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1回
夜の点数：4.5
2011/09 訪問
夜の点数：4.5
バッハの旋律と味覚の戦慄が肌を泡立てる美の神が宿る館
神は美を愛でる
2011/09/20 更新
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希有な店です。あまりの美しさにカメラを取り落としそのままオーナーの
美意識に埋もれてしまったので、店内のナゾの写真が一枚あるだけです。
自分だけの空間として独占しておきたいのですが、この美は共有できる
方には共有して頂きたいとしか言えません。
雨脚がひどくなる中、その宵、精神力を使い果たしたわたくしは、ふと
夕暮れの蒼ざめた暗さの中にグラスの煌めきと赤い光をみたのです。
それはそれは不思議な一軒家で、窓は開け放され、誰もいません。
奥の方から、それでも人好きのする甘く柔らかい光を放つ人の匂い
がしたのでふらっと飛び込んでしまったのです。
神は美に宿る、と申しますが、そこは「神はこの美を選ぶ」といえる
空間が広がっていました。取り憑かれたように声をかけると、スーツを
来たオーナーがでていらっしゃいました。ええ、もう一目でわかりますとも。
この方の美意識が目に見えるところにも、目に見えないところにも、
幾重にもはりめぐらされた空間であることが。流れるバッハが
色になって空間を煌めきながら踊ります。芸術は神に一番ちかいところ
に位置すると、日頃から羨ましくてかなわないわたくしは衝撃で目眩が
しました。手渡されたメニューブックはまさにBOOK！オーナーのレタリング
のような小さな文字でびっしりと書かれています。これはうかがうしか手はない、と
思い、苦い珈琲を、とお願いすると、迷うことなく、遠くアフリカからやってきた
原種の野性的な珈琲、というのをお勧めしてくださったのです。ええ、この
方なら「苦い」という言葉の表層だけを受け取った苦い珈琲をだしてくることはない、
と確信していました。ロイヤルコペンハーゲンのカップに入ってでてきたその液体は
わたくしの想像を遙かに越えており、その美しい舌触りに、この暑さの中にして
鳥肌がたちました。開けっ放しの窓の近くに座ってしまったので薫り立ちが
散ってしまう、と焦ってカップ上を手で包み込み、大切な瞬間を逃がすまいと
鼻を突っ込む有様。まさに神は珈琲にも宿る、７００円也。カップに唇をつける
たびに繰り返すアフリカ海岸の波のような旋律。さらに脳の一部が麻痺したように
バッハとさざ波の多色の音が色を増し、涙が滲みました。最後の一口を残した
ところでオーナーと眼が会い、山のような質問を押さえきれなかったわたくしです。
色々とお話をおうかがいしたのですがその内容はオーナーとわたくしの二人だけの
ひ、み、つ、でございます。皆様もぜひ、この夕方４時からデジャブのように街に現れる、
バッハと珈琲の館にたどりつき、人生を謳歌しているオーナーの心弾むお話を
おうかがいくださいませ。実際、わたくしも何度もこの通りをとおっているのですが
この宵まで遭遇したことがございませんでしたの。人生の新たな扉を開けようと
心定めたその時に、忽然と現れる美の館。遭遇できれば新しい人生の扉を開けられる
ことまちがいなし。郷里・広島にこの店あり！広島県民の誇りです。
また、他県の皆様、他県からこの店のためのみに旅をされても損はございません。
ただし！オーナーも比類なき旅好きゆえ必ず事前にオーナーのスケジュールを
お電話にてご確認あれ！