6回
2023/02 訪問
"鍋(なべ)"两箇(ふたつ) あれど難儀(かたき)は "隨意點菜(ア・ラ・カルト)" それを處理(こな)すは 主人(あるじ)の才覺(ちから)
靑陽(はる)の"野菜(のゝくさ)"、"蔬菜(あをもの)"、
仍(すなは)ち、"荚果蕨芽(こゞみ)"、"楤芽(たらのめ)"、"蜂斗菜(ふきのたう)"、
"竹笋(たかむな)"を堪能(こゝろゆくまであぢはふ)。
尋常(つね)の如(ごと)く、"小基圍蝦(さやまき)"、"星鳗(はかりめ)"も、、。
當日(このひ)の"星鳗(はかりめ)"も、
「"黏性分泌物(ぬる)"には無頓着(おかまひな)くその儘(まゝ)油煠(あ)ぐ」ること、
大畧(およそ)二分(にミニウト、≒120s)。
秋毫(つゆ)臭氣(くさみ)皆無(な)く、適度(ほどよ)き風韻(かをり)。
"衣(ころも)"厚(あつ)くして輭(やはらか)なる『あづま』と異(こと)なり、
薄衣(うすごろも)にして酥脆(さくさく)。
とは云へ、
"芝麻油(ごまあぶら)"馨(かを)る『あづま』の"星鳗(それ)"も難捨(すてがたし)。
待塲(まちば)の"老舖天麩羅店(しにせてんぷらや)"には、
合理的(それなり)の"存在意義(ながくあきなひのつゞくことわり)"有(あり)。
だが、"味(あぢ)"に限定(かぎる)なら『一心』が贏(まさ)る。
隨意(まにまに)、"活魚(いけうを)"堪能(あぢは)へるは極樂(こゝちよきかぎり)。
"東都(えど)"、"駿州(すんぷ)"、などには高名店(よにかくれなきみせ)"あれど、
何處(いづこ)も、貴價(ねがたか)く、"廚師發辦(おまかせ)"のみ。
"隨意點菜(ほしいまゝのしなえらび)"は、
"鍋(なべ)"の温度(あつさ)に依(よ)る"天麩羅(これ)"では最高難度(いとかたし)。
两箇(ふたつ)の"鍋(なべ)"を活用(つか)ふとは云へ、
この難題(やゝこしさ)を解決(と)くには、
"油炸(あげ)"の廚藝(わざ)も然(さ)ることながら、
異(こと)なる需(もとめ)を"竝列處理(ともにさばく)"智慧(ちゑ)が必須(いる)。
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.6~F5.6
安徽長庚光學(Venus Optics)老蛙(LAOWA)4/10 Cookie @F8
1 * * * * *
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)※2022-08
2023/02/27 更新
2022/08 訪問
活魚(いけうを)も 何(なに)を需(たの)むも 放埓(ほしいまゝ) 寛(ゆるりくつろ)げ 適正價格(ねづけほどよし)
無據(よんどころなき)事情(わけ)、
否(いな)、『いしまる』"御内儀格(おかみにひとしきかた)"ゟ(より)、
「『一心』●●ちャん、《近來(ちかごろ)卍(まんじ)の姿(すがた)見(み)ず》」
と仄聞(みゝに)し、有一日(あるひ)勇躍(いさみて)遠征(あしをはこぶ)。
開扉(とびらひら)くや、眼前(めのまへ)には前述(くだん)の"●●ちャん"。
廚房(くりや)には、"千葉大輔親方(ちばだいすけおやかた)"の外(ほか)、
右腕(みぎうで)の徒弟(でし)"木村鴻太郎(きむらこうたらう)"が控(ひか)へ、
手藥煉(てぐすね)引(ひ)きて冢中枯骨(それがし)を俟(ま)つ。
"師傅(おやかた)"、開口一番(それがしがすがたをみとめて、くちをひらくや)、
「今日(けふ)は"星鳗(あなご)"が厶(ござ)りまする。」
「据膳(すゑぜん)食(くは)ぬは丈夫(をのこ)の恥辱(はぢ)、©毒さま✨.:*゚:.。:.
饐膳(すえぜん)食(く)らふは體軀(からだ)に害毒(どく)。※←アタリマヘダ 」
とて、再度(またも)、
随意(このみにしたがひ)・隨時(まにまに)注文(たの)むことゝ相成(あひな)る。
と、"師傅(おやかた)"、
「今日(けふ)は"木村(きむら)"が煠(や)りまするが可以嗎(よろしうござるか)?」
奴吾(やつがれ)、
「可以可以(よかよか、くるしうない、えェでえーでェー、かまへんかまへん)」
と本性(がら)にも無(な)く鷹揚(こせこせゝず、あくせくもせず)に對應(ふるまふ)。
まッ、爰(こゝ)は技倆(てなみ)拜見(かしこみかしこみ、みさせていたゞきまする)!
當日(このひ)は、
前述(くだん)の"星鳗(はかりめ)"に、常態(つね)のごとく"小基圍蝦(さやまき)"、
加旃(しかのみならず)、"香魚(あゆ)"までもが"活魚(いけ)"といふ陣容(かほぶれ)。
"年魚(あゆ)"は"江州琵琶湖(びはこ)"。
劈頭(いやさき)に"啤酒(むぎのあはざけ)"にて口腔洗滌(のみどをうるほす)。
次(つ)いで"菜譜(しながき)"ゟ(より)、"小基圍蝦(さやまき)"、
"菜豆莢(さやいんげん)"、"生鯷仔(なましらす)"、"蘆笋(アスパラ)"、
"香魚(あゆ)"、"茄子(なすび)"、"星鳗(はかりめ)"、"蕃薯(りうきういも)"。
"親方(おやかた)"自慢(むねをは)る一品(ひとしな)"生鯷仔(なましらす)"。
これを最上級(いとよき)"紫菜乾(ほしあまのり)"にて捲(ま)き火(ひいれ)。
"生薑醬油(くれのはじみ+まめびしほ)"にてその儘(まゝ)噉(くら)ふが吉(よい)。
とは云へ、これはこれで職人(あげて)の智慧(かしこさ)。
"蘆笋(アスパラ)"は"徒弟(かれ)"の天麩羅烹調法(やりかた)を觀察(み)んがため。
根本(ねもと)の皮(かは)を剝(む)き、一刀兩斷(ふたつにわか)ち、
「下部(した)先(さき)、上部(うへ)後(あと)」に鍋(なべ)へと擲(おと)す。
油煠之(これをあぶらにあげ)、各々(おのおの)をまた一刀兩斷(ふたつにわかつ)。
かゝる做法(やりかた)、
安易(やすきにつく)とは斷言(い)はねども、廚藝(わざ)とまでは難言(いひがたし)。
食感(はごたへ・したざはり)は佳味(そこそこよ)く、
"師傅(おやかた)"との相違(たがひ)は輕微(わづか)。
扨(さて)、
當日(このひ)颳目(まなこけづりてみ)るべきは"星鳗(はかりめ)"。
"天麩羅職人鼎談(あれ)"にて、"黏性分泌物(ぬる)"に話題(はなし)が及(およ)ぶも、
その處理(あつかひ)は三者三樣(みたりそれぞれ)。
某(あるもの)は、
「"黏性分泌物(ぬる)"は完全除去(すみずみまでぬぐひさ)るべし!」、
と言ひ、また某(あるもの)は、
「油煠(あぐ)ることでその"癖(くせ)"を芳香(かぐはしきかをり)と化(な)す」と。
當家(こちら)は"活魚(いけうを)"。
"親方(あるじ)"謂曰(いひていへらく)、
「"黏性分泌物(ぬる)"には無頓着(おかまひな)く、その儘(まゝ)油煠(あげ)、、」
されど、"癖(くせ)"も"臭氣(にほひ)"も無(な)く、鮮美(すこぶるよきあぢ)。
掉尾(いやはて)に"水果(このみくさのみ)"たる"芒果(まんご)"を追加(くは)へ、
對價(あたひ)、六千二百七十圓也(ろくせんにひやくしちじふゑんなり)。
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)、鐁(やりがんな)。
"天婦゜羅"りん、變體假名(へんたいがな)とチャイまんがな。
三種(みくさ)に及(およ)ぶ”活魚(いけうを)”、
無理强(むりじ)ひせず、何(なに)を需(たの)むも放埓(ほしいまゝ)。
寛(のんびりくつろ)げ、"價格(ね)"も適正妥當(Reasonable、うちうなづけるもの)。
豫約(あらかじめせきとる)は不要(いらぬ)、若(も)しくは容易(たやすい)。
背後(そびら)に"老板(たにまち、もちぬし、かねづる)"ありと云へど、
畧(ほゞ)"千葉親方(ちばおやかた)"が自由裁量(やりたいまゝ)。
東都(えど)ばかりか、駿府(するが)、名古屋(なごや)に名店(なだかきみせ)あれど、
これほどの"滿足感(みちたりかた)"、鄙(ひな)固有(ならでは)。
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.2~F4
2022/09/04 更新
2022/03 訪問
脾撓(はらへり)て 靑陽(はる)の『一心』に 若菜(わかな)喰(く)ふ 我(わ)が懐(ふところ)は 空(から)になりつゝ
近傍(ちかく)の印房(はんこや)に所用(ついで)があり、午餔(ひる)は『一心』。
勿論(いふまでもなく)、
直近(すぐまへ)に遠征(あしはこび)し『さとかた』同樣(とおなじく)、
靑陽(はる)固有(ならでは)、"野菜(のゝさちやまのさち)"が目的(ねらひ)。
劈頭(いやさき)に"白葡萄酒(しろきえびかづらのさけ)"を貰(もら)ひ、
"小對蝦(さやまき)"、"荚果蕨(こゞみ、くさそてつ)"、"楤芽(たらのめ)"、
"款冬薹(ふきのとう)"、"姫小鯛(ひめこだひ)"、"笋(たかむな)"、"星鳗(あなご)"。
對價(あたひ)、三千五百圓也(さんぜんごひやくゑんなり)。
"荚果蕨(こゞみ、くさそてつ)"、"楤芽(たらのめ)"、"款冬薹(ふきのとう)"、
"笋(たかむな)"は『さとかた』と共通(おなじ)。
但(たゞ)し、"笋(たかむな)"の寸法(おほきさ)・刀工(きりつけかた)が、
『さとかた』と『一心』とでは異(こと)なる。
可惜(をしくらく)は"星鳗(はかりめ)"。
旣(すで)に魚市塲(うをいちば)にて〆たるもの。
以爲(おもふに)、
天麩羅(てんぷら)の"蝦(えび)"、"星鳗(あなご)"、は"活(いけ)"に限(かぎ)る。
豹變(コロコロと、てのひらかへ)すは卑怯者(ひけふもの)、
熾火(おこるひ)に、百遍返(ひやつぺんかへ)すは地燒(あ)の鰻鱺(むなぎ)、
中毒化(あぢをしめ)、二度目(うらをかへす)は"姫小鯛(ひめこだひ)"。
と云ふ仔細(わけ)で、またも"炸姫小鯛(これ)"を堪能(こゝろおきなくあぢはふ)。
"鍋(なべ)"は銅(あかゞね)两箇(ふたつ)。
食材(てんだね)の固有特性(くせ、もちあぢ)に順(したが)ひ、
高温油(あつきあぶら)と低温油(ぬるきあぶら)を併用(ふたつながらにつかひわく)。
"炸豬排(ぶたかつ)"の名店(なだかきみせ)を髣髴(おもひおこさずといふことなし)。
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)NOKTON 1.2/35 @F2.2~F2.6
銘匠光學 TTArtisan 1.4/35 @F2.4 ※2022-01-25
2022/03/20 更新
2022/02 訪問
五種(いつゝ)もの 特徴(よさ)を兼備具有(かね)たる "姫小鯛(ひめこだひ)" 早晩(いづれ) 人氣天種(ひくてあまたのてんだね)に
「大宮近邊(このあたり)では出色(きはだちたる)"天麩羅(てんぷら)"」
との印象(おもひ)があり、此度(こだみ)は"套餐(きまりめし)"を試(ため)す。
"掻揚(かきあげ)"を追加(くは)へ、
對價(あたひ)、四千一百圓也(しせんいつぴやくゑんなり)。
前囘(まへ)と同樣(おなじく)、活(いけ)の"小對蝦(さやまき)"ゟ(より)。
油煠(あ)ぐること、"腳(あし)で"大畧(およそ)一分(いつぷん)、
"胴體(からだ)"が大畧(およそ)五十秒(ごじふべう)ほど。
"芯(なか)"はと矚(み)るに、猶(なほ)半生狀態(なまなましさ)を保持(たもつ)。
"海扇(ほたてがひ)"、"姫小鯛(ひめこだひ)"、また同樣(しかり)。
對照的(かた)や、"甘藷(りうきういも)"は、
慢慢地(ゆるり)、着色(いろづ)き酥脆(カリカリ)となるまで火(ひ)を通(とほ)す。
かくのごとく、"火候(ひいれ)"の廚藝(わざ)は秀逸(ひいでたるものあり)。
當日(このひ)、瞠目(めをみは)りしは"姫小鯛(ひめこだひ)"。
およそ東都(えど)の"天麩羅(てんぷら)"とは、
江戸湊(えどみなと)に揚(あ)がる小魚(こまかきうを)を活用(いか)し、
"苣蕂(ごま)"や"榧實(かやのみ)"の油(あぶら)に煠(あ)ぐるが定石(ならひ)。
京坂食文化(にし)の影向(やうがう、ありがたくもかしこきおでまし)もあり、
"蔬菜(あをもの)"用(つか)ふが常態(あたりまへ)となりし現今(いま)も、
"魚(うを)"となると、"沙鮻(きす)"、"大眼鯒(めごち)"、"鰕虎(はぜ)"、
"錦鳚(ぎんぽ)"、"星鳗(はかりめ)"、となるが傳統(いにしへよりつたはるならはし)。
ところが、しかし、しかるに、さはあれ、されど、But、しかはあれども、However、
"姫小鯛(ひめこだひ)"には肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。
"Chelidoperca hirundinacea"、"スズキ目スズキ亞目ハタ科ヒメコダイ亞科ヒメコダイ屬"。
輒(すなは)ち、あの"石斑魚(はた)"の同類(なかま)。
不味(あぢあし)き理由(ことわり)も無(なし)。
これに限(かぎら)で、"美虎鱚(とらぎす)"、"隆頭魚(べら)"など、
「釣(つり)の外道(げだう)」扱(あつか)ひさるゝ小魚(ちいさなうを)も、
"天麩羅(てんぷら)"にするや、須臾(たちまち)にして鮮美(よきあぢ)と化(な)る。
身(み)の輭(やはらか)さなら、"沙鮻(きすご)"、"鰕虎(はぜ)"、
"膠原(にかはのもと)"に富(とみ)、
火候(ひいれ)不足(たらざ)れば臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふが錦鳚(ぎんぽ)、
"星鳗(あなご)"は舌(した)に滑(なめ)らかにして魫(うをのあぶら)豐富(ゆたか)。
"姫小鯛(ひめこだひ)"は、その何(いづ)れとも異質(ことなる)と雖(いへど)も、
その都(すべ)てを兼備具有(かねそなへ)たる稀有(めづらし)き魚(うを)。
「旣(すで)に人氣(ひくてあまた)の天種(てんだね)」との評判(うはさ)も、、。
老舖(しにせ)はさておき、魁(さきがけ)は舉(こぞ)りて採用(とりいる)ゝ歟(か)?
前囘(まへ)も感服(したをまき)たる"地瓜(りうきういも)"。
この廚藝(わざ)、他(ほか)の食材(もの)に應用(つかひまはす)も可能(よし)。
冢中枯骨(それがし)、
葎家(むぐらや)の廚房(くりや)では"黎祁(とうふ)"を用(つか)ふ。
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiß Jena)MC Flektogon 2.4/35 @F2.4 ※絞り不調のため開放
銘匠光學 TTArtisan 1.4/35 @F2.4 ※2022-01-25
2022/02/28 更新
2022/01 訪問
「臨機應變(きにぞみ おもひもかけぬ ことすらも ものともせぬは)」 こちらの廚師(いたまへ)
『栗天』が"薄衣(うすごろも)"には「肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)」。
かくて、近來(ちかごろ)人口膾炙(ひとびとのうはさとな)る、
四谷左門町(よつやさもんちやう)『尚半』訪問(たづぬ)れど、
"胡蘿蔔(せりにんじん)"の他(ほか)一(ひと)つとして感服(とるにたる)ものなし。
そんなところに×北村大膳(きたむらだいぜん)〇『てんぷら 一心』。
「ことに據(よ)ると、鄙(ひな)には稀(まれ)なる天麩羅店(てんぷらや)歟(か)?」
と、俄頃(にはか)に色(いろ)めきたち、
某日(あるひ)晝响(ひるめしどき)訪問(あしをはこぶ)。
肆(いちくら)を差配(しきる)は"千葉大輔(ちばだいすけ)"親方(おやかた)。
臺塲日航飯店『吉野』ゟ(より)『天ぷら おのでら』を經由(へ)て『一心』に、、。
廚房(くりや)には、"金田石城(←キライダケド)"が直筆(て)になる"一心"なる書(しよ)。
「地元名士(このあたりのかた)に厶(ござ)りまして、、」との説明(よし)。
參考(ちなみ)に"おのでら"とは、
かの×惡名高き〇勇名(なをは)す"LEOC"が一事業(あきなひ)。
『鮨 おのでら』には夥(あまた)著名(なだか)き傳説級寄稿家(かたがた)も、、。
『一心』の經營者・老板(あるじ)、不詳(つまびらかならず)。
「"單點(à la carte、このみのまゝのしなえらび)"も可以(よろし)」
との言質(こと)なれば、破廉恥(はぢしらず)にして鐵面皮(あつかまし)くも、
"小對蝦(さやまき)" 、"星鳗(はかりめ)"、"障泥魷魚(いか)"、"甘薯(からいも)"、
と、廚藝(わざ)の巧拙(よしあし)易判(わかりやす)き天種(もの)を注文(たのむ)。
油(あぶら)は"太白巨勝油(たいはくごまあぶら)"、粉(こな)は"日淸バイオレット"、
鍋(なべ)は"黃銅(あかゞねもどき)"。
以下(つぎ)のタネ(もの)に、"白葡萄酒(しろきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、
對價(あたひ)、三千七百圓也(さんぜんしちひやくゑんなり)。
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天種(てんだね) 炸時間(あげじかん) ※註釋(ひとこと)
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・"小對蝦腳(さやまきのあし)"
・"小對蝦(さやまき)" 40" ※芯(なか)は半生(なかばなま)
・"楤芽(たらのめ)" 1'10"
・"障泥魷魚(あふりいか)" 1'48" ※芯(なか)は半生(なかばなま)
・"荚果蕨(こゞみ、くさそてつ)"
・"星鳗(はかりめ)" 2'05"
・"地瓜(からいも)" ---
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どの天種(たね)にも最初(いやさき)に"麪粉(むぎのこ)"を塗(まぶ)す。
平均(おしなべ)て薄衣(うすごろも)なれど、
活(いけ)の"小對蝦(さやまき)"には油鍋(あぶらなべ)に投入後(いれたるのち)、
衣(ころも)を滴下(したゝらす)(タラーリタラリ)。
結果(したがひ)、腹側(はらがは)は厚衣(あつきころも)と相成(あひな)る。
これを「谷中之質店(やなかのしちや)©毒さま✨.:*゚:.。:.」と喚做(よびな)す。
愚按(やつがれおもふに)、
『栗天』のごとき、究極至高(このうへもな)き"薄衣(うすごろも)"が吉(よい)。
"鹽(しほ)"に二種(ふたくさ)あれど、
冢中枯骨(それがし)用(つか)ひしは"ヒマラヤ黑岩鹽(くろきいはじほ)"一種(のみ)。
適(あ)ふは臣僕(やつがれ)知盡(よくしるところ)。
"星鳗(はかりめ)"と"蕃薯(からいも)"の一缺片(ひとかけら)は天汁(てんつゆ)。
"障泥魷魚(あふりいか)"の衣(ころも)は『栗天』同等(なみ)。
「甘味重視(あまみをおもん)じ〆てゟ(より)三日目(みつかめ)」との由(よし)。
やはり天麩羅(てんぷら)の"纜魚(いか)"は、
"眞烏賊(すみいか、=かふいか)"、もしくは"障泥魷魚(あふりいか)"が最適(よい)。
"星鳗(はかりめ)"はと觀察(み)るに、
割(さ)きて打麪粉(こなをうち)衣(ころも)に潛(くゞ)らせ、
香(かぐ)はしく油炸(あげ)て金箸(かなばし)にて三分割(みつわり)に、、。
"體表面粘性分泌物(ぬる)"不除去(さらぬまゝ)なれど、畧無臭(ほゞくさみなし)。
唯一無二(いづくにもなき)廚藝(わざ)は"蕃薯(からいも)"。
網站(ネット)に閲覽(み)る限(かぎ)り、
『吉野』、『おのでら』の"甘薯(それ)"とも異質(こと)なる獨創性(あたらしさ)。
加旃(しかのみならず)、『栗天』とも、かの『近藤』(未訪)とも、、。
低温(ぬるめ)の油(あぶら)に霎時(しばし)放置(うちやり)、
これを引揚(ひきあ)げ、高温(たかめ)の油(あぶら)にて二度揚(にどあ)げ。
その後(のち)、餘熱(よねつ)を利用(つか)ふことなし。
油(あぶら)に接(ふ)るゝ斷面(きりくち)は、かくのごとき"甘藷片(いもひら)"に。
知味者(よくあぢをしるかた)曰(いへら)く:
「熟々(つらつら)"天麩羅(てんぷら)"を惟(おもんみ)るに、
一齊烹飪(ひとしくきりさきにたて)し一齊提供(ひとしくいだす)が理想(よい)」
實(げ)にも!
"味(あぢ)"と"處理效率(まはしやすさ)"を追求(おひもと)むるなら、
それが最善(このうへなし)。
だが、それが客(たべて)の嗜好(このみ)に適合(あふ)か否(いな)かは別(べつ)。
扨(さて)、"單點(à la carte、このみのまゝのしなえらび)"なら、、?
客(ひと)は"Poisson arrivals(ポツポツ、バラバラ、さみだれのふるがごとし)"。
十中八九(あらかた)"套餐(きまりめし)"なれど、
中(なか)には、老骨(やつがれ)が若(ごと)き顰蹙者(はなつまみ)、
放埓(ほしいまゝ)、無理無體・我儘三昧(わがまゝだらけ)の鼠輩(やから)も、、。
それを處理(こな)すも否(いな)も技倆次第(うでによる)。
"套餐(きまりめし)"の合間(あひま)を縫(ぬ)ひ、
活魚(いけうを)を捌(さば)き、打麪粉(こなをうち)、衣(ころも)に潛(くゞ)らせ、
剩(あまつさ)へ、油温(あぶらのあつさ)をも調整(とゝのへ)ねばならぬ。
"鮓店(すしや)"でも、
名店(なのあるみせ)で修業(わざをならひおぼえ)た職人(もの)の多數(おほく)は、
"竝列多元處理(いくつものことなるわざを、ひとしくこなす)"を得手(えて)とせず。
"天麩羅店(てんぷらや)"もこれに無所大差(おほきくことなるところなし)。
以爲(おもふに)、"千葉大輔(ちばだいすけ)"親方(おやかた)、
"臨機應變(きにぞみ、おもひもかけぬことをものともせぬ)"、
"竝列多元處理(いくつものことなるわざを、ひとしくこなす)"に長(た)けた、
稀有(まれ)なる廚師(いたまへ)。 ←※卑見(IMHO)
「興味(きにな)る天麩羅店(てんぷらや)」を質問(とふ)に、
即(すなは)ち應答(いらへ)て、駿府(するがのくに)『N生』の名(な)。
他(ほか)には、
尾州(をはりのくに)『N留』、武州橘樹郡(むさしのくにたちばなのこほり)『M』も。
武州足立郡大宮(むさしのくにあだちのこほりおほみや)と云ふと、
人民大衆(おほむたから)の糧(かて)には『天婦ら あづま』、『歩留食』あれど、
鮓(すし)『いしまる』、意大利菜(いためし)『Soratio』、『リストランテ ヲガハ』、
『銀座アスター大宮賓館』、『東晶大飯店』、冷麪(れいめん)『高麗两班』くらゐのもの。
嗚呼(あゝ)、
『銀座アスター大宮賓館』、『高麗两班』旣(すで)に廢業(なし)。
將來(いづれ)、客人(ひと)増加(ふ)え、價格(ね)も昂騰(あが)るやしらねども、
「現時點(いま)は稀有(まれ)なる佳店(よきみせ)」と斷言(いはざるべからず)。
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舖(みせ) 小對蝦(さやまき) 星鳗(はかりめ)
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※『一心』 40秒 2分05秒
『いは井』 36~55秒 2分30秒~4分10秒
『魚新』 55秒 2分55秒
『からくさ』 --------- ≒3分
『栗天』 40秒 2分
『天あさ』 58秒~1分20秒 5分
『天秀』 1分05秒 ---------
『天孝』 1分30秒 3分餘
『てん茂』 43秒 ---------
『尚半』 1分58秒 7分43秒
『はせ川』 28秒~55秒
『花むら』 --------- 3分30秒
『深町』 1分10秒 5分~7分
『みかは是山居』25~35秒 5分
『美かさ』 30秒 4分40秒
『みやこし』 2分10秒 6分05秒
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:銘匠光學 TTArtisan 1.4/35 @F2.4~F4
安徽長庚光學(Venus Optics)老蛙(LAOWA)2.8/9 ZERO-D @F8
2022/02/25 更新
久方(ひさかた)ぶりの『一心』。
通例(つね)の如(ごと)く、"小基圍蝦(さやまき)"、"星鳗(はかりめ)"は活(いけ)。
"荚果蕨芽(こゞみ)"、"楤吻頭(たらのめ)"、"款冬花(ふきのしうとめ)"、
と、靑陽(はる)の"野菜(のにはゆるな)"を堪能(こゝろゆくまであぢはふ)。
"螢烏賊(ほたるいか)"は、
「豫(あらかじ)め溏油(にだしゞる)以て煮(に)、油炸(あぶらにあげ)たるもの」とか。
眼球(めんたま)を拔(ぬ)くなど、適切(たゞし)き下處理(したごしらへ)が施(ほどこ)され、
なかなかに華美(よきあぢ)。
"鍋(なべ)"は两箇(ふたつ)。
無所懐疑(まがふかたなき)光輝(ひかりかゞや)く"銅製(あかゞね)"の"鍋(なべ)"。
銅(あかゞね)、銀(しろかね)、鐵(くろがね)、黃金(こがね)。
氣兼(きが)ね、指矩(さしがね)、無錢(ぜにがねー)。
"鍋(なべ)"には、"太白巨勝油(いりをくはへぬごまのあぶら)"。
刀創(かたなきづ)には、"陣中膏(じんちうかう)蟾酥(がまのあぶら)"、
筑波山麓(つくばさんろく)大葉子(おんばこ)噉(くら)ひて育(そだ)つ四六蟾蜍(しろくのがま)、
懐中(ふところ)の蛤蟆口(がまぐち)開(あ)けても無錢(ぜにがねー)。
扨(さて)、御立合(おたちあ)ひ!
これに取出(とりいだ)しましたるは、西海(にしのうみ)に漁(すなど)られし"星鳗(はかりめ)"。
己(おのれ)の運命(さだめ)を豫見(し)つて歟(か)?、不知(しらず)歟(か)?、
口(くち)を開(あ)け、身(み)を捩(よぢ)り、今生(このよ)との別(わか)れを惜(を)しむ。
斬首(くびをきら)れ、
薄衣(うすごろも)を纏(まと)ひ、その軀(むくろ)は油鍋(あぶらなべ)の中(なか)に、、。
嗚呼(あゝ)、"星鳗(あなご)"殺(ごろ)し、油(あぶら)の地獄(ぢごく)。
南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)、南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)!
金箸(かなばし)以て四(よつ)に寸斷(きら)れ、此方(こなた)に、、。
勿愕(おどろくなか)れ、"山蓼(わさび)"+"山椒粉(なるのはじかみのこ)"+"煮詰(につめ)"。
「"山蓼(わさび)"と"煮詰(につめ)"は鮓店(すしや)、
"山椒粉(なるのはじかみ)"は鰻鱺店(むなぎや)」となるが常道(よのつね)。
上等油(よきあぶら)なら"炸麪花(あげだま)"も上質(よきもの)。
、、と云ふ仔細(わけ)にて、"炸麪花(これ)"を家苞(いへつと)にして頂戴(いたゞく)。
"炸麪花切麥(たぬきうろん)"に適當(よし)と雖(いへど)も、
"炸麪花切麥(これ)"には、"焙煎芝麻油(いりたるごまあぶら)"なら尚吉(なほよい)。
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【暗匣】:日本光學 尼康(Nikon)Zf 無反光鏡可換鏡頭照相機(MILC、みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)APO-LANTHAR 2/50 @F2.8
福倫達(Voigtländer)Color-Skopar 3.5/21 Asph. @F11