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1回
夜の点数:5.0
2016/06 訪問
夜の点数:5.0
素材の味を前に押し出した割烹。お腹いっぱいに美味しいものを味わえる。
2016/06/19 更新
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京都観光の後の晩御飯をどちらでいただこうか悩んだすえ、知り合いからの御紹介もありこちらにお邪魔。場所は河原町駅から南に少し行ったところ。川床も始まりムードが良くなっている鴨川を横目に見ながら、飲食店が集まる木屋町を歩いたところにあり、場所は分かりやすい。
連れと私の予定が早くなり、予定していた19時よりも早い時間のお邪魔となったが、電話で確認したところ「早まる分にはどれだけでも構いませんので、どうぞ」と快く了解してもらえる。予約の時もそうだったが、こちらのお店は電話の予約が大変丁寧で、そういうところも好感が持てる。お店の前に立つと本日は予約で満席との書き添えが。食べログの評価も高いお店だが、割烹の多いこの界隈でも人気があるお店なのだろうということが伺えた。
お店はカウンターがメイン。奥には個室もあるようだった。ご主人からご挨拶を頂いてから、お食事が始まる。連れも私もアルコールを嗜まないので飲み物はお茶とコーラにしたが、リストを見ると日本酒、焼酎、ワインと豊富に取り揃えられているように見えた。初めて伺うお店なので、事前に好き嫌いを伝えたうえでコースを注文。飲み物が来るまでのうちに次々とお客様が見えてカウンターも個室も満席になっていた。注文が集中してお店の方は捌くのが大変だったのではないかなと思う。オーダーの仕方を見ていると、アラカルトで注文している常連と思しき方のほうが多いように見えた。さてお献立は、
先付:鯛の中骨で取った煮こごり マグロの佃煮 丹波大納言で作った湯葉に雲丹乗せ
蒸し暑い日だったこともあるのか、あるいは時間を待たせないためにさっと出せるものが良いということなのか、冷たい物3品。煮こごりは鯛のあらから出た出汁の効いたゼリー。鯛の身は入っていなくて、純粋に出汁の味。マグロの佃煮は生姜を利かせた薄味で、日本酒に合いそうな感じ。丹波大納言で作ったという黒い湯葉と雲丹の取り合わせは、普通の湯葉よりも丹波大納言独特の豆の苦みというか、渋みというか、そういう味がいい意味で残っている。ただ、雲丹を乗せても黒い湯葉に黄色い雲丹なので、色味が全く映えない。味を追求して作ったのだろうということは察せられたが、これは普通の湯葉に雲丹の方が味も色味もあっていたと思う。それぞれが冷たくて口当たりも良くて食べやすいのだけど、印象に残るところはほとんどなかった。
お造り:真鯛、本マグロ、鮑、車海老、おとし鱧
見た目も華やかなお造りの盛り合わせ。海老の味が苦手の連れは車海老が雲丹に替わっていた。印象に残ったのはまずは鱧。時期的に見ても、おそらくそこまで大型になっていない柔らかい鱧だったのだろうが、骨切りが完璧でまったく口に当たらない。それなのにしっかり鱧の肉の夏の味というか、さっぱりとした脂の味がぐっと出てくる。添えの梅だれの味も良い。あとは鯛。厚めに切りつけられた身は程よく締まっており、鯛の独特の歯ごたえと共に白身の良い香り、旨みが滲み出てくる。そろそろ鯛の味も夏が近づいて落ちてくる頃なのかなという感じも持っていたが、この鯛に関してはそれは杞憂で素晴らしい味わいだった。寝かせ加減も良いのだと思う。人肌に温められた車海老もしっとりとした仕上がりで旨みが活性化されている。
椀物替わり:すっぽん小鍋立て
こちらのお店でおいしいと伺っていたすっぽん鍋。特に注文はしていなかったのだが出てきてラッキー。お出汁の利いた地にすっぽんと焼き餅、焼きねぎ。目いっぱい温められてぐつぐつといっているお鍋をフーフー言いながら食べる。たっぷりの生姜のしぼり汁も利いてさっぱりといただける。すっぽん独特の臭みは全くなく、もちろん出汁の味は最高。焼いたお餅とねぎがこの出汁をたっぷりと吸いこんでこれもたまらない。お昼に「みしな」でスープを頂いた時にも思ったが、暑いときに熱いスープを飲むのもまた美味しいものである。連れはすっぽんを食べるのは初めてだと言っていたが、こんなに美味しいものなんですねと感動していた。
お凌ぎ:鱧寿司、鯛寿司
付け焼きにした鱧のお寿司と、鯛のお寿司が一切れずつ。お凌ぎと言っても結構なボリュームがある。酢を少し強めに利かせたさっぱり味の酢飯に、脂がある鱧と、締められた鯛の味がしっかりなじんでいる。
油物:鹿児島産和牛ロースの炭火焼き 山葵
カウンターから見える炭火のグリルで焼かれる油物。こちらの名物なのか、アラカルトで頼んでいるお客様もこの品は注文されていた。タレは何もついてこない。焼いているところを見ていたが多分胡椒も振っていない。味付けは塩だけだと思う。外側をじっくり焼いて、内側までしっかり温められたミディアムレアの焼き加減。たまにある「中身が赤いだけで冷たいままのレア」とはもちろん違う。余分な脂を落とし、美味しい脂を活性化させたお肉が3切れ。添えられた山葵をたっぷり乗せて頂く。もともとお肉は塩と山葵で食べるのが美味しいと思っているので、この食べ方ができるのはうれしい。お肉の質も良く、焼き加減、火の通り具合も完璧。味が物足りないということも全くない。
焼き物:稚鮎塩焼き
夏到来を感じる稚鮎。炭火でじっくり焼かれた2尾を蓼酢でいただく。もちろん頭からかぶりつき、骨まで頂く。歯に触るところは全くなし。まだ鮎独特のお腹の苦みのようなものはないが、その分稚鮎の若々しい味を堪能でき、香りもよい。鮎を食べると夏が来たなと思うし、夏が来たら鮎を食べたくなる。今や珍しくなった、季節を感じる食材だと思う。
酢の物:じゅんさい 山葵酢和え
一転してさっぱりとした酢の物。秋田産というじゅんさいを、山葵を利かせたお酢でいただく。じゅんさいそのものは味がほとんどなくゼラチン質の食感とコリコリした歯触りが楽しいものなので山葵酢の味が決定的に重要なのだが、鼻がツンとなるほどに利かせた山葵と、飲める程度に調味されたお酢の加減がとても良い。
炊き合わせ:鱧のみぞれ煮
お造りの時も鱧が美味しいと思ったが、この日は鱧の性質が非常に良かったのだと思う。塩味のお出汁に鱧と、たっぷりの大根おろしを入れたみぞれ煮。鶏肉やカレイ等で仕立てたものは食べたことがあったが、鱧でというのは初めて食べた。これが美味しい。多分鱧の骨を使ってある出汁に、たっぷりと大根おろしが入り、口当たりも後味もさっぱりといただける。
御飯:鯛飯、赤出汁、お新香
先付とお造りで使った鯛のあらをたっぷりと使った醤油味の鯛飯。お椀によそって出てくる。もちろんおかわり可能。ここまでの流れで結構お腹にもたまっていたので一膳だけおかわりする。鯛のお出汁がしっかりと出た醤油味の炊き込みご飯を嫌いという人は多分いないだろう。
水物:マンゴー、天音メロン
マンゴーはまあ普通の味。どこで食べてもこういう味だと思う。メロンは東京の某高級ホテルのレストランでも使われている、静岡産の天音メロン。これが素晴らしくおいしい。しっかり熟して薫り高く、でも果肉は崩れずしっかりしており、十分に甘いのにしつこさはない。京都は街歩きをしているときにお菓子を食べる機会も多いので、お茶とお薄で締めるよりもこういう美味しい果物で締めるお献立のほうが良いのかもしれない。
全体を通して、素材の味を直球でぶつけてくる、食べごたえのある品が並ぶ。量もちまちましたところはない。お味は京都らしく出汁を利かせてある品が多かった。ご主人との会話も楽しく、肩肘張らない雰囲気でおいしいものが食べられる。祇園や先斗町のお店で高いお金を払って緊張しながらお食事をするなら、このお店の様に河原町界隈の割烹でお腹いっぱい美味しいものを食べるのも悪くないと思う。
コストパフォーマンスもよく、一品でもいろいろ食べてみたいお献立があるお店。京都に来た時にまた立ち寄りたいというお店ができて、お腹も心も大満足。また伺います、御馳走様でした!