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閉店ひの食堂東村山、久米川/食堂、とんかつ、コロッケ
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昼の点数:4.2
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~¥999 / 1人
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料理・味 4.2
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|サービス 3.7
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|雰囲気 4.3
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|CP 4.1
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|酒・ドリンク -
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[ 料理・味4.2
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| サービス3.7
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| 雰囲気4.3
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| CP4.1
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| 酒・ドリンク- ]
陽のあたる食堂
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外観
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外観
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外観
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ポークソテー定食
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置物
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店内
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2012/11/13 更新
東村山市本町3丁目。所沢でのお目当ての飲食店が、予想だにしない臨時休業。絶望という名の暗闇に、僅かな光明を見出すため、西武新宿線・東村山駅に向かう。
東村山という街自体、これまで全く縁がなかったものの、志村けんの出身地としてあまりにも有名。ドリフターズ世代として、『8時だよ全員集合』を観るために毎週土曜日の夜を、子供時分は心待ちにしていた私。当時は東京に住んでいなくても、志村が歌う東村山音頭でこの地名は充分過ぎるほど刷り込まれてきた。
所沢より東向島の自宅へと、呆然自失の帰り道。週末貴重な時間帯、片道1時間半もかけたのに、ただ戻るだけではあまりにダメージが大きい。替わりとなりそうな店を、近くで探すべきなのか。そんな時こそ、我が心の師、ブルース・リーのあの言葉を思い出す。“Don't think.FEEL!(考えるな、感じるんだ!)”、映画『燃えよドラゴン』での有名な台詞。乱れた鼓動をゆっくりと整えていくうちに、心の声が聞こえてくる。かつて密かにブックマークしていた、東村山にある「ひの食堂」の存在が浮かび上がってきた。
あれは約1年ほど前。職場近くの大型書店にて、偶然見かけた『東京B級グルメ放浪記』という文庫本。因みに、普段は成人向けコーナーに入り浸りでも、さすがに会社の傍では誰に見られてるかもわからず。その点では抜かりはない。
パラパラと頁を捲っていると、一枚の写真に目が釘付けに。草臥れた外観が、強烈なインパクトを放つ「ひの食堂」にひと目惚れ。なぜだか著者による詳細コメントは載っていないものの、早速食ベログにて調べてみた。こちらには、すでに錚々たるレビュアーによる投稿がされていて、北多摩エリアでは知る人ぞ知る有名店のようだ。
東村山駅の東口を降り立つと、目の前に広がるのは閑散とした駅前風景。土地の値段もこの界隈は安価なのか、近年急造したような築浅なマンションや雑居ビルが建ち並ぶ。
いまや手放せなくなったスマートフォンの地図を頼りに、10分ほど歩いていく。新興住宅地に突如現われたひの食堂。鋭角なY字路にて区切られた三角敷地に佇むのは、総トタン張りのちっぽけな平屋建て。すでに食べログにて予習は済ませていたものの、改めて息を呑む存在感。映画『ALWAYS三丁目の夕日』のセットで使われてもおかしくない。
ただし唯一気になるのが、片側の壁面にベタベタと貼られた、ピースボートや探偵会社のポスター。私のレビューで何度もしつこく書いてきたけれど、この手のポスターが貼られた飲食店で当たりを引き当てたのは、ヤマザキ秋のわくわくプレゼントでお菓子の詰め合わせが当選する程度の確率。たちまち暗雲が立ち込める。
気を取り直して引き戸を開けると、店内は白い調理服を着たご主人と鉢巻を締めたおかみさんの二人だけ。時刻は13時半を回っているので、客が不在でも仕方ないのかも。
こちらのおかみさん、醤油顔のあっさりした顔立ちのご主人と対極的、きりっとした目鼻立ちで、そのまま大衆演劇の舞台に立てそうだ。私の姿を見るなり、瞳の奥には微かな警戒の光。一見客で怪しげな風貌の私を訝しがっているのだろうか。
カウンター席の中ほどに腰掛けて、目の前に貼られたメニューを眺めると、洋食メニューを中心に、600円台から1000円以内で収まる充実のラインナップ。どれにしようか迷ったものの、結局ポークソテー定食(850円)を頼む。
さっそくポークソテーの調理にとりかかるご主人。おかみさんも配膳の準備をし始める。こちらの店、未だにピンクのダイヤル式電話やブラウン管のテレビも健在ながら、清掃が行き届いているせいか、外観ほどの古めかしさは感じられず。豚肉を焼き上げたご主人は、フライパンにてソースを作っているようだが、白い粉を小さじ2杯程度投入するのを目撃。はたして旨味が増す魔法の粉との疑念は拭い切れないものの、こちらは目を瞑ることに。
注文して10分程度で、おかみさんの手によりお盆にて運ばれてきたポークソテー定食。大変失礼ながら、見た目は予想に反してかなり美味しそう。特にポークソテーは斜めにカットしているとはいえ、結構肉厚で断面はほのかにピンク色。
まずは一切れ口に放り込む。適度に柔らかくてジューシー、ケチャップベースのソースにもよく合う。それにしても、こちらのポークソテー、火入れは、ほぼ完璧ではないか。見た目は洋食屋のコックというより食堂の親父といった風体ながら、かなりの実力者とみた。そして味噌汁も予想を覆すシジミ汁。出汁もしっかり出ていて、まさにしみじみ旨いと駄洒落にもならないため息を漏らす。
私が食事の間、二人は私の目に付かない奥で、他愛もないおしゃべりに興じている。長い間連れ添ってきたお似合いの夫婦といったところか。浜田省吾の名曲『陽のあたる場所』のように、愛だけ愛だけ見つめ季節は過ぎてゆくのだろう。
入店前まですきっ腹だったので、きれいにすべて平らげた。通常この手の食堂は、経験則上、料理は二の次といったところ。この店にはその法則が当てはまらないようだ。この近隣の住民が羨ましいかぎり。
会計時に、ご主人からお釣りを受け取る際、「(お世辞抜きで)おいしかったです。ごちそうさまでした」と告げるや、カウンター奥のおかみさんがこの日一番の笑顔を示す。両頬には、可愛らしいえくぼが出来ていた。