『トンポーロ―』ぐるぬいゆさんの日記

ぐるぬいゆのレストランガイド ~ Cordovaは43℃!

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ぐるぬいゆ (60代前半・男性・神奈川県) 認証済

日記詳細


食べログのレビューワーの皆さんは、食に詳しい方が多いので
以下の話は私の教養の無さをさらけ出すだけかも知れませんが、
ご勘弁をお願いします。

トンポーロ―という中華料理があります。
豚の角煮の中華料理版です。
本当は先にトンポーロ―があってこれが日本に伝えられて豚の角煮になったのです、
本質的には同じものです。
調理法の違いとしては、トンポーローの場合は八角を入れて煮込む点が日本料理の豚の角煮との違いです。

トンポーローは漢字で「東坡肉」と書きます。
この漢字に何の疑問も持っていなかったことが敗因です。
実は「東坡」とは宋代の政治家兼詩人・文人であった、

「蘇東坡(そ・とうは)」に由来する名前であり、

「東坡肉」の発明者こそが「蘇東坡」であったのですね。

蘇東坡は詩人として蘇軾(そ・しょく)という名で知られており、後世に残る作品を書いています。
一番有名なのが


春夜
         蘇軾

春宵一刻値千金    (←一発漢字変換しました、びっくり)
花有清香月有陰
歌管楼台声細細
鞦韆院落夜沈沈

しゅんしょういっこくあたいせんきん
はなにせいこうありつきにかげあり
かかんろうだいこえせいせい
しゅうせんいんらくよくちんちん


リズミカルでいい歌です。
「鞦韆」とは「ブランコ」のことらしいです。

話がそれました。

蘇東坡は何故「東坡肉」を作ったのか。

政治家蘇東坡は王安石に反対したことが原因で
黄州というところに左遷させられてしまいます。
しかしその地で東坡は農業を振興し、農民からは感謝されます。

貧しい農民たちは、当時決して高級品ではなかった豚肉をさくさん東坡に贈ります。

さて東坡は、この食材をどうしたものか悩みました。

どれほど悩んだかは知りませんが、悩んだ末に編み出したのが
「東坡肉」であると言われています。

実は東坡はかなりの美食家であったらしく、自ら料理をこなし、
挙句は豚を食べることを礼賛する詩まで作ってしまいました:


食猪頌 (しょくちょこう)

食猪肉 (しょくちょろう)

黄州好猪肉  (黄州猪肉を好む)
価銭等糞土  (価銭糞土に等し)
富者不肯喫  (富者喫す肯へんず)
貧者不解煮  (貧者煮るを解せず)

慢著火     (慢著なる火)
少著水     (少著なる水)
火候足時他自美 (火候足る時他自ら美し)
毎日起来打一椀 (毎日起きて来りて一椀を打つ)
飽得自家君莫管 (飽くるを得ること自家たるも君管すること莫れ)


訳してみます

「黄州にはいい豚肉があるさ
 値段はばかみたいに安いよ
 金持ちは豚肉を食べようともしない
 貧乏人は豚肉の食べ方を知らねえ

 火は弱火で
 水は少なく、
 火がうまく通った時には自然ときれいな色になるのさ
 毎日起きると碗に一杯できあがっている
 自分で満足してやっているだ、口を挟まないでくれ 」


政治家としての蘇東坡は不遇でしたが、
優れた芸術としての詩と、
素晴らしい食卓のメニューは
人類の永遠の財産となっているのです。

天国で東坡も喜んでいることでしょう

ぐるぬいゆ


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