて伺うにあたり知人より、ある程度の予備知識を得てから伺ったのですが當店三代目の
店主の『秋道 賢司』氏は、かの"瓢亭"さん出の方であるということ。
日本料理好きの賢者の方々であれば、このことで何を云わんとしているのか大凡お察し戴けるものと思いますが
誰しも京都の"瓢亭"という店名ぐらいは一度や二度は耳にされたことがある筈であり當店の店主の供する料理は
単なるお茶漬屋さんの料理ではないということは御理解戴けることと思います。
もうひとつは御茶漬屋さんと呼ばれるようになった由来は"御茶漬でも如何がどすかぁ~"と店先で先々代の女将
さんが、お客さんに声掛けられていたことから"丸太町十二段家"さんは美味しい『御茶漬』を供してくれる店であると
いう噂が人づてに広がっていったのと同時に『お茶漬屋』さん="丸太町十二段家"さんと云われるようになり落語の
京の茶漬』の噺のモデルにもなったという真の話なそうです。
それが現在にも引継がれ一般的には『御茶漬』がウリの店と思われているのだと思うのですが『鴨まんじゅう』や
賀茂茄子の揚げだし』など季節の一品料理も味わえる料理店でもあり要事前予約で近江牛の『しゃぶしゃぶ』や
近江牛のすてーき』なども味わうことの出来る店であるということです。
昼餉のメニューは『御茶漬』で〆る基本の『すずしろ』千五十円をはじめ千八百九十円也の『水菜』、弐千八百
三十五円也の『菜の花』と名づけられた三つのコースで『出汁巻き』と『漬物』がそれぞれ共通して付いてきます。
値段の差は『季節の一品料理』と『造りの盛合せ』がつくか否かがその価格差のようです。
今回は店主と親しい知人からの紹介を戴いたこともあり『季節の一品料理』を織り交ぜ特別にミニ懐石風のコース
仕立の料理を供して戴きました。
ということで普段は『今回と同じ内容の料理はない』ということを予め御了承ください(笑)
一品めに供された料理は春を感じさせる『』と『うるい』を使った『蛤とうるいの霙煮』。つきだしの一品が
目の前に現われ口に蛤を含んだ瞬間に思わずニンマリ。それはこの蛤が俗に云う『地蛤』と呼ばれるものであり輸入
ものの安価な蛤とは、そもそも風味と食感がまるで違うものであり寸止め半生の火の通し具合といい身の中に含まれた
旨みと『出汁』の味加減といい料亭で供されるソレとなんら遜色のないものであり店主の料理の確かな腕をほんの
少し垣間見れた気がしました。
二品めは琵琶湖で揚がった『もろこの南蛮漬』。『もろこ』とひと言で云っても琵琶湖産の『本もろこ』と養殖
された『もろこ』があり巷に溢れている『もろこ』は養殖ものか甘露煮などにして売られている『田もろこ』と
呼ばれる代用品が大半であろう~と思われますが當店で供された『もろこ』は正真正銘の『本もろこ』で、その中でも
最も珍重されている『子持ちのもろこ』でした。
時期的に、これが今年最後に口にすることになるであろう名残りの『子持ちのもろこ』。揚げてあるので頭から
ガブリとかぶりつき、ふっくらとした食感と南蛮漬の程良い辛味と酸味が酒呑みにはたまらなく酒盃を傾ける速度
が思わず速まってしまいました。
三品めに
供された『造りの盛合せ』は『金目鯛の昆布〆』、『』、『』、『海胆』の盛合せ。魚の質は総じて高いもの
が使われておりそこそこの割烹でもこれと同等のものを供するとなるとそう簡単なことではないだろう~と思います。
割烹や料理屋さんで供される刺身類には大変失礼ながらそもそも余り大きな期待などしてはおらず旨い魚は鮨屋で
喰らうものに勝るものはなし。と勝手に思い込んでいるのですがそんな中で供された刺身の質は不意打ちを喰らった
ようなクオリティの高いものでした。
金目鯛の昆布〆』の昆布〆は金目鯛の身に昆布の香りと旨みが程良く浸み込んだもので活〆された『』は勿論、
天然ものでコリコリとした活かった食感と脂身の旨みが味わえる『腹身』の部分が供されるなど、その味には迂闊に
油断した所為ではなく本当に美味しさに完全にヤラレてしまいましたし『海胆』や『よこわ』も時期的に相当質の高かい
ものが供されたと思います。
四品めに供された『鰆の海老芋素麺蒸し』でアルことを確信しました。『』に『』と書いて『さわら』であるというのは
皆さん御存知の通り、『秋口』の鰆は脂がのり美味しいけれど『春先』の鰆は何となく味気なく感じるものですが昆布と
塩の旨みが程良くのせられたこの鰆はそんな概念をあっさりと覆してしまうものでした。
海老芋』を素麺仕立にして『』との密着度は一層高められており、たっぷりとかけられた『銀餡』の味も絶妙な味で
したが『』と『海老芋そうめん』の異なる二つの食感のものをこの『銀餡』が、しっかりとつなぎ合わせたこれぞ料亭の
味わいでした。
そして五品めに供された料理が『お茶漬け』のコースに必ず付いてくる『出汁巻き玉子』。たっぷりの出汁が使われて
おり焼き上がり後、瞬く間に玉子より出汁が溢れでてくる。
ひとりにひと皿この『出汁巻き玉子』が付けられるそうですが作り置きした出汁巻きなどではなく都度、焼き上げられる
出汁巻きは熱々で、ふんわりとした口あたりが味わえるものでした。
これひとつでおそらく玉子は三個ほど使われているのではないでしょうか?ボリュームもありますが、これを来店客分、
毎日焼き続けられる作業も考えてみれば大変な労でしょう。
六品めに供されたのが鴨好きにはうれしい『鴨ロース』。鴨肉はジューシーであり色、艶、香、味とも何ひとつも申し分
なくこれまたとても美味しいものでした。
そして、この後に食事、『お茶漬け』のコースに必ず供されるという自家製の『香の物の盛合せ』が供された後に御櫃に
入った『ごはん』と『赤出汁』の椀、そして熱々の『京ほうじ茶』。
香の物の盛合せ』は自家製の御漬物なそうですが色とりどりでボリュームもかなりあるものでしたが美味しいので結局、
残さず全て戴いてしまいました。
ごはん』と『漬物』、『味噌汁』のマリアージュこそ『和食の根幹』、ごはんの炊き上げが柔らかめであるとか、ごはんの
品種が云々とか申される方も居られるようですが自分に供された『ごはん』に関しては何ら不満のないものでした。
一膳めはごはんと漬物で戴き、二膳めには『柴葉漬』をオン・ザ・ライス、そう上から熱い『ほうじ茶』を注ぎサラサラと
胃袋の中に収めました。
若い女性スタッフの方は作務衣着用で機敏に動かれ応対振りもとても良く好感がもてましたし開店三十分前から並ん
でも伺って良かったと心から思いました。
京都の料理屋さんは奥が深く感動させられる店がそこかしこにありますが思っていた通り"丸太町十二段家"さんも単なる
御茶漬屋さんなどではなく魅力的な『料理屋』さんでありました。
折角、伺われるのであれば一杯の御茶代を削ってでも『季節の一品料理』と『造りの盛合せ』が味わえる『菜の花』の
コース料理以上のものを戴かれることをオススメします。
次回は『近江牛のすてーき』を戴きに必ずや再訪したいと思います。
京都御所の桜もちょうど見頃の時期、腹こなしと酔い醒ましを兼ねて咲きはじめた桜の花と名残りの梅の花を同時に
愛でながら御所内を端から端まで歩き廻り夜の宴に備えることにするのでありました(笑) 

  • (説明なし)
  • 鯛、白烏賊、ツバス。
  • 造り三点盛。

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