酔狂老人卍さんのマイ★ベストレストラン 2016

『此世をハ と里(り)や お暇尓(に) せん古(こ)う能(の) 煙りと供尓(に) 者(は)ひ 左樣なら』 (十返舎一九)

メッセージを送る

酔狂老人卍 (70代以上・男性) 認証済

マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

コメント

(1)
毎年恒例『うを徳』。
丸6年、月に二度ペースが人気が出て月一度に、、。
”お節”も毎年こちら。
何よりズブズブの”ゆるさ”がよい!
人気が出て、数年前のように平日昼にフラリ寄れなくなったのが玉に疵。

(2)、(3)
『猪股』、『ラチュレ』は、遠からず人気沸騰し、予約すら取りづらくなること間違いなし。
凄かった!
旨かった!
でも、入れなくなったら行かない。
行くなら今のうち!

(4)
さしたる修業経験こそないものゝ、気楽で舌に馴染むビストロ料理を出す春日部駅前『Bien』。
箪笥店三代目主人は、料理好き、話好き。
自慢のパンは東京の名店より落ちるし、牛肉はOZ、と、食材は一流店に見劣りする。
だが、そんな、
 ・「気軽で一寸だけ気の利いたビストロ」
それでよい。
月に二度は予約なしにひょっこり覗く。

(5)
『からくさ』。
"玉締め絞り胡麻油"を使った軽い”天扶羅”。
笑顔の眩しい夫婦二人の細々とした商いに心和む。

(6)、(7)
王子のリアルレトロ、惣菜の『三吉』に、街場中華『福楽』。
何より建物がそゝるし、主人の人柄に癒される。
味は至って"普通"。
その"普通"、"当たり前"が、今や、「風前の灯火」。

(8)
向島の料亭御用達煎餅『いりむら』:
看板も見当たらず、外観はボロボロの駄菓子屋そのもの。
値が高騰しても紀州備長炭を使い続ける心意気。

(9)
鰻の『味治』:
家族ばかりの商い。
値も廉く、夜の"串"(←未食)に期待。

(10)、(11)
★★★『まき村』、★『いち太』は言わずもがなの美味。
好きな店だが、もはや、自力で予約を取ってまで行く気なし。

(12)
館林『恵三』は某誌で紹介され、人気沸騰確実。

マイ★ベストレストラン

1位

うを徳 (東向島、曳舟、京成曳舟 / 寿司)

51回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 -
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.8

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 ¥20,000~¥29,999

2024/03訪問 2024/03/20

「龍膽鳳髄(うみやまの めづらしきあぢ)」 盡(づ)くしにも 安堵(こゝろのなご)む "款冬未醤(ふきみそ)"の佳味(あぢ)

"櫻鯛(さくらだひ)"に"螢烏賊(ほたるいか)"、"若銀口魚(わかあゆ)"、
"櫻鰕(さくらえび)"、"飯蛸(いひだこ)"、"油菜(なばな)"、"款冬(ふき)"、"(たかむな)"、、
と、靑陽(はる)の息吹(いぶき)を、眼(め)で知(し)り、舌(した)で悟(さと)る
"棘鬣魚(まだひ)"は、"卵巢(たまご)"に"精巢(しらこ)"まで、、。

「"鳥蛤(とりがひ)"は初夏(なつのはじめ)のもの」、、
と思(おも)ひきや、「早春(はるのはじまり)にも」との(よし)。
"身肉(み)"ばかりでなく、"(きも)"も"螢烏賊(ほたるいか)"と一緒(とも)に堪能(あぢはふ)。
×忻(だま)し、×嵩増(かさま)し、〇雋永(いとうまし)

久方(ひさかた)ぶりの"(かはかめ)"。
"野生(いけやかはにすむもの)"歟(か)?、"養殖(ひとがやしなひそだてたるもの)"歟(か)?、
"大小(おほきさ)"、"性別(めすをす)"、"時季(とき)"、"(え)"、、等々(などなど)、
それらに依存(よ)り、その"味(あぢはひ)"千差萬別(さまざま)

そこは高名(よにかくれな)き、
遠州濱名湖(はまなこ)《服部中村養鼈塲(はつとりなかむらやうべつじやう)》の"(かはかめ)"。
"小宮親方(こみやおやかた)"の廚藝(わざ)と相乘效果(あひま)り、
不味(あぢあし)き理由(ことわり)あるべからず

《上總竹岡(たけをか)》"(たちうを)"、《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、
"魨精巣(ふぐのしらこ)"、亦(また)然(しかり)。
可特筆(かきしるすべき)は"この鯖(まさば)"! (※産地失念)
時季(いまどき)あり得(え)ぬに寸尺(おほきさ)肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。

掉尾(いやはて)の"菓子(このみくさのみ)"は勿論(いふもさらなり)。
龍膽鳳髄(うみやまのめづらしきあぢ)」盡(づ)くしの内(うち)、敢(あ)へて一(ひとつ)、
、、となると、"款冬未醤(ふきみそ)"を推舉(あぐ)。
其處其所(そこいら)に自生(お)ふる山野草(のゝくさ)故(ゆゑ)の佳美(よきあぢ)

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・"擬制櫻餈(さくらもちひもどき)"+《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)卵巣(たまご)"
  ・"鮑魚(あはび)"+《越中滑川(なめりかは)》"螢烏賊(ほかるいか)"
  ・"炊合(たきあ)はせ"の等類(たぐひ)
    ・《駿河灣(するがわん)》"櫻鰕蛋捲(さくらえびいりだしまきたまご)"
    ・"油菜(なばな)"
    ・《播州明石(あかし)?》"飯蛸(いひだこ)"
    ・《薩州(さつま)》"笋(たかむな)"、w/裙带菜(わかめ)
  ・刺躬(さしみ):
   ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"
    ・《蝦夷地(えぞち)》"蝦夷馬糞靈臝子(えぞばふんうに)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚精巣(まだひしらこ)"
  ・"款冬(ふき)未醤(みそ)"
  ・《蝦夷餘市(よいち)》"華臍魚肝(あんかうきも)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》"若銀口魚(わかあゆ)"
  ・"山蓼莖(わさびのくき)"
  ・《上總竹岡(かみつふさたけをか)》"魛(たちうを)"

(しるもの)】:
  ・『服部中村養鼈塲(はつとりなかむらやうべつじやう)』"鼈(かはかめ)"

(すし)】:
  ・《豐後姫島(ひめじま)》"基圍蝦(くるまえび)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"
  ・"鰤(ぶり)"
  ・《薩州甑島(こしきじま)》"縱帶鰺(しまあぢ)"
  ・《丹後宮津(みやつ)》"鳥蛤(とりがひ)"
  ・《丹後宮津(みやつ)》"鳥蛤肝(とりがひきも)"
      +《越中滑川(なめりかは)》"螢烏賊(ほたるいか)"
  ・《陸州八戸(はちのへ)》"鮪(しび)"、中肥(ちうあぶ)
  ・"魨精巣(ふぐのしらこ)"
  ・"鯖(あをさば)"
  ・《薩州出水(いづみ)》"眞烏賊(すみいか、かふいか)"
  ・《肥後天草(あまくさ)》"小鰶(こはだ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・柑橘類(たちばなのみのたぐひ)
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:日本光學 尼康(Nikon)Zf 無反光鏡可換鏡頭照相機(MILC、みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)APO-LANTHAR 2/50 @F2.8
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(DSLR、ディジいち) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
切支丹暦(きりしたんごよみ)甲辰歳一月(きのえたつのとしむつき)は、
毎年恆例(いつもの)"新年會(ふるくからのまじはりをなつかしみ、あらたなるとしをいはふうたげ)"。
此度(こだみ)は"虎魨(とらふぐ)盡(づ)くし"。
何(なん)でも、「《上總大原(おほはら)》の九百匁(≒3.4kg)」と云ふ。

劈頭(いやさき)に堪能(あぢは)ふは"精巢(しらこ)"の"蕪蒸(かぶらむし)"。
掉尾(いやはて)には、紀州備長炭(すみび)に炙(あぶ)り"(すし)"仕立(じた)てに、、。
"蕪蒸(かぶらむし)"に續(つゞ)き、
(ひれ)の"魚凍(にこゞり)"、(み)の"油炸(からあげ)"と、三所攻撃(みところぜめ)。

加旃(しかのみならず)、
五百八十七匁(≒2.2kg)《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"、
八百五十三匁(≒3.2kg)《豫洲八幡濱(やはたはま)》"白黃檣魚(しろくづな、あまだひ)"、
、、、と、「卍殺(まんじごろ)し、白身地獄(しろみのぢごく)」。

《蝦夷地根室落石(おちいし)》"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"、
名殘(なごり)の"鱲子(からすみ)"に《遠州濱名湖(はまなこ)》"鰻鱺(むなぎ)"まで、、。
《奧州氣仙沼(けせんぬま)》の"(しび)"に《陸州閖上(ゆりあげ)》の"(あかゞひ)"も、
不可不觸(ふれぬわけにはゆかぬ)顏(かほ)の彌次郎兵衞喜多八(やじらべゑきたはち)。

擂鉢(すりばち)、王八蛋(わうはち)、犬(いぬ)のハチ
曾根奈津子(なつこ)愕(おどろ)く、大食虛談(おほぐひ、うそ?)の『萬八樓(まんぱち)』、
舞妓(まひこ)白塗(しろぬ)り、卍(まんじ)の得手(とくい)恥(はぢ)の上塗(うはぬ)り
、、と云ふ次第(わけ)にて今年(ことし)も夜露死苦(しくよろ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《上總大原(おほはら)》"虎魨精巢(とらふぐしらこ)"、九百匁(≒3.4kg)
  ・《上總大原(おほはら)》"虎魨魚凍(とらふぐにこゞり)"
  ・《上總大原(おほはら)》"炸虎魨(とらふぐからあげ)"、
            w/《山背(やましろ)》"京芋(えびいも)"
  ・刺躬(さしみ):
    ・《上總大原(おほはら)》"虎魨(とらふぐ)"、九百匁(≒3.4kg)
    ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"、五百八十七匁(≒2.2kg)
    ・蝦夷地根室落石(おちいし)》"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・完熟(ねかしおきたる)"鱲子(からすみ)"
  ・《陸州大間(おほま)》"赤沙噀(あかなまこ)"+《蝦夷地箱館(はこだて)》"鱈精巢(くもこ)"
  ・《雲州五十猛(いそだけ)》"(かつを)"藁燒(わらやき)大蒜醬油(おほひるまめびしほ)
  ・《遠州濱名湖(はまなこ)》"鰻鱺(むなぎ)"

(しるもの)】:
  ・《豫洲八幡濱(やはたはま)》"白方頭魚(しろくづな)"骨邊肉(あら)、
      w/聖護院蕪菁(せうごいんかぶら)の"淸湯(すましゞる)"

(すし)】:
  ・《勢州桑名(そのてはくはなの)》"膾殘魚(しらうを)"
  ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"
  ・《上總大原(おほはら)》"虎魨精巢(とらふぐしらこ)"
  ・《奧州氣仙沼(けせんぬま)》"(しび)"
  ・《陸州閖上(ゆりあげ)》"(きさ、あかゞひ)"
  ・《越中氷見(ひみ)》"(ぶり)"
  ・《豫洲八幡濱(やはたはま)》"白黃檣魚(しろくづな)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・(みかん、たちばなのみ)两種(ふたくさ)
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:日本光學 尼康(Nikon)Zf 無反光鏡可換鏡頭照相機(MILC、みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)APO-LANTHAR 2/50 @F2.8
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(DSLR、ディジいち) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
〆(しめ)の『うを德』。
「♪會得(えとく)、逃得(にげどく)、中(あた)れば死(し)ぬのは"魨毒(ふぐのどく)"。
 解毒(げどく)、積讀(つんどく)、歌(うた)つて踊(をど)るは"TikTok(ティックトク)"。」
てなこと口遊(くちづさ)みつゝ、人(ひと)を俟(ま)つ。

「♪松樹(まつのき)ばかりが松(まつ)じやなし~、
 おそ松(まつ)、ちよろまつ、十姊妹(じふしまつ)~~、市松(いちまつ)、とゞ松(まつ)ッ、、、」
とかなんとか一節(ひとふし)吟(うな)るうちに、待人(まちびと)來(きた)れり。
來(き)たか朝三(てうさん)、暮四(くれにはよつぶ)。

、、と云ふ仔細(わけ)にて、
劈頭(いやさき)に、《江州琵琶湖(びはこ)》の"冰魚(ひうを)"に"幅海苔(はゞのり)"。
遉(さすが)、”小宮親方(おやかた)”、
深奧(おくふか)くして、淸冽(きよらかにすめ)る味(あぢはひ)

(つぎ)は、
能州(のと)》の"赤沙噀(あかなまこ)"に《蝦夷網走(えぞちあばしり)》"大口魚精巢(くもこ)"。
これ亦(また)、風味佳絕(たぐひまれなるあぢかをり)!
"蘿蔔泥(おほねおろし)"も吉(よし)。

久方(ひさかた)ぶりの《陸州閖上(むつのくにゆりあげ)》"(きさ、あかゞひ)"。
當日(このひ)は"(はらわた)"も、、。
"(かに)"は、×"森香澄(もりかすみ)"〇《但馬香住(たじまのかすみ)》"雌楚蟹(せこがに)"ゝ、
隱岐(おき)》の"雪蟹(すはへがに)"。

今季(ことし)の掉尾(いやはて)を飾(かざ)る”鰻魚(むなぎ)”は、
《遠州濱名湖(とうとうみのくに、はまなこ)》に揚(あ)がりし、一百八十七匁(≒700g)。
"(うをのあぶら)"少(すく)なめなれど、
皮下(かはのした)の"明膠(ゼラチン、にかはのたぐひ)"が舌(した)に纏(まと)はりつく。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》冰魚(ひうを)+"幅海苔(はゞのり)"
  ・《能州(のと)》"赤沙噀(あかなまこ)"+《蝦夷網走(あばしり)》"大口魚精巣(たらくもこ)"
  ・《蝦夷利尻(りしり)》"牙鮃(ひらめ)"、七百四十七匁(≒2.8kg)
  ・"靈臝子(うに)"
  ・《陸州閖上(ゆりあげ)》"蚶(きさ、あかゞひ)膓(わた)"
  ・《隱岐(おき)》"雪蟹(すはへがに)"
  ・"雲紋石斑魚(くゑ)"
  ・"芋(さといも)"
  ・"鮞(いをのこ)"
  ・《遠州濱名湖(はまなこ)》の"鰻鱺(むなぎ)"、百八十七匁(≒700g)、"素燒(しらやき)"

(しるもの)】:
  ・"淸湯(すましゞる)"
    《但馬香住(かすみ)》"雌楚蟹(せこがに、=めすのすはへがに)"+"鴨脚子(ぎんなん)"
      +"壬生菜(みぶな)"

(すし)】:
  ・《隱岐(おき)》"雪蟹(すはへがに)"
  ・《越中氷見(ひみ)》"鰤(ぶり)"
  ・《奧州氣仙沼(けさんぬま)》"鱵魚(さより)"
  ・《薩州出水(いづみ)》"竹筴魚(まあぢ)"
  ・《蝦夷戸井(とゐ)》"鮪(しび)"
  ・《越中氷見(ひみ)》"鰹《越中氷見(ひみ)》"鰹(かつを)堅魚(かつを)"
  ・"雞蛋糕(たまごやき)"
  ・《陸州閖上(ゆりあげ)》"蚶(きさ、あかゞひ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・覆盆子(いちご)
  ・橘(みかん、たちばなのみ)
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
劈頭(いやさき)に"法式淸湯(コンソメ、すましゞる)"。
「"黃蓋鰈(まこがれひ)"の骨邊肉(あら)ゟ(より)烹調(こしらへ)まして、、」
とは"亭主(あるじ)"の辯(はなし)なれど、"(うし)"の風韻(かをり)。
「"牛脛肉(うしのすね)"も、、」と附言(つけくはふ)。

ついで、"小宮親方(おやかた)"十八番(おはこ)の"燈籠椒泡沫(パプリカ・ムース)"。
當日(このひ)の"法式淸湯(コンソメ、すましゞる)"や、
過日(あのひ)の"醉蠘(ゑはせがに)"ともども、
異鄕(よそ)の(うけ)・廚藝(くりやわざ)に精通(くはし)き證明(あかし)

と、眼前(めのまへ)には、
《壹岐(いき)》"雲紋石斑魚(くゑ)"、四百八十匁(≒1.8kg)がドーーーーーン!
これを捌(さば)きて"薄作(うすづく)り"の"刺躬(さしみ)"に、、。
後(のち)、"(すし)"にも用(つか)ふ。

"棘鬣魚(まだひ)"、"牙鮃(ひらめ)"、"(しび)"は"非加熱(なま)"が適切(よ)く、
"雲紋石斑魚(くゑ)"など"石斑魚(はたのたぐひ)"、
加之(くはふるに)、"六線魚(あゆなめ)"、"大翅鮶鮋(きちじ)"などは、
"加熱・煮熟(ひをとほす)"が最善(なにより)。

豫(かね)て噂(おとにき)く"蓬莱枾(ほうらいし)"。
そも《蓬莱枾(ほうらいし)》とは震旦渡來(もろこしわたり)の"無花果(からがき)"。
かの《とよみつひめ》は、
蓬莱枾(ほうらいし)》と《桝井ドーフィン》の交雜種(かけあはせ)とか、、。

扨(さて)、
茲(こゝ)で《蝦夷根室(ねむろ)》の"狹眞魚(さまうを)"。
いや、"狹眞魚(これ)"は"(なま)"で吉(よし)、"(やく)"も吉(よし)!
"煮熟(にる)"も亦吉(またよし)!

《備州兒島灣(こじまわん)》の"鰻鱺(むなぎ)"。
百六匁(≒400g)と小振(こぶ)りなれど、
皮下(かはのした)は、"(うをのあぶら)"と"明膠(にかはしつ)"に豐富蓄積(とむ)。
《雲州宍道湖(しんじこ)》は一貫目(いつかんめ)十萬圓超(じふまんゑんごえ)とか。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・"燈籠椒泡沫(パプリカ・ムース)"、w/蕃茄醬(あかなすびしほ)
     ※『C』譲(ゆづ)りの招牌(かんばん)
  ・《越後魚沼津南(うをぬまつなん)》 〔鬼もろこし〕"玉蜀黍(なんばんきび)"
     
  ・《長良川(ながらがは)》"香魚(あゆ)"
     ※頭(かぶと)は油炸(あげ)て、その儘(まゝ)口中(くち)に、、、
  ・《飛州高山(ひだゝかやま)》"宿儺南瓜(すぐなかぼちやうり)"
     ※蔥頭(たまねぎ)+鮪大肥(しびおほあぶ)を黃油炒(バタいため)して、、
  ・《常州(ひたち)》"笠間栗澁皮煮(かさまぐりしぶかはに)"
  ・《壹岐(いき)》"雲紋石斑魚(くゑ)"、四百八十匁(≒1.8kg)、
     "(さしみ)"、w/"酢橘(すだち)"+"山蓼(わさび)"
  ・《蝦夷禮文島(れぶんたう)》"紫靈螺子(むらさきうに)"
  ・《蓬莱枾(ほうらいし)》"無花果(からがき)"
     ※保管熟成(しばらくうら)したるもの
  ・《蝦夷根室(ねむろ)》"狹眞魚(さまうを)"、
     "指身(さしみ)"、w/蘿蔔絲(せんろふ、おほねせん)
  ・《備州兒島灣(こじまわん)》の"鰻鱺(むなぎ)"、百六匁(≒400g)
     "素焼(しらやき)"

(しるもの)】:
  ・"法式淸湯(コンソメ)"
    黃蓋鰈(まこがれひ)の骨邊肉(あら)+牛脛肉(うしのすね)ゟ(より)

(すし)】:
  ・《下總銚子 (しもつふさてうし)》"(しび)"
  ・《壹岐(いき)》"雲紋石斑魚(くゑ)"
  ・《下總銚子(しもつふさてうし)》"(まいはし)"
  ・"黃蓋鰈(まこがれひ)"
  ・《陸州渡會(とかい)》"魁蛤(あかゞひ)"、w/"外套膜(ひも)"
  ・"墨魚(すみいか、かふいか)"
     ※新烏賊(わかきいか)
  ・"(あはび)"
     ※酒煮(さかに)

果子(このみくさのみ)】: ※撮影失念(とりわすれ)
  ・《羽州庄内刈屋(かりや)》"刈屋梨(かりやなし)"
  ・《陸州(むつ)》"黃桃(きもゝ)"
  ・《甲州(かひ)》〔甲斐路(かひぢ)〕"葡萄果實(えびかづらのみ)"
  ・"柘榴(ざくろ)"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
早起(はやお)きは三文(さんもん)の得(とく)、
JK(ジェイケイ)嵌(はま)まる"抖音(TIKTOK)"。
ごね得(どく)、背德(はいとく)、魨毒(ふぐのどく)、
當日(このひ)嚮(むか)ふは、武州葛飾郡寺島村(てらしまむら)の『うを德』。

眼前(まのまへ)には"蠑螺(さゞい)"。
產海(すなどりしはま)は「西伊豆(にしいづ)」との説明(よし)。
嘗(かつ)ては"中華蠑螺(こやつ)Turbo cornutus 1786"に一括(くゝら)れしかど、
六年前(むとせまへ)、"蠑螺(さゞい)Turbo sazae 2017"として辯別(しわけらる)。

仍(すなは)ち、
分類學上(しわけのうへ)では"新種(しんしゆ)"扱(あつか)ひ。
この新聞(しらせ)、「驚天動地(ちをふるはせ、あめおどろかさずといふことなし)」。
蒙(それがし)、亦(また)、「肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)」。※←ウソデス

活(いけ)の"錦鳚(ぎんぽ)"も眼前(めのまへ)に、、。
これを油炸(あぶらにあげ)、"淸湯(すましゞる)"と做(な)す。
"錦鳚(このうを)"、"膠原質(にかはのもと)"を多量(おほ)く含有(ふく)むゆゑ、
"火候(ひいれ)"不足(たらざ)れば、彊(つよ)き齒應(はごた)へを遺(のこ)す。

そこはそれ、百戰錬磨(あまたのいくさたゝひた)る"小宮健一親方(おやかた)"のこと。
適切無比(ほどよく、たゞしき)"火候(ひいれ)"に依(よ)り、
"膠原質(にかはのもと)"は"明膠(やはらか)"と化(な)る。
"油炸錦鳚(てんぷら)"が最善(なにより)なれど、"淸湯(これ)"も、また、吉(よし)。

茲(こゝ)で、"吸口(すひくち)"の"椒芽(きのめ)":
勿論(いふまでもなく) 、"山椒(なるのはじかみ)"の若芽(わかめ)であり、
"小宮健一親方(おやかた)"丹精(こゝろ)込(こ)めたる葉(は)。 ※←チトオホゲサダケド
そもそも、"はじかみ"とは"山椒(なるのはじかみ)"を意味(さ)す。

近來(ちかごろ)では、"(くれのはじかみ)"、
それも、"かくのごときそへもの"を指(さ)すが風習(ならひ)。
元祖・本家・家元(もともと)の"はじかみ"は"山椒(さんせう、なるのはじかみ)"、
などゝ喚做(よびな)さるゝ憂目(うきめ)に、、。

掉尾(いやはて)には"果子(くだもの)"の一(ひとつ)、"桃實(もゝのみ)"。
"(もゝ)"とは震旦渡來(もろこしわたり)の果樹(ものなるき)にして、
"●●●"所緣(ゆかり)"の纏向遺蹟(あそこ)"から"(たね)"が出土(ほりいださ)れ、
更(さら)に古(ふる)くは、六千年前(むちとせまへ)まで遡(さかのぼ)ると云ふ。

だがしかし、さはあれ、However、しかはあれど、
"もゝ"なる辭(ことば)、
元來(もとより)、在來種(いにしへよりこのちにねづく)"山桃(やまもゝ)"を指(さ)す。
蒙(それがし)が陋屋(あばらや)近傍(ちかく)にも、かゝる"山桃(やまもゝ)"。

漢土傳來(もろこしよりつたはり)し"(こやつ)"が、
自生(そこいらにおふ)る"山桃(これ)"に換(か)はりて"もゝ"と呼(よ)ばれ、
"山桃(もともとの、もゝ)"は"からもゝ"と改名(なをあらたむ)。
嗚呼(あゝ)、南無三寶(なむさん)!

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・"玉蜀黍(なんばんきび)豆腐(どうふ)"、
     w/《羽州白神山地(しらかみさんち)》の"蓴(ぬなは)"
  ・《紀州白濱(しらはま)》の"鰒(あはび)"、w/《豆州(いづ)》の山蓼(わさび)
     +"靑茄子(あをなすび)"、w/"鱁鮧(うるか)の"風味(あちとかをり)
  ・"冬瓜(かもうり)"、w/"海扇(ほたてがひ)"+"紅椒(パプリカ)"
     +天狗印"神綠"牌"菽(えだまめ)"
  ・《西伊豆(にしいづ)》の"蠑螺(さゞい)"、壺燒(つぼやき)
  ・"Baccarat"の盤(さら)に〔刺躬(さしみ)〕
    ・《豐後(ぶんご)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ)"、四百匁(≒1.5kg)
    ・《淡路(あはぢ)》"棘鬣魚(まだひ)"
    ・《蝦夷禮文島(れぶんたう)》の"靈螺子(うに)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"吻鰕虎魚(ごり、≒よしのぼりorぬまちゝぶ)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"鰻鱺(むなぎ)"、百四匁(≒390g)

(しるもの)】:
  ・《奧州松島灣(まつしまわん)》油炸(あげ)"錦鳚(ぎんぽ)"、
     w/椒芽(きのめ)

(すし)】:
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"鰻魚(むなぎ)"、蒲燒(かばやき)
  ・《豐後(ぶんご)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"
  ・《豫州(いよ)》の"赤海膽(あかうに)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"香魚(あゆ)"
  ・《蝦夷羽幌(はぼろ)》の"富山鰕(ぼたんえび、=とやまえび)"
  ・萬願寺辣椒(まんがんじなんばんこせう)
  ・《丹後舞鶴(まひづる)》のの"竹筴魚(まあぢ)"
  ・《三州三河灣(みかはわん)》の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・e.t.c.(などなど)

果子(このみくさのみ)】:
  ・"桃實(もゝのみ)"
  ・"靑檸雪葩(ライムソルベ)"
  ・"シャインマスカット"、葡萄實(えびかづらのみ)
  ・"紅秀峯"、櫻桃(さくらんぼ)
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06

またもや"活烏賊(いきいか)"。
前囘(まへ)は《相州佐島(さじま)》の"唇瓣烏賊(かみなりいか)"、
此度(こだみ)は同(おな)じ《相州佐島(さじま)》の"眞烏賊(すみいか、かふいか)"。
好醜(よしあし)は保留(さてお)き、差異(ひらき)灼然(いやちこ)。

だが、"障泥烏賊(あふりいか)"となるとその相違(たがひ)は顯著(いちじるし)く
(し)ゝて、周知(みながし)る"甘味(あまみ)"と"黏性(ねばり)"が生(うま)る。
熟々(つらつら)そのその原理(ことわり)を推察(うかゞ)ふに、
かの"富山鰕(とやまえび)"や"北國赤鰕(ほつこくあかえび)"に酷似(よくにる)。

仍(すなは)ち、
これらは"蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)"を比較多(ほかよりおほ)く含(ふく)み
死(し)するや、
"グリシン"などの"甘味(あまみ)"と"黏性物質(ねばり)"を生(う)む。

加旃(しかのみならず)、
"黏性物質(ねばり)"は味覺(した)をして鋭敏(さと)から强(し)む
×「死諸葛走生仲達(しせるこうめい、いけるちゆうだつをはしらす)」
〇「死北國赤鰕惑生饕餮(しせるほつこくあかえび、いけるものずきのしたをまどはす)」

愚按(やつがれおもふに)、
"唇瓣烏賊(かみなりいか)"や此度(このひ)の"眞烏賊(すみいか、かふいか)"も、
蝦夷(えぞ)の"活魷(いけするめいか)"と同樣(おなじく)、
"(いけ)"固有(ならでは)の特長(よさ)が顯著(きはだつ)。

當日(このひ)の白眉(とびきりよきもの)は、
"うすゐまめ"と喚做(よびな)す"豌豆(のらまめ)"。
能(よ)く、"顏色(いろみ)"を留(とゞ)め、"食感(はごたへ)"を殘(のこ)す。
「"黏性(とろみ)"は"葛粉(くづのこ)"」との説明(よし)。

丹後(たんごのくに)《宮津(みやつ)》と讀(よ)み違(たが)へしは、
上總(かみつふさ)《富津(ふッつ)》の"鳥蛤(とりがひ)"。
宮津(みやつ)》の産(もの)より小振(こぶ)りながらも"天然物(てんねんもの)"。
この"(はらわた)"も鮮美(すこぶるよきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《阿州(あは)》の"笋(たかむな)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"冰魚(ひうを)"
           +"万願寺辣椒(まんぐわんじなんばんこせう)"
  ・《相州佐島(さじま)》の"活(いけ)眞烏賊(すみいか、かふいか)"、
           w/「田代農園(たしろなうゑん)の」"山蓼(わさび)"
  ・《陸州下北(しもきた)》の"櫻鱒(さくらます)"
  ・《陸州鹽釜(むつしほがま)》の"蚫(あはび)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、八百八十匁(≒3.3kg)刺躬(さしみ)
  ・《蝦夷(えぞ)》、"蝦夷馬糞靈臝子(えぞばふんうに)"
  ・《房州富津(ふッつ)》の"鳥蛤(とりがひ)"、膓(はらわた)+外套膜(ひも)
  ・"豌豆(うすゐまめ)"
  ・《越中滑川(なめりかは)》の"螢烏賊(ほたるいか)"

(しるもの)】:
  ・《播州明石(あかし)》の"眞鯛(まだひ)"、潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・《上總富津(ふッつ)》の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、皮(かは)
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、身(み)
  ・《相州佐島(さじま)》の"眞烏賊(すみいか、かふいか)"
  ・《三州(みかは)》の"江瑤(たひらぎ)"
  ・《上總竹岡(たけをか)》の"鱵(さより)"
  ・《長州宇部(うべ)》の"基圍蝦(くるまえび)"
  ・《蝦夷余市(よいち)》の"鰮(まいはし)"
  ・《房州勝浦(かつうら)》の"鮪(しび)"
  ・"虎河魨精巢(とらふぐしらこ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・"日向夏橘(ひむかなつみかん)"
  ・"古都華(ことくわ)"覆盆子(いちご)
  ・"冰酪(あいすくりん)"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06


×永劫不變〇毎年恆例(つねにかはら)ぬ、
切支丹暦新年(きりしたんごよみのあらたなるとし)を祝(いは)ふ醼(うたげ)。
"白身魚(しろみうを)"比較(くらべ)」の需(もとめ)に應(したが)ひ、
《明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"に《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"。

稀有(いとめづらし)き《相州佐島(さじま)》"(いけ)唇瓣烏賊(かみなりいか)"、
"黃金蠘(こがねかに)"、"鰕虎子(はぜからすみ)"、"魁蛤肝臓(あかゞひのきも)"、
×"特殊鷺"〇"特殊野味(なにやらいはくありげな、のゝとりけだもの)"、
《越前(ゑちぜん)》産(のゝにかりし)、"(まがも)"に"鹿肉(かのしゝ)"も。

"(あはび)"、"鳥蛤(とりがひ)"の"肝臟(きも)"ならいざ不知(しらず)、
"魁蛤(あかゞひ)"の"肝臟(きも)"は初體驗(はじめて)。
幼少期(いとけなきころ)"罐頭(かんづめ)"にて噉(くら)ひし例(ためし)あるも、
"款冬未醤(ふきみそ)"とは、遉(さすが)、"小宮親方(おやかた)"!

(いけ)」の"唇瓣烏賊(かみなりいか)"には興味津々(こゝろひかるゝものあり)。
"障泥魷魚(あふりいか)"に"富山鰕(ぼたんえび、とやまえび)"は、
(いけ)」と、「(なま)」とでは大差(おほきなるたがひ)
その緣由 (ことのよし)、死後(しにたるのち)の"黏性物質(ねばりけ)"に有(あり)。

"黏性物質(ねばりけ)"は人(ひと)の味覺(した)を欺瞞(あざむ)く
その限(かぎ)りでは、
"唇瓣烏賊(かみなりいか)"は死後(しにたるのち)"黏性(ねばり)"を生(う)まで、
(いけ)」と、「(なま)」の差異(たがひ)は僅少(わづか)

掉尾(いやはて)の"巧克力冰酪(シヨクラトヲあいすくりん)"製造(つくる)に、
「"攪拌機(かきまぜからくり)"無(な)かりしゆゑ、
 只顧(ひたすら)手(て)にて攪拌(かきま)ぜ捏繰(こねく)り廻(まは)し、、
とは"主人(おやかた)"の苦勞談(はなし)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》"香魚(あゆ)"+"魦(いさゞ)"、有馬煮(ありまに)
  ・《相州佐島(さじま)》"唇瓣烏賊(かみなりいか)"、墨煮(すみに)
  ・"魁蛤肝臟(あかゞひきも)款冬未醤(ふきみそ)"
  ・《肥前小長井(こながゐ)》"鮮蠔(かき)"
  ・《越前(ゑちぜん)》"鳧(まがも)"、w/笋(たかむな)
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、八百五十匁(≒3.2kg)刺躬(さしみ)
  ・《相州佐島(さじま)》"唇瓣烏賊(かみなりいか)"刺躬(さしみ)
  ・"靈臝子(うに)"
  ・《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"、五百十匁(≒1.9kg)刺躬(さしみ)
  ・"鰕虎子(はぜからすみ)"
  ・"鱲子(からすみ≒ぼらのこ)"

(しるもの)】:
  ・《越前(ゑちぜん)》"鹿肉羹(かのしゝのあつもの)"
  ・《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)潮汁(うしほじる)"

【鮓(すし)】:
  ・《房州勝浦(かつふら)》"鰹(かつを)"
  ・《相州佐島(さじま)》"唇瓣烏賊(かみなりいか)"
  ・《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)
  ・"黃金蠘(こがねがに)"、三百四十匁(≒0.9kg)
  ・《陸州鹽釜(しほがま)》"鮪(しび)"中肥肉(やゝあぶより)
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"
  ・《陸州鹽釜(しほがま)》"鮪(しび)"精肉(あかみ)
  ・"魁蛤(あかゞひ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・"さくらもゝ草莓(いちご)"
  ・"はるか金柑(きんかん)"
  ・"橘(みかん、たちばなのみ)"
  ・"巧克力冰酪(シヨクラトヲあいすくりん)"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
率爾(にはか)に罹病(やまひをわづら)ひし"小宮親方(おやかた)"。
先(ま)づは治癒之(これをなほし・いやす)が最重要・最優先課題(なにより)
斯(か)くして、鮓店(みせ)は臨時休業(ときならぬやすみ)と相成(あひな)り、
蒙(それがし)、右往左往(ゆきばをうしなふ)。

未完治(いまだやみあがらぬ)とは云へ、
再開業(ふたゝびあきなひはじめたり)」との速報(しらせ)せを受(う)け、
疾(と)く疾(と)く再見參(あしをはこびなほす)。
迎(むか)ふるは、未熟(いまだうれざ)る《淡路(あはぢ)》"鱲子(からすみ)"。

同(おな)じく、《淡路(あはぢ)》の"圓斑星鰈(ほしがれひ)"は七百廿匁(≒2.7kg)、
《備州兒島灣(こじまわん)》の"鰻鱺(むなぎ)"が二百匁(≒740g)、
加旃(しかのみならず)、《江州琵琶湖(びはこ)》の"諸子(もろこ)"、
《伯州境港(さかひみなと)》"楚蟹(まつばがに、≒すはへがに)"まで、、。

斯樣(かやう)に、通例(つね)の若(ごと)く"美饌(よきうけ)"盡(づく)くしなれど、
就中(わきても)、《相州橫須賀(よこすか)》"剝皮魚(かはゝぎ)"、
これを"潮汁(うしほじる)"、
仍(すなは)ち、"淸湯(すましゞる)"仕立(じた)てと做(な)すは初體驗(はじめて)。

女(をんな)醉(ゑ)はすは色男(いろをとこ)。 ※←ザンネンナガラ、ワシデハナイ!
"雌蠘(めがに)"(ゑ)はすは、夏華四千年(もろこしよちとせ)の祕技(ひめわざ)。
"小宮師傅(おやかた)"、それを自家藥籠中(みづからのてのうち)にするばかりか、
自製(てづから)の"洋梨雪葩(やうなしソルベ)"までへ眼前(めのまへ)に、、。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《淡路(あはぢ)》"鱲子(からすみ≒とゞのこ)"
       w/"聖護院菘根(しやうごいんかぶら)"
  ・《泉州灘(いづみなだ)》"烏魚子(からすみ)" ※無写真(とりわすれ)
  ・《蝦夷地(えぞち)》"狹眞魚(さまうを)"、有馬煮(ありまに)
  ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)刺躬(さしみ)"、七百廿匁(≒2.7kg)
  ・《米利堅(めりけん)》"靈臝子(うに)"
  ・《蝦夷仙鳳址(せんぽうし)》"鮮蠔(なまがき)"
  ・《蝦夷斜里(しやり)》"大口魚(たら)精巢(くもこ、≒しらこ)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》"諸子(もろこ)"
  ・《伯州(はうき)~因州(いなば)》"醉蠘(よはせがに)"
  ・《伯州境港(さかひみなと)》"楚蟹(まつばがに、≒すはへがに)"
  ・《備州兒島灣(こじまわん)》"鰻鱺(むなぎ)"、二百匁(≒740g)
  ・《陸州大間(おほま)》目鹿鮪(めじ、≒こぶりのしび)

(しるもの)】:
  ・《相州橫須賀(よこすか)》"剝皮魚(かはゝぎ)"、潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・《相州橫須賀(よこすか)》"剝皮魚(かはゝぎ)"
  ・《伯州境港(さかひみなと)》"楚蟹(まつばがに、≒すはへがに)"
  ・《豊前海(ぶぜんのうみ)》"蚶(あかゞひ)"
  ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"
  ・"基圍蝦(くるまえび)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・洋梨(やうなし)"雪葩(ソルベ)"
  ・無花果(からがき)、二種(ふたくさ)
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.4~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
當日(このひ)は久々(ひさびさ)老骨(それがし)唯一人(たゞひとり)。
眼前(めのまへ)の竹笊(たけざる)には"楤芽(たらのめ)"。
通例(つね)のごとく"掃愁帚(さけ)"も用意(を)かれてをり、
劈頭(いやさき)に、《土州四万十(しまんと)》の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"。

貴價(いとねのたか)き"花山椒(なるのはじかみのはな)"まで被添(そへら)れ、
これを慢慢地(ゆるり)と堪能(こゝろゆくまであぢはふ)。
次(つ)いで、《山州塚原(やましろのくにつかはら)》の"白子笋(しらこだけ)"。
こちらには風習(ならひ)の"椒芽(きのめ、=くれのはじかみのわかば)"。

と、俎上(まないたのうへ)には、
×天狗(てん●)〇《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"、
その重量(めかた)五百六十匁(≒2.1kg)と云ふ。
"身肉(み)"と"裙邊(えんがは)"それに"肝臟(きも)"を刺躬(さしみ)に、、。

上述(くだん)の"楤芽(たらのめ)"と《江州琵琶湖(びはこ)》"稚年魚(ちあゆ)"は、
"天麩羅(てんぷら)と烹飪(な)す。
敢然(あへて)雞蛋(にはとりのたまご)不使用(つかは)ねど、
"油煠楤芽(こ)"の美(うまさ)、常態(つね)に寸毫無變(つゆことなるところなし)。

"炸稚年魚(ちあゆあげ)"は、
火候(ひいれ)を两段階(ふたとほり)に變化(かへ)て提供(いだす)。
"第一組(ひとくみめ)"は(あさ)く"第二組(ふたくみめ)"は(ふか)く、、。
仍(すなは)ち、『』の"對蝦(くるまえび)"と同樣(おな)じ烹調法(やりかた)。

"花山椒鍋(なるのはじかみのはなのなべ)"として二種類(ふたくさ)。
最初(いやさき)に《泉州岸和田(きしわだ)》の"鳥蛤(とりがひ)"、肝臟(きも)つき。
"身肉(み)"の食感(はごたへ・したざはり)は勿論(いふまでもなく)、
"肝臟(きも)"特有(ならでは)の鮮味(うまみ)に失魂(たましひをうしなふ)

次(つ)いで俎(まないた)には《蝦夷壽都(えぞちすッつ)》"櫻鱒(さくらます)"。
一貫九十匁(≒4.1kg)といふ肥胖(ふくよかさ)に、
茫然自失(ことばをうしなひ、そのばにたちつくす)こと霎時(しばし)。
"これ"に依據(よ)らば、「板鱒(いたます)」と喚做(よびな)す固體(しろもの)。

"楤芽(たらのめ)"・"椒芽(きのめ)"と一緒(とも)に"(なべ)"に投入(い)れ、
"(わん)"へと移(うつ)す。
不味(あぢあし)き理由(ことわり)皆無(あるべからず)
"(すし)"にまで不惜(をしむことな)く"櫻鱒(このます)"を活用(つかひまはす)。

今季初(ことしはじめて)、活(いけ)の"鰻鱺(むなぎ)"は、
《備州兒島灣(きびのくにこじまわん)》、大畧(およそ)一百匁(≒380g)のもの。
通常(つね)のごとくこれを"志ら燒(しらやき)"に、、。
"(かは)"酥脆(さくさく)、その"(み)"は向崩潰(いまにもくづれんばかり)。

然(しか)はあれど、當日(このひ)の白眉(はくび)は"雞蛋糕(たまごやき)"。
活(いけ)"對蝦(くるまえび)"+"富山蝦(ぼたんえび、=とやまえび)"の泥(すりみ)。
平成二十八丙申歳(へいせんいじふはちひのえさるどし、=2016)に經驗(あぢは)ひし、
"雞蛋糕(たまごやき)"にも匹敵(ならぶ)鮮美(よきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《土州四万十(とさのくにしまんと)》"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)",
      w/花山椒(なるのはじかみのはな)
  ・《山州塚原(やましろのくにつかはら)》"白子筍(しらこだけ)",w/椒芽(きのめ)
  ・《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ)"、五百六十匁(≒2.1kg)
    ・身肉(み)
    ・裙邊(えんがは)
    ・肝臟(きも)
  ・《油煠(あげもの)》
    ・"楤芽(たらのめ)"
    ・《江州琵琶湖(あふみのくにびはこ)》"稚年魚(ちあゆ)"、
        淺火候(あさきひいれ)+深火候(ふかきひいれ)
  ・《備州兒島灣(きびのくにこじまわん)》"鰻鱺(むなぎ)"、一百匁(≒380g)

(しるもの)】:
  ・《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"、
      骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"
  ・《花山椒鍋(なるのはじかみのはなゝべ)》
    ・《蝦夷壽都(えぞちすッつ)》"櫻鱒(さくらます)"、一貫九十匁(≒4.1kg)
    ・《泉州岸和田(いづみのくにきしわだ)"鳥蛤(とりがひ)"

(すし)】:
  ・《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"
  ・《薩州出水(さつまのくにいづみ)》"竹筴魚(まあぢ)"
  ・"(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・《泉州岸和田(いづみのくにきしわだ)"鳥蛤(とりがひ)"
  ・"雞蛋糕(たまごやき)"、
     活(いけ)對蝦(くるまえび)+富山蝦(ぼたんえび、=とやまえび)

果子(このみくさのみ)】:
  ・玻瓈杯盛(ぎやまんさかづきもり)
    ・無花果(からがき)、"ビオレ・デ・ソリエ"果凍(にこゞり)
    ・小玉西瓜(こだますいか)
    ・蕃茄(あかなす)など
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭暗匣(みらーれす)
【鏡珠】:Voigtländer NOKTON 1.2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06

恆例(いつも)の新年會(あらたなるとしをいはふうたげ)。
年年歳歳(としごと)に增長(つけあが)り「あれやこれや」の無理難題(むりなんだい)
i.e.,"東星斑(あかじんみーばい)"、"絲尾紅鑽魚(あかまち)"、"藤壺(ふぢつぼ)"、
"馬鹿蛤柱(こばしら)"、"海膓(ゆむし)"、"白未醤椀(しろみそわん)"まで。

主人(あるじ)"小宮親方(こみやおやかた)"説明(いへらく)、
"魚市塲(いちば)"に無(な)きものは通販調達(あれによりかひもとめ)、、」となん。
就中(わきても)、"海膓(ゆむし)"は"釣餌(つりえ)"として、、。
その奇怪(あや)しく蠕動(うごめ)く容(さま)、難盡言舌(ことばにはつくしがたし)

劈頭(いやさき)に肥前五島(ごたう)の"淸蒸東星斑(すぢあらのむしもの)"。
この魚(うを)「"流虬(宇留麻廼久尓)"三大高級魚之一(いとたふときうをのひとつ)」。
"東星斑(すぢあら)"そのものは『風ら坊』にて啖(くら)ひ經驗(ためし)あれど、
當日(このひ)の"淸蒸東星斑(むしもの)"も、眞言(まこと)、鮮美(よきあぢ)なり!

"東星斑(このうを)"、その"骨邊肉(あら)"も亦(また)最美(いとうま)し
そも、"石斑魚(はた)"の類(なかま)は、
總體(おしなべ)て、割烹法(さきかたにかた)を不問(とはで)旨(あぢよ)きもの
"淸蒸(むしもの)"、"紅燒(につけ)"、"生魚片(さしみ)"、などなど、、。

次(つ)いで前述(くだん)の「釣餌(つりえ)」"海膓(ゆむし)"。
蝦夷(えぞ)サロマ湖(こ)の"鮮蠔(なまがき)"と碟兒(こざら)に盛(も)られ、
背水之陣(もはや、しりぞくことあたはず)」
南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)」を三度(みたび)唱(とな)へ口中(くちのなか)に。

外見(みため)も食感(はごたへ・したざはり)も"貝外套膜(かひのひも)"なれど、
"サロマ湖鮮蠔(さろまのかき)"にて漱口(くちすゝぐ)。
蝦夷(えぞ)"サロマ湖鮮蠔(さろまこのかき)"は淸冽(きよらかにすめ)み
肥大(こえ)て濃厚(あぢこ)き"仙鳳趾鮮蠔(せんぱうし)"とは對極(さかしま)。

江州琵琶湖(びはこ)の"小香魚(ひうを)"には奧州(むつ)の"疣革菌(かうたけ)"。
"香魚(あゆ)"は越年(としをこす)こと稀有(まれ)にして、
"冰魚(ひうを)"→"稚年魚(ちあゆ)"→"香魚(あゆ)"→"落香魚(おちあゆ)"となり、
終(つひ)には海(うみ)へと下(くだ)り、命數盡(いのちをうしなふ)

"香魚(あゆ)"・"香蕈(かうたけ)"、雙方(どちらも)"貴馨(かをり)"が命(いのち)
とは云へ、遉(さすが)に"靑鱂めだか)"ほどの"小香魚(ひうを)"では、
風味(あぢもかをり)も缺乏(とぼし)。
やはり、"新小鰶(このしろのしんこ)"のごとく"走(はし)り"を愉(たの)しむ魚(いを)

"海宮(わだつみのうみのみや)"では"あかまち"として認知(し)らるゝ、
奄美鬼界島(あまみきくわいじま)"絲尾紅鑽魚(はまだひ)":
"刺躬(さしみ)"と"(なべ)"にて堪能(いたゞく)。
"東星斑(すぢあら)"ほどの濃厚(あぢこのこさ)こそあらねど、ともに佳味(よきあぢ)

陸州下北(しもきた)の"藤壺(ふぢつぼ)":
冢中枯骨(それがし)、嘗(かつ)て西伊豆賀茂郡松嵜濱(にしいづまつざきのはま)に、
"笠藤壺(これ)"咋(くら)ひし例(ためし)あり。
"藤壺(ふぢつぼ)"は、實(げ)に"龜足(かめのて)"と雙璧(なら)ぶ華美(よきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・肥前松浦五島(ごたう)"淸蒸東星斑(あかじんみーばい、=すぢあら)"
  ・蝦夷網走(あばしり)"海膓(ゆむし)"
  ・蝦夷サロマ湖(さろまこ)"鮮蠔(なまがき)"
  ・江州琵琶湖(びはこ)"小香魚(ひうを)"+奥州(むつ)"疣革菌(かうたけ)"
  ・肥前五島(ごたう)"豹紋鰓棘鱸(あかじんみーばい、=すぢあら)"の骨邊肉(あら)
  ・"鱲子(からすみ)"+"豇豆(さゝげ)"
  ・《胾(さしみ)》
    ・奄美鬼界島(きくわいじま)"絲尾紅鑽魚(あかまち、=はまだひ)"
    ・蝦夷苫小牧(とまこまひ)"馬鹿蛤柱(こばしら)"
    ・"膾殘魚(しらうを)"
    ・蝦夷根室(ねむろ)蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)
  ・蝦夷余市(よいち)"華臍魚肝臟(あんかうきも)"
  ・"油菜(なばな)"
  ・遠州濱名湖(はまなこ)"鰻鱺(むなぎ)"、三百廿匁(1.2kg))

(しるもの)】:
  ・陸州下北(しもきた)"藤壺(ふぢつぼ)"白未醤椀(しろみそわん)
  ・壹岐(いき)"楚蟹(まつばがに、すはへがに)"と
   奄美鬼界島(きくわいじま)"絲尾紅鑽魚(あかまち、=はまだひ)"の鍋(なべ)

(すし)】:
  ・"虎河魨(とらふぐ)"
  ・蝦夷野付(のつけ)の"海扇(ほたてがひ)"
  ・阿波鳴門(なると)"棘鬣魚(まだひ)"
  ・"蠔(かき)"
  ・"鰮(まいはし)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・無花果(からがき)、"ビオレ・デ・ソリエ"
  ・草莓(いちご)、"ひのしづく"
  ・橘(みかん、たちばなのみ)、"せとか"
  ・信州(しなの)ゝ"林檎(りんご)" ※品種不詳
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
結實・收穫(みのり)の白藏(あき)。
と來(く)ると、"狹眞魚(さまうを)"、"栗子(くり)"、"松蕈(まつたけ)"となるが、
社會通念(©毒さま✨.:*゚:.。:.、よのならひ)であり、人情(ひとのこゝろ)と云ふもの。
あるいは、偏(ひとへ)に"膓内細菌(こやつ)"のなせる所業(わざ)歟(か)?

《陸州宮古(みやこ)》の"狹眞魚(さまうを)"は"刺躬(さしみ)"、
豫州(いよ)》"中山栗(なかやまぐり)"は"澁皮煮(しぶかはに)"、
丹波(たんば)》の"松蕈(まつたけ)"は
油煠鰕芋(あぶらにあげたるえびいも)と一緒(とも)に"吸物(すひもの)"と成(な)す。

實(げ)に稀有(めづらし)き"徘徊堅魚(まよひがつを)"は《佐渡産(さどのもの)》。
藁(わら)以て燻(いぶ)し、"(たゝき)"に做(つく)る。
などて不味(あぢあし)き理由(ことわり)やある
これを「口福(くちにするや、よろこびあふれほどばしる)」と云ふ。

當日(このひ)の"舎利(すめし)":
あまりの變貌(かはりぶり)に肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。※←オオゲサ
同行(せきをともにせ)し食通(したたしかなるたべて)に依據(よる)なら、
口(くち)にすると同時(ひとし)く驚歎之(これにおどろき)まして厶(ござ)る。」

「"(こめ)"を變更(か)へ、"(かま)"を更新(あらた)め、、云々(うんぬん)。」
とは"親方(おやかた)"が説明(はなし)。
それすら聞(き)ゝ逃(のが)したるは、
老骨(それがし)、一世一代(このうへな)き恥辱(みのはぢ)。

三種(みくさ)"無花果(からがき)"。
輒(すなは)ち、
"ヴィオレ・ド・ソリエ"、"とよみつひめ"、"枡井ドーフィン"、これなり。
此度(こだみ)の"ヴィオレ・ド・ソリエ"は想定外(おもひのほか)に淡泊(あぢうすし)。

換言(いひかへ)るなら、"(あまみ)"弱(よは)めで"(すみ)"が立(た)つ。
對照之(これにひきかへ)、"枡井ドーフィン"の何(なん)たる變身(かはりみ)!!。
廿日餘(はつかあまり)熟(う)らし、、」とは、親方(おやかた)が呟(つぶや)き。
"とよみつひめ"の"(あまみ)"强(つよ)きは勿論(いふもさらなり)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・蝦夷昆布森(こんぶもり)の"蠔(かき)" ※昆布〆(ゑびすめじめ)
  ・陸州宮古(みやこ)の"狹眞魚(さまうを)"
  ・豫州(いよ)"中山栗(なかやまぐり)"、澁皮煮(しぶかはに)
  ・《胾(さしみ)》
    ・陸州宮古(みやこ)の"狹眞魚(さまうを)"
    ・佐渡(さど)の"徘徊堅魚(まよひかつを)"
    ・播州明石(あかし)の"棘鬣魚(まだひ)"、五百九十匁(≒2.2kg)
  ・常州霞箇浦(かすみがうら)の"鰻鱺(むなぎ)"、一百三十匁(≒480g)
  ・蝦夷餘市(よいち)の"華臍魚肝臟(あんかうきも)"

(しるもの)】:
  ・丹波(たんば)"松蕈(まつたけ)"+山州(やましろ)"鰕芋(えびいも)"
     吸口(すひくち):"野蜀葵(みつばぜり)"
  ・播州明石(あかし)の"棘鬣魚(まだひ)"、五百九十匁(≒2.2kg)、
     骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"

(すし)】:
  ・佐渡(さど)の"徘徊堅魚(まよひかつを)"
  ・志州鳥羽(とば)の"馬鮫魚(さはら)"
  ・播州明石(あかし)の"棘鬣魚(まだひ)"
  ・"雞蛋糕(たまごやき)" ...※周氏新對蝦(しばえび)+佛掌薯(つくねいも)
  ・"富山鰕(ぼたんえび、=とやまえび)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・"無花果(からがき)"三種(みくさ)
    ・"ヴィオレ・ド・ソリエ"
    ・"とよみつひめ"
    ・"枡井ドーフィン"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭暗匣(みらーれす)
【鏡珠】:Voigtländer NOKTON 1.2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
     蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
久方(ひさかた)ぶりの"燈籠椒幕斯(パプリカムース)"に舌鼓(したつゞみ)。
これまた再會(まみへ)て嬉(うれ)しや"鳥蛤肝臟(とりがひのきも)"。
"鳥蛤肝臟(これ)"ッて、丹後(たんご)『繩屋』にて鮮美(よきあぢ)を認識(し)り、
"小宮親方(おやかた)"に話題提供(はな)したが嚆矢濫觴(はじまり)。

"岩蠔(いはがき)"からは"珍珠(しらたま)"、
否(いな)、將(まさ)に"眞珠(しらたま)"に爲(な)らんとする"白玉(しらたま)"。
"鰻鱺(むなぎ)"から"釣針(つりばり)"は當家(こちら)を含(ふく)め二度(にど)。
だが、"岩蠔(いはがき)"から"珍珠(しらたま)"とは吃驚(びつくり)。

"赤鯥(あかむつ)"は"紅燒(につけ)"。
纔(わづ)かながらも、"味(あぢ)"、就中(わきても)"甜(あまみ)"强(つよ)めか?
"醬油蟹醤(カンジャンケジャン、わたりがにてうせんづけ)"は淡麗(あはくきよらか)。
これぞ、"小宮親方(おやかた)"の廚藝(わざ)!

長良川(ながらがは)の"香魚(あゆ)"は油煮(コンフィ、あぶらに)に、、。
"燈籠椒幕斯(パプリカムース)"同樣(とおなじく)、
拂郎西察(おふらんす)の烹調(きりさきにたて)を自家藥籠中(わがもの)とせし、
"小宮親方(おやかた)が"眞骨頂(まことのそこぢから)。

いや、俟(ま)て、俟(ま)て!
その前(まへ)の"淸湯(コンソメ、きりしたんばてれんのすましゞる)"からして、
その確乎(たしか)なる技倆(うで)の爲(な)せる技(わざ)
"黃蓋鰈(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"の骨邊肉(あら)を活用(いかす)。

これと"牛脛肉(うしのすねにく)"、"百里香(タイム)"、"月桂樹(ローリエ)"、
"芹菜(セロリ)"、"胡蘿蔔(せりにんじん)"、"蔥頭(たまねぎ)"、を燉(にこ)み、
この"一盌(ひとまり)"に、、。
凄腕(すごうで)、稀(まれ)に遭(み)る手煆煉(てだれ)と斷言(いはざるべからず)。

當日(このひ)の"鰻鱺(むなぎ)"は、かの"宍道湖(しんじこ)"。
"(やき)"の廚藝(わざ)と相俟(あひま)り、至高(このうへなき)味(あぢはひ)
和燈ろ』の"熟成鰻(うらしねかしむなぎ)"と比較(くら)べても、
雲壤懸隔(くもとつちほどのたがひ)」。

しかはあれど、"割刀(めしがたな)"ばかりは『和燈ろ』が頂點(いたゞき)。
うを德』の"割刀(それ)"は居酒屋(ゐざかや)竝(なみ)。
まッ、そんなところも"小宮親方(おやかた)"特有(ならでは)。
脱力系名工(かたのちからのぬけたるたくみ)」と説明(い)ふべき歟(か)?

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・羽州(では)の"蓴(ぬなは)"+"蕃茄(あかなす)"
  ・"燈籠椒幕斯(パプリカムース)"
  ・丹後舞鶴(まひづる)"鳥蛤(とりがひ)"肝臟(きも)
    +"櫻鰕(さくらえび)"+"白瀧(しらたき)"+"實山椒(なるはじかみのみ)"
    +"萬願寺辣椒(まんぐわんじなんばんこせう)"
  ・"岩蠔(いはがき)"
  ・"赤鯥(あかむつ)"、紅燒(につけ)
  ・《胾(さしみ)》
    ・"鱸(すゞき)"
    ・"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・肥後(ひご)"醋藕(すづけのはちすのね)"
  ・"醬油蟹醤(カンジャンケジャン、わたりがにてうせんづけ)"
  ・豫州西條(いよさいじやう)"絹皮茄子(きにかはなすび)" ※冩眞なし
  ・長良川(ながらがは)の"香魚(あゆ)"、油煮(コンフィ、あぶらに)
    +長州萩(ながとのくにはぎ)の"黑蚫(くろあはび)"
  ・雲州宍道湖(いづもしんじこ)の"鰻鱺(むなぎ)"、一百四十一匁(≒530g)

(しるもの)】:
  ・"黃蓋鰈(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"の骨邊肉(あら)による
     "淸湯(コンソメ、ばてれんのすましゞる)"
     ※+牛脛肉(うしのすねにく)、香味蔬菜(かをりあるあをもの)など
  ・"鱸(すゞき)"、骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"

(すし)】:
  ・"鱸(すゞき)"
  ・豐後(ぶんご)"黃蓋鰈(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"
  ・"小鰶(こはだ)"
  ・"赤鯥(あかむつ)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"竹筴魚(まあぢ)"
  ・"鰮(まいはし)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・櫻桃(さくらんぼ)"佐藤錦(さたうにしき)"
  ・櫻桃(さくらんぼ)"米利堅(めりけん)"
  ・蕃茄(あかなす)
  ・失念(わすれた)
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtlaender)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
今年(ことし)も、
山州塚原(やましろのくにつかはら)の"白子笋(しろきたかむな)"を喰(く)ひそびれ、
信州(しなのゝくに)の"楤芽(たらのめ)"に、
陸州(むつのくに)"花山椒(なるのはじかみのはな)"を堪能(おほいにたのしむ)。

"花山椒(なるのはじかみのはな)"は、
土州四万十川(しまんとがは)の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"、
備州兒島灣(こじまわん)"鰻鱺(むなぎ)"、陸州宮古(みやこ)"帝王鮏(ますのすけ)"、
房州勝浦(かつうら)"黑鯥(くろむつ)"にと「八面六臂(めざましきはたらきぶり)」。

駿州由比(ゆひ)"櫻鰕(さくらえび)"も靑陽(はる)ならではの悦樂(よろこび)。
活魚(いけ)」と云ふ、
相州佐島(さじま)の"墨魚(すみいか、=かふいか)"、二百六十七匁(≒1kg)。
刀工(きりかた)のせゐか?、唯一無二(ほかになき)食感(はごたへ・したざはり)

「走(はし)り」の備州兒島灣(こじまわん)の"鰻鱺(むなぎ)"、九十三匁(≒350g):
想定外(おもひのほか)に魫(あぶら)に富(と)み佳味(なかなかのあぢはひ)
師傅(おやかた)が"炙(やき)"の超絶技巧(わざ)は勿論(いふもさらなり)。
この廚藝(わざ)、奧州遠野(とほの)『』と雙璧(ふたつながらにならびたつ)。

和泉灘(いづみなだ)"鳥蛤(とりがひ)"の"外套膜(ひも)"は初體驗(はじめて)。
その風韻(かをり)、"御本尊(み)"にも優越(まさる)。
"文鰩(とびいを)"鮮(なま)で噉(くら)ふも初(はじめて)。
小宮親方(こみやおやかた)、感謝(ありがたや)、!

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・土州四万十川(しまんとがは)の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"+
     "花山椒(なるのはじかみのはな)"
  ・相州佐島(さじま)の"墨魚(すみいか、=かふいか)"、二百六十七匁(≒1kg)

  ・《(さしみ)》
    ・"北紫靈臝子(きらむらさきうに)"
    ・淡路(あはぢ)"黃蓋鰈(あまてがれひ、≒まこがれひ)"、五百三十三匁
     ・精肉(み)
     ・裙邊(えんがは)
     ・肝臟(きも)

  ・《天麩羅(てんぷら)》
    ・信州(しなの)"楤芽(たらのめ)"
    ・駿河灣(するがわん)駿州由比(ゆひ)"櫻鰕(さくらえび)"

  ・備州兒島灣(きびこじまわん)の"鰻鱺(むなぎ)"、九十三匁(≒350g)

(しるもの)】:
  ・淡路(あはぢ)"黃蓋鰈(あまてがれひ、≒まこがれひ)"、五百三十三匁(≒2kg)、
     骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"

花山椒鍋(はなざんせうなべ)》:
  ・陸州宮古(みやこ)"帝王鮏(ますのすけ)"
  ・房州(あは)"黑鯥(くろむつ)"

(すし)】:
  ・淡路(あはぢ)"黃蓋鰈(あまてがれひ、≒まこがれひ)"
  ・肥後天草(あまくさ)"小鰶(こはだ)"
  ・房州勝浦(あはかつうら)"黑鯥(くろむつ)"
  ・陸州鹽釜(しほがま)の"鮪(しび)"
  ・和泉灘(いづみなだ)の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・和泉灘(いづみなだ)の"鳥蛤(とりがひ)"、外套膜(ひも)
  ・相州小柴(こしば)の"烏賊(すみいか、かふいか)"
  ・"文鰩(とびいを)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・日向(ひむか)"芒果(マンゴ)"
  ・土州(とさ)"狼桃(おほかみもゝ)"蕃茄(あかなす)
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtlaender)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2.8~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
"味神樣(あぢがみさま)"の託宣(おつげ)に遵(したが)ひ、"黃金蠘(こがねがに)"、
i.e.,(すなはち)、
"楚蟹(すはへがに)"と"紅楚蟹(べにすはへ)"とが交合(みとのまぐはひ)をし、
十月十日後(とつきとほかのゝち ←※ウソ)に誕生(うまれ)たのがこの"(かに)"だッ!

「今年(ことし)四杯(しはい)の×蒸氣船(じやうきせん)〇"黃金蠘(こがねがに)"、
 たッた四杯(しはい)で夜(よる)も眠(ねむ)れず、
 當旦(このひのあさ)に漸(やうや)う二杯(にはい)
 午餐(ひる)に一杯(いつぱい)、晩餐(よる)にも復一杯(またいつぱい)。」

、、とは"小宮親方(こみやおやかた)"が辯(はなし)。
背(そびら)の錦繪(にしきゑ)は、
伊斯把泥亞(いすはにあ)の繪師(ゑし)"P.ピカソ"による石版印刷畫(リトガラフ)。
「先代(さきつおやかた)の所藏品(もの)」とのよし。

遉(さすが)に"幻魚(げんげ)"までは不能調達(そろへられず)、
代替(かはり)に食感(はごたへ・したざはり)の類似(にた)る"魚(もの)"を、、
と、示(しめ)す先(さき)には"これ"、"華臍魚(あんぐうを)"。
淡路(あはぢ)の"星鰈(ほしがれひ)"は七百廿匁(≒2.7kg)。

扨(さて)"黃金蠘(こがねがに)":
正眞正銘(まがふかたなき)、但州美含郡香住(かすみ)の"黃金蠘(こがねがに)"。
生"黃金蠘(いけるこがねがに)"喜冢中枯骨卍(くたばりそこなひまんじをよろこばす)
"楚蟹(すはへがに)"を知悉(しりつく)したる面々(かたがた)また然(しかり)

濃厚(あぢのこ)さでは"楚蟹(すはへがに)"に肉薄(せま)り、
甘(あま)く滑(なめ)らかなること"紅楚蟹(べにすはへがに)"の若(ごと)し。
"蠘肉(かにゝく)"吉(よし)、"黃(かにみそ)"、さらに吉(よし)。
これを「×鈴木福(すゞきふく)〇口福(こうふく)」と云ふ。

三ヶ月前(みつきまへ)には(なま)にて口(くち)にせし"鱲子(ぼらこ、からすみ)"。
×十月十日後(とつきとほかのゝち)〇三ヶ月後(みつきあと)には、
かくのごとき景狀(ありさま)に、、。
これを「匠(たくみ)による"熟成(うらし・ねかし)"の廚藝(わざ)」と云ふ。

否(いな)!
名匠(なだかきたくみ)單獨(ひとり)と云ふより、
歳月(つきひ)と人智(ひとのちゑ)の合力・協業(たすけあひ)の精華(なせるわざ)
"未醤(みそ)"、"醤油(まめびしほ)"、"(さけ)"にも通底(つらなる)。

"星鰈(ほしがれひ)"、"大翅鮶鮋(きちじ)"の美(うまさ)は勿論(いふもさらなり)。
白身魚(しろみうを)の皇帝(すめらぎ)"星鰈(ほしがれひ)":
類稀(たぐひまれ)なる"牙鮃(ひらめ)"愛好家(ずき)の老骨(それがし)も、
この味(あぢ)には脱帽(かぶとをぬぐほかなし)。

有左程(さるほど)に、
"大翅鮶鮋(きちじ)"は、"紅燒(しやうゆに)"より"淸蒸(すがたむし)"が吉(よい)。
かの"淸蒸石斑魚(はたのすがたむし)"にも優越(まさ)る鮮美(よきあぢ)
努々(ゆめゆめ)、勿疑(うたがふことなかれ)!

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・炊合風(たきあはせふう)"小菜碟兒(こざら)"
    ・"鱲子(からすみ)"、熟成三ヶ月(うらすことみつき)
    ・能州(のと)"靑沙噀(あをなまこ)"
    ・山州(やましろ)"金時胡蘿蔔(きんときせりにんじん)"
    ・山州(やましろ)"淀蘿蔔(よどおほね)"
    ・山州(やましろ)"菜花(なばは)"

  ・"紅燒大翅鮶鮋(きちじのにつけ)"
  ・但州美含郡香住(かすみ)の"黃金蠘(こがねがに)"、二百四十匁(≒900g)
  ・《(さしみ)》
    ・淡路(あはぢ)"星鰈(ほしがれひ)"、七百廿匁(≒2.7kg)
        w/ 豆州御殿塲(いづごてんば)の"山蓼(わさび)"
    ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の"鮪幼魚(めじ)"、一貫八百七十匁(≒0.7kg)
    ・蝦夷濱中(えぞはまなか)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
    ・自家製(てづからの)"雲丹(うに)"

(しるもの)】:
  ・陸州石卷(むついしのまき)華臍魚(あんかう)"どぶ汁(じる)"
  ・"魨精巢(とらふぐしらこ)"+"堀川牛蒡(ほりかはきたきす)"

(すし)】:
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、肥肉(ちゆうあぶ)
  ・陸州鰺ヶ澤(むつあぢがさは)の"牙鮃(ひらめ)"
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・蝦夷野附(えぞのつけ)の"馬珂蛤閉殼筋(ばかゞひ、こばしら)"
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、紅肉(あかみ)
  ・淡路(あはぢ)"星鰈(ほしがれひ)"、七百廿匁(≒2.7kg)
  ・下總銚子(しもつふさてうし)の"鯖(まさば)"
  ・對蝦(くるまえび)
  ・丹後舞靏(たんごまひづる)の"鰤(ぶり)"、三貫二百匁(≒12kg)
  ・房州勝浦(あはかつふら)の"黑鯥(くろむつ)" ※滿腹(はらくち)く辭退

果子(このみくさのみ)】:
  ・草莓(いちご)、"ロイヤル・クイーン"
  ・草莓(いちご)、"スカイ・ベリー"
  ・"あまおう草莓(いちご)"の幕斯(ムース)
  ・"巧克力冰酪(シヨクラトヲあいすくりん)"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:高千穗光學(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 微距(Macro)2/50 @F2~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
"鱣魚(むなぎ)"は[白藏(あき)が最美(なにより、3150)。
此度(こだみ)は、雲州宍道湖(いづもしんじこ)"、二百四十匁(≒900g)。
(あぶら)に富(と)み、溶融(とろけ)んばかりの"(み)"ながら、
"(かは)"酥脆(さくさく)は親方固有(おやかたならでは)の超絶廚藝(すごわざ)。

名殘(なごり)の"松蕈(まつたけ)"は信州伊那辰野(しなのゝくにいなたつの)。
未曾有(いまだかつてな)き不漁(ふりやう)」と云ふ"狹眞魚(さまうを)":
今龝初(このあきはじめて)、最上質(いとよきもの)なれど、
例年(いつも)の蝦夷根室(ねむろ)ならで奧州久慈(くじ)とのよし。

舊暦(むかしのこよみ)長月十三日(ながつきじふさんにち、Oct.29)を控(ひか)へ、
常州友部(ひたちのくにともべ)の"栗子澁皮煮(くりしぶかはに)"。
「大畧(およそ)半日(はんにち)かけ、叮嚀(ねんごろ)に煮(に)たるもの」と云ふ。
廣義(ひろく)は、"友部(ともべ)"は"笠間(かさま)"に含(ふく)まる。

"鱲子(からすみ)"の(うま)さは勿論(いふもさらなり)。
小鹹多鮮(しほけすくなく、うまみにとむ)」こと難盡筆舌(ことばにつくしがたし)。
"(はし)り"故(ゆゑ)、
"日向(ひむか)"は熟成過程(うらしのさなか)、"土州(とさ)"は(なま)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・蝦夷羅臼(えぞらうす)の"雲子(くもこ)"
  ・煮滲(にびたし)
    ・《溏油(だし)》:利尻海帶(りしりあらめ)+鮪乾(しびぶし)
    ・信州伊那辰野(しなのゝくにいなたつの)ゝ"松蕈(まつたけ)"
    ・筑紫(つくし)"菱實(ひしのみ)"
    ・丹州(たんば)"黑荳(くろまめ)"
  ・"鱲子(からすみ)"競演(かほあはせ)
    ・日向(ひむか)熟成過程(うらしのさなか)
    ・土州(とさ)の鮮(なま)
  ・對馬(つしま)"(かつを)"稭炙(わらやき) 
  ・蝦夷餘市(えぞよいち)"松皮鰈(まつかはがれひ)"、八百廿七匁(≒3.1kg)
  ・蝦夷仙鳳趾(えぞせんぱうし)の"眞蠔(まがき)" 
  ・陸州久慈(むつくじ)の"狹眞魚(さまうを)"
  ・常州(ひたち)"柳蟲鰈(やなぎむしがれひ、≒さゝがれひ、わかさがれひ)"
  ・(さしみ)
    ・蝦夷余市(えぞよいち)"松皮鰈(まつかはがれひ)"
    ・蝦夷小川商店(えぞをがは)の"蝦夷馬糞靈臝子(えぞばふんうに)
  ・常州友部(ひたちのくにともべ)の"栗子(くり)澁皮煮(しぶかはに)"
  ・雲州宍道湖(いづもしんじこ)の"鱣魚(むなぎ)"、二百四十匁(≒900g)

(しるもの)】:
  ・《吸地(すひぢ)》:利尻海帶(りしりあらめ)+鮪乾(しびぶし)
  ・《椀種(わんだね)》:
    ・信州伊那辰野(しなのいなたつの)ゝ"松蕈(まつたけ)"
    ・播州明石(はりまのくにあかし)の"眞棘鬣魚(まだひ)"、五百六十匁(≒2.1kg)
  ・《吸口(すひくち)》:柚(ゆ)、食用菊花(もつてのほか、≒かはらよもぎのはな)

(すし)】:
  ・蝦夷余市(えぞよいち)"松皮鰈(まつかはがれひ)"、八百廿七匁(≒3.1kg)
  ・陸州大間(むつおほま)の"(しび)"、三十七貫三百匁(≒140kg)
  ・"春子鯛(かすごだひ)"
  ・"白纜魚(しろいか、≒けんさきいか)"
  ・"剝皮魚(かはゝぎ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・肥後(ひご)"太秋枾(たいしうがき)"
  ・紀州(きい)"富有枾(ふいうがき)"
  ・蝦夷(えぞ)"らいでん甜瓜(からうり、まくは)"
  ・洋梨(やうなし)"極光(アウロラ)"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.8~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
旣(すで)に、
同日(おなじひ)、and/or 翌日(つぎのひ)の訪問記(たづねしはなし)存在(あり)。
かゝるがゆゑに、敢(あ)へて反復之(これをくりかへ)すは、
畫蛇添足(へびにあしをそへ)」、「屋上架屋(やねにやねをかさぬるがごとし)」。

「『奈可田』流(じこみ)」と説明(い)ふ"鹽蒸(しほむし):
周知(あまねくしら)るゝがごとく、"鹽蒸(しほむし)とは"煮蚫(にあはび)"のこと。
(さけ)などにより、嫩(やはらか)になるまで慢慢地(ゆるり)煮(に)こむ
老骨(それがし)知(し)る限(かぎ)り、當家(こちら)は"(むす)"が通例(つね)。

此度(こだみ)『奈可田』流(じこみ)にせし緣由 (ことのよし)、
守舊化(ふるきからを、みづからうちやぶらんがため)」となむ。
以爲(おもふに)、どちらの烹飪(やりかた)も、×「彩芽(あやめ)より(つばさ)」、
〇「いづれ、菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」。

例年(いつも)、この時季(ころ)登塲(あらは)る"鮏鮞(さけのはらゝご)":
醢醯(あぢつけ)をせで、その儘(まゝ)
との説明(はなし)に眼精(まなこ)白黑(しろくろ)
「"狹眞魚(さまうを)"は海(うみ)に魚影(そのすがた)を不見(みず)」とも、、。

今季初(ことしはじめて)、"早松蕈(はしりのまつたけ)"は富良野(ふらの)から。
奧州松島(むつまつしま)の"星鳗(はかりめ)"ともども"淸湯(すましゞる)"に、、。
"吸地(すひぢ)"は"利尻海帶(りしりあらめ)"に"鮪脯(しびぶし)"。
「"鰹脯(かつをぶし)"は"早松蕈(さまつ)"の風韻(かをり)を阻害(さまたぐ)」と。

愚按(やつがれおもふに)、
"吸口(すひくち)"に"(ゆ)"など强香(かをりつよ)きものを不使用(つかは)ぬも、
蓋(けだ)し、同(おな)じ意図(こゝろ)なるべし
寔(まこと)、「減算(ひきざん)」を實踐(みをもちてしめ)す庖丁(いたまへ)。

此度(こだみ)、肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはぬほどにこしぬか)したるは、
(しび)大肥肉(おほあぶ)の"(あぶり)"。
冢中枯骨(くたばりそこなひ)、"大肥肉(おほあぶ)"を×獼猴〇得手(えて)とせぬも、
鮮美(よきあぢ)口腔(くち)に踊(をど)り鼻腔(はなのなか)に浮騰(ほとばし)る

老骨(それがし)、"枾果(かき)"と"無花果(からがき)"には有一家言(ちとうるさい)。
その仔細(わけ)如何(いかに)となれば、
生家(うまれたるいへ)には、各二本(おのおのにほん)づゝの果樹(き)があり、
完熟(よくうれた)るを噉(くら)ふが常態(つね)なればなり。

巷(ちまた)に蔓延(はびこ)る"無花果(からがき)"は、
十中八九(あらかた)"枡井ドーフィン"なる種(たね、ちすぢ)。
加旃(しかのみならず)、樹(き)にて完熟(ほどよくうれた)るものに非(あらず)!
完熟果實(かゝるみ)は流通(いちばをとほす)に不適(むかず)

未熟(いまだうれず)と云へど、
黑(くろ)き"ビオレソリエ"、白(しろ)の"キューティーキング"なら、
その風味(あぢ・かをり)、"枡井ドーフィン"を×遼河〇凌駕(はるかにしのぐ)。
ところが、當日(このひ)の"無花果(からがき)"は敢(あ)へての"枡井ドーフィン"。

親方(おやかた)説明(い)ふやう:
十日(とほか)ほど手許(てもと)に置(お)き、追熟(うらし)たるものにて、、」
その"斷面(きりくち)"は飴餹色(あめいろ)を呈(お)び、
俄頃(にはか)には"枡井ドーフィン"とは難信(しんじがた)き果實(しろもの)

生家(うまれたるいへ)の、
完熟(うれ)たる"赤無花果(あかゝらがき)"と比較(くらべ)て、
なほ、勝(まさ)るとも不劣(おと)らぬこの無花果(からがき)。
たゞし、"黑無花果(くろからがき)"・"白無花果(しろからがき)"には不及(およばず)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・小菜碟兒(こざら)
    ・『奈可田』流(じこみ)、佐渡(さど)の"鹽蒸(しほむし)=煮蚫(にあはび)" 
    ・雲州(いづも)~石州(いはみ)の"魩仔魚乾(ざこ)"
        +"萬願寺辣椒(まんがんじなんばんこせう)"+"豆腐皮(うば)"
  ・"玉蜀黍(なんばんきび)"と"胡麻(ごま)"の葛寄(くづよせ)、
     "小蕃茄(ちいさなあかなす)"の果凍(にこゞり)添(ぞ)へ
  ・"赤鯥(あかむつ)"と"秋葵(おくら)"の"索麪(むぎなは)"
  ・蝦夷禮文島(えぞれぶんたう)の"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・"鹽雲丹(しはうに)"
  ・"障泥纜魚(あふりいか)"の耳(みゝ)
  ・蝦夷羅臼(えぞらうす)の"生鮏鮞(なまのさけはらゝご)"
  ・相州松輪(さがみまつわ)の"醃眞鯖(しめたるまさば)"、暸(あぶりもの)
  ・相州松輪(さがみまつわ)の"醃眞鯖(しめたるまさば)"
  ・志州尾鷲(しまをはせ)の"松魚(かつを)"
  ・常州霞ケ浦(ひたちかすみがうら)の"鰻鱺(むなぎ)"、一百三十九匁(≒520g)

(しるもの)】:
  ・蝦夷富良野(えぞふらの)ゝ"松蕈(まつたけ)"と
      奧州松島(むつまつしま)"星鳗(はかりめ)"の淸湯(すましゞる)

(すし)】:
  ・播州明石(はりまあかし)の"眞鯛(まだひ)"、五百六十匁(≒2.1kg)
  ・奧州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、中肥(ちゆうあぶ)
  ・蝦夷禮文島(えぞれぶんたう)の"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・"似海鰌(にたりくぢら)"
  ・奧州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"
  ・奧州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、大肥(あぶ)の暸(あぶり)
  ・蝦夷羽幌(えぞはぼろ)"富山鰕(とやまえび)"+湯瀹汁(ゆでじる)
  ・肥後天草(ひごあまくさ)"小鰭(こはだ)"、新子(しんこ)二枚醃(にまいづけ)
  ・壹岐(いき)"白纜魚(しろいか)"?

果子(このみくさのみ)】:
  ・追熟(うらし)無花果(からがき)、"枡井ドーフィン"
  ・宇留麻廼久尓(うるまのくに)"キーツ芒果(マンゴ)"
  ・羽州尾花澤(ではをばなざは)"西瓜(すいくわ)"
  ・葡萄果實(えびかづらのみ)、"瀬戸ジャイアンツ"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:旭光學 賓得(Pentax)S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8~F4
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
向島(むかふじま)『いりむら』ゟ(より)『靑柳正家』を經由(へ)て、
寺島町(てらしまゝち)『うを德』に、、。
暖簾(のれん)潛(くゞ)るは大畧(およそ)五ヶ月(いつゝき)ぶり。
漬塲前(つけばまへ)の客人(きやく)は老骨(それがし)唯一人(たゞひとり)。

十年前(とゝせまへ)なら某(それがし)の他(ほか)、
絶(た)へて人(ひと)の姿(すがた)を不見(みざる)が常態(つね)なれど、
かゝる景色(けしき)は久方(ひさかた)ぶり。
親方(おやかた)も當時(そのかみ)を懐舊(なつかしむ)。

嘗(かつ)て"食物航海日誌(こちら)"★★★★超(よつぼしごへ)の頃(ころ)は、
上(うへ)を下(した)に覆(かへ)すほどの繁忙(いそがはし)さなりしかど、
現今(いま)は有象無象(さまざま)なる惡質客(たちあしきゝやく)も激減(へ)り、
靜謐(しづかさ)を恢復(とりもど)しつゝあるは吉兆(よきゝざし)。

しかはあれど、
"向島百花園(むかふじまひやつくわゑん)"ゟ(より)歸途(かへるみちすがら)、
偶(たま)さかフラり立寄(たちよ)るとか、
近鄕近在(ちかく)の民(たみ)の午餔處(ひるめしどころ)には不能囘歸(もどりえぬ)

覆水難收(こぼれたるみづは、もとのうつはにもどりがたし)」
小宮親方(おやかた)も懐古(そのかみをなつかしむ)と云へど、
これは黃泉(よみ)ゟ(より)死者(しにたるもの)を戻(もど)すに同等(ひとし)く
"伊邪那岐(いざなぎ)"の失錯(しくじり)を反復(くりかへ)すが限界(せきのやま)。

食材(たね)の優秀(ひいで)たるは萬民(よろづのたみ)認(みと)むるところなれど、
虚飾(いらぬかざり)と複雜怪奇(やゝこし)き調劑(あぢつけ)を排(す)て
"必要最小限(いらぬものも、たすべきものもな)き"烹調法(やりかた)は、
理會(わかる)者(もの)にのみ分(わ)かる。」と云ふもの。

これを侮(あなど)り譏(そし)る者(もの)は、
×雪花菜(きらず)×石見銀山(いはみぎんざんねこいらず)〇不知味者(あぢしらず)。
就中(わきても)、
"潮汁(うしほじる)"と"(むなぎ)"は鮓店(すしや)の巓(いたゞき)

否(いな)!
名店(なのあるみせ)の"會席膳(くわいせきぜん)"と競(くら)べても、
俄頃(にはか)に、精麁(よしあし)・雌雄(をすめす)を難判別(わかちがた)きほど。
※↑imho、≒冢中枯骨(くだばりそこなひのそれがし)が卑見(いやしきかんがへ)

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・土州四万十川(とさしまんとがは)"稚鰷(ちあゆ)"甘露煮(かんろに)
  ・對蝦(くるまえび)+薯蕷(いも)の"雞卵焼(たまごやき)"
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)"黑鰒(くろあはび)"
  ・《刺躬(さしみ)》
    ・豐後日出(ぶんごひので)"城下王餘魚(しろしたかれひ、≒まこがれひ)"、
         四百五十匁(しひやくごじふもんめ、≒1.7kg)
  ・蝦夷濱中(はまなか)"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"+"毛蠘(けがに)"
     +上州(かうづけ)天狗牌毛豆(てんぐじるしえだまめ)"味綠(みりよく)"
  ・加州(かゞ)"加賀太黃瓜(かゞぶときうり)"
  ・吉備兒島灣(きびこじまわん)"鰻鱺(むなぎ)"、百九十五匁(≒730g)

(しるもの)】:
  ・"潮汁(うしほじる)"
    ・椀種(わんだね):
      ・"城下王餘魚(しろしたかれひ、≒まこがれひ)"の骨邊肉(あら)
      ・長州(ながと)"魂消茄子(たまげなす)"

(すし)】:
  ・"堅魚(かつを)"、稭炰(わらやき)
  ・薩州出水(さつまいづみ)"甲烏賊(すみいか、=かふいか)"
  ・蝦夷噴火灣(えぞふんくわゝん)"鮪(しび)"、十三貫(≒50kg)精肉(あかみ)
  ・下總銚子(しもつふさてうし)"金目鯛(きんめだひ)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)"竹筴魚(あぢ)"
  ・上總富津(かみつふさふッつ)"星鳗(はかりめ)"
  ・蝦夷噴火灣(えぞふんくわゝん)"鮪(しび)"、十三貫(≒50kg)中肥(ちゆうあぶ)
  ・"黃蓋鰈(まこがれひ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・羽州(では)櫻桃(さくらんぼ)"佐藤錦(さたうにしき)"
  ・紀州(きい)"琵琶(びは)"
  ・臺灣(たいわん)"茘枝(れいし)"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Flektogon 2.4/35 @F4
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
毎年恆例(ならひ)の新年會(あらたなるとしをいはふつどひ)。
"美酒佳肴(よきさけによきさかな)"の數々(かずかず)、
加旃(しかのみならず)、"龍肝豹胎(うみやまのよきあぢ)"は常態(つね)のこと。
就中(わきても)、此度(こだみ)は"赤鰩肝(あかえいのきも)"まで、、。

「長州萩(ながとのくにはぎ)の濵(はま)に揚(あ)がりしもの」と云ふ。
"肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはざるほどのおどろき)"、
とまでは行(ゆ)かぬにせよ、珍味(よにもめづらしきあぢ)なるは確實(たしか)
海驢(あしか)、馬鹿(うましか)、饗應(もてなし)歟(か)?

「扨(さて)その經緯(いきさつ)は?」と問(と)はるれば、
「如此如此(かくかくしかじか)、、)」と應答(いら)ふる他(ほか)なし。
この他(ほか)、合馬(あふま)の"竹筍(たかむな)"、"鮮鱲子(なまのぼらこ)"、
羅臼(らうす)の"帝王鮏(ますのすけ)"に、"松葉蟹(まつばがに)"までも、、。

桌上型電腦(つくゑのうへなるエレキそろばん)が異常動作(ふてくされ)、
亂暴狼藉(あばれまはりて、をちこちとりちらか)し、一無方策(てもつけられず)。
復舊(もとにもどす)は輒(たやす)からず。
二日(ふつか)三日(みつか)、、、五日(いつか)かけて、ほゞ復舊(もとのすがたに)。

備忘錄(おぼゑがき)も紛失(なく)し、
記憶(おぼえ)曖昧模糊(あやふや)、劵(けん)ならダフ屋(だふや)、
"菽乳(とうふ)"沽(か)ふなら坊(まち)の零細豆腐店(ちいさなとうふや)がよい。
"淮南(とうふ)"昆布溏油(こぶだし)、"アベヾ"は跣(はだし)。

一(ひと)つに、二(ふた)つ、
故事(むかしのこと)を執筆(か)く時(とき)にャ、
×想起(おもひだ)しだし、〇想起(おもひだ)しつゝ記述(せ)にャならぬ。
そいや、當家(こちら)の"(わん)"も昆布溏油(ひろめだし)。

昆布(ゑびすめ)"利尻(りしり)"、
結(むす)ぶは眦(まなじり)、捉(とら)へて遊(あそ)ぶ言葉尻(ことばじり)、
"潮汁(うしほじる)"の鮮美(よきあぢ)なるは慥(たしか)なれど、
當日(このひ)の白眉(はくび)は"大頭鱈精巣(くもこ、=たらのしらこ)"。

適度(ほどよ)く調劑(あぢつけ)が施(ほどこ)され、
この、最上(このうへな)き淸湯(すましゞる)に調和(よくあふ)。
會(あ)ふは別(わか)れの劈頭(はじめ)に悲慘(みじめ)、三●締(さん▲んじめ)。
濟(す)ませ、黄昏(たそがれ)の『うを德』より辭別(いとまごひ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"助子(すけこ)"
  ・雲州宍道湖(いづものくにしんじこ)の"膾殘魚(しらうを)"
  ・筑紫合馬(つくしのくにあふま)の"竹筍(たかむな)"
  ・《刺躬(さしみ)》
    ・淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"
    ・失念(わすれたり)
    ・"鮮鱲子(なまのぼらこ)"
    ・蝦夷地濱中(えぞちはまなか)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・"赤海鷂魚肝(あかゑひのきも)"+"虎魨(とらふぐ)"
  ・蝦夷地羅臼(えぞちらうす)の"帝王鮏(ますのすけ)"
  ・"烏魚子(からすみ)"
  ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の"鮪幼魚(めじ)"
  ・能州(のと)"赤沙噀(あまなまこ)"、鮮(なま)+茶振(ちやぶり)
  ・因州(いなば)or伯州(はうき)の"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"
  ・江州(あうみ)琵琶湖(びはこ)の"稚年魚(ちあゆ)"
      +城州(やましろ)"萬願寺蕃椒(まんがんじなんばんこせう)"
  ・隱州(おき)"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"

(すし)】:
  ・上總竹岡(かづさたけをか)の"鱵(さより)" 
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"甲烏賊(すみいか、=かふいか)"
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・蝦夷地野附(えぞちのつけ)の"海扇(ほたてがひ)"
  ・和泉灘(いづみなだ)の"小鰭(こはだ)"
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、痩肉(あかみ)
  ・雲州宍道湖(いづものくにしんじこ)の"鰻鱺(むなぎ)"

(しるもの)】:
  ・"潮汁(うしほじる)"
    ・椀種(わんだね):淡路(あはぢ)星王餘魚(ほしがれひ)
              蝦夷(えぞち)大頭鱈精巣(くもこ)
    ・吸口(すひくち):椒芽(きのめ)

果子(このみくさのみ)】:
  ・草莓(いちご)"アイベリー"
  ・橘子(たちばなのみ)"せとか"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:高千穗光學(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-微距(Macro)2/50 @F2.8~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06

强(つよ)き颱風(のわけ)に因(よ)り、訪問(のれんくゞる)は四月(よつき)ぶり。
「豐穣(ゆたか)なる白藏(あき)の幸(さち)」を喰(く)ひそびれ
はや、水(みづ)も凍(い)てつく玄英(ふゆ)。
名殘(なごり)の"(むなぎ)"は"遠州濱名湖(とほとうみはまなこ)"。

江州琵琶湖(あうみびはこ)"本諸子(ほんもろこ)"、
隱州(おき)"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"と、
(い)ける×孔明(こうめい)〇魚介(うみ・みづうみのさち)、
冢中枯骨(つかのなかにかれたるほね)卍(まんじ)を狂喜亂舞(まひをど)らす

實(げ)に、
天下無雙(よにくらぶるものな)きは小宮親方(こみやおやかた)の"鱲子(からすみ)":
適度(ほどよ)く熟成(う)れ
芯(なか)は、なほ"(やはらか)さ"と"瑞々(みづみづ)しさ"を保持(たもつ)。

美味佳肴(よきあぢ)揃(ぞろ)ひなること、
何(いづ)れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」のごとき景状(ありさま)なれど、
當日(このひ)の白眉(はくび)は、
"活天然對蝦(いけてんねんくるまえび)"用(つか)ひし"雞卵炙(たまごやき)"。

實言(まこと)、
海内一(ひのもといち)の"雞卵炙(たまごやき)"」と斷言(よぶをはゞからず)。
小宮親方(こみやおやかた)も亦(また)、
會心作(くわいしんさく)」と自慢(むねをはる)、靑陽(はる)はまだ先(さき)。

これほどに、
沈魚落雁閉月羞花(うをしづみ、かりおち、つきとぢ、はなもはぢらふ)」
ほどの殊滋異味(よきあぢ)盡(づ)くしなれど、
勘定(しはらひ)は銀座(ざぎん)の●分の一(▲▲ぶんのいち)の廉價(やすさ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・江州琵琶湖(あうみびはこ)の"冰魚(ひうを)"
  ・鱲子(からすみ)
  ・能州(のと)"赤沙噀(あまなまこ)"
  ・"活天然對蝦(いけてんねんくるまえび)"による"雞卵炙(たまごやき)"  
  ・蝦夷仙鳳趾(えぞせんぽうし)の"眞蠔(まがき)" 
  ・江州琵琶湖(あうみびはこ)"本諸子(ほんもろこ)"の天麩羅(てんぷら)
  ・蝦夷濱中(えぞはまなか)"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・播州明石(はりまあかし)の"眞鯛(まだひ)"、四百八十匁(≒1.8kg)
  ・佐渡島(さどがしま)の"阿羅魚(あら)"、五百三十匁(≒2kg)
  ・蝦夷余市(えぞよいち)"華臍魚肝(あんかうきも)"
  ・隱州(おき)"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"、二百匁(≒750g)
  ・但州香住(たじまかすみ)の"雌楚蟹(めすのすはへがに)"の澆飯(どんぶりめし)
  ・遠州濱名湖(とほとうみはまなこ)の"鰻(むなぎ)"二百七十匁(≒1kg)

(すし)】:
  ・能州(のと)の"鰤(ぶり)"、四貫五百三十匁(≒17kg)、肥肉(あぶらみ)
  ・房州勝浦(あはかつうら)の"鯥(むつ)"
  ・佐渡島(さどがしま)の"阿羅魚(あら)"、五百三十匁(≒2kg)
  ・奧州(むつ)の"金華鯖(きんくわさば)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"眞鰺(まあぢ)"
  ・陸州大間(むつおほま)の"鮪(しび)"、四十三貫(≒160kg)
  ・陸州大間(むつおほま)の"鮪(しび)"、四十三貫(≒160kg)、肥肉(あぶらみ)
  ・能州(のと)の"鰤(ぶり)"、四貫五百三十匁(≒17kg)

(しるもの)】:
  ・播州明石(はりまあかし)の"眞鯛(まだひ)潮汁(うしほじる)"、
         四百八十匁(≒1.8kg)、朝〆(あさじめ)

果子(このみくさのみ)】:
  ・越後(ゑちご)の洋梨(やうなし)"ル・レクチ"
  ・紀州(きい)"紅まどんな"
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
時節柄(をりしも)、
盂蘭盆會(うらぼんゑ)と颱風(のわけ)が重(かさ)なり、
魚市塲(うをいちば)も蔬菜市塲(あをものいちば)も閉鎖(しま)り、
(いを)も蔬菜(あをもの)も缺乏(とぼし)き最惡(いとあし)き慘状(ありさま)

かゝる惡條件下(あしきめぐりあはせ)での、
淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"四百五十三匁(≒1.7kg)、
雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"(むなぎ)"百七十九匁(≒670kg)、
能州(のと)の"阿羅魚(あら)"九百四十七匁(≒3.55kg)。

木砧(まないた)の上(うへ)の"星王餘魚(ほしがれひ)"は朝〆(あさじめ)。
噛(か)むほどに、心持(こゝち)よき齒觝觸(はあたり)を隨伴(ともな)ひ
風韻(かをり)・旨味(うまみ)が浮騰(ほとばし)る。
就中(わきても)、縁側(えんがは)には肝裂魄飛(きもさけたましひみにそはず)。

とは半點(いさゝか)大袈裟(おほげさ)なれど、
"星王餘魚(ほしがれひ)"も"(むなぎ)"も、實言(まこと)、美味(よきあぢ)。
"潮汁(うしほじる)"の美(あぢよき)は勿論(いふもさらなり)。
素材(そざい)秀逸(よし)、技倆(うで)さらに優秀(よし)

此度(こだみ)の米醋(よねず)と粕醋(かすゞ)の配合比(わりあひ)は、
「六(ろくぶ):四(しぶ)」との説明(よし)。
粕醋(かすゞ)は"山吹(やまぶき)"など三種(みくさ)の混合(まぜあはせ)。
舎利(すめし)に限定(かぎ)るなら、試行錯誤中(みちなかば)歟(か)?

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"雞卵炙(にはとりのたまごやき)"
        ・・・・・
  ・長良川(ながらがは)の"香魚(あゆ)"
  ・土州四萬十(とさしまんと)の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"と
     "伏見蕃椒(ふしみたうがらし)"有馬煮(ありまに)
        ・・・・・
  ・蝦夷地餘市(えぞちよいち)の"鮟鱇肝臟(あんきも)"
  ・播州明石(はりまあかし)の"海蛸子(たこ)"、九百卅匁(≒3.5kg)
  ・"秋葵(おくら)"
        ・・・・・
  ・房州勝浦(あはかつうら)の"鰒(あはび)"
  ・上州(かうづけ)"茄子(なすび)"
        ・・・・・
  ・淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"、四百五十三匁(≒1.7kg)
  ・蝦夷地噴火灣(えぞちふんくわゝん)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・加州(かゞ)"加賀太胡瓜(かゞぶとそばうり)"
        ・・・・・
  ・山州(やましろ)"鹿ヶ谷柬埔塞瓜(しゝがたにかぼちやうり)"
        ・・・・・
  ・雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"鰻(むなぎ)"、百七十九匁(≒670kg)

(すし)】:
  ・能州(のと)の"阿羅魚(あら)" 、九百四十七匁(≒3.55kg)
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)" 、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・三州(みかは)の"鯷(いはし)"
  ・下總銚子(しもつふさてうし)の"堅魚(かつを)"
  ・蝦夷地奧尻(えぞちおくしり)の"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・豐後(ぶんご)"城下王餘魚(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"
  ・江戸前海(えどまへうみ)の"小鰭(こはだ)"
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"、四百五十三匁(≒1.7kg)
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、醬油漬(しやうゆづけ)
  ・"星鳗(あなご)"
  ・陸前高田(りくぜんたかだ)"石影貝(いしかげがひ)"
  ・"新魷魚(しんいか)"
  ・"河童卷(かつぱまき)"

(しるもの)】:
  ・能州(のと)の"海糠魚(あら)"の骨邊肉(あら)九百四十七匁(≒3.55kg)と
      ブータン"松蕈(まつたけ)"の潮汁(うしほじる)

果子(このみくさのみ)】:
  ・宇留麻廼久尓(うるまのくに)"タヾヲゴールド"菠蘿(ぱいんあぷる)
  ・墨西哥(メキシコ)"芒果(まんご)"
  ・薩州(さつま)"茘枝(れいし)"
  ・"瀬戸(せと)ジャイアント"
  ・暹羅(しやむろ)"榴蓮(ドリアン)"
=======================================

---------------------------------------
【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
今季初(はつもの)」と云ふ"尼手鰈(あまてがれひ、=まこがれひ)"は、
淡路島(あはじゝま)の四百八十匁(≒1.8kg)、
備前小島灣(びぜんこじまわん)の(むなぎ)が百二十八匁(≒480kg)、
佐渡(さど)の(しび)は稍(やゝ)小(ちい)さめの十八貫七百匁(≒70kg)。

劈頭(いやさき)に、"饅膾(ぬたなます)"。
名殘(なごり)の"螢魷魚(ほたるいか)"を最惜(いとをし)みつゝ、
馬鹿貝(ばかゞひ)と九條蔥(くでうねぎ)を醋未醤(すみそ)にて堪能(あぢはふ)。
何(なん)でも「千鳥醋(ちどりす)」との説明(よし)。

伏見蕃椒(ふしみたうがらし)と縠雜魚(ちりめんざこ)の煮物(にもの)には、
破顏(かをほころば)さゞるべからず。
小宮親方(こみやおやかた)特有(ならでは)の優(やさ)しき味(あぢはひ)
實(げ)に、これを家苞(いへつと)ゝして囘(かへ)りたきところ

未開(いまだひらかざる)"(ぬなは)":、
水晶(すいしやう)のごとき"それ"には「肝裂魄飛(きもさけたましひみひそはず)」。
近接(ちかより)て詳細(つぶさ)に觀察(み)るに、
實言(まこと)、嬰兒(みどりご)の如(ごと)き容姿(すがたかたち)。

備前小島灣(びぜんこじまわん)の(むなぎ)は"白炙(志らやき)"。
雲州宍道湖(いづもしんじこ)の鰻(むなぎ)にも負(ま)けぬ美味(よきあぢ)
今季一(こんきいち)」
と云ふも、强(あなが)ち嘘僞(うそいつはり)にあらず

土州(とさ)の縞鰺(しまあぢ)、上總竹岡(かみつかさたけをか)の帶魚(たちうを)、、
百花繚亂(いづれあやめかゝきつばた)」。
早晚(いづれ)彩芽(あやめ)は老板(ひと)の(つま)。
眞妻山葵(まづまわさび)は刺躬(さしみ)の"つま"。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"饅膾(ぬたなます)"
     勢州桑名(くはな)の馬鹿貝(ばかゞひ)
     越中富山滑川(ゑつちゆうとやまなめりかは)の螢魷魚(ほたるいか)
     山州(やましろ)九條葱(くでうねぎ)
  ・"煮物(にもの)"
     蝦夷余市(えぞよいち)の華臍魚肝(あんごうきも)
     山州(やましろ)伏見蕃椒(ふしみたうがらし)
     縠雜魚(ちりめんざこ)
  ・"醋物(すのもの)"
     羽州白神山地(ではのくにしらかみさんち)の蓴菜(ぬなは)
  ・"煮物(にもの)"
     床臥(とこぶし)
     冬瓜(かもうり)
     牛蒡(うまふゞき)
     實山椒(なるはじかみのみ)
  ・"臠(さしみ)"
     淡路島(あはじゝま)の尼手鰈(あまてがれひ)、四百八十匁(≒1.8kg)
     蝦夷禮文島(えぞれぶんたう)の蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)  
  ・"焼物(やきもの)"
     備前小島灣(びぜんこじまわん)の鰻(むなぎ)、百二十八匁(≒480kg)

(すし)】:
  ・房州勝浦(あはかつうら)の堅魚(かつを)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)中肥肉(ちゆうあぶ)、十八貫七百匁(≒70kg)
  ・眞鯒(まごち)
  ・土州(とさ)の縞鰺(しまあぢ)、一貫二百八十匁(≒4.8kg)
  ・淡路(あはぢ)の胡麻鯖(ごまさば)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)、十八貫七百匁(≒70kg)
  ・玉珧(たひらぎ)
  ・上總竹岡(かみつかさたけをか)の帶魚(たちうを)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)漿醬醃(しやうゆづけ)、十八貫七百匁(≒70kg)
  ・雞卵炙(にはとりのたまごやき)

(しるもの)】:
  ・吸地(すひぢ)
    利尻昆布(りしりひろめ)+鮪節(しびぶし)
  ・椀種(わんだね)
    雲州江の川(いづもごうのかは)の鰷(あゆ)
    芋莖(いもじ)
  ・吸口(すひくち)
    椒芽(きのめ) ※自家栽培(じかさいばい)

果子(このみくさのみ)】:
  ・蝦夷夕張(えぞゆふばり)甜瓜(からうり)、"夕張甜瓜(ゆふばりメロン)"
  ・羽州(では)櫻桃(さくらんぼ)、"佐藤錦(さたうにしき)"
  ・臺灣(たいわん)茘枝(れいし)
  ・葡萄(えびかづら)
=======================================

---------------------------------------
【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
劈頭(いやさき)に眼精(まなこ)を射(い)るは、
俎上(まないたのうへ)の×"天狗(てんぐ)"〇"時不知(ときしらず)"。
そも、"時不知(ときしらず、おほめます)"なるもの、
高貴(やむごとなき)こと、鮏(さけ)の夥計(なかま)でも頂點(いたゞき)。

これを紀州備長炭(きしうびんちやうたん)に炙(あぶりや)きて頂戴(いたゞく)。
i.e.,(すなはち)、"鹽燒(しほやき)"。
不味(あぢあし)き理(ことわり)もなし。
かくて、「虎咽狼呑(むさぼりつく)」せば、身・皮(みかは)の竟(をは)り

信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の山菜(さんさい)も今季(ことし)で最後(をはり)。
×雞眼目(うをのめ)〇楤芽(たらのめ)、漉油(こしあぶら)。
尾張(をはり)に駿州(するが)遠州(とほとほみ)、
駿河灣(するがわん)遠州(とほとほみ)櫻蝦(さくらえび)の"天麩羅(てんぷら)"。

佛陀(ほとけ)の骨(ほね)に鮓(すし)の米(こめ)、
「舎利(しやり)」と喚做(よびな)す鮓業界(このせかい)。
小宮親方(こみや)の舎利(しやり)は×三度(さんど)まで〇七變化(しちへんげ)。
米醋(よねず)に粕醋(あかず)、横井(よこゐ)に中㙒(なかの)。

水果(くだもの)、悉(ことごと)く"清露(シロップ、みつゞけ)"と做(な)す。
"(なま)"でも"糖漿(みつゞけ)"でも、最上級品(いとよきもの)ばかり。
就中(わきても)、
琉球(りうきう)"桃菠蘿(ピーチパイン)"は「龍肝豹胎(まれにみるうまさ)」。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"醋未醤和(すみそあへ)"
     薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)" 
     土州(とさ)"四方竹(しはうちく)"
  ・"煮付(につけ)"
     江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"稚鰷(ちあゆ)"
     信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"楤芽(たらのめ)"
     信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"漉油(こしあぶら)"
  ・駿河灣(するがわん)櫻蝦(さくらえび)の"天麩羅(てんぷら)"
  ・時不知(ときしらず、おほめます)"鹽燒(しほやき)"
  ・"刺躬(さしみ)"
     淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"
     蝦夷地釧路(えぞちくしろ)の"蝦夷馬糞霊螺子(えぞばふんうに)"
  ・"雞卵燒(たまごやき)"

(すし)】:
  ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・"櫻鱒(さくらます)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"春子鯛(かすごだひ)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"眞鰺(まあぢ)"
  ・江戸灣(えどわん)の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・"小鰭(こはだ)"="鯯(このしろ)"の稚魚(をさないを)
  ・蝦夷地(えぞち)"富山蝦(とやまえび)"
  ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)"
  ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、醬油漬(しやうゆづけ)
  ・越中富山(ゑつちゆうとやま)の"白蝦(しろえび)"+陸州(むつ)"蚫(あはび)"

(しるもの)】:
  ・"花山椒鍋(はなざんせうなべ)"
     和州(やまと)"花山椒(なるはじかみのはな)"
     上總竹岡(かみつかさたけをか)の"白帶魚(たちうを)"
     泉州(いづみ)"水茄子(みづなす)"
     "防風(はますかな)?"

果子(くわし)】:
  ・果子(くだもの)ゝ清露(シロップ)
     米利堅(めりけん)の"櫻桃(さくらんぼ)"
     本朝(わがくに)の"櫻桃(さくらんぼ)"
     琉球(りうきう)"桃菠蘿(ピーチパイン)"
     日向(ひむか)"芒果(マンゴ)"
     "橘(みかん)"の等類(たぐひ)
=======================================

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
備前(びぜん)兒島灣(こぢまわん)の"(むなぎ)"などの初物(はつもの)!
"(むなぎ)"には釣針(つりばり)までと云ふ邂逅(めぐりあはせ)。
炙(あぶりやき)に用(つか)ふ備長炭(しろずみ)も、
"日向備長炭(ひむかびんちやうたん)から"紀州備長炭(きしうびんちやうたん)"に、、。

勿驚(おどろくなかれ)、
"横井(よこゐ)"の"與兵衞(よへゑ)"が製造中止(もはやつくらず)とのこと。
已(や)むことを得(え)ずして、
"山吹(やまぶき)"+"江戸丹念酢(えどたんねんず)"を代替(かへとなす)。

"雞卵燒(たまごやき)":
天然對鰕(てんねんくるまえび)に鰕黃(えびみそ)まで擂込(すりこ)み、
顏色(いろ)・(あぢ)・風韻(かをり)とも 
實(げ)に、皇帝(すめらみこと)の風格(おもむき)

豐前(ぶぜん)"城下鰈(しろしたがれひ)"骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"には、
肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。
最貴(いとやむごとな)き"花山椒(なるはじかみのはな)"まで散見(ちらりほらり)。
そのほか、一(ひと)つとして不味(あぢあしき)は無(なし)

倩(つらつら)、昔日(むかし)の記録(ふみ・ゑ)を繙(ひもと)くに、
足掛十年(あしかけとゝせ)、此度(こだみ)で百三十二囘目(ひやくさんじふにかいめ)。
周知(あまねくしら)るゝ、掉尾(いやはて)の果實(くだもの)と云ふ形式(かたち)、
徐々(ゆるやか)に確立(なりし)ものと氣附(きづ)く。

嘗(かつ)ては、果子(くだもの)なきこともあり、
手製(みづからつくり)し甜品(あまみ)を提供(ふるま)ふことも、、。
小宮親方(おやかた)に據(よ)らば、
手間(てま)でもあり、賓(まらうど)も果實(くだもの)を怡(よろこ)ぶ」と。

實(げ)にも!
面倒(てのかゝ)る甜品(あまみ)簡易(てのかゝら)ぬ果物(くだもの)へ、、。
と云ふのは、"菓子(くわし)"の歴史(れきし)とは逆向(さかしま)
元來(もとより)"菓子(くわし)"とは、

庭訓往來】:南北朝時代末期~室町時代前期
=========================================
>"菓子"者(くわしは)、
>
> (ゆ)、柑々子(かうかうじ)、(たちばな)、熟瓜(じゆくくわ)、
> 澤茄子(さはなすび)等(とう)、可隨時景物也(ときのけいぶにしたがふべきなり)
>
> 伏菟曲(ふとまがり)、煎餠(せんべい)、燒餠(やきもち)、粢(しどき)、
> 興米(おこしこめ)、索<米并>(さくべい)、糒(ほしい)、粽(ちまき)等(とう)、
> 爲客料可被用意(かくれうのためにやういせらるべし)。
> 御時粥(おんときかゆ)、以前(いぜん)可被調置(とゝのへおかるべし)。
=========================================

日葡辭書】: 安土桃山期(刊行は江戸初期)
=========================================
>"Quaxi(くわし)" 
>
> 果實、特に、食後の果物をいふ。
=========================================

のであり、
古(ふる)く夏華(もろこし)より傳來(つたは)りし"唐菓子(からくだもの)"、
その後(のち)の"南蠻菓子(なんばんぐわし)"を含(ふく)め、
砂糖(さたう)を用(つか)ふやうに、、。

江戸初期(えどのはじめごろ)【料理物語】には、 
各種(さまざま)なる"菓子(くわし)"が紹介(しめさ)れ、
沙糖(さたう)用(つか)ふものも過半(なかばをこす)。
"蕨餠(わらびもち)"に不使用之(これをつかはざる)は後世(のち)も同(おな)じ

料理物語】:(45~47/56) ※拔粹 ●:砂糖練、▲:砂糖掛、×無糖
=========================================
>第十八、"菓子(くわし)"之部
>
>"玉子素麺(たまごさうめん)"●
>
>"おこし米(こめ)"●
>
>"牛蒡餠(ごばうもち)"●
>
>"葛燒(くずやき)もち"●
>    くず一升、水一升、沙糖(さたう)一升、三色(いろ)すくこね、
>    あはを、みかんほどにまろめ、なべに、すこしあぶらをぬり、
>    さいさい、うちかへし、燒(やき)申候。
> 
>"葛餠(くずもち)"▲
>    くずのこ一升に、水一升五合(がう)入、ねりて、出し候。
>    もちは、いづれも、"まめのこ"、鹽(しほ)、"さたう"、かけて吉。
>    又、"くずのこ"、"わらびのこ"は、何(なん)ときも、やげんにて、
>    よくおろして、こね申也。
>
>"蕨餠(わらびもち)"×
>    粉(こ)一升に、水一升六七合(かう)入、よくときて、ねり候よし。
>    粉(こ)同。
>
>"雪餠(ゆきもち)"×
>
>"杉原(すぎはら)もち"×
>
>"枸杞餠(くこもち)"×
>
>"五加(うこぎ)餠"×
>
>"ちまき"▲
>    是も四分六分の"こ"を水にてやはらかにね、ま薦(こも)にても、 
>    篠(さゝ)のはにても、つゝみまき、よくゆで候。
>    黃には、くちなしの汁入、"沙糖(さたう)"、大豆(まめ)の"こ"、しほ。
>
>"さゝ餠"×
>
>"御所樣餠(ごしよさまもち)"▲
>
>"近衞樣雪餠(このゑさまゆきもち)"×
=========================================

江戸後期(えどのをはりちかく)、
江戸流行料理通】には、
菓子(くわし)といふは砂糖(さたう)にて製(こしらへ)たるものにあらず
と、時流(ながれ)に逆(さか)らふ發言(ものいひ)も、、。

八百善料理通】:(39/81)
=========================================
>"菓子(くわし)"の心得の事
>
>一、菓子(くわし)といふは砂糖(さたう)にて製(こしらへ)たるものにあらず
> 菓子(くわし)は"くだ物(もの)"也。
> 四季(しき)の木實(このみ)草實(くさのみ)をいふ。
> 料理(りやうり)の終(をは)りに出す事は、
> 料理の厚味(かうみ)、魚鳥(ぎよてう)を食(しよく)し
> 食熱(しよくねつ)をさますため也。
>
> 料理にかゝはりたるにもあらず。
> 後(のち)に工夫(くふう)ありて、作(つく)れる也。
> 砂糖(さたう)は冷(れい)なる物なれば、惡(あし)き物にあらず。
> 宜(よろし)といへども、さりながら、木(こ)の實(み)草(くさ)の實(み)を、
> 盛合(もりあは)せ出すが宜(よろ)し
> 此の理(り)を捨(すつ)べからず。
>
> 茶請(ちやうけ)は砂糖(さたう)にて作(つく)りたる品(しな)宜(よろ)し
> の味(あぢは)ひには●(よろし●)の第一也。   ※ ←●:不能判讀
>
> 仍(よつ)て、”茶菓子(ちやくわし)”とは獻立(こんたて)には書(かゝ)ず
> ”茶請(ちやうけ)”と書事(かくこと)なり。
=========================================

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"蕗未醤(ふきみそ)"
  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"冰魚(ひうを)"
  ・土州(とさ)四万十川(しまんとがは)の"沼知々武(ゴリ)"
  ・山州(やましろ)"花山椒(なるはじかみのはな)"

  ・豐前(ぶぜん)"城下鰈(しろしたがれひ)"、三百四十七匁(≒1.3kg)魥(さしみ)
  ・淡路(あはぢ)"眞子鰈(まこがれひ)"、三百廿匁(≒1.2kg)刺躬(さしみ)
  ・蝦夷地(えぞち)"蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)"
  ・山州(やましろ)長岡京(ながをかきやう) の"笋(たけのこ)"
  ・山州(やましろ)"花山椒(なるはじかみのはな)"

  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"稚鰷(ちあゆ)"鹽燒(しほやき)

  ・備前(びぜん)兒島灣(こじまわん)の"鰻(むなぎ)"、九十三匁(≒350g)

  ・"雞卵燒(たまごやき)" ※天然對鰕(てんねんくるまえび)+鰕黃(えびみそ)
  ・蝦夷地(えぞち)余市(よいち)の"華臍魚(あんかう)"肝臟(きも)

(すし)】:
  ・下總(しもつふさ)船橋(ふなばし)の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・上總(かみつかさ)竹岡(たけをか)の"鱵(さより)"
  ・"小鯛(かすご)"
  ・長州(ながと)仙嵜(せんざき)の"鮪(しび)"
  ・豐前(ぶぜん)佐賀關(さがのせき)の"雞魚(いさき)"

(しるもの)】:
  ・椀種(わんだね):
     豐前(ぶぜん)"城下鰈(しろしたがれひ)"の骨邊肉(あら) 
  ・吸口(すひくち):
     山州(やましろ)"花山椒(なるはじかみのはな)"

果子(くわし)】:
  ・"●●柑(なんとかゝん)"
  ・吉備(きび)の"酸漿(ほゞづき)"
  ・日向(ひむか)"芒果(マンゴ)"
=======================================

---------------------------------------
【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
劈頭(いやさき)に"海鼠子(このこ)":
現今(いま)"ナマコ"と叫(よ)ばるゝものは、
古來(いにしへより)、和名(やまとことば)で""と號(よびな)さる。
海鼠(こ)の生殖巢(こ)」故(ゆゑ)、"海鼠子(このこ)"。

倭名類聚抄】(16/65):
========================================
  "海鼠(こ)":
    "(ひる)"に似而(にて)大者(おほきなるもの)也。
========================================

和漢三才圖會】(230~231/787):
========================================
  "海鼠膓(このわた)":
    腹中に黃膓三條有り。
    之を淹し、"醬"と爲る者也。
    香美、不可言(いふべからず)。
      ・・・・(中畧)・・・・
    其膓中、赤黃色有て、糊の如きの者を、"海鼠子(このこ)"と名く。
    亦佳し
========================================

"海鼠子(このこ)"に三種(みくさ)あり、
i.e.,(すなはち)、"(なま)"、"半生(はんなま)"、"(ひもの)"、これなり。
その容(かたち)から、(ひもの)は"撥子(ばちこ)"と喚做(よびな)さる。
老骨(それがし)、"(なま)"を最喜歡(なによりこのむ)。

江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"冰魚(ひうを)、=鰷稚魚(あゆをさなご)":
"海鼠子(このこ)"も"冰魚(ひうを)"も、魚河岸(いをがし)にて仕入(しい)れ、
寸毫(つゆ)不加工(てをくはへざる)ものなれど、
「實言(まこと)、佳味(よきあぢ)!」、と云ふほかなし。

肥前(ひぜん)大村(おほむら)の"靑海鼠(あをなまこ)"に、
能州(のと)"赤海鼠(あかなまこ)と云ふ競(あらそひ)。
(なま)の海鼠(こ)故(ゆゑ)、人(ひと)は"生海鼠なまこ)"と呼(よ)ぶ。
明白(あきらか)に"靑海鼠(あをなまこ)"が吉(よい)。

虎鯸(とらふく)の"精巢(しらこ)":
巨大(いとおほきな)る"精巢(しらこ)"を六等分(むつにわけ)、
振鹽(ふりじほ)をして、備長炭(しろずみ)にて叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る
不味(まづ)からう道理(わけ)もなし。

"烏魚子餈(からすみもち)"また然(しか)り。
雞(とり)が啼(な)く東國(あづまのち)では稀(まれ)なる"丸餈(まるもち)"。
越後(ゑちご)のもの」と云ふ。
"烏魚子(からすみ)"の華美(よきあぢ)なるは勿論(いふもさらなり) 。

この日(ひ)の(しるもの)は、正(まさ)に靑陽(はる)。
筑前(ちくぜん)八女(やめ) の(たけのこ)、獨活(うど)、大葉擬寶珠(うるい)、
椒芽(きのめ)の吸口(すひくち)も爽(さは)やか。
愚按(おもふに)、『うを徳』の(しるもの)は天下無雙(よにならぶものなし)。

雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"鱣魚(むなぎ)"を堪能(あぢは)ひ、
薩州(さつま)出水(いづみ)の"眞鰺(まあぢ)"に、
伯州(はうき)境港(さかひみなと)の"松葉蟹(まつばがに)"、
掉尾(いやはて)は、阿州(あは)"さくらもゝ草莓(いちご)" にて掉尾(しめ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・能州(のと)海鼠子(このこ)
  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"冰魚(ひうを)、=鰷稚魚(あゆをさなご)"
  ・蝦夷地(えぞち)乙部(おとんべ)の"なめた王餘魚(がれひ)"
  ・播州(はりま)明石(あかし)?の"海蛸子(たこ)"
  ・滑子(なめこ)
  ・肥前(ひぜん)大村(おほむら)"靑海鼠(あをなまこ)"
  ・能州(のと)"赤海鼠(あかなまこ)"
  ・播州(はりま)明石(あかし)の"比目魚(ひらめ)"、六百四十匁(≒2.4kg)
  ・蝦夷地(えぞち)昆布森(こんぶもり)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・虎鯸(とらふく)"精巢(しらこ)"
  ・蝦夷地(えぞち)餘市(よいち)の"華臍魚肝臟(あんかうきも)"
  ・"烏魚子(からすみ)餈(もち)"
  ・雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"鱣魚(むなぎ)"、三百廿匁(≒1.2kg)

(すし)】:
  ・豆州(いづ)下田(しもだ)の"鮪(しび)"、四十五貫三百匁(≒170kg)
  ・播州(はりま)明石(あかし)の"比目魚(ひらめ)"、六百四十匁(≒2.4kg)
  ・豆州(いづ)下田(しもだ)の"鮪(しび)"、四十五貫三百匁(≒170kg)
  ・薩州(さつま)出水(いづみ)の"眞鰺(まあぢ)"
  ・"障泥魷魚(あふりいか)"
  ・"牀臥(とこぶし)"
  ・豆州(いづ)下田(しもだ)の"鮪(しび)"、四十五貫三百匁(≒170kg)
  ・伯州(はうき)境港(さかひみなと)の"松葉蟹(まつばがに)="楚蟹(すはへがに)"

(しるもの)】:
  ・椀種(わんだね):
     筑前(ちくぜん)八女(やめ) の笋(たけのこ)、
     獨活(うど)、
     大葉擬寶珠(うるい、=おほばぎばうし)
  ・吸口(すひくち):
     椒芽(きのめ)

果子(くわし)】:
  ・阿州(あは)"さくらもゝ草莓(いちご)"
  ・白草莓(しろいちご) 、"初恋の香り"
  ・"金柑(きんかん)"二色(ふたいろ)
=======================================

---------------------------------------
【暗箱】 :東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【受象珠】:旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
以西巴爾亞(イスハニヤ)の繪師(ゑし)の手(て)になる石版印刷畫(リトグラフ)は、
先代(さきつおやかた)の所藏(もの)」と云ふ。
この日(ひ)の廚(つけば)には、"肥前(ひぜん)五島(ごたう)の垢穢(くゑ)"に、
"子籠(こゞもり)の公魚(わかさぎ)"、雌雄(めすとをす)"楚蟹(すはへがに)"。

はや、
"蜂斗菜(ふきのたう)"に加(くは)へ、
"(わん)"には、(たけのこ)と麪條魚(しらうを)に椒芽(きのめ)。
一足(ひとあぢ)早(はや)き靑陽(はる)の宴(うたげ)

對照的(これとはさかしま)、
名殘(なごり)の、"せこ蟹(がに)"に、"濱名湖(はまなこ)の(むなぎ)"。
やはり鰻魚(むなぎ)は龝(あき)が吉(よい)。
同席(せきをおなじくせ)し臺灣(あちら)の食通(かた)と蟹談義(かにばなし)。

稚拙(つたな)き漢語・英語(あちらのことば)にて會話(やりとり)するに、
楚蟹(すはへがに)は蟹身(み)、大閘蟹(もろこしもくづがに)は蟹黃(かにみそ)」
と互(たが)ひに打點頭(うちうなづ)く。
結局(とゞのつまり)、彼儕(かれら)とは日語(ひのもとのことば)が最適(よい)

"烏魚子(からすみ)二種(ふたくさ)"の内(うち)の一種(ひとつ)は、
「仕入値(しいれね)瓩(キロ)六萬五千圓(ろくまんごせんゑん)」。
奴僕(やつかれ)、
熟成(ひの)淺(あさ)き二萬五千圓(にまんごせんゑん)が嗜好(このみ)

酒足飯飽(ごちさうさまでござつた)!」
前述(くだん)の臺灣(たいわん)よりの貴人(たふときひと)も、
同意之(これにうなづく)。
很好吃(いとよきあぢなり)!」

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・松前漬(まつまへづけ)
     鯡魚子(かどのこ)
     魷魚乾絲(するめせん)
     昆布絲(ひろめせん)
     胡蘿蔔絲(せりにんじんせん)
  ・肥前(ひぜん)小長井(こながゐ)の蠔(かき)
  ・油煠(てんぷら)
     蜂斗菜(ふきのたう)
     公魚(わかさぎ)
  ・胾(さしみ)
     蝦夷地(えぞち)濱中(はまなか)の馬糞靈螺子(ばふんうに)
     肥前(ひぜん)五島(ごたう)の垢穢(くゑ)
  ・清蒸赤鯥(あかむつむしもの)
  ・せこ蟹(がに)釜飯(かまめし)
  ・遠州(とほとほみ)濱名湖(はまなこ)の鰻(むなぎ)、二百十三匁(≒800g)
  ・烏魚子(からすみ)二種(ふたくさ)

(すし)】:
  ・雞卵燒(たまごやき)
  ・佐渡(さど)の鰤(ぶり)
  ・蝦夷地(えぞち)松前(まつまへ)の金槍魚(しび)
  ・因州(いなば)or伯州(はうき)の"松葉蟹(まつばがに)="楚蟹(すはへがに)"

(わん)】:
  ・清湯(すましゞる)
     椀種(わんだね):
       薩州(さつま)の笋(たけのこ)
       雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の銀魚(しらうを)
     吸口(すひくち):
       椒芽(きのめ)

果子(くわし)】:
  ・下總(しもつふさ)香取(かとり)の"アイベリ"
  ・肥前(ひぜん)"せとか"
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
烏魚子(からすみ)にせばや」と、
仕込最中(しこみさなか)の鯔魚子(ぼらこ)に眼眶(まなこ)釘附(くぎづけ)。
雌雄(をすめす)楚蟹(すはへがに)の姿(すがた)も、、。
やはり不可缺(かゝせぬ)江州琵琶湖(あふみびはこ)の諸子(もろこ)。

蝦夷地利尻(えぞぢりしり)の牙鮃(ひらめ)は八百匁(≒3kg)の大物(おほもの)。
(さしみ)→(すし)→潮汁(うしほじる)、
美味(うまさ)の三段活用(さんだんかつやう)
三段腹卍(さんだんばらまんじ)、遣繰算段(やりくりさんだん)四苦八苦(しくはつく)。

無理强(むりじ)ひせし"雞卵燒(たまごやき)":
薯蕷(いも)を(す)り、車鰕(くるまえび)、雞蛋(たまご)を加(くは)へ、
日向備長炭(しろずみ)にて叮嚀(ねんごろ)に燒成(やきあぐ)るぞ尤(いと)をかし。
感謝感激雛霰(かんしやかんげきひなあられ)もなき三段腹卍(さんだんばらまんじ)。

この日(ひ)、
唸(うな)り、腕組(うでをく)み、うち點頭(うなづ)きしは"炊合(たきあはせ)"。
聖護院菘根(しやうごいんだいこん)、金時胡蘿蔔(きんときせりにんじん)、
各々(おのおの)調味(あぢつけ)して、火候(ひいれ)完璧(ひのうちどころなし)。

山葵(わさび)にも瞠目(めをみはる)ほか術(てだて)なし。
卸金(おろしがね)を變(か)へ、
鮫皮(さめがは)にも無遜色(ひけをとらぬ)滑(なめ)らかさと黏(ねば)り
同(おな)じ山葵(わさび)でこれほどまでに變貌(かはる)とは、、。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・吉備(きび)と蝦夷地昆布森(えぞちこんぶもり)の眞蠔(まがき)
  ・炊合(たきあはせ)の類(たぐひ):
    ・聖護院菘根(しやうごいんだいこん)
    ・金時胡蘿蔔(きんときせりにんじん)
    ・蝦夷地餘市(えぞちよいち)の鮟鱇肝(あんきも)二種(ふたくさ)
  ・但馬津居山(たじまつゐやま)の勢子蟹(せこがに)
  ・魥(さしみ):
    ・蝦夷地利尻(えぞぢりしり)の牙鮃(ひらめ)、八百匁(≒3kg)
    ・蝦夷地昆布森(えぞちこんぶもり)の海膽(うに)
  ・江州琵琶湖(あふみびはこ)の諸子(もろこ)鹽炙(しほやき)
  ・羽州(では)"にかほ"楚蟹(すはへがに)、二百四十匁(≒900g)
       ※脚身(あしのみ)は撮影失念(とりわすれ)!
  ・羽州八郎潟(ではゝちらうがた)の鰻(むなぎ)、二百十六匁(≒810g)

(すし)】:
  ・雞卵燒(たまごやき)
  ・蝦夷地利尻(えぞぢりしり)の牙鮃(ひらめ)、八百匁(≒3kg)
  ・能州(のと)の鰤(ぶり)、二百七十匁(≒10kg超)
  ・蝦夷地(えぞち)の鯷(いはし)
  ・蝦夷地羽幌(えぞちはぼろ)の特大富山鰕(いとおほきなるとやまえび)
  ・紀州那智勝浦(きゐなちかつうら)の金槍魚(しび)

(わん)】:
  ・牙鮃(ひらめ)骨邊肉(あら)潮汁(うしほじる)

菓子(くわし)】:
  ・肥後(ひご)"太龝柹"(たいしゆうがき)
  ・正體不明(よくわからぬ)、尤(いと)柔(やは)らかなる柹(かき)
  ・ウズベキスタン柘榴(ざくろ)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
當家(こちら)の招牌(かんばん)たる"紅椒ムース(パプリカむうす)":
明石鯛(あかしだひ)の骨邊肉(あら)より魚溏油(フュメ・ド・ポアソン)を引(ひ)き、
幾種(いくつ)もの香味(かをり)ある蔬菜(あをもの)と合(あ)はせ、
裏漉(うらごし)せし紅椒(パプリカ)と奶油(くれむ)と混合(まぜあはす)。

信州(しなの)ゝ松茸(まつたけ)に、鵡川(むかは)の柳葉魚(しゝはむ)、
(ゆ)を吸口(すひくち)とし、(わん)となす。
松茸(まつたけ)は勿論(いふまでもなく)、
柳葉魚(しゝはむ)の超絶美味(くらぶるものなきうまさ)に絶句(ことばをうしなふ)。

八百卅匁(≒3.1kg)と演述(い)ふ、
淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)にも悶絶(たましひみにそはず)。
(さしみ)、(すし)、(しる)の遣繰(やりくり)三段活用(さんだんかつやう)。
祕密蓄財(へそくり)、燒栗(やきぐり)、我同意(I agree)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・蝦夷地仙鳳趾(えぞちせんぽうし)の蠔(かき)
  ・丹波(たんば)黑菽(くろえだまめ)+菱實(ひしのみ)
  ・蝦夷地濱中(えぞちはまなか)蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
    +淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)、八百卅匁(≒3.1kg)、魥(さしみ)
  ・明石鯛(あかしだひ)骨邊肉(あら)による紅椒(ぱぷりか)のムース
  ・蝦夷地余市(えぞちよいち)鮟鱇肝臟(あんきも)燻製(いぶし)
    +蝦夷仙鳳趾(えぞせんぱうし)の蠔(かき)時雨煮(しぐれに)
  ・羽州(では)の鰆(さはら)、藁燒(わらやき)
  ・播州明石(はりまあかし)の蛸(たこ)、六百九十匁(≒2.6kg)、煮章魚(にだこ)
  ・常州霞ヶ浦(ひたちかすみがうら)の鰻(むなぎ)、百四十七匁(≒550g)、
    白燒(しらやき)

(すし)】:
  ・蝦夷地戸井(えぞちとゐ)の鮪(しび)、廿七貫(にじふなゝくわん、≒110kg)
  ・眞鯖(さば)
  ・薩州出水(さつまいづみ)の墨烏賊(すみいか)新子(しんこ)
  ・蝦夷地戸井(えぞちとゐ)の鮪(しび)、肥肉(あぶらみ)
  ・蝦夷地根室(えぞちねむろ)の鯷(いはし)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)漿醤漬(しやうゆづけ)
  ・羽州(では)鰆(さはら)の藁燒(わらやき)
  ・蝦夷地戸井(えぞちとゐ)の鮪(しび)、紅肉(あかみ)

(わん)】:
  ・蝦夷地鵡川(えぞちむかは)の柳葉魚(しゝはむ)+信州松茸(しなのまつたけ)、
    +吸口(すひくち)柚(ゆ)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)骨邊肉(あら)、潮汁(うしほじる)

菓子(くわし)】:
  ・肥前唐津(ひぜんからつ)の無花果(いちじく)"ビオレ・ソリエ"
  ・筑紫(つくし)の無花果(いちじく)"とよみつひめ"
  ・吉備(きび)葡萄(ぶだう)"シャイン・マスカット"
  ・信州(しなの)葡萄(ぶだう)"紫苑(しゑん)"
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss)微距(Makro)Planar T* 2/50 ZK @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
先(さき)の大地震(おほなゐ)に配慮(かんが)み、
此度(こだみ)は蝦夷地(えぞち)山海(うみやま)の幸(さち)が主體(おも)
小人(それがし)嗜(この)む陶藝家(やきものし)長谷川奈津(はせがはなつ):
その(さら)と豬口(ちよく)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはふ)。

蝦夷(えぞ)釧路(くしろ)の狹眞魚(さまうを)、
肥後(ひご)球磨川(くまがは)の子持香魚(こもちあゆ)、
蝦夷(えぞ)松茸(まつたけ)などの美味(よきあぢ)こそあれ、
當日(このひ)の白眉(はくび)は雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)。

時季(とき)を得(え)
三百廿匁(≒1.2kg)と理想(ねがふべき)大(おほ)きさ
活〆(いけじめ)されたるものなれど、
猶(なほ)身(み)は活(い)きて庖丁(はうちやう)に頼哩(あらが)ふ

脆皮(もろきかは)に蕩(とろ)けんばかりの(み)。
素材(そざい)も然(さ)ることながら、
偏(ひとへ)に小宮親方(こみやおやかた)の技倆(うで)に依存(よる)
實言(まこと)、今季一(こんきいち)の美味(うまさ)

蝦夷(えぞ)余市(よいち)の鮟鱇肝臟(あんきも)も、
時季(いまどき)には稀有(めづらし)きほどの濃密(あぢのこ)さ。
實(げ)に、
海(うみ)の鵞鳥肝(フォアグラ)」と號(い)ふも諾(うべ)なる哉(かな)!

今季初(はじめて)の栗(くり):
常州(ひたち)友部(ともべ)の栗(くり)を澀皮煮(しぶかはに)と爲(な)す。
善哉(よき)、善哉(よき)!
野州(しもつけ)白無花果(しろいちじく)は今一(いまひとつ)。

=======================================
(さかな)】:
  ・蝦夷仙鳳趾(えぞせんぽうし)の蠔(かき)
   +京師(みやこ)萬願寺蕃椒(まんぐわんじたうがらし)
  ・京師(みやこ)小薯蕷(こいも)
   +陸州(むつ)土圞兒(ほどいも)
  ・丹波(たんば)菽(えだまめ)
  ・蝦夷釧路(えぞくしろ)の狹眞魚(さまうを)
   +肥後球磨川(ひごくまがは)の年魚(あゆ)
  ・四百卅匁(≒1.6kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)
  ・蝦夷利尻(えぞりしり)の紫海膽(むらさきうに)
  ・三百廿匁(≒1.2kg)雲州宍道湖(いづもしんじこ)鰻(むなぎ)、白燒(志らやき)
   +肥後(ひご)赤茄子(あかなす)
   +蝦夷(えぞ)余市(よいち)の鮟鱇肝臟(あんかうきも)

(すし)】:
  ・江戸灣(えどわん)眞子鰈(まこがれひ)
  ・土州(とさ)縞鰺(しまあぢ)
  ・蝦夷戸井(えぞとゐ)の鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
  ・蝦夷戸井(えぞとゐ)の鮪(しび)
  ・蝦夷(えぞ)松茸(まつたけ)
  ・陸前高田(りくぜんたかだ)蝦夷石影貝(えぞいしかげがひ)
  ・黑鰒(くろあはび)

(わん)】:
  ・淡路(あはぢ)海鰻(はむ)+松茸(まつたけ)+吸口(すひくち)菊花(きくのはな)

菓子(くわし)】:
  ・野州(しもつけ)白無花果(しろいちじく)
  ・常州友部(ひたちともべ)栗澀皮煮(くりしぶかはに)
  ・吉備(きび)シャイン・マスカット
  ・信州(しなの)甲斐路(かひぢ)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4~F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
掃愁帚(さけ)は"天狗舞山廃(てんぐまひやまはい)"。
嗜好(このみ)に適合(あ)ひ、一合半(いちがふはん、≒正一合)。
此度(こだみ)も尋常(つね)のごとく、山海珍味(うみやまのさち)盡(づ)くし。
就中(わきても)、六百四十匁(≒2.4kg)明石鯛(あかしだひ)は特異(とびきり)。

百八十七匁(≒700g)雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の(むなぎ):
紛(まぎ)れもなく今季一(こんきいち)!
肥後天草(ひごあまくさ)の小鰭新子(こはだのしんこ)は二枚漬(にまいづけ)。
やはり、二枚漬(にまいづけ)~三枚漬(さんまいづけ)が適切(よい)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・山科(やましな)無花果(いちじく)黑芝蔴(くろごま)和(あ)へ
  ・海膽(うに)+秋葵(おくら)+酸桔仔(シークワーサ)、
     眞子鰈潮汁魚凍(まこがれひ、うしほじるにこゞり)
  ・蝦夷地釧路(えぞちくしろ)狹眞魚(さまうを)
  ・酢物(すのもの)、
     奧州(むつ)海鞘(ほや)+能州(のと)岩水雲(いはもづく)
  ・魥(さしみ)
    ・六百四十匁(≒2.4kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)身(み)
    ・六百四十匁(≒2.4kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)鱗(うろこ)
    ・蝦夷地利尻(えぞちりしり)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
     +豆州御殿塲(いづごてんば)眞妻山葵(まづまわさび)
      ※田代惠一(たしろけいゝち)栽培(さいばい)
  ・土州清水(とさしみづ)の赤鯥(あかむつ)煮附(につけ)
  ・百九十匁(≒700g)雲州宍道湖(いづもしんじこ)鰻(むなぎ)、白燒(志らやき)

(すし)】:
  ・二十七貫(≒100kg)陸州大間(むつおほま)の鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
  ・眞子鰈(まこがれひ)
  ・二十七貫(≒100kg)陸州大間(むつおほま)の鮪(しび)精肉(あかみ)~肥肉
  ・六百四十匁(≒2.4kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)
  ・相州松輪(さがみまつわ)の眞鯖(さば)
  ・肥後天草(ひごあまくさ)の小鰭新子(こはだのしんこ)

(わん)】:
  ・武州羽根田(むさしはねだ)の星鳗(はかりめ)+藝州(あき)松茸(まつたけ)

菓子(くわし)】:
  ・吉備(きび)"瀬戸ジャイアンツ"葡萄(ぶだう)
  ・筑紫博多(つくしはかた)”とよみつひめ”無花果(いちじく)
  ・琉球(りうきう)酸桔仔(シークワーサ)
  ・"長野パープル"葡萄(ぶだう)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
塑料袋(ビニルぶくろ)に悠然(ゆるり)と泅(およ)ぐ "手長鰕(てながえび)":
袋(ふくろ)より出(いづ)るや、
己(おの)が運命(さだめ)を覺悟(し)りて歟(か)?
のたうち、脚(て)を伸(の)ばし、師傅(おやかた)が指(ゆび)に頼哩(あらが)ふ。

南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)、南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)!
廚(つけば)には、"宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)"、二百七十匁(≒1kg)。
その三分之一(さんぶんのいち)を、さらに三人(みたり)で再分割(わかちあ)ふ。
i.e.,鰻九分之計(むなぎをこゝのつにわくるはかりごと)。

"鹿ヶ谷蒲柬瓜(しゝがたにかぼちや)"は、
甘長蕃椒(あまながたうがらし)、壺盧(ゆふがほ)とゝもに、烹(に)て餐(くら)ふ。
近會(ちかごろ)の甜(あまみ)の强(つよ)き唐茄(かぼちやうり)に比較(くら)べ、
淡麗(あはくきよらか)なる味(あぢはひ)

今季一(こんきいちばん)、"雲州宍道湖(いづもしんじこ)の(むなぎ)"。
脆皮(もろきかは)、皮下(かはのした)の明膠(ゼラチン)と(あぶら)、
さらには、蕩(とろ)けんばかりの身肉(み)の三層(みかさね)。
風味(あぢかをり)と齒觝觸(はごたへ・したざはり)も三段活用(みかさね)。

これには、辭(ことば)を失(うしな)ふほか術(てだて)なし。
佐渡嶋(さどがしま)(しび)も、
"中膩(ちゆうあぶ)"、"鮮肉漿醤(あかみしやうゆづけ)"、"膩肉(あぶ)"と、
强力(いとつよき)三段火箭(みかさね)。

因(ちな)みに、
"鮪膩肉(あぶ)"は備長炭(しろずみ)以て叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る。
氷見(ひみ)は寒鰤(かんぶり)、野球(やきう)は素振(すぶ)り、
鮪(しび)の膩(あぶ)には"炙(あぶ)り"が奢(まさ)る。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・先附(さきづけ)の類(たぐひ)一
    ・鹿ヶ谷蒲柬瓜(しゝがたにかぼちや)
    ・甘長蕃椒(あまながたうがらし)
    ・壺盧(ゆふがほ)
    ・芝蔴麩(ごまふ)
  ・先附(さきづけ)の類(たぐひ) 二
    ・淡路(あはぢ)海鰻卵巣(はむのこ)
    ・星鳗(あなご)
    ・眞子鰈(まこがれひ)
    ・藕(はちすのね)
    ・實山椒(みざんせう) 
  ・魥(さしみ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)、朝〆(あさじめ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)、縁側(えんがは)
    ・蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
  ・江州(あふみ)琵琶鱒(びはます)、炭火炙(すみびやき)
  ・房州千倉(あはちくら)の黑蚫(くろあはび)、酒蒸(さかむし)
  ・手長鰕(てながえび)
  ・雲州宍道湖(しんじこ)鰻(むなぎ)、百九十匁(≒700g) 、白燒(志らやき)

(すし)】:
  ・縞鰺(しまあぢ)
  ・淡路(あはぢしま)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)
  ・大坂灣(おほざかわん)鯔(ぼら)
  ・豆州式根島(いづしきねじま)劍先魷魚(けんさきいか、=あかいか)
  ・淡路嶋(あはぢしま)胡麻鯖(ごまさば)
  ・佐渡嶋(さどがしま)鮪(しび)、中膩肉(ちゆうあぶ)
  ・佐渡嶋(さどがしま)鮪(しび)、鮮肉(あかみ)豆油漬(しやうゆづけ)
  ・江戸灣(えどわん)下總行德(しもふさぎやうとく)の小鰭(こはだ)
  ・佐渡嶋(さどがしま)鮪(しび)、膩肉(あぶ)
  ・星鳗(はかりめ)

(わん)】:
  ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)、朝〆(あさじめ)

菓子(くわし)】:
  ・シャインマスカット
  ・ピオーネ
  ・芒果(マンゴ)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss)C Sonnar T* 1.5/50 ZM @F2
      旭光學 S-M-C 微距琢磨(Macro Takumar)4/50 @F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
腰痛(こしのいたみ)も多少(いくらか)緩和(やはら)ぎ、
藜杖(あかざのつゑ)にも頼(たよ)らで寺島町(てらじまゝち)に、、。
漬塲(つけば)には、
五十三匁(200g)を超(こ)す、勢州桑名(そのてはくはな)の本蛤(ほんはまぐり)。

魚市塲(うをいちば)に文蛤(はまぐり)多(おほ)しと云へど、
本蛤(ほんはまぐり)は稀有(まれ)。
縱令(たとひ)、本蛤(ほんはまぐり)ありと云へど、
これほどに巨大(SMGRP©ドクシマせんせ、≒おほきなる)ものは稀少(たふとし)。

九十九里(くじふくり)~鹿島灘(かしまなだ)に漁(すなどら)れ、
高名(なだか)き鯗店(すしや)にて用(つか)はるゝは、朝鮮蛤(てうせんはまぐり)。
努々(ゆめゆめ)、兩者(このふたつ)を混同(あやま)つこと勿(なか)れ
當日(このひ)の文蛤(くはなのほんはまぐり)は大(おほ)きさも頂點(いたゞき)

朝〆(あさじめ)、淡路(あはぢ)の星鰈(ほしがれひ)は六百四十匁(≒2.4kg)。
その身(み)の厚(あつ)さ、一寸(いつすん)にも及(およ)ぶ。
五枚(ごまい)に下(お)ろさば、厚(あつ)さを忘(わす)れ、
雪(ゆき)よりもなほ白(しろ)きその(み)に陶然(ことばをうしなふことしばし)。

雲州宍道湖(しんじこ)の(むなぎ):
百九十匁(≒700g)と、そこそこの大(おほ)きさなれど、
良質(よ)き膩(あぶら)に富(と)む。
秋毫(つゆ)無議論(まよふまでもな)く、「今季一(こんきいちばん)」!

必(かならず)しも得手(えて)とせぬ鮪肥肉(しびあぶらみ)も、
日向備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)られ、
臼齒(おくば)どころか、舌先(したさき)に崩潰(もろくもくづれさる)
風韻(かをり)また佳絶(すばらしきもの)。

<魚荒>(あら)は、
骨邊肉(あら)を潮汁(うしほじる)、(み)は(すし)にて餐(くら)ふ。
いづれも、至高(このうへな)き鮮(うまみ)。
夜(よる)の怪人(ひと)」の噂(うはさ)をして辭別(いとまをこふ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・先付(さきづけ)の類(たぐひ)
    ・蒸蚫(むしあはび)
    ・賀茂茄子(かもなす)
    ・雜魚(ざこ)+實山椒(みざんせう)
  ・勢州桑名(そのてはくはな)の炸文蛤(あげはまぐり)、五十三匁(200g)超
  ・差味(さしみ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百四十匁(≒2.4kg)、朝〆(あさじめ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百四十匁(≒2.4kg)、縁側(えんがは)
    ・紫海膽(むらさきうに)
  ・蝦夷地余市(よいち)鮟鱇肝臟(あんかうのきも)
  ・鰖(たかべ)一夜干(ひとよぼし)
  ・潮汁椀(うしほじるわん)
    ・椀種(わんだね):[魚荒](あら)の骨邊肉(あら)
    ・椀褄(わんづま):羽州(では)蓴菜(ぬなは)
    ・吸口(すひくち):青柚(あをゆ)
  ・雲州宍道湖(しんじこ)鰻(むなぎ)、百九十匁(≒700g)

(すし)】:
  ・[魚荒](あら)、二日目(ふつかめ)
  ・境港(さかいみなと)鮪(しび)、十六貫(≒60kg)
  ・鰹(かつを)藁燒(わらやき)
  ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百四十匁(≒2.4kg)、朝〆(あさじめ)
  ・境港(さかいみなと)鮪(しび)、十六貫(≒60kg)
  ・下總行德(しもふさぎやうとく)の小鰭(こはだ)
  ・境港(さかいみなと)鮪(しび)、十六貫(≒60kg)、炙(あぶ)り

菓子(くわし)】:
  ・夕張甜瓜(ゆふばりメロン)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)1.4/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
此度(こだみ)は、氣鋭(いとするど)き食通(たべて)と一緒(とも)に、、。
眼前(めのまへ)に解體(ふわけ)されゆくは、城下鰈(しろしたがれひ)、
i.e.,、豐後(ぶんご)眞子王餘魚(まこがれひ)、四百五十匁(≒1.7kg)に、
肥後天草(ひごあまくさ)(むなぎ)、百八十七匁(≒700g)。

倩(つらつら)この城下王餘魚(しろしたがれひ)を吟味(うかゞ)ふに、
縁側(えんがは)の鮮(うまみ)は格別(ことのほか)。
肝臟(きも)には朝〆(あさじめ)固有(ならでは)の美味(よきあぢ)。
蝦夷地余市(えぞちよいち)鮟鱇肝(あんきも)をも凌駕(しのぐ)ほど。

次(つ)いで、久方(ひさかた)ぶりの"雞卵燒(たまごやき)"に舌鼓(したつゞみ)。
およそ雞卵燒(たまごやき)なるもの、
鮓店(みせ)に依(よ)り、鮓職人(ひと)に應(よ)り、多種多樣(さまざま)。
これぞ、僕(やつかれ)最喜歡(このうへなくこのむ)"煎雞蛋(たまごやき)"!!

"潮汁(うしほじる)"また然(しか)り。
眞子王餘魚(あまてがれひ、=まこがれひ)に、蓴菜(ぬなは)の椀(わん)。
愚按(やつがれおもふに)、
鮓店(すしや)の椀(わん)としては、尾根(をね)のそのまた頂點(いたゞき)

相州葉山(さがみのくにはやま)"障泥烏賊(あふりいか)":
漫(みだり)に黏(ねば)る食感(はごたへ・したざはり)が特徴(しるし)なれど、
實(げ)に、心持(こゝち)良(よ)き齒觝觸(はあたり)
平身低頭(ひたすらうやま)ふべきは、薄(うす)く削(そ)ぐ庖丁技(はうちやうわざ)。

"肥後天草(ひごあまくさ)の(むなぎ)"は今二(いまふた)つ。
やはり、鰻(むなぎ)餐(くら)ふなら龝(あき)が最善(よい)。
"春子(かすご)"・"小鰭(こはだ)"の醋〆(すじめ)は今樣(いまをときめくやりかた)。
瑞瑞(みづみづ)しく、鮮(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る

舎利(すめし)はさらに白醋(しろず)を多(おほ)めに、、。
如何(いか)ほどの混合比(まぜかた)を最適解(いとをかし)とする歟(か)?
今(いま)なほ、試行錯誤中(あれやこれやとこゝろみつゝあるところ)。
當家(うち)は白身(しろみ)が主體(おも)なれば、、」とのよし。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・上總大原(かずさおほはら)蒸蚫(むしあはび)
  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)に花山椒(はなざんせう)
  ・豐後(ぶんご)眞子王餘魚(まこがれひ、しろしたがれひ)、四百五十匁(≒1.7kg)
    ・身(み)
    ・縁側(えんがは)
    ・肝臟(きも)
  ・小川水産(をがは)、蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
  ・蕨(わらび)
  ・鰻(むなぎ)魚凍(にこゞり) ※濱名湖(はまなこ)?
  ・蝦夷地餘市(えぞちよいち)鮟鱇肝(あんきも)
  ・雞蛋(たまご)
  ・潮汁(うしほじる)の椀(わん)、
    ・椀種(わんだね):播州(はりま)眞子鰈(あまてがれひ)骨邊肉(あら)
    ・椀褄(わんづま):羽州(では)蓴菜(ぬなは)
    ・吸口(すひくち):青柚(あをゆ)
  ・肥後天草(ひごあまくさ)鰻(むなぎ)、百八十七匁(≒700g)

(すし)】:
  ・相州葉山(さがみはやま)障泥烏賊(あふりいか)
  ・薩州出水(さつまいづみ)春子(かすご)
  ・紀州那智勝浦(なちかつうら)鮪(しび)
  ・蝦夷地(えぞち)鰊(にしん)
  ・薩州出水(さつまいづみ)眞鰺(まあぢ)
  ・豐後(ぶんご)城下王餘魚(しろしたがれひ)、=眞子鰈(まこがれひ))
  ・能州(のと)鳥貝(とりがひ)
  ・紀州那智勝浦(なちかつうら)鮪(しび)
  ・小鰭(こはだ)
  ・紀州那智勝浦(なちかつうら)鮪(しび)

菓子(くわし)】:
  ・阿州(あは)"珊瑚樹(さんごじゆ)"蕃茄(とまと)
  ・羽州村山(ではむらやま)"佐藤錦(さたうにしき)"櫻桃(さくらんぼ)
  ・米利堅(めりけん)櫻桃(さくらんぼ)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 S-M-C 微距琢磨(Macro Takumar)4/50 @F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
葛飾郡(かつしかのこほり)松伏(まつぶし)『三笠鮨』:
最上質(とびきり)の魚介(うみのさち)を用(つか)ひ、
確乎(たしか)なる技倆(うで)以(も)て鯗(すし)を提供(いだす)
しかし、掉尾(いやはて)の土瓶蒸(どびんむし)は「旨過(うます)ぎ」。

これ、必(かな)ずしも賞賛(ほめことば)に非(あら)ず
子曰(あのかたのたまは)く、「過猶不及 (すぎたるはなほおよばざるがごとし)」
車鰕(くるまえび)、文蛤(はまぐり)、櫻鰕(さくらえび)、香茹(しいたけ)。
これほどまでに濃厚(あぢこ)きものが重(かさ)なると首捻(くびゝぬ)るほかなし。

心(こゝろ)の片隅(かたすみ)に蟠(わだかまり)を抱(かゝ)へ、
當家(こちら)『うを德』に、、。
劈頭(いやさき)の"(わん)"から、
"石蓴醋物(あをさすのもの)"、"(ふき)"、 "花山椒鍋(はなざんせうなべ)"、、。

漫(みだり)に"鮮(うまみ)"を足(た)すことなく
必要最小限(ぎりぎり)の調味(あぢつけ)
それでも猶(なほ)、秋毫(つゆ)無所不足(たらざるところな)きは、
偏(ひとへ)に、小宮健一親方(こみやけんいちおやかた)が技倆(うで)

對價(しはらひ)は『三笠鮨』が幾分高(いくぶんたか)く、
居心地(ゐごゝち)と綜合的滿足度(みちたりかた)を競(あらそ)ふなら、
やはり、『うを德』に軍配(ぐんばい)。
この先(さき)、未來永劫(とこしへ)に續(つゞ)かんことを祈念(いの)る

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
 ・"眞鯛(まだひ)、卵巣(まこ)+精巣(しらこ)+花山椒(はなざんせう)"
 ・越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)の螢烏賊(ほたるいか)
 ・江州琵琶湖(あふみびはこ)の稚鮎(ちあゆ)天麩羅(てんぷら)
 ・石蓴(あをさ)醋物(すのもの)
 ・蝦夷地釧路(えぞちくしろ)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
 ・播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)、一貫目弱(≒3.7kg)、魥(さしみ)
 ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の鰹(かつを)、藁燒(わらやき)
 ・阿州吉野川(あはよしのがは)の鰻(むなぎ)、百七匁(≒400g)、白燒(しらやき)
 ・花山椒鍋(はなざんせうなべ)
    ・和州(やまと)の花山椒(はなざんせう)@十萬圓(きろじふまんゑん)
    ・城州(やましろ)物集女笋(もづめだけ)
    ・越前勝山(ゑちぜんかつやま)の赤鯥(あかむつ、=のどぐろ)

(すし)】:
 ・豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)
 ・房州勝浦(あはかつうら)の鮪(しび)、四十三貫四百匁(≒163kg)
 ・陸州大間(むつおほま)の櫻鱒(さくらます) 、一貫百四十匁(≒4.2kg)
 ・春子(かすご)
 ・房州勝浦(あはかつうら)の鮪(しび)、四十三貫四百匁(≒163kg)
 ・三州(みかは)の鳥貝(とりがひ)
 ・明石(あかし)の眞鯛(まだひ)
 ・小鰭(こはだ)

菓子(くわし)】:
 ・羽州村山(ではむらやま)の櫻桃(さくらんぼ)、"佐藤錦(さたうにしき)"
 ・三州蒲郡(みかはがまごほり)の蜜柑(みかん)
 ・日向(ひむか)の芒果(まんご)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F2.8
時季(いまごろ)固有(ならでは)、
"四万十川(しまんとがは)の「ごり有馬煮(ありまに)"、
"城下鰈(しろしたがれひ)"、
i.e.,(すなはち、)豐後(ぶんご)日出城下(ひのでじやうした)眞子鰈(まこがれひ)。

"越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)螢烏賊(ほたるいか)"に"蕗未醤(ふきみそ)"、
"山州(やましろ)の(たけのこ)"は"飯蒸(いひむし)"と"燒物(やきもの)"。
しかし、この日(ひ)の白眉(とびぬけてすぐれたるもの)は、
豐後佐賀關(ぶんごさがのせき)の雞魚(いさき)。

丸々(まる)と肥滿(こえふと)り力士(りきし)のごとき太鼓腹(たいこばら)
膩(あぶら)に冨(と)み、鮮(うまみ)も顯著(あらは)
これほどの雞魚(いさき)なら、
"鹽燒(しほやき)"に好適(よし)、"煮附(につけ)"でもまた可以(よし)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
 ・土州四万十川(とさしまんとがは)の"ごり" 有馬煮(ありまに)
 ・甘鯛(あまだひ)、鰒精巣(ふぐしらこ)、(たけのこ)の飯蒸(いひむし)
 ・蝦夷地箱館(えぞちはこだて)の馬糞海膽(ばうんうに)
 ・豐後(ぶんご)眞子鰈(まこがれひ、="城下鰈")、530匁(≒2kg)、魥(さしみ)
 ・越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)螢烏賊(ほたるいか)+蕗未醤(ふきみそ)
 ・豐後(ぶんご)眞子鰈(まこがれひ、="城下鰈")骨邊肉(あら)、潮汁(うしほじる)
 ・山州(やましろ)の(たけのこ)
 ・豐後佐賀關(ぶんごさがのせき)の雞魚(いさき)、差味(さしみ)

(すし)】:
 ・失念(...)
 ・壹岐(いき)の鮪肥肉(しびあぶらみ)
 ・小鰭(こはだ)
 ・甲烏賊(かふいか、=墨烏賊) 
 ・豐後(ぶんご)眞子鰈(まこがれひ、="城下鰈")
 ・三州三河灣(さんしうみかはわん)の鳥貝(とりがひ)
 ・蝦夷地羽幌(えぞちはぼろ)富山鰕(とやまえび、=ボタンエビ) 
 ・豐後佐賀關(ぶんごさがのせき)の雞魚(いさき)
 ・雞蛋燒(たまごやき)

菓子(くわし)】:
 ・羽州山形(ではやまがた)の佐藤錦(さたうにしき)
 ・遠州(とほとほみ)の獼猴桃(キウイフルーツ)
 ・檸檬(レモン)
 ・肥前唐津(ひぜんのくにからつ)の"麗紅橘(れいこうオレンジ)"
 ・ウズベキスタン柘榴(ざくろ)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
謹(つゝし)みて御零(おこぼ)れ頂戴(ちやうだい)仕(つかまつ)る
小人(それがし)に虎狼之意(とらおほかめのこゝろ)有之(これあり)。
否(いな)!
"鬣狗(たてがみいぬ)"、"禿鷲(はげわし)"、"毛賊(こそどろ)"の類(たぐひ)。

この日(ひ)は稀有(まれにみ)るほどの山海八珍(うみやまのさち)盡(づ)くし。
(いけ)が、"諸子(もろこ)"、"花咲蟹(はなさきがに)"、
朝〆魚(あさじめうを)として、"明石鯛(あかしだひ)"、"眼拔(めぬけ)"、
さらに、"虎鰒精巢(とらふぐしらこ)"に、"長岡京笋(ながをかのたけのこ)"、、。

獅子(しゝ)の眼(め)掠(かす)めての竊喰(ぬすみぐひ)
實(げ)に、"密夫(まをとこ)"の心境(こゝち)ぞしたりける。
"活諸子(いけのもろこ)"は初(はじめて)、
茹上(うであげ)"花咲蟹(はなさきがに)"の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり) 。

やはり、この日(ひ)の白眉(とりわけすばらしきしな)こそ、"目拔(めぬけ)":
巷間(ちまた)では「超高級魚(いとたかきねのうを)」と云ふ。
目拔類(めぬけのたぐひ)夥(あまた)あれど、
就中(わきても)、最貴(すぐれてたふと)きが"赤魚鯛(あかうをだひ)"とも。

小人(それがし)、幼(いとけな)き砌(みぎり)、
赤貧如洗(あらふがごときまづしさ)なれば、
"眞鯛(たひ)"も"(ふぐ)"も口(くち)にせし前例(ためし)なく、
"狹眞魚(さまうを)"すら膓(はらわた)なき魚乾(ほしうを)。

偶(たま)の"差味(しびさしみ)"を除外(のぞ)くなら、
"梶木(かぢき)"、"眞鱈(まだら)"、
そして何(なに)より前述(くだん)の"赤魚鯛(あかうをだひ)"。
すなはち、六十年前(むそとせまへ)なら「下魚中(げうをのなか)の下魚(げうを)」。

それが、瓩(キロ)一萬三千圓(いちまんさんぜんゑん)と云ふから愕(おどろ)き。
一貫二百五十匁(≒4.7kg)の大(おほ)きさとのことなれば、
すなはち、沽(あたひ)、大畧(およそ)、六萬一千圓(ろくまんいつせんゑん)ぼど。
價格(ね)はともかく、その味(あぢはひ)は絶品・至高(このうへなきもの)

陳腐(ありきたり)の譬喩(たとへ)ながら、
"石狗公(きちじ)"をその儘(まゝ)巨大化(おほきく)したるがごとき形(なり)。
幼少時(いとけなきころ)の煮附(につけ)を想像(おもひゑがき)しに、
"長岡笋(ながをかたけのこ)"とゝもに最上(いとよ)き椀(わん)に、、。

堪(たま)りかね、
絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。
周圍(まはり)からも、一齊(ひとし)く、絶賛(はげしくほめたゝ)ふる聲(こゑ)
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)!

今朝(けさ)〆たばかりの明石眞鯛(あかしだひ)は、
未熟成(いまだうれず)と云へど、眞鯛(まだひ)固有(ならでは)の芳香(かをり)
臼齒(おくば)に噛締(かみし)むるや
鮮(うまみ)浮騰(ほとばし)りて、四角八方(をちこち)に旋(かけめぐ)る

心做(こゝろな)し歟(か)?
舎利(すめし)も、不尋常(つねなら)ず嗜好(このみ)に適合(あふ)
粒(つぶ)が立(た)ち、しかも、舌(した)に滑(なめ)らか
膨滿(はらふく)るゝ豫兆(きざし)もなく辭別(いとまごひ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
 ・琵琶湖(びはこ)の冰魚(ひうを)
 ・淀蘿蔔(よどすゞしろ)
 ・蝦夷噴火灣(えぞふんくわゝん)馬糞海膽(えぞばふんうに)
   +朝〆(あさじめ)明石(あかし)眞鯛(まだひ)、七百五十匁(≒2.8kg)
 ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の小鮪(めじ)藁燒(わらやき)+菜花(なばな)
 ・琵琶湖(びはこ)の活諸子(いけもろこ)
 ・擇捉嶋(えとろふじま)、活花咲蟹(いけはなさきがに)
 ・【椀(わん)】、
   朝〆(あさじめ)房州勝浦(あはかつうら)目拔(めぬけ)、
   一貫二百五十匁(≒4.7kg)
   +長岡京(ながをか)の笋(たけのこ)
 ・蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぽうし)の眞蠔(かき)
 ・虎鰒(とらふぐ)精巣(しらこ)

(すし)】;
 ・日向油津(ひむかあぶらつ)の中鮪(ちゆうばう)、十六貫(≒60kg)、肥肉(あぶ)
 ・玉珧(たひらぎ)
 ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の小鮪(めじ)藁燒(わらやき)
 ・朝〆(あさじめ)明石(あかし)眞鯛(まだひ)、七百五十匁(≒2.8kg)
 ・朝〆(あさじめ)房州勝浦(あはかつうら)目拔(めぬけ)、一貫二百五十匁
 ・日向油津(ひむらあぶらつ)の中鮪(ちゆうばう)、中肥肉(ちゆうあぶ)
 ・朝〆(あさじめ)明石(あかし)眞鯛(まだひ)、七百五十匁(≒2.8kg)
 ・日向油津(ひむらあぶらつ)の中鮪(ちゆうばう)、紅肉(あかみ)
 ・星鳗(はかりめ)

菓子(くわし)】:
 ・さくらもゝ草莓(いちご)+甘柑(かんかん)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
毎年恆例(まいとしならひ)の新年會(あらたなるとしをことほぐうたげ)。
其處(そこ)には、病(やまひ)癒(い)えたる友(とも)の顏(かほ)も、、。
漬塲(つけば)に鎭坐(おは)しますは、
鱈塲蟹(たらばがに)、鯨鯢畝須(くぢらのうねす)に明石眞鯛(あかしだひ)。

劈頭(いやさき)に"胡桃入干柹(くるみいりほしがき)"と"唐墨(からすみ)"。
雙方(ともに)見覺(みおぼ)えあり!
次(つ)いで、湯氣(ゆげ)の立(た)つ加須底羅雞蛋(かすていらたまご)。
(くれなゐ)鮮烈(あざかや)なる車蝦(くるまえび)が顯著(めだつ)。

"鰤藁燒(ぶりのわらやき)"には"冬茹甘露煮(どんこかんろに)"。
(ぶり)は米藁(こめわら)にて炙(あぶ)り、大蒜(おほひる)を利(き)かす。
當家(こちら)固有(ならでは)の味(あぢはひ)
冬茹(どんこ)は半點(いさゝか)甜(あま)め歟(か)?

扨(さて)、"鯨鯢畝須(くぢらうねす)の(わん)":
底(そこ)に蝦薯蕷(えびいも)が沈(しづ)み、山椒木芽(きのめ)が浮(う)く。
風味佳絶(たぐひまれなるすばらしきあぢかをり)なれど、
鯨鯢肉(くぢらにく)、臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ひて止(や)むことなし

備長炭(しろすみ)に炙(あぶ)りたる"鱈塲蟹(たらばがに)"、
さらには、"紅椒ムウス(ぱぷりかむうす)"と、
豫想(おもひ)に寸毫(つゆ)と違(たがは)ぬ味(あぢ)・風韻(かをり)。
卍(まんじ)、善哉(よき)、善哉(よき)!

倩(つらつら)舎利(すめし)を窺(うかゞ)ふに、
以前(まへ)に比較(くら)べて顏色(いろ)淡(あは)し
横井(よこゐ)"與兵衞(よへゑ)"を減量(へら)し、
中埜(なかの)"白菊(しらぎく)"を増量(ふや)したとの説明(はなし)。

掉尾(いやはて)に、
今季初(このふゆはじめて)の"さくらもゝ草莓(いちご)":
阿州(あは)の誇(ほこ)る草莓(いちご)の皇帝(すめらみこと)
その名(な)に相違(たがは)で、(さくら)と(もゝ)の芳香(かをり)を有(も)つ。

宴(うたげ)は、掃愁帚(さけ)を除(のぞ)き如下(つぎのごとし)。

=======================================
(さかな)】:
 ・胡桃入干柹(くるみいりほしがき)+唐墨(からすみ)
 ・蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)+明石(あかし)眞鯛(まだひ)八百匁(≒3kg)
 ・藁燒鰤(わらやきぶり)+冬茹(どんこ)
 ・鱈塲蟹(たらばがに)
 ・紅椒(ぱぷりか)のムウス

(すし)】;
 ・鮪(しび)、白川(しろあまだひ)、眞鯖(さば)、鮪(しび)、皮剥(かはゝぎ)、
 ・小鰭(こはだ)、墨烏賊(かふいか)、鰒(あはび)、鮪(しび)

菓子(くわし)】:
 ・さくらもゝ草莓(いちご)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
新年(あらたしきとし)を壽(ことほ)ぐ三段重(みかさねのぬりもの)。
對價(あたひ)、三萬二千四百圓也(さんまんにせんよんひやくゑんなり)。
今年(ことし)はこれを一人(ひとり)で啖(くら)ふ。
大雜把(あほまか)なる内容(うちわけ)は、如斯(かくのごとし)。

當家(こちら)の御節料理(おせちれうり)は、
七年連續(なゝとせつゞけて)、七度目(なゝたびめ)で最後(いやはて)。
これで永遠(とは)の離別(わかれ)
扨(さて)、來年(つぎのとし)は、如何(いか)にせん?

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
      精機光學 佳能(Canon)nFD2.8/300 L @F4 ※元旦日出
      富山玩具 Borg 71FL 8/560 (5.6/400 + ×1.4Extender)  @F8 ※元旦日出
晝(ひる)九(こゝの)つ。
引戸(ひきど)を開(ひら)くと、(むしろ)には小人(それがし)一人(ひとり)
三年前(みとせまへ)ならいざ知(し)らず、
近會(ちかごろ)では稀有(めづらし)きこと。

今季一(こんきいち)」、
と號(い)ふ"松茸(まつたけ)"は、陸州(むつ)岩手(いはて)の産(もの)。
その優雅(みやび)この上(うへ)なき風韻(かをり)に霎時(しばし)陶醉(ゑふ)
これが夷僚(ゑびす)に理解(わから)ぬとは疑問(くびかし)ぐるばかり

播州(はりま)明石(あかし)の"眞鯛(まだひ)"が七百七十匁(≒2.9kg)。
中骨(なかぼね)には明石鯛(あかしだひ)固有(ならでは)の(こぶ)。
朝締(あさじ)めゆゑ、(うまみ)は未熟(これから)ながら、
齒觝觸(はあたり)拔群(むれよりぬきんいでたり)。

雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の" (むなぎ)"百六十匁(≒600g)。
時季(とき)ならず、半點(いさゝか)脂(あぶら)稀薄(うすめ)
今(いま)や、「鰻(むなぎ)の皇(すめらみこと)」と賞賛(もてはや)さるゝも、
かくのごとき淡白(あぢあは)き(もの)も、、。

愈々(いよいよ)盛(さか)りに向成(なりな)んとするは、
蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぱうし)の"眞蠔(まがき)"。
やはり「眞蠔(まがき)の頂點(いたゞき)
" (ぶり)"も蝦夷地(えぞち)より越後(ゑちご)へと遷移(うつる)。

"娃娃菜(わゝさい)"と號(よびな)すは、
最小(いとちいさ)なる白菜(はくさい)。
房總(ばうさう)の花生(なんきんまめ)"おほまさり"も美味(よきあぢ)。
この日(ひ)も平生(つね)のごとく尋常(つね)のごとし

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
 ・先附(さきづけ)
   ・娃娃菜(わゝさい)
   ・房總(ばうさう)花生(らつくわせい)"おほまさり" 
   ・蝦夷(えぞ)サロマ湖(こ)の眞蠔(まがき)
   ・蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぱうし)の眞蠔(まがき)
 ・但州(たじま)香住(かすみ)の雌蟹(せこがに)
   +山城(やましろ)蝦薯蕷(えびいも)

 ・椀(わん)
   ・陸州(むつ)松茸(まつたけ)
   ・蝦夷(えぞ)雲子(くもこ)
   ・金時胡蘿蔔(きんときにんじん)
   ・蕪(かぶら)
 ・向附(むかふづけ)
   ・播州(はりま)明石(あかし)の眞鯛(まだひ)
   ・明石鯛(あかしだひ)の肝臟(きも)
   ・蝦夷(えぞ)濱中(はまなか)蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
 ・雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)

(すし)】:
 ・奧州(むつ)大間(おほま)の鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
 ・播州(はりま)明石(あかし)の眞鯛(まだひ)
 ・奧州(むつ)大間(おほま)の鮪(しび)
 ・肥後(ひご)天草(あまくさ)の小鰭(こはだ)
 ・越後(ゑちご)の鰤(ぶり)藁燒(わらやき)
 ・對馬(つしま)の星鳗(はかりめ)

菓子(くわし)】:
 ・小蜜(こみつ)
 ・蕃茄(あかなす)
 ・柹(かき)
 ・グレープフルーツ
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4

染垂阿爺(しみたれおやぢ)卍(まんじ)、
唐墨(からすみ)」の報(しらせ)に觸(ふ)れ、俄頃(にはか)に色(いろ)めきたつ。
慌(あは)てふためき、鈔(ぜに)を工面(くめん)、
鼻息(はないき)荒(あら)く玉の井(たまのゐ)へと驀地(まつしぐら)。

その容(さま)、
將棋(しやうぎ)の香車(やり)かと疑(うたが)はれ、
西班牙(イスパニア)の猛牛(たけきうし)、
英國(エゲレス)筆學所(てならひ)の吶喊小僧(とつかんこぞう)に髣髴(さもにたり)。

劈頭(いやさき)に、
加賀藕(かゞはちすのね)と鮟鱇肝臟(あんきも)を摘(つ)まみ一安堵(ひとおちゐ)。
次(つ)いで早(はや)くも"唐墨(からすみ)"の登場(おでまし)。
素材(そざい)そのものは『やす秀』が上(うへ)歟(か)?

芯(しん)嫩(やはらか)にして、未完成(いまだならず)。
當家(こちら)の烏魚子(からすみ)は、その變化(かはりやう)を愉(たの)しむもの
童女(わらんべ)→少女(おいなご)→(をんな)→(うば)、、。
この唐墨(からすみ)、さしづめ、「少女(おいなご)」に喩(たと)ふべき歟(か)?

この日(ひ)の白眉(はくび)は、
奧州(むつ)小川原湖(おがはらこ)(むなぎ)、四百匁(≒1.5kg)。
「今季(こんき)二番目(にばんめ)」
と、主人(あるじ)自慢(むねをは)る巨大鰻(いとおほきなるむなぎ)。

江戸生艷氣樺燒(えどうまれうはきのかばやき)、
陸州生鰻白燒(むつうまれむなぎのしらやき)。
今(いま)まさに時季(とき)を得(え)て炙(や)くのは輙(たやす)く
"はしり"なら四十分(よんじつぷん)のところ、纔(わづ)かに二十分(にじつぷん)

法國渡來(ふらんすわたり)の黒無花果(くろいちじく)、
"ヴィオレ・ソリエ(Viollette de sollies)":
これまた今季初(こんきはじめて)。
未熟(いまだうれず)、甜(あまみ)・芳香(かをり)ともに不足(いまひとつ)

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

=======================================
(さかな)】:
  ・雲州(いづも)鮟鱇肝臟(あんきも)+加賀藕(かゞはちすのね)
  ・唐墨(からすみ)
  ・鯳卵巣(すけこ)
  ・蝦夷地(えぞち)鮃(ひらめ)五百三十匁(≒2kg)+馬糞海膽(ばふんうに)
  ・阿波(あは)蝦薯蕷(えびいも)+奧州(むつ)松茸(まつたけ)
  ・陸州(むつ)小川原湖(おがはらこ)鰻(むなぎ)、四百匁(≒1.5kg)
  ・蝦夷地(えぞち)鮃(ひらめ)潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・琉球(りうきう)宮古島(みやこじま)鰆(さはら)
  ・五島列島(ごたうれつたふ)垢穢(くゑ)
  ・蝦夷地根室(ねむろ)眞鰯(まいはし)
  ・蝦夷地(えぞち)鮃(ひらめ)
  ・蝦夷地標津(しべつ)鮏(さけ)卵巣(はらこ)

菓子(くわし)】:
  ・無花果(いちじく)、"ヴィオレ・ソリエ"
  ・葡萄(ぶだう)、"シャイン・マスカット"
  ・刀根柹(とねがき)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
此度(こだみ)特選素材(ひとめをうばふもの)は、
紀州八幡濱(やはたはま)白尼鯛(しろあまだひ)九百六十匁(≒3.6kg)、
琵琶湖(びはこ)本諸魚(もろこ)、奧州(では)松茸(まつたけ)、
雲州宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)、百十匁(≒400g)。

白尼鯛(しろあまだひ):
魚市塲(うをいちば)では"白川(しらかは)"と喚做(よびな)すが通例(つね)。
(さしみ)に好適(よし)、(わん)にまた佳良(よし)。
そのあまりの美味(よきあぢ)に、自(おの)づと頬(ほゝ)も緩(ゆる)む

"賀茂茄子(かもなす)の揚滲(あげびた)し":
尋常(つね)のことながら、
味覺(した)は怡(よろこ)び、胃腑(い)は驅(か)け巡(めぐ)る。
吾輩(われ)夢心持(ゆめごゝち)で啖之(これをく)ふ。

鰻(むなぎ)は、
宍道湖(しんじこ)に八郎潟(はちらうがた)。
各々(おのおの)、白炙(しらやき)、蒲炙(かばやき)となす。
時季(とき)を得(え)て、鮮(うまみ)頂點(いたゞき)を極(きは)めんとす

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

=======================================
【殽(さかな)】:
  ・水菜(みづな)、菊花(かきのもと)、松茸(まつたけ)、花生(なんきんまめ)
  ・蝦夷根室(ねむろ)の秋刀魚(さんま)
    +紀州(きしう)中山栗(なかやまぐり)特選(よりすぐり)
  ・蝦夷地利尻島(りしり)の紫海膽(むらさきうに)
    +紀州八幡濱(やはたはま)の白川(しらかは、=しろあまだひ)魥(さしみ)
  ・賀茂茄子(かもなす)揚滲(あげびた)し
  ・めじ藁燒(わらやき)
  ・白川(しらかは、=しろあまだひ)鱗煎餠(うろこせん遍゛以)
  ・白川(しらかは)と松茸(まつたけ)、蝦芋(えびいも)の椀(わん)
  ・琵琶湖(びはこ)本諸魚(ほんもろこ)
    +雲州宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)白燒(しらやき)
  ・羽州八郎潟(はちらうがた)の鰻(むなぎ)蒲燒(かばやき)
    +蝦夷地標津(しべつ)の鮏腹子(さけはらこ)

【鮓(すし)】:
  ・星鳗(あなご)
  ・陸州大間(おほま)の鮪(しび)
  ・墨烏賊(すみいか、=かふいか)新子(しんこ)
  ・鰤(ぶり)藁燒(わらやき)
  ・奧州大間(おほま)の鮪(しび)

【菓子(くわし)】:
  ・富有柿(ふいうがき)、洋梨(やうなし)、ピオーネ
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F4

此度(こだみ)特選素材(ひとめをうばふもの)は、
淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)六百九十匁(≒2.6kg)、
紀州(きいのくに)活蝦蛄(いけしやこ)茹上(ゆであ)げ、
雲州(いづも)神西湖(じんざいこ)の(むなぎ)百三十匁(≒500g)。

劈頭(いやさき)の小皿(こざら):
松茸(まつたけ)、丹波黒(たんばぐろ)(えだまめ)、
花生(なんきんまめ)、水菜(みづな)を溏油(だし)に烹(に)たるもの。
うむ、これこれ、これッ!」、と膝(ひざ)を敲(う)つ。

「師傅(おやかた)、やはり、東都(あづま)に稀有(まれ)なる名匠(たくみ)!」
鹽(しほ)を抑制(おさ)へ
鰹(かつを)の馨(かをり)、昆布(こんぶ)の旨味(うまみ)を控(ひか)へ
なほ、不足(たらざるところ)皆無(なし)

松茸(まつたけ)完一本(まるいつぽん)に麪麭粉(ぱんのこな)塗(まぶ)し
炸之(これをあぶらにあ)ぐるがごときは、
徒(いたづら)に門牙(まへば)に挾(はさ)まり
臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふばかりの惡趣味(いまいまし)き烹調法(やりかた)。

蝦蛄(いけしやこ)の茹上(ゆであげ):
溜池(ためいけ)『壽々』など、
活(い)ける蝦蛄(しやくなげ)、若(わか)き小僧(みならひ)を走(はし)ら」せ、
茹(う)でゝ、これを鮓(すし)と爲(な)す肆(みせ)も在(あ)るには存在(あり)

當家(こちら)の小宮親方(こみやおやかた)、
能(よ)くこの技法(わざ)を自家藥籠中(みにつけ、わがものとなせ)り
この日(ひ)の茹上(ゆであげ)は、
瞬間(またゝくうち)に沸騰水(にえたぎれるゆ)に潛(くゞ)らすもの。

これを迅速(すばや)く冷水(ひやみづ)に取(と)り
冷(さ)ますことあらで、その儘(まゝ)齧附(かじりつ)く
その容(さま)、
(ひぐま)の遡上鮏(かはさかのぼるさけ)を貪(むさぼ)り啖(くら)ふがごとし。

眞美味也(いとうまし、マ・ジ・ヤ・バ・ク・ネ・ッ)!
芯(しん)は半生(はんなま)にして、その肉(み)なほ活(い)くるがごとし
"漬込(つけこみ)"は勿論(いふまでもなく)、
尋常(なみ)の"茹上(ゆであげ)"をも凌駕(はるかにしの)ぐ。

この塲(ば)での即興(おもひつき)」と、恥(は)ぢ、謙遜(へりくだ)る。
俗(よ)に言ふ「定番(おはこ)」を重視(おもん)じつゝ、
時折(ときをり)、暴(にはか)に閃(ひらめ)き、創作(あらたなるものあみだす)
師傅(おやかた)、徒者(たゞもの)に非(あら)ず!

"根室(ねむろ)の秋刀魚(さんま)"。
"指身(さしみ)"と、"肝臟附(きもつき)秋刀魚飯(さんまめし)"で堪能(いたゞく)。
"つくり身(み)"は、三枚(さんまい)に下(お)ろし、
骨(ほね)を去(さ)り、肉(み)に鹿子庖丁(かのばうちやう)入(い)れたるのみ。

生薑醤油(はじかみじやうゆ)を滲(つ)け、口中(くちのなか)に抛込(はうりこ)むや、
膩(あぶら)混(ま)じりの旨味(うまみ)炸裂(はじけちる)
その容(さま)、鳳仙花(ほうせんくわ)に接觸(ふ)るゝや否(いな)や、
その種子(たね)の四角八方(あちこち)に飛散(とびち)るに似(に)たり。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

=======================================
(さかな)】:
  ・奧州(むつ)松茸(まつたけ)、丹波黒菽(たんばくろえだまめ)、
   花生(なんきんまめ)、水菜(みづな)
  ・鰯(いはし)星鳗肝(はかりめきも)梅煮(むめに)
  ・鰒(あはび)、衣被(きぬかつぎ)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)六百九十匁(≒2.6kg)
  ・蝦夷地(えぞち)箱館(はこだて)蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
  ・蝦夷地(えぞち)仙鳳趾(せんぽうし)蠔(かき)、鳴門金時(なるときんとき)
  ・紀州(きいのくに)蝦蛄(しやこ)
  ・奧州(むつ)松茸(まつたけ)に星鳗(はかりめ) 椀
  ・蝦夷地(えぞち)根室(ねむろ)秋刀魚(さんま)指身(さしみ)
  ・雲州(いづも)神西湖(じんざいこ)鰻(むなぎ)百三十匁(≒500g)
  ・蝦夷地(えぞち)根室(ねむろ)秋刀魚(さんま)飯(めし)、肝附(きもつき)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・大間(おほま)鮪(しび)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)
  ・雉子羽太(きぢはた)
  ・淡路(あはぢ)眞鯖(さば)
  ・星鳗(はかりめ)

菓子(くわし)】:
  ・葡萄(ぶだう)四色(よいろ)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 賓得(Pentax)S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.4


"海鞘(ほや)"に惡臭(あしきにほひ)なきことに駭(おどろ)く。
小人(それがし)、生來(うまれてよりこのかた)海鞘(ほや)は得手(えて)とせず。
その縁由(ことのよし)如何(いかに)とならば、
海鞘(ほや)固有(ならでは)の強(つよ)き臭氣(くさみ)にあり。

惡臭(あしきかをり)なき"海鞘(ほや)"は、
纔(わづ)かに、津輕(つがる)『未來』なる家(ところ)で口(くち)にせしのみ。
この日(ひ)の"海鞘(ほや)"はそれに匹敵(ならぶ)。
師傅(おやかた)曰(いへら)く「鮮度(あたらしさ)の相違(たがひ)

"琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)魚凍(ゼリよせ)"の、
尋常(つね)とは異(こと)なる烹調法(たつき)を訝(いぶか)る。
小宮親方(こみやおやかた)應答(いらへ)て曰(いは)く、
因循守舊(マニエリスム)を打破(うちやぶ)らんがため

"蝦夷昆布森(えぞこんぶもり)の蠔(かき)"にも愕(おどろ)く。
これが眞夏(まなつ)の眞蠔(まがき)とは、、、
と、絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。
"蝦夷根室(えぞねむろ)の新秋刀魚(しんさんま)"もまた同樣(しかり)。

百十匁(≒400g)と小振(こぶ)りの"(むなぎ)"は大坂灣(おほざかわん)。
この大(おほ)きさにして、この脂肪(あぶら)。
その美味(あぢ)、口(くち)にせずとも、一目瞭然(ひとめであきらか)
惜(を)しむらくは、肉(み)が薄(うす)く、脆皮(もろきかは)ならざること。

"鮏卵(さけのはらこ)"は(なま)。
その塲(ば)で煮切(にきり)に潛(くゞ)らせ、即坐(すぐさま)鮓(すし)となす
これを臼齒(おくば)に噛(か)みしむるや、
旨味(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

=======================================
(さかな)】:
  ・鱸(すゞき)に毛豆(えだまめ)、意太利蕃茄(イタリあかなす)味(あぢ)
  ・江州琵琶湖(あうみびはこ)稚鮎(ちあゆ)魚凍(ゼリよせ)
  ・蝦夷昆布森(えぞこんぶもり)の蠔(かき)
  ・陸奥(むつ)の海鞘(ほや)に生榨菜(なまさくさい)
  ・佐渡島(さどがしま)<魚荒>(あら)+
   蝦夷積丹(えぞしやこたん)紫海膽(むらさきうに)
  ・上総大原(かずさおほはら)黒蚫(くろあはび)+
   播州明石(はりまあかし)章魚(たこ)櫻煮(さくらに)
  ・蝦夷根室(えぞねむろ)の秋刀魚(さんま)
  ・陸州氣仙沼(むつけせんぬま)の鰹(かつを)藁燒(わらやき)
  ・<魚荒>(あら)の骨邊肉(あら)潮汁(うしほじる)
  ・大坂灣(おほざかわん)の鰻(むなぎ)、百十匁(≒400g)

(すし)】:
  ・大間(おほま)の鮪(しび)
  ・佐渡島(さどがしま)<魚荒>(あら)
  ・相州小柴(さがみこしば)の新子(しんこ)
  ・鮏(さけ)肚子(はらこ)

菓子(くわし)】:
  ・加州(かゞ)”ルビーロマン”葡萄(ぶだう)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
この日(ひ)の眼玉(めだま)は、
"淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)"、五百八十六匁(≒2.2kg)。
"(むなぎ)"は霞ヶ浦(かすみがうら)、二百九十三匁(≒1.1kg)。
前囘(まへ)の"兒島灣(こぢまわん)"が半點(いさゝか)上(うへ)歟(か)?

此度(こだみ)うち點頭(うなづ)きしは、"小蕪菁(こかぶら)"への火候(ひいれ)。
そもそも、蕪菁(かぶら)なるもの、
蘿蔔(すゞしろ)とは對照的(ことな)り、火(ひ)の通(とほ)り易(やす)きもの
懐石(くわいせき)・割烹(かつぱう)の蕪菁(かぶら)は過柔(やはらかすぎ)。

愚按(やつがれおもふに)、
和食(わしよく)なら糠漬(ぬかづ)け、
洋食(やうしよく)なら煸炒(ソテ)が吉(よし)。
烹之(これをに)るは蕪菁(かぶら)の個性(もちあぢ)を毀損(そこな)ふばかり。

これに膝(ひざ)を叩(たゝ)き、その情由(わけ)を薀(たづ)ぬれば、
「かゝる火候(ひいれ)を着想(ひらめ)きし契機(きつかけ)、
修業先(わざをならひおぼえしさき)や他家(よそ)に非(あら)ず。」
「寧(むし)ろ、その濫觴(みなもと)、法國菜(ふれんすれうり)にあり。」

實(げ)にも!
當家(こちら)で一際(ひときは)名高(なだか)き"鰻白燒(むなぎ志らやき)":
脆皮(かはサクサクにもろく)、
その身(み)を蕩(とろ)けんばかりに炙(や)くは唯一無二(よそになきもの)

これもまた、法國菜(ふれんすれうり)の秘儀(ひめわざ):
"poêlé(ポアレ)"こそ手本(てほん)・嚆矢(さきがけ)。
能(よ)くこれに倣(なら)ひ、やがて自家藥籠中(みづからのものと)したるは、
嘗(かつ)て、小人(それがし)に物語(ものがたり)せし記憶(おぼえ)あり。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

=======================================
(さかな)】:
 ・吉次(きちじ)煮附(につけ)
 ・炊合(たきあ)はせの類(たぐひ)
   蛸(たこ)、壺盧(ゆふがほ)、小蕪菁(こかぶら)、小薯蕷(こいも)、
   萬願寺蕃椒(まんぐわんじたうがらし)
 ・藝州太田川(あきのくにおほたがは)の香魚(あゆ)、有馬煮(ありまに) 、 
   加州(かゞ)金時草(きんじさう)
 ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、五百八十六匁(≒2.2kg)
 ・蝦夷奧尻(えぞおくしり)の紫海膽(むらさきうに) 
 ・蝦夷噴火灣(えぞふんくワわん)の"めじ"
 ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、潮汁(うしほじる)
 ・霞ヶ浦(かすみがうら)の鰻(むなぎ)、二百九十三匁(≒1.1kg)
 
(すし)】:
 ・新烏賊(しんいか)
 ・鰯(いはし)
 ・星鰈(ほしがれひ)
 ・丹後舞鶴(たんごまひづる)の鮪(しび)
 ・淡路(あはぢ)胡麻鯖(ごまさば)
 ・雞卵燒(かひごやき)

水果(みづぐわし)】:
 ・蕃茄(あかなす)
 ・白桃(もゝ)
 ・櫻桃(さくらんばう)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4
"紅椒(パプリカ)ムウス":
當家(こちら)の招牌(かんばん)とも云ふべき佳餚(よきさかな)
この日(ひ)の溏油(だし、フュメ・ド・ポアソン)は、
<魚荒>(あら)の骨邊肉(あら)より抽出(ひきいだ)せしもの。

これを制作(つく)るには、
西洋時辰儀(せいやうどけい)にして八時間(はちじかん)要(かゝ)ると云ふ。
"魚凍(にこゞり)"と"紅椒(パプリカ)ムウス"が二層(ふたへにをりか)さなり、
實言(まこと)、口(くち)に美味(あまし)!

しかし、この日(ひ)の白眉(きはめつき)は、
"備州(きびのくに)兒島灣(こじまわん)の(むなぎ)"。
百六十匁(≒600g)と小振(こぶ)りであるにもかゝはらず、
膩(あぶら)に富(と)み、旨味(うまみ)四角八方(よも)に炸裂(はじけちる)

やはり、當家(こちら)、
"蒲燒(かばやき)"ではなく、"白燒(志らやき)"が吉(よし)。
首級(みしるし)もまた頗(すこぶ)る味覺(した)に旨(あま)く
貪之(これをむさぼ)りて飽(あ)くことなし。

莫迦貝(あをやぎ、=ばかゞひ):
蝦夷地(えぞち)野附(のつけ)が近會(ちかごろ)の風習(ならひ)なれど、
この日(ひ)は、稀有(いとめづらし)き、桑名(くはな)の莫迦貝(ばかゞひ)。
小柱(こばしら)もまた、その手(て)は桑名(くはな)の大莫迦貝(おほばかゞひ)。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(さかな)】:
 雲州(いづも)高津川(たかつがは)年魚(あゆ)
 紅椒(パプリカ)ムウス+<魚荒>(あら)骨邊肉(あら)の魚凍(にこゞり)
 上総(かづさ)大原(おほはら)黑鰒(くろあはび)に山科蕃椒(やましなたうがらし)
 豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたかれひ)四百八十匁(≒1.8kg)
 利尻(りしり)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
 羽州(では)白神(しらかみ)の蓴菜(ぬなは)
 蝦夷(えぞ)厚岸(あつけし)の眞牡蠣(まがき)に蕃茄醤(あかなすびしほ)
 備州(きび)兒島灣(こじまわん)の鰻(むなぎ) 百六十匁(≒600g)
 豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたかれひ)潮汁(うしほじる)

(すし)】:
 佐渡嶋(さとがしま)の鮪(しび) 廿一貫(≒80kg)
 鰯(いはし)
 肥後(ひご)天草(あまくさ)小鰭(こはだ)
 豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたかれひ)
 佐渡嶋(さとがしま)の鮪(しび)
 その手(て)は桑名(くはな)の大莫迦貝(おほばかゞひ)に小柱(こばしら)
 相州(さがみ)松輪(まつわ)の胡麻鯖(ごまさば)
 佐渡嶋(さとがしま)の鮪(しび) 廿一貫(≒80kg)
 鐵火卷(てつくわまき)

水果(みづぐわし)】:
 蝦夷(えぞ)夕張甜瓜(ゆふばりメロン)
 琉球(りうきう)菠蘿(パインアプル)"タヾヲゴールド"
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
尋常(つね)のことながら、
劈頭(いやさき)から掉尾(いやはて)に至(いた)る惣(すべ)ての品(しな)、
一(ひと)つとして不味(あぢあ)しきもの皆無(なし)
實言(まこと)、「飯足酒飽(ごちさうさまにござる)!」

上總國(かずさのくに)大原(おほはら)。
當地(このち)で(あはび)と云ふと、
鮓店(すしや)が眼精(まなこ)の色(いろ)を變(か)ふる"眼高鰒(まだかあはび)"。
この日(ひ)は大(おほ)きな"黑鰒(くろあはび)"。

一時半(いつときはん、≒3h)ほど酒蒸(さかむ)しせしもの」と云ふ。
"眼高鮑(まだかあはび)"ともまた異(こと)なる風韻(かをり)。
嫩(やはらか)ながらも、適度(ほどよ)き齒應(はごた)へを殘(のこ)す
"たまげ茄子(なすび)"が絶味(このうへなきうまさ)には絶句(ことばをうしなふ)。

扨(さて)、この日(ひ)の白眉(はくび)"星鰈(ほしがれひ)"。
淡州(あはぢ)、八百廿七匁(≒3.1kg)と云ふ大物(おほもの)。
鰈(かれひ)は、大(おほきなるもの)能(よ)く小(ちいさなるもの)を制(せい)す
身(み)佳味(よし)、縁側(えんがは)さらに絶味(よし)。

播州(はりまのくに)三田(さんだ)にも負(ま)けぬ羽州(では)の蓴菜(ぬなは)。
その顏色(いろ)は翡翠(ひすい)かと疑(うたが)はれ、
その舌觸(したざは)りの滑(なめ)らかさたるや、
極樂淨土(ごくらくじやうど)の果凍(にこゞり)もかくやあらん」と思(おも)ふほど。

季(とき)至(いた)らず、色(いろ)なほ淡(あは)き"西瓜(すいか)"。
因州(いなば)・伯州(はうき)の山海(うみやま)の僥倖(さち)を用(つか)ひ、
これを割烹(さきてに)るを活業(なりはひ)とする方(かた)よりの音物(おくりもの)。
訝(いぶか)りつゝ口(くち)にするや、驚異的(おどろくばかり)の甜(あまさ)

因(ちな)みに、この日の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(さかな)】:
 芋莖(ずいき)+伏見(ふしみ)黒毛荳(くろえだまめ)+荏胡麻(えごま)
 上總(かずさ)大原(おほはら)黑鰒(くろあはび)+"たまげ茄子(なすび)"
 芝蔴淮南子(ごまどふふ)+羽州(では)蓴菜(ぬなは)
 淡州(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、八百廿七匁(≒3.1kg)
 蝦夷(えぞ)餘市(よいち)の鮟鱇肝(あんきも)
 相州(さがみ)佐島(さじま)の章魚(たこ)
 土州(とさ)四万十川(しまんとがは)の手長蝦(てながえび)
 九十九里(くじふくり)朝鮮蛤(てうせんはまぐり)の潮汁(うしほじる)
 備前(びぜん)兒島湖(こじまこ)の鰻(むなぎ)、百廿八匁(≒480g)

(すし)】:
 淡州(あはぢ)の星鰈(ほしがれひ)、八百廿七匁(≒3.1kg)
 紀州(きい)那智勝浦(なちかつうら)の鮪(しび)、廿一貫三百匁(≒80kg)
 陸前(りくぜん)閖上(ゆりあげ)の赤貝(あかゞひ)
 星鰈(ほしがれひ)潮汁(うしほじる)
 荳州(いづ)式根島(しきねじま)の縞鰺(しまあぢ)
 紀州(きい)那智勝浦(なちかつうら)の鮪(しび)、廿一貫三百匁(≒80kg)
 淡路(あはぢ)の眞鰺(まあぢ)
 帆立貝(ほたてがひ)
 有明灣(ありあけわん)の小鰭(こはだ)
 紀州(きい)那智勝浦(なちかつうら)の鮪(しび)、廿一貫三百匁(≒80kg)
 奧州(むつ)馬糞海膽(ばふんうに)

水果(みづぐわし)】:
 紅毛(こうまう)阿蘭陀(おらんだ)の草莓(いちご)
 日向(ひむか)の芒果(まんご)
 因州(いなば)or伯州(はうき)の西瓜(すいか)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
獅子(しゝ)の食殘(たべのこ)しを鬣狗(たてがみいぬ)が咋(くら)ひ、
鬣狗(たてがみいぬ)の剩餘(あまり)は禿鷲(はげわし)が銜(ついば)む。
これ、獸(けだもの)が世(よ)の風習(ならひ)。
この晝飧(ひる)の小人(それがし)は正(まさ)しく"禿鷲(はげわし)"。

"<魚荒> (あら)"、"葡萄蝦(ぶだうえび)"、"宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)"、
と、前日(まへのひ)の殘留物(のこりもの)には、
美味(うまきもの)・珍味(めづらしきも能)の數々(かずかず)
殘留物(のこりもの)には福(ふく)があり、肩(かた)の凝(こ)りには"●●メルツ"。

最初(いやさき)に"毛蟹(けがに)白瓜卷(しろうりまき)"。
黄身酢(きみず)の圓(まろ)やかさに駭(おどろ)く。
千鳥酢(ちどりす)は出汁(だし)にて割(わ)るりたるものと云ふ。
尋常(つね)のことながら、優(やさ)しき味(あぢはひ)。

當家(こちら)の玄關先(げんくわんさき)に山椒(さんせう)の木(き)あり。
この日(ひ)、木の芽(きのめ)はこの木(き)より摘(つ)み、
潮汁(うしほじる)の吸口(すひくち)としてあしらふ。
若(わか)く嫋(たを)やかなる風韻(かをり)。

築地市場(つきぢ)には稀有(まれ)なる"葡萄蝦 (ぶだうえび)":
標準和名(たゞしくは)、"緋衣蝦 (ひごろもえび)"。
本來(もともと)の"葡萄蝦(ぶだうえび)"は、
駿河灣(するがわん)にて極稀(きはめてまれ)に漁(すなど)らるゝものと云ふ。

"牡丹蝦(ぼたんえび)"同樣(と、おなじく)、
"踊(をど)り"では甜(あまさ)を難感(わかりがた)く
死(し)ゝて權(しばらく)置(お)き、膠粘(ねば)るほどが吉(よい)」。
慥(たしか)に、味(あぢ)は"牡丹蝦(ぼたんえび)"に似(に)る。

"雲州宍道湖(いづものくにしんじこ)の(むなぎ)":
百九十匁(ひやくきふじふもんめ、≒600g)斗(ばかり)なれど、
脂肪(あぶら)があり、旨味(うまみ)に富(と)む。
疑念(うたがひ)もなく、今季一(こんきいち)

(に)る」、「(や)く」が多(おほ)き"赤鯥(あかむつ)":
鮓種(すしだね)としてもなかなかのもの。
豫想(おもひ)に秋毫(つゆ)と相違(たがは)ぬは、
"賀茂茄子(かもなす)"、"琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)"の美味(うまさ)。

最後(いやはて)に、
四種(よくさ)にも及(およ)ぶ"水果(みづぐわし)";
佐藤錦(さたうにしき)、日向(ひむか)芒果(まんご)、臺灣茘枝(たいわんれいし)、
冰酪(あいすくりん)、これなり。

因(ちな)みに、この日の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(さかな)】:
 毛蟹(けがに)白瓜卷(しろうりまき)
 厚岸(あつけし)眞牡蠣(まがき)
 賀茂茄子(かもなす)
 燻(いぶし)鮟鱇肝臟(あんきも)
 宍道湖(しんじこ)鰻(むなぎ)
 琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)有馬煮(ありまに)
 <魚荒>(あら)
 芋莖(いもがら)に榮螺(さゞえ)
 <魚荒>(あら)潮汁(うしほじる)
 琵琶湖(びはこ)鰻(むなぎ)

(すし)】:
 鮪(しび)
 虎魚(おこぜ)
 鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
 竹岡沖(たけおかおき)赤鯥(あかむつ)
 舞鶴(まひづる)殼附(からつき)鳥貝(とりがひ)
 "緋衣蝦(ひごろもえび)"、俗稱(よにいふ)"葡萄蝦(ぶだうえび)"
 眞鯖(さば)藁燒(わらやき)
 障泥魷魚(あふりいか)
 鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)
 蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)

水果(みづぐわし)】:
 佐藤錦(さたうにしき)、日向(ひむか)芒果(まんご)、臺灣茘枝(たいわんれいし)、
 冰酪(あいすくりん)

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Macro Elmarit R 2.8/60 @F2.8
      萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Super Angulon R 4/21 @F8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
夏(なつ)も近(ちか)づき、
誘(さそ)はれて、"山菜(さんさい)盡(づ)くめ"の旅(たび)に出(い)づ。
野獸肉(のゝけだものがしゝ)も加(くは)へ、
山幸(やまさち)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはひつくしぬ)。

楤芽(たらのめ)、漉油 (こしあぶら)、(こゞみ)、(わらび)、老茸 (くろかは)、
蕗薹(ふきのたう)、(ふき)、行者大蒜 (ぎやうじやにんにく)、野蒜 (のびる)、
山獨活(やまうど)、山五加(やまうこぎ)、二輪草(にりんさう)、藤花(ふじのはな)、
花筏 (はないかだ)、花山椒(はなざんせう)、蒲公英(たんぽゝ)、などなど。

東都(えど)に囘(かへ)りて二日後(ふつかのゝち)の宴會(うたげ)。
この日(ひ)もまた山菜(さんさい)塗(まみ)れ。
花山椒(はなざんせう)に加(くは)へ、
漉油 (こしあぶら)、堅香子(かたかご)、芋莖(ずいき)、大葉擬寶珠(おほばぎぼし)。

季(とき)を得(え)たる魚介(うを・かひ)として、
銀寶(ぎんぱう)、城下鰈(しろしたがれひ)、初鰹(はつがつを)、稚鮎(ちあゆ)、
鳥貝(とりがひ)、その手(て)は鹿島(かしま)の燒蛤(やきはまぐり)。
因(ちな)みにこの蛤(はまぐり)は斧文蛤(てうせんはまぐり)。

銀寶(ぎんぱう)への火候(ひいれ)は完璧(ひとつとしてあやまちなし)
加熱(ねつがくは)ゝり、膠原纖維(こらあげんせんゐ)が明膠(ぜらちん)と化(な)り、
臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふことなく、咽喉(のみど)に踊(をど)る
星鳗(あなご)に勝(まさ)るとも劣(おと)らぬ美味(よきあぢ)。

鳥貝(とりがひ)と城下鰈(しろしたがれひ)の肝臟(きも)と云ふ、
駭(おどろ)くべき搭配(くみあはせ)。
實(げ)に、「爲虎傅翼(とらにつばさをそふるがごとし)」。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

詳細(くはし)くはこちらを御覽(ごらん)あれ!
https://tabelog.com/rvwr/giblets/rvwdtl/B27568416/#67773091

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
「今(いま)を盛(さか)り」と、
彼此(をちこち)に咲(さ)き誇(ほこ)る櫻花(さくら)。
折(をり)しも、張替(はりかへ)たばかりの疉(たゝみ)に心躍(こゝろをど)らせ、
隅(すみ)の席(むしろ)に一安堵(ひとおちゐ)。

"塚原白子筍(つかはらしらこだけ)"、
"琵琶湖(びはこ)、子持(こも)ち本諸子 (ほんもろこ)、
四万十川(しまんとがは)の近江葦登 (ごり、=あふみよしのぼり)"、
"滑川螢烏賊(なめりかはほたるいか)"、"駿河灣櫻蝦(するがわんさくらえび)"など。

體長(みのたけ)、三寸五分(さんずんごぶ)を超(こ)え、
四寸(よんすん)に垂(なんな)んとする"本諸子(ほんもろこ)":
備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)り、その儘(まゝ)貪(むさぼ)り餐(くら)ふ。
實言(まこと)、美味也(よきあぢなり)!

"塚原白子筍(つかはらしらこだけ)"は勿論(いふもさらなり) 。
"若筍煮椀(わかたけにわん)"美味(よし)、
"筍豆腐(たけのこどうふ)"を木芽未醤(きのめみそ)にて啖(くら)ふもまた吉(よし)。
「筍(たけのこ)では、"合馬(あふま)"と雙璧(ふたつにならぶ)」との定評(はなし)。

巧妙(たくみ)に油炸(あ)げられたる"螢烏賊(ほたるいか)"に"櫻蝦(さくらえび)":
"螢烏賊(ほたるいか)"の天麩羅(てんぷら)は初(はじめて)。
火候(ひいれ)絶妙(ほどよ)く
膓(わた) もまた複雜玄妙(ふかくいつくしみあるあぢはひ)

勿論(いはずもがな)の"櫻蝦(さくらえび)":
"櫻蝦(さくらえび)"天麩羅(あ)ぐる舖(みせ)夥(あまた)あれど、
寸毫(つゆ)雞卵(かひご)に頼(たよ)らで
最上質(いとよ)き麪粉(うどんこ)を薄衣(うすごろも)に用(つか)ふ

尋常(つね)のごとく、
頗(すこぶ)る美味(うま)き"薩州出水(さつしういづみ)の眞鰺(まあぢ)":
瓩(きろ)七千圓(なゝせんゑん)と云ふ。
その價格(ね)、野生鰻(てんねんむなぎ)に肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss)C Sonnar T* 1.5/50 ZM @F2.5
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影))
平身低頭(をがみたふ)し、半(なか)ば無理強(むりじ)ひすることにより、
漸(やうや)う實現(とゝの)ひし、「甲魚(すつぽん)盡(づく)し」の宴會(うたげ)。
天降川(あもりがは)の天然物(てんねんもの)は唐揚(からあげ)、
服部中村養鼈場(はつとり)のものは(わん)と肝臟刺身(きもさし)に、、。

その他(ほか)、
琵琶鰉 (びはひがい)、鳴門鯛(なるとだひ)、明石章魚(あかしだこ)、
箱館(はこだて)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)、銚子(てうし)の梶木(かぢき)、
陸中(りくちゆう)(さはら)、山城(やましろ)菜花(なばな)などなど。

小宮親方(こみやおやかた)歎息(ためいきつ)きて云ふやう:
隈(くま)なく魚河岸(かし)一帶(あたり)を探索(さがしもと)むれど
琵琶湖(びはこ)の"諸子 (もろこ)"、"稚鮎(ちあゆ)"、
絶(た)えてその姿(すがた)を見(み)ず!

「已(や)むことを得(え)ずして、この" (ひがい)"なる魚(うを)に、、」
との辯明(はなし)。
勿驚(おどろくなかれ)、
吾儕(わなみ)のみならず、親方(おやかた)も初(はじめて)となむ。

今(いま)は昔(むかし)、
明治天皇(めいじのすめらみこと)、これを大(おほ)いに賞賛(ほめたゝ)へたまひ、
後世(のち)、
"ひがい "に""なる字(じ)を當(あ)てるやうになりき、との故事(はなし)あり。

これを炭火(すみび)に炙(あぶ)りて"鹽燒(しほや)き"となす。
香魚(あゆ)固有(ならでは)の芳香(かぐはしきかをり)こそなけれ、
その身(み)の肌理細(きめこまか)さ、嫋(たを)やかさたるや、
若年魚(わかあゆ)に肉薄(せま)るほど。

但(たゞ)し、骨(ほね)の硬(かた)さは"杜父魚 (かじか)"竝(なみ)。
(あゆ)も、諸子 (もろこ)も、近江葦登 (あふみよしのぼり、=ゴリ)も、
悉(ことごと)く琵琶湖(びはこ)の財(たから)
琵琶湖(びはこ)、必守(かならずまもるべし)!

鳴門(なると)の"眞鯛(まだひ)":
その重量(めかた)、五百卅匁(ごひやくさんじふもんめ、≒2kg)ばかり。
捌(さば)くや、鳴門骨 (なるとこぶ)も顯著(あらは)。
皮(かは)と皮下(かはした)の旨味(うまみ)に驚愕(おどろく)。

扨(さて)、"水魚(すつぽん)":
"油炸(からあげ)"好吃(よし)、"肝臟刺身(きもさし)"美味(よし)、
"(わん)"また佳味(よし)。
その味(あぢはひ)、先頃(さきごろ)訪問(たづ)ねし『』より上(うへ)か?

(わん)は、平生(つね)のごとく、
調味料(あぢつけ)は、纔(わづ)かに、淡口醤油(うすくち)と(さけ)のみ。
昆布(こんぶ)に頼(たよ)らで、生薑(はじかみ)の佐(たす)けを受(う)けず。
裙邊(えんぺら)に、陶然(われをわす)ること霎時(しばし)。

久方(ひさかた)ぶりの"雞卵燒(たまごやき)":
燒(や)き方(かた)は、毎囘(そのつど)隱々(かすか)に搖(ゆ)らぎ
その搖(ゆ)れを心持(こゝち)よきものとして堪能(あぢはふ)
この日(ひ)は、瑞々(みづみづ)しく、柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
      旭光學 smc 賓得(Pentax) A☆ 1.4/85 @F2
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影))
この日(ひ)は、
舊友(ふるきとも)との新年會(あらたしきとしをことほぐうたげ)。
菜(れうり)の内容(うちわけ)は冩眞(ゑ)のごとし。
掃愁帚(さけ)を含(ふく)め、一萬四千圓也(いちまんよんせんゑんなり)。

今春(ことし)より、柳刄(やなぎば)は、
堺(さかい)の鍛冶名匠(かじのたくみ)の手(て)になる、
本燒(ほんやき)鏡面仕上(きやうめんしあ)げとなる。
掛軸(かけじく)を髣髴(おもは)す桐筥(きりばこ)入(い)り。

明石(あかし)の"眞鯛(まだひ)":
六百七十匁(ろうぴやくなゝじふもんめ、=2.5kg)。
仲卸(なかおろし)より、態々(わざわざ)"星鰈(ほしがれひ)"を避(さ)け、
選(え)りすぐりたるほどの逸品(よきしな)。

刺身(さしみ)、潮汁(うしほじる)、(すし)、何(いづ)れも、
筆舌(ふでやことば)で(つ)くせぬ美味(うま)さ。
眞鯛(まだひ)は五百匁(ごひやくもんめ、=1.9kg)ばかりが最善(よい)
とは云ふものゝ、この日(ひ)の"眞鯛(まだひ)"は別格(とびきり)。

雲州(いづも)の"活(い)け松葉蟹(まつばがに)":
三百五十匁(さんびやくごじふもんめ、=1.3kg)の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり)。
備長炭(すみ)に炙(あぶ)りて甜(あま)さを堪能(あぢは)ひ
茹(ゆ)でゝ蟹内臟(かにみそ)と和(あ)へ絶味(すばらしきあぢ)に陶然(ゑふ)

"(さはら)"の藁燒(わらやき):
尋常(つね)に倣(なら)ひて、大蒜醤油(おほひるじやうゆ)を塗(まぶ)す。
めじ(ぶり)、(かつを)に優(まさ)るとも劣(おと)らぬ味(あぢはひ)。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
【2016-12-04追記】:
利尻羅臼眞昆布利尻へと囘歸(もどる)。
この日の舎利は米醋(よねず)。
活車蝦(いきくるまえび)の雞卵焼(たまごやき)、美味(よきあぢ)なり。

【2016-10-01追記】:
昆布(こんぶ)が利尻(りしり)から羅臼(らうす)に、、。

【2016-07-30追記】:
竹岡沖(たけおかおき)銀寶(ぎんぱう)、桑名(くはな)の(しゞみ)など、、。

【2016-04-10追記】:
走(はし)りの花山椒(はなざんせう)を愉(たの)しむ。
白身(しろみ)も(しび)も、眞鰺(あぢ)、鶏卵焼(たまごやき)も、
うを徳』、『与志乃』を凌駕(はるかにしのぐ)。
以爲(おも)ふに、『与志乃』が雋(すぐ)るは”穴子(あなご)”のみ。

此度(こだみ)は新規(あらた)なる試行(こゝろみ)あり。
 1)鮟鱇肝(あんきも)を燻(いぶ)す。     ※美味(うまし)
 2)敢(あ)へて章魚(たこ)を叩(たゝ)かず。 ※臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふ

【2015-11-08追記】:
倩(つらつら)當家(こちら)の菜(れうり)を惟(おもんみ)るに、
二(ふた)つの弱點(よはみ)ありき。
一(ひと)つは、魚(うを)炙(あぶ)るに、瓦斯(がす)に頼(たよ)ること。
今一(いまひと)つは、舎利(しやり)。

已(すで)に、舎利(すめし)の大(おほ)きさ水分量(みづけ)は改(あらた)まり、
此度(こだみ)は、米醋(よねず)より紅醋(あかず)へと變更(きりかへ)。
口(くち)に含(ふく)むや、鳳仙花(ほうせんくわ)のごとくに四散(ほどけち)り、
瞬(またゝ)く中(うち)に臼齒(おくば)より吭(のみど)に到達(いた)る。

瓦斯(がす)より備長炭(びんちやうたん)への轉換(きりかへ)は、
來年(きたるとし)の早々(はじめ)。
東道(あるじ)曰(いへら)く、「馨(かをり)の佳(よ)さは、炭(すみ)ならでは。」、
「吾(われ)、漸(やうや)う、瓦斯(がす)の限界(かぎり)を曉得(さと)れり。」

"(しほ)ぽんす"に"橙鹽(だいだいじほ)"も新(あら)たなる試行(こゝろみ)。
鹽(しほ)は法蘭西(ふらんす)ゲランド産(さん)。
とまれ、若(も)し、二(ふた)つの弱點(よはみ)解消(きえう)さば
忽地(たちまち)、理想(のぞむべ)き姿(すがた)の舗(みせ)となるべし。

【2015-09-28追記】:
龜戸(かめゐど)の御大盡(おだいじん)が希望(のぞみ)に從(したが)ひ、
この度(たび)、新設(あらたにまうけ)し"御大盡(おだいじん)コース"。
"丹州(たんば)の松茸(まつたけ)"など、價格(ね)の張(は)るものがザクザク
無縁(ゆかりなし)とは云へ、金二萬圓也(きんにまんゑんなり)。

最初(いやさき)は"茸盡(きのこづ)くし":
松茸(まつたけ)、本占地(しめぢ)、黒茸(くろたけ)、舞茸(まひたけ)。
徒(いたづら)に出汁(だし)の勝(か)つことのなき佳味(よきあぢ)
丹州(たんば)の松茸(まつたけ)は纔(わづ)かばかりを味見(あぢみ)。

旨味(うまみ)彈(はじ)くる蝦夷利尻(えぞりしり)(ひらめ)の縁側(えんがは)。
羽州八郎潟(ではゝちらうがた)の(むなぎ)は四百五十匁。
この日(ひ)は、敢(あ)へて齒應(はごた)へを殘(のこ)す烹調法(やりかた)
噛(か)むほどに、美味(うまみ)溢れて、口中(くちのなか)へど浮騰(ほとばし)る

薩州(さつま)出水(いづみ)の眞鰺(あぢ)も、この日(ひ)は酢〆(すじめ)。
しみづ』、かつて四谷(よつや)に在(あ)りし『』を彷彿(おもはす)。
倩(つらつら)(むなぎ)、眞鰺(あぢ)を瞻(み)るに、小宮親方(おやかた)、
近來(ちかごろ)は、無人境(ひとなきところ)を獨行(ゆ)くがごとし

----------------------------------
【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @1.8~2.0

【2015-03-14追記】:
近會(ちかごろ)、俄頃(にはか)に若(わか)き客(きやく)が増(ふ)へ、
剩(あまッ)さへ、異人客(いじんきやく)までと云ふ形勢(ありさま)
古(ふる)くからの客(きやく)、地元(ぢもと)の民(たみ)が行(ゆ)きづらくなるは
致(いた)し方(かた)のなきところか、、、。

----------------------------------
【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:...蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZK @F2.0

【2013-09-20追記】:
鯵ヶ澤(あぢがさは)の[魚荒](あら)、大原目高鰒(まだかあはび)、などなど。
[魚荒](あら)は久繪(くゑ)にあらず。
姿形(すがた)は(すゞき)に似(に)、口味(あぢ)は眞鯛(まだひ)を髣髴(おもはす)。
頗(すこぶ)る美味也(びみなり)!

-------------------------------------
【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 @F2.0 (By Sony)

【2013-05-25追記】:
"茄子(なす)の揚(あ)げ浸(びた)し"、"淡竹(はちく)に水菜(みづな)"など。
(むなぎ)は琵琶湖(びはこ)。
"城下鰈(しろしたがれひ)"は指身(さしみ)、潮汁の三種(みくさ)。
〆は"能登大納言(のとだいなごん)のアイス"。

-------------------------------------
【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :東蔡(Carl Zeiss Jena) 紅MC Pancolar 1.8/50 @F2.4

【2013-03-10追記】:
此度(こだみ)は琵琶湖(びはこ)の"いさゞ"、"諸子(もろこ)"など。
頗(すこぶ)る美味(びみ)也。
名殘(なご)りの"(ふぐ)"に"炙(あぶ)りめじ"また佳(よ)し。
目新(めあたら)しきは岩手(いはて)の"雁喰豆(がんくひまめ)"。

-------------------------------------
【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :Kern Macro Switar 1.8/50 @F2.0

【2012-07-21追記】:
フィレンツェ茄子(なす)+ズッキーニ(しろ)バルサミコ
濱名湖(はまなこ)の(むなぎ)、百七十三匁(=650g) 、
球磨川(くまがは)の(すつぽん)、二百六十七匁(=1000g)、
小川原湖(おがはらこ)の(ごり)有馬煮(ありまに)、などなど。

【2012-07-07追記】:
武州羽根田(ぶしうはねだ)の鰻(むなぎ)、百卅匁(ひやくさんじふもんめ、=500g)。
脂(あぶら)こそ少(すく)なめなれど舌觸(したざは)り頗(すこぶ)る滑(なめ)らか。
古來(いにしへより)、江戸前海(えどまへうみ)の鰻(むなぎ)はを盛りとす。
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)!

【2012-06-23追記】:

【2012-06-10追記】:
この日は京師(みやこ)より東下(あづまくだ)りせし師匠(おやかた)と鉢合せ。
小宮(こみや)親方(おやかた)を交(まじ)へ四方山話(よもやまばなし)に花(はな)。
鰻(むなぎ)のほどよき大(おほ)きさ、海鰻(はむ)の産地(さんち)は勿論(いふにおよばず)、
師匠(おやかた)生(む)まれし能登(のと)の魚(うを)などとゞまるところを知らず。

【2012-05-26追記】:
胡麻鰒(ごまふぐ)の白子、豐後(ぶんご)三隅川(みくまがは)の香魚(あゆ)、
雲州(うんしう)中海(なかうみ)の二百十三匁(にひやくじふさんもんめ、=800g)、
賀茂茄子(かもなす)の田樂(でんがく)、淡路(あはぢ)の牡丹海鰻(ぼたんはむ)、
明石(あかし)の小豆羽太(あづきはた)、大原目高鮑(おほはらまだかあはび)など。

【2012-05-12追記】:
喜界嶋(きかいじま)大名笋(だいみやうだけ)、琵琶湖二百十匁、
石川芋(いしかはいも)、明石鯛(あかしだひ)、江戸灣(えどわん)の鳥貝
四万十川(しまんとがは)の(ごり)、大和丸茄子(やまとまるなす)など。
出水(いづみ)と淡路(あはぢ)の眞鰺(まあぢ)比(くら)べも、、。

【2012-05-04追記】:
此度(こだみ)は、遠州濱名湖(ゑんしうはまなこ)の(むなぎ)、百六十匁、
豐州(ほうしう)城下鰈(しろしたがれい)五百卅三匁(ごひやくさんじふさんもんめ)など。
江戸灣(えどわん)の穴子(あなご)に大車蝦(おほくるまえび)はひさかたぶりの品。
紅椒(ぱぷりか)ムウスに咖啡(こおふィ)葛切(くづき)りは鮓屋らしからぬ品。

【2012-04-21追記】:
今季(こんき)の初鰻(はつむなぎ)は、備州兒嶋湖(びしうこじまこ)。
大約(およそ)一百三十匁(いつぴやくさんじふもんめ、=500g)と小振(こぶ)り。
脂(あぶら)も少なく、龝(あき)盛りの鰻(むなぎ)とは雲壌(うんじやう)の相違(たがひ)。
しかはあれど、これぞ正眞正銘(まがふかたなき)天然物(てんねんもの)。

この日(ひ)の白眉(はくび)は"コンソメ"に"蕨餠(わらびもち)"。
"コンソメ"は牛脛肉芹菜(せろり)、洋葱迷迭香(ろーずまり)など、
菜蔬(あをもの)・香艸、胡椒百里香(たいむ)など香辛料(かうしんれう)を加へ、
さらに鳴門鯛(なるとだひ)骨邊肉(あら)の潮汁(うしほじる)を加へたる逸品(しな)。

居多(あまた)洋食屋ですら尻込みする"コンソメ"に挑(いど)むとは見上げたもの。
最初(いやさき)の"コンソメ"より初鰻(はつむなぎ)、(にぎ)りを經(へ)て、
最後(いやはて)は本蕨粉(ほんわらびこ)にて製(こしら)へたる"蕨餠(わらびもち)":
上にかゝるは丹波黒豆黄粉(きなこ)にて、その旨さ、勿論(いふもさら)なり。

【2012-04-07追記】:
この日の目當(めあ)ては今季初塚原(つかはら)の"白子筍(しらこだけ)"に、
"備州(びしう)白小豆(しろあづき)"の"水羊羹(みづやうかん)"。
偶(たまさ)か、朝〆(あさじめ)したる鳥羽(とば)の"星鰈(ほしがれひ)"と、
これまた今季初、肥州八代(ひしうやつしろ)の"(すつぽん)"も、、。

倩(つらつら)筍(たけのこ)の優劣(いうれつ)を考察(かんがみ)るに、
塚原(つかはら)の"白子筍(しらこだけ)"は、
"長岡京(ながおかきやう)"の筍(たけのこ)と比(くら)べても、一枚上手なるべし。
寸毫(つゆ)えぐみや癖の類(たぐひ)あらで、寔(まこと)、筍の頂點(いたゞき)

鳥羽(とば)の"星鰈(ほしがれひ)":
縁側(えんがは)もさることながら、 潮汁(うしほじる)の出來榮えが類稀(たぐひまれ)。
半月前(はんつきまへ)の明石鯛(あかしだひ)を凌(しの)ぎ、
一月前(ひとつきまへ)の"城下鰈(しろしたがれひ)"に竝(なら)ぶほどの美味(うまきあぢ)。

五百卅匁(=2kg)と云ふ"鼈(すつぽん)"は肥州八代(ひしうやつしろ)の産。
半晌(はんとき、=1時間)かけて鍋(なべ)に仕立(した)てたるものにて、
震旦(もろこし)の佳き清湯(すましゞる)か上質のコンソメを髣髴(おもはす)。
惜(を)しむらくは、身(み)頗(すこぶ)る硬(かた)く大味(おほあぢ)なること。

"薩州出水(さつしういづみ)眞鰺"の甘美(うま)さは勿論(いふもさら)なり。
扨(さて)、"備州白小豆(しろあづき)"の"水羊羹"に"黒豆あいすくりん":
實(げ)に、鮨屋(すしや)で供(いだ)すものとも思(おも)はれぬ出來(でき)。
就中(わきても)、"あいすくりん"は居多(あまた)卵黄ヴァニラビンズが光る一品。

【2012-03-25追記】:
此度(こだみ)は、長岡京(ながおかきやう)の稚鮎明石鯛など。
閖上(ゆりあげ)の赤貝(あかゞひ)は『峯八』に續き、大地震(おほなゐ)の後二度目。
明石鯛(あかしだひ)は子持ちにて、やはり龝(あき)の紅葉鯛(もみぢだひ)に分。
待ち遠しきは塚原(つかはら)の"白子筍(しらこだけ)"。

牛乳(うしのちゝ)を吉野葛にて固(かた)めたる"牛乳豆腐(ぎうにゆうどうふ)"が、
この日の白眉(はくび)。
生の米粒(こめつぶ)のごとき塊(かたまり)を訝(いぶか)しく思ひ、これを問(と)ふと、
「自(みづか)ら編出(あみいだ)せしものにて、葛(くづ)の粒(つぶ)にてござる」と。

【2012-03-11追記】:
銀寶(ぎんぽう)、山獨活(やまうど)、、走りの明石櫻鯛(さくらだひ)。
それに、琵琶湖(びわこ)の"もろこ"。
潮汁(うしほじる)は時季(じき)も向去(さりなん)とする(ひらめ)。
小振(こぶ)りなれど、口味(あぢ)はなかなかのもの。

【2012-02-19追記】:
漸(やうや)う生業(なりはひ)からも解放(ときはなた)れ、この日久々の『うを徳』。
最初(いやさき)は椀(わん)。
雲子(くもこ)、菜花(なのはな)、蘿蔔(すゞしろ)、吸口(すひくち)は柚子。
"淀蘿蔔(よどだいこん)"と號(よびな)す聖護院蘿蔔(しやうごいんだいこん)の一つ。

とは云へ、この日(ひ)の白眉(はくび)は"城下鰈(しろしたがれひ)"。
身(み)は二百四十匁(にひやくよんじふもんめ、900g)と聊(いさゝ)か小振(こぶ)り。
この日の旦(あさ)活け〆にしたばかりなれば、旨味(うまみ)乏(とも)しきは明白(あきらか)。
さらば、亭主(あるじ)の捌(さば)く姿(すがた)を虚(うつ)ろに眺(なが)む。

刺身(さしみ)を箸(はし)に取(と)り、ゆるりこれを吟味(あぢは)へど、
冬の青森鮃(あをもりひらめ)、龝(あき)の明石鯛(あかしだひ)を仰(あふ)ぎ見、
星鰈(ほしがれひ)、否、高名(なだか)き鮨店(すしや)の眞子鰈(まこがれひ)にも劣る。
時季(じき)に外れ、身の締まり、香氣(かをり)、旨味(うまみ)ともに今一つ

"城下鰈(しろしたがれひ)"と云ふは遍(あまね)く知(し)らるゝごとく、
豐後(ぶんご)は城下海岸(しろしたのはま)にて漁(すなど)らるゝ眞子鰈(まこがれひ)。
まともに口(くち)にするはこれが初(はじめて)。
求むるまでもなく、阿吽(あうん)の呼吸(いき)にて供(いださ)れし"潮汁(うしほじる)"。

上面(おもて)には珠(たま)のごとき油脂(あぶら)が浮(う)かみ、
湯氣(ゆげ)とゝもに、芳香(かぐはしきかをり)四方(よも)に漂(たゞよ)ふ。
これを口に含(ふく)むに、ほどよき鹽加減(しほかげん)と無限(かぎりな)き旨味
味覺(した)を搖(ゆ)さぶり、鼻竅(はな)を穿(うが)ち、吭(のんど)を貫(つらぬ)く

想定外(おもひのほか)に柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか。
これを噛み締むれば、奧齒(おくば)に抗(あらが)ふ方策(すべ)もなく蕩(とろ)け、
骨(ほね)の周圍(まはり)より旨味(うまみ)滾々(こんこん)と溢(あふ)れ出(い)づ
これを舐(ねぶ)り、慈(いつく)しみ、最後(いやはて)の一滴(ひとしづく)まで飮み干す

およそ、鮃(ひらめ)の骨邊肉(あら)なるは、
朝(あさ)〆なれば硬(かた)く、舌に逆らひ、:旨味(うまみ)乏(とも)しきもの
日を置くに從(したが)ひ旨味(うまみ)を増し、味はひを深(ふか)むるが通例(つね)
眞鯛(まだひ)また然(しか)り。

俗(よ)に鮃(ひらめ)は生で啖(くら)ふがよく、鰈(かれひ)は煮るが何よりと云ふ。
とは云へ、大(おほ)きなる眞子鰈(まこがれひ)は鮃(ひらめ)に似(に)て、
煮ては舌(した)に逆(さか)らひ、鮨(すし)・刺身(さしみ)に好適(む)く。
この日の鰈(かれひ)は鮃・眞鯛と云ふより鮎魚女(あゆなめ)に彷彿(さもにたり)。

【2012-01-01追記】:
■□■□謹賀新年■□■□、御節料理
2012-01-01日記に、、。

【2011-12-19追記】:
2011-12-19日記に、、。

【2011-12-10追記】:
2011-12-10日記に、、。

【2011-11-20追記】:
2011-11-20日記に、、。

【2011-11-09追記】:
2011-11-07、11-09日記に、、。

【2011-10-29追記】:
2011-10-29日記に、、。

【2011-10-19追記】:
備前(びぜん)兒嶋湖(こじまこ)の蝦蛄鰻(しやこむなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-10-19日記に、、。

【2011-10-08追記】:
綸子(りんず)”天草緑川(みどりかは)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-10-08日記に、、。

【2011-09-29追記】:
琵琶湖(びわこ)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-09-29日記に、、。

【2011-09-22追記】:
宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-09-22日記に、、。

【2011-09-10追記】:
球磨川(くまがは)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-09-10日記に、、。

【2011-09-04追記】:
此度(こだみ)は、『とよみつひめ』なる新種(しんしゆ)無花果(いちじく)。
殘(のこ)りは2011-09-04日記に、、。

【2011-08-18追記】:
土州(としう)鏡川(かゞみがは)の(すっぽん)。
生姜(はじかみ) を加(くは)へず、掃愁箒(さけ)も嘗(かつ)ての三分(さんぶん)の一(いち)。
纔(わづ)かな臭(くさ)みこそあれ、なかなかのもの。
鼈裙(えんぺら)、頭(かうべ)も、、。

殘(のこ)る冩眞(しやしん)は2011-08-18日記に、、。

【2011-08-10追記】:
四万十川(あゆ)、佐島(さじま)の章魚櫻煮(さくらに)、土州(としう)の鰹、
蝦夷地(えぞち)釧路(くしろ)の秋刀魚(さんま)など。
家苞(いへつと)ゝして『ばらちらし』。
秋刀魚(さんま)は身(み)も膓(わた) もなかなかの旨(うま)さ。

殘(のこ)る冩眞(しやしん)は2011-08-10日記に、、。

【2011-07-03追記】:
此度(こだみ)の白眉(はくび)は紅椒(ぱぷりか)のムウス
眞子鰈(まこがれひ)のあらより出汁(だし、"Fumet de poisson")を引(ひ)き、
牛(うし)の出汁(だし、"Consommé de bœuf")を併(あは)せ六日(むいか)かけたものと云ふ。
紅椒(ぱぷりか)の苦味)、凝乳(くりいむ)のまろやかさ、ほどよき鹽氣(しほけ)と非のうちどころなし。

握りとして、茹で上げ蝦蛄(しやこ)、三枚漬(さんまいづ)けの新子(しんこ)、
大原の蒸鮑(むしあはび)、明石鯛、佐島(さじま)の章魚(たこ)櫻煮(さくらに)など。
で上げ蝦蛄に舌鼓(したつゞみ)を打つは大約(およそ)一年(ひとゝせ)ぶり。
時季(じき)の穴子(あなご)はまづまづ。

【2011-06-15追記】:
此度(こだみ)は、『四万十川香魚(あゆ)』、『北上川山女(やまめ)』、
『丹後舞鶴(まひづる)の鳥貝』、『房州勝浦(ばうしうかつうら)の(かつを)』、
淡路(あはぢ)の(はむ)』、『江戸前(えどまへ)の穴子(あなご)』など。
『吉野川』の鮎(あゆ)の比(くら)べ、四万十川(しまんとがは)には力強(ちからづよ)さ。

(かつを)、(あぢ)にも優(まさ)るこの日の白眉(はくび)は穴子(あなご)。
皮(かは)甚(いと)柔(やは)らかにして、身(み)も崩(くづ)れんばかり。
身皮(みかは)の間(はざま)なる脂(あぶら)が舌に纏(まと)はりつゝ、 吭(のんど)の奧に、、。
やはり鰻(むなぎ)は龝(あき)穴子(あなご)は初夏(なつのはじめ)が何より。

鳥貝(とりがひ)を解體(さば)く過程(かてい)2011-06-15日記(につき)に。

【2011-06-03追記】:
・・・・・・(略)・・・・・・
此度(こだみ)の酒菜(さかな)は、吉野川、京師(みやこ)賀茂茄子(かもなす)、
壹岐(いき)の岩牡蠣(いはがき)など。

鮎(あゆ)には楓(かえで)と加賀太胡瓜(かゞぶときうり)があしらはれ目にも鮮やか。
これを貪(むさぼ)るに、身と膓(わた) より心持(こゝち)よき香(かをり)迸(ほとばし)る。
岩牡蠣(いはがき)はその儘(まゝ)でも旨(うま)く、ぽん酢(ず)もまた佳(よ)し。
賀茂茄子(かもなす)はほどよき齒應(はごた)へを殘(のこ)し、出汁(だし)も上々。

握(にぎ)りは生平(つね)のごとし。
出水(いづみ)の眞鰺(あぢ)は時季(じき)に適(かな)ひ旨さ口中(くち)に横溢(あふ)る。
肥後(ひご)の本蛤(ほんはまぐり)も朝鮮蛤(てうせんはまぐり)と見紛(みまが)ふ大きさ。
天草(あまくさ)の車蝦(くるまえび)は俗(よ)に云ふ『大車(おほぐるま)』。

【2011-04-28追記(拔粹)】:
蝦夷(えぞ)苫小牧馬糞海膽、洛(みやこ)塚原白子筍(しらこだけ)、
越中富山喉黒(のどぐろ)などを貰(もら)ひ杯(さかづき)を傾(かたぶ)く。
握りで、鮃(ひらめ)縁側(えんがは)、眞鰺(まあぢ)、小鰭(こはだ)、黄肌(きはだ)、
赤貝(あかゞひ)、穴子(あなご)。

音(おと)に聞(き)く『白子筍(しらこだけ)』を口にするはこれが初(はつ)。
鹽茹(しほゆ)でに見(み)えしかど、出汁(だし)を加(くは)へたるものとなむ、、。
滑らかなる舌觸(したざは)りは絹に似て、えぐみのなさは泉(いづみ)を髣髴(おもはす)。
慥(たしか)に笋(たけのこ)の皇(すめらみこと)。

喉黒(のどぐろ)は兜(かぶと)ばかりを擇(えら)み、ほどよく炙りて供(いださ)る。
豫(あらかじ)め降り鹽(じほ)が施(ほどこ)され、その旨味も一入(ひとしほ)。
遉(さすが)に閖上(ゆりあげ)の赤貝はなく、周防にて漁(いさ)りしものゝみ。
殼(から)を剥(む)き、肝(きも)を燒(や)き、身(み)と紐(ひも)は握りとなす。

【2011-04-17追記】:
・・・・・・(略)・・・・・・
漬け場に目立つ九十九里(くじふくり)の朝鮮蛤鶏卵燒(たまごや)き。
車蝦山芋を擂り込み、四十分かけて燒上(やきあ)げたるもの。

主人(あるじ)、『大地震(おほなゐ)に遭ひて閖上(ゆりあげ)の赤貝など皆無』と、、。
掃愁箒(さけ)を貰ひ、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)に主人(あるじ)心盡くしの品。
最初(いやさき)に、越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)の螢烏賊(ほたるいか)。
獨活(うど)を添(そ)へ酢未醤(すみそ)で戴(いたゞ)く。

酒菜(さかな)として、品書きより、琵琶湖(びわこ)のもろこ鹽燒(しほやき)と、
洛(みやこ)は長岡京(たけのこ)の炙り燒きを注文(たのむ)。
もろこは二寸斗(にすんばかり)の大(おほ)きさで子持(こも)ち。
築地(つきぢ)で琵琶湖(びわこ)のもろこを扱ふは纔(わづ)かに一軒のみとか。

穴子肝煮(きもに)、走りの淡路島(あはぢしま)海鰻(はむ)落とし、
それに、海鰻(はむ)のあら汁(じる)は、 主人(あるじ)の好意(かうい)。
握り十二、鶏卵燒、玉薤(さけ)、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)で八千二百圓也。
價格(ね)の廉きは、家族(うから)ばかりで商(あきな)ひ、廛(みせ)も持ち家なればこそ。

銀座『青木』とは互ひに先代(せんだい)よりの附き合ひとか。
主人(あるじ)、今は『はしぐち』となりし紀尾井町時代をも知る。
京師(みやこ)の馨(かをり)漂ふは、先代女將(さきつおかみ)の生まれもさることながら、
偏(ひとへ)に主人(あるじ)の修業先(しゆげふさき)にあり。

力みがなく、『某(それがし)、鮨より懐石料理(くわいせき)が得手(えて)』とポツリ。
扨(さて)、鮓職人が力量(うで)を餘すところなくあらはす鶏卵燒(たまごや)き。
些(いさゝ)か滑(なめら)かさに虧(かく)と云ふとも、
車蝦(くるまえび)の色尤(いと)鮮烈(あざやか)にして味はひもまたなかなかに深淵(ふかし)。

昆布〆に用(つか)ふ昆布(こんぶ)は利尻(りしり)と、これまた京風(きやうふう)。
江戸(えど)の鮨屋(すしや)では眞昆布(まこんぶ)を用(つか)ふが通例(ならひ)。
煮切(にき)りは醤油(しやうゆ)七に味醂(みりん)三で配合(ま)ぜ、
出汁(だし)を加へたるもの。

驚(おどろ)くべきは主人(あるじ)の記憶力(ものおぼえ)の凄(すご)さ。
四月(よつき)も前の客(きやく)の呑み啖ひしたるものをつぶさに憶(おぼ)えてをり、
剩(あまッ)さへ、話のやりとりまでもが審(つまびらか)。
以爲(おも)ふに、☆☆☆を爭ふ賈(みせ)にはあらねど、實(げ)に居心地よき廛(みせ)

【2010-12-04記(拔粹)】:
最初(いやさき)に掃愁箒(さけ)。
酒菜(さかな)は豊後(ぶんご)冬茹(どんこ)の含(ふく)め煮(に)。
一日(いちにち)西洋時辰儀(せいやうとけい)にして六時間煮詰(につ)め、
それを幾日(いくにち)も繰(く)り返(かへ)すと云ふ驚(おどろ)くほどの手間隙(てまひま)。

次いで『星鰈(ほしがれひ)の卵巣(こ)』。
主人(あるじ)の修業先(しゆげふさき)は洛(みやこ)木屋町通り『やました』。
慥(たしか)に味附けは淡く、京師(みやこ)の割烹(かつぱう)を髣髴(おもはす)。
この星鰈(ほしがれひ)、常磐(じやうばん)のものにて、主人(あるじ)誇りの品。

握りは、星鰈(ほしがれひ)、星鰈縁側(えんがは)、眞鯖(まさば)、小鰭(こはだ)、
墨烏賊(すみいか)を煮切(にき)りと鹽(しほ)で、
鮪(しび)の赤身(あかみ)醤油漬(しやうゆづ)けに、赤身(あかみ)に近き脂身(あぶらみ)、
蛤(はまぐり)、卷き、煮穴子(にあなご)、燒穴子(やきあなご)、冬茹(どんこ)卷き。

途中(とちゆう)、唐墨(からすみ)に蟹汁(かにじる)を挾(はさ)み、
握(にぎ)り十三(とあまりみつ)、卷物(まきもの)一つ、合はせて値(あたひ)八千五百圓也。
口惜(くちをし)きは鶏卵燒(たまごや)きなきこと。
勿驚(おどろくなかれ)、各々(おのおの)品の價格(ね)が黒板(こくばん)に審(つまびらか)。

この日は午の刻より未の刻まで一時(いつとき,=2時間)ばかり。
僕(やつかれ)のほか、絶(た)へて客(ひと)の姿(すがた)を見ず。
近傍(ちかく)に寺多く、粗方(あらかた)休日(やすみのひ)の法事客(はふじきやく)とか。
饗應(もてなし)に用(つか)ふ廛(みせ)なれば、價段(ね)を明かす道理(ことわり)なし。

唐墨(からすみ)は自家製。
鹽(しほ)ばかりで製造(こしら)へたるものとは明らかに異なる圓(まろ)やかさ。
その理(ことわり)を訊(たづ)ぬれば、燒酎(せうちう)に暫し漬け込みたるものとのよし。
傍(かたは)らの紅芯蘿蔔(こうしんだいこん)は鮨屋(すしや)には珍しき品。

要求(もとめ)に應(おう)じ、唐墨(からすみ)に添(そ)ふると、、。
そも、蘿蔔(すゞしろ)は徒(いたづら)に強き鹽氣(しほけ)を和(やはら)ぐるもの。
鹽(しほ)強(つよ)からざれば、そのまゝに味(あぢ)はふが何より。
こゝろみに紅芯蘿蔔一片(ひとひら)を齧(かじ)るに、爽やかなること梨(なし)に似たり。

萬願寺唐辛子(まんぐわんじたうがらし)も東都(えど)の鮨屋にはなき菜蔬(あをもの)。
舎利(しやり)は粒(つぶ)が立ち、舌(した)に滑(なめ)らか。
暖(あたゝ)かさは人肌(ひとのはだ)ほどならん。
酢は尾州半田(びしうはんだ)の白酢に、纔(わづ)かながら沙糖を用(つか)ふ。

甘酢(あまず)漬け生姜(はじかみ)の自家製(じかせい)なるは勿論(いふもさらなり)。
くどさなく、口直(くちなほ)しにはほどよし。
近會(ちかごろ)の行きつけ に比(くら)ぶれば、聊か冷たく、酢も弱め。
山葵(わさび)は本物(ほんもの)ながら、高名(なのある)廛(みせ)には遠く及ばず。

主人(あるじ)の誇る『星鰈(ほしがれひ)』は〆てより三日目(みッつかめ)。
この時季の、『喜久好』か『ほかけ』のの美味(うまきあぢ)にはとてもとても、、。
喜久好』なれば〆て間(ま)もなきものを厚(あつ)めに切りつく。
身が活き、噛み締むるほどに旨味(うまみ)奔(ほとばし)るが通例(つね)。

(はまぐり)』は他店(よそ)で用(つか)ふ鹿島灘(かしまなだ)朝鮮蛤とは異なり、
肥後(ひご)の濱(はま)にて漁(すなど)られし本蛤(ほんはまぐり)。
これを『漬け込み』となし、煮詰(につ)めを寸毫(つゆ)施(ほど)さずに味はふ。
僅(はつ)かながらも火の入り過ぎたるけはひこそあれ、なかなかの出來榮(できば)え。

主人(あるじ)が『今一つ』と羞(は)ぢらふ『煮穴子(にあなご)』は江戸前(えどまへ)。
煮工合(にぐはひ)もほどよく、この時季(じき)としては、まづまづ。
最(いと)面白(おもしろ)きは『燒穴子(やきあなご)』。
洛(みやこ)に倣ひて、骨切(ほねき)りを行ひたる後これを炙(あぶ)る。

やはり『燒穴子』に限るなら『468』に一日(いちじつ)の長(ちやう)。
鶏卵(たまご)の代替(かはり)に『尤(いと)自信(じゝん)あるもの』と、問はゞ、
『含ませ煮の冬茹(どんこ)』を海苔(のり)に卷くは如何(いか)に、と、囘答(いら)ふ。
ぬばたまの黒さながらも、味は海苔卷きの干瓢(かんぺう)よりも穩(おだ)やか。

さても、握り鮨の華(はな)たる光物(ひかりもの)ゝはと檢(あらた)むるに、
鯖(さば)はやゝ淺(あさ)め、小鰭(こはだ)は聊(いさゝ)か強き酢〆
主人(あるじ)に據(よ)らば、鯖は、鹽(しほ)二時間半、酢(す)四十分、
小鰭(こはだ)は、鹽(しほ)を五十分、酢(す)を四十分とか。

豐後(ぶんご)の鯖(さば)は、その身頗(すこぶ)る肥(こ)え、
脂(あぶら)は鹽(しほ)を蹴散(けちら)らし、酢を四方(よも)に彈き飛ばさんばかり。
小鰭(こはだ)には"卷き"より拵(こしら)へたる朧(おぼろ)を挾(はさ)む。
〆の強さたるや、九段下『壽司政』、烏森稻荷『しみづ』に次ぐ。

そも『うを徳』なる屋號(やがう)、小宮徳造(こみやとくざう)が魚屋に因む。
倅(せがれ)(たけし)、當地(このち)に開きし鮨屋こそ『おすもじ處(どころ)うを徳』。
二代目(にだいめ)重病(おもきやまひ)に仆(たふ)れ、跡を繼ぎしが、三代目(さんだいめ)。
すなはち、現行(いま)の親方(おやかた)小宮健一(こみやけんいち)その人(ひと)。

  • 小宮健一(こみやけんいち)親方(おやかた) 【撮影許可濟】 2011年6月撮影、2019-01モザイク處理
  • "鮑魚(あはび)"+《越中滑川(なめりかは)》"螢烏賊(ほかるいか)"
  • 『服部中村養鼈塲(はつとりなかむらやうべつじやう)』"鼈(かはかめ)"

もっと見る

2位

鮨 猪股 (川口元郷、川口 / 寿司)

3回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2017/06訪問 2017/06/18

熟成(うら)し喰(く)ふ 奧州(むつ)陸前(りくぜん)の 星鰈(ほしがれひ) たつた一貫(ひとつ)で 虜(とりこ)となりけり

四度目(よたびめ)の『豬股』。
當日(そのひ)電話(テレフヲン)するに、「空席(あき)あり」との應答(いらへ)。
今猶(いまなほ)かくのごとき景状(ありさま)なる縁由(ことのよし)、
偏(ひとへ)に、"川口(かはぐち)"と云ふ地(ところ)の牆壁(かべ)にあらん。

とは云へ、かの蒲田(かまた)『初音鮨』の前例(ためし)もあり、
努々(ゆめゆめ)油斷大敵(きをぬくべからず)!
半年後(はんとせのち)、
「『初音鮨』のごとき爲體(てゐたらく)にならぬ」とは、難斷言(いひきりがたし)。

"熟成(ねかし・うらし)"を窮(きは)めんとするは、以前同樣(まへにおなじ)。
魚(うを)に依存(よ)り、大(おほ)きさに從(したが)ひ
鹽(しほ)を振(ふ)り、時(とき)にその儘(まゝ)
冰温(こほりのつめたさ)に寢(ね)かすこと數日間(いくにちか)。

"劍先烏賊(けんさきいか)"で五日(いつか)、
"(すゞき)"、"星鰈(ほしがれひ)"なら七日(なぬか)、
この日(ひ)の"(しび)"は五日(いつか)と云ふ工合(ぐあひ)。
鱸(すゞき)は、「昆布〆(こぶじめ)歟(か)?」と訝(いぶか)るほど。

舎利(すめし)の美味(うま)さも不變(あひかはらず)。
陸奧(むつ)の眞妻山葵(まづまわさび)の優秀(すば)らしさは、
豆州(いづ)のそれにも匹敵(ま)けぬほど。
季(とき)に恵(めぐ)まれずと云へど、"(しび)"もまた佳味(よきあぢ)。

創業(あきなひをはじめ)て以來(よりこのかた)
築地(うをいちば)では、最上(いとよ)きものばかりを贖(か)ひ續(つゞ)け
今(いま)や、仲卸(なかおろし)が、
當家(こちら)のために極上(このうへなき)ものを確保(とりおき)するまでに、、。

"(しび)"、"海膽(うに)"は勿論(いふまでもなく)、
その他(ほか)の鮨種(すしだね)も至高(とびきり)のものばかり。
この日(ひ)の"紫海膽(うに)"にも「築地一(つきぢいち)」の極印(きはめいん)。
一貫(ひとつ)原價(もとね)で四千五百圓(よんせんごひやくゑん)にもなると云ふ。

それを、
「四千圓(よんせんゑん)と云ふ破格値(あかじね)」
にて提供(いだす)とのよし。
小人(それがし)のみ、このありがたき提案(まうしいで)を辭退(ことわる)。

"星鳗(はかりめ)"は烹(に)て炮(あぶ)ると云ふ烹調法(やりかた)。
外見(みため)も食感(あぢはひ)も、
瀬戸内(せとうち)界隈(あたり)の燒穴子(やきあなご)に彷彿(さもにたり)。
僕(やつかれ)、やはり、古典的(むかしなが)らの"煮穴子(にあなご)"が吉(よい)。

"蝦蛄(しやこ)"も卵巣(たまご)を持(も)たぬものを、
眼前(めのまへ)にて茹(う)で上(あ)ぐるを嗜(この)む。
當家(こちら)の流儀(やりかた)、
風習(ならひ)の"漬込(つけこみ)"とも半點(いさゝか)異質(ことなる)。

明々地(あからさま)に改良(よく)なりしが"雞卵燒(たまごやき)"。
顏色(いろ)の變化(たがひ)は甘蔗(さたう)を變更(かへ)たことに起因(よる)。
滑(なめ)らかなること絹(きぬ)のごとく
嫩(やはらか)なること焦糖布甸(かすたあどぷでいんぐ)を髣髴(おもはす)

劈頭(いやさき)から掉尾(いやはて)に至(いた)るまで、
一(ひと)つとして麁味(あぢあ)しきもの皆無(なし)
只顧(ひたすら)旨(うま)く、唯々(たゞたゞ)味覺(した)を怡(よろこ)ばしむ
とは云へ、美味(うま)く濃厚(こ)きに過(す)ぐるとの恨(うら)みを殘(のこ)す。

因(ちな)みに、この宵(よひ)の菜譜(こんだて)は、如下(つぎのとほり):
=======================================
劍先烏賊(しろいか、=けんさきいか)、筑紫(ちくし)、五日熟成(いつかうらし)
・鱸(すゞき)、伊勢(いせ)、七日熟成(なぬかうらし)
星鰈(ほしがれひ)、陸前(りくぜん)、七日熟成(なぬかうらし)
・蝦蛄(しやこ)、陸前(りくぜん)、卵持(こもち)
・章魚(たこ)、下總鴨居(しもふさかもゐ)
・縞鰺(しまあぢ)、五日熟成(いつかうらし)
・紫海膽(むらさきうに)、陸奧(むつ)
・鮪(しび)、壹岐(いき)、三十七貫(≒137kg)、五日熟成(いつかうらし)
・眞鰺(まあぢ)、薩州出水(いづみ)
棘藻蝦(をにえび、=いばらもえび)、蝦夷積丹(えぞしやこたん)
・鰹(かつを)、安房勝浦(かつふら)、一貫三百九十匁(≒5.2kg)
・鰒(あはび)、三陸(さんりく)
・星鳗(はかりめ)、江戸前(えどまへ)
・鮪(しび)、壹岐(いき)、三十七貫(≒137kg)、五日熟成(いつかうらし)
・鮪(しび)肥肉(あぶらみ)、壹岐(いき)、三十七貫(≒137kg)、五日熟成
・星鳗(まあなご)+黄瓜(きうり)
・鐵火卷(てつくわまき)の類(たぐひ)
・雞卵燒(たまごやき)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F2.8
雞卵燒(たまごやき)、進化(かはりぬ)。」
との慥(たしか)なる噂(うはさ)を小耳(こみゝ)に挾(はま)み、
三度目(みたびめ)の訪問(おとづれ)。
此度(こだみ)は、類稀(たぐひまれ)なる食通(たべて)を同伴(ともな)ひ、、。

劈頭(はじめ)から、
豬股親方(ゐのまたをやかた)の誇(ほこ)らしくも愉快(たの)しげなる聲(こゑ)。
三厩(みんまや)の(しび)、五十二貫五百匁(≒197kg)。」
今季最後(いやはて)の津輕海峽(つがるかいきやう)もの。」

この日(ひ)の菜譜(こんだて)は↓冩眞(したのゑ)のとほりなれば、
委細省略(こまかなることハはぶく)。
卷物(まきもの)など十七(とあまりなゝつ)に啤酒(びいる)を合(あは)せ、
對價(あたひ)、二萬圓(にまんゑん)斗(ばかり)。

前(まへ)に同(おな)じく、
過半(あらかた)、輕(かろ)く鹽(しほ)して熟成(ね)かしたる素材(たね)
「たゞし、貝(かい)と蝦(えび)はその限(かぎ)りにあらず。」
とは、師傅(おやかた)の辯(はなし)。

"(ぶり)"、"眞鯛(まだひ)"、"赤鯥(あかむつ)"、など、
背身(せみ)と腹身(はらみ)を薄(うす)き削(そ)ぎてこれを合體(あはす)。
その縁由(ことのよし)、
僉(みな)、均一(おな)じ味(あぢ)にせばやと、、」となむ。

"眞梶木(まかぢき)"も同樣(おなじ)ながら、背身(せみ)二枚(にまい)。
"小鰭(こはだ)"は、市場(いちば)で厚(あつ)めのものを選擇(えら)み
半身(はんみ)にして、更(さら)にこれを薄(うす)く開(ひら)き
裏表(うらおもて)にして二枚(にまい)

(しほ)、(す)、ともに八十分(はちじつぷん)」
とは、今時(いまどき)ありえぬほどの強烈(つよ)さ
さりながら、
醋(す)の立(た)ち過(す)ぎを感(かん)じさせぬは驚歎(おどろき)。

十日間(とほか)熟成(ねかしたるもの)」、
と證言(い)ふ淡路(あはぢ)の"眞鯛(まだひ)"。
その重量(めかた)は八百匁(はつぴやくもんめ、=3kg)に及(およ)び、
その風味(あぢとかをり)は昨日(きのふ)〆たばかりかと錯覺(みまがふ)。

"紅瞳(べにひとみ)"と號(よびな)す"赤鯥(あかむつ)"には仰天(そらをあふぐ)。
元來(もとより)、
北陸(ほくりく)近邊(あたり)ではこれを"喉黑(のどぐろ)"と稱(とな)ふ。
その美味(よきあぢ)たるや、もはや、唸(うな)るほか術(てだて)なし

どれもこれもが東道(あるじ)の誇(ほこ)り
時季(とき)に適(かな)ふ至高(このうへなき)ものばかりを仕入(しい)れ
これに、鹽(しほ)を振(ふ)りて適宜(ほどよく)寢(ね)かし置(お)き
時(とき)に、速(すみ)やかにこれを鮨種(すしだね)となす。

柵漬(さくづ)けたる(しび)は、
切附(きりつ)け、再度(ふたゝび)漬醤油(つけじやうゆ)に滲(ひた)し、
小柱(こばしら)などには、醋洗(すあら)ひを施(ほどこ)す。
眞牡蠣(かき)は岩手(いはて)赤嵜産(あかざきのもの)。

(さけ)、味醂(みりん)、昆布(こんぶ)による"漬込(つけこみ)"のごときもの。
亭主(あるじ)言(い)ふやう:
「世(よ)に"昆布森(こんぶもり)"に優(まさ)る牡蠣(かき)なしと云へど
今頃(いまごろ)のものは火(ひ)に遭(あ)ひて縮退(ちゞむ)が通例(つね)。」

これに因(よ)り、
「"昆布森(こんぶもり)"の牡蠣(かき)は十二月(じふにがつ)まで、
海膽(うに)は、利尻(りしり)馬糞海膽(ばふんうに)の最上品(いとよきしな)を、
春(はる)から夏(なつ)までに限定(かぎり)て用(つか)ふ。」と、、。

"穴子(あなご)"なき縁由(ことのよし)、また同樣(しかり)。
眞梶木(まかぢき)の旨(うま)さも時季(いまごろ)固有(ならでは)。
(はる)には三州(みかは)の"淺蜊(あさり)"、、」、
と、心待(こゝろま)ちの樣子(そぶり)。

駭(おどろ)くほどに大(おほ)きな野附(のつけ)の"大星(おほゞし)"。
すなはち、莫迦貝(ばかゞひ)貝柱(かひばしら)番(つがひ)の一(ひとつ)。
僕(やつかれ)、
酢洗(すあら)ひせで、その儘(まゝ)に用(つか)ふが嗜(この)み。

纔(わづ)かに味(あぢ)の濃(こ)さを感(かん)じたは、
"子持(こも)ち槍烏賊(やりいか)"に"手卷(てまき)の鐵火(てつくわ)"。
槍烏賊(やりいか)は半點(いさゝか)甜鹹(あまから)く
手卷(てまき)は煮切(にきり)過多(おほめ)

味覺(した)の鋭(するど)き同行者(つれ)より、
さらに、より詳細(こま)かき指摘(してき)あり。
とは云へ、押(お)しなめて、どれもこれも美味(よきあぢ)
就中(わきても)、素材(すしだね)の上質(よ)さは折紙附(をりがみつき)

"鶏卵燒(たまごやき)"は緑色(みどりいろ)が薄(うす)れ、
甜(あまみ)を増(ま)し、滑(なめ)らかさも向上(うはむき)たる兆(きざし)
黍糖(きびたう)を上白糖(じやうはくたう)に換(か)へ、
沙糖(さたう)を減(へ)らして味醂(みりん)に、、」との説明(よし)。

"海苔(のり)"は肥前(ひぜん)有明(ありあけ)。
"小鰭(こはだ)"も有明(ありあけ)。
有明(ありあけ)の小鰭(こはだ)は海苔(のり)の味(あぢ)がする」、
とは東道(あるじ)が説(はなし)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
【2016-12-15追記】:
丸六年(まるむとせ)、
頻繁(あしゝげ)く通(かよ)ひ詰(つ)めたる『寺島町(てらしまちやう)』。
「ふらり、晝飧(ひる)にでも覗(のぞ)かばや」と意(おも)ひしかど、
「年末(としのすゑ)まで一席(ひと)つとして空(あき)なし」の景状(ありさま)。

寔(まこと)、近會(ちかごろ)の鮓店(すしや)は尋常(よのつね)ならざるものあり
かつて、"御好(おこの)み"、すなはち、
賓(まらうど)の隨意(おもひのまゝ)に摘(つま)めた『すきやばし』は、
"御任(おまか)せ"のみと變貌(なりは)て、その名聲(たかきな)に胡坐(あぐら)。

先般(さきごろ)閉店(みせじまひ)せしばかりの『水谷』また同樣(しかり)。
往古(そのかみ)なれば、ふらり立寄(たちよ)るも尤(いと)容易(やす)かりし、
さいとう』、『すし匠』、『喜邑』、『初音鮨』、『都壽司』(※現『すぎた』)は、
今(いま)や、席(せき)すら確保(と)れぬ慘状(ありさま)

人(ひと)が客(ひと)を呼(よ)び、評判(うはさ)が評價(うはさ)を呼(よ)ぶ
宛然(あたかも)、
雫(しづく)集(つど)ひて清水(しみづ)となり、川(かは)と變貌(な)り、
やがて瀑布(おほだき)と化(な)りて瀧壺(たきつぼ)に荒狂(あれくる)ふがごとし。

これ、偏(ひとへ)に、
"紅本(あかほん)"の惡戲(いたづら)"食(た)べ六゛(●ぐ)"の大罪(つみ)
さすれば、當家(こちら)『豬股』の遠(とほ)からず上(うへ)のごとく變化(な)るも、
最早(もはや)不可避(さけがた)き宿命(さだめ)。

氣(き)も漫(すゞ)ろ。
「有象無象(うざうむざう)の衆人(たみ)蝟集(むらが)る前(まへ)に、、」と、
この日(このひ)、矢(や)も楯(たて)もたまらず、
武州足立郡川口(むさしのくにあだちのこほりかはぐち)の地(ち)に、、。

大約(およそ)半年(はんとし)ぶり。
前囘(まへ)は六字(ろくじ)開始(はじまり)で客(かく)一人(ひとり)、
此度(こだみ)は五字(ごじ)開始(はじまり)で賓(まらうど)六人(むたり)。
「前日(まへのひ)は纔(わづ)か一人(ひとり)のみ」とのよし。

親方(おやかた)大(おほ)いに自慢(むねをは)る"(しび)":
津輕大間(つがるおほま)の五十六貫目(ごじふろつくわんめ、=210kg)、
熟成(ねか)すこと七日(なのか)。
"墨烏賊(すみいか)"九日(こゝのか)、"眞鯛(まだひ)"は十日(とほか)。

"皮剥(かはゝぎ)"、"喉黑(のどぐろ)"なども熟成(うら)す。
とりわけ、"眞梶木(まかじき)"は廿日(はつか)と云ふ長期間(ながさ)。
但(たゞ)し、
"(かに)"、"(かひ)"、"(えび)"は速(すみ)やかに用之(これをつか)ふ

どれもこれも、魂(たましひ)を消(け)すほどの旨(うま)さ
就中(わきても)、"喉黑(のどぐろ)"、"皮剥(かはゝぎ)"、"(しび)"は、
呆(あき)れ果(は)て、笑(わら)ふ餘(ほか)術(てだて)なし。
唯一(たゞひとつ)、"鶏卵燒(たまごやき)"の味(あぢはひ)は今一(いまひと)つ。

舎利(すめし)は、
小人(それがし)が嗜(この)みに秋毫(つゆ)異(こと)なるところなし
粒(つぶ)が立(た)ち、しかも舌(した)に滑(なめ)らか
飯切(はんぎり)に混合(あ)はせて大約(およそ)三十分(さんじつぷん)。

以爲(おも)ふに、輙(たやす)く席(せき)の取(と)れぬ
さいとう』、『喜邑』、『初音鮨』、『すぎたに拘泥(こだは)るより
當日(そのひ)に空席(あき)のある當家(こちら)が理想(よい)
鮨職人(すしゝよくにん)としての才能・力量(ちから)も稀有(まれにみるほど)

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
      高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 2/100 @F2

【2016-07-21記】:
當家(こちら)『豬股』が東道(あるじ)豬股健史(ゐのまたきよし)の、
初音鮨』を尊敬(うやま)ふこと、
宛然(あたかも)、虎兒(ことら)が母虎(はゝとら)を慕(した)ふがごとし。
小人(それがし)もまた、『初音』には一目(いちもく)二目(にもく)。

初音』を敬(うやま)ひつゝ
己(おのれ)固有(ならでは)の流儀(やりかた)を探求(さがしもと)めんとするは、
傍目(はため)にも明白(あきらか)。
實(げ)に、求道僧(みちをさがしもとむるもの)に異(こと)ならず。

實家(うまれたるいへ)が農業(こめづくりをなりはひとなす)にもかゝはらず
實家(うち)や近所(ちかく)の米(こめ)に飽(あ)き足(た)らず
彼此(をちこち)に好(よ)き鮓米(すしまひ)を求(もと)め、 
飯山(いひやま)の(こめ)へと到達(たどりつく)。

飯山産(いひやまさん)"こしひかり"。
信州(しなのゝくに)飯山(いひやま)は、
越後(ゑちごのくに)魚沼郡(うをぬまのこほり)と隣接(となりあふ)。
舎利(すめし)には"魚沼産(うをぬまさん)"より好適(よい)」と斷言(いふ)。

鶏卵(かひご)は、
陸州(むつのくに)津輕郡(つがるのこほり)鰺ヶ澤(あぢがさは)の地(ち)、
長谷川自然牧場(はせがはしぜんぼくじやう)のもの。
"鶏卵燒(たまごやき)"の顏色(いろ)は獨特(ほかになきもの)

(しび)のみならず、
白身(しろみ)の類(たぐひ)も熟成(うら)して用(つか)ふ。
白烏賊(しろいか)、すなはち劍先烏賊(けんさきいか)、
(すゞき)、星鰈(ほしがれひ)など、何(いづ)れも七日(なのか)ほど。

(ひらめ)、(かれひ)の類(たぐひ)は、
平均的(なみ)の鮓店(すしや)なら、寢(ね)かしてもせいぜい三日(みッか)
纖細(こまやか)なる烏賊(いか)への丁(はうちやう)は、
すし通』を髣髴(おもはす)。

とは云へ、『すし通』とも『初音』とも異質(こと)なる味(あぢはひ)。
今(いま)や熟成(うらし)の盛名(な)を擅(ほしいまゝ)にする『喜邑』:
小人(それがし)、
十年前(とゝせまへ)の陳腐(ありきたり)の烹調法(やりかた)を知(し)るのみ。

天離(あまさか)る鄙(ひな)の地(ち)で、
七百七十匁(なゝひやくなゝじふもんめ、=2.9kg)もの星鰈(ほしがれひ)、
最上質(いとよ)き利尻(りしり)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)を用(つか)ふは、
寔(まこと)、豬股親方(ゐのまたをやかた)が心意氣(こゝろいき)。

とは云へ、
鮨種(すしだね)の良(よ)し惡(あ)し、貴賤(たふとき・いやしき)は
成形技術(かたちづくるわざ)と舎利(すめし)に比較(くら)ぶれば、
些末(とるにたら)ぬこと。

上記(うへにしるせ)るごとく、
(こめ)は飯山産(いひやまさん)こしひかり。
三種(みくさ)の紅醋(あかず)を混合(あは)せ、
沙糖(さたう)に頼(たよ)らで、旨味(うまみ)を抽出(ひきいだす)

口(くち)に抛(はう)り込(こ)むや、
須臾(たちまち)解(ほぐ)れて、臼齒(おくば)に幾粒(いくつぶ)か留(とゞ)まる
瞬時(すぐさ)ま崩壊(ほど)けながらも、
口中(くちのなか)に殘(のこ)る米粒(こめつぶ)は舌(した)に滑(なめ)らか

一度(ひとたび)これを噛締(かみし)むるや、
瞬(またゝ)く中(うち)に咽喉(のみど)を通過(す)ぎて胃袋(いのふ)に、、。
鹽梅(しほとす)、温度(あたゝかさ)もも適切(ほどよ)く
これぞ、小人(それがし)庶幾(こひねが)ひてやまぬ舎利(すめし)そのもの。

とかみ』、『しみづの舎利(すめし)に肉薄(せま)る水準(たかみ)。
否(いな)、漫(みだり)に主張(いひはる)こともせで
能(よ)く、あらゆる鮨種(すしだね)にも調和(あ)はすことのかなふ
"最適解(よきおとしどころ)"やも知(し)れぬ。

村瀬』には半點(いさゝか)及(およ)ばぬにせよ、
手附(てつ)きに無駄(むだ)はなく、迅速(すばやく)・精確(あやまちなきかたち)
(よはひ)・春秋(つきひ)を重(かさ)ねれば、
即(すなはち)、いづれ神業(かみわざ)の域(いき)に到達(いた)らん。

扨(さて)、この日(ひ)の流(なが)れ:
白烏賊(しろいか)に始(まじ)まり、鶏卵燒(たまごやき)に終(を)はる、
握(にぎ)り十七(とあまりなゝつ)、手卷(てまき)一(ひとつ)、
卷物(まきもの)一(ひとつ)からなる構成(くみたて)。

(しび)が赤身(あかみ)と肥肉(あぶらみ)合計(あは)せて五(いつゝ)。
更(さら)に手卷(てまき)も、、。
蝦夷噴火灣(えぞふんかわん)二十六貫七百匁(=100kg)。
老舖(しにせ)"桶長(ひちやう)"よりの仕入(しいれ)。

これを過半(あらかた)醤油漬(しやうづ)けとなす。
夏場(なつば)としては、稀(まれ)に見(み)る美味(びみ)
敢(あ)へて"房州産(あは)"を避(さ)け、
"三陸産(さんりく)"を重用(おもん)ずと云ふ(あはび)も佳味(よきあぢ)。

"胡麻鯖(ごまさば)"は薄(うす)く三枚(さんまい)に引(ひ)き
これをずらし重(かさ)ねて用(つか)ふ
この技法(やりかた)の嚆矢濫觴(さきがけ)は、
六本木(ろつぽんぎ)『奈可久鈴木隆久親方(すゞきたかひさおやかた)。

眞鰺(まあぢ):
豫(あらかじ)め輕(かろ)く振(ふ)り鹽(じほ)を打(う)ち、
供(いだ)す直前(すぐまへ)に醋(す)に潛(くゞ)らす流儀(やりかた)。
この時季(じき)、しかも、薩州(さつまのくに)出水(いづみ)の産(もの)。

穴子(あなご)は吾(あ)が嗜好(このみ)に合(あ)はず。
東都(えど)の"煮穴子(にあなご)"と云ふより、
京坂(あちら)の"燒穴子(やきあなご)"のごとき食感(はごたへ・したざはり)。
皮(かは)近(ちか)くより漂(たゞよ)ふ臭氣(くさみ)は皆無(なし)。

(さけ)・味醂(みりん)の類(たぐひ)を用(つか)ふことなく、
芝蝦(しば)と薯蕷(いも)・甘蔗(たう)にて制作(こしら)へたる、鶏卵燒(たまご):
件(くだん)の鶏蛋(たまご)の濃厚(こ)き口味(あぢ)こそ顯著(あらは)なれど、
やはり、『うを徳』の鶏卵燒(たまご)が吉(よい)。

親方(おやかた)と、
やがて御内儀(おかみ)となる許嫁(いひなづけ)の呼吸(いき)も合(あ)ひ
寔(まこと)、心持(こゝち)よき限(かぎ)り
繁盛(さかえ)て欲(ほ)しくもあり、混雜(こみあ)ふは辛(つら)きところでもあり

東道(あるじ)曰(いへら)く、
一流店(なのあるみせ)で修業歴(わざをならひおぼえ)たる例(ためし)なし」と、、。
獨學(ひとりまな)びて祕技(ひめわざ)を會得(ゑとく)せしは、
木挽町(こびきちやう)『とゝや』など極纔(きわめてわづ)か。

押竝(おしな)めて、
この界隈(あたり)では、浦和(うらわ)『よし佳』を凌駕(しの)ぎ、
東都(えど)でも、『とかみ』、『あらゐ』と比肩(かたをなら)ぶるほど。
今(いま)や、『初音』にも肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :徠卡(Leica)Apo Summicron M 2/50 Asph. @F2

  • 豬股健史親方(ゐのまたきよしおやかた) 【掲載許可濟】
  • 蝦蛄(しやこ)
  • 雞卵焼(たまごやき)

もっと見る

3位

ラチュレ (表参道、渋谷、明治神宮前 / フレンチ)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2016/11訪問 2016/11/16

この度(たび)は 野鳥(のゝとり)喰(く)ひに 青山(あをきやま) 雌雉(めきじ)の錦(にしき) 膀胱内(ヴェシーのうち)に

「今(いま)向絶滅(たへな)んとする膀胱包(ヴェッシー、ばうくわう)づゝみ」
「庶幾(こひねが)はくは、一緒(とも)にこれを啖(くら)はん!」
とのありがたき誘(さそ)ひ。
「据膳(すゑぜん)喰(く)はねば肚(はら)が減(へ)る。」

瞬時(またゝくいとま)もあらで、快諾(よろこびいさみてこれをうけたまはる)。
その容(さま)、
草花(くさばな)の風(かぜ)に靡(なび)き、
猫(ねこ)が木天蓼(またゝび)に酩酊(ゑ)ふがごとし。

新派法國菜(しんぱフランスれうり)が旗頭(はたがしら)、
"ポール・ボキューズ"が"ブレス雞(どり)膀胱包(ばうくわうづゝ)み"は、
あまりに高名(なだかし)。
そも、"膀胱包(ばうくわうづゝ)み"は昔(いにしへ)より傳承(つたは)る技法(わざ)

往古(そのかみ)以來(よりこのかた)多用(おほくもちゐ)られ、
現代(いまの)"眞空調理(しんくうてうり)"へと連(つら)なる。
ラグビー蹴球(けまり)の球(たま)の歪(いびつ)なる縁由(ことのよし)、
偏(ひとへ)に豬(ぶた)膀胱(ばうくわう)の形状(かたち) に由來(よる)。

誘(さそ)ひ主(ぬし)と東道(あるじ)室田總主廚(むろたをやかた)とは、
舊知(ふるきなじみ)の間柄(あひだがら)。
吉野建親方(よしのたてるおやかた)の薫陶(をしへ・てほどき)を受(う)け、
古典法國菜(ふるきフランスれうり)に長(た)くるとの噂(うはさ)。

小人(それがし)、傳統(ふるきもの)を愛(め)づること、
宛然(あたかも)、
蝶(てふ)が花(はな)を戀(こ)ひ、
鰻(むなぎ)が坑(あな)に執着(とりすが)るに似(に)たり。

この日(ひ)の宴(うたげ)は、
アミューズに始(はじ)まり、前菜(オルドゥーヴル)、魚(ポアソン)、
肉(ヴィアンド)、菓子(デセール)なる構成(ながれ)。
但(たゞ)し、事情(わけ)ありて菓子(デセール)には到達(いた)らず。

最初(いやさき)に、
蘇格蘭産(スコットランドさん)雷鳥(らいてう、グルーズ)と
琉球産(りうきうさん)高麗雉(かうらいきじ、フェザ)の御披露目(おひろめ)。
桌子(つくゑ)には、狩獵(かり)にて殺害(あや)められし鳥(とり)二羽(には)。

詳細(つぶさ)にその顏色(かんばせ)を觀察(うかゞ)ふに、
海(うみ)よりも深甚(ふか)き遺恨(うらみ)を抱(いだ)き、
無念(むねん)極(きは)まりなき憤怒(いかり)の形相(ぎやうさう)。
、、と云ふは眞赤(まつか)な嘘僞(うそいつはり)。

さながら、
安(やす)らかに眠(ねむ)る童蒙(わらんべ)のごとし。
これを攝氏(せつし)五・六度(ごろくど)にて熟成(ねかしうらす)
雷鳥(らいてう)七日(なのか)、雉(きじ)十四日(とほかあまりよつか)。

前菜(オルドゥーヴル)?として、
"梭魚(かます)冷燻(れいくん)"に"パテ・アンクルト(パイ包み)"。
近會(ちかごろ)巷(ちまた)に跋扈(はびこ)るは、
"パテ"と詐稱(あざむ)き"パイ生地(きぢ)"用(つか)はぬ貨物(しろもの)。

當家(こちら)の"パテ・アンクルト(パイ包み)":
これぞ王道(わうのみち)」と賞賛(ほめたゝ)ふべき一品(ひとしな)。
倩(つらつら)その内容(なかみ)を窺(うかゞ)ふに、
鹿肉(かのしゝ)、野豬肉(ゐのしゝ)、熊肉(くまのしゝ)、鵝肝(フォアグラ)、、。

およそ(かます)と云ふは水氣(みづけ)多(おほ)き魚(うを)なれば、
開(ひら)きて鹽(しほ)して乾(ほ)すが慣習(ならひ)。
鮓店(すしや)なれば"棒鮓(ぼうずし)"と做(な)すが通常(つね)。
當家(こちら)、鹽(しほ)したる後(のち)、冷燻(れいくん)を施(ほどこ)す。

その身(み)は柔(やは)らかく、適度(ほどよ)き水氣(みづけ)を保持(たもつ)
實言(まこと)、拔群(ひとにひいで)たる火入(ひい)れ
ソースの美(うつ)しさも特筆大書(おほいにかきしるす)べきもの。
翡翠(ひすい)かと疑(うたが)はれ、マーブル紙(し)と錯覺(みまがふ)。

"(ポアソン)"はと覽(み)るに、
傳統(いにしへよりつたは)る"ソール・ボン・ファム(したびらめ)"。
由緒(すぢめ)正(たゞ)しき法國魚料理(フランスうをれうり、ポアソン)。
纔(わづ)かながらも鹹(しほから)く、白葡萄酒(さけ)以(も)て漱(くちすゝ)ぐ。

扨(さて)、お次(つぎ)に控(ひか)へし"膀胱包(ばうくわうづゝ)み":
調理前(てうりまへ)の"あの惡臭(にほひ)"に首傾(くびかしぐ)るも、
膀胱(ばうくわう)を切開(きりひら)くや豹變(にはかにさまがはり)。
須臾(たちまち)周邊(あたり)に漂流(たゞよ)ふ妖(あや)しき馨(かをり)

實(げ)に、
惡臭(あしきかをり)と芳香(かぐはしきかをり)は紙一重(かみひとへ)。
就中(わきても)、松露(せうろ、トリュフ)がその證左(あかし)。
桌上(つくゑのうへ)には、分割(とりわけ)濟(ずみ)の銘々皿(めいめいざら)。

僕(やつかれ)、(きじ、フェザ)・雷鳥(らいてう、グルーズ)とも、
口(くち)にするは此度(こだみ)でこれが二度目(にどめ)。
とは云へ、高麗雉(かうらいきじ)は初(はじめて)。
それも(めす)。

雌(めす)の食味(あぢ)は雄(をす)に優(まさ)る。」
とは、御招(おんまね)き頂(いたゞ)きたる方(かた)の説(はなし)。
欝血(ちがたま)りて二週間(にしうかん)の長(なが)きに亙(わた)れど、
その身(み)は想定外(おもひのほか)に白(しろ)く、臭氣(くさみ)もなし

かくて、
只顧(ひたすら)、手羽肉(てば)を喰(く)らひ、腿肉(もゝ)を貪(むさぼ)る。
その容(さま)、惡鬼羅刹(あつきらせつ)に異(こと)ならず。
(にく)のみならず、(かは)の美味(うま)さも一入(ひとしほ)。

慥(たしか)に、雷鳥(らいてう)には臭氣(くさみ)と苦味(にがみ)が伴(ともな)ふ。
然(しか)はあれど、
エスポワールにて閉口(くちをとざ)したるほどの惡臭(あしきかをり)にあらず
然(さ)れば、瞬(またゝ)く中(うち)に皿(さら)は空(から)と化(な)る。

膀胱(ばうくわう)と雷鳥(らいてう)と云ふ惡臭(あしきかをり)の共演(きそひあひ)
實(げ)に、「毒(どく)以(も)て毒(どく)を制(せい)す。」
元來(もとより)、癖(くせ)のある馨(かをり)は嗜(この)むところ。
"くさや"、"臭豆腐(しうどうふ)"、何(いづ)れも同様(しかり)。

故(ゆゑ)ありて、菓子(デセール)を前(まへ)に辭別(いとまごひ)。
女洋菓子職人(パティシエール)の技藝(わざ)を見逃(みのが)したるは、
僕(やつかれ)一世一代(いつせいちだい)の大不覺(だいふかく)。
この女職人(パティシエール)「手煆煉(てだれ)」との評判(うはさ)あり。

桌子(つくゑ)には純白(まし)き亞麻布(リネン)の桌布(テーブルクロス)。
亞麻布(あまぬの)の餐巾(ナプキン)に加(くは)へ、御絞(おしぼ)りまで、、。
麪麭(ぱん)を手掴(てづか)みする洋食(やうしよく)でこそ
御絞(おしぼ)りは不可缺(かくべからざるもの)

そも、眞白(ましろ)き亞麻布(リンネル)は裝飾(かざり)にあらず
周圍(まはり)を柔(やは)らかに照(て)らし返(かへ)す效果(きゝめ)あり。
鮓店(すしや)の(ひのき)もこれに同(おな)じ。
高脚杯(ぐらす)も(さら)も、菜(れうり)を活(い)かす上質品(よきもの)

白瓷器(はくじ)若(も)しくは玻璃(がらす)の碟(さら)にソースを垂(た)らし、
小賢(こざか)しき繪畫(ゑ)を描(ゑが)く近會(ちかごろ)の作法(やりかた)とは、
雲壤(くもとつちほど)の相違(たがひ)
漫(みだり)に賓(ひと)の眼(め)を欺(あざむ)くは廚師(いたまへ)に非(あら)ず

當家(こちら)、かゝる小手先(こてさき)の技藝(わざ)とは無縁(ゆかりなし)
肉用(にくやう)餐刀(ナイフ)の利(するど)さ、使(つか)ひ易(やす)さ
適切(たゞし)き碟(さら)の温度(あたゝかさ)
悉(ことごと)く、小人(それがし)が琴線(こゝろ)に觸(ふ)れて止(や)むことなし。

金屬洋食器(カトラリ)の設置法(おきかた)は英國式(エゲレスしき)。
仰向(あふむ)けとし刻印(こくいん)を表(おもて)となすは、
當家(こちら)老板(あるじ)固有(ならでは)の創意工夫(やりかた)にて、
師匠(おやかた)は法國式(フランスしき)」とのよし。

野獸(のゝけだもの)、野鳥(のゝとり)を扱(あつ)ひながらも、
突(つ)き進(すゝ)むは正統(せいとう)にして王道(わうだう)。
(れうり)、(うつは)、金屬洋食器(カトラリ)、接客(もてなしぶり)、
何(いづ)れも然(しか)り。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4

  • 老板(あるじ)室田總主廚(むろたおやかた) 【掲載許可濟】
  • 琉球産(りうきう)雌高麗雉(めすかうらいきじ)、兜(かぶと)
  • パテ・アンクルト(パイ包み)

もっと見る

4位

Bien (春日部、八木崎 / ビストロ、フレンチ)

43回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 3.8
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥2,000~¥2,999

2023/03訪問 2023/03/15

"番紅花(サフラン)"の 風韻(かをり)漂(たゞよ)ふ "西班牙大鍋飯(このめし)"を 殽(さかな)に蜷局(とぐろ) 醉客(たゞゑふひとなり)

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)APO-LANTAR 2/50 @F2.6~F4
     福倫達(Voigtländer)SUPER WIDE-HELIAR 4.5/15 ASPH. III @F11
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03
此度(こだみ)の"午套餐(ひるのきまりめし)"は、
"西班牙大鍋飯(パエージャ、イスハニアのなべだきめし)"。
"葡萄酒(えびかづらのみのさけ)"と"芒果雪葩(マンゴ・ソルベ)"を加(くは)へ、
對價(あたひ)、二千三百十圓也(にせんさんびやくじふゑんなり)。

"(えび)"、"蛤仔(あさり)"とも、二種(ふたくさ)、
輒(すなは)ち、剥身(むきみ)と(から)の附着(つ)きたるもの用(つか)ふは、
武井師傅(たけゐおやかた)が智慧(ちゑ、かしこきところ)。
"番紅花(サフラン)"の風韻(かをり)吉(よき)は勿論(いふもさらなり)。

"雞翅(とりのてばにく)"、"(えび)"、"蛤仔(あさり)"、
どれも高貴(ねのたかき)ものには非(あらざ)れど、"火候(ひいれ)"は巧妙(たくみ)。
"(えび)"の上漿(したあぢ)など、
"中國菜(あ)"の廚藝(わざ)を用(つか)ふでもなくこの食感(はごたへ・したざはり)

そも、"小鰕仁(ちいさなるむきえび)"なる貨物(しろもの)、
"冷凍物(かたくいてつきたるもの)"と雖(いへど)も、
あそこ』の"これ"とか、『この肆(いちくら)』の"これ"とか、『こちら』の"これ"など、
想定外(おもひのほか)の佳味(よきあぢ)」と云ふも稀(まれ)ならず。

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtlaender)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2~F5.6
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03
粕壁(みゝよきまち)で午餔(ひる)となると、
寶來家』か『Bien』となるが「世界標準(よのならひ)」と云ふもの。 ※←イツモノウソ
暫(しばら)く前(まへ)、『寶來家』にて"韭菜豬肝(あれ)"に"啤酒(これ)"、
、、、と相成(あひな)れど、新規(あらた)に記(しる)すべきことも皆無(なし)

東口(ひがしぐち)『タパス』も、
書(か)くべきか、將又(はたまた)、書(か)くべきに非(あら)ざる歟(か)?
沈吟(うちあん)ずるばかりで、一向(すこしも)筆(ふで)が進(すゝ)まぬ
で、當家(こちら)『Bien』:

あれだけ寂(さび)れ、"(みつ)"と無緣(ゆかりな)き當家(こちら)なれど、
前囘(まへ)も今囘(こだみ)も、畧(ほゞ)滿席(あきなし)
いやはや、何(なん)とも怪訝(いぶかしきかぎり)。
大地震(おほなゐ)など災禍(わざはひ)の前象(しらせ)歟(か)? ※←コレモウソデス

當日(このひ)は、
"農夫雞(プーレ・ペイザンヌ、にはとりにくゐなかふうにこみ)"。
"葡萄酒(えびかづらのさけ)"と"黃油(バタ)"、"冰酪(あいすくりん)"を併(あは)せ、
對價(あたひ)、二千三百十圓也(にせんさんびやくじふゑんなり)。

二年前(ふたとせまへ)にも"農夫雞(これ)"を噉(くら)ひし例(ためし)あり。
今囘(いま)は無皮(かはなし)、前囘(まへ)は皮附(かはつき)。
愚按(IMHO、やつがれおもふに)、
(とり)も(ぶた)も、皮附(かはつき)・骨附(ほねつき)が究極理想(なにより)。

無皮(かはのなき)"魚(うを)"を嗜好(この)む民衆(たみ)は稀有(まれ)
然(しか)るに、"(へび)"・"(かいる)"、
況(ま)して有皮(かはつき)の"蛇蛙(へびかへる)"を好(この)む食通(かた)は、
宛然(あたかも)、「海底撈針(うみのそこにはりをすくふがごとくまれ)」。

皮(かは)の不可食(くへぬ)は、
"(さめ)"に"剝皮魚(かはゝぎ)"、"長命寺(ちやうめいじ)のさくらもち"。
あとは、"春の小川(はるのをがは)"に"アマゾン河(がは)"くらゐのもの。
ま、菟(と)にも角(かく)にも、"冰酪(あいすくりん)"にて〆(しめ)。

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtlaender)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2~F2.8
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03
全身(いたるところ老朽化(ガタがきてを)り、藥漬(くすりづけ)の老骨(このみ)。
だが、僥倖(さいはひ)にも、(みゝ)・(はな)・咽喉(のど)の健常(よき)は、
これ偏(ひとへ)に、"粕壁浦舟大明神(あのかた)"の御利益(おかげ)なるべし。
嗚呼(あゝ)!

と云ふ次第(わけ)でまたも粕壁宿(かすかべじゆく)に、、。
當日(このひ)は『Bien』。
"午套餐(ひるのきまりめし)"は"匈牙利燉牛頬(うしのほゝにくハンガリアに)"。
"(しる)"、"麪麭(パン)"、"小菜碟兒(こざら)"、"甜品(あまみ)"附屬(つき)。

通例(つね)の若(ごと)く、
"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)"、"黃油(バタ)"、"冰酪(あいすくりん)"、
の三品(みしな)を追加(つけ)てもらひ、
對價(あたひ)、二千四百二十圓也(にせんしひやくにじふゑんなり)。

"小菜碟兒(こざら)"は"胡蘿蔔絲(キャロット・ラベ)"。
その内(なか)にはかの"モッツァレッラ"の粒(つぶ)も散見(ちらりほらり)。
"蕈菇湯(きのこじる)"には、
"牛肝菌(やまどりだけ、セップ)"も用(つか)はれ、佳味(なかなかによきあぢ)。

で、"匈牙利燉牛頬(うしほゝにくハンガリアに)":
"牛肉(うしのにく)"、當日(このひ)は"牛頬肉(うしのほゝにく)"を、
"蕃茄(あかなす)"、"燈籠椒(パプリカ)"、"蔥頭(たまねぎ)"、などゝ燉(にこ)む、
"匈牙利風(ハンガリアふう)"の"(あつもの)"。

"土芋(じやがたらいも)"に"燻肉(ベイコン)"の姿(すがた)も、、。
"武井師傅(たけゐおやかた)"得手(えて)とする素朴(きどら)ぬ"羹(あつもの)"
その他(ほか)は、常態(つね)に一無變化(つゆことなるところなし)。
偉大(おほい)なる×王八蛋〇定型(ひとつのかた)」、と云ふべき歟(か)?

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtlaender)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2~F5.6
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03
今宵(こよひ)から明日未明(あすのあかとき)まで、
"雙子座流星群(あめのごとくふりそゝぐ、ふたござのながれぼし)"でも觀測(み)ばやと、
いろはに星(ほし)より、涎(よだれ)そ滴(したゝ)る午餔(ひるのめし)
と云ふ仔細(わけ)で、久々(ひさびさ)當家(こちら)『Bien』に遠征(あしをはこぶ)。

"菜譜(こんだて)"ゟ(より)"套餐(きまりめし)"、
"紅葡萄酒燉五花肉鹹鯷風味(ぶたばらワインにこみしほづけいはしのかをり)"に、
"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)"、"黃油(バタ)"、"冰酪(あいすくりん)"、
對價(あたひ)、二千三百十圓也(にせんさんびやくじふゑんなり)。

"五花肉(ぶたのばらにく)"を紅葡萄酒燉(あかきえびかづらのさけにてにこ)むは、
旣知(すでにしられ)たる烹飪法(やりかた)なれど、
"鯷魚(かたくいはし)"の"(うをびしほ)"にて風味(あぢをかをり)を附加(くはふ)
武井師傅(たけゐおやかた)が創案(あらたにあみいだせしもの)」とか。

當日(このひ)の"(しる)"は、
本格的(まとも)な"鷄湯(フォン・ド・ヴォライユ)"、、と想像(おも)ひきや、
手輕(てがる)に雞(にはとり)と蔬菜(あをもの)ゟ(より)抽出(ひき)たるもの
と、「爲遣(してや)つたり!」とばかりに北叟笑(ほくそゑ)む。

"醋醃胡蘿蔔(せりにんじんすづけ、キャロット・ラペ)"には、
林檎(りんご)と蕃茄(あかなす)。
足(た)すべきところは足(た)し、引(ひ)くべきところは引(ひ)く
と云ふが、"武井良明師傅(たけゐおやかた)"特有(ならでは)の流儀(やりかた)。

有左程(さるほど)に、
"カルピス黃油(バタ)"は常態(つね)のことながら、
試供品(おためし)として"意大利産黃油(イタリのバタ)"も二缺片(ふたかけら)。
その大名(なのおほきさたるや)、「如雷貫耳(いかづちがみゝをつらぬくがごとし)」

"oさま✨.:*゚:.。:."ゟ(より)再三再四(いくたび)も聞(き)かされ、
妄想(みだらなるおもひ)が膨脹(ふくら)み
鼻竅(はなのあな)にはその幻香(まぼろしのかをり)が殘存(のこる)ほど。
吟味之(これをあぢはふ)に、"カルピス黃油(バタ)"との差異(さ)は纔(わづ)か。

これ、老骨(それがし)が、
嗅覺異常(はなのあやまり)and/or味覺異常(したのあやまり)歟(か)?
無論如何(どちらにせよ)、
雙方(どちら)も最上質(いとよきもの)なるは「明若觀火(ひをみるよりもあきらか)」

"冰酪(あいすくりん)"として選擇(えら)みし"芒果雪葩(マンゴ・ソルベ)":
こちらは拂郎西察(おふらんす)の逸品(すぐれもの)。
通常(つね)に不變(かはら)ぬ華美(よきあぢ)
いやはや、「酒足飯飽(ごちさうさまに厶(ござ)つた)!」

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F5.6
     高千穗光學(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 2/21 @F5.6 ※雙子座流星群
三ヶ月(みつき)ぶりの『Bien』。
當日(このひ)の主菜(おもなるうけ)は、
かのアルザス=ロレーヌ(=エルザス-ロートリンゲン)の鄕土菜(ゐなかめし)、
"Baeckeoffe(ベッコフ、にくじやがのたぐひ)"。

"麪麭(パン)"が拂郎西察(おふらんす)"BRIDOR(ブリドール)"のものに變化(な)り、
"冰酪(あいすくりん)"も待望(まちかねた)る復活(よみがへり)
食後(めしのあと)は"(ちや)"が習俗(つねのならひ)なりしが、
これ拔(ぬ)きとなると、この"冰酪(あいす)"、"(あまさ)"が顯著(きはだつ)。

やはり、"焙麥餠(パン)"には"葡萄酒(えびかづらのさけ)"、
"餜子(あまきもの)"には"(ちや)"、と云ふが、
"(つがひ)"・"女夫(めをと)"のごとき難分(わかちがた)き配搭(くみあはせ)
輒(すなは)ち、「比翼連理(ひよくれんり)」、「偕老同穴(かいらうどうけつ)」。

當日(このひ)は常態(つね)に無(な)く大盛況(おほいにゝぎはひ)
門前如市(ひとあふれて、まちびとうまるゝほど)」。
かくて、迅速(そゝくさ)と辭別(いとまをごふ)。
"郭嘉(くわくか)"パイセン曰(いは)く、「兵貴神速(いくさはすばやきをたつとぶ)」

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F2.8
七月十七日(金)ゟ(より)商賣再開(ふたゝびのみせびらき)
但(たゞ)し、盆(ぼん)に載(の)る"套餐(きまりめし)"のみと云ふ形式(かたち)。
當日(このひ)は"白葡萄酒煮牛頬肉(うしほゝにくのしろぶだうしゆにこみ)"。
何(なん)でも「ニース風(ふう)」との説明(よし)。

"眞空管増幅器(しんくうくわんアンプ)"が壞(こは)れ、
食器(うつは)も無機質・簡素化(いろけなきものに)、、。
"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)"と"黃油(バタ)"を追加(くは)へ、
對價(あたひ)、一九百八十圓也(いつせんはつぴやくはちじふゑんなり)。

いかにも朱明(なつ)に相應(ふさは)しき"豌豆涼湯(ひやしのらまめじる)"。
鮮美(よきあぢ)!
"白葡萄酒煮牛頬肉(うしほゝにくのしろぶだうしゆにこみ)"、亦(また)、然(しかり)。
この"顏色(いろみ)"、蓋(けだ)し"蕃茄(あかなす)"由來(によるもの)歟(か)?

有左程(さるほど)に、
食後(めしのあと)の〆に"冰酪(あいすくりん)"無(な)きは、
眞言(まこと)、口寂(くちさび)しきもの。
落(おち)無(な)き落語(らくご)、續編(つゞき)無(な)き"Doctor-●(あれ)"。

取急(とりいそ)ぎ、告知(おんしらせ)まで。
※當面(しばらくは)、
 ・金、土、日の晝食のみ
 ・一種類のランチプレートのみ

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F5.6
     旭光學 賓得(Pentax)S-M-C 微距琢磨(Macro Takumar)4/50 @F5.6
掉尾(いやはて)の粕壁(かすかべ)『Bien』。
閉店(みせじまひ)は、三月末(さんがつすゑ)→四月十日(しがつとほか)に、、。
同(おな)じ屋號(な)で
 神田神保町(かんだじんぼうちやう)へと移轉(うつるべし)」との情報(よし)。

「櫛齒(くしのは)の毀(こぼ)るゝが如(ごと)く」とは正(まさ)にこのこと。
僕(やつがれ)相知(なじみ)の肆(みせ)が、一軒(ひとつ)、また一軒(ひとつ)。
「またにたま」。
"また"に一箇(ひとつ)は爆笑問題田中(このおかた)。

"また"に两箇(ふたつ)の●●滿堂莫之能守(▲んぎ▲▲まんだうよくまもるなし)。
"また"に一杯(いつぱい)、信樂燒(しがらきやき)。
「一杯一杯復一杯(いつぱいゝつぱいまたいつぱい)©李白ぱいせん」
玻瓈(ビイドロ)の 器(うつは)に一杯(いつぱい) "赤葡萄酒(えびかづらのさけ)"。

、、と云ふ次第(わけ)にて、
"香腸(サルシッチャ)"+"赤葡萄酒(えびかづらのさけ)"+"冰酪(あいすくりん)"、
〆に"意太利咖啡(エスプレッソ)"。
對價(あたひ)、三千八十圓也(さんぜんはちじふゑんなり)。

主菜(しゆさい)の一皿(ひとさら)"香腸(サルシッチャ)":
今更(いまさら)言(い)ふも憚(はゞか)るが、
それにしちャ、滿更(まんざら)でもなき味(あぢはひ)。
舌鼓(したつゞみ)からの腹鼓(はらつゞみ)、婆娑羅(ばさら)で辭去(さらば)。

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 賓得(Pentax) S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8~F4
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
●●町(▲▲▲▲▲▲▲ちやう)移轉(いてん)の如何(いかん)を問(と)はで
三月一杯(さんがついつぱい)を以て廢業閉店(あきなひをやめてみせじまひ)」。
此度(こだみ)は"トゥールーズ風カスレ"に"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)"、
對價(あたひ)、三千三百円也(さんぜんさんびやくゑんなり)。

通例(つね)のごとき琺瑯鍋(はふらうなべ)。
"カスレ"には種々(さまざま)あれど、「"トゥールーズ風(ふう)"」との由(こと)。
"緬羊肉(らしやめん)"、"油煮鳧(かものコンフィ)"、"五花肉(ぶたばらにく)"、
"香膓(ちやうづめ)"、"白腰豆(しろいんげんまめ)"、からなるξ(ぐざい)。

「"カスレ"專用(せんやう)」と云ふ"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)":
Cooper's』ほどではないにせよ、
高脚盞(ビイドロのうつは)には適度(ほどよ)き大(おほ)きさもあり、
能(よ)く優雅(みやび)なる風味(あぢかをり)を輔(たす)く

これを一口(ひとくち)飮(や)り、
上記(くだん)の四色(よいろ)の禽獸肉(とりけだものゝしゝ)を齧(かぢ)るに、
各(それぞれ)の個性(もちあぢ)を保持(たもち)つゝ、
"(あつもの)"としてこの"南蠻渡來酒(なんばんわたりりのさけ)"に調和(つりあふ)。

武井師傅(たけゐおやかた)の"(あつもの)"もさることながら、
心殘(こゝろのこ)りは拂郎西察(おふらんす)舶來(わたり)の"冰酪(あいすくりん)"。
こればかりは、何國(いづく)の如何(いか)なるものより華美(よきあぢ)ゆゑ、
今后(これよりのち)、難儀(こまる)、絡(から)まる、跽(かしこまる)。

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:高千穗光學(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-微距(Macro)2/50 @F2.8



久方(ひさかた)ぶりの『Bien』。
移轉話(よそにうつるはなし)が二轉三轉(こちらがまろびて、あちらにかはり)
暫(しばらく)は當地(このち)にての商賣(あきなひ)
而(しか)して、捲土重來(きたるべきひにまきまへしをねらふ)。

此度(こだみ)は、
"焗烤牡蠣(かきグラタン)"+"桃色葡萄酒(もゝいろのえびかづらのさけ)"、
甜點(あまみ)として、"冰酪(あいすくりん)"、
對價(あたひ)、二千五百三十圓也(にせんごひやくさんじふゑんなり)。

"焗烤牡蠣(かきグラタン)"には二色(ふたいろ)の"乾酪(チーズ、かんらく)"。
その内(うち)の一種(ひとつ)が"靑黴乾酪(あをかびのかんらく)"。
扨(さて)、"鮮蠔(なまがき)"←→"靑黴乾酪(あをかびのかんらく)":
その相性(あひしやう)や如何(いか)に?

およそ、"鮮蠔(なまがき)"なるもの、
上質(よき)ものは、"檸檬(レモン)"・"ぽん醋(す)"で啖(くら)ふに限(かぎ)る。
"鮮蠔(なまがき)"に檸檬(レモン)、
新垣結衣(あらがきゆいチャン)×ピチレモンニコラ

澀柹(しぶがき)、駕籠舁(かごかき)、靴磨(くつみがき)。
駕籠舁(かごかき)に鞜(くつ)不要(いらず)。
箱根山(はこねやま)の雲助(くもすけ)草鞋履(わらぢばき)。
筑波山(つくばのやま)四六蝦蟇(しろくのがま)は四面鏡張(かゞみばり)。

己(おのれ)の醜姿(みにくきすがた)に垂(た)らす蝦蟇(がま)の膩汗(あぶらあせ)。
さすがに"蝦蟇膏(がまのあぶら)"は斷念(あきら)め、
"鮮蠔(なまがき)"の次點(つぎ)に"油炸鮮蠔(かきのあぶらあげ)"、
"法式焗菜(グラタン)"はその下(した)、と云ふのが卑見(それがしがみかた)。

"法式焗烤(グラタン)"に用(つか)ふ"乾酪(かんらく)"としては、
沒個性(くせのなき)ものが適當(よ)く
"靑黴乾酪(あをかびのかんらく)"の匂(にほひ)は、
"鮮蠔(なまがき)"の"それ"と衝突(ぶつかりあ)ひて不融合(とけあふことなし)

宛然(あたかも)、
虎(とら)に草(くさ)、象(ざう)に雞(にはとり)を給餌(あたふる)がごとし。
やはり、虎(とら)には雞(にはとり)、象(ざう)には草(くさ)が適合(よい)。
"鮮蠔(なまがき)"の配搭調劑(とりあはせ・あぢつけ)は"葷(なまぐさ)"なるべからず

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 賓得(Pentax) S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
新規事業(あらたなるあきなひ)の状況(いま)を薀(たづ)ねんと『Bien』に、、。
「"K澄S河(けいすみえすかは)"へは來年(きたるとし)。」
「なれど、正式契約(はんをつく)には未到達(いまだいたらず)。」
との説明(はなし)。

此度(こだみ)は、"農夫雞(プーレ・ペイザンヌ、≒にはとりにくのゐなかふう)"。
"甘味(デセール)"として"桃雪葩(もゝのソルベ)"を選擇(えらむ)。
"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、
對價(あたひ)、二千一百六十圓也(にせんいつぴやくろくじふゑんなり)。

"農夫雞(プーレ・ペイザンヌ、≒にはとりにくのゐなかふう)"には、
"烤雞肉(あぶりたるにはとりにく)"に、"瓜哇芋(じやがたらいも)"のほか、
椎蕈(しひたけ)、洋蔥(たまねぎ)、煙肉(ベイコン)、胡蘿蔔(せりにんじん)、
山毛欅濕地茸(ぶなしめぢ)、と、多士濟々(いろとりどり)

(とり)も種々雜多(とりどり)、自由選擇(よりどりみどり)。
似鳥(にとり)、服部(はつとり)、本名(な)は染谷(そめや)。
目脂(めやに)、松脂(まつやに)、三流大學(すべりどめ)。
四脚(よつあし)を、嫌(きら)ふ關取(せきとり)二本脚(にほんあし)。

雞皮(とりかは)は"脆皮燒肉(あれ)"の若(ごと)く、
嫩(やはらか)き雞肉(み)は乙女(をとめ)の耳朶(みゝたぶ)を髣髴(おもは)す。
蔬菜(あをもの)、蕈菇(きのこ)の等類(たぐひ)は、
燉(にこま)れて口味(あぢ)が滲(し)み、實(げ)に優(やさ)しき味(あぢはひ)

"桃雪葩(もゝのソルベ)"は初(はじめて)。
やはり、"芒果雪葩(まんごソルベ)"か"ヴァニラ冰酪(あいすくりん)"が吉(よい)。
"紅茶(こうちや)"はと吟味(み)るに、
茶葉(は)から推定(し)て、"大吉嶺茶(ダージリン)"とは異(こと)なるもの歟(か)?

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
二度三度(ふたゝびみたび)と臨時休業(ときならぬやすみ)に遭遇(あ)ひ、
この日(ひ)、久方(ひさかた)ぶりの兒(こ)"蒲池(かまち)"に"はまち"。
菜單(しながき)に"わらさ"もあれど、
何(なに)を喰(く)ふかと、沈吟(しあん)しどころ、此處(こゝ)『Bien』。

「茲(こゝ)は車渠(ほたて)の兒(こ)にすべし!」とて、
"小車渠(ちいさなほたてがひ)と蔬菜(あをもの)ゝ蕃茄烹(あかなすじたて)"に、
"白葡萄酒(しろきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、
對價(あたひ)、一千八百九十圓也(いつせんはつぴやくきふじふゑんなり)。

赤色(あかきいろ)の琺瑯鍋(はふらうなべ)には、
"小車渠(ちいさなほたてがひ)"のほか、
"胡蘿蔔(せりにんじん)"、"蘿蔔(おほね)"、"西蘭花(はなめやさい)"、など。
その口味(あぢはひ)、生平(つね)に無所相違(つゆことなるところなし)

愈々(いよいよ)、翌月(あくるつき)には閉店(みせをしめ)
花(はな)の東都(おえど)の根津(ねづ)、or、門前仲町(もんなか)に、、。
おめおめ當地(このち)に囘歸(もどる)まじ!」との決意(はら)。
あと一~二度(ひとたび、ないし、ふたゝび)訪問(あしをはこぶ)ことになる歟(か)?

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
此度(こだみ)は、
"紅酒燉牛肉ブッフ・ブルギニオン、うしにくあかきえびかづらのさけにこみ)"。
法國(おふらんす)ブルゴーニュ名菜(なだがきめし)なるは勿論(いふもさらなり)。
肉(にく)の部位(ぶい)は風習(ならひ)の(ほゝ)。

"薔薇(むはら)"歟(か)?、"糖酒葡萄乾(さけづけのほしえびかづら)"歟(か)?
冰酪(あいすくりん)として"糖酒葡萄乾(ラム・レザン)"を選擇(えらむ)み、
"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)"を加(くは)へ、
對價(あたひ)、三千四百五十六圓也(さんぜんしひやくごじふろくゑんなり)。

"糖酒葡萄乾(ラム・レザン)"とは、
葡萄乾(ほしえびかづら)を廢糖酒(さたうきびしぼりかすざけ)に漬(つ)け、
これを冰酪(あいすくりん)として製(こしら)へたるもの。
珍(めづら)しき白葡萄(しろきえびかづら)。

劈頭(いやさき)に"紅酒燉牛肉(ブッフ・ブルギニオン)":
不硬(かたからず)
さりとて、徒(いたづら)に嫩(やはらかき)に走(はし)ることなき火候(ひいれ)。
醢醯(しほけとすみ)亦(また)適切(ほどよし)。

金屬洋食器(かとらり)は法蘭西(おふらんす)"Christofle"牌(じるし)。
叉子(にくさし)に抑(おさ)へ、餐刀(めしがたな)以て截(き)り、
赤葡萄酒(あかきえびかづらざけ)の醬汁(たれ)は湯匙(ちりれんげ)に拯(すく)ふ。
佳味(よきあぢ)、佳味(よきあぢ)!

"糖酒葡萄乾(ラム・レザン)"の"冰酪(あいすくりん)"なるもの、
當家(こちら)では初(はじめて)。
襃(ほ)めて、搦手(からめて)、×惡口雜言〇美辭麗句(ことば)責(ぜ)め。
責(せめ)て怡(よろこ)ぶ薩德侯爵(さどこうしやく)。

〽荒海(あらうみ)や、佐渡(さど)に飛翔(とびか)ふ朱鷺(とき)の聲(こゑ)。
〽あら巧(うま)や、薩德(さど)の欣喜雀躍(よろこ)ぶ(むち)の音(おと)。
、、と云ふは眞赤(まつか)な虚文(うそ)・戲(たはふれ) にて、
〽あら旨(うま)や、師傅(おやかた)烹飪(つく)る(なべ)の味(あぢ)。

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
古稀(こき)過(す)ぎて、なほ、煩惱(なやみ)多(おほ)き老骨(わがみ)
此度(こだみ)は、"咖哩飯(かりィめし)"を選擇(えらむ)ことに、、。
別料金(おひぜに)して、"冰酪(あいすくりん)"を二種(ふたいろ)にして貰(もら)ひ、
對價(あたひ)、一千二百九十六圓也(いつせんにひやくきふじふろくゑんなり)。

最初(いやさき)に、
盌(まり)の咖哩(かりィ)を米飯(こめのいひ)に#BCMKR! ©ドクシマぱいせん
と、忽地(たちまち)、咖哩飯(かりィめし)へと變貌(かはる)ぞめでたし! 
徐(おもぶる)に匕(さじ)以(も)て拯之(これをすく)ひ、一口(ひとくち)。

平生(つね)に無處相違(ことなるところなし)
落膽(きおち)するでもなく、感歎(ためいきもらす)譯(わけ)でもなく、、。
武井師傅(たけゐおやかた)、
やはり"咖哩(かりィ)"より"煮込(にこみ)"が得意(えて)歟(か)?

冰酪(あいすくりん)二種(ふたいろ)は、
"ヴァニラ冰酪(あいすくりん)"に"芒果雪葩(まんごそるべ)"。
これも亦(また)、平生(つね)に無處相違(つゆとたがふところなし)
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)、アローカナ

假名(かな)の濫觴(はじまり)は眞名(まな)=漢字(もろこしのもじ)。
漢字(もろこしのもじ)にて記(しる)されたる"萬葉假名(まんゑふがな)"。
「""んやふが""」→「まな」 ※許譌(うそ) 、虚文(うそ) 、大虚談(おほうそ)、
一匹(いつぴき)欲(ほ)しいな小爪獺(こつめかはうそ)。

葡萄酒玻璃盞(えびかづらのさけをいるゝびいどろのうつは):
その内容(なかみ)は冷水(つめたきみづ)。
玻璃(びいどろ)の表面(おもて)に水滴(しづく)が附着(つ)き、
水温(みずぬる)み、軈(やが)て、大(おほ)きくなりゆく容(さま)、「いとをかし」。

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8~F4
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
"野豬(くさゐなぎ)":
當家(こちら)で野禽獸(のにすむとりけだもの)とは稀有(まれ)な事象(こと)。
周知(あまねくしら)るゝごとく、
"ゐのしゝ"とは「"豬()"の"肉(しゝ)"」にて、""とはその鳴聲(なきごゑ)と云ふ。

大和言葉(やまとことば)には一音(ひとつのおと)多(おほ)し。
例示(ためしにあぐる)なら、""、""、"、""、"、"海鼠"は孰(いづれ)も""。
愚老(やつがれ)が淺學(さるぢゑ)では、その理(ことわり)不詳(つまびらかならず)
""も""も、ともに""と發音(くちよりおとにしていだす)。

"表記法Notation、かきしるしかた)":
天竺(てんじく)發明(あみいだせ)し"位取記數法(くらゐどりきすうはう)"、
"洋式算術記號(やうしきさんじゆつきがう)"、そして、"漢字(もろこしもじ)"。
悉(ことごと)く學問進歩(ちゑとまなびのあゆみ)に不可缺(かくべからざるもの)

そも、諸學(もろもろのちゑ)、萬(よろづ)食物(くちにするもの)、
夏華(もろこし)の恩惠(めぐみ)に無關係(かゝはらざる)は稀(まれ)
無震旦(もろこしなくして)、無東瀛(ひのもとなし)」。
就中(わきても)漢字(かんじ)は「その象徴(しるし)」とでも云ふべき存在(もの)。

"(Wi)"の儘(まゝ)でも、
その塲(ば)の氣配(けはひ)・前後(うしろとまえ)の脈歴(つながり)から、
能避免混亂(よく”まぎらはしさ”をさけう)るとも、
漢字(もろこしもじ)を活用(つか)ひ""と""を辯別(わ)くるに最善(しくはなし)。

一音(おとひとつ)の大和言葉(ひのもとのことば)そのものも、
"野豬()"→"くさゐなぎ"、"ゐのしゝ"、"ぼたん"、"やまくぢら"、"くすり"、
"鹿()"→"しか"、"もみぢ"、
"蔥()"→"ひともじ"、"ねぶか"、"ねぎ"、と變化(かはり)しも納得(うべなるかな)。

ともあれ、野豬肉(ゐのしゝ)なるもの、
本朝(わがくに)では往古(いにしへ)より好(この)まれ
時(とき)に、"牡丹(ぼたん)"、"山鯨(やまくぢら)"、"(くすり)"と稱(とな)へ、
大賞味之(おほいにこれをあぢは)ふが風習(ならひ)。

かくて、菜單(しながき)より、
"燉橘野豬蔬菜("たちばな"はみてそだちし"くさゐなぎ"と"あをもの"ゝにこみ)"に、
"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)"を合(あ)はせ、
對價(あたひ)、三千二十四圓也(さんぜんにじふしゑんなり)。

愚按(やつがれおもふに)、
野禽獸(のにすむとりけだもの)啖(くら)ふには肉叢(しゝむら)が最善(よい)
如何(いかに)せん、この大(おほ)きさでは、
野豬(くさゐなぎ)の特徴(もちあぢ)を存分(こゝろゆくま)で難愉(たのしみがたし)

此度(こだみ)は"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)"が上々(なかなか)。
「法國(おふらんす)Bourgogne(ブルゴーニュ)"Hautes Côtes de Nuits 2012"」
との説明(よし)。
やはり、「あまりの安酒(やすざけ)は忌避(さ)くべき」と云ふこと歟(か)?

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
此度(こだみ)は、
"豕五花肉オーベルニュ風(ぶたばらにくおべるにュふう)"。
"薔薇冰酪(むはらのアイスクリン)"を加(くは)へ、
對價(あたひ)、二千二百六十八圓也(にせんいじやくろくじふはちゑんなり)。

そも、奴僕(やつかれ)、
"オーベルニュ菜(めし)"なるもの、無所通(ひとつとしてしるところなし)
維基百科(あれ)に據(よ)ると、
「蔬菜(あをもの)では、甘藍(はぼたん)に小扁豆(ひらまめ)」との説明(よし)。

"鏡珠(レンズ、たま)"の名(な)の、
"小扁豆(レンズまめ、ひらまめ)"に由來(ちな)むは周知(あまねくしら)る。
莱茨(Leitz)・千代田光學(ちよだくわうがく)提携(ちからあはせ)の砌(みぎり)、
歡迎宴(もてなしのうたげ)に"小扁豆羹(ひらまめのあつもの)"との逸話(はなし)も。

かの【創世記(さうせいき)】二十五章(にじふごしやう)に、

========================================
茲(こゝ)にヤコブ(あつもの)を煮(にた)り。
時(とき)にエサウ、野(の)より來(き)たりて憊(つか)れ居(を)り。
エサウ、ヤコブにむかひ、
「我(われ)憊(つか)れたれば、請(こ)ふ:
 其(その)紅羹(あかきもの)
 其處(そこ)にある紅羹(あかきもの)を我(われ)にのませよ!

.........中畧(なかをはぶく).........

彼(かれ、=エサウ)すなはち誓(ちか)ひて、
其(その)家督(かとく)の權(けん)をヤコブに鬻(う)りぬ

是(こゝ)に於(お)いてヤコブ、
麪麭(パン)と扁豆(あぢまめ)の(あつもの)とをエサウに與(あた)へければ、
食(く)ひ、且(か)つ飮(の)みて、起(た)ちて去(さ)れり
斯(か)くエサウ、家督(かとく)の權(けん)を藐視(かろん)じたり
========================================

つまり、
耶蘇教(やそのをしへ)に歸依(すがりてふしをが)む南蠻紅毛(あのあたり)では、
「"扁豆(ひらまめ)"は豆(まめ)の一(ひと)つにあらず」、と云ふこと。
唐山(もろこし)に於(お)ける"(まめ)"のごとき存在(もの)歟(か)?

この日(ひ)は珍(めづら)しき"安南靑胡椒(あんなんあをこせう)"も、、。
本朝(わがくに)"實山椒(なるのはじかみ)"のごとき外觀(みため)。
漢土(もろこし)にも早(はや)くより傳來(つたは)りしと推測(おぼし)く、
本草綱目】卅二卷には、(32/69)

========================================
■"胡椒(こせう)":

 "恭"曰:"胡椒"生"西戎"、形如"鼠李子(くろうめもどきのみ)"、調食用之味、甚辛辣
 "微"曰:按、●成式西陽雜俎云「"胡椒"出"摩伽陁國"、呼爲"●履支"、、云々」

 ・(み):
   <氣味>:辛大、温、無毒。
   <主治>:下氣温中、去痰、除臟腑中風冷。
========================================

常態(つね)のことながら、火候(ひいれ)は完璧(ひのうちどころなし)
黑胡椒(くろこせう)に、
上述(くだん)の"安南靑胡椒(あんなんあをこせう)"も加(くは)ゝり、
風韻(かをり)佳(よ)く適切(ほどよ)き辛辣(から)み

---------------------------------------
【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
臣僕(やつかれ)、
法國菜(おふらんすめし)は愚昧無智(いとくら)く、
意大利菜(いためし)に一竅不通(ひとつとしてあかるきものなき)こと、
宛然(あたかも)、五里霧中(ふかきゝりのなかをさまよひあるく)がごとし。

葡萄酒(えびかづらのさけ)また、冥頑不靈(あまりにうと)く、
只顧(ひたすら)、東道(あるじ)の提供(いだ)す掃愁帚(もの)を頂(いたゞ)くのみ
かくて、"風乾豕面頰肉(グアンチャーレ)"を摘(つ)まみつゝ、
高脚盞(ぐらす)の白葡萄酒(いろしろきえびかづらのさけ)を呷(あふ)る。

その(あぶら)の美味(よきあぢはひ)、
かの、黑熊(つきのわぐま)・(あなぐま)に匹敵(ならぶ)ほど。
以西巴爾亞(イスハニヤ)の誇(ほこ)る橡果豕(どんぐりぶた)の火腿(からん)、
"ハモン・デ・ベジョータ・イベリコ"をも髣髴(おもはす)。

"カスレ"とは、
禽獸肉(とりけだものゝにく)と"白腰豆(しろいんげんまめ)"の燉(にこみ)。
"白腰豆(しろいんげんまめ)"は米利堅大陸(メリケンのおほくが)渡來(わたり)にて、
"白藊豆(しろふじまめ)"とは異(こと)なる。 ←※"維基百科(あれ)"の受賣り

禽獸肉(とりけだものゝにく)への火候(ひいれ)は完璧(ひのうちどころなし)。
さりながら、
白腰豆(しろいんげんまめ)は、これこそ正宗(まことのあるべきすがた)ならめど、
やはり、齒觝觸(はあたり)留(のこ)すほどが嗜好(このみ)

---------------------------------------
【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
紅葡萄酒(さけ)、LEVONI社(レボーニしや)シャルキュトリー二種(ふたくさ)、
葡萄酒燉五花肉(ぶたばらのさかに)、
法國(おふらんす)甜瓜雪葩(めろんそるべ)、煎茶(せんちや)。
對價(あたひ)、三千廿四圓也(さんぜんにじふよゑんなり)。

膩(あぶら)の辛(つら)き愚老(おひぼれ)なれど、
この義大利産(イタリ)シャルキュトリー絶品(おどろくほどくちにあふ)。
これに駢(なら)ぶは、熊(くま)・貛(あなぐま)の膩(あぶら)くらゐ。
高脚盞掃愁帚(びいどろざけ)にて慢慢地(ゆるり)堪能之(これをあぢはふ)

紅葡萄酒(ぶだうのさけ)以て燉(ゆるりとに)こみたる五花肉(ぶたばら):
鰮醢(ひしこのひしほ)も加(くは)ゝり、
實言(まこと)、複雜玄妙(おくゆきぶか)き味(あぢはひ)
〆(しめ)は法國産(おふらんすの)甜瓜雪葩(めろんそるべ)。

當地(こちら)での商賣(あきなひ)は今年(ことし)の龝(あき)まで
東都(えど)に移轉(うつる)との説明(よし)。
寂(さび)しくもあり、愉(たの)しみでもあり、、。
愚按(やつがれおもふに)、やはり、粕壁(かすかべ)が似合(にあ)ふ。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8
      東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
此度(こだみ)は、
仔羊肉(こひつぢにく)の"火上鍋(ポトフ)"。
西班牙(イスパニア)の"紅葡萄酒(さけ)"と合(あ)はせ、
對價(あたひ)、二千二百六十八圓也(にせんにひやくろくじづはちゑんなり)。

完璧(ひのうちどころな)き火候(ひいれ)
近會(ちかごろ)の小賢(こざか)しき器械(うちもの)に頼(たよ)らで
經驗(けいけん)を活(い)かし、智慧(ちゑ)を働(はたら)かす。
適度(ほどよ)き齒觝觸(はごたへ)と馨(かをり)を留(とゞ)む。

"火上鍋(ポトフ)"の醋(す)は、
紅葡萄酒(さけ)に競(きそ)はすがごとき"白葡萄酒醋(しろぶだうのす)"。
高脚杯(グラス)から杯墊(コースタ)に至(いた)るまで、
寸毫(をさをさ)無怠(おこたりなし)。

"ヴァニラ冰淇淋(あいすくりん)"の味(あぢはひ)、
至高・最上(このうへなきもの)なるは勿論(いふもさらなり) 。
尋常(つね)のごとく、四表八表話(よもやまばなし)に花(はな)が笑(さ)き、
辭別(いとまをこふ)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8
"醃豬頚肉(ぶたほゝにくしほづけ)":
「意大利(イタリ)LEVONI社(レボーニしや)"グアンチャーレ"」との説明(よし)。
纔(わづ)か廿日未滿(はつかたらず)と謂(い)ふ熟成期間(ねかし・うらし)ゆゑ、
その顏色(いろ)甚(はなは)だ淡(あは)き櫻色(さくらゐろ)。

徐(おもぶる)に一噛(ひとか)みするや、
膩(あぶら)由來(よりきたる)と推測(おぼし)き鮮(うまみ)
臼齒(おくば)より湧出(わきい)で、口中(くちになか)へと浮騰(ほとばし)る
"シャルキュトリ"なれど、香膓(ソーセージ)とも火腿(ハム)とも異質(ことなる)。

その超絶美味(あまりのうまさ)に絶句(ことばをうし)なひ
霎時(しばし)陶然(ゑひしれ)膽魂(きもたましひ)を奪(うば)ゝる
巷(ちまた)の肥肉愛好者(アブラー©Motsu大せんせ、あぶらずき)にして、
能(よ)くこれに耐(た)へ得(う)る者(もの)、一人(ひとり)としてなかるべし

赤葡萄酒(ぶだうざけ)は、昨年(こぞ)新酒(あらたにしこみたるさけ)。
釀造家(つくりて)は新井順子(あらゐじゆんこ)女史(ぢよし)」とのこと。
馨(かをり)を聞(き)、光(ひかり)に(かざ)して檢(あらた)むるも、
その精麁巧拙(よしあし)、不詳(つまびらかならず)

香膓(ソーセ-ジ)には馬達加斯加産黑胡椒(マダガスカルのくろこせう)。
芳醇馥郁(かをりゆた)かにして、香膓(これ)に調和(よくあふ)
Laguiole牌(じるし)肉餐刀(にくナイフ)以て香膓(ソーセ-ジ)を切斷(き)り、
その斷面(きりくち)を眺(なが)めて北叟笑(ほくそゑ)むほかなし。

半點(いさゝか)鹵味(しほけ)强(つよ)く、
前述(くだん)の赤葡萄酒(さけ)にてこれを漱(くちすゝ)ぎつゝ、
宍(しゝむら)のごとき香膓(ソーセ-ジ)を貪(むさぼ)り啖(くら)ふ。
蔬菜(あをもの)への火候(ひいれ)は强(つよ)め

さて、その次(つぎ)に控(ひか)へしが、
法國(おフランス)鹽焦糖冰酪(しほカラメルのアイスクリン):
鹽焦糖(しほカラメル)は大好物(おほいにこのむもの)なれど、
やはり、香莢蘭冰酪(ヴァニラ)が贏(まさ)る。

掉尾(いやはて)に、
柳櫻園茶舖(りうあうゑんちやほ)"青焙茶(あをはうじちうや)":
茶葉(ちやば)には慥(たしか)に青味(あをみ)を留(と)ゞむ。
柳櫻園茶舖(こゝ)は京師(みやこ)の老舖(しにせ)」との解説(はなし)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4~F2.8
      東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
アルザス=ロレーヌ(=エルザス-ロートリンゲン):
神聖羅馬帝國(ひじりなるロマみかどのくに)以來(よりこのかた)、
時(とき)に德國(ドイツ)、時(とき)に法國(フランス)と、
相互(たがひ)に奪合(うばひあひ)、現今(いま)は法國領(フランスのなはゞり)

言語(ことば)や(めし)も、德國(ドイツ)に近(ちか)きものと云ふ。
かの"キッシュ・ロレーヌ"はロレーヌ(=ロートリンゲン)、
"Baeckeoffe(ベッコフ、にくじやが)"はアルザス(=エルザス)の菜(くひもの)。
この日(ひ)はその"Baeckeoffe(ベッコフ、アルザスにくじやが)"。

武井師傅(たけゐおやかた)、
嘗(かつ)て當地(かのち)の葡萄酒釀造所(さかぐら)にて餐(くら)ひし砌(みぎり)、
あまりの旨(うま)さに感動(こゝろうごかさ)れ、自作(みづからつく)ることに、、。
アルザス(=エルザス)の白葡萄酒(ぢざけ)以て燉(にこ)むが風習(ならひ)」

元來(もとより)、白葡萄酒(アルザスのぢざけ)ばかり用(つか)ふところ、
酒(さけ)を控(ひか)へ、
蔬菜屑溏油(べジブロス、=あをものくずのだし)を活用(いかす)。
肉(しゝ)は、牛豚羊(うしぶたひつぢ)、三獸(みくさのけだもの)。

天火(てんぴ)に烤(あぶりや)きたる後(のち)、
各々(おのおの)肉(しゝ)の性質(たち)に遵(したが)ひ燉(ゆるりにこ)む
あるものは長時間(ながく)、またあるものは短時間(みじかく)、、。
豬(ぶた)は墺太利(オーストリ)、他(ほか)は濠太剌利亞(オーストラリア)。

ξ(ぐざい)は、
三獸肉(みくさのけだものにく)に加(くは)へ、
馬鈴薯(じやがたら)、胡蘿蔔(せりにんじん)、洋蔥(たまねぎ)。
肉(しゝ)嫩(やはらか)く、蔬菜(あをもの)も適切(ほどよ)き火候(ひいれ)

この日(ひ)は掃愁帚(さけ)もアルザス(=エルザス)の白葡萄酒(しろ)、
"MARCEL-DEISS(マルセル・ダイス)Pinot d'Alsace(ピノ・ダルサス)2012"。
老生(それがし)、稀有(まれにみ)る不知酒(さけしらず)なれど、
愚按(おもふに)、「端麗辛口(たんれいからくち)」の類(たぐひ)なるべし。

たつた今(いま)!
と、息(いき)せき切(き)りたる"奶黃布甸(カスタード・プディング)":
温(あたゝ)かく、「甜(あま)き茶碗蒸(ちやわんむし)」と云ふ風情(おもむき)。
(さじ)で掬(すく)ふや、出現(あらはれいで)し焦糖(カラメル・ソース)。

「今(いま)は無(な)き『マキシム・ド・パリ』の廚藝(わざ)」
とのよし。
ストロバヤ』の"奶黃布甸(カスタード・プディング)"と比較(くら)べ、
半點(いさゝか)嫩(やはらか)

"薔薇果醬(ばらコンフィチュール)"添(ぞ)へ"薔薇冰淇淋(ばらアイスクリン)":
實言(まこと)、美味也(よきあぢなり)!
この"薔薇果醬(コンフィチュール)"、『ストロバヤ』とは異(こと)なる顏色(いろみ)。
風味(あぢとかをり)は無所大差(おほきくことなるところなし)。

金屬洋食器(カトラリ)は過半(あらかた)"Christofle牌(クリストフルじるし)"。
銀鍍金(しろかねのときん)。
"Baeckeoffe(アルザスのにくじやが)"、"奶黃布甸(カスタード・プディング)"から、
沙糖壺(さたうつぼ)まで、都(すべ)て"LeCreuset牌(ルクルゼじるし)"。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8~F4
      東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
此度(こだみ)は、
"茄子(なす)と(きのこ)の蕃茄醬(サルサ・ポモドーロ)"。
劈頭(いやさき)に西班牙(イスパニア)の紅葡萄酒(さけ)を貰(もら)ひ、
高脚杯(グラス)を呷(あふ)る。

ほどなくして前述(くだん)の(しな)。
"Christofle"の(さじ)にて掬(すく)ひ、一口(ひとくち)。
旨味(うまみ)炸裂(はじけちり)、口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る
無味精(あれぬき)でこれほどの鮮(うまみ)...........!」

と、絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。
ξ(ぐざい)は、茄子(なす)、山毛欅占地(ぶなしめぢ)、牛骨邊肉(うしのあら)。
これに、乾酪(ちいず)、蕃茄(とまと)が加(くは)ゝる。
それらが混然一體(ひとつにまじはり)、超絶美味(このうへなきあぢはひ)に、、。

陳腐(ありきたり)ながら、
イノシン酸(さん)+グルタミン酸(さん)+グアニル酸(さん)、
冨士山(ふじさん)+御釋迦(おにい)さん+御地藏(おぢざう)さん、
相乘效果(あひたすけあひてのすごわざ)!

掉尾(いやはて)は、當家(こちら)のヴァニラ冰酪(あいすくりん):
實(げ)に、前日(まへのひ)の"それ"とは雲泥之差(くもとつちほどのたがひ)。
芝蔴鹽飯(ごましほめし)かと疑(うたが)はれ、
南國(みなみのくに)の仙人掌果(サボテンくわ)と錯覺(みまがふ)ばかり。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4~F4
      東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
古來(いにしへよりこのかた)、
大倭豐秋津洲(おほやまとゝよあきつしま)では、
(うを)は、(み)のみならず(かは)・(かぶと)をも珍重(おもん)じ、
尾頭附(をかしらつき)を至高(このうへなきもの)とす。

愚按(やつがれおもふに)、
およそ、(うを)・禽獸(とりけだもの)なるもの、
その骨皮(ほねかは)、内臟(はらわた)の旨(うま)さは精肉(み)をも凌駕(しのぐ)
とは云へ、世(よ)には嫌之者(これをきらふもの)少(すく)なからず。

無豬皮(かはなき)東坡肉(とうばにく)は、
無聲(こゑなき)鈴蟲(すゞむし)に同等(ひとし)く、
内臟(はらわた)なき狹眞魚(さまうを)は、
無薫(かをりなき)伽羅(きやら)・沈香(ぢんかう)に異(こと)ならず。

懐石(くわいせき)、法國菜(ふらんすめし)など、
格式高(かくしきたか)き席(せき)では精肉(み)のみ供(いだ)すが風習(ならひ)。
内實(なかみ)を疎略(おろそ)かにし
外見(みため)を重視(おもん)ずる傾向(きらひ)なきにしもあらず

"豕内臟白葡萄酒煮(ぶたモツのしろワインに)":
法國菜(ふらんす)に無(な)く、内臟烹(モツに)の技藝(わざ)を薀(たづ)ね、
己(おの)が技倆(うで)を活(い)かしたるものと演述(い)ふ。
鮮(うまみ)に横溢(あふ)れ、臭(くさ)みなく、彩(いろどり)に雋(すぐ)る

掃愁帚(さけ)は師傅(おやかた)に一任(まか)せ、
"ヴァニラ冰酪(あいすくりん)"にて〆。
颳目(まなこけづ)るは、
黑芝蔴(くろごま)かと錯覺(みまが)ふほどのヴァニラ・ビンズ

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4~F4
      東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
颱風(のわけ)が去(さ)るや、頓(にはか)に猛暑(たけりくるふあつさ)。
最寄(もより)の停車塲(ていしやば)より急行(きふかう)に乘車(のりこ)むも、
「はてさて、車站(ステンショ)近傍(ちかく)で佳肆(よきみせ)は?」
と、霎時(しばし)尋思(おもひなやむ)。

冰酪(あいすくりん)、雪葩(そるべ)の類(たぐひ)も、、」
と意(こゝろ)が動(うご)き、またも『Bien』に、、。
これを「"河馬(●●)^(-1)"の一(ひと)つ憶(おぼ)え」と號(い)ふ。
嗚呼(あヽ)!Oh my "oppih"?!

劈頭(いやさき)に"甜瓜雪葩(めろんそるべ)"と決意(かたくこゝろをき)め、  
あとは、掃愁帚(さけ)に主菜(ひとさら)。
主菜(ひとさら)として"煎銀鮏(ぎんざけソテ)"を擇(えら)み、
あとは師傅(おやかた)に投身(みなげ)、一任(まるなげ)、雞天然塊金(チキンナゲ)。

かくて、擇(えら)ばれし玉薤(さけ)、西班牙産(いすぱにあ)"雪利酒(シェリー)"。
「勿驚(おどろくなか)れ、酒精無添加(あるてんなし)の"雪利酒(シェリー)"にて、
 葡萄(ぶだう)はかの"ペドロ・ヒメネス"にて厶(ござ)りまする。」
との説明(はなし)。

徐(おもぶる)に高脚杯(びいどろのうつは)を傾(かたむ)け一口(ひとくち)。
確實(たしか)に憶(おぼ)えのある風味(あぢかをり)。
ヘドロ(へどろひめ)、ネス湖(こ)にのたうち、
ヒロド姫(ひめ)、寝(ね)ずにOA(ほんばん)しどろもどろ。  ←虚談(うそ)

軈(やが)て"銀鮏(ぎんざけ)"の烹飪(てうり)も竟(をは)り、
"雪利酒(シェリー)"と合(あ)はせて堪能之(これをあぢはふ)。
(せり)は七草(なゝくさ)鍋(なべ)に好適(よし)。
(せり)で賑(にぎ)はふ朝(あさ)の魚河岸(うをがし)。

掉尾(いやはて)に法國産(おフランス)"甜瓜雪葩(めろんそるべ)":
その芳香(かをり)、懐(なつ)かしき"眞桑瓜(まくはうり)"にも似(に)て、
自(おの)づと、小人(それがし)が鼻竅(はな)を穿(うが)つ。
善哉(よき)、善哉(よき)!

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4~F4
      東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
此度(こだみ)は、
"Rillauds angenius(アンジュのリヨー)"なる地方菜(ゐなかめし)。
豕(ゐのこ)五花肉(ばらにく)を油煮(コンフィ、あぶらに)とせし菜(ひとしな)。
食後(めしのあと)には薔薇雪葩(ばらのソルベ)と云ふ流(なが)れ。

玻璃盤(がらすざら)涼(すゞ)やかなる"Rillauds angenius(アンジュのリヨー)":
醋(す)は法國(おふらんす)紅葡萄醋(あかワインす)。
師傅(おやかた)、胸(むね)を張(は)りて曰(いへら)く、
晩餐(よる)は意大利香醋(バルサミコ)にて、、云々(うんぬん)」

その五花肉(ばらにく)を吟味(み)るに、至高(このうへな)き火候(ひかげん)。
平滑濕潤(したざはりのなめらかさとうるほひ)は、
流行(はやり)の低温烹飪(ていおんてうり)に酷似(よくに)る。
されど、焦糖化(カラメリゼ)され、絶妙無比(えもいはれ)ぬ齒觝觸(はあたり)

流(なが)さるゝを嫌(きら)ひ、傳統技法(ふるきやりかた)を墨守(まもる)るも、
その味(あぢはひ)は最新技法(あらたしきやりかた)に無遜色(ひけをとらぬ)
實(げ)に、「弘法(こうばふ)筆(ふで)を選(えら)ばず」。
光芒(くわうばう)技倆(うで)を擇(えら)みて廚(くりや)に射(さ)す。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4
     :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
"ニース風(ふう)"、
と喚做(よびな)す"白葡萄酒(しろワイン)による燉牛頬肉(うしのほゝにくにこみ)"。
"紅葡萄酒(さけ)"、"麪麭(ぱん)"、"冰酪(あいすくりん)"、"(ちや)"、
あはせて、對價(あたひ)、二千五百九十二圓也(にせんごひやくきふじふにゑんなり)。

燉牛頬肉(うしのほゝにくにこみ)の(しほけ)は、
"アンチョビ鹽漬"、すなはち、腌鯷(しこいはしのしほづけ)。
かの古代羅馬(いにしへのロマ)の醢(ひしほ)魚露(ガルム)にも通底(つらなる)。
この魚露(うをびしほ)はポンペイの食譜(レシピ)より復元(ふくげん)せしもの。

"ナンプラ"、"ヌクマム"、"いしる"、"しよッつる"に似(に)たる風味(あぢかをり)。
これを「當たり前田のクラッカー」と稱(い)ふ。
この複雜玄妙(たへなる)味(あぢ)の深(ふか)みは、
偏(ひとへ)に、アンチョビ鹽漬(しこいはしのしほづけ)に起因(よる)。

網笠茸(あみがさだけ、モリーユ)にも、
吃驚(びつくり)、苦力(クリ)、九里(くり、≒36km)、陰蒂(くり)ッ、操(く)り。
此度(こだみ)は口(くち)にする機會(めぐりあはせ)なしと云へど、
その芳香(かぐはしきかをり)、鼻竅(はな)を穿(うが)ちて已(や)むことなし

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 smc 賓得(Pentax)A Macro 2.8/50 @F2.8
     :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
この日(ひ)は、盛夏(なつのさかり)を髣髴(おもは)す暑(あつ)さ。
されば、粕壁停車塲(かすかべステンショ)より至近(いとちか)き『Bien』。
最後(いやはて)の"法國芒果雪葩(おふらんすまんごそるべ)"を主軸(はしら)に、
"德國啤酒(どいつびいる)"、"咖哩飯(からみいりしるかけめし)"なる構成(くみたて)。

Bien』の"咖哩(かりい)"は二度目(にどめ)。
前囘(まへ)は米飯(うるちまひのひめいひ)がなく、麪麭(ぱん)のみ。
此度(こだみ)は米飯(うるちまひのひめいひ)ゆゑ、
"咖哩飯(からみいりしるかけめし)"と云ふ次第(わけ)。

德國(どいつ)"ケストリッツァ-牌(じるし)黑啤酒(シュバルツ・ビア)"。
高名(なだか)き英國(あんげりあ)"のギネス"よりも味覺(した)に馴染(なじ)む。
咽喉(のみど)を潤(うるほ)し、いざ、"咖哩飯(からみいりしるかけめし)":
所謂(いはゆる)"碎肉咖哩(キーマカリィ)"の類(たぐひ)。

とは云へ、
豐葦原瑞穗國式咖哩飯(とよあしはらみづほのくにのからみいりしるかけめし)。
徒(いたづら)に咖哩粉(かりィこ)ばかりが突出(きはだ)つ、
二昔前(ふたむかしまへ)一世風靡(もたはやされ)し「本塲咖哩(ほんばかりィ)」。

やはり、
洋蔥(たまねぎ)を徹頭徹尾(とことん)炒(いた)めねば
味(あぢ)に深(ふか)みは生(う)まれず
香辛料(かうしんれう)も咖哩粉(かりィこ)ばかりでは擴(ひろ)がりに缺(か)く

往古(いにしへ)の「本塲咖哩(ほんばかりィ)」と見做(みな)すが吉(なにより)。
妄想・夢想(むなしくおもひをはす)は、
東天竺摩訶陀國(ひがしてんじくまがたこく)王舎城(わうしやじやう)に、
拘薩羅國(こうさらこく)舎衞城(しやゑいじやう)祇園精舎(ぎをんしやうじや)。

陋屋(ぼろや)に蠢動(のたうち、うごめ)く下流老人卍(それがし)、
天竺參詣(てんじくまうで)は實現(かな)ふことのなき夢(ゆめ)のまた夢(ゆめ)。
月光(つきのひかり)に日光(ひのひかり)、
野州(しもつけのくに)は日光詣(につくわうまうで)が限度(せきのやま)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
久方(ひさかた)ぶりの『Bien』。
此度(こだみ)は、
"烤雞腿(とりもゝにくロティ)"に、"ペドロ・ヒメネス冰酪(あいすくりん)"、
掃愁帚(さけ)は"桃紅葡萄酒(ロゼ)"。

皮附(かはつき)の雞腿(にはとりもゝにく)を、
沙羅曼蛇(サラマンダ)に炮(あぶ)ること霎時(しばし)。
適度(ほどよ)く燒目(やきめ)が、つきは朧(おぼろ)に不二山(ふじのやま)。
痛(いた)き、炊飯(めしたき)、那智(なち)の瀧(たき)。

扨(さて)、これに取出(とりいだ)しましたるは、
かの名刀(なだかきかたな)"備前長船兼光(びぜんをさふねかねみつ)"、
と云ふは眞赤(まつか)な嘘(うそ)にて、
南蠻(なんばん)法國(フランス)渡來(わたり)の"ラギオール"。

刀一閃(かたながきらりとひかるや)、
雞腿肉(とりのしゝむら)は堪(たま)らず一刀兩斷(まッぷたつ)。
倩(つらつら)その斷面(きりくち)はと觀察(うかゞ)ふに、
雞油(あぶら)浮騰(ほとばし)りて華嚴(けごん)の瀧(たき)と化(な)る。

〆は、尋常(つね)のごとく、"ペドロ・ヒメネス冰酪(あいすくりん)"。
ヴァニラ荳(まめ)は綺羅(きら)星辰(ほし)のごとく、
その美味(このうへなきあぢはひ)は、
「かの醍醐(だいこ)もかくや?」、と錯覺(おも)はるゝほど。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F4
前日(まへのひ)の紅葱頭醬(エシャロットびしほ)に心奪(こゝろうばゝ)れ、
紅葱頭(エシャロット)を用(つか)ふ法國菜(ふれんち)では如何(いかに)?」
と興味津々(おほいにこゝろそゝらる)。
加之(くはふるに)、異朝(もろこし)の龍徽赤霞珠葡萄酒(ぶだうざけ)も、、。

この日(ひ)は南亞墨利加(みなみあめりか)智利(チリ)の"紅葡萄酒(さけ)"。
昨日(きのふ)の"芒果布甸(まんご・ぷでいんぐ)"に、
今日(けふ)の"芒果雪葩(まんご・そるべ)"、
と云ふ競(きそひあひ)も、、。

(うを)」が土州(とさ)の"(かつを)"、
禽獸(とりけだもの)」が"香腸(ちやうづめ)と扁豆(ひらまめ)の羹(あつもの)"。
南蠻・紅毛國(あちら)では、
"扁豆(ひらまめ)"を殊(こと)の外(ほか)重視(おもんず)。

切支丹宗門(きりしたん)の經文(きやうもん)にも、

=======================================
茲(こゝ)に、ヤコブ、羹(あつもの)を煮(に)たり
時(とき)に、エサウ、㙒(の)より來(きた)りて憊(つか)れ居(を)り。

エサウ、ヤコブにむかひ、
「我(われ)憊(つか)れたれば、
 請(こ)ふ、其(その)紅羹(あかきあつもの)
 其處(そこ)にある紅羹(あかきあつもの)を我(われ)にのませよ!」
といふ。

是(これ)をもて彼(かれ)の名(な)は"エドム(紅)"と稱(となへ)らる。

ヤコブ言(いひ)けるは、
「今日(けふ)汝(なんじ)の家督(かとく)の權(けん)を我(われ)に鬻(う)れ!」

エサウいふ、
「我(われ)は死(しな)んとして居(を)る。
 此(この)家督(かとく)の權(けん)、
 我(われ)に何(なん)の益(えき)をなさんや?」

ヤコブまた言(いひ)けるは、
「今日(けふ)我(われ)に誓(ちか)へ!」
と。

彼(かれ)すなはち誓(ちかひ)て、
其(その)家督(かとく)の權(けん)をヤコブに鬻(うり)ぬ。

是(こゝ)に於(おい)て、
ヤコブ、パンと扁豆(ひらまめ)の羹(あつもの)とをエサウに與(あた)へければ、
食(たべ)且(かつ)飮(のみ)て起(おき)て去(され)り。

斯(かく)エサウ、家督(かとく)の權(けん)を藐視(かろん)じたり。
=======================================

と、あるがごとく、
"扁豆羹(ひらまめのあつもの)"は家督權(かとくけん)を讓(ゆづ)るほどのもの。
それほどの甘美(うま)さか否(いな)かはさて置(お)き、
滋味(いつくしみ)横溢(あふ)るゝ味(あぢはひ)

法國菜(ふれんち)では色附(いろづ)くほどに煎(い)ることなく
 小人(それがし)も、
 紅葱頭(エシャロット)を洋蔥(たまねぎ)で代用(かはりにもちゐ)るが常態(つね)」
とは、師傅(おやかた)が辯(はなし)。

葡萄酒(ぶだうざけ)の精麁(よしあし)は不詳(つまびらかなら)ねど、
癖(くせ)の强(つよ)きは"龍徽赤霞珠葡萄酒(こちら)"。
芒果(まんご)は當家(こちら)の"芒果雪葩(まんご・そるべ)"が贏(まさ)る。
生(なま)の完熟(よくうれ)たる芒果(まんご)に異(こと)ならず

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
劈頭(いやさき)に紅葡萄酒(さけ)を貰(もら)ひ、
"鴨ブレザオラ(かもぶれざおら)"、"鰤リエット(ぶりゝえつと)"、
掉尾(いやはて)に、"ペドロ・ヒメネスがけ冰酪(あいすくりん)"、"エスプレッソ"。
對價(あたひ)、大畧(およそ)三千五百圓也(さんぜんごひやくゑんなり)。

西洋土圭(せいやうどけい)にして一時間半(いちじかんはん)。
賓(まらうど)は小人(それがし)一人(ひとり)
一人(ひとり)、塵取(ちりとり)、借金取(しやくきんとり)。
單獨(ひとり)寛(くつろ)ぐは、ありがたくもあり、勿體(もつたひ)なくもあり、、。

そも"ブレザオラ"なるもの、元來(もとより)牛肉(うしにく)にて製(こしら)ふるもの。
さりながら、合鴨(あひがも)ゝ頗(すこぶ)る美味(よきあぢ)
熟成(ねかし・うらす)こと、大畧(およそ)廿日(はつか)
鮮(うまみ)口中(くち)に浮騰(ほとばし)り、鼻竅(はな)をも貫通(つらぬく)

この鴨肉(かもにく)、
酸塊(すぐり)、干柹(ほしがき)、蘋果(りんご)と調和(よくあふ)。
宛然(あたかも)、爲虎添翼(とらにつばさをそふる)がごとし。
"ペドロ・ヒメネスがけ冰酪(あいすくりん)"の芳味(あぢ)は勿論(いふもさらなり) 。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 賓得(Pentax)S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8~F4
     :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分
久方(ひさかた)ぶりの『Bien』。
菜譜(こんだて)に"ペドロ・ヒメネスがけ冰酪(あいすくりん)"の名(な)!
"獸肉(けだもの、ヴィヤンド)"には"トリップ・ア・ラ・モード"、
すなはち、燉蜂巢胃(はちのすにこみ)も、、。

當日(このひ)は想定外(おもひのほか)の盛況(にぎはひ)。
桌子(つくゑ)一脚(ひとつ)を殘(のこ)し、無席(あきなし)。
紅葡萄酒(さけ)を貰(もら)ひ、霎時(しばし)、碟(さら)を俟(まつ)ほどに、
琺瑯鐵鍋(はうらうなべ)到達(きたりぬ)。

鐵鍋(くろがねのなべ)には、牛蜂巢胃(はちのす)のほか、
香茹(しいたけ)、白占地(しろしめぢ)、胡蘿蔔(にんじん)、西蘭花(ブロッコリ)。
火候(ひいれ)・淡醎(しほけ)ともに絶妙(ひのうちどころな)く
臼齒(おくば)に噛締(かみし)むるや鮮(うまみ)口中(くち)に浮騰(ほとばし)る

"乾酪(フロマージュ)"に四色(よいろ)あり。
就中(わきても)"ブリア・サヴァラン"は、
小人(それがし)が嗜好(このみ)に寸毫(つゆ)異(こと)なるところなし
これぞ口福(くちのしあはせ)!

"ペドロ・ヒメネスがけ冰酪(あいすくりん)":
胡椒(こせう)と見紛(みまが)ふばかりに、
多量(おほ)くのヴァニラ・ビーンズが悋嗇(をしげ)もなく用(つか)はれ、
その比類(くらぶるもの)なき美味(うまさ)たるや、勿論(いふもさらなり)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
獸肉(けだもの、ヴィヤンド)】:
  "トリップ・ア・ラ・モード"

乾酪(フロマージュ)】:
  カステルマーニョ・アルペッジ
  ブリア・サヴァラン
  マロワール
  ブルー・デ・コース

菓子(くわし、デセール)】:
  ペドロ・ヒメネスがけ冰酪(あいすくりん)

(ちや、テ)】:
  緑茶(りよくちや)”朝日(あさひ)”
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2.8
     :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4 ※2017-03撮影分

切支丹邪宗門(きりしたんばてれんのよこしまなるをしへ)の安息日(やすみのひ)。
盞(さかづき)を傾(かたむ)け、仔羊(こひつぢ)の羹(あつもの)を銜(ついば)む。
羊(ひつぢ)は死(し)ゝて(かは)を殘(のこ)し、
耶蘇(やそ)は斃(し)ゝて釘穴(くぎあな)を殘(のこ)す。

"燉小羊(こひつぢのにこみ)"は通常(つね)のごとく、
眼眶(まなこ)にも胃腑(いぶくろ)にも優(やさ)しき品(しな)。
麪麭(ぱん)は『コンテ・ジャポン』製(のもの)。
燉(にこみ)との相性(あいしやう)たるや絶妙(げに、たへなるものあり)。

法蘭西渡來(ふらんすわたり)のヴァニラ・冰酪(あいすくりん):
その外見(すがた)、
雪上(ゆきのうへ)に炭粉(すみのこ)でも撒布(まきちら)したかと疑(うたが)はれ、
その味(あぢはひ)は、「醍醐(だいご)もかくや」と想像(おもは)すほど。

(ちや)は洛(みやこ)"柳櫻園(りうあうゑん)"の"朝日(あさひ)"。
嫩(やはらか)なる澁(しぶみ)があり、鮮(うまみ)豐富(ゆたか)。
その馨(かをり)、初夏(なつのはじめ)の叢(くさむら)を髣髴(おもはす)。
舌(した)を洗(あら)ひ、汚(けが)れを流(なが)して辭別(いとまごひ)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
この日(ひ)、
套餐(コース)の肉主菜(ヴィヤンド)として、
"豬五花肉(ぶたばらにく)と扁豆(あぢまめ)煮込(にこみ)オーベルニュ風(ふう)"、
を選擇(えらむ)。

およそ"扁豆(あぢまめ、=レンズまめ)"なるもの、
その眞價(まことのよさ)・眞味(まことのあぢ)を不知(しらず)
にもかゝはらず、菜單(しながき)に"扁豆(あぢまめ)"を發見(み)て、
注文(たの)まざる前例(ためし)なし。

その故(ゆゑ)如何(いかん)となれば、
僕(やつかれ)若(わか)かりし砌(みぎり)、
讀齧(よみかぢ)りし書籍(しよじやく)に、
エサウ弟(おと)ヤコブに家督讓(いへゆづ)りし故事(ふるきものがたり)あり。

舊約聖書(ふるきちぎりの、ひじりぶみ)創世記(さうせいき)に、
ヤコブ麪麭(ぱん)と扁豆羹(あぢまめのあつもの)とをエサウに與(あた)へければ
食(くひ)且(かつ)飮(のみ)て起(たち)て去(され)り
斯(かく)エサウ家督(かとく)の權(けん)を藐視(かろん)じたり。」 とある。

その後(のち)、小倉敏布(をぐらとしのぶ)が書籍(ほん)に、
"Ernst Leitz(エルンスト・ライツ)"・"千代田光學(ちよだくわうがく)"が、
合從連衡(きづなをむす)ぶ折(をり)の往事(いまはむかしのものがたり)があり、
益々(ますます)心(こゝろ)の隅(すみ)に蟠(わだかま)ることに、、、。

歡迎晩餐會(もてなしのうたげ)にて恭(うやうや)しく出(いだ)されしが、
"扁豆羹(あぢまめのあつもの)"。
"透鏡(レンズ)"の語源(ことばのみなもと)は"扁豆(あぢまめ、レンズまめ)"。
加旃(しかのみならず)、切支丹(きりしたん)には深甚(いとふか)き意(こゝろ)あり。

初(はじ)めて扁豆(あぢまめ)を口(くち)にせしは、それより後(のち)のこと。
この日(ひ)の"扁豆(あぢまめ)"も陳腐(とるにたるものなし)。
愚按(やつがれおもふに)、
およそ豆(まめ)なるもの、齒應(はごた)へを殘(のこ)すが肝要(かなめ)

近來(ちかごろ)、
獸肉(けだもの)への火候(ひいれ)は日進月歩(ひゞすゝみ)
法國菜(フレンチ)は勿論(いふまでもなく)、
拉麪店(らあめんや)の類(たぐひ)まで細心留意(こまやかにこゝろをくばる)。

菜蔬(あをもの)ゝ(いろどり)や火候(ひいれ)もまた、
配慮(きくばりさる)ゝこと多(おほ)し。
然(しか)るに、燉菜(にこみれうり)に多用(おほくもちゐら)るゝ豆類(まめ)は、
太古以來(いにしへよりこのかた)火候(ひいれ)に無頓着(こゝろくばりされず)

この日(ひ)、
"新姫(にいひめ)"と喚做(よびな)す柑橘類(たちばなのたぐひ)を知(し)る。
風味(あぢとかをり)は不詳(つまびらかならず)。
"麪麭(ぱん)"はコンテ・ジャポン製(のもの)。

因(ちなみ)に、この日の菜譜(こんだて)は、如下(つぎのとほり):

 =====================================
 ・"牛舌(うしのした)白葡萄酒煮(しろぶだうしゆに)"
 ・"豬五花肉(ぶたばら)と扁豆(あぢまめ)燉(にこみ)"
 ・"甜瓜(めろん)の雪葩(そるべ)"
 ・"紅茶(こうちや)"
 =====================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 賓得(Pentax)S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.4~F4

牛舌(うしゝた)の白葡萄酒煮(しろワインに)」
なる店頭(みせさき)の菜單(しながき)に眼眶(まなこ)釘附(くぎづけ)。
先祖代々(とほつおやより)、
舌(した)を驅使(あやつ)り、衆人(もろびと)欺(あざむ)くを活業(なりはひ)とす

と云ふは、眞赤(まッか)な許譌(うそいつはり)。
素面(しらふ)では、口籠(くちごも)り、支離滅裂(はなしちゞにみだ)れ、
掃愁帚(さけ)以て冷靜沈着(おちつ)かんとするも、
舌縺(したもつ)れて、呂律(ろれつ)も廻(まは)らぬが通例(つね)。

僕(やつかれ)、
洋食(やうしよく)で、最喜歡(もつともこのむ)は"燉牛舌(タンシチュ)"なれば、
件(くだん)の品(しな)に、"赤葡萄酒(さけ)"、"冰酪(あいす)"、を追加(くはふ)。
對價(あたひ)、二千四百八十四圓也(にせんよんひやくはちじふよゑんなり)。

皿(さら)は適温(ほどよ)く温(あたゝ)められ、
(いろどり)も見事(みごと)。
醢醯(あぢつけ)は、
鹽胡椒(しほこせう)に白葡萄酒(しろワイン)のほか粒芥子(つぶからし)。

ゆるり、これを堪能(あぢはふ)。
適度(ほどよ)き(さんみ)により、味(あぢ)がキリヽと締(し)まり
一(ひと)つとして不足(たらざるところ)なし。
實言(まこと)、「天晴(あつぱれ)」と賞賛(い)ふほか術(てだて)なし。

食後(めしのあと)の甘味(かんみ)は尋常(つね)のごとし。
"芒果雪葩(まんごそるべ)"に加(くは)へ、
"薔薇(ばら)の冰酪(あいすくりん)"も頂戴(いたゞく)。
何(いづ)れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
久々(ひさびさ)の『Bien』。
此度(こだみ)は、"前菜(さきづけ)"を拔(ぬ)き、
主菜・獸肉(ヴィヤンド)として、
"蕃茄燉蜂巢胃ハチノスあかなすにこみ、まァトリッパ)"を選擇(えらむ)。

"甜點(あまきもの)"は、"西番莲(パッションフルーツ)の雪葩(そるべ)"、
飮料(のみもの)が"冰咖啡(アイス・コーヒー)"。
"茶菓子(ちやぐわし)"は"コンテ・ジャポン製(こしらへ)のラスク"。
對價(あたひ)、二千圓餘(にせんゑんあまり)。

コンテ・ジャポン』老板(あるじ)とは親(した)しき仲(なか)と云ふ。
想像通(おもひどほ)りの"蕃茄燉蜂巢胃ハチノスあかなすにこみ)"。
愚按(やつがれおもふに)、
「まァトリッパ!」と賞賛(たゝ)へらるべき水準(たかみ)。

西番莲(パッションフルーツ)の味(あぢ)濃厚(こ)き雪葩(そるべ)には、
霎時(しばし)、辭(ことば)を失(うしな)ふ。
"(さんみ)"と"(あまみ)"に、仄(ほの)かなる"風韻(かをり)"、
競合(きそひあ)ひ、佐合(たすけあ)ひ、舌上(したのうへ)に躍動(をど)る

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
久方(ひさかた)ぶりの『Bien』。
「尤(いと)稀有(めづら)しき清湯(こんそめ)がござりまする。」
との辭(ことば)に釣(つ)られ、「晝飧(ひるめし)D(でえ)」、
すなはち、(しる)と菓子(くわし)をともに頂(いたゞ)くことに、、。

掃愁帚(さけ)は薔薇色葡萄酒(ろぜ)。
前菜(さきづけ)として"蘇格蘭(すことらんど)燻製鮭(いぶしざけ)"。
泥炭(でいたん)以(も)て燻(いぶ)したるものと云ふ。
上(うへ)には、法國産乾酪(ふらんすちいず)に、大徳寺納豆(だいとくじなつとう)。

"雞湯(コンソメ・ド・ヴォライユ、とりのすまし志゛る)"には、
雞胸肉(とりむねにく)と香味菜蔬(かをりのあをもの)を用(つか)ふ。
外觀(みため)・風味(あぢかをり)、
ともに、清(きよ)らかに澄(す)み、なかなかに佳味(よきあぢ)

"主菜(しゆさい)"は"(ヴィアンド)"。
二種(ふたくさ)あるうちより、
白葡萄酒(しろ)にて燉(にこ)みたる"牛頬肉(うしほゝにく)"を選擇(えらむ)。
牛頬肉(うしほゝにく)を炮(あぶ)りて燉(にこ)みたるもの」との説明(はなし)。

齒應(はごた)へ、(しほ)、滋味(おくぶかさ)、
何(いづ)れも適切(ほどよ)く
瞬(またゝ)く中(うち)に鐵鍋(くろがねのなべ)は空(から)となる。
師傅(おやかた)の面目躍如(めんもくやくじよ)

最後(いやはて)に、
油滴天目茶碗(ゆてきてんもくぢやわん)擬(もど)きに抹茶(ちや)を頂(いたゞ)く。
上質(よ)き茶(ちや)なるは疑(うyが)ふべくもあられど、
それを利(き)ゝ分(わ)くるほどの力量(ちから)なし。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Macro Elmarit R 2.8/60 @F2.8~F4.5
此度(こだみ)は、以前(まへ)に啖(くら)ひしものゝ組合(くみあは)せ。
"コルシカ島(じま)豬肉(ぶたにく)テリーヌ"、
"豬内臟(ぶたもつ)白葡萄酒煮(しろワインに)"、
"法國産(フランスさん)冰酪(アイスクリン)、ペドロ・ヒメネス添(ぞ)へ"。

赤葡萄酒(さけ)は、
"エルザス(アルザス)"Eric Rominger(エリック・ロミンガ(ロマンジェ))。
"豬肉(ぶたにく)テリーヌ"、"冰酪(アイスクリン)"とも、
前例(まへ)に寸毫(つゆ)異(こと)なることなく、頗(すこぶ)る美味(よきあぢ)

小皿(こざら)は、近傍(ちかく)で入手(てにいれ)たと云ふ古伊万里(こいまり)。
東道(あるじ)武井師傅(たけゐおやかた)、
"Cristofle(クリストフル)"牌(じるし)の金屬洋食器(カトラリ)など、
骨董品(ふるだうぐ)を巧妙(たくみ)に用(つか)ひこなす

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Macro Elmarit R 2.8/60 @F2.8
      萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Super Angulon R 4/21 @F8
      萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Elmarit R 2.8/35 @F4
この日(ひ)の晝飧(ひるめし)は、
前菜(アントレ)として"香腸(ソーセージ)"、
肉(ヴィアンド)が"仔羊(こひつぢ)ナヴァラン"、
菓子(デセール)として"薔薇(ばら)冰酪(あいすくりん)"なる構成(くみたて)。

"仔羊(こひつぢ)ナヴァラン"のみ東道(あるじ)手製(てづからつくりしゝな)。
"香腸(ソーセージ)"には"Laguiole"牌(じるし)、
そのほかは"Cristofle"牌(じるし)の金屬洋食器(カトラリ)。
ともに法國舶來品(おふらんすわたりのもの)。

燉(にこ)む鍋(なべ)は法蘭西(おふらんす)"Le Creuset"、
片手鍋(かたてなべ)はと窺(うかゞ)ふに、
越後(ゑちご)燕(スワロシチ)宮嵜製作所製(みやざき)"Geo"牌(じるし)。
叮嚀(ねんごろ)に磨(みが)かれ、鏡(かゞみ)かと錯覺(みまがふ)。

"仔羊(こひつぢ)ナヴァラン"には、
風習(ならひ)の仔羊肉(こひつぢにく)と(かぶ)に加(くは)へ、
胡蘿蔔(にんじん)、蕃茄(とまと)、西蘭花(ぶろつこり)、 甘藍(きやべつ)、
香茹(しいたけ)、山毛欅占地(ぶなしめぢ)と云ふ陣容(かほぶれ)。

適度(ほどよ)く燉(にこ)まれ、調味(あぢつけ)も適切(よきほど)
煮汁(にじる)を餐匙(さじ)に掬(すく)ひ、
無作法(はしたなく)も、麪麭(ぱん)に吸(す)はせて堪能之(これをあぢはふ)。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4
      東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4  ※2016年10月撮影分
前囘(まへに)、
「次囘(つぎは)"鹿肉(かのしゝ)のブレザオラ"啖(くら)ぶべし」、
との約束(はなし)があり、久々(ひさびさ)當家(こちら)に、、。
頃(ころ)は、八つ時(やつどき)も間近(まぢか)のこと。

倩(つらつら)金屬洋食器(カトラリ)の類(たぐひ)を觀察(み)るに、
過半(あらかた)"Christofle牌(じるし)"。
周知(あまねくしら)るゝごとく法國(ふらんす)渡來(わたり)の品(しな)。
眞新(まあたら)しきものならで、適度(ほどよ)く枯(か)れたもの。

件(くだん)の"鹿肉(かのしゝ)のブレザオラ"より、
松露(せうろ)の芳香(かをり)漂(たゞよ)ひ來(きた)る。
勿駭(おどろくなかれ)、黑(くろ)き粒(つぶ)は松露(せうろ)ならで、
洛(みやこ)の「"大徳寺納豆(だいとくじなつとう)"」。

大徳寺一久』にて沽(か)ひ求(もと)めたるものと云ふ。
"大徳寺納豆(だいとくじなつとう)"は唐山(もろこし)"豆豉(ドウチ)"、
"大徳寺麩(だいとくじふ)"は異朝(あちら)の"烤麩(ガオフ)"に同(おな)じ。
松露(せうろ)の馨(かをり)の正體(しやうたい)は"松露油(トリュフオイル)"。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Flektogon 2.8/20 @F8
【2017-01-09追記】:
この日(ひ)は、前菜(アントレ)が"(かも)ブレザオラ"、
肉(ヴィアンド)として"豬五花肉(ぶたばら)ブレゼ"、
菓子(デセール)に"拔絲草莓(いちごカラメリゼ)"、
飮料(テ)は"冰鎭咖啡(アイスコオフィ)"、と云ふ構成(ながれ)。

"ブレザオラ"とは、端的(はや)い説明(はなし)、"火腿(ハム)"の類(たぐひ)。
鹽(しほ)をして熟成(ねかしうら)すこと十日(とほか)。
その旨味(うまみ)
臼齒(おくば)より溢(あふ)れて口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る

"豬五花肉(ぶたばら)ブレゼ":
その外見(みため)、打扮(いでたち)たるや、
夏華(もろこし)杭州(かうしう)、"東坡肉(とうばにく)"を髣髴(おもはす)。
硬(かた)からず、柔(やは)らかに過(す)ぎぬ齒應(はごた)へ

(あまみ)は、ペドロ・ヒメネスと赤砂糖(あかざたう)由來(ゆらい)とのよし。
そも、豬肉(ぶたにく)と(あまみ)は、「梅(むめ)に鶯(うぐひす)」。
"蜜瓜火腿(なまはむめろん)"、"蜜汁叉燒 (やきぶたみつゞけ)"、
"咕嚕肉(すぶた)"、"糖醋排骨(くろずゝぶた)"などその證左(あかし)。

草莓(いちご)は些(いさゝ)か小振(こぶ)り。
異朝(もろこし)魯國(ろのくに)の"拔絲(あめだき)"を髣髴(おもはす)も、
絲(いと)を引(ひ)くことなし。
さりとて、屋臺(やたい)の"蘋果飴(りんごあめ)"とも異質(ことなる)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :Kern 微距(Macro) Switar 1.8/50 @F2.4
      東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
【2016-12-18追記】:
東道(あるじ)、
"武井箪笥店(たけゐたんすてん)"三代目(さんだいめ)とのよし。
創業以來(あきなひのはじめよりこのかた)、桐材(きりざい)を活業(なりはひ)とし、
桐箪笥(きりだんす)を扱(あつか)ふも、今(いま)はかくのごとき商賣(あきなひ)に。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4

【2016-12-03追記】:
此度(こだみ)は、
前菜(オードヴル)に、"セルヴェル・ド・カニュ"、
肉(ヴィアンド)として、"カスレ"と云ふ選擇(えらみかた)。
師傅(おやかた)、自信作(むねをは)りて已(や)むことのなき"カスレ":

幾種(いくゝさ)もの鳥獸肉(とりけだものゝしゝ)と(まめ)の燉(にこみ)。
心持(こゝち)よき芳香(かをり)小人(それがし)が鼻竅(はな)を射(い)る。
その儘(まゝ)では強(つよ)めの(しほ)は、
葡萄酒(さけ)と合(あ)はすや、須臾(たちまち)適度(ほどよき)鹹(からさ)に、、。

豬肉(ぶたにく)は上質(よ)き"東坡肉(とうばにく)"を髣髴(おもは)せ、
隱々(かすか)に癖(くせ)のある薫(かをり)は羊肉由來(ひつぢよりきたりし)か?
家鴨(あひる)、もしくは(とり)と思(おぼ)しき鳥肉(とりにく)も、、。
白腎豆(しろいんげんまめ)も原形(もとのかたち)を保持(たもつ)。

菓子(デセール)は"芒果雪葩(マンゴ・ソルベ)"。
これまた法國渡來(フランスわたり)のものと云ふ。
雪葩(ソルベ)と云ふより、
鮮芒果(なまのマンゴ)をその儘(まゝ)凝縮(につめ)たるがごとき味(あぢはひ)

滑(なめ)らかなること、絹(きぬ)のごとく、
甜(あま)きこと、栗甘露煮(マロン・グラッセ)に髣髴(さもにたり)。
世(よ)に阿(おもね)り、民(たみ)に侫媚(へつら)ひ、
漫(みだり)に沙糖(さたう)を控(ひか)ふるは、法國菓子(フランスぐわし)にあらず

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 賓得(Pentax)S-M-C Takumar 1.8/55 @2.4~F4

【2016-11-18追記】:
此度(こだみ)は"咖哩(カレー)"。
米飯(こめのいひ)なかりしかば"麪麭(ぱん)"を用(つか)ふ。
なかなかに香辣(スパイシー)なれど、
大量(おほく)の洋葱(たまねぎ)による奧行(おくゆき)が今一(いまひと)つか?

"菓子(デセール)"は法國渡來(フランスわたり)の"草莓(いちご)の雪葩(そるべ)"。
(あまみ)、(さんみ)、(かをり)の調和(てうわ)が取(と)れ、
「實言(まこと)佳味(よきあぢ)!」と云ふべし。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

眼前(めのまへ)にて向調合(あはせな)んとするは、"ソース・ヴィネグレット"。
能(よ)く蔬菜(あをもの)に和(あ)へてサラドとなす。
この日(ひ)は"(テ)"として、"煎茶(せんちや)"を選擇(えらむ)。
京師(みやこ)、柳櫻園茶舖製(りうあうゑんちやほせい)の上等品(よきしな)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4

【2016-11-07追記】:
赤貧如洗(あらふがごときまづしさ)故(ゆゑ)、
「此度(こだみ)は"咖哩飯(かりいめし)"でも啖(くら)はゞや」と意(おも)ひしに、
啤酒燉牛肉(うしにくビールに)がござりまする」の誘惑(さそひ)に瞬殺(コロリ)。
その容(さま)、猫(ねこ)に木天蓼(またゝび)蜜(みつ)に蟻(あり)

かくて、選擇(えら)みし"D"なる品(しな)。
前菜(オードヴル)、湯(スープ)、肉(ヴィアンド)、菓子(デセール)、茶(テ)。
"テリーヌ・ド・カンパーニュ"を前菜(オードヴル)として擇(えら)み、
(ヴィアンド)が"啤酒燉牛肉(うしにくのビールに)"。

(スープ)は"胡蘿蔔(にんじん)の濃湯(ポタージュ)"、
菓子(デセール)は"法國冰酪(フランスのアイスクリン)ペドロヒメネス添(そ)へ"。
自家製(てづからこしらへたるもの)にはあらねど、法國渡來(ガリアわたり)の、
"テリーヌ・ド・カンパーニュ"と"冰酪(アイスクリン)"は尤美味(すこぶるうまし)。

手製(そのてになる)"啤酒燉牛肉(うしにくのビールに)"は勿論(いふもさらなり) 。
豪州牛(がうしうゝし)の頬肉(ほゝにく)を用(つか)ひ、
白耳義麥酒(ベルギービール)以(もて)燉込(ゆるりとにこ)む。
纔(わづ)か西洋時辰儀(せいやうとけい)にして一字間半(いちじかんはん)とのよし。

その味(あぢはひ)の複雜玄妙(おくぶかき)こと、深海(ふかきうみ)のごとし
徹底的(よ)く炒(いた)めたる洋葱(たまねぎ)に、
この白耳義啤酒(ベルギーびいる)固有(ならでは)の酸味(さんみ)と、
白胡椒(しろこせう)の馨(かをり)が加(くは)ゝる。

師傅(おやかた)に據(よ)らば、
「加旃(くはふるに)、"Veg broth(ベジ・ブロス)"の貢獻(てがら)あり」と、、。
蔬菜屑(あをものくづ)より叮嚀(ねんごろ)に引(ひ)きたるものにて、
駭(おどろ)くばかりに、淡麗(あはくきよらか)なる味(あぢはひ)。

"ペドロヒメネス"と云ふは、
西班牙(イスパニア)に産(さん)する葡萄(ぶだう)の種類(ひとつ)にして、
これを葡萄乾(ほしぶだう)とし、
白蘭地(ブランデー)に漬(つ)けたる雪利酒(シェリーしゆ)とのよし。

法國冰酪(フランスのアイスクリン)との相性(とりあはせ)たるや
正(まさ)に、梅(むめ)に鶯(うぐひす)唐獅子(からじゝ)に牡丹(ぼたん)
獨學(ひとりてならひ)」と謙遜(へりくだ)りながらも、
その技倆(うで)と感覺(センス)は近邊(あたり)で無雙(ならぶものなし)

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F4.5

【2016-10-21記】:
日光街道(につくわうかいだう)粕壁宿(かすかべじゆく)。
倩(つらつら)當地(このち)の西餐(せいやうれうり)を窺(うかゞ)ふに、
思(おも)ひ浮(う)かぶは、
地中海菜(ちゝゆうかいれうり)『シェ・ウメツ』、野味(けものにく)『アレコ・レーノ』。

當家(こちら)、『Bien』を知(し)れりしは、
今(いま)を遡(さかのぼ)ること、纔(はつ)か一月前(ひとつきまへ)。
この日(ひ)、西洋時辰儀(せいやうどけい)十三字(じふさんじ)、
勇躍(いさみて)扉(とびら)を開(ひら)く。

賈内(なか)に賓(まらうど)は居(を)らで、
御内儀(おかみ)、莞爾(につか)と小人(それがし)を迎(むか)ふ。
菜單(しながき)は黒板(こくばん)にあり。
肚工合(はらぐあひ)を考慮(かんがへ)、"C"を選擇(えらむ)。

湯(スープ)と菓子(デセール)は二者擇一(ふたつよりひとつえらむやりかた)。
躊躇(たゆた)ふことなく菓子(デセール)を擇(えら)み、
前菜(オードヴル)、(ヴィアンド)、菓子(デセール)、(テ)、
小菓子(プティフール)と相成(あひな)る流(なが)れ。

前菜(オードヴル)六種(むくさ)より"コルシカ島(たう)のテリーヌ"、
主菜(ヴィアンド/ポアソン)四種(よくさ)の中(なか)より、
"仔羊肉(こひつぢ)白葡萄酒煮(しろワインに)橙風味(だいだいのかをり)"、
菓子(デセール)四種(よくさ)より、"法國製(フランスの)冰酪(アイスクリン)"。

櫃臺(カウンタ)には午餐墊子(ランチョンマット)が敷(し)かれ、
その上(うへ)には、餐刀(ナイフ)と餐叉(フォーク)。
因(ちな)みに、設置法(おきかた)は、仰向(あふむ)け英國式(あんげりあしき)*)
餐巾(ナプキン)は大(おほ)きめの烹調紙(クッキングペーパー)のごときもの。

最初(いやさき)に、紅葡萄酒(あかワイン)を高脚盞(ぐらす)に貰(もら)ふ。
ほどなくして"コルシカ島(たう)のテリーヌ"が此方(こなた)に、、。
罐詰(かんづめ)のテリーヌを匙(さじ)にて粗(あら)く掬(すく)ひたるもの
生蔬菜(なまのあをもの)ゝ上(うへ)に載(の)る。

美味(よきあぢ)、
寔(まこと)、美味(よきあぢ)
テリーヌの壓倒的(ひれふさんばかりの)旨味(うまみ)に辭(ことば)を失(うしな)ふ
口内(くち)に殘(のこ)る膏(あぶら)は蔬菜(あをもの)にて漱(くちすゝ)ぐ

次(つ)いで、
"仔羊肉(こひつぢ)白葡萄酒煮(しろワインに)橙風味(オレンヂふうみ)"。
徐(おもぶる)にこれを吟味(あぢはふ)に、
秋毫(つゆ)臭氣(くさみ)なく、爽(さは)やかなる旨味(うまみ)が擴散(ひろがる)

(いろどり)も見事(みごと)。
乾燥蕃茄(ほしとまと)の(くれなゐ)、胡蘿蔔(にんじん)の(だいだい)、
西葫蘆(ズッキーニ)・西蘭花(ブロッコリ)の(みどり)、
黄椒(パプリカ)の(き)、香茹(しいたけ)の(くろ)、、。

麪麭(パン)は當地(このち)では珍(めづら)しき黑麥麪麭(ライむぎパン)。
福島(ふくしま)の麪麭商(パンや)に依頼(たの)みて誂(あつら)へたるものと云ふ。
塑料袋(ビニルぶくろ)入(い)りのせゐか、外皮(クラスト)が柔(やは)らか
氣泡(あは)も半點(いさゝか)小(ちい)さめ

"法國製(フランスせい)冰酪(アイスクリン)":
香草(ヴァニラ)の黒(くろ)き粒(つぶ)が顯著(あらは)
匙(さじ)にて掬(すく)ひ、これを堪能(あぢは)ふに、
一言(ひとこと)、「美味(びみ)!」と呟(つぶや)くほか、術(てだて)なし。

夫婦(めをと)兩個(ふたり)による零細(ほそぼそ)たる商賣(あきなひ)
東道(あるじ)、常(つね)に微笑(ほゝゑみ)を絶(た)やさで
心底(こゝろより)烹調(れうり)を愉(たの)しみ
賓(まらうど)を悦(よろこ)ばさんとす

六十歳(むそぢ)ばかりの好々爺(やさしきおきな)と推察(おも)ひしかど、
「滿五十二歳(まんいそぢあまりふたとせ)」とのこと。
ほゞ獨學(ひとりならひ)」と謙遜(へりくだる)。
とは云へ、『ダロワイヨ』、『マキシム』にて製麪麭(ぱんづくり)せしことありと、、。

この道(みち)を志(こゝろざ)す契機(きつかけ)はポール・ボキューズ
勿論(いふまでもなく)、新派法國菜(ヌーベルキュイジーヌ)の旗頭(はたがしら)。
近會(ちかごろ)流行(はやり)の烹調法(わざ)を嫌(きら)ひ
已(すで)に「古典(こてん)」とも呼(よ)ぶべきボキューズを敬(うやま)ふ。

店内(なか)に小洒落(こじやれ)たる景色(けしき)なく、
そこいらの家庭(いへ)のごとき設(しつら)へ・佇(たゞづま)ひ
とは云へ、鍋(なべ)の類(たぐひ)は悉(ことごと)く磨(みが)かれ
最上質(いとよ)き鏡(かゞみ)かと疑(うたが)はる。

廚(くりや)より流(なが)るゝ絲竹管弦(しちくゝわんげん)の索(たづ)ぬるに、
紛(まが)ふ方なき眞空管 増幅器(くわんきうアンプ)。
近傍(ちか)くの増幅器廠商(アンプのつくりて)が持込(もちこ)みたるものと云ふ。
その巧拙(よしあし)、審(つまび)らかならず。

小菓子(プティフール)は、洛(みやこ)への逆旅(たび)の土産(みやげ)とか。
それを古伊萬里(いにしへのいまり)の小皿(こざら)に、
咖啡(コーフィ)は徳國(ドイツ)Seltmann Weidenの器(うつは)に盛(も)る。
なかなかに粹(いき)で纖細(こまやか)なる配慮(こゝろくばり)

---------------------------------------
*)MSSBHNS氏 氏に據(よ)る

【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F4.5

  • 亭主(あるじ)、武井良明(たけゐよしあき)師傅(おやかた)【掲載許可濟】 ※2017-03撮影
  • 玻瓈杯(ぎやまんさかづき)に"赤葡萄酒(あかきえびかづらのさけ)"
  • "鴨肉(あひがも)リエット"

もっと見る

5位

三吉 (王子駅前、王子、飛鳥山 / 惣菜・デリ、揚げ物)

1回

  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 3.8
    • | サービス -
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2016/12訪問 2016/12/30

この色(いろ)は 煮〆(にしめ)に菊菜(きくな) 容器(いれもの)に 調理(つく)り世(よ)に售(う)る 飛鳥山(あすかのやま)に

平澤かまぼこ』より辭別(いとまごひ)し、雞卵燒(たまごやき)『扇屋』に、、。
と、「商賣(あきなひ)は正午(うまのこく)より」なる貼紙(はりがみ)。
加旃(しかのみならず)、「豫約(よやく)の客(かく)のみ」、とのことなれば、
速(すみ)やかに踵(くびす)を返(かへ)す。

鰻(むなぎ)『川治』を右手(めて)に眺(なが)めつ、
豫(かね)て狙(ねら)ひ定(さだ)めし惣菜賣(そうざいうり)『三吉』に、、。
店頭(みせのまへ)には「お惣菜(そうざい)」の幟(のぼり)はためき、
今(いま)や遲(おそ)しと賓(まらうど)を俟(まつ)。

商店(あきなひのいへ)兼(か)ねたる住居(すまひ)。
大地震(おほなゐ)來(きた)らば、忽地(たちまち)に崩壞(こぼ)れ、
火災(ひのわざはひ)あらば、疾(と)く灰燼(はい)と歸(な)るは必定(あきらか)。
今(いま)や稀有(まれ)なる純木造建築(きばかりよりなるたてもの)。

扉(とびら)を開(ひら)き、
「御免(ごめん)下(くだ)されィ~」と敷居(しきゐ)を跨(また)ぐ。
莞忝(につか)と迎(むか)ふる御内儀(おかみ)は、
山手夫人(やまのてのおくがた)を髣髴(おもは)す上品(ひんのよ)さ

年齢(よはひ)滿(まん)で七十歳(なゝそぢ)。
若(わか)き頃(ころ)は、さぞや沈魚落雁閉月羞花(はなもはぢらふうつくしさ)。
舎(いへ)は「築(たてゝよりこのかた)大約(およそ)六十年(むそとせ)」。
因(ちな)みに、當家(こちら)、「借家(かりたるいへ)」とのよし。

御内儀(おかみ)、
今(いま)將(まさ)に掻揚(かきあげ)を調理(つく)らんとするところ。
櫻蝦(さくらえび)、洋葱(たまねぎ)、青椒(ぴいまん)を衣(ころも)に混(ま)ぜ、
油鍋(あぶらなべ)に投入(なげい)るゝべき頃合(ころあひ)を窺(うかゞ)ふ。

僕(やつかれ)、
件(くだん)の"掻揚(かきあげ)"に心惹(こゝろひ)かれつゝ、
"春菊(しゆんぎく)胡麻和(ごまあ)へ"、"煮〆(にしめ)"、
"フジッリ蛋黃醬(マヨネイズ)サラド"の三品(みしな)を家苞(いへつと)となす。

"フジッリ"とは半點(いさゝか)目新(めあらた)しきものなれど、
どれもこれも、典型的(よくある)和惣菜(ひのもとのいへのたべもの)
一品(ひとしな)一品(ひとしな)、
丹精込(こゝろをこ)めて御内儀(おかみ)の調理(こしら)へたるもの

"煮〆(にしめ)"を見(み)るに、
里芋(さといも)、香茹(しいたけ)、胡蘿蔔(にんじん)、蒟蒻(こんにやく)、
蓮根(はちす)、牛蒡(ごばう)、莢隱元(さやいんげん)から構成(な)る。
莢隱元(さやいんげん)は色止(いろど)めされ、彩(いろどり)鮮(あざ)やか

里芋(さといも)には均一(ひとし)く味(あぢ)が滲(し)み
さりとて、煮崩(にくづ)れもせで、穩當(おだやか)なる味(あぢはひ)
關東(とりがなくあづま)の鰹・醤油味(かつをしやうゆあぢ)なれど、
味覺(した)に馴染(なじ)みて寸毫(つゆ)櫡(はし)の止(と)まる兆(きざ)しなし

"フジッリ蛋黃醬(マヨネイズ)サラド"には、
適度(ほどよ)く(さんみ)と(しほ)が效(き)ゝ、
胡蘿蔔(にんじん)、黄瓜(きうり)の齒應(はごた)へが心持(こゝち)よし
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

"春菊(しゆんぎく)胡麻和(ごまあ)へ"にも心和(こゝろなご)む。
どれもこれも、和惣菜(わそうざい)として平均的(つきなみ)。
普通(なみ)は普通(なみ)なれど、
今(いま)や、その和惣菜(ひのもとのいへでくらふたべもの)そのものが稀有(まれ)

世(よ)の中(なか)より眞艫(まとも)なる家常菜(いへめし)失(う)せて、
隱々(かすか)に遺(のこ)る月竝(つきなみ)の和惣菜(おかず)が
至高(このうへな)き御馳走(くひもの)へと昇格(なる)
これ、★★★(うめ)變(へん)じて★★★★(たけ)と化(な)る所以(ことのよし)。

笑止千萬(おほいにわらふべし)!
"和惣菜(わそうざい)"を嘯(うた)ひつ、
漫(みだり)に孔方(ぜに)儲(まう)けに直走(ひたはし)る
OG辨當』、『KK家』、『R●/●』の小賢(こざか)しき商賣(あきなひ)を。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
      高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 2/21 @F8
      東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4

  • 御内儀(おかみ) 【掲載許可濟】
  • 女将(おかみ) 【掲載許可濟】
  • 構(かま)へ

もっと見る

6位

福楽 (王子駅前、王子、飛鳥山 / ラーメン)

1回

  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 3.5
    • | サービス 3.6
    • | 雰囲気 4.2
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2016/12訪問 2016/12/30

『福樂』に 餛飩麪(わんたんめん)の 湯(しる)呑(の)めば むべこの味(あぢ)を 「雞(かしは)」と云ふらむ

三吉』にて惣菜(さうざい)三品(みしな)沽(か)ひ求(もと)め、
嚮(むかふそのさ)き、當家(こちら)『福樂』。
これぞ、一點(ひとつ)の曇(くもり)りもなき"街場中華(まちばちゆうくわ)"。
排山倒海(おしもおされもせ)ぬ往古(いにしへ)の拉麪店(らあめんや)。

實言(まこと)、威風堂々(みごと)なる木造(もくざう)モルタル造築(つくり)。
この店舖(みせ)を守(まも)り、板場(いたば)に立(た)つは、
七十歳(なゝそぢ)過(す)ぎと思(おぼ)しき東道(あるじ)に御内儀(おかみ)。
阿吽(あうん)の呼吸(いき)にて烹調(めしづくり)に邁進(いそし)む。

創業(あきなひをはじ)めて以來(よりこのかた)大約(およそ)五十年(いそとせ)。
掌柜(あるじ)、元々(もともと)は奉公人(つとめにん)と云ふ。
何故(なんのゆゑ)に"拉麪(らあめん)作(づく)り"を活業(なりはひ)となしたるか、
詳細(つまび)らかならず。

小人(それがし)一人故(ひとりゆゑ)、櫃臺(かうんた)に坐(すは)らんとするや、
東道(あるじ)、掌(たなぞこ)を表(おもて)に翻(ひるがへ)し、
どうぞ、あちらが空(あ)いてござりまする」と配慮(こゝろくばり)。
あな嬉(うれ)し哉(や)、拉麪店(らあめんや)!

案下某生再説(それはさておき)、
壁(かべ)の菜單(しながき)より點菜(しなえらみ)。
躊躇(たゆた)ふことなく選擇(えら)みし"餛飩麪(わんたんめん)"、
對價(あたひ)、六百圓也(ろつぴやくゑんなり)。

元來(もとより)、"餛飩麪(わんたんめん)"と云ふは、
小人(それがし)幼(いとけな)き砌(みぎり)、
吾(われ)大人(おとな)とならば、恣(ほしいまゝ)に啖之(これをくら)はん」、
と夢(ゆめ)に見(み)たる品(しな)。

因(ちな)みに、(さんはい)近邊(あたり)では"餛飩(わんたん)"と書(か)き、
(くわんとん)では"雲吞(わんたん)"と記(しる)す。
異朝(もろこし)の"餛飩(わんたん)"は肉餡(にくあん)多(おほ)きものなれど、
本朝(わがくに)のそれは小指(こゆび)の先(さき)ほどの大(おほ)きさ

當家(こちら)の"餛飩(わんたん)":
形状(かたち)こそ夏華(あちら)のものと異質(こと)なれど
"正宗餛飩(ほんばのわんたん)"に肉薄(せま)るほどの量(かさ)
芝麻油(ごまあぶら)の芳香(かをり)もまた共通(おなじ)。

餛飩以外(わんたんをのぞ)く具材(ぐ)は、
叉燒(やきぶた)、鳴門卷(なるとまき)、筍乾(めんま)、菠薐草(はうれんさう)。
扨(さて)、その(しる)はと窺(うかゞ)ふに、
主體(はしらとなるもの)は、昔(むかし)ながらの雞骨(とりがら)+味精(あれ)。

濃(こ)きに過(す)ぎず、淡(あは)きに流(なが)れぬ調味(あぢつけ)
一口(ひとくち)、また一口(ひとくち)。
肚(はら)に、『平澤かまぼこ』が"おでん"の汁(しる)殘留(のこ)れど、
過半(あらかた)吭(のんど)の奧(おく)に、、。

小人(それがし)を除外(のぞ)き、
客(かく)は悉(ことごと)く土地(うぶすな)の民(たみ)
老翁(おきな)、(おみな)、大工(だいく)、(とび)の類(たぐひ)まで、、。
開店(みせびらき)纔(はつ)か十分(じつぷん)で滿席(せきはうまれり)

これぞ、
街場中華(まちばちゆうくわ)の鑑(かゞみ)」、
至高(このうへな)き大衆食堂(たみのためのめしや)」。
かゝる鋪(みせ)、今(いま)や東都(えど)では風前(かぜのまへ)の燈火(ともしび)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4
      高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 2/21 @F5.6~F11

  • 主人(あるじ) 【撮影許可濟】
  • 御内儀(おかみ) 【撮影許可濟】
  • 構(かま)へ

もっと見る

7位

いりむら (とうきょうスカイツリー、押上、曳舟 / せんべい)

7回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2022/10訪問 2022/10/13

尋常(つね)のごとし



---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8
     安徽長庚光學(Venus Optics)老蛙(LAOWA)2.8/9 ZERO-D @F8
            * * * * * * * * * * *
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Flektogon 2.4/35 @F2.8 ※2020-06
靑柳正家』訪問(たづね)て『いりむら』素通(すどほ)りするは、
宛然(あたかも)、
山谷堀(さんやぼり)に遠征(ゆ)きて大門(おほもん)潛(くゞ)らざるがごとし。
、、と云ふ經緯(いきさつ)にて當家(こちら)『いりむら』。

入口附近(いりぐちゝちかく)には"紀州備長炭(あのしろずみ)"が山積(やまづみ)。
昔日(むかし)は外面(とのも)に野積(のづみ)せしも、
 價格(ね)も昂騰(はねあが)り物騒(ものさはがし)き時世(よ)ゆゑ、、」
とは亭主(あるじ)の談(はなし)。

通例(つね)のごとく、
"生醬油煎餠(きじやうゆせん遍゛以)"+"巨勝煎餠(ごません遍゛以)"、
對價(あたひ)、一千三十圓也(いつせんさんじふゑんなり)。
風味(あぢとかをり)、亦(また)、常態(つね)に無所變化(ことなるところなし)。

---------------------------------------
【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:銘匠光學 TTArtisan 1.4/35 @F4
     安徽長庚光學(Venus Optics)老蛙(LAOWA)2.8/9 ZERO-D @F8
     東京光機(Tokina)ATX Macro 2.5/90 @F2.5 ※主人(あるじ)※2016-03
向島(むかふじま)に來(きたり)て『いりむら』行(ゆ)かざるは、
宛然(あたかも)、
山谷堀(さんやぼり)に行(ゆ)きて大門(おほもん)入(くゞ)らざるがごとし。
これを野暮(やぼ)な堅物(かたぶつ)、"石部金吉(いしべきんきち)"と云ふ。

饐膳(すゑぜん)噉(くら)ふは侠(をとこ)の恥辱(はぢ)。 ←アタリマヘダ
"紀州備長炭(このすみ)"用(つか)ふも職人(をとこ)の意地(いぢ)
、、と云ふ仔細(わけ)にて、またも"生醬油煎餠(きじやうゆせん遍゛以)"、
五葉(いつひら)、對價(あたひ)、七百五十圓也(しちひやくごじふゑんなり)。

草加宿(さうかじゆく)など、日光街道(につくわうかいだう)には、
"鹽煎餠(しほせん遍゛以)"炙(や)きて、業(なりはひ)とするもの多(おほ)し。
とは云へ、臣僕(やつがれ)知(し)る限(かぎ)りでは、
いりむら』に贏(まさ)る"鹽煎餠(もの)"無(なし)。

やはり、その相違點(たがひ)は、
"(やき)"の叮嚀(ねんごろ)さと、形狀(すがたかたち)の平面性(ひらたさ)。
愚按(やつがれおもふに)、
火力(ひのちから)强(つよ)き"紀州備長炭(すみ)"の佐(たすけ)もあるべし。

"紀州備長炭(このすみ)"ありても、技倆(うで)無(なくば)、
「寶(たから)の持腐(もちぐさ)れ」、
(ねこ)に小判(こばん)」、「(ゐのこ)に珍珠(たま)」。
"石部金吉(いしべきんきち)"に大夫(たいふ)・花魁(おいらん)。 ←マタカヨ!

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F4
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Flektogon 2.8/20 @F11
そも晨旦(もろこし)の"煎餠(ヂェンピン)"なるもの:
"(ピン)"、
i.e.,(すなはち)、"(ミェン、=むぎのこ)"をば、
能(よく)水(みづ)に揑(こね)て、煎(や)きあげたるものを指(さ)す。

本朝(わがくに)でも、
"倭名類聚抄<62/71>"中(のなか)、"煎餠(せんへ)"の説明(はなし)として、
油を以て"小麥麪"を熬(いる)之名也」とある。
旣述(すでにのべたること)なれば、仔細(こまけーこと©毒ぱいせん)は省略(はぶく)。

愚按(やつがれおもふに)、
"粳粉(うるのこめこ)"を用(つか)ふ醬油味(しやうゆあぢ)のものが、
"煎餠(せん遍゛以)"の代表格(かほ)となりしは大正時代以降(たいしやうよりのち)
それとて、嘗(かつ)ての呼稱(よびな)は"鹽煎餠(しほせん遍゛以)"。

當家(こちら)、
草加(センベーシチ©毒ぱいせん)や淺草(あさくさ)と同樣(おなじく)、
醬油味(しやうゆあぢ)の"煎餠(せん遍゛以)"を炰(や)きて業(なりはひ)とす。。
抑制(ひか)へめながらも"味精(あれ)"を使用(つかふ)。

以爲(おもふに)、
"醬油煎餠(しやうゆせん遍゛以)"なるもの、
"磯邊燒(いそべやき)"、"燒玉蜀黍(やきなんばんきび)"と列(なら)び、
「"味精(あれ)"の效果(きゝめ)絕大(きはめてつよし)」と斷言(いはざるべからず)。

その功罪・是非(よしあし)は保留(さてお)き、
"醬油煎餠(しやうゆせん遍゛以)"には種々(さまざま)なる變異(かはりだね)あり。
當家(こちら)なら、
"生醬油(きじやうゆ)"、"胡麻(ごま)"、"雙目糖(ざらめ)"、等々(などなど)、、。

「"最適解(いとよきこたへ)"は非唯一(たゞひとつにあらず)
と云ふが、冢中枯骨(くたばりそこなひのそれがし)が信念(かたきおもひ)。
そのどれもが、極品(いたゞきをきはめたるよきしな)なれど、
强(し)ひて一(ひとつ)選擇(えらむ)なら、やはり、"生醬油(きじやうゆ)"歟(か)?

"生醬油(きじやうゆ)"には"(あまみ)"不添加(くはへ)ぬ尖鋭性(するどさ)があり、
"胡麻(ごま)"には芝麻(ごま)固有(ならでは)の風韻(かをり)、
"雙目糖(ざらめ)"には"(あまみ)"との競演(きそひあひ)が存在(ある)。
加旃(しかのみならず)、"粗目糖(ざらめ)"の齒應(はごた)へまで、、。

然(しか)はあれど、臣僕(やつがれ)、
當家(こちら)に無(な)き"梅雙目(むめざらめ)"をより嗜好(このむ)。
"(あまみ)"+"(すみ)"の相性(なかのよさ、たすけあひ)は、
"古滷肉(すぶた)"、"草莓大福餈(いちごだいふくもちひ)"で明若觀火(あきらか)。

より正確(たゞし)くは、
"(あまみ)"+"(すみ)"+"(しほけ)"、と云ふべき歟(か)?
"糖醋排骨(すぶた)"は勿論(いふまでもなく)、
"草莓大福餈(いちごだいふくもちひ)"にも極少量(わづかばかり)の"鹽(しほ)"。

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Flektogon 2.4/35 @F2.8~F4
靑柳正家』の隣家(となり)が『波むら』、二軒先(にけんさき)が『いりむら』。
この界隈(あたり)は東都(えど)でも屈指(ゆびをり)の"料亭街(れうていがい)"。
i.e.,(すなはち)、
往古(そのかみ)の"料理茶屋(れうりぢャや)"が犇(ひしめ)く。

、、と云ふは昭和後期(せうわのをはり)迄(まで)の噺(はなし)にて、
"赤坂(あかさか)"、"柳橋(やなぎ者゛し)"同樣(とおなじく)、
釜底游魚(かまぞこのうを)」、「衰頽一途(ほろびのみちをあゆむばかり)」。
あるいは、「磯野波平(いそのなみへい)が天窗(あたま)」と號(い)ふべき歟(か)?

嘗(かつ)て"料亭(れうてい)"の家苞(いへつと)として需(もとめ)られし、
いりむら』の"煎餠(せん遍゛以)"も、販路(うりさき)を喪失(うしな)ひ
現今(いま)のごとき×三條慘状(ひどきありさま)に、、。
普請(ふしん)するにも無錢(さきだつものがなし)」と大歎息(おほいになげく)。

それでも、
頑(かたく)なに"紀州備長炭(きしうびんちやうたん)"を用(つか)ひ、
叮嚀(ねんごろ)に百邊(もゝたび)返(かへ)して"煎餠(せん遍゛以)"を炮(や)く。
〽炰(や)くや亭主(あるじ)の膝(ひざ)痛(いた)めつゝ。

終日(ひねもす)正坐(せいざ)で燒(や)き續(つゞ)け
膝(ひざ)に深手(ふかで)を負(を)ひ、
なほ、零細(ほそぼそ)と商賣(あきな)ふは、敬服(うやまふ)に値(あたひ)す。
望月(もちづき)眺(なが)めつゝ、一枚(いちまい)、復一枚(またいちまい)

「"番町皿屋敷(ばんちやうさらやしき)"でもあるまいに!、
 それとも松尾糧食(まつを)の"河童牌龍蝦片(あれ)"歟(か)ッ!?」
との謗(そし)りは甘受(あまんじてうけ)ねばならぬ。
この美味(あぢ)、どうにも×都丸紗也華(とまるさやくわ)〇不能停(とまるあたはず)。

---------------------------------------
【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 賓得(Pentax)微距琢磨(Macro Takumar)4/50 @F5.6
     東京光機(Tokina)ATX Macro 2.5/90 @F2.5 ※主人(あるじ)
     興和(Kowa) Prominar FL 5.6/500 @F6.3 ※朧月(おぼろづき)
うを德』の晝飧(ひるめし)には霎時(しばし)間(ま)があり、
向嶋(むかふじま)散策(すゞろあるき)。
カド』の隅(すみ)に半晌(はんとき)ほど長閑(のんび)り寛(くつろ)ぎ、
通例(つね)のごとく『いりむら』→『長命寺櫻もち 山本』にて家苞(いへつと)。

當家(こちら)に邂逅(たまたまめぐりあひ)しは八年前(やとせまへ)。
萬事(よろづ)、その頃(ころ)と大差(おほきくことな)るところなし。
紀州備長炭(きしうびんちやうたん)を用(つか)ひ、叮嚀(ねんごろ)に炙(や)く
東都(えど)生(む)まれには堪(たま)らぬ漿醤味(しやうゆあぢ)。

他(ほか)の客(きやく)と遭遇(はちあは)せしたる例(ためし)なし。
"入村清司"なる表札(へうさつ)を除(のぞ)き、屋號(やがう)など皆無(なし)
加旃(しかのみならず)、得意先(とくいさき)たる近邊(あたり)の料亭(れうてい)は、
年々歳々(としをおふごとに)寂(さび)れ、減少一途(かずをへらすばかり)。

"へ●すばかり"は、蟹(かに)の歩(あゆ)みの横濱曙町(よこはまあけぼのちやう)。
古(いにしへ)の、
武州久良岐郡(むさしのくにくらきのこほり)吉田新田(よしだしんでん)。
と、向嶋小梅町(むかふじまこうめちやう)とは無縁(なんのゆかりもなし)。

住田河(すみだがは)の東(ひがし)なる葛飾郡(かつしかのこほり)は、
江戸初期(えどのはじめ)まで下總國(しもふさのくに)に歸屬(ふくまる)。
その後(のち)、葛飾郡(かつしかのこほり)は天領(てんりやう)となり、
武藏國(むさしのくに)ゝ編入(くみいれらる)。

向嶋(むかふじま)もまた然(しか)り。
その名(な)の由緒來歴(すぢめ)は、諸説(さまざまなるはなし)あり。
一日三龝(いちにちさんしう)の感慨(おもひ)で待望(くびをながくしてまちわぶ)るは、
櫻花(さくら)の季(ころ)、藝者衆(きれいどころ)の晴姿(はれすがた)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Flektogon 2.8/20 @F11
      東京光機(とうきやうくわうき)Tokina AT-X 微距(Macro)2.5/90 @F2.5 
             ※櫻花(さくら)+藝者衆(きれいどころ)
【2016-12-12追記】:
丸常鮨』より辭別(いとまごひ)し、當家(こちら)に、、。
尤(いと)高貴(たふと)き"紀州備長炭(きしうびんちやうたん)"を質問(と)ふに、
入手困難(てにいれがた)しと云へど、これを貫(つらぬ)く。」とのよし。
故(ゆゑ)に、かゝる茅屋舎(ぼろや)にて候(さふらふ)。」とうち哭(なげ)く。

【2016-04-02訂正】:
纔(わづ)か二日前(ふつかまへ)、
頃(ころ)は、平成廿八年(にじふはちねん)三月三十日(さんがつみそか)のこと。
向島(むかふじま)の煎餠店(せん遍゛以や)の東道(あるじ)に跟(したが)ひ、
角田川(すみだがは)の堤(つゝみ)に、、。

彼此(をちこち)に櫻花(さくら)が咲(さ)き亂(みだ)れ、
夥(あまた)向島藝者衆(むかふじまのきれいどころ)が溢(あふ)る。
かくて、藝者衆(きれいどころ)が姿(すがた)を拝(をが)むも擅(ほしいまゝ)
眼福(めのこやし)、眼福(めのこやし)!」

春信(はるのぶ)の儚(はかな)げなる乙女(をとめ)、
歌麿(うたまろ)の嬌(なまめかし)くも妖(あや)しき大首繪(おほくびゑ)、
父(ちゝ)をも凌(しの)ぐ応爲(おゑい)の艶(あで)やかなる美人(たをやめ)。
江戸(えど)の昔(むかし)なら如何(いか)なる繪(ゑ)となりしことか?

■誤り(こゝから)===================================
【20××-04-01追記】:
遙(はる)か十年先(とゝせさき)、
頃(ころ)は、平成卅八年(さんじふはちねん)四月朔日(しがつゝいたち)のこと。
向島(むかふじま)の煎餠店(せん遍゛以や)の東道(あるじ)に跟(したが)ひ、
角田川(すみだがは)の堤(つゝみ)に、、。

彼此(をちこち)に櫻花(さくら)が咲(さ)き亂(みだ)れ、
夥(あまた)向島藝者衆(むかふじまのきれいどころ)が溢(あふ)る。
かくて、藝者衆(きれいどころ)と遊(あそ)び戲(たはふ)るも擅(ほしいまゝ)
酒池肉林(さけをもつていけとなしにくをかけてはやしとなす)」

亂暴狼藉(らんぼうらうぜき)、惡逆非道(あくぎやくひだう)を窮(きは)めし、
夏(か)の桀王(けつわう)、殷(いん)の紂王(ちうわう)、
本朝(わがくに)平清盛入道(たひらのきよもりにふだう)もかくやあらん。
これぞ奸邪(よこしま)なる漢(をのこ)の夢(ゆめ)」!
■誤り(こゝまで)===================================

尤(いと)價格(ね)の髙(たか)き紀州備長炭(きのくにのしろずみ)。
あくまでもこれを用(つか)ひ、
叮嚀(ねんごろ)に燒(や)き上(あ)げたる煎餠(せん遍゛以)の數々(かずかず)。
この日(ひ)は"生醤油(きじやうゆ)"に"胡麻(ごま)"の二種(ふたくさ)。

うらゝかなる春(はる)の陽光(ひのひかり)を恣(ほしいまゝ)に浴(あ)び、
缺片(かけら)一(ひと)つ殘(のこ)さで、これを貪(むさぼ)り竭(つく)す。
その景状(さま)、
行燈(あんどん)の油(あぶら)を舐(な)める怪猫(ばけねこ)に似(に)たり。

當家(こちら)の東道(あるじ):
昭和廿一丙戌歳(せうわにじふいちひのえいぬどし)生(む)まれの二代目(にだいめ)。
已(すで)に三代目(さんだいめ)が後繼(あとをつ)ぐと云ふ。
この儘(まゝ)の姿(すがた)で末永(すゑなが)く續(つゞ)かんことを祈(いの)る。

----------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7-II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東京光機(とうきやうくわうき)Tokina AT-X 微距(Macro)2.5/90 @F2.5

【2015-03-20追記】:
"MSG"すなはち、"味精(あぢのもと)"の類(たぐひ):
世(よ)の食通(しよくつふ)より忌嫌(いみきら)はるゝ容(さま)、
宛然(あたかも)、野山(のやま)に蠢(うごめ)く蛇蝎(へびさそり)のごとし。
あるいは、海邊(うみべ)に浮(う)かむ水母(くらげ)に異(こと)ならず。

とは云へ、古(いにしへ)より巷(ちまた)に蔓延(はびこ)り、多いに用(つか)はる。
その故(ゆゑ)如何(いかん)となれば、
人類(ひと)は甜(あまき)、旨(うま)きを心持(こゝち)よしとするものにて、
能(よ)く、旨味(うまみ)足(た)らざるを補(おぎな)ふものなればなり。

僕(やつかれ)、かゝるもの、置(お)かず、頼(たよ)らで、五十年(いそとせ)の春龝(つきひ)。
しかはあれど、懐(なつか)しく思(おも)ふは、
醤油(しやうゆ)に"味の素"をば二振(ふたふ)りほどし、叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)りたる、
"磯邊燒(いそべやき)"に"(や)き玉蜀黍(たうきび)"の美味(あぢはひ)。

"煎餠(せん遍゛以)"また然(しか)り。
MSG(あぢのもと)の尤(いと)稀薄(うす)き根津(ねづ)『大黒屋』より、
適量(ほどよ)きMSG(あぢのもと)を用(つか)ふ『いりむら』を嗜(この)む。
故(ゆゑ)に、萬民(よろづのたみ)には薦(すゝ)めがたし!!

----------------------------------
【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:...蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZK @F2.0

【2011-10-10追記】:
有一日(あるひ)、『うを徳』→『長命寺門前 山本』を經て當家(こちら)に、、。
賈内(なか)に家人(ひと)の氣配(けはひ)なく、大音聲(だいおんじやう)にて呼ばゝれど、
さらに出來(いできた)る兆(きざし)なし。
聲(こゑ)を限(かぎ)りと喚(をめ)き叫ぶや漸(やうや)う家人(ひと)の氣配(けはひ)。

これ當家(こちら)の御内儀(おかみ)にて、愛想笑(あいそわら)ひこそあらねど、
能(よ)く、相知(みしら)ぬ客(きやく)にもさりげなく意(こゝろ)を配(くば)る。
年々歳々(としごとに)減りゆく向島(むかふじま)の料亭(れうりぢャや)を控(ひか)へ、
招牌(かんばん)もなく、屋號(やがう)すら定(さだ)かならざる古(ふる)き普請(ふしん)

此度(こだみ)も『生醤油(きじやうゆ)』、『胡麻(ごま)』に、『粗目(ざらめ)』。
「今時(いまどき)價格(ね)の張る紀州備長炭(きしうびんちやうたん)に拘(こだは)るは、
さぞや、鴻鵠之志(けだかきこゝろざし)にやあらん」と言問(ことゝ)はゞ、
俄(には)かにその口許(くちもと)を綻(ほころば)す。

御内儀(おかみ)囘答(いら)へて曰(いへら)く、
火も強(つよ)く、煙(けぶり)も立ゝず、燒上がりの相違(たが)ひも歴然(あきらか)。」
「、、、と申(まう)せども、これ吾(わ)が手になるにあらず。」
東道(あるじ)の姿を見しは、"粗目騒動(ざらめさはぎ)"の折(をり)の一度(ひとたび)のみ。

【2011-02-06追記】:
曳舟(ひきふね)より鳩の街(まち)を經(へ)て向島(むかふじま)なる當店(こちら)に。
此度(こだみ)も常に倣(なら)ひて、『胡麻(ごま)』、『粗目(ざらめ)』を頼むや、
御内儀(おかみ)、廛(みせ)の彼此(をちこち) を探索(さが)して徘徊(うろつ)きまはる。
奧(おく)に戻りて主人(あるじ)になにやら聲(こゑ)をかけ、主人まで此方(こなた)に。

その仔細(わけ)を訊(たづ)ぬるに、
昨日(きのふ)の粗目(ざらめ)は一際(ひときは)上出來(じやうでき)なりしかば、
少しでも佳(よ)き品(しな)を渡(わた)し申(まう)さんがためなり。』
僕(やつかれ)がごとき一見客(いちげん)のために、夫婦(めをと)揃ひての大騒(おほさは)ぎ。

暫(しばら)く待(ま)つほどに、
積み重ねられたる一斗罐(いッとかん)の二段目(にだんめ)より件(くだん)の『(しな)』。
別の一斗罐(いッとかん)には出來たばかりの『生醤油(きじやうゆ)』があり、これも貰ふ。
その間(かん)、西洋時辰儀(せいやうどけい)にしておよそ五分(ごふん)。

備長炭、それも價(ね)の張る紀州備長炭(きしうびんちやうたん)を用(つか)ひ、
主人(あるじ)自(みづか)ら叮嚀(ねんごろ)に炙(や)き上げたるもの。
胡麻』、『粗目(ざらめ)』には味醂酒(みりん)を加へ、『生醤油』はこれを用ゐず。
骨董品(ふるだうぐ)を髣髴(おもはす)も御上(おかみ)の檢査(けんさ)を經たるもの。

【2010-12-07追記】:
この日、(はと)の街(まち)に妓女(ぢよらう)の殘香(のこりが)を求(もと)め、
向島(むまふじま)界隈(あたり)を彼此(をちこち)散策(すゞろあるき)。
この向島(むまふじま)一帯(ちかく)にありて、
(はと)の街(まち)』の『玉ノ井(たまのゐ)』と竝ぶは勿論(いふもさら)なり。

暫(しば)く歩(あり)くほどに、眼精(まなこ)奪ひし長屋造築(つくり)の茶店(ちやみせ)。
元々は藥局(くすりや)と思しく、此處彼處(こゝかしこ)に名殘(なごり)を留(とゞ)む。
主人(あるじ)に『(はと)の街』の淫賣宿(いんばいやど)の在處(ありか)を訊ね、
これを照相機(かめら)に、、、。

娼家(しやうか)、淫賣宿(いんばいやど)に加(くは)へ、
向朽(くちなん)とする魚屋(うをや)、銅板(あかゞね)葺きの米屋(こめや)までさまざま。
墨堤(つゝみ)に戻(もど)り、その儘(まゝ)見番通(けんばんどほ)りに向かふ。
狙(ねら)ふは煎餠(せん遍゛以)の『いりむら』たゞ一軒(いつけん)。

此度(こだみ)は、『胡麻(ごま)』、『生醤油』に加(くは)へ、『粗目』も。
當店(こちら)で自(みづか)ら炙(や)く煎餠(せん遍゛以)は、この三品(みしな)に加へ、
『(青)海苔(のり)』、『唐辛子(たうがらし)』、それにまう一品。
粗目(ざらめ)』はビニル袋に入りて、その屋號(やがう)『いりむら』なりと知る。

【2010-11-29記】:
有一日(あるひ)、長閑(のどけ)き光に誘はれ向島(むかふじま)漫歩(すゞろある)き。
目星(めぼし)の天麩羅屋(てんぷらや)の引(ひ)き戸(ど)を開(あ)け、
商賣(あきなひ)のさまを訊ぬるに、晝飧(ひるげ)は供(いだ)さず、夜のみの商賣と。
已むことを得ずして踵(きびす)を返し、見番通(けんばんどほ)りを徘徊(うろつく)。

すると目の前には、古式蒼然(ふるめかしげ)なる木造(もくざう)モルタル造築(づくり)。
店に屋號(やがう)らしきものはなく、たゞ『入村清司』なる表札(へうさつ)がかゝるのみ。
駄菓子屋(だぐわしや)か、麪麭屋(ぱんや)かと訝(いぶか)りつゝ奧を見やれば、
さまざまなる煎餠(せん遍゛以)が居竝(ゐなら)ぶ。

その晌(とき)、現(あらは)れ出(いで)しは、當店(こちら)の女將(おかみ)。
紛(まぎ)れもなく三代(さんだい)に及(およ)ぶ煎餠屋(せん遍゛以や)。
夥(あまた)煎餠ある中に、當家(こちら)で炙(や)きしは、纔(わづ)かに六種(むくさ)。
その中(なか)より、『胡麻(ごま)』と『生醤油(きじやうゆ)』を選(えら)む。

ハトロン紙(し)の紙袋(かみぶくろ)に乾燥劑(かんさうざい)を封(ふう)じ入れ、
ビニル袋(ぶくろ)にて覆(おほ)ひてこれを閉(と)づ。
この紙袋(かみぶくろ)にも屋號(やがう)らしきものはなし
傍(かたは)らに控(ひかへ)しは寺岡精工發條秤(ばねばかり)。

案下某生再説(それはさておき)、日光街道(につこうかいだう)には煎餠屋(せん遍゛以や)多し。
武州(ぶしう)草加宿(さうかじゆく)は遍(あまね)く知らるゝところなれど、
粕壁宿(かすかべ)、杉戸宿(すぎと)、さらには淺草(あさくさ)界隈(あたり)にも。
淺草の賑やかなるところを除かば、親族(うから)のみの商賣(あきなひ)が通常(つね)。

淺草の(みせ)も、粕壁のこちらも、母子のみの商賣(あきなひ)。
頑(かたく)なに祖(とほつおや)より傳はる手燒きの技藝(わざ)を墨守(まも)るも、
煎餠(せん遍゛以)そのものは取(と)るに足(た)るものなし。
こちらの煎餠(せん遍゛以)、僕(やつかれ)嗜(この)むところに寸毫(つゆ)と違はず。

生地(きぢ)そのものが月竝の煎餠生地(せん遍゛以きぢ)とは著しき相違(たがひ)。
拿(も)つに輕(かろ)く、覧 (み)るに罅割(ひゞわ)れが顯著(めだつ)。
罅割(ひゞわ)れより醤油(しやうゆ)が中まで滲み込み、聊(いさゝ)か鹹(しほから)し。
醤油鹹(しやうゆから)さを嗜(この)むか否(いな)かに依りて好き嫌ひも分るべし。

この後、晝飧(ひるめし)啖(くら)ひし『Makino』の御内儀(おかみ)に據らば、
嘗て界隈(あたり)に百五十(もゝあまりいそ)ほど犇(ひし)めきし料理茶屋(れうりぢャや)。
今では纔(わづ)かに十七(とほあまりなゝつ)と櫛(くし)の齒の拔け落ちたるがごとし。
當家(こちら)のせん遍゛以はそもそも周邊(あたり)の料理茶屋向けのものとか。

--------------------------------
注意(ちゆうい)
   ・旨味調味料(うまみてうみれう)は用(つか)ふてござる。
   ・醤油(しやうゆ)が聊(いさゝ)か強(つよ)めでござる。
--------------------------------

  • 東道(あるじ)【撮影許可済】2020-06撮影
  • "生醬油煎餠(きじやうゆせん遍゛以)"
  • "生醬油煎餠(きじやうゆせん遍゛以)"

もっと見る

8位

味治 (中野、新井薬師前 / うなぎ、串焼き、居酒屋)

1回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 3.6
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2016/12訪問 2017/06/11

俺(おれ)がため 『味治(みはる)@中野(なかの)』に 鰻(むなぎ)喰(く)ふ 主人(あるじ)衣手(ころもで)に 灰(はい)は降(ふ)りつゝ

およそ(むなぎ)なるもの、
親方(おやぢ)の顏(かほ)で喰(く)はす。」、
もしくは、「老板(あるじ)が顏(かほ)を啖(くら)ふ」もの。
今(いま)は亡(な)き『色川』六代目(ろくだいめ)よく體現(これをあらはす)。

有一日(あるひ)、透鏡(れんず)漁(あさ)りに久方(ひさかた)ぶりの中野(なかの)。
廿年前(はたとせまへ)なら、
創業(あきなひはじ)めて間(ま)もなき『青葉』が通例(ならひ)なれど、
今(いま)や、夥(あまた)異邦人(よそのくにのたみ)の列(なら)ぶ舖(みせ)。

かくて、互聯網(ねッと)を弄(まさぐ)り、
知己(しりあひ)も薦(すゝ)むる當家(こちら)『味治』に、、。
所在地(ところ)は、件(くだん)の『青葉』より至近(いとちか)きところ。
"鰻丼(むなどん)"、"鰻重(むなぢゆう)"の二者擇一(ふたつにひとつ)。

この宵(よひ)は宴(うたげ)。
宴會(うたげ)に支障(さしさは)る量(かさ)は避(さ)けねばならず、
原來(もとより)、
"鰻重(むなぢゆう)"は"鰻丼(むなどん)"に比較(くら)べて、食(た)べづらきもの

かくて、
"鰻丼(むなどん)"、一千七百圓也(いつせんなゝひやくゑんなり)を注文(たのむ)。
"鰻重(むなぢゆう)"ですら對價(あたひ)三千圓(さんぜんゑん)と、
驚異的(おどろくべき)廉(やす)さ。

とは云へ、
當(こちら)の網絡記録(ぶろぐ)に仗(よ)らば、
鰻丼(むなどん) :\1,000 → \1,200 → \1,300(\1,350?)→ \1,700
鰻重(むなぢゆう):\1,900 → \2,200 → \2,500 → \3,000、とのよし。

"鰻丼(むなどん)"に"肝吸(きもすひ)"は附(つ)かず、
"肝吸(きもすひ)"には二百五十圓(にひやくごじふゑん)が要(い)る。
"鰻重(むなぢゆう)"なら"肝吸(きもすひ)"附(つ)き。
新香(かうのもの)は"糠漬(ぬかづけ)"。

"吸物(すひもの)"の調理(あぢつけ)は女兒(むすめさん)。
家族(うから)ばかりによる商賣(あきなひ)
"(さき)"と"白燒(しらやき)"までは濟(す)ませておき、
注文(ちゆうもん)ごとに、"(むし)"をかけ、"たれ炙(やき)"を行(おこな)ふ。

熱源(ひ)は炭火(すみび)。
價格(ね)の廉(やす)き大鋸炭(おがたん)*)なれど、
備長炭 (びんちやうたん)に比較(くら)べ、
"持(も)ち"こそ異(こと)なれど、火力(ひのちから)は無遜色(かはらず)。」

俟(まつ)こと大約(およそ)小半晌(こはんとき、=30分)。
件(くだん)の"鰻丼(むなどん)"が此方(こなた)に、、。
"(やき)"は名(な)のある店(みせ)ほど叮嚀(ねんごろ)ならねど
嫌(いや)な焦(こ)げ目(め)もなく、"鰻丼(むなどん)"として適切(ほどよし)

くどき甜(あま)さも、味(あぢ)の濃(こ)さもなく
これを搔込(かきこ)み、啖(くら)ひ盡(つく)す
かくて、瞬時(またゝくうち)に碗(どんぶりばち)は空(から)に、、。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

(わん)、新香(かうのもの)も、なかなかの味(あぢはひ)。
東道(あるじ)、『色川』六代目(ろくだいめ)急逝後(かくれたまひしのち)、
東都(えど)屈指(ゆびをり)の面相(つらがまへ)
職人歴(しよくにんとして)大約(およそ)四十年(よそとせ)。

作業(しごと)が一段落(ひとおちゐ)するや、
俄頃(にはか)に柔和(やさし)き笑顔(ゑがほ)へと一變(かはる)
「『川二郎』を人(ひと)に任(まか)せ、
當地(こちら)に舖(みせ)を構(かま)へしは八年前(やとせまへ)」とのよし。

---------------------------------------
*)往古(そのかみ)は紀州備長炭(きしうびんちやうたん)との噂(うはさ)あり。

【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4
      高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 2/21 @F5.6~F8

  • 安堵(おちゐ)たる主人(あるじ) 【掲載許可濟】
  • 蒸籠(むしき)より取出(とりいだ)さんとする東道(あるじ) 【掲載許可濟】
  • 鰻丼(うなどん)、一式(ひとそろひ)

もっと見る

9位

まき村 (大森海岸、大森、立会川 / 日本料理)

2回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: -

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 ¥6,000~¥7,999

2018/01訪問 2018/01/27

大森(おほもり)の 冬(ふゆ)もまだ去(い)ぬ 『まき村』に 湯氣(ゆげ)立昇(たちのぼ)る 煲仔飯(どなべかまめし)

產土(うぶすな)よりほど近(ちか)き大森海岸(おほもりのうみべ)。
かつて、海水浴(みづあみ)、沙魚釣(はぜつ)りに戲(たはふれ)し海(うみ)。
近邊(あたり)に紫菜(のり)を天日乾燥(ひにほ)すさま、
今(いま)なほ、瞼(まぶた)に燒附(やきつ)きて離(はな)れず。

小人(それがし)、
紅本(あかほん)の★附(ほしつき)、
"食(た)べログ"四點超(よんてんごえ)の肆(みせ)を忌避(さ)くるが常態(つね)
當家(こちら)★★★(みつぼし)なれど、據(よんどころ)なき事情(わけ)あり。

梅酒(むめのさけ)にて咽喉(のみど)を潤(うるほ)すや、
舌先三寸(したさきさんずん)輕薄(あさはか)に、
怪(あやし)しげなる言舌(ごんぜつ)秋毫(つゆ)停止(とゞ)まる兆(きざ)しなし。
かくて、膳(ぜん)の内容(なかみ)は不正確(つまびらかならず)

東道(あるじ)、牧村親方(まきむらおやかた)、
漫(みだり)に華美虚飾(こけをおどすかざり)に逃走(にげわし)ることなく
季(とき)に適(かな)ふ上質素材(よきもの)を巧妙(たくみ)に用(つか)ひこなし
惜(を)しげもなく保持(も)てる技藝(わざ)を發揮(ふるふ)

饗應(もてなし)を含(ふく)め、
獅子奮迅(しゝふんじん)・八面六臂(はちめんろつぴ)の働(はたら)き。
その容(さま)、阿修羅(あしゆら)を髣髴(おもは)せ、
千手觀音(せんじゆくわんのん)かと錯覺(あやまつ)。

唐突(やぶからスティック)の"八寸(はつすん)"。
いや、これは"先附(さきづけ)"歟(か)?
電光石火(はかなきほどにすばや)く湯引(ゆびき)せし車蝦(くるまえび)、
"(いけ)"とも"茹上(ゆであ)げ"とも異(こと)なる食感(はごたへ・したざはり)。

倩(つらつら)"(わん)"の吸地(すひぢ)を窺(うかゞ)ふに、
纔(わづ)かに鰹脯(かつを)が嬴(か)ちながらも、突出(とびぬく)るわけでもなし
敢(あ)へて血合(ちあひ)混(ま)ぜたる鰹脯(かつをぶし)とのこと。
昆布(こぶ)は蝦夷地(えぞち)の眞昆布(まこんぶ)。

吸口(すひくち)は黄柚(きゆ)、(つま)姫菘(ひめかぶら)で、
椀種(わんだね)が鰒子(ふぐのしらこ)に唐墨(からすみ)、
と云ふ構成(くみたて)。
小人(それがし)選擇(えら)むは、味覺(した)に慣(な)れたる椀(わん)

"向附(むかふづけ)"の中鮪差味(ちゆうばうさしミ)、
"燒物(やきもの)"の(ぶり)、"煮物(にもの)?"の牛肉(うしのしゝ):
いづれも良質(よきもの)なれど、半點(いさゝか)膩(あぶら)が强烈(つよめ)
就中(わきても)、A五(えいご)の"牛肉(うしのしゝ)"には辟易(たぢろぐ)。

一噛(ひとか)みする毎(ごと)に、
膏(あぶら)浮騰(ほとばし)りて、舌(した)と臼齒(おくば)に亂舞(まひをどる)
若者(わかもの)ならいざ知(し)らず、
古稀(こき)近(ちか)き翁(おきな)には過酷(つら)きもの有之(これあり)。

おしなめて、
(うを)の處置(てあ)てに限定(かぎ)るなら、
今(いま)をときめく若手鮓職人(わかてすしゝよくにん)が贏(まさ)る
創意工夫(あらたなるこゝろみ)もまた然(しか)り。

早春(はるのはじめ)の(たけのこ)と和布(わかめ)の邂逅(であひ):
素材(そざい)と般若湯(さけ)由來(よりきた)る甜(あまみ)」。
若布(わかめ)の嫩(いとやはらか)なる縁由(ことのよし)、
「偏(ひとへ)に(たけのこ)の作用(はたらき)に因(よ)る」とのこと。

僕(やつかれ)、
若布(わかめ)は適度(ほどよ)き齒觝觸(はあたり)あるを嗜(この)む
しかはあれど、調味(あぢつけ)に一(ひと)つとして誤(あやま)りなく、
實言(まこと)、佳味(よきあぢはひ)

中鮪差身(こぶりのしびさしミ)は、切附(きりつけ)厚(あつ)く冷(つめ)ため。
端(つま)の紫菜(のり)も"スサビノリ"。
やはり、"アサクサノリ"に比較(くら)べ、口解(くちど)けに劣(おと)る。
他方(かたや)、和布(わかめ)は蕩(とろ)けんばかり。

幼(いとけな)き砌(みぎり)以來(よりこのかた)、
小人(それがし)が味覺(した)は、
品川大森(このあたり)の"アサクサノリ"による"淺草海苔(あさくさのり)"、
阿波鳴門(あはなると)の"灰干和布(はいぼしわかめ)"に馴化(なれしたしむ)。

この日(ひ)に限(かぎ)るなら
椀(わん)の吸地(すひぢ)と唐墨(からすみ)は嗜好(このみ)と隔(へだゝ)り。
牛肉(うしのしゝ)、(さしミ)、紫菜(のり)、和布(わかめ)は、
「北(きた)と南(みなみ)」、「東(ひがし)と西(にし)」ほどに眞逆(まさかしま)。

されど、遉(さすが)は、招牌(かんばん)がはりの"鯛茶漬(たひちやづけ)":
その儘(まゝ)餐(くら)ひて吉(よし)、
溏油(だし)をかけて"茶漬(ちやづけ)"と化(な)すもまた吉(よし)。
草莓(いちご)と甜瓜(あまきうり)の菓子(くわし)も美物(よきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
食前酒(のどへのうるほひ)】:
  ・梅酒(むめのさけ)

八寸(はつすん)】擬(もど)きの【先附(さきづけ)】:
  ・助子(すけこ)
  ・鰊子(かずのこ)+鮏(さけ)鮞(はらゝご)
  ・車蝦(くるまえび)

(わん)】:
  ・鰒子(ふぐしらこ)と唐墨(からすみ)

向附(むかふづけ)】:
  ・鰒(ふぐ)差味(さしミ)
  ・中鮪(ちゆうばう)魥(さしみ)

燒物(やきもの)】:
  ・鰤(ぶり)+蘿蔔(すゞしろ)

强殽(しひざかな)?】
  ・笋(たけのこ)+和布(わかめ)

煮物(にもの)?】:
  ・牛肉(うしにく)の擬制犂炙(すきやきもどき)

(めし)】:
  ・米飯(こめのいひ)
  ・菹(かうのもの)
  ・茶漬(ちやづけ)の眞鯛(たひ)

菓子(くわし)】:
  ・草莓(いちご)+甜瓜(あまきうり)
=======================================

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
【2016-02-05追記】:
ありがたき誘(さそ)ひがあり、大約(およそ)八年(やとせ)ぶりの『まき村』。
今(いま)や紅本(あかほん)で★★★。
★★★に眼精(まなこ)眩(くら)みし衆人(もろびと)の、
大舉(こぞ)りて當家(こちら)に押(お)しかくるは迷惑千萬(こまりもの)。

嘗(かつ)ては女夫(めをと)兩個(ふたり)による商賣(あきなひ)と憶(おぼ)えしが、
現今(いま)や、若(わか)き弟子(でし)も二人(ふたり)。
その舉動(ふるまひ)を瞻(み)るに、
躾(しつけ)が行(ゆ)き屆(とゞ)き、清々(すがすが)しき管待(もてなし)ぶり

櫃臺(かうんた)は檜(ひのき)の一枚板(いちまいゝた)
横幅(よこはゞ)と厚(あつ)みこそ程々(ほどほど)なれど、
奧行(おくゆき)は三尺餘(さんじやくあまり)。
最佳(とびきり)の梅酒(むめしゆ)に續(つゞ)き、

"牡蠣(かき)と芹(せり)の湯葉蒸(ゆばむ)し"、
"細魚(さより)と菜花(なばな)の梅肉(うめにく)和(あ)へ"、
"甘鯛(あまだひ)の椀(わん)"、
"虎鰒(とらふぐ)"、
"鮪(しび)"、
"鰆(さはら)の蕗(ふき)の薹(たう)燒(や)き"、
"新筍(しんたけのこ)鞘卷(さやまき)蠶豆(そらまめ)の銀餡(ぎんあん)がけ"、
"鰒(ふぐ)の白子(しらこ)"、
"豬角煮(ぶたかくに)"、
"鯛茶漬(たひちやづ)け"、
"水菓子(みづぐわし)"。

と云ふ流(なが)れ。
火入(ひい)れ、鹽梅(あんばい)、香(かをり)、吸地(すひぢ)、彩(いろどり)
温度(あたゝかさ)、季節感(きせつかん)、、。
一(ひと)つとして我(わ)が好(このみ)に適合(あ)はざるはなし。

前囘(まへ)に同樣(おなじく)、御絞(おしぼ)りも三度(みたび)。
兩個(ふたつ)の目(め)を皿(さら)となし
重箱(ぢゆうばこ)の隅(すみ)から隅(すみ)まで穿(ほじく)り返(かへ)すも、
非(ひ)の打(う)ちどころなし

これを"完璧(かんぺき)"と云ふ。
就中(わきても)強烈(つよ)く印象(こゝろ)に殘(のこ)るは、
得(え)てして疎(おろそ)かにされがちな添(そ)へ物(もの)ゝ類(たぐひ)
(せり)、生海苔(なまのり)、金時紅蘿蔔(きんときにんじん)、、。

太陽暦(あらたしきこよみ)では二月(にがつ)なれど、
舊暦(むかしのこよみ)では未(いま)だ師走(しはす)の末(すゑ)。
(せり)、(すゞな)、蘿蔔(すゞしろ)と、
春(はる)の七草(なゝくさ)の三種(みくさ)までもが勢揃(せいぞろ)ひ。

(せり)は牡蠣(かき)が顏色(かほいろ)なからしむるほどの馨(かをり)、
生海苔(なまのり)は、正(まさ)にこの時季(じき)、
往古(いにしへ)の大森(おほもり)に通底(つら)なる懐(なつ)かしさ
金時紅蘿蔔(きんときにんじん)は火入(ひい)れの巧妙(たくみ)さ

(うを)を瞻(み)る限(かぎ)り、
素材(そざい)そのものは最上等(とびきり)とは言(い)ひ難(がた)きもの
しかはあれど、
それを補(おぎな)ひて餘(あま)りある技藝(わざ)の數々(かずかず)

神(かみ)がゝり」とも形容(い)ふべき細魚(さより)の〆工合(しめぐあひ)、
備長炭(びんちやう)による甘鯛(あまだひ)の火入(ひい)れと香氣(かをり)
幽庵地(いうあんぢ)に(ふき)の薹(たう)を加(くは)へた(さはら)、
こちらの招牌(かんばん)たる、朝〆(あさじめ)の眞鯛(まだひ)、、。

その凄(すご)さを論(あげつら)ふなら、枚舉(かぞふ)るに遑(いとま)あらず
奢(おご)りを窮(きは)め、至高(このうへなき)食材(もの)を用(つか)ひ
五萬圓(ごまん)、六萬圓(ろくまん)を請求(と)る鋪(みせ)とは對極(さかしま)
たゞ、あまりに隙(すき)がなさすぎ、面白味(おもしろみ)には虧(かく)

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7-II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :徠茨(Leitz)Super Angulon R 4.0/21 @F5.6
      徠茨(Leitz)微距(Macro)Elmarit R 2.8/60 @F2.8

【2008-07-13】:
「近くで味よろしき店に」と駄々(だゞ)捏(こ)ぬる身内の求めにより、豫(かね)て氣に懸(か)ゝりし儘(まゝ)のこちらに、、。晝(ひる)にはまだ間があり、近くの水族館を覗(のぞ)く。數多(あまた)の魚(うを)、あるいは群れをなし、あるいは獨(ひと)り悠然と邊(あた)りを泳ぎ廻る。そのさま、空を飛ぶ鳥に異ならず。

中を一囘りし外に出るや、うだるがごとき暑さ。目の前には鈴ヶ森の刑場跡(あと)。病(やまひ)持ちの身内は眉を顰(しか)め「あなおそろし」と頻(しき)りに呟(つぶや)く。小塚原の鰻屋に足を運ぶ折は何一つ文句言はぬ身内が鈴ヶ森でかくも激しく怯(おび)ゆるは實(げ)に訝(いぶか)しき限り。いすゞ自動車を目指し通りを渡る。

嘗(かつ)ていすゞ自動車の邊(あた)りは大井坂下町と呼ばれ、架臺(シヤシ)剥(む)き出しのいすゞ製トラックが我が物顏で走り囘り、工場ではさまざまな車が拵(こしら)へられてゐたところ。トラックのほか、英吉利(アンゲリア)渡來(わたり)のヒルマンミンクス、「五十鈴(いすゞ)」の屋號に因(ちな)むベレルなど乘用車も。

店の造りはこの類(たぐひ)の店としてよくあるもの。見苦しき鐵(くろがね)の犬矢來(いぬやらい)姿を人目に晒(さら)す。午(むま)の刻過ぎに暖簾を潛(くゞ)るや、女將と思(おぼ)しき仲居(なかゐ)立ち現はれ中へと導く。店の壁はあちらもこちらも悉(ことごと)く大理石もどきの板で覆(おほ)はれ何とも無樣(ぶざま)。

訝(いぶか)しく思ひつ六千圓のめしに生麥酒(ビイル)を頼む。ほどなくして仲居(なかゐ)持ち來たりし麥酒(ビイル)に眼(まなこ)を奪(うば)はる。周(まは)りを檢(あらた)むるに、その泡、均(ひと)しく玻璃杯(グラス)の際(きは)のところに止(とゞ)まりて、泡と麥酒(ビイル)汁の割合も一つとして異なるものなし。

堪(たま)りかね先づは一口。その色白(いろじろ)にして口當(あ)たりの滑(なめ)らかなること、肌理(きめ)細かく泡立てたる卵白と異なるところなく、さぞや、腕の立つ職人が注(そゝ)ぎ零(こぼ)したものならむと覺(おぼ)ゆ。疑(うたが)ひの暗(くら)き雲(くも)忽(たちま)ちに晴れ、氣もそゞろ、俄(には)かに心浮き立つ。

先附けは盆に三つの玻璃(ビイドロ)切子(きりこ)が竝(なら)び、各々、蛸とオクラの煮凝り(ジユレ)、唐黍とヅキイニの揚げ物、海膽と生湯葉、が載る。蛸は吸盤を削(そ)ぎ、オクラは粘りの出るまで掻(か)き混ぜ、煮凝(にこゞ)りをあしらふ。僅(わづ)かながら鹽氣(しほけ)勝れりと云へど清々(すがすが)しき味はひ。

先附けであるにもかゝはらず揚げ物は暖(あたゝ)かく、思はず口許(くちもと)が綻(ほころ)ぶ。近頃巷(ちまた)に蔓延(はびこ)る甘き唐黍(もろこしきび)は必ずしも好むところにあらざれど、揚げることで際(きは)立つ甘さに目を瞠(みは)る。鹽(しほ)も天汁(てんつゆ)もあらざるに能(よ)く我が口を悦(よろこ)ばしむ。

椀は蝦眞薯(えびしんじよ)。器は合成樹脂ながら蓋(ふた)を去るや、あくまでも清く澄(す)み渡る汁(しる)に橙色の蝦眞薯が浮き、絲のごとく細く刻まれた鞘豌豆に青柚子が浮く。汁の旨さに魂消(たまげ)、眞薯(しんじよ)の出來に言葉を失なふ。女將に問ひ質(たゞ)すと活けの車蝦を手で擂(す)り潰(つぶ)したものとか。

濫(みだ)りに電氣(エレキテル)仕掛けの機械(からくり)に頼り、小手先の技に走る職人が幅を利かす中、その高き志(こゝろざし)に思はず頭(かうべ)を垂(た)る。この時季の椀なれば鱧(はむ)の葛叩(くづたゝ)きに如(し)くものなしと云へど、鄙(ひな)には稀(まれ)な腕の冴(さ)へ。武州荏原郡大井村の譽(ほまれ)。

造りは手描きと思(おぼ)しき菱形の皿に、鮪(しび)大トロ、赤身、白烏賊、眞子鰈が載る。あしらひは、白髮茗荷、山の芋、穗紫蘇、山葵。鮪(しび)は鮨屋のそれに迫り、なまじの會懐石では目にすることの出來ぬ代物(しろもの)。眞子鰈(まこがれひ)は寢かせたものを削(そ)ぎ切りにしたもので聊(いさゝ)か身に締りを缺(か)く。

煮物碗は賀茂茄子。薄味でほどよき硬さに煮たものに卸(おろ)した蘿蔔(だいこん)と生姜が載り、刻(きざ)み海苔と手で掻(か)いたと思(おぼ)しき鰹節がかゝる。中でも鰹節の姿が眩(まぶ)しく、鰹節削りで掻(か)ゝれたものとも玻璃(ビイドロ)の缺片(かけら)で細く掻(か)ゝれたものとも異なる趣(おもむき)。

さてお次に控(ひか)へしは鯛茶漬け。眞鯛の削(そ)ぎ切りに胡麻のたれがかゝり、香の物は胡瓜の糠漬けに蘿蔔(だいこん)と柴漬け。漬け方から盛り附けに至るまで一つとして手を拔きたるところなし。眞鯛もまた身に締りなし。米の飯(いひ)が無闇矢鱈(むやみやたら)に旨く、胡麻だれの鯛もろとも粗方(あらかた)胃の腑に。

すんでのところで思ひとゞまり、殘りの飯(いひ)に土瓶(どびん)の出汁(だし)を注(そゝ)ぐや、鯛(たひ)は忽(たちま)ち身を捩(よぢ)り悶(もだ)へ苦しむ。そのさま、この世のものとも思はれず。かくなる上は慌(あは)てゝ掻(か)き込むほか術(すべ)なし。手にした箸を操(あやつ)り、一息(ひといき)にこれを味はひ盡(つ)くす。

鯛の身は出汁(だし)を注(そゝ)ぎたる後(のち)もなほ、瑞々(みづみづ)しさを保つ。空(から)の碗に出汁(だし)を注(そゝ)ぎて再(ふたゝ)びこれを味はふに、昆布、鰹に勝(まさ)りて舌に踊り、喉(のみど)に纏(まと)はる。鯛の身そのものはあさみに分ありと云へど、出汁(だし)の味、遥(はる)か他(ほか)に秀(ひい)づ。

水菓子は玻璃(ビイドロ)の器に時季の果物をあしらひアングレエズ・ソオスをかけたもの。芒果(まんご)、櫻坊、西瓜、グレエプフルウツ、甜瓜(めろん)。芒果(まんご)は名にし負ふ日向(ひむか)の産ながら、五分角のもの一つばかりで味詳(つまび)らかならず。西瓜は徑七分の丸き塊(かたまり)に刳(く)り拔かれ、一つとして種の殘るものなし。

先附けから水菓子に至るまで手拔きのけはひなく、味附けも輕く細(こま)やか。さりながら薄きに過ぎるものはなく、どれもこれも口に合ふ。南蠻渡來(わたり)の蔬菜少なからずと云へど、拵(こしら)へ方に奇を衒(てら)ひたるところなく、水菓子を除かば、悉(ことごと)く、本朝にて古(いにしへ)より受け繼がれし技(わざ)。

惜しむらくは鮑、鮎、鱧(はむ)など時季の品なきこと。値(ね)の安き獻立選びたるが心殘り。窓際の翁(おきな)・老女(おみな)の四人卓には、これら時季の品が次々に運ばれ、傍(かたは)らに坐る我等には眼の毒、將(まさ)に涎(よだれ)も垂(た)れんばかり。何でも、古くからの店の顏なじみにて、夜の一萬圓の獻立とか。

お絞りは三度(みたび)供されると云ふに、茶は焙じ茶のみ。主(あるじ)は如何にも旨きもの喰はす面構(つらがま)へで、眼(まなこ)輝きに滿つ。名刺や暖簾のまき村の字は確かなる手ながら、名刺の地圖に「いすゞ」が「いすづ」と誤り刷(す)らるは、首捻(ひね)るばかり。偏(ひとへ)に本朝文化の衰(おとろ)へをあらはす。

  • 【椀(わん)】、鰒子(ふぐしらこ)と唐墨(からすみ)
  • 【强殽(しひざかな)?】、笋(たけのこ)+和布(わかめ)
  • 【飯(めし)】、菹(かうのもの)

もっと見る

10位

いち太 (外苑前、表参道、乃木坂 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.4

    • [ 料理・味 4.4
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2016/05訪問 2016/05/19

筑波嶺(つくばね)の 峯(みね)より近傍(ちか)き この蕎麥切(そば)ゝ たくみに打(う)たれ 〆(しめ)となりぬる

【2016-05-13追記】:
およそ(わん)なるもの、
鋪(みせ)の格(かく)と板前(いたまへ)技倆(うで)を映(うつ)す鏡(かゞみ)
昆布(こんぶ)の選擇(しなえらみ)、鰹節(かつをぶし)か鮪節(まぐろぶし)か?
さらに、その強(つよ)さと、鹽加減(しほかげん)

洛(みやこ)では、利尻昆布(りしりこんぶ)が風習(ならひ)。
しかるに、當家(こちら)、
羅臼昆布(らうすこんぶ)と日高昆布(ひだかこんぶ)を用(つか)ひ分(わ)く。
この椀(わん)には羅臼昆布(らうすこんぶ)と鰹節(かつをぶし)とのよし。

そも羅臼昆布(らうすこんぶ)と云ふは、
口味(あぢ)こそ天下無雙(くらぶるものなし)と云へど、
顏色(いろ)濃(こ)く、えてして清汁(すましゞる)には不適(むか)ぬもの。
それを敢(あ)へて用(つか)ふは、見上(みあ)げたもの。

倩(つらつら)その吸地(すひぢ)を窺(うかゞ)ふに、
徒(いたづら)に鰹(かつを)の風味(あぢかをり)が勝(か)つこともなく
漫(みだり)に昆布(こんぶ)を突出(めだ)つこともあらで
完璧(いふことな)き鹽加減(しほかげん)

この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのごとし)。

------------------------------------------------------------------
・佐島(さじま)の蛸酢(たこす)
・琵琶湖(びはこ)稚香魚(ちあゆ)に楤芽(たらのめ)揚物(あげもの)
・藁燻(わらいぶし)鯖棒鮓(さばぼうずし)
・海鰻(はむ)、蓴菜(ぬなは)、大葉擬寶珠(うるい)の椀(わん)
・房州(あは)黑鰒(くろあはび)
・卷(まき)、眞子鰈(まこがれひ)、縞鰺(しまあぢ)の指身(さしみ)
・蕎麥實(そばのみ)入(い)り汲上豆腐(くみあげどうふ)
・伊左木(いさき)照焼(てりやき)
・毛蟹(けがに)
・紫海膽(むらさきうに)に賀茂茄子(かもなす)
・蕎麥切(そばきり)
・菓子(くわし) 、抹茶布甸(まつちやぷでいんぐ)
------------------------------------------------------------------

"(すゞき)"と見紛(みまが)ふばかりの"伊左木(いさき)"の大(おほ)きさに、
肝魂(きもたましひ)を喪失(うしなふ)。
蒲焼(かばやき)を彷彿(おもは)す醤(たれ)に附燒(つけや)き、
夥(あまた)山菜(さんさい)のあしらひを添(そ)へ、此方(こなた)に、、。

驚歎(おどろく)べき(あぶら)。
その容(さま)、鰻(うなぎ)の蒲燒(かばやき)かと疑(うたが)はれ、
赤鯥(あかむつ)の照焼(てりやき)と錯覺(みまがふ)。
芳香(かぐはしきかをり)を含(ふく)め、至高(このうへな)き"伊左木(いさき)"。

尤(いと)柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らかなる"鮑魚(あはび)":
東道(あるじ)に據(よ)らば、
煮(に)ることなく、蘿蔔卸(だいこんおろし)と蒸(む)し上(あ)げたもの
とのよし。

7匁(なゝもんめ,=25g)ほどの"車蝦(くるまえび)"、すなはち"(ま)":
十二秒(じふにびやう)"湯霜(ゆしも)"せしものと云ふ。
時季(とき)により、"油霜(あぶらじも)"も用(つか)ふとのよし。
實(げ)に、生(なま)とも、茹上(ゆであ)げとも異(こと)なる美味(よきあぢ)

最後(いやはて)の蕎麥切(そばきり)は前囘(まへ)に同(おな)じ。
少(すこ)し前(まへ)、『吾妻橋 やぶ』の蕎麥切(そばきり)を堪能(あぢはひぬ)。
馨(かをり)と、斷(た)ちの均一性(ひとしさ)は『吾妻橋 やぶ』が優(まさ)れど、
いち太』の纖細(こまやか)さの前(まへ)には無顏色(かほいろをうしなふ)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :Kern 微距(Macro)Switar 1.8/50 @F2.4

【2016-02-22記】:
近來(ちかごろ)頓(とみ)に人口膾炙(ひとびとのくちにのぼ)る『いち太』。
當地(このち)に開業(あきなひはじ)むるや、
忽地(たちまち)紅本(あかほん)の★(ほし)を獲得(と)る評判(さはぎ)。
東道(あるじ)、修業先(わざをならひおぼえしさき)は『大木戸矢部』。

小人(それがし)、その邊(あた)りの縁由(ことのよし)に疎(うと)く、
大木戸矢部』亭主(あるじ)矢部某(やべなにがし)も不知(しらず)。
何(なん)でも、往古(そのかみ)、かの『金田中』、
加之(くはふるに)、『赤坂 きくみ』にて腕(うで)振(ふる)ひし手煆煉(てだれ)とか。

赤坂 きくみ』とは、
今(いま)は昔(むかし)、
米利堅大使館(めりけんたいしくわん)近傍(そば)に在(あ)りし料亭(れうりや)。
今(いま)にその姿(すがた)を留(とゞ)めぬは時代(とき)の趨勢(なりゆき)。

閑話休題(それはさておき)、この日(ひ)の菜譜(こんだて):
※↓表記(しる)せしは不正確(ふたしか)!

------------------------------------------------------------------
・蕎麥實(そばのみ)入(い)り汲上豆腐(くみあげどうふ)
・野芹(のぜり)、原木香茹(しいたけ)、榎茸(えのき)の煮滲(にびた)し
・鯖棒鮓(さばぼうずし)、豌豆(ゑんどう)沿(ぞ)へ
・めじ藁燒(わらやき)
・赤貝(あかゞひ)、障泥烏賊(あふりいか)の指身(さしみ)
・皮剥(かはゝぎ)ぽん醋(す)ジュレ
・蛤(はまぐり)に若筍(わかたけのこ)新若布(しんわかめ)の椀(わん)
・柳鰈(やなぎがれひ)炭火燒(すみびやき)
・白魚(しらうを)天麩羅(てんぷら)
・紫海膽(むらさきうに)と蝦薯蕷(えびいも)
・蕎麥切(そばきり)
・水菓子(みづぐわし)
------------------------------------------------------------------

先附(さきづけ)の"汲上豆腐(くみあげどうふ)"に始(はじ)まり、
米飯(めし)代替(がは)りの"蕎麥切(そばきり)"に至(いた)るまで、
東道(あるじ)の蕎麥(そば)を最惜(いとをし)むこと、
宛然(あたかも)、丈夫(ますらを)の弓箭(ゆみや)を慈(いくつ)しむがごとし。

これ、師匠(おやかた)直傳(じきでん)の技藝(わざ)とのよし。
蕎麥實(そばのみ)は、大(おほ)きく、翡翠(みどり)を帶(お)び
芳香(かぐはしきかをり)を放(はな)つ
常州(ひたち)の産(もの)とか。

柳鰈(やなぎがれひ)も常磐物(ひたちいはきのもの)。
古來(いにしへより)、
眞子鰈(まこがれひ)・星鰈(ほしがれひ)は常磐(これ)を頂點(いたゞき)とするも、
笹鰈(さゝがれひ、=柳鰈)は若州(わかさ)を上(うへ)とす。

然(しか)るに、東道(あるじ)、嘲笑(あざけ)りて曰(いへら)く、
常磐物(ひたちいはき)は身(み)の厚(あつみ)が別格(ことのほか)。」
肥州(ひのくに)備長炭(びんちやうたん)にて叮嚀(ねんごろ)に炙(や)かれ、
慥(たしか)に美味(よきあぢ)。

倩(つらつら)燒(や)きに先立(さきだ)つ庖丁技(はうちやうわざ)を瞻(み)るに、
纖細(こまやか)にして華麗(はなやか)。
就中(わきても)、"障泥烏賊(あふりいか)"の扱(あつか)ひは、
海鰻(はむ)の骨切(ほねき)りかと見紛(みまが)ふほど。

障泥烏賊(あふりいか)は〆てより一日(いちにち)寢(ね)かせ、
鰒(ふぐ)なら四日、鮃(ひらめ)れば一日(いちにち)と云ふ。
その哲學(かんがへ)、
徒(いたづら)に熟成(うらし)に走(はし)る若手職人(わかて)とは對極(さかしま)

山葵(わさび)は敢(あ)へて皮(かは)を殘(のこ)す
外見(みかけ)はともかく、口味(あぢ)と香氣(かをり)に限(かぎ)るなら
皮附(かはつ)きが最善(よい)
妄(みだ)りに體裁(みため)に走(はし)らぬは見上(み)げたもの

指身(さしみ)の附(つ)け醤油(しやうゆ)は再仕込(さいしこみ)。
これまた常陸(ひたち)の(もの)と云ふ。
(しほ)は蒙古(もうこ)の岩鹽(いはじほ)を擂(す)り粉(こな)とせしもの。
"めじ"は醤油(しやうゆ)、"障泥烏賊(あふりいか)"は鹽(しほ)にて堪能(あぢはふ)。

扨(さて)、その"めじ":
大(おほ)きさは三貫二百匁(=12kg)ほど。
豫(あらかじ)め皮(かは)に庖丁(はうちやう)を入(い)れ
これを殘(のこ)しつ、藁燒(わらや)きとなす。

行附(いきつ)けの『うを徳』に同樣(に)たる烹調法(やりかた)。
うを徳』では厚(あつ)く切附(きりつ)け、藁(わら)で炙(あぶ)り
大蒜醤油(おほひるしやうゆ)に潛(くゞ)らす
外見(みため)も味(あぢはひ)も、烏(からす)と鷺(さぎ)ほどの差(たがひ)。

うを徳』は他店(よそ)の追隨(あとおひ)を許(ゆる)さぬ最適解(さいてきかい)
、、、、と長(なが)らく確信(かたくおもひ)しかど、
いち太』のそれもまた『うを徳とは異(こと)なる最適解(さいてきかい)
鰐(わに)と鮫(さめ)の何(いづ)れが強者(つよき)か論(あげつら)ふがごとし。

ともに、
(しび)すら顏色(かほのいろ)失(うしな)ふほどの絶味(すばらしきあぢはひ)
大蒜(おほひる)用(つか)はぬ『いち太』は、
より素材(そざい)の個性(もちあぢ)を引出(ひきいだ)すに傑(すぐ)る。

玻璃(がらす)の器(うつは)に「季節外(きせつはづ)れの海鰻(はむ)?」。
その正體(しやうたひ)は、勿驚(おどろくなかれ)、皮剥(かはゝぎ)。
削切(そぎゞ)りの(み)、(きも)、身皮(みかは)を、
ぽん醋(す)ジュレに和(あ)へて器(うつは)に盛込(もりこ)む。

うを徳』なれば、白身(しろみ)は薄(うす)く削(そ)ぎ
纔(わづ)かばかりの鹽(しほ)
または煮切醤油(にきりしやうゆ)にて味(あぢ)はふが通例(つね)。
その意(こゝろ)、偏(ひとへ)に魚(うを)の個性(もちあぢ)を生(い)かすにあり。

方(かた)や『いち太』の白身(しろみ)は、
複雜(ふくざつ)にして玄妙(げんめう)なる調味(あぢつけ)
ぽん醋(す)は強(つよ)きに過(す)ぎず
さりとて、肝(きも)にも負(ま)けぬ適度(ほどよ)き烹調法(やりかた)

上質(よ)き白身(しろみ)はその儘(まゝ)に堪能(あぢは)ふが筋(すぢ)なれど、
これはこれで、紛(まぎ)れもなく佳味(よきあぢ)。
これまた、同(おな)じ素材(そざい)を用(つか)ひながら
海(うみ)と山(やま)ほどの相違(たがひ)

その手(て)は桑名(くはな)の本蛤(ほんはまぐり):
差(さ)し渡(わた)し三寸餘(さんずんあまり,≒9.5cm)。
鮨店(すしや)で通例(ならひ)の朝鮮蛤(てうせんはまぐり)ほどの大(おほ)きさ。
本蛤(ほんはまぐり)でこれほどの大(おほ)きさは稀有(まれ)。

自慢(ほこり)の"蕎麥切(そばきり)"もまた、驚異(おどろき)の水準(たかみ)。
尤(いと)均一(ひとし)く斷(た)ゝれ
食感(はごたへしたざはり)も滿點(いふことなし)
隱々(かすか)に臼齒(おくば)に抵抗(あらが)ひ、咽喉(のみど)を通過(すぐ)。

蕎麥汁(そばつゆ)は、本枯節(ほんがれぶし)に荒節(あらぶし)。
以爲(おも)ふに、
本枯節(ほんがれぶし)のみでは力(ちから)に缺(か)く憾(うらみ)あり。
"かけ"には、宗田鰹(さうだがつを)と鯖節(さばぶし)も用(つか)ふとぞ。

惜(を)しむらくは、天麩羅(てんぷら)の衣(ころも)に(もろきはごたへ)なきこと。
加旃(しかのみならず)、衣(ころも)には全卵(ぜんらん)を用(つか)ふと云ふ。
この邊(あたり)、鶏蛋(たまご)を避(さ)け
脆(もろきはごたへ)を重視(おもん)ずる『うを徳』に分(ぶ)。

庖丁技(はうちやうわざ)の纖細(こまやか)さ盛附(もり)けの美(うつく)しさでは、
いち太』が『うを徳』を遙(はる)かに凌駕(しのぐ)。
寔(まこと)、名(な)のある懐石料理店(くわいせきれうりや)に、
寸毫(つゆ)劣(おと)ることなし。

遺憾(こゝろのこり)は、
一番出汁(いちばんだし)の分(わ)かり易(やす)き(わん)なきこと。
何者(なんとなれば)、かゝる(わん)は、
厨師(いたまへ)の、技倆・思想(うでまへ)を映(うつ)す鏡(かゞみ)なればなり。

とは云へ、押竝(おしな)めて、頗(すこぶ)る美味(よきあぢ)
京味』一門(いちもん)とも京師(みやこ)の懐石(くわいせき)とも異質(ことなる)。
豫想外(おもひもかけ)ぬ仕事(しごと)ぶりは、
初音鮨』以來(よりこのかた)これが初(はじめて)。

---------------------------------------
【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss) 微距(Makro)Planar T* 2.0/50 ZK @F2.0

  • 湯引(ゆびき)の巻(まき)
  • 房州(あは)黑鰒(くろあはび)
  • 鯖鮓(さばずし)

もっと見る

ページの先頭へ