酔狂老人卍さんのマイ★ベストレストラン 2014

『此世をハ と里(り)や お暇尓(に) せん古(こ)う能(の) 煙りと供尓(に) 者(は)ひ 左樣なら』 (十返舎一九)

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酔狂老人卍 (70代以上・男性) 認証済

マイ★ベストレストラン

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この四年の間、『うを徳』の右(めて)に出(いづ)る舗(みせ)なし。
月に覘くこと二度(ふたゝび)。
『趙楊』の凄(すご)さの分かるは夜(よる)!
『東洋軒』は待ちに待った”平成の洋食”。

マイ★ベストレストラン

1位

うを徳 (東向島、曳舟、京成曳舟 / 寿司)

51回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 -
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.8

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 ¥20,000~¥29,999

2024/03訪問 2024/03/20

「龍膽鳳髄(うみやまの めづらしきあぢ)」 盡(づ)くしにも 安堵(こゝろのなご)む "款冬未醤(ふきみそ)"の佳味(あぢ)

"櫻鯛(さくらだひ)"に"螢烏賊(ほたるいか)"、"若銀口魚(わかあゆ)"、
"櫻鰕(さくらえび)"、"飯蛸(いひだこ)"、"油菜(なばな)"、"款冬(ふき)"、"(たかむな)"、、
と、靑陽(はる)の息吹(いぶき)を、眼(め)で知(し)り、舌(した)で悟(さと)る
"棘鬣魚(まだひ)"は、"卵巢(たまご)"に"精巢(しらこ)"まで、、。

「"鳥蛤(とりがひ)"は初夏(なつのはじめ)のもの」、、
と思(おも)ひきや、「早春(はるのはじまり)にも」との(よし)。
"身肉(み)"ばかりでなく、"(きも)"も"螢烏賊(ほたるいか)"と一緒(とも)に堪能(あぢはふ)。
×忻(だま)し、×嵩増(かさま)し、〇雋永(いとうまし)

久方(ひさかた)ぶりの"(かはかめ)"。
"野生(いけやかはにすむもの)"歟(か)?、"養殖(ひとがやしなひそだてたるもの)"歟(か)?、
"大小(おほきさ)"、"性別(めすをす)"、"時季(とき)"、"(え)"、、等々(などなど)、
それらに依存(よ)り、その"味(あぢはひ)"千差萬別(さまざま)

そこは高名(よにかくれな)き、
遠州濱名湖(はまなこ)《服部中村養鼈塲(はつとりなかむらやうべつじやう)》の"(かはかめ)"。
"小宮親方(こみやおやかた)"の廚藝(わざ)と相乘效果(あひま)り、
不味(あぢあし)き理由(ことわり)あるべからず

《上總竹岡(たけをか)》"(たちうを)"、《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、
"魨精巣(ふぐのしらこ)"、亦(また)然(しかり)。
可特筆(かきしるすべき)は"この鯖(まさば)"! (※産地失念)
時季(いまどき)あり得(え)ぬに寸尺(おほきさ)肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。

掉尾(いやはて)の"菓子(このみくさのみ)"は勿論(いふもさらなり)。
龍膽鳳髄(うみやまのめづらしきあぢ)」盡(づ)くしの内(うち)、敢(あ)へて一(ひとつ)、
、、となると、"款冬未醤(ふきみそ)"を推舉(あぐ)。
其處其所(そこいら)に自生(お)ふる山野草(のゝくさ)故(ゆゑ)の佳美(よきあぢ)

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・"擬制櫻餈(さくらもちひもどき)"+《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)卵巣(たまご)"
  ・"鮑魚(あはび)"+《越中滑川(なめりかは)》"螢烏賊(ほかるいか)"
  ・"炊合(たきあ)はせ"の等類(たぐひ)
    ・《駿河灣(するがわん)》"櫻鰕蛋捲(さくらえびいりだしまきたまご)"
    ・"油菜(なばな)"
    ・《播州明石(あかし)?》"飯蛸(いひだこ)"
    ・《薩州(さつま)》"笋(たかむな)"、w/裙带菜(わかめ)
  ・刺躬(さしみ):
   ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"
    ・《蝦夷地(えぞち)》"蝦夷馬糞靈臝子(えぞばふんうに)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚精巣(まだひしらこ)"
  ・"款冬(ふき)未醤(みそ)"
  ・《蝦夷餘市(よいち)》"華臍魚肝(あんかうきも)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》"若銀口魚(わかあゆ)"
  ・"山蓼莖(わさびのくき)"
  ・《上總竹岡(かみつふさたけをか)》"魛(たちうを)"

(しるもの)】:
  ・『服部中村養鼈塲(はつとりなかむらやうべつじやう)』"鼈(かはかめ)"

(すし)】:
  ・《豐後姫島(ひめじま)》"基圍蝦(くるまえび)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"
  ・"鰤(ぶり)"
  ・《薩州甑島(こしきじま)》"縱帶鰺(しまあぢ)"
  ・《丹後宮津(みやつ)》"鳥蛤(とりがひ)"
  ・《丹後宮津(みやつ)》"鳥蛤肝(とりがひきも)"
      +《越中滑川(なめりかは)》"螢烏賊(ほたるいか)"
  ・《陸州八戸(はちのへ)》"鮪(しび)"、中肥(ちうあぶ)
  ・"魨精巣(ふぐのしらこ)"
  ・"鯖(あをさば)"
  ・《薩州出水(いづみ)》"眞烏賊(すみいか、かふいか)"
  ・《肥後天草(あまくさ)》"小鰶(こはだ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・柑橘類(たちばなのみのたぐひ)
=======================================

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【暗匣】:日本光學 尼康(Nikon)Zf 無反光鏡可換鏡頭照相機(MILC、みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)APO-LANTHAR 2/50 @F2.8
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(DSLR、ディジいち) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
切支丹暦(きりしたんごよみ)甲辰歳一月(きのえたつのとしむつき)は、
毎年恆例(いつもの)"新年會(ふるくからのまじはりをなつかしみ、あらたなるとしをいはふうたげ)"。
此度(こだみ)は"虎魨(とらふぐ)盡(づ)くし"。
何(なん)でも、「《上總大原(おほはら)》の九百匁(≒3.4kg)」と云ふ。

劈頭(いやさき)に堪能(あぢは)ふは"精巢(しらこ)"の"蕪蒸(かぶらむし)"。
掉尾(いやはて)には、紀州備長炭(すみび)に炙(あぶ)り"(すし)"仕立(じた)てに、、。
"蕪蒸(かぶらむし)"に續(つゞ)き、
(ひれ)の"魚凍(にこゞり)"、(み)の"油炸(からあげ)"と、三所攻撃(みところぜめ)。

加旃(しかのみならず)、
五百八十七匁(≒2.2kg)《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"、
八百五十三匁(≒3.2kg)《豫洲八幡濱(やはたはま)》"白黃檣魚(しろくづな、あまだひ)"、
、、、と、「卍殺(まんじごろ)し、白身地獄(しろみのぢごく)」。

《蝦夷地根室落石(おちいし)》"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"、
名殘(なごり)の"鱲子(からすみ)"に《遠州濱名湖(はまなこ)》"鰻鱺(むなぎ)"まで、、。
《奧州氣仙沼(けせんぬま)》の"(しび)"に《陸州閖上(ゆりあげ)》の"(あかゞひ)"も、
不可不觸(ふれぬわけにはゆかぬ)顏(かほ)の彌次郎兵衞喜多八(やじらべゑきたはち)。

擂鉢(すりばち)、王八蛋(わうはち)、犬(いぬ)のハチ
曾根奈津子(なつこ)愕(おどろ)く、大食虛談(おほぐひ、うそ?)の『萬八樓(まんぱち)』、
舞妓(まひこ)白塗(しろぬ)り、卍(まんじ)の得手(とくい)恥(はぢ)の上塗(うはぬ)り
、、と云ふ次第(わけ)にて今年(ことし)も夜露死苦(しくよろ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《上總大原(おほはら)》"虎魨精巢(とらふぐしらこ)"、九百匁(≒3.4kg)
  ・《上總大原(おほはら)》"虎魨魚凍(とらふぐにこゞり)"
  ・《上總大原(おほはら)》"炸虎魨(とらふぐからあげ)"、
            w/《山背(やましろ)》"京芋(えびいも)"
  ・刺躬(さしみ):
    ・《上總大原(おほはら)》"虎魨(とらふぐ)"、九百匁(≒3.4kg)
    ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"、五百八十七匁(≒2.2kg)
    ・蝦夷地根室落石(おちいし)》"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・完熟(ねかしおきたる)"鱲子(からすみ)"
  ・《陸州大間(おほま)》"赤沙噀(あかなまこ)"+《蝦夷地箱館(はこだて)》"鱈精巢(くもこ)"
  ・《雲州五十猛(いそだけ)》"(かつを)"藁燒(わらやき)大蒜醬油(おほひるまめびしほ)
  ・《遠州濱名湖(はまなこ)》"鰻鱺(むなぎ)"

(しるもの)】:
  ・《豫洲八幡濱(やはたはま)》"白方頭魚(しろくづな)"骨邊肉(あら)、
      w/聖護院蕪菁(せうごいんかぶら)の"淸湯(すましゞる)"

(すし)】:
  ・《勢州桑名(そのてはくはなの)》"膾殘魚(しらうを)"
  ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"
  ・《上總大原(おほはら)》"虎魨精巢(とらふぐしらこ)"
  ・《奧州氣仙沼(けせんぬま)》"(しび)"
  ・《陸州閖上(ゆりあげ)》"(きさ、あかゞひ)"
  ・《越中氷見(ひみ)》"(ぶり)"
  ・《豫洲八幡濱(やはたはま)》"白黃檣魚(しろくづな)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・(みかん、たちばなのみ)两種(ふたくさ)
=======================================

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【暗匣】:日本光學 尼康(Nikon)Zf 無反光鏡可換鏡頭照相機(MILC、みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)APO-LANTHAR 2/50 @F2.8
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(DSLR、ディジいち) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
〆(しめ)の『うを德』。
「♪會得(えとく)、逃得(にげどく)、中(あた)れば死(し)ぬのは"魨毒(ふぐのどく)"。
 解毒(げどく)、積讀(つんどく)、歌(うた)つて踊(をど)るは"TikTok(ティックトク)"。」
てなこと口遊(くちづさ)みつゝ、人(ひと)を俟(ま)つ。

「♪松樹(まつのき)ばかりが松(まつ)じやなし~、
 おそ松(まつ)、ちよろまつ、十姊妹(じふしまつ)~~、市松(いちまつ)、とゞ松(まつ)ッ、、、」
とかなんとか一節(ひとふし)吟(うな)るうちに、待人(まちびと)來(きた)れり。
來(き)たか朝三(てうさん)、暮四(くれにはよつぶ)。

、、と云ふ仔細(わけ)にて、
劈頭(いやさき)に、《江州琵琶湖(びはこ)》の"冰魚(ひうを)"に"幅海苔(はゞのり)"。
遉(さすが)、”小宮親方(おやかた)”、
深奧(おくふか)くして、淸冽(きよらかにすめ)る味(あぢはひ)

(つぎ)は、
能州(のと)》の"赤沙噀(あかなまこ)"に《蝦夷網走(えぞちあばしり)》"大口魚精巢(くもこ)"。
これ亦(また)、風味佳絕(たぐひまれなるあぢかをり)!
"蘿蔔泥(おほねおろし)"も吉(よし)。

久方(ひさかた)ぶりの《陸州閖上(むつのくにゆりあげ)》"(きさ、あかゞひ)"。
當日(このひ)は"(はらわた)"も、、。
"(かに)"は、×"森香澄(もりかすみ)"〇《但馬香住(たじまのかすみ)》"雌楚蟹(せこがに)"ゝ、
隱岐(おき)》の"雪蟹(すはへがに)"。

今季(ことし)の掉尾(いやはて)を飾(かざ)る”鰻魚(むなぎ)”は、
《遠州濱名湖(とうとうみのくに、はまなこ)》に揚(あ)がりし、一百八十七匁(≒700g)。
"(うをのあぶら)"少(すく)なめなれど、
皮下(かはのした)の"明膠(ゼラチン、にかはのたぐひ)"が舌(した)に纏(まと)はりつく。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》冰魚(ひうを)+"幅海苔(はゞのり)"
  ・《能州(のと)》"赤沙噀(あかなまこ)"+《蝦夷網走(あばしり)》"大口魚精巣(たらくもこ)"
  ・《蝦夷利尻(りしり)》"牙鮃(ひらめ)"、七百四十七匁(≒2.8kg)
  ・"靈臝子(うに)"
  ・《陸州閖上(ゆりあげ)》"蚶(きさ、あかゞひ)膓(わた)"
  ・《隱岐(おき)》"雪蟹(すはへがに)"
  ・"雲紋石斑魚(くゑ)"
  ・"芋(さといも)"
  ・"鮞(いをのこ)"
  ・《遠州濱名湖(はまなこ)》の"鰻鱺(むなぎ)"、百八十七匁(≒700g)、"素燒(しらやき)"

(しるもの)】:
  ・"淸湯(すましゞる)"
    《但馬香住(かすみ)》"雌楚蟹(せこがに、=めすのすはへがに)"+"鴨脚子(ぎんなん)"
      +"壬生菜(みぶな)"

(すし)】:
  ・《隱岐(おき)》"雪蟹(すはへがに)"
  ・《越中氷見(ひみ)》"鰤(ぶり)"
  ・《奧州氣仙沼(けさんぬま)》"鱵魚(さより)"
  ・《薩州出水(いづみ)》"竹筴魚(まあぢ)"
  ・《蝦夷戸井(とゐ)》"鮪(しび)"
  ・《越中氷見(ひみ)》"鰹《越中氷見(ひみ)》"鰹(かつを)堅魚(かつを)"
  ・"雞蛋糕(たまごやき)"
  ・《陸州閖上(ゆりあげ)》"蚶(きさ、あかゞひ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・覆盆子(いちご)
  ・橘(みかん、たちばなのみ)
=======================================

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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
劈頭(いやさき)に"法式淸湯(コンソメ、すましゞる)"。
「"黃蓋鰈(まこがれひ)"の骨邊肉(あら)ゟ(より)烹調(こしらへ)まして、、」
とは"亭主(あるじ)"の辯(はなし)なれど、"(うし)"の風韻(かをり)。
「"牛脛肉(うしのすね)"も、、」と附言(つけくはふ)。

ついで、"小宮親方(おやかた)"十八番(おはこ)の"燈籠椒泡沫(パプリカ・ムース)"。
當日(このひ)の"法式淸湯(コンソメ、すましゞる)"や、
過日(あのひ)の"醉蠘(ゑはせがに)"ともども、
異鄕(よそ)の(うけ)・廚藝(くりやわざ)に精通(くはし)き證明(あかし)

と、眼前(めのまへ)には、
《壹岐(いき)》"雲紋石斑魚(くゑ)"、四百八十匁(≒1.8kg)がドーーーーーン!
これを捌(さば)きて"薄作(うすづく)り"の"刺躬(さしみ)"に、、。
後(のち)、"(すし)"にも用(つか)ふ。

"棘鬣魚(まだひ)"、"牙鮃(ひらめ)"、"(しび)"は"非加熱(なま)"が適切(よ)く、
"雲紋石斑魚(くゑ)"など"石斑魚(はたのたぐひ)"、
加之(くはふるに)、"六線魚(あゆなめ)"、"大翅鮶鮋(きちじ)"などは、
"加熱・煮熟(ひをとほす)"が最善(なにより)。

豫(かね)て噂(おとにき)く"蓬莱枾(ほうらいし)"。
そも《蓬莱枾(ほうらいし)》とは震旦渡來(もろこしわたり)の"無花果(からがき)"。
かの《とよみつひめ》は、
蓬莱枾(ほうらいし)》と《桝井ドーフィン》の交雜種(かけあはせ)とか、、。

扨(さて)、
茲(こゝ)で《蝦夷根室(ねむろ)》の"狹眞魚(さまうを)"。
いや、"狹眞魚(これ)"は"(なま)"で吉(よし)、"(やく)"も吉(よし)!
"煮熟(にる)"も亦吉(またよし)!

《備州兒島灣(こじまわん)》の"鰻鱺(むなぎ)"。
百六匁(≒400g)と小振(こぶ)りなれど、
皮下(かはのした)は、"(うをのあぶら)"と"明膠(にかはしつ)"に豐富蓄積(とむ)。
《雲州宍道湖(しんじこ)》は一貫目(いつかんめ)十萬圓超(じふまんゑんごえ)とか。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・"燈籠椒泡沫(パプリカ・ムース)"、w/蕃茄醬(あかなすびしほ)
     ※『C』譲(ゆづ)りの招牌(かんばん)
  ・《越後魚沼津南(うをぬまつなん)》 〔鬼もろこし〕"玉蜀黍(なんばんきび)"
     
  ・《長良川(ながらがは)》"香魚(あゆ)"
     ※頭(かぶと)は油炸(あげ)て、その儘(まゝ)口中(くち)に、、、
  ・《飛州高山(ひだゝかやま)》"宿儺南瓜(すぐなかぼちやうり)"
     ※蔥頭(たまねぎ)+鮪大肥(しびおほあぶ)を黃油炒(バタいため)して、、
  ・《常州(ひたち)》"笠間栗澁皮煮(かさまぐりしぶかはに)"
  ・《壹岐(いき)》"雲紋石斑魚(くゑ)"、四百八十匁(≒1.8kg)、
     "(さしみ)"、w/"酢橘(すだち)"+"山蓼(わさび)"
  ・《蝦夷禮文島(れぶんたう)》"紫靈螺子(むらさきうに)"
  ・《蓬莱枾(ほうらいし)》"無花果(からがき)"
     ※保管熟成(しばらくうら)したるもの
  ・《蝦夷根室(ねむろ)》"狹眞魚(さまうを)"、
     "指身(さしみ)"、w/蘿蔔絲(せんろふ、おほねせん)
  ・《備州兒島灣(こじまわん)》の"鰻鱺(むなぎ)"、百六匁(≒400g)
     "素焼(しらやき)"

(しるもの)】:
  ・"法式淸湯(コンソメ)"
    黃蓋鰈(まこがれひ)の骨邊肉(あら)+牛脛肉(うしのすね)ゟ(より)

(すし)】:
  ・《下總銚子 (しもつふさてうし)》"(しび)"
  ・《壹岐(いき)》"雲紋石斑魚(くゑ)"
  ・《下總銚子(しもつふさてうし)》"(まいはし)"
  ・"黃蓋鰈(まこがれひ)"
  ・《陸州渡會(とかい)》"魁蛤(あかゞひ)"、w/"外套膜(ひも)"
  ・"墨魚(すみいか、かふいか)"
     ※新烏賊(わかきいか)
  ・"(あはび)"
     ※酒煮(さかに)

果子(このみくさのみ)】: ※撮影失念(とりわすれ)
  ・《羽州庄内刈屋(かりや)》"刈屋梨(かりやなし)"
  ・《陸州(むつ)》"黃桃(きもゝ)"
  ・《甲州(かひ)》〔甲斐路(かひぢ)〕"葡萄果實(えびかづらのみ)"
  ・"柘榴(ざくろ)"
=======================================

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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
早起(はやお)きは三文(さんもん)の得(とく)、
JK(ジェイケイ)嵌(はま)まる"抖音(TIKTOK)"。
ごね得(どく)、背德(はいとく)、魨毒(ふぐのどく)、
當日(このひ)嚮(むか)ふは、武州葛飾郡寺島村(てらしまむら)の『うを德』。

眼前(まのまへ)には"蠑螺(さゞい)"。
產海(すなどりしはま)は「西伊豆(にしいづ)」との説明(よし)。
嘗(かつ)ては"中華蠑螺(こやつ)Turbo cornutus 1786"に一括(くゝら)れしかど、
六年前(むとせまへ)、"蠑螺(さゞい)Turbo sazae 2017"として辯別(しわけらる)。

仍(すなは)ち、
分類學上(しわけのうへ)では"新種(しんしゆ)"扱(あつか)ひ。
この新聞(しらせ)、「驚天動地(ちをふるはせ、あめおどろかさずといふことなし)」。
蒙(それがし)、亦(また)、「肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)」。※←ウソデス

活(いけ)の"錦鳚(ぎんぽ)"も眼前(めのまへ)に、、。
これを油炸(あぶらにあげ)、"淸湯(すましゞる)"と做(な)す。
"錦鳚(このうを)"、"膠原質(にかはのもと)"を多量(おほ)く含有(ふく)むゆゑ、
"火候(ひいれ)"不足(たらざ)れば、彊(つよ)き齒應(はごた)へを遺(のこ)す。

そこはそれ、百戰錬磨(あまたのいくさたゝひた)る"小宮健一親方(おやかた)"のこと。
適切無比(ほどよく、たゞしき)"火候(ひいれ)"に依(よ)り、
"膠原質(にかはのもと)"は"明膠(やはらか)"と化(な)る。
"油炸錦鳚(てんぷら)"が最善(なにより)なれど、"淸湯(これ)"も、また、吉(よし)。

茲(こゝ)で、"吸口(すひくち)"の"椒芽(きのめ)":
勿論(いふまでもなく) 、"山椒(なるのはじかみ)"の若芽(わかめ)であり、
"小宮健一親方(おやかた)"丹精(こゝろ)込(こ)めたる葉(は)。 ※←チトオホゲサダケド
そもそも、"はじかみ"とは"山椒(なるのはじかみ)"を意味(さ)す。

近來(ちかごろ)では、"(くれのはじかみ)"、
それも、"かくのごときそへもの"を指(さ)すが風習(ならひ)。
元祖・本家・家元(もともと)の"はじかみ"は"山椒(さんせう、なるのはじかみ)"、
などゝ喚做(よびな)さるゝ憂目(うきめ)に、、。

掉尾(いやはて)には"果子(くだもの)"の一(ひとつ)、"桃實(もゝのみ)"。
"(もゝ)"とは震旦渡來(もろこしわたり)の果樹(ものなるき)にして、
"●●●"所緣(ゆかり)"の纏向遺蹟(あそこ)"から"(たね)"が出土(ほりいださ)れ、
更(さら)に古(ふる)くは、六千年前(むちとせまへ)まで遡(さかのぼ)ると云ふ。

だがしかし、さはあれ、However、しかはあれど、
"もゝ"なる辭(ことば)、
元來(もとより)、在來種(いにしへよりこのちにねづく)"山桃(やまもゝ)"を指(さ)す。
蒙(それがし)が陋屋(あばらや)近傍(ちかく)にも、かゝる"山桃(やまもゝ)"。

漢土傳來(もろこしよりつたはり)し"(こやつ)"が、
自生(そこいらにおふ)る"山桃(これ)"に換(か)はりて"もゝ"と呼(よ)ばれ、
"山桃(もともとの、もゝ)"は"からもゝ"と改名(なをあらたむ)。
嗚呼(あゝ)、南無三寶(なむさん)!

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・"玉蜀黍(なんばんきび)豆腐(どうふ)"、
     w/《羽州白神山地(しらかみさんち)》の"蓴(ぬなは)"
  ・《紀州白濱(しらはま)》の"鰒(あはび)"、w/《豆州(いづ)》の山蓼(わさび)
     +"靑茄子(あをなすび)"、w/"鱁鮧(うるか)の"風味(あちとかをり)
  ・"冬瓜(かもうり)"、w/"海扇(ほたてがひ)"+"紅椒(パプリカ)"
     +天狗印"神綠"牌"菽(えだまめ)"
  ・《西伊豆(にしいづ)》の"蠑螺(さゞい)"、壺燒(つぼやき)
  ・"Baccarat"の盤(さら)に〔刺躬(さしみ)〕
    ・《豐後(ぶんご)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ)"、四百匁(≒1.5kg)
    ・《淡路(あはぢ)》"棘鬣魚(まだひ)"
    ・《蝦夷禮文島(れぶんたう)》の"靈螺子(うに)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"吻鰕虎魚(ごり、≒よしのぼりorぬまちゝぶ)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"鰻鱺(むなぎ)"、百四匁(≒390g)

(しるもの)】:
  ・《奧州松島灣(まつしまわん)》油炸(あげ)"錦鳚(ぎんぽ)"、
     w/椒芽(きのめ)

(すし)】:
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"鰻魚(むなぎ)"、蒲燒(かばやき)
  ・《豐後(ぶんご)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"
  ・《豫州(いよ)》の"赤海膽(あかうに)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"香魚(あゆ)"
  ・《蝦夷羽幌(はぼろ)》の"富山鰕(ぼたんえび、=とやまえび)"
  ・萬願寺辣椒(まんがんじなんばんこせう)
  ・《丹後舞鶴(まひづる)》のの"竹筴魚(まあぢ)"
  ・《三州三河灣(みかはわん)》の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・e.t.c.(などなど)

果子(このみくさのみ)】:
  ・"桃實(もゝのみ)"
  ・"靑檸雪葩(ライムソルベ)"
  ・"シャインマスカット"、葡萄實(えびかづらのみ)
  ・"紅秀峯"、櫻桃(さくらんぼ)
=======================================

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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
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【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06

またもや"活烏賊(いきいか)"。
前囘(まへ)は《相州佐島(さじま)》の"唇瓣烏賊(かみなりいか)"、
此度(こだみ)は同(おな)じ《相州佐島(さじま)》の"眞烏賊(すみいか、かふいか)"。
好醜(よしあし)は保留(さてお)き、差異(ひらき)灼然(いやちこ)。

だが、"障泥烏賊(あふりいか)"となるとその相違(たがひ)は顯著(いちじるし)く
(し)ゝて、周知(みながし)る"甘味(あまみ)"と"黏性(ねばり)"が生(うま)る。
熟々(つらつら)そのその原理(ことわり)を推察(うかゞ)ふに、
かの"富山鰕(とやまえび)"や"北國赤鰕(ほつこくあかえび)"に酷似(よくにる)。

仍(すなは)ち、
これらは"蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)"を比較多(ほかよりおほ)く含(ふく)み
死(し)するや、
"グリシン"などの"甘味(あまみ)"と"黏性物質(ねばり)"を生(う)む。

加旃(しかのみならず)、
"黏性物質(ねばり)"は味覺(した)をして鋭敏(さと)から强(し)む
×「死諸葛走生仲達(しせるこうめい、いけるちゆうだつをはしらす)」
〇「死北國赤鰕惑生饕餮(しせるほつこくあかえび、いけるものずきのしたをまどはす)」

愚按(やつがれおもふに)、
"唇瓣烏賊(かみなりいか)"や此度(このひ)の"眞烏賊(すみいか、かふいか)"も、
蝦夷(えぞ)の"活魷(いけするめいか)"と同樣(おなじく)、
"(いけ)"固有(ならでは)の特長(よさ)が顯著(きはだつ)。

當日(このひ)の白眉(とびきりよきもの)は、
"うすゐまめ"と喚做(よびな)す"豌豆(のらまめ)"。
能(よ)く、"顏色(いろみ)"を留(とゞ)め、"食感(はごたへ)"を殘(のこ)す。
「"黏性(とろみ)"は"葛粉(くづのこ)"」との説明(よし)。

丹後(たんごのくに)《宮津(みやつ)》と讀(よ)み違(たが)へしは、
上總(かみつふさ)《富津(ふッつ)》の"鳥蛤(とりがひ)"。
宮津(みやつ)》の産(もの)より小振(こぶ)りながらも"天然物(てんねんもの)"。
この"(はらわた)"も鮮美(すこぶるよきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《阿州(あは)》の"笋(たかむな)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"冰魚(ひうを)"
           +"万願寺辣椒(まんぐわんじなんばんこせう)"
  ・《相州佐島(さじま)》の"活(いけ)眞烏賊(すみいか、かふいか)"、
           w/「田代農園(たしろなうゑん)の」"山蓼(わさび)"
  ・《陸州下北(しもきた)》の"櫻鱒(さくらます)"
  ・《陸州鹽釜(むつしほがま)》の"蚫(あはび)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、八百八十匁(≒3.3kg)刺躬(さしみ)
  ・《蝦夷(えぞ)》、"蝦夷馬糞靈臝子(えぞばふんうに)"
  ・《房州富津(ふッつ)》の"鳥蛤(とりがひ)"、膓(はらわた)+外套膜(ひも)
  ・"豌豆(うすゐまめ)"
  ・《越中滑川(なめりかは)》の"螢烏賊(ほたるいか)"

(しるもの)】:
  ・《播州明石(あかし)》の"眞鯛(まだひ)"、潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・《上總富津(ふッつ)》の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、皮(かは)
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、身(み)
  ・《相州佐島(さじま)》の"眞烏賊(すみいか、かふいか)"
  ・《三州(みかは)》の"江瑤(たひらぎ)"
  ・《上總竹岡(たけをか)》の"鱵(さより)"
  ・《長州宇部(うべ)》の"基圍蝦(くるまえび)"
  ・《蝦夷余市(よいち)》の"鰮(まいはし)"
  ・《房州勝浦(かつうら)》の"鮪(しび)"
  ・"虎河魨精巢(とらふぐしらこ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・"日向夏橘(ひむかなつみかん)"
  ・"古都華(ことくわ)"覆盆子(いちご)
  ・"冰酪(あいすくりん)"
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×永劫不變〇毎年恆例(つねにかはら)ぬ、
切支丹暦新年(きりしたんごよみのあらたなるとし)を祝(いは)ふ醼(うたげ)。
"白身魚(しろみうを)"比較(くらべ)」の需(もとめ)に應(したが)ひ、
《明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"に《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"。

稀有(いとめづらし)き《相州佐島(さじま)》"(いけ)唇瓣烏賊(かみなりいか)"、
"黃金蠘(こがねかに)"、"鰕虎子(はぜからすみ)"、"魁蛤肝臓(あかゞひのきも)"、
×"特殊鷺"〇"特殊野味(なにやらいはくありげな、のゝとりけだもの)"、
《越前(ゑちぜん)》産(のゝにかりし)、"(まがも)"に"鹿肉(かのしゝ)"も。

"(あはび)"、"鳥蛤(とりがひ)"の"肝臟(きも)"ならいざ不知(しらず)、
"魁蛤(あかゞひ)"の"肝臟(きも)"は初體驗(はじめて)。
幼少期(いとけなきころ)"罐頭(かんづめ)"にて噉(くら)ひし例(ためし)あるも、
"款冬未醤(ふきみそ)"とは、遉(さすが)、"小宮親方(おやかた)"!

(いけ)」の"唇瓣烏賊(かみなりいか)"には興味津々(こゝろひかるゝものあり)。
"障泥魷魚(あふりいか)"に"富山鰕(ぼたんえび、とやまえび)"は、
(いけ)」と、「(なま)」とでは大差(おほきなるたがひ)
その緣由 (ことのよし)、死後(しにたるのち)の"黏性物質(ねばりけ)"に有(あり)。

"黏性物質(ねばりけ)"は人(ひと)の味覺(した)を欺瞞(あざむ)く
その限(かぎ)りでは、
"唇瓣烏賊(かみなりいか)"は死後(しにたるのち)"黏性(ねばり)"を生(う)まで、
(いけ)」と、「(なま)」の差異(たがひ)は僅少(わづか)

掉尾(いやはて)の"巧克力冰酪(シヨクラトヲあいすくりん)"製造(つくる)に、
「"攪拌機(かきまぜからくり)"無(な)かりしゆゑ、
 只顧(ひたすら)手(て)にて攪拌(かきま)ぜ捏繰(こねく)り廻(まは)し、、
とは"主人(おやかた)"の苦勞談(はなし)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》"香魚(あゆ)"+"魦(いさゞ)"、有馬煮(ありまに)
  ・《相州佐島(さじま)》"唇瓣烏賊(かみなりいか)"、墨煮(すみに)
  ・"魁蛤肝臟(あかゞひきも)款冬未醤(ふきみそ)"
  ・《肥前小長井(こながゐ)》"鮮蠔(かき)"
  ・《越前(ゑちぜん)》"鳧(まがも)"、w/笋(たかむな)
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、八百五十匁(≒3.2kg)刺躬(さしみ)
  ・《相州佐島(さじま)》"唇瓣烏賊(かみなりいか)"刺躬(さしみ)
  ・"靈臝子(うに)"
  ・《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"、五百十匁(≒1.9kg)刺躬(さしみ)
  ・"鰕虎子(はぜからすみ)"
  ・"鱲子(からすみ≒ぼらのこ)"

(しるもの)】:
  ・《越前(ゑちぜん)》"鹿肉羹(かのしゝのあつもの)"
  ・《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)潮汁(うしほじる)"

【鮓(すし)】:
  ・《房州勝浦(かつふら)》"鰹(かつを)"
  ・《相州佐島(さじま)》"唇瓣烏賊(かみなりいか)"
  ・《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)
  ・"黃金蠘(こがねがに)"、三百四十匁(≒0.9kg)
  ・《陸州鹽釜(しほがま)》"鮪(しび)"中肥肉(やゝあぶより)
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"
  ・《陸州鹽釜(しほがま)》"鮪(しび)"精肉(あかみ)
  ・"魁蛤(あかゞひ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・"さくらもゝ草莓(いちご)"
  ・"はるか金柑(きんかん)"
  ・"橘(みかん、たちばなのみ)"
  ・"巧克力冰酪(シヨクラトヲあいすくりん)"
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率爾(にはか)に罹病(やまひをわづら)ひし"小宮親方(おやかた)"。
先(ま)づは治癒之(これをなほし・いやす)が最重要・最優先課題(なにより)
斯(か)くして、鮓店(みせ)は臨時休業(ときならぬやすみ)と相成(あひな)り、
蒙(それがし)、右往左往(ゆきばをうしなふ)。

未完治(いまだやみあがらぬ)とは云へ、
再開業(ふたゝびあきなひはじめたり)」との速報(しらせ)せを受(う)け、
疾(と)く疾(と)く再見參(あしをはこびなほす)。
迎(むか)ふるは、未熟(いまだうれざ)る《淡路(あはぢ)》"鱲子(からすみ)"。

同(おな)じく、《淡路(あはぢ)》の"圓斑星鰈(ほしがれひ)"は七百廿匁(≒2.7kg)、
《備州兒島灣(こじまわん)》の"鰻鱺(むなぎ)"が二百匁(≒740g)、
加旃(しかのみならず)、《江州琵琶湖(びはこ)》の"諸子(もろこ)"、
《伯州境港(さかひみなと)》"楚蟹(まつばがに、≒すはへがに)"まで、、。

斯樣(かやう)に、通例(つね)の若(ごと)く"美饌(よきうけ)"盡(づく)くしなれど、
就中(わきても)、《相州橫須賀(よこすか)》"剝皮魚(かはゝぎ)"、
これを"潮汁(うしほじる)"、
仍(すなは)ち、"淸湯(すましゞる)"仕立(じた)てと做(な)すは初體驗(はじめて)。

女(をんな)醉(ゑ)はすは色男(いろをとこ)。 ※←ザンネンナガラ、ワシデハナイ!
"雌蠘(めがに)"(ゑ)はすは、夏華四千年(もろこしよちとせ)の祕技(ひめわざ)。
"小宮師傅(おやかた)"、それを自家藥籠中(みづからのてのうち)にするばかりか、
自製(てづから)の"洋梨雪葩(やうなしソルベ)"までへ眼前(めのまへ)に、、。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《淡路(あはぢ)》"鱲子(からすみ≒とゞのこ)"
       w/"聖護院菘根(しやうごいんかぶら)"
  ・《泉州灘(いづみなだ)》"烏魚子(からすみ)" ※無写真(とりわすれ)
  ・《蝦夷地(えぞち)》"狹眞魚(さまうを)"、有馬煮(ありまに)
  ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)刺躬(さしみ)"、七百廿匁(≒2.7kg)
  ・《米利堅(めりけん)》"靈臝子(うに)"
  ・《蝦夷仙鳳址(せんぽうし)》"鮮蠔(なまがき)"
  ・《蝦夷斜里(しやり)》"大口魚(たら)精巢(くもこ、≒しらこ)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》"諸子(もろこ)"
  ・《伯州(はうき)~因州(いなば)》"醉蠘(よはせがに)"
  ・《伯州境港(さかひみなと)》"楚蟹(まつばがに、≒すはへがに)"
  ・《備州兒島灣(こじまわん)》"鰻鱺(むなぎ)"、二百匁(≒740g)
  ・《陸州大間(おほま)》目鹿鮪(めじ、≒こぶりのしび)

(しるもの)】:
  ・《相州橫須賀(よこすか)》"剝皮魚(かはゝぎ)"、潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・《相州橫須賀(よこすか)》"剝皮魚(かはゝぎ)"
  ・《伯州境港(さかひみなと)》"楚蟹(まつばがに、≒すはへがに)"
  ・《豊前海(ぶぜんのうみ)》"蚶(あかゞひ)"
  ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"
  ・"基圍蝦(くるまえび)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・洋梨(やうなし)"雪葩(ソルベ)"
  ・無花果(からがき)、二種(ふたくさ)
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當日(このひ)は久々(ひさびさ)老骨(それがし)唯一人(たゞひとり)。
眼前(めのまへ)の竹笊(たけざる)には"楤芽(たらのめ)"。
通例(つね)のごとく"掃愁帚(さけ)"も用意(を)かれてをり、
劈頭(いやさき)に、《土州四万十(しまんと)》の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"。

貴價(いとねのたか)き"花山椒(なるのはじかみのはな)"まで被添(そへら)れ、
これを慢慢地(ゆるり)と堪能(こゝろゆくまであぢはふ)。
次(つ)いで、《山州塚原(やましろのくにつかはら)》の"白子笋(しらこだけ)"。
こちらには風習(ならひ)の"椒芽(きのめ、=くれのはじかみのわかば)"。

と、俎上(まないたのうへ)には、
×天狗(てん●)〇《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"、
その重量(めかた)五百六十匁(≒2.1kg)と云ふ。
"身肉(み)"と"裙邊(えんがは)"それに"肝臟(きも)"を刺躬(さしみ)に、、。

上述(くだん)の"楤芽(たらのめ)"と《江州琵琶湖(びはこ)》"稚年魚(ちあゆ)"は、
"天麩羅(てんぷら)と烹飪(な)す。
敢然(あへて)雞蛋(にはとりのたまご)不使用(つかは)ねど、
"油煠楤芽(こ)"の美(うまさ)、常態(つね)に寸毫無變(つゆことなるところなし)。

"炸稚年魚(ちあゆあげ)"は、
火候(ひいれ)を两段階(ふたとほり)に變化(かへ)て提供(いだす)。
"第一組(ひとくみめ)"は(あさ)く"第二組(ふたくみめ)"は(ふか)く、、。
仍(すなは)ち、『』の"對蝦(くるまえび)"と同樣(おな)じ烹調法(やりかた)。

"花山椒鍋(なるのはじかみのはなのなべ)"として二種類(ふたくさ)。
最初(いやさき)に《泉州岸和田(きしわだ)》の"鳥蛤(とりがひ)"、肝臟(きも)つき。
"身肉(み)"の食感(はごたへ・したざはり)は勿論(いふまでもなく)、
"肝臟(きも)"特有(ならでは)の鮮味(うまみ)に失魂(たましひをうしなふ)

次(つ)いで俎(まないた)には《蝦夷壽都(えぞちすッつ)》"櫻鱒(さくらます)"。
一貫九十匁(≒4.1kg)といふ肥胖(ふくよかさ)に、
茫然自失(ことばをうしなひ、そのばにたちつくす)こと霎時(しばし)。
"これ"に依據(よ)らば、「板鱒(いたます)」と喚做(よびな)す固體(しろもの)。

"楤芽(たらのめ)"・"椒芽(きのめ)"と一緒(とも)に"(なべ)"に投入(い)れ、
"(わん)"へと移(うつ)す。
不味(あぢあし)き理由(ことわり)皆無(あるべからず)
"(すし)"にまで不惜(をしむことな)く"櫻鱒(このます)"を活用(つかひまはす)。

今季初(ことしはじめて)、活(いけ)の"鰻鱺(むなぎ)"は、
《備州兒島灣(きびのくにこじまわん)》、大畧(およそ)一百匁(≒380g)のもの。
通常(つね)のごとくこれを"志ら燒(しらやき)"に、、。
"(かは)"酥脆(さくさく)、その"(み)"は向崩潰(いまにもくづれんばかり)。

然(しか)はあれど、當日(このひ)の白眉(はくび)は"雞蛋糕(たまごやき)"。
活(いけ)"對蝦(くるまえび)"+"富山蝦(ぼたんえび、=とやまえび)"の泥(すりみ)。
平成二十八丙申歳(へいせんいじふはちひのえさるどし、=2016)に經驗(あぢは)ひし、
"雞蛋糕(たまごやき)"にも匹敵(ならぶ)鮮美(よきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《土州四万十(とさのくにしまんと)》"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)",
      w/花山椒(なるのはじかみのはな)
  ・《山州塚原(やましろのくにつかはら)》"白子筍(しらこだけ)",w/椒芽(きのめ)
  ・《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ)"、五百六十匁(≒2.1kg)
    ・身肉(み)
    ・裙邊(えんがは)
    ・肝臟(きも)
  ・《油煠(あげもの)》
    ・"楤芽(たらのめ)"
    ・《江州琵琶湖(あふみのくにびはこ)》"稚年魚(ちあゆ)"、
        淺火候(あさきひいれ)+深火候(ふかきひいれ)
  ・《備州兒島灣(きびのくにこじまわん)》"鰻鱺(むなぎ)"、一百匁(≒380g)

(しるもの)】:
  ・《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"、
      骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"
  ・《花山椒鍋(なるのはじかみのはなゝべ)》
    ・《蝦夷壽都(えぞちすッつ)》"櫻鱒(さくらます)"、一貫九十匁(≒4.1kg)
    ・《泉州岸和田(いづみのくにきしわだ)"鳥蛤(とりがひ)"

(すし)】:
  ・《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"
  ・《薩州出水(さつまのくにいづみ)》"竹筴魚(まあぢ)"
  ・"(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・《泉州岸和田(いづみのくにきしわだ)"鳥蛤(とりがひ)"
  ・"雞蛋糕(たまごやき)"、
     活(いけ)對蝦(くるまえび)+富山蝦(ぼたんえび、=とやまえび)

果子(このみくさのみ)】:
  ・玻瓈杯盛(ぎやまんさかづきもり)
    ・無花果(からがき)、"ビオレ・デ・ソリエ"果凍(にこゞり)
    ・小玉西瓜(こだますいか)
    ・蕃茄(あかなす)など
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭暗匣(みらーれす)
【鏡珠】:Voigtländer NOKTON 1.2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
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恆例(いつも)の新年會(あらたなるとしをいはふうたげ)。
年年歳歳(としごと)に增長(つけあが)り「あれやこれや」の無理難題(むりなんだい)
i.e.,"東星斑(あかじんみーばい)"、"絲尾紅鑽魚(あかまち)"、"藤壺(ふぢつぼ)"、
"馬鹿蛤柱(こばしら)"、"海膓(ゆむし)"、"白未醤椀(しろみそわん)"まで。

主人(あるじ)"小宮親方(こみやおやかた)"説明(いへらく)、
"魚市塲(いちば)"に無(な)きものは通販調達(あれによりかひもとめ)、、」となん。
就中(わきても)、"海膓(ゆむし)"は"釣餌(つりえ)"として、、。
その奇怪(あや)しく蠕動(うごめ)く容(さま)、難盡言舌(ことばにはつくしがたし)

劈頭(いやさき)に肥前五島(ごたう)の"淸蒸東星斑(すぢあらのむしもの)"。
この魚(うを)「"流虬(宇留麻廼久尓)"三大高級魚之一(いとたふときうをのひとつ)」。
"東星斑(すぢあら)"そのものは『風ら坊』にて啖(くら)ひ經驗(ためし)あれど、
當日(このひ)の"淸蒸東星斑(むしもの)"も、眞言(まこと)、鮮美(よきあぢ)なり!

"東星斑(このうを)"、その"骨邊肉(あら)"も亦(また)最美(いとうま)し
そも、"石斑魚(はた)"の類(なかま)は、
總體(おしなべ)て、割烹法(さきかたにかた)を不問(とはで)旨(あぢよ)きもの
"淸蒸(むしもの)"、"紅燒(につけ)"、"生魚片(さしみ)"、などなど、、。

次(つ)いで前述(くだん)の「釣餌(つりえ)」"海膓(ゆむし)"。
蝦夷(えぞ)サロマ湖(こ)の"鮮蠔(なまがき)"と碟兒(こざら)に盛(も)られ、
背水之陣(もはや、しりぞくことあたはず)」
南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)」を三度(みたび)唱(とな)へ口中(くちのなか)に。

外見(みため)も食感(はごたへ・したざはり)も"貝外套膜(かひのひも)"なれど、
"サロマ湖鮮蠔(さろまのかき)"にて漱口(くちすゝぐ)。
蝦夷(えぞ)"サロマ湖鮮蠔(さろまこのかき)"は淸冽(きよらかにすめ)み
肥大(こえ)て濃厚(あぢこ)き"仙鳳趾鮮蠔(せんぱうし)"とは對極(さかしま)。

江州琵琶湖(びはこ)の"小香魚(ひうを)"には奧州(むつ)の"疣革菌(かうたけ)"。
"香魚(あゆ)"は越年(としをこす)こと稀有(まれ)にして、
"冰魚(ひうを)"→"稚年魚(ちあゆ)"→"香魚(あゆ)"→"落香魚(おちあゆ)"となり、
終(つひ)には海(うみ)へと下(くだ)り、命數盡(いのちをうしなふ)

"香魚(あゆ)"・"香蕈(かうたけ)"、雙方(どちらも)"貴馨(かをり)"が命(いのち)
とは云へ、遉(さすが)に"靑鱂めだか)"ほどの"小香魚(ひうを)"では、
風味(あぢもかをり)も缺乏(とぼし)。
やはり、"新小鰶(このしろのしんこ)"のごとく"走(はし)り"を愉(たの)しむ魚(いを)

"海宮(わだつみのうみのみや)"では"あかまち"として認知(し)らるゝ、
奄美鬼界島(あまみきくわいじま)"絲尾紅鑽魚(はまだひ)":
"刺躬(さしみ)"と"(なべ)"にて堪能(いたゞく)。
"東星斑(すぢあら)"ほどの濃厚(あぢこのこさ)こそあらねど、ともに佳味(よきあぢ)

陸州下北(しもきた)の"藤壺(ふぢつぼ)":
冢中枯骨(それがし)、嘗(かつ)て西伊豆賀茂郡松嵜濱(にしいづまつざきのはま)に、
"笠藤壺(これ)"咋(くら)ひし例(ためし)あり。
"藤壺(ふぢつぼ)"は、實(げ)に"龜足(かめのて)"と雙璧(なら)ぶ華美(よきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・肥前松浦五島(ごたう)"淸蒸東星斑(あかじんみーばい、=すぢあら)"
  ・蝦夷網走(あばしり)"海膓(ゆむし)"
  ・蝦夷サロマ湖(さろまこ)"鮮蠔(なまがき)"
  ・江州琵琶湖(びはこ)"小香魚(ひうを)"+奥州(むつ)"疣革菌(かうたけ)"
  ・肥前五島(ごたう)"豹紋鰓棘鱸(あかじんみーばい、=すぢあら)"の骨邊肉(あら)
  ・"鱲子(からすみ)"+"豇豆(さゝげ)"
  ・《胾(さしみ)》
    ・奄美鬼界島(きくわいじま)"絲尾紅鑽魚(あかまち、=はまだひ)"
    ・蝦夷苫小牧(とまこまひ)"馬鹿蛤柱(こばしら)"
    ・"膾殘魚(しらうを)"
    ・蝦夷根室(ねむろ)蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)
  ・蝦夷余市(よいち)"華臍魚肝臟(あんかうきも)"
  ・"油菜(なばな)"
  ・遠州濱名湖(はまなこ)"鰻鱺(むなぎ)"、三百廿匁(1.2kg))

(しるもの)】:
  ・陸州下北(しもきた)"藤壺(ふぢつぼ)"白未醤椀(しろみそわん)
  ・壹岐(いき)"楚蟹(まつばがに、すはへがに)"と
   奄美鬼界島(きくわいじま)"絲尾紅鑽魚(あかまち、=はまだひ)"の鍋(なべ)

(すし)】:
  ・"虎河魨(とらふぐ)"
  ・蝦夷野付(のつけ)の"海扇(ほたてがひ)"
  ・阿波鳴門(なると)"棘鬣魚(まだひ)"
  ・"蠔(かき)"
  ・"鰮(まいはし)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・無花果(からがき)、"ビオレ・デ・ソリエ"
  ・草莓(いちご)、"ひのしづく"
  ・橘(みかん、たちばなのみ)、"せとか"
  ・信州(しなの)ゝ"林檎(りんご)" ※品種不詳
=======================================

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
結實・收穫(みのり)の白藏(あき)。
と來(く)ると、"狹眞魚(さまうを)"、"栗子(くり)"、"松蕈(まつたけ)"となるが、
社會通念(©毒さま✨.:*゚:.。:.、よのならひ)であり、人情(ひとのこゝろ)と云ふもの。
あるいは、偏(ひとへ)に"膓内細菌(こやつ)"のなせる所業(わざ)歟(か)?

《陸州宮古(みやこ)》の"狹眞魚(さまうを)"は"刺躬(さしみ)"、
豫州(いよ)》"中山栗(なかやまぐり)"は"澁皮煮(しぶかはに)"、
丹波(たんば)》の"松蕈(まつたけ)"は
油煠鰕芋(あぶらにあげたるえびいも)と一緒(とも)に"吸物(すひもの)"と成(な)す。

實(げ)に稀有(めづらし)き"徘徊堅魚(まよひがつを)"は《佐渡産(さどのもの)》。
藁(わら)以て燻(いぶ)し、"(たゝき)"に做(つく)る。
などて不味(あぢあし)き理由(ことわり)やある
これを「口福(くちにするや、よろこびあふれほどばしる)」と云ふ。

當日(このひ)の"舎利(すめし)":
あまりの變貌(かはりぶり)に肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。※←オオゲサ
同行(せきをともにせ)し食通(したたしかなるたべて)に依據(よる)なら、
口(くち)にすると同時(ひとし)く驚歎之(これにおどろき)まして厶(ござ)る。」

「"(こめ)"を變更(か)へ、"(かま)"を更新(あらた)め、、云々(うんぬん)。」
とは"親方(おやかた)"が説明(はなし)。
それすら聞(き)ゝ逃(のが)したるは、
老骨(それがし)、一世一代(このうへな)き恥辱(みのはぢ)。

三種(みくさ)"無花果(からがき)"。
輒(すなは)ち、
"ヴィオレ・ド・ソリエ"、"とよみつひめ"、"枡井ドーフィン"、これなり。
此度(こだみ)の"ヴィオレ・ド・ソリエ"は想定外(おもひのほか)に淡泊(あぢうすし)。

換言(いひかへ)るなら、"(あまみ)"弱(よは)めで"(すみ)"が立(た)つ。
對照之(これにひきかへ)、"枡井ドーフィン"の何(なん)たる變身(かはりみ)!!。
廿日餘(はつかあまり)熟(う)らし、、」とは、親方(おやかた)が呟(つぶや)き。
"とよみつひめ"の"(あまみ)"强(つよ)きは勿論(いふもさらなり)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・蝦夷昆布森(こんぶもり)の"蠔(かき)" ※昆布〆(ゑびすめじめ)
  ・陸州宮古(みやこ)の"狹眞魚(さまうを)"
  ・豫州(いよ)"中山栗(なかやまぐり)"、澁皮煮(しぶかはに)
  ・《胾(さしみ)》
    ・陸州宮古(みやこ)の"狹眞魚(さまうを)"
    ・佐渡(さど)の"徘徊堅魚(まよひかつを)"
    ・播州明石(あかし)の"棘鬣魚(まだひ)"、五百九十匁(≒2.2kg)
  ・常州霞箇浦(かすみがうら)の"鰻鱺(むなぎ)"、一百三十匁(≒480g)
  ・蝦夷餘市(よいち)の"華臍魚肝臟(あんかうきも)"

(しるもの)】:
  ・丹波(たんば)"松蕈(まつたけ)"+山州(やましろ)"鰕芋(えびいも)"
     吸口(すひくち):"野蜀葵(みつばぜり)"
  ・播州明石(あかし)の"棘鬣魚(まだひ)"、五百九十匁(≒2.2kg)、
     骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"

(すし)】:
  ・佐渡(さど)の"徘徊堅魚(まよひかつを)"
  ・志州鳥羽(とば)の"馬鮫魚(さはら)"
  ・播州明石(あかし)の"棘鬣魚(まだひ)"
  ・"雞蛋糕(たまごやき)" ...※周氏新對蝦(しばえび)+佛掌薯(つくねいも)
  ・"富山鰕(ぼたんえび、=とやまえび)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・"無花果(からがき)"三種(みくさ)
    ・"ヴィオレ・ド・ソリエ"
    ・"とよみつひめ"
    ・"枡井ドーフィン"
=======================================

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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭暗匣(みらーれす)
【鏡珠】:Voigtländer NOKTON 1.2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
     蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
久方(ひさかた)ぶりの"燈籠椒幕斯(パプリカムース)"に舌鼓(したつゞみ)。
これまた再會(まみへ)て嬉(うれ)しや"鳥蛤肝臟(とりがひのきも)"。
"鳥蛤肝臟(これ)"ッて、丹後(たんご)『繩屋』にて鮮美(よきあぢ)を認識(し)り、
"小宮親方(おやかた)"に話題提供(はな)したが嚆矢濫觴(はじまり)。

"岩蠔(いはがき)"からは"珍珠(しらたま)"、
否(いな)、將(まさ)に"眞珠(しらたま)"に爲(な)らんとする"白玉(しらたま)"。
"鰻鱺(むなぎ)"から"釣針(つりばり)"は當家(こちら)を含(ふく)め二度(にど)。
だが、"岩蠔(いはがき)"から"珍珠(しらたま)"とは吃驚(びつくり)。

"赤鯥(あかむつ)"は"紅燒(につけ)"。
纔(わづ)かながらも、"味(あぢ)"、就中(わきても)"甜(あまみ)"强(つよ)めか?
"醬油蟹醤(カンジャンケジャン、わたりがにてうせんづけ)"は淡麗(あはくきよらか)。
これぞ、"小宮親方(おやかた)"の廚藝(わざ)!

長良川(ながらがは)の"香魚(あゆ)"は油煮(コンフィ、あぶらに)に、、。
"燈籠椒幕斯(パプリカムース)"同樣(とおなじく)、
拂郎西察(おふらんす)の烹調(きりさきにたて)を自家藥籠中(わがもの)とせし、
"小宮親方(おやかた)が"眞骨頂(まことのそこぢから)。

いや、俟(ま)て、俟(ま)て!
その前(まへ)の"淸湯(コンソメ、きりしたんばてれんのすましゞる)"からして、
その確乎(たしか)なる技倆(うで)の爲(な)せる技(わざ)
"黃蓋鰈(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"の骨邊肉(あら)を活用(いかす)。

これと"牛脛肉(うしのすねにく)"、"百里香(タイム)"、"月桂樹(ローリエ)"、
"芹菜(セロリ)"、"胡蘿蔔(せりにんじん)"、"蔥頭(たまねぎ)"、を燉(にこ)み、
この"一盌(ひとまり)"に、、。
凄腕(すごうで)、稀(まれ)に遭(み)る手煆煉(てだれ)と斷言(いはざるべからず)。

當日(このひ)の"鰻鱺(むなぎ)"は、かの"宍道湖(しんじこ)"。
"(やき)"の廚藝(わざ)と相俟(あひま)り、至高(このうへなき)味(あぢはひ)
和燈ろ』の"熟成鰻(うらしねかしむなぎ)"と比較(くら)べても、
雲壤懸隔(くもとつちほどのたがひ)」。

しかはあれど、"割刀(めしがたな)"ばかりは『和燈ろ』が頂點(いたゞき)。
うを德』の"割刀(それ)"は居酒屋(ゐざかや)竝(なみ)。
まッ、そんなところも"小宮親方(おやかた)"特有(ならでは)。
脱力系名工(かたのちからのぬけたるたくみ)」と説明(い)ふべき歟(か)?

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・羽州(では)の"蓴(ぬなは)"+"蕃茄(あかなす)"
  ・"燈籠椒幕斯(パプリカムース)"
  ・丹後舞鶴(まひづる)"鳥蛤(とりがひ)"肝臟(きも)
    +"櫻鰕(さくらえび)"+"白瀧(しらたき)"+"實山椒(なるはじかみのみ)"
    +"萬願寺辣椒(まんぐわんじなんばんこせう)"
  ・"岩蠔(いはがき)"
  ・"赤鯥(あかむつ)"、紅燒(につけ)
  ・《胾(さしみ)》
    ・"鱸(すゞき)"
    ・"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・肥後(ひご)"醋藕(すづけのはちすのね)"
  ・"醬油蟹醤(カンジャンケジャン、わたりがにてうせんづけ)"
  ・豫州西條(いよさいじやう)"絹皮茄子(きにかはなすび)" ※冩眞なし
  ・長良川(ながらがは)の"香魚(あゆ)"、油煮(コンフィ、あぶらに)
    +長州萩(ながとのくにはぎ)の"黑蚫(くろあはび)"
  ・雲州宍道湖(いづもしんじこ)の"鰻鱺(むなぎ)"、一百四十一匁(≒530g)

(しるもの)】:
  ・"黃蓋鰈(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"の骨邊肉(あら)による
     "淸湯(コンソメ、ばてれんのすましゞる)"
     ※+牛脛肉(うしのすねにく)、香味蔬菜(かをりあるあをもの)など
  ・"鱸(すゞき)"、骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"

(すし)】:
  ・"鱸(すゞき)"
  ・豐後(ぶんご)"黃蓋鰈(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"
  ・"小鰶(こはだ)"
  ・"赤鯥(あかむつ)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"竹筴魚(まあぢ)"
  ・"鰮(まいはし)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・櫻桃(さくらんぼ)"佐藤錦(さたうにしき)"
  ・櫻桃(さくらんぼ)"米利堅(めりけん)"
  ・蕃茄(あかなす)
  ・失念(わすれた)
=======================================

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtlaender)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
今年(ことし)も、
山州塚原(やましろのくにつかはら)の"白子笋(しろきたかむな)"を喰(く)ひそびれ、
信州(しなのゝくに)の"楤芽(たらのめ)"に、
陸州(むつのくに)"花山椒(なるのはじかみのはな)"を堪能(おほいにたのしむ)。

"花山椒(なるのはじかみのはな)"は、
土州四万十川(しまんとがは)の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"、
備州兒島灣(こじまわん)"鰻鱺(むなぎ)"、陸州宮古(みやこ)"帝王鮏(ますのすけ)"、
房州勝浦(かつうら)"黑鯥(くろむつ)"にと「八面六臂(めざましきはたらきぶり)」。

駿州由比(ゆひ)"櫻鰕(さくらえび)"も靑陽(はる)ならではの悦樂(よろこび)。
活魚(いけ)」と云ふ、
相州佐島(さじま)の"墨魚(すみいか、=かふいか)"、二百六十七匁(≒1kg)。
刀工(きりかた)のせゐか?、唯一無二(ほかになき)食感(はごたへ・したざはり)

「走(はし)り」の備州兒島灣(こじまわん)の"鰻鱺(むなぎ)"、九十三匁(≒350g):
想定外(おもひのほか)に魫(あぶら)に富(と)み佳味(なかなかのあぢはひ)
師傅(おやかた)が"炙(やき)"の超絶技巧(わざ)は勿論(いふもさらなり)。
この廚藝(わざ)、奧州遠野(とほの)『』と雙璧(ふたつながらにならびたつ)。

和泉灘(いづみなだ)"鳥蛤(とりがひ)"の"外套膜(ひも)"は初體驗(はじめて)。
その風韻(かをり)、"御本尊(み)"にも優越(まさる)。
"文鰩(とびいを)"鮮(なま)で噉(くら)ふも初(はじめて)。
小宮親方(こみやおやかた)、感謝(ありがたや)、!

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・土州四万十川(しまんとがは)の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"+
     "花山椒(なるのはじかみのはな)"
  ・相州佐島(さじま)の"墨魚(すみいか、=かふいか)"、二百六十七匁(≒1kg)

  ・《(さしみ)》
    ・"北紫靈臝子(きらむらさきうに)"
    ・淡路(あはぢ)"黃蓋鰈(あまてがれひ、≒まこがれひ)"、五百三十三匁
     ・精肉(み)
     ・裙邊(えんがは)
     ・肝臟(きも)

  ・《天麩羅(てんぷら)》
    ・信州(しなの)"楤芽(たらのめ)"
    ・駿河灣(するがわん)駿州由比(ゆひ)"櫻鰕(さくらえび)"

  ・備州兒島灣(きびこじまわん)の"鰻鱺(むなぎ)"、九十三匁(≒350g)

(しるもの)】:
  ・淡路(あはぢ)"黃蓋鰈(あまてがれひ、≒まこがれひ)"、五百三十三匁(≒2kg)、
     骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"

花山椒鍋(はなざんせうなべ)》:
  ・陸州宮古(みやこ)"帝王鮏(ますのすけ)"
  ・房州(あは)"黑鯥(くろむつ)"

(すし)】:
  ・淡路(あはぢ)"黃蓋鰈(あまてがれひ、≒まこがれひ)"
  ・肥後天草(あまくさ)"小鰶(こはだ)"
  ・房州勝浦(あはかつうら)"黑鯥(くろむつ)"
  ・陸州鹽釜(しほがま)の"鮪(しび)"
  ・和泉灘(いづみなだ)の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・和泉灘(いづみなだ)の"鳥蛤(とりがひ)"、外套膜(ひも)
  ・相州小柴(こしば)の"烏賊(すみいか、かふいか)"
  ・"文鰩(とびいを)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・日向(ひむか)"芒果(マンゴ)"
  ・土州(とさ)"狼桃(おほかみもゝ)"蕃茄(あかなす)
=======================================

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtlaender)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2.8~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
"味神樣(あぢがみさま)"の託宣(おつげ)に遵(したが)ひ、"黃金蠘(こがねがに)"、
i.e.,(すなはち)、
"楚蟹(すはへがに)"と"紅楚蟹(べにすはへ)"とが交合(みとのまぐはひ)をし、
十月十日後(とつきとほかのゝち ←※ウソ)に誕生(うまれ)たのがこの"(かに)"だッ!

「今年(ことし)四杯(しはい)の×蒸氣船(じやうきせん)〇"黃金蠘(こがねがに)"、
 たッた四杯(しはい)で夜(よる)も眠(ねむ)れず、
 當旦(このひのあさ)に漸(やうや)う二杯(にはい)
 午餐(ひる)に一杯(いつぱい)、晩餐(よる)にも復一杯(またいつぱい)。」

、、とは"小宮親方(こみやおやかた)"が辯(はなし)。
背(そびら)の錦繪(にしきゑ)は、
伊斯把泥亞(いすはにあ)の繪師(ゑし)"P.ピカソ"による石版印刷畫(リトガラフ)。
「先代(さきつおやかた)の所藏品(もの)」とのよし。

遉(さすが)に"幻魚(げんげ)"までは不能調達(そろへられず)、
代替(かはり)に食感(はごたへ・したざはり)の類似(にた)る"魚(もの)"を、、
と、示(しめ)す先(さき)には"これ"、"華臍魚(あんぐうを)"。
淡路(あはぢ)の"星鰈(ほしがれひ)"は七百廿匁(≒2.7kg)。

扨(さて)"黃金蠘(こがねがに)":
正眞正銘(まがふかたなき)、但州美含郡香住(かすみ)の"黃金蠘(こがねがに)"。
生"黃金蠘(いけるこがねがに)"喜冢中枯骨卍(くたばりそこなひまんじをよろこばす)
"楚蟹(すはへがに)"を知悉(しりつく)したる面々(かたがた)また然(しかり)

濃厚(あぢのこ)さでは"楚蟹(すはへがに)"に肉薄(せま)り、
甘(あま)く滑(なめ)らかなること"紅楚蟹(べにすはへがに)"の若(ごと)し。
"蠘肉(かにゝく)"吉(よし)、"黃(かにみそ)"、さらに吉(よし)。
これを「×鈴木福(すゞきふく)〇口福(こうふく)」と云ふ。

三ヶ月前(みつきまへ)には(なま)にて口(くち)にせし"鱲子(ぼらこ、からすみ)"。
×十月十日後(とつきとほかのゝち)〇三ヶ月後(みつきあと)には、
かくのごとき景狀(ありさま)に、、。
これを「匠(たくみ)による"熟成(うらし・ねかし)"の廚藝(わざ)」と云ふ。

否(いな)!
名匠(なだかきたくみ)單獨(ひとり)と云ふより、
歳月(つきひ)と人智(ひとのちゑ)の合力・協業(たすけあひ)の精華(なせるわざ)
"未醤(みそ)"、"醤油(まめびしほ)"、"(さけ)"にも通底(つらなる)。

"星鰈(ほしがれひ)"、"大翅鮶鮋(きちじ)"の美(うまさ)は勿論(いふもさらなり)。
白身魚(しろみうを)の皇帝(すめらぎ)"星鰈(ほしがれひ)":
類稀(たぐひまれ)なる"牙鮃(ひらめ)"愛好家(ずき)の老骨(それがし)も、
この味(あぢ)には脱帽(かぶとをぬぐほかなし)。

有左程(さるほど)に、
"大翅鮶鮋(きちじ)"は、"紅燒(しやうゆに)"より"淸蒸(すがたむし)"が吉(よい)。
かの"淸蒸石斑魚(はたのすがたむし)"にも優越(まさ)る鮮美(よきあぢ)
努々(ゆめゆめ)、勿疑(うたがふことなかれ)!

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・炊合風(たきあはせふう)"小菜碟兒(こざら)"
    ・"鱲子(からすみ)"、熟成三ヶ月(うらすことみつき)
    ・能州(のと)"靑沙噀(あをなまこ)"
    ・山州(やましろ)"金時胡蘿蔔(きんときせりにんじん)"
    ・山州(やましろ)"淀蘿蔔(よどおほね)"
    ・山州(やましろ)"菜花(なばは)"

  ・"紅燒大翅鮶鮋(きちじのにつけ)"
  ・但州美含郡香住(かすみ)の"黃金蠘(こがねがに)"、二百四十匁(≒900g)
  ・《(さしみ)》
    ・淡路(あはぢ)"星鰈(ほしがれひ)"、七百廿匁(≒2.7kg)
        w/ 豆州御殿塲(いづごてんば)の"山蓼(わさび)"
    ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の"鮪幼魚(めじ)"、一貫八百七十匁(≒0.7kg)
    ・蝦夷濱中(えぞはまなか)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
    ・自家製(てづからの)"雲丹(うに)"

(しるもの)】:
  ・陸州石卷(むついしのまき)華臍魚(あんかう)"どぶ汁(じる)"
  ・"魨精巢(とらふぐしらこ)"+"堀川牛蒡(ほりかはきたきす)"

(すし)】:
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、肥肉(ちゆうあぶ)
  ・陸州鰺ヶ澤(むつあぢがさは)の"牙鮃(ひらめ)"
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・蝦夷野附(えぞのつけ)の"馬珂蛤閉殼筋(ばかゞひ、こばしら)"
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、紅肉(あかみ)
  ・淡路(あはぢ)"星鰈(ほしがれひ)"、七百廿匁(≒2.7kg)
  ・下總銚子(しもつふさてうし)の"鯖(まさば)"
  ・對蝦(くるまえび)
  ・丹後舞靏(たんごまひづる)の"鰤(ぶり)"、三貫二百匁(≒12kg)
  ・房州勝浦(あはかつふら)の"黑鯥(くろむつ)" ※滿腹(はらくち)く辭退

果子(このみくさのみ)】:
  ・草莓(いちご)、"ロイヤル・クイーン"
  ・草莓(いちご)、"スカイ・ベリー"
  ・"あまおう草莓(いちご)"の幕斯(ムース)
  ・"巧克力冰酪(シヨクラトヲあいすくりん)"
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:高千穗光學(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 微距(Macro)2/50 @F2~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
"鱣魚(むなぎ)"は[白藏(あき)が最美(なにより、3150)。
此度(こだみ)は、雲州宍道湖(いづもしんじこ)"、二百四十匁(≒900g)。
(あぶら)に富(と)み、溶融(とろけ)んばかりの"(み)"ながら、
"(かは)"酥脆(さくさく)は親方固有(おやかたならでは)の超絶廚藝(すごわざ)。

名殘(なごり)の"松蕈(まつたけ)"は信州伊那辰野(しなのゝくにいなたつの)。
未曾有(いまだかつてな)き不漁(ふりやう)」と云ふ"狹眞魚(さまうを)":
今龝初(このあきはじめて)、最上質(いとよきもの)なれど、
例年(いつも)の蝦夷根室(ねむろ)ならで奧州久慈(くじ)とのよし。

舊暦(むかしのこよみ)長月十三日(ながつきじふさんにち、Oct.29)を控(ひか)へ、
常州友部(ひたちのくにともべ)の"栗子澁皮煮(くりしぶかはに)"。
「大畧(およそ)半日(はんにち)かけ、叮嚀(ねんごろ)に煮(に)たるもの」と云ふ。
廣義(ひろく)は、"友部(ともべ)"は"笠間(かさま)"に含(ふく)まる。

"鱲子(からすみ)"の(うま)さは勿論(いふもさらなり)。
小鹹多鮮(しほけすくなく、うまみにとむ)」こと難盡筆舌(ことばにつくしがたし)。
"(はし)り"故(ゆゑ)、
"日向(ひむか)"は熟成過程(うらしのさなか)、"土州(とさ)"は(なま)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・蝦夷羅臼(えぞらうす)の"雲子(くもこ)"
  ・煮滲(にびたし)
    ・《溏油(だし)》:利尻海帶(りしりあらめ)+鮪乾(しびぶし)
    ・信州伊那辰野(しなのゝくにいなたつの)ゝ"松蕈(まつたけ)"
    ・筑紫(つくし)"菱實(ひしのみ)"
    ・丹州(たんば)"黑荳(くろまめ)"
  ・"鱲子(からすみ)"競演(かほあはせ)
    ・日向(ひむか)熟成過程(うらしのさなか)
    ・土州(とさ)の鮮(なま)
  ・對馬(つしま)"(かつを)"稭炙(わらやき) 
  ・蝦夷餘市(えぞよいち)"松皮鰈(まつかはがれひ)"、八百廿七匁(≒3.1kg)
  ・蝦夷仙鳳趾(えぞせんぱうし)の"眞蠔(まがき)" 
  ・陸州久慈(むつくじ)の"狹眞魚(さまうを)"
  ・常州(ひたち)"柳蟲鰈(やなぎむしがれひ、≒さゝがれひ、わかさがれひ)"
  ・(さしみ)
    ・蝦夷余市(えぞよいち)"松皮鰈(まつかはがれひ)"
    ・蝦夷小川商店(えぞをがは)の"蝦夷馬糞靈臝子(えぞばふんうに)
  ・常州友部(ひたちのくにともべ)の"栗子(くり)澁皮煮(しぶかはに)"
  ・雲州宍道湖(いづもしんじこ)の"鱣魚(むなぎ)"、二百四十匁(≒900g)

(しるもの)】:
  ・《吸地(すひぢ)》:利尻海帶(りしりあらめ)+鮪乾(しびぶし)
  ・《椀種(わんだね)》:
    ・信州伊那辰野(しなのいなたつの)ゝ"松蕈(まつたけ)"
    ・播州明石(はりまのくにあかし)の"眞棘鬣魚(まだひ)"、五百六十匁(≒2.1kg)
  ・《吸口(すひくち)》:柚(ゆ)、食用菊花(もつてのほか、≒かはらよもぎのはな)

(すし)】:
  ・蝦夷余市(えぞよいち)"松皮鰈(まつかはがれひ)"、八百廿七匁(≒3.1kg)
  ・陸州大間(むつおほま)の"(しび)"、三十七貫三百匁(≒140kg)
  ・"春子鯛(かすごだひ)"
  ・"白纜魚(しろいか、≒けんさきいか)"
  ・"剝皮魚(かはゝぎ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・肥後(ひご)"太秋枾(たいしうがき)"
  ・紀州(きい)"富有枾(ふいうがき)"
  ・蝦夷(えぞ)"らいでん甜瓜(からうり、まくは)"
  ・洋梨(やうなし)"極光(アウロラ)"
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.8~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
旣(すで)に、
同日(おなじひ)、and/or 翌日(つぎのひ)の訪問記(たづねしはなし)存在(あり)。
かゝるがゆゑに、敢(あ)へて反復之(これをくりかへ)すは、
畫蛇添足(へびにあしをそへ)」、「屋上架屋(やねにやねをかさぬるがごとし)」。

「『奈可田』流(じこみ)」と説明(い)ふ"鹽蒸(しほむし):
周知(あまねくしら)るゝがごとく、"鹽蒸(しほむし)とは"煮蚫(にあはび)"のこと。
(さけ)などにより、嫩(やはらか)になるまで慢慢地(ゆるり)煮(に)こむ
老骨(それがし)知(し)る限(かぎ)り、當家(こちら)は"(むす)"が通例(つね)。

此度(こだみ)『奈可田』流(じこみ)にせし緣由 (ことのよし)、
守舊化(ふるきからを、みづからうちやぶらんがため)」となむ。
以爲(おもふに)、どちらの烹飪(やりかた)も、×「彩芽(あやめ)より(つばさ)」、
〇「いづれ、菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」。

例年(いつも)、この時季(ころ)登塲(あらは)る"鮏鮞(さけのはらゝご)":
醢醯(あぢつけ)をせで、その儘(まゝ)
との説明(はなし)に眼精(まなこ)白黑(しろくろ)
「"狹眞魚(さまうを)"は海(うみ)に魚影(そのすがた)を不見(みず)」とも、、。

今季初(ことしはじめて)、"早松蕈(はしりのまつたけ)"は富良野(ふらの)から。
奧州松島(むつまつしま)の"星鳗(はかりめ)"ともども"淸湯(すましゞる)"に、、。
"吸地(すひぢ)"は"利尻海帶(りしりあらめ)"に"鮪脯(しびぶし)"。
「"鰹脯(かつをぶし)"は"早松蕈(さまつ)"の風韻(かをり)を阻害(さまたぐ)」と。

愚按(やつがれおもふに)、
"吸口(すひくち)"に"(ゆ)"など强香(かをりつよ)きものを不使用(つかは)ぬも、
蓋(けだ)し、同(おな)じ意図(こゝろ)なるべし
寔(まこと)、「減算(ひきざん)」を實踐(みをもちてしめ)す庖丁(いたまへ)。

此度(こだみ)、肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはぬほどにこしぬか)したるは、
(しび)大肥肉(おほあぶ)の"(あぶり)"。
冢中枯骨(くたばりそこなひ)、"大肥肉(おほあぶ)"を×獼猴〇得手(えて)とせぬも、
鮮美(よきあぢ)口腔(くち)に踊(をど)り鼻腔(はなのなか)に浮騰(ほとばし)る

老骨(それがし)、"枾果(かき)"と"無花果(からがき)"には有一家言(ちとうるさい)。
その仔細(わけ)如何(いかに)となれば、
生家(うまれたるいへ)には、各二本(おのおのにほん)づゝの果樹(き)があり、
完熟(よくうれた)るを噉(くら)ふが常態(つね)なればなり。

巷(ちまた)に蔓延(はびこ)る"無花果(からがき)"は、
十中八九(あらかた)"枡井ドーフィン"なる種(たね、ちすぢ)。
加旃(しかのみならず)、樹(き)にて完熟(ほどよくうれた)るものに非(あらず)!
完熟果實(かゝるみ)は流通(いちばをとほす)に不適(むかず)

未熟(いまだうれず)と云へど、
黑(くろ)き"ビオレソリエ"、白(しろ)の"キューティーキング"なら、
その風味(あぢ・かをり)、"枡井ドーフィン"を×遼河〇凌駕(はるかにしのぐ)。
ところが、當日(このひ)の"無花果(からがき)"は敢(あ)へての"枡井ドーフィン"。

親方(おやかた)説明(い)ふやう:
十日(とほか)ほど手許(てもと)に置(お)き、追熟(うらし)たるものにて、、」
その"斷面(きりくち)"は飴餹色(あめいろ)を呈(お)び、
俄頃(にはか)には"枡井ドーフィン"とは難信(しんじがた)き果實(しろもの)

生家(うまれたるいへ)の、
完熟(うれ)たる"赤無花果(あかゝらがき)"と比較(くらべ)て、
なほ、勝(まさ)るとも不劣(おと)らぬこの無花果(からがき)。
たゞし、"黑無花果(くろからがき)"・"白無花果(しろからがき)"には不及(およばず)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・小菜碟兒(こざら)
    ・『奈可田』流(じこみ)、佐渡(さど)の"鹽蒸(しほむし)=煮蚫(にあはび)" 
    ・雲州(いづも)~石州(いはみ)の"魩仔魚乾(ざこ)"
        +"萬願寺辣椒(まんがんじなんばんこせう)"+"豆腐皮(うば)"
  ・"玉蜀黍(なんばんきび)"と"胡麻(ごま)"の葛寄(くづよせ)、
     "小蕃茄(ちいさなあかなす)"の果凍(にこゞり)添(ぞ)へ
  ・"赤鯥(あかむつ)"と"秋葵(おくら)"の"索麪(むぎなは)"
  ・蝦夷禮文島(えぞれぶんたう)の"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・"鹽雲丹(しはうに)"
  ・"障泥纜魚(あふりいか)"の耳(みゝ)
  ・蝦夷羅臼(えぞらうす)の"生鮏鮞(なまのさけはらゝご)"
  ・相州松輪(さがみまつわ)の"醃眞鯖(しめたるまさば)"、暸(あぶりもの)
  ・相州松輪(さがみまつわ)の"醃眞鯖(しめたるまさば)"
  ・志州尾鷲(しまをはせ)の"松魚(かつを)"
  ・常州霞ケ浦(ひたちかすみがうら)の"鰻鱺(むなぎ)"、一百三十九匁(≒520g)

(しるもの)】:
  ・蝦夷富良野(えぞふらの)ゝ"松蕈(まつたけ)"と
      奧州松島(むつまつしま)"星鳗(はかりめ)"の淸湯(すましゞる)

(すし)】:
  ・播州明石(はりまあかし)の"眞鯛(まだひ)"、五百六十匁(≒2.1kg)
  ・奧州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、中肥(ちゆうあぶ)
  ・蝦夷禮文島(えぞれぶんたう)の"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・"似海鰌(にたりくぢら)"
  ・奧州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"
  ・奧州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、大肥(あぶ)の暸(あぶり)
  ・蝦夷羽幌(えぞはぼろ)"富山鰕(とやまえび)"+湯瀹汁(ゆでじる)
  ・肥後天草(ひごあまくさ)"小鰭(こはだ)"、新子(しんこ)二枚醃(にまいづけ)
  ・壹岐(いき)"白纜魚(しろいか)"?

果子(このみくさのみ)】:
  ・追熟(うらし)無花果(からがき)、"枡井ドーフィン"
  ・宇留麻廼久尓(うるまのくに)"キーツ芒果(マンゴ)"
  ・羽州尾花澤(ではをばなざは)"西瓜(すいくわ)"
  ・葡萄果實(えびかづらのみ)、"瀬戸ジャイアンツ"
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:旭光學 賓得(Pentax)S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8~F4
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
向島(むかふじま)『いりむら』ゟ(より)『靑柳正家』を經由(へ)て、
寺島町(てらしまゝち)『うを德』に、、。
暖簾(のれん)潛(くゞ)るは大畧(およそ)五ヶ月(いつゝき)ぶり。
漬塲前(つけばまへ)の客人(きやく)は老骨(それがし)唯一人(たゞひとり)。

十年前(とゝせまへ)なら某(それがし)の他(ほか)、
絶(た)へて人(ひと)の姿(すがた)を不見(みざる)が常態(つね)なれど、
かゝる景色(けしき)は久方(ひさかた)ぶり。
親方(おやかた)も當時(そのかみ)を懐舊(なつかしむ)。

嘗(かつ)て"食物航海日誌(こちら)"★★★★超(よつぼしごへ)の頃(ころ)は、
上(うへ)を下(した)に覆(かへ)すほどの繁忙(いそがはし)さなりしかど、
現今(いま)は有象無象(さまざま)なる惡質客(たちあしきゝやく)も激減(へ)り、
靜謐(しづかさ)を恢復(とりもど)しつゝあるは吉兆(よきゝざし)。

しかはあれど、
"向島百花園(むかふじまひやつくわゑん)"ゟ(より)歸途(かへるみちすがら)、
偶(たま)さかフラり立寄(たちよ)るとか、
近鄕近在(ちかく)の民(たみ)の午餔處(ひるめしどころ)には不能囘歸(もどりえぬ)

覆水難收(こぼれたるみづは、もとのうつはにもどりがたし)」
小宮親方(おやかた)も懐古(そのかみをなつかしむ)と云へど、
これは黃泉(よみ)ゟ(より)死者(しにたるもの)を戻(もど)すに同等(ひとし)く
"伊邪那岐(いざなぎ)"の失錯(しくじり)を反復(くりかへ)すが限界(せきのやま)。

食材(たね)の優秀(ひいで)たるは萬民(よろづのたみ)認(みと)むるところなれど、
虚飾(いらぬかざり)と複雜怪奇(やゝこし)き調劑(あぢつけ)を排(す)て
"必要最小限(いらぬものも、たすべきものもな)き"烹調法(やりかた)は、
理會(わかる)者(もの)にのみ分(わ)かる。」と云ふもの。

これを侮(あなど)り譏(そし)る者(もの)は、
×雪花菜(きらず)×石見銀山(いはみぎんざんねこいらず)〇不知味者(あぢしらず)。
就中(わきても)、
"潮汁(うしほじる)"と"(むなぎ)"は鮓店(すしや)の巓(いたゞき)

否(いな)!
名店(なのあるみせ)の"會席膳(くわいせきぜん)"と競(くら)べても、
俄頃(にはか)に、精麁(よしあし)・雌雄(をすめす)を難判別(わかちがた)きほど。
※↑imho、≒冢中枯骨(くだばりそこなひのそれがし)が卑見(いやしきかんがへ)

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・土州四万十川(とさしまんとがは)"稚鰷(ちあゆ)"甘露煮(かんろに)
  ・對蝦(くるまえび)+薯蕷(いも)の"雞卵焼(たまごやき)"
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)"黑鰒(くろあはび)"
  ・《刺躬(さしみ)》
    ・豐後日出(ぶんごひので)"城下王餘魚(しろしたかれひ、≒まこがれひ)"、
         四百五十匁(しひやくごじふもんめ、≒1.7kg)
  ・蝦夷濱中(はまなか)"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"+"毛蠘(けがに)"
     +上州(かうづけ)天狗牌毛豆(てんぐじるしえだまめ)"味綠(みりよく)"
  ・加州(かゞ)"加賀太黃瓜(かゞぶときうり)"
  ・吉備兒島灣(きびこじまわん)"鰻鱺(むなぎ)"、百九十五匁(≒730g)

(しるもの)】:
  ・"潮汁(うしほじる)"
    ・椀種(わんだね):
      ・"城下王餘魚(しろしたかれひ、≒まこがれひ)"の骨邊肉(あら)
      ・長州(ながと)"魂消茄子(たまげなす)"

(すし)】:
  ・"堅魚(かつを)"、稭炰(わらやき)
  ・薩州出水(さつまいづみ)"甲烏賊(すみいか、=かふいか)"
  ・蝦夷噴火灣(えぞふんくわゝん)"鮪(しび)"、十三貫(≒50kg)精肉(あかみ)
  ・下總銚子(しもつふさてうし)"金目鯛(きんめだひ)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)"竹筴魚(あぢ)"
  ・上總富津(かみつふさふッつ)"星鳗(はかりめ)"
  ・蝦夷噴火灣(えぞふんくわゝん)"鮪(しび)"、十三貫(≒50kg)中肥(ちゆうあぶ)
  ・"黃蓋鰈(まこがれひ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・羽州(では)櫻桃(さくらんぼ)"佐藤錦(さたうにしき)"
  ・紀州(きい)"琵琶(びは)"
  ・臺灣(たいわん)"茘枝(れいし)"
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Flektogon 2.4/35 @F4
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
毎年恆例(ならひ)の新年會(あらたなるとしをいはふつどひ)。
"美酒佳肴(よきさけによきさかな)"の數々(かずかず)、
加旃(しかのみならず)、"龍肝豹胎(うみやまのよきあぢ)"は常態(つね)のこと。
就中(わきても)、此度(こだみ)は"赤鰩肝(あかえいのきも)"まで、、。

「長州萩(ながとのくにはぎ)の濵(はま)に揚(あ)がりしもの」と云ふ。
"肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはざるほどのおどろき)"、
とまでは行(ゆ)かぬにせよ、珍味(よにもめづらしきあぢ)なるは確實(たしか)
海驢(あしか)、馬鹿(うましか)、饗應(もてなし)歟(か)?

「扨(さて)その經緯(いきさつ)は?」と問(と)はるれば、
「如此如此(かくかくしかじか)、、)」と應答(いら)ふる他(ほか)なし。
この他(ほか)、合馬(あふま)の"竹筍(たかむな)"、"鮮鱲子(なまのぼらこ)"、
羅臼(らうす)の"帝王鮏(ますのすけ)"に、"松葉蟹(まつばがに)"までも、、。

桌上型電腦(つくゑのうへなるエレキそろばん)が異常動作(ふてくされ)、
亂暴狼藉(あばれまはりて、をちこちとりちらか)し、一無方策(てもつけられず)。
復舊(もとにもどす)は輒(たやす)からず。
二日(ふつか)三日(みつか)、、、五日(いつか)かけて、ほゞ復舊(もとのすがたに)。

備忘錄(おぼゑがき)も紛失(なく)し、
記憶(おぼえ)曖昧模糊(あやふや)、劵(けん)ならダフ屋(だふや)、
"菽乳(とうふ)"沽(か)ふなら坊(まち)の零細豆腐店(ちいさなとうふや)がよい。
"淮南(とうふ)"昆布溏油(こぶだし)、"アベヾ"は跣(はだし)。

一(ひと)つに、二(ふた)つ、
故事(むかしのこと)を執筆(か)く時(とき)にャ、
×想起(おもひだ)しだし、〇想起(おもひだ)しつゝ記述(せ)にャならぬ。
そいや、當家(こちら)の"(わん)"も昆布溏油(ひろめだし)。

昆布(ゑびすめ)"利尻(りしり)"、
結(むす)ぶは眦(まなじり)、捉(とら)へて遊(あそ)ぶ言葉尻(ことばじり)、
"潮汁(うしほじる)"の鮮美(よきあぢ)なるは慥(たしか)なれど、
當日(このひ)の白眉(はくび)は"大頭鱈精巣(くもこ、=たらのしらこ)"。

適度(ほどよ)く調劑(あぢつけ)が施(ほどこ)され、
この、最上(このうへな)き淸湯(すましゞる)に調和(よくあふ)。
會(あ)ふは別(わか)れの劈頭(はじめ)に悲慘(みじめ)、三●締(さん▲んじめ)。
濟(す)ませ、黄昏(たそがれ)の『うを德』より辭別(いとまごひ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"助子(すけこ)"
  ・雲州宍道湖(いづものくにしんじこ)の"膾殘魚(しらうを)"
  ・筑紫合馬(つくしのくにあふま)の"竹筍(たかむな)"
  ・《刺躬(さしみ)》
    ・淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"
    ・失念(わすれたり)
    ・"鮮鱲子(なまのぼらこ)"
    ・蝦夷地濱中(えぞちはまなか)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・"赤海鷂魚肝(あかゑひのきも)"+"虎魨(とらふぐ)"
  ・蝦夷地羅臼(えぞちらうす)の"帝王鮏(ますのすけ)"
  ・"烏魚子(からすみ)"
  ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の"鮪幼魚(めじ)"
  ・能州(のと)"赤沙噀(あまなまこ)"、鮮(なま)+茶振(ちやぶり)
  ・因州(いなば)or伯州(はうき)の"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"
  ・江州(あうみ)琵琶湖(びはこ)の"稚年魚(ちあゆ)"
      +城州(やましろ)"萬願寺蕃椒(まんがんじなんばんこせう)"
  ・隱州(おき)"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"

(すし)】:
  ・上總竹岡(かづさたけをか)の"鱵(さより)" 
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"甲烏賊(すみいか、=かふいか)"
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・蝦夷地野附(えぞちのつけ)の"海扇(ほたてがひ)"
  ・和泉灘(いづみなだ)の"小鰭(こはだ)"
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、痩肉(あかみ)
  ・雲州宍道湖(いづものくにしんじこ)の"鰻鱺(むなぎ)"

(しるもの)】:
  ・"潮汁(うしほじる)"
    ・椀種(わんだね):淡路(あはぢ)星王餘魚(ほしがれひ)
              蝦夷(えぞち)大頭鱈精巣(くもこ)
    ・吸口(すひくち):椒芽(きのめ)

果子(このみくさのみ)】:
  ・草莓(いちご)"アイベリー"
  ・橘子(たちばなのみ)"せとか"
=======================================

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
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     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06

强(つよ)き颱風(のわけ)に因(よ)り、訪問(のれんくゞる)は四月(よつき)ぶり。
「豐穣(ゆたか)なる白藏(あき)の幸(さち)」を喰(く)ひそびれ
はや、水(みづ)も凍(い)てつく玄英(ふゆ)。
名殘(なごり)の"(むなぎ)"は"遠州濱名湖(とほとうみはまなこ)"。

江州琵琶湖(あうみびはこ)"本諸子(ほんもろこ)"、
隱州(おき)"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"と、
(い)ける×孔明(こうめい)〇魚介(うみ・みづうみのさち)、
冢中枯骨(つかのなかにかれたるほね)卍(まんじ)を狂喜亂舞(まひをど)らす

實(げ)に、
天下無雙(よにくらぶるものな)きは小宮親方(こみやおやかた)の"鱲子(からすみ)":
適度(ほどよ)く熟成(う)れ
芯(なか)は、なほ"(やはらか)さ"と"瑞々(みづみづ)しさ"を保持(たもつ)。

美味佳肴(よきあぢ)揃(ぞろ)ひなること、
何(いづ)れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」のごとき景状(ありさま)なれど、
當日(このひ)の白眉(はくび)は、
"活天然對蝦(いけてんねんくるまえび)"用(つか)ひし"雞卵炙(たまごやき)"。

實言(まこと)、
海内一(ひのもといち)の"雞卵炙(たまごやき)"」と斷言(よぶをはゞからず)。
小宮親方(こみやおやかた)も亦(また)、
會心作(くわいしんさく)」と自慢(むねをはる)、靑陽(はる)はまだ先(さき)。

これほどに、
沈魚落雁閉月羞花(うをしづみ、かりおち、つきとぢ、はなもはぢらふ)」
ほどの殊滋異味(よきあぢ)盡(づ)くしなれど、
勘定(しはらひ)は銀座(ざぎん)の●分の一(▲▲ぶんのいち)の廉價(やすさ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・江州琵琶湖(あうみびはこ)の"冰魚(ひうを)"
  ・鱲子(からすみ)
  ・能州(のと)"赤沙噀(あまなまこ)"
  ・"活天然對蝦(いけてんねんくるまえび)"による"雞卵炙(たまごやき)"  
  ・蝦夷仙鳳趾(えぞせんぽうし)の"眞蠔(まがき)" 
  ・江州琵琶湖(あうみびはこ)"本諸子(ほんもろこ)"の天麩羅(てんぷら)
  ・蝦夷濱中(えぞはまなか)"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・播州明石(はりまあかし)の"眞鯛(まだひ)"、四百八十匁(≒1.8kg)
  ・佐渡島(さどがしま)の"阿羅魚(あら)"、五百三十匁(≒2kg)
  ・蝦夷余市(えぞよいち)"華臍魚肝(あんかうきも)"
  ・隱州(おき)"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"、二百匁(≒750g)
  ・但州香住(たじまかすみ)の"雌楚蟹(めすのすはへがに)"の澆飯(どんぶりめし)
  ・遠州濱名湖(とほとうみはまなこ)の"鰻(むなぎ)"二百七十匁(≒1kg)

(すし)】:
  ・能州(のと)の"鰤(ぶり)"、四貫五百三十匁(≒17kg)、肥肉(あぶらみ)
  ・房州勝浦(あはかつうら)の"鯥(むつ)"
  ・佐渡島(さどがしま)の"阿羅魚(あら)"、五百三十匁(≒2kg)
  ・奧州(むつ)の"金華鯖(きんくわさば)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"眞鰺(まあぢ)"
  ・陸州大間(むつおほま)の"鮪(しび)"、四十三貫(≒160kg)
  ・陸州大間(むつおほま)の"鮪(しび)"、四十三貫(≒160kg)、肥肉(あぶらみ)
  ・能州(のと)の"鰤(ぶり)"、四貫五百三十匁(≒17kg)

(しるもの)】:
  ・播州明石(はりまあかし)の"眞鯛(まだひ)潮汁(うしほじる)"、
         四百八十匁(≒1.8kg)、朝〆(あさじめ)

果子(このみくさのみ)】:
  ・越後(ゑちご)の洋梨(やうなし)"ル・レクチ"
  ・紀州(きい)"紅まどんな"
=======================================

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
時節柄(をりしも)、
盂蘭盆會(うらぼんゑ)と颱風(のわけ)が重(かさ)なり、
魚市塲(うをいちば)も蔬菜市塲(あをものいちば)も閉鎖(しま)り、
(いを)も蔬菜(あをもの)も缺乏(とぼし)き最惡(いとあし)き慘状(ありさま)

かゝる惡條件下(あしきめぐりあはせ)での、
淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"四百五十三匁(≒1.7kg)、
雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"(むなぎ)"百七十九匁(≒670kg)、
能州(のと)の"阿羅魚(あら)"九百四十七匁(≒3.55kg)。

木砧(まないた)の上(うへ)の"星王餘魚(ほしがれひ)"は朝〆(あさじめ)。
噛(か)むほどに、心持(こゝち)よき齒觝觸(はあたり)を隨伴(ともな)ひ
風韻(かをり)・旨味(うまみ)が浮騰(ほとばし)る。
就中(わきても)、縁側(えんがは)には肝裂魄飛(きもさけたましひみにそはず)。

とは半點(いさゝか)大袈裟(おほげさ)なれど、
"星王餘魚(ほしがれひ)"も"(むなぎ)"も、實言(まこと)、美味(よきあぢ)。
"潮汁(うしほじる)"の美(あぢよき)は勿論(いふもさらなり)。
素材(そざい)秀逸(よし)、技倆(うで)さらに優秀(よし)

此度(こだみ)の米醋(よねず)と粕醋(かすゞ)の配合比(わりあひ)は、
「六(ろくぶ):四(しぶ)」との説明(よし)。
粕醋(かすゞ)は"山吹(やまぶき)"など三種(みくさ)の混合(まぜあはせ)。
舎利(すめし)に限定(かぎ)るなら、試行錯誤中(みちなかば)歟(か)?

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"雞卵炙(にはとりのたまごやき)"
        ・・・・・
  ・長良川(ながらがは)の"香魚(あゆ)"
  ・土州四萬十(とさしまんと)の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"と
     "伏見蕃椒(ふしみたうがらし)"有馬煮(ありまに)
        ・・・・・
  ・蝦夷地餘市(えぞちよいち)の"鮟鱇肝臟(あんきも)"
  ・播州明石(はりまあかし)の"海蛸子(たこ)"、九百卅匁(≒3.5kg)
  ・"秋葵(おくら)"
        ・・・・・
  ・房州勝浦(あはかつうら)の"鰒(あはび)"
  ・上州(かうづけ)"茄子(なすび)"
        ・・・・・
  ・淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"、四百五十三匁(≒1.7kg)
  ・蝦夷地噴火灣(えぞちふんくわゝん)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・加州(かゞ)"加賀太胡瓜(かゞぶとそばうり)"
        ・・・・・
  ・山州(やましろ)"鹿ヶ谷柬埔塞瓜(しゝがたにかぼちやうり)"
        ・・・・・
  ・雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"鰻(むなぎ)"、百七十九匁(≒670kg)

(すし)】:
  ・能州(のと)の"阿羅魚(あら)" 、九百四十七匁(≒3.55kg)
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)" 、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・三州(みかは)の"鯷(いはし)"
  ・下總銚子(しもつふさてうし)の"堅魚(かつを)"
  ・蝦夷地奧尻(えぞちおくしり)の"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・豐後(ぶんご)"城下王餘魚(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"
  ・江戸前海(えどまへうみ)の"小鰭(こはだ)"
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"、四百五十三匁(≒1.7kg)
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、醬油漬(しやうゆづけ)
  ・"星鳗(あなご)"
  ・陸前高田(りくぜんたかだ)"石影貝(いしかげがひ)"
  ・"新魷魚(しんいか)"
  ・"河童卷(かつぱまき)"

(しるもの)】:
  ・能州(のと)の"海糠魚(あら)"の骨邊肉(あら)九百四十七匁(≒3.55kg)と
      ブータン"松蕈(まつたけ)"の潮汁(うしほじる)

果子(このみくさのみ)】:
  ・宇留麻廼久尓(うるまのくに)"タヾヲゴールド"菠蘿(ぱいんあぷる)
  ・墨西哥(メキシコ)"芒果(まんご)"
  ・薩州(さつま)"茘枝(れいし)"
  ・"瀬戸(せと)ジャイアント"
  ・暹羅(しやむろ)"榴蓮(ドリアン)"
=======================================

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【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
今季初(はつもの)」と云ふ"尼手鰈(あまてがれひ、=まこがれひ)"は、
淡路島(あはじゝま)の四百八十匁(≒1.8kg)、
備前小島灣(びぜんこじまわん)の(むなぎ)が百二十八匁(≒480kg)、
佐渡(さど)の(しび)は稍(やゝ)小(ちい)さめの十八貫七百匁(≒70kg)。

劈頭(いやさき)に、"饅膾(ぬたなます)"。
名殘(なごり)の"螢魷魚(ほたるいか)"を最惜(いとをし)みつゝ、
馬鹿貝(ばかゞひ)と九條蔥(くでうねぎ)を醋未醤(すみそ)にて堪能(あぢはふ)。
何(なん)でも「千鳥醋(ちどりす)」との説明(よし)。

伏見蕃椒(ふしみたうがらし)と縠雜魚(ちりめんざこ)の煮物(にもの)には、
破顏(かをほころば)さゞるべからず。
小宮親方(こみやおやかた)特有(ならでは)の優(やさ)しき味(あぢはひ)
實(げ)に、これを家苞(いへつと)ゝして囘(かへ)りたきところ

未開(いまだひらかざる)"(ぬなは)":、
水晶(すいしやう)のごとき"それ"には「肝裂魄飛(きもさけたましひみひそはず)」。
近接(ちかより)て詳細(つぶさ)に觀察(み)るに、
實言(まこと)、嬰兒(みどりご)の如(ごと)き容姿(すがたかたち)。

備前小島灣(びぜんこじまわん)の(むなぎ)は"白炙(志らやき)"。
雲州宍道湖(いづもしんじこ)の鰻(むなぎ)にも負(ま)けぬ美味(よきあぢ)
今季一(こんきいち)」
と云ふも、强(あなが)ち嘘僞(うそいつはり)にあらず

土州(とさ)の縞鰺(しまあぢ)、上總竹岡(かみつかさたけをか)の帶魚(たちうを)、、
百花繚亂(いづれあやめかゝきつばた)」。
早晚(いづれ)彩芽(あやめ)は老板(ひと)の(つま)。
眞妻山葵(まづまわさび)は刺躬(さしみ)の"つま"。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"饅膾(ぬたなます)"
     勢州桑名(くはな)の馬鹿貝(ばかゞひ)
     越中富山滑川(ゑつちゆうとやまなめりかは)の螢魷魚(ほたるいか)
     山州(やましろ)九條葱(くでうねぎ)
  ・"煮物(にもの)"
     蝦夷余市(えぞよいち)の華臍魚肝(あんごうきも)
     山州(やましろ)伏見蕃椒(ふしみたうがらし)
     縠雜魚(ちりめんざこ)
  ・"醋物(すのもの)"
     羽州白神山地(ではのくにしらかみさんち)の蓴菜(ぬなは)
  ・"煮物(にもの)"
     床臥(とこぶし)
     冬瓜(かもうり)
     牛蒡(うまふゞき)
     實山椒(なるはじかみのみ)
  ・"臠(さしみ)"
     淡路島(あはじゝま)の尼手鰈(あまてがれひ)、四百八十匁(≒1.8kg)
     蝦夷禮文島(えぞれぶんたう)の蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)  
  ・"焼物(やきもの)"
     備前小島灣(びぜんこじまわん)の鰻(むなぎ)、百二十八匁(≒480kg)

(すし)】:
  ・房州勝浦(あはかつうら)の堅魚(かつを)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)中肥肉(ちゆうあぶ)、十八貫七百匁(≒70kg)
  ・眞鯒(まごち)
  ・土州(とさ)の縞鰺(しまあぢ)、一貫二百八十匁(≒4.8kg)
  ・淡路(あはぢ)の胡麻鯖(ごまさば)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)、十八貫七百匁(≒70kg)
  ・玉珧(たひらぎ)
  ・上總竹岡(かみつかさたけをか)の帶魚(たちうを)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)漿醬醃(しやうゆづけ)、十八貫七百匁(≒70kg)
  ・雞卵炙(にはとりのたまごやき)

(しるもの)】:
  ・吸地(すひぢ)
    利尻昆布(りしりひろめ)+鮪節(しびぶし)
  ・椀種(わんだね)
    雲州江の川(いづもごうのかは)の鰷(あゆ)
    芋莖(いもじ)
  ・吸口(すひくち)
    椒芽(きのめ) ※自家栽培(じかさいばい)

果子(このみくさのみ)】:
  ・蝦夷夕張(えぞゆふばり)甜瓜(からうり)、"夕張甜瓜(ゆふばりメロン)"
  ・羽州(では)櫻桃(さくらんぼ)、"佐藤錦(さたうにしき)"
  ・臺灣(たいわん)茘枝(れいし)
  ・葡萄(えびかづら)
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【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
劈頭(いやさき)に眼精(まなこ)を射(い)るは、
俎上(まないたのうへ)の×"天狗(てんぐ)"〇"時不知(ときしらず)"。
そも、"時不知(ときしらず、おほめます)"なるもの、
高貴(やむごとなき)こと、鮏(さけ)の夥計(なかま)でも頂點(いたゞき)。

これを紀州備長炭(きしうびんちやうたん)に炙(あぶりや)きて頂戴(いたゞく)。
i.e.,(すなはち)、"鹽燒(しほやき)"。
不味(あぢあし)き理(ことわり)もなし。
かくて、「虎咽狼呑(むさぼりつく)」せば、身・皮(みかは)の竟(をは)り

信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の山菜(さんさい)も今季(ことし)で最後(をはり)。
×雞眼目(うをのめ)〇楤芽(たらのめ)、漉油(こしあぶら)。
尾張(をはり)に駿州(するが)遠州(とほとほみ)、
駿河灣(するがわん)遠州(とほとほみ)櫻蝦(さくらえび)の"天麩羅(てんぷら)"。

佛陀(ほとけ)の骨(ほね)に鮓(すし)の米(こめ)、
「舎利(しやり)」と喚做(よびな)す鮓業界(このせかい)。
小宮親方(こみや)の舎利(しやり)は×三度(さんど)まで〇七變化(しちへんげ)。
米醋(よねず)に粕醋(あかず)、横井(よこゐ)に中㙒(なかの)。

水果(くだもの)、悉(ことごと)く"清露(シロップ、みつゞけ)"と做(な)す。
"(なま)"でも"糖漿(みつゞけ)"でも、最上級品(いとよきもの)ばかり。
就中(わきても)、
琉球(りうきう)"桃菠蘿(ピーチパイン)"は「龍肝豹胎(まれにみるうまさ)」。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"醋未醤和(すみそあへ)"
     薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)" 
     土州(とさ)"四方竹(しはうちく)"
  ・"煮付(につけ)"
     江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"稚鰷(ちあゆ)"
     信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"楤芽(たらのめ)"
     信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"漉油(こしあぶら)"
  ・駿河灣(するがわん)櫻蝦(さくらえび)の"天麩羅(てんぷら)"
  ・時不知(ときしらず、おほめます)"鹽燒(しほやき)"
  ・"刺躬(さしみ)"
     淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"
     蝦夷地釧路(えぞちくしろ)の"蝦夷馬糞霊螺子(えぞばふんうに)"
  ・"雞卵燒(たまごやき)"

(すし)】:
  ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・"櫻鱒(さくらます)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"春子鯛(かすごだひ)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"眞鰺(まあぢ)"
  ・江戸灣(えどわん)の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・"小鰭(こはだ)"="鯯(このしろ)"の稚魚(をさないを)
  ・蝦夷地(えぞち)"富山蝦(とやまえび)"
  ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)"
  ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、醬油漬(しやうゆづけ)
  ・越中富山(ゑつちゆうとやま)の"白蝦(しろえび)"+陸州(むつ)"蚫(あはび)"

(しるもの)】:
  ・"花山椒鍋(はなざんせうなべ)"
     和州(やまと)"花山椒(なるはじかみのはな)"
     上總竹岡(かみつかさたけをか)の"白帶魚(たちうを)"
     泉州(いづみ)"水茄子(みづなす)"
     "防風(はますかな)?"

果子(くわし)】:
  ・果子(くだもの)ゝ清露(シロップ)
     米利堅(めりけん)の"櫻桃(さくらんぼ)"
     本朝(わがくに)の"櫻桃(さくらんぼ)"
     琉球(りうきう)"桃菠蘿(ピーチパイン)"
     日向(ひむか)"芒果(マンゴ)"
     "橘(みかん)"の等類(たぐひ)
=======================================

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
備前(びぜん)兒島灣(こぢまわん)の"(むなぎ)"などの初物(はつもの)!
"(むなぎ)"には釣針(つりばり)までと云ふ邂逅(めぐりあはせ)。
炙(あぶりやき)に用(つか)ふ備長炭(しろずみ)も、
"日向備長炭(ひむかびんちやうたん)から"紀州備長炭(きしうびんちやうたん)"に、、。

勿驚(おどろくなかれ)、
"横井(よこゐ)"の"與兵衞(よへゑ)"が製造中止(もはやつくらず)とのこと。
已(や)むことを得(え)ずして、
"山吹(やまぶき)"+"江戸丹念酢(えどたんねんず)"を代替(かへとなす)。

"雞卵燒(たまごやき)":
天然對鰕(てんねんくるまえび)に鰕黃(えびみそ)まで擂込(すりこ)み、
顏色(いろ)・(あぢ)・風韻(かをり)とも 
實(げ)に、皇帝(すめらみこと)の風格(おもむき)

豐前(ぶぜん)"城下鰈(しろしたがれひ)"骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"には、
肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。
最貴(いとやむごとな)き"花山椒(なるはじかみのはな)"まで散見(ちらりほらり)。
そのほか、一(ひと)つとして不味(あぢあしき)は無(なし)

倩(つらつら)、昔日(むかし)の記録(ふみ・ゑ)を繙(ひもと)くに、
足掛十年(あしかけとゝせ)、此度(こだみ)で百三十二囘目(ひやくさんじふにかいめ)。
周知(あまねくしら)るゝ、掉尾(いやはて)の果實(くだもの)と云ふ形式(かたち)、
徐々(ゆるやか)に確立(なりし)ものと氣附(きづ)く。

嘗(かつ)ては、果子(くだもの)なきこともあり、
手製(みづからつくり)し甜品(あまみ)を提供(ふるま)ふことも、、。
小宮親方(おやかた)に據(よ)らば、
手間(てま)でもあり、賓(まらうど)も果實(くだもの)を怡(よろこ)ぶ」と。

實(げ)にも!
面倒(てのかゝ)る甜品(あまみ)簡易(てのかゝら)ぬ果物(くだもの)へ、、。
と云ふのは、"菓子(くわし)"の歴史(れきし)とは逆向(さかしま)
元來(もとより)"菓子(くわし)"とは、

庭訓往來】:南北朝時代末期~室町時代前期
=========================================
>"菓子"者(くわしは)、
>
> (ゆ)、柑々子(かうかうじ)、(たちばな)、熟瓜(じゆくくわ)、
> 澤茄子(さはなすび)等(とう)、可隨時景物也(ときのけいぶにしたがふべきなり)
>
> 伏菟曲(ふとまがり)、煎餠(せんべい)、燒餠(やきもち)、粢(しどき)、
> 興米(おこしこめ)、索<米并>(さくべい)、糒(ほしい)、粽(ちまき)等(とう)、
> 爲客料可被用意(かくれうのためにやういせらるべし)。
> 御時粥(おんときかゆ)、以前(いぜん)可被調置(とゝのへおかるべし)。
=========================================

日葡辭書】: 安土桃山期(刊行は江戸初期)
=========================================
>"Quaxi(くわし)" 
>
> 果實、特に、食後の果物をいふ。
=========================================

のであり、
古(ふる)く夏華(もろこし)より傳來(つたは)りし"唐菓子(からくだもの)"、
その後(のち)の"南蠻菓子(なんばんぐわし)"を含(ふく)め、
砂糖(さたう)を用(つか)ふやうに、、。

江戸初期(えどのはじめごろ)【料理物語】には、 
各種(さまざま)なる"菓子(くわし)"が紹介(しめさ)れ、
沙糖(さたう)用(つか)ふものも過半(なかばをこす)。
"蕨餠(わらびもち)"に不使用之(これをつかはざる)は後世(のち)も同(おな)じ

料理物語】:(45~47/56) ※拔粹 ●:砂糖練、▲:砂糖掛、×無糖
=========================================
>第十八、"菓子(くわし)"之部
>
>"玉子素麺(たまごさうめん)"●
>
>"おこし米(こめ)"●
>
>"牛蒡餠(ごばうもち)"●
>
>"葛燒(くずやき)もち"●
>    くず一升、水一升、沙糖(さたう)一升、三色(いろ)すくこね、
>    あはを、みかんほどにまろめ、なべに、すこしあぶらをぬり、
>    さいさい、うちかへし、燒(やき)申候。
> 
>"葛餠(くずもち)"▲
>    くずのこ一升に、水一升五合(がう)入、ねりて、出し候。
>    もちは、いづれも、"まめのこ"、鹽(しほ)、"さたう"、かけて吉。
>    又、"くずのこ"、"わらびのこ"は、何(なん)ときも、やげんにて、
>    よくおろして、こね申也。
>
>"蕨餠(わらびもち)"×
>    粉(こ)一升に、水一升六七合(かう)入、よくときて、ねり候よし。
>    粉(こ)同。
>
>"雪餠(ゆきもち)"×
>
>"杉原(すぎはら)もち"×
>
>"枸杞餠(くこもち)"×
>
>"五加(うこぎ)餠"×
>
>"ちまき"▲
>    是も四分六分の"こ"を水にてやはらかにね、ま薦(こも)にても、 
>    篠(さゝ)のはにても、つゝみまき、よくゆで候。
>    黃には、くちなしの汁入、"沙糖(さたう)"、大豆(まめ)の"こ"、しほ。
>
>"さゝ餠"×
>
>"御所樣餠(ごしよさまもち)"▲
>
>"近衞樣雪餠(このゑさまゆきもち)"×
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江戸後期(えどのをはりちかく)、
江戸流行料理通】には、
菓子(くわし)といふは砂糖(さたう)にて製(こしらへ)たるものにあらず
と、時流(ながれ)に逆(さか)らふ發言(ものいひ)も、、。

八百善料理通】:(39/81)
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>"菓子(くわし)"の心得の事
>
>一、菓子(くわし)といふは砂糖(さたう)にて製(こしらへ)たるものにあらず
> 菓子(くわし)は"くだ物(もの)"也。
> 四季(しき)の木實(このみ)草實(くさのみ)をいふ。
> 料理(りやうり)の終(をは)りに出す事は、
> 料理の厚味(かうみ)、魚鳥(ぎよてう)を食(しよく)し
> 食熱(しよくねつ)をさますため也。
>
> 料理にかゝはりたるにもあらず。
> 後(のち)に工夫(くふう)ありて、作(つく)れる也。
> 砂糖(さたう)は冷(れい)なる物なれば、惡(あし)き物にあらず。
> 宜(よろし)といへども、さりながら、木(こ)の實(み)草(くさ)の實(み)を、
> 盛合(もりあは)せ出すが宜(よろ)し
> 此の理(り)を捨(すつ)べからず。
>
> 茶請(ちやうけ)は砂糖(さたう)にて作(つく)りたる品(しな)宜(よろ)し
> の味(あぢは)ひには●(よろし●)の第一也。   ※ ←●:不能判讀
>
> 仍(よつ)て、”茶菓子(ちやくわし)”とは獻立(こんたて)には書(かゝ)ず
> ”茶請(ちやうけ)”と書事(かくこと)なり。
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因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・"蕗未醤(ふきみそ)"
  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"冰魚(ひうを)"
  ・土州(とさ)四万十川(しまんとがは)の"沼知々武(ゴリ)"
  ・山州(やましろ)"花山椒(なるはじかみのはな)"

  ・豐前(ぶぜん)"城下鰈(しろしたがれひ)"、三百四十七匁(≒1.3kg)魥(さしみ)
  ・淡路(あはぢ)"眞子鰈(まこがれひ)"、三百廿匁(≒1.2kg)刺躬(さしみ)
  ・蝦夷地(えぞち)"蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)"
  ・山州(やましろ)長岡京(ながをかきやう) の"笋(たけのこ)"
  ・山州(やましろ)"花山椒(なるはじかみのはな)"

  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"稚鰷(ちあゆ)"鹽燒(しほやき)

  ・備前(びぜん)兒島灣(こじまわん)の"鰻(むなぎ)"、九十三匁(≒350g)

  ・"雞卵燒(たまごやき)" ※天然對鰕(てんねんくるまえび)+鰕黃(えびみそ)
  ・蝦夷地(えぞち)余市(よいち)の"華臍魚(あんかう)"肝臟(きも)

(すし)】:
  ・下總(しもつふさ)船橋(ふなばし)の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・上總(かみつかさ)竹岡(たけをか)の"鱵(さより)"
  ・"小鯛(かすご)"
  ・長州(ながと)仙嵜(せんざき)の"鮪(しび)"
  ・豐前(ぶぜん)佐賀關(さがのせき)の"雞魚(いさき)"

(しるもの)】:
  ・椀種(わんだね):
     豐前(ぶぜん)"城下鰈(しろしたがれひ)"の骨邊肉(あら) 
  ・吸口(すひくち):
     山州(やましろ)"花山椒(なるはじかみのはな)"

果子(くわし)】:
  ・"●●柑(なんとかゝん)"
  ・吉備(きび)の"酸漿(ほゞづき)"
  ・日向(ひむか)"芒果(マンゴ)"
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【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
劈頭(いやさき)に"海鼠子(このこ)":
現今(いま)"ナマコ"と叫(よ)ばるゝものは、
古來(いにしへより)、和名(やまとことば)で""と號(よびな)さる。
海鼠(こ)の生殖巢(こ)」故(ゆゑ)、"海鼠子(このこ)"。

倭名類聚抄】(16/65):
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  "海鼠(こ)":
    "(ひる)"に似而(にて)大者(おほきなるもの)也。
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和漢三才圖會】(230~231/787):
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  "海鼠膓(このわた)":
    腹中に黃膓三條有り。
    之を淹し、"醬"と爲る者也。
    香美、不可言(いふべからず)。
      ・・・・(中畧)・・・・
    其膓中、赤黃色有て、糊の如きの者を、"海鼠子(このこ)"と名く。
    亦佳し
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"海鼠子(このこ)"に三種(みくさ)あり、
i.e.,(すなはち)、"(なま)"、"半生(はんなま)"、"(ひもの)"、これなり。
その容(かたち)から、(ひもの)は"撥子(ばちこ)"と喚做(よびな)さる。
老骨(それがし)、"(なま)"を最喜歡(なによりこのむ)。

江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"冰魚(ひうを)、=鰷稚魚(あゆをさなご)":
"海鼠子(このこ)"も"冰魚(ひうを)"も、魚河岸(いをがし)にて仕入(しい)れ、
寸毫(つゆ)不加工(てをくはへざる)ものなれど、
「實言(まこと)、佳味(よきあぢ)!」、と云ふほかなし。

肥前(ひぜん)大村(おほむら)の"靑海鼠(あをなまこ)"に、
能州(のと)"赤海鼠(あかなまこ)と云ふ競(あらそひ)。
(なま)の海鼠(こ)故(ゆゑ)、人(ひと)は"生海鼠なまこ)"と呼(よ)ぶ。
明白(あきらか)に"靑海鼠(あをなまこ)"が吉(よい)。

虎鯸(とらふく)の"精巢(しらこ)":
巨大(いとおほきな)る"精巢(しらこ)"を六等分(むつにわけ)、
振鹽(ふりじほ)をして、備長炭(しろずみ)にて叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る
不味(まづ)からう道理(わけ)もなし。

"烏魚子餈(からすみもち)"また然(しか)り。
雞(とり)が啼(な)く東國(あづまのち)では稀(まれ)なる"丸餈(まるもち)"。
越後(ゑちご)のもの」と云ふ。
"烏魚子(からすみ)"の華美(よきあぢ)なるは勿論(いふもさらなり) 。

この日(ひ)の(しるもの)は、正(まさ)に靑陽(はる)。
筑前(ちくぜん)八女(やめ) の(たけのこ)、獨活(うど)、大葉擬寶珠(うるい)、
椒芽(きのめ)の吸口(すひくち)も爽(さは)やか。
愚按(おもふに)、『うを徳』の(しるもの)は天下無雙(よにならぶものなし)。

雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"鱣魚(むなぎ)"を堪能(あぢは)ひ、
薩州(さつま)出水(いづみ)の"眞鰺(まあぢ)"に、
伯州(はうき)境港(さかひみなと)の"松葉蟹(まつばがに)"、
掉尾(いやはて)は、阿州(あは)"さくらもゝ草莓(いちご)" にて掉尾(しめ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・能州(のと)海鼠子(このこ)
  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"冰魚(ひうを)、=鰷稚魚(あゆをさなご)"
  ・蝦夷地(えぞち)乙部(おとんべ)の"なめた王餘魚(がれひ)"
  ・播州(はりま)明石(あかし)?の"海蛸子(たこ)"
  ・滑子(なめこ)
  ・肥前(ひぜん)大村(おほむら)"靑海鼠(あをなまこ)"
  ・能州(のと)"赤海鼠(あかなまこ)"
  ・播州(はりま)明石(あかし)の"比目魚(ひらめ)"、六百四十匁(≒2.4kg)
  ・蝦夷地(えぞち)昆布森(こんぶもり)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・虎鯸(とらふく)"精巢(しらこ)"
  ・蝦夷地(えぞち)餘市(よいち)の"華臍魚肝臟(あんかうきも)"
  ・"烏魚子(からすみ)餈(もち)"
  ・雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"鱣魚(むなぎ)"、三百廿匁(≒1.2kg)

(すし)】:
  ・豆州(いづ)下田(しもだ)の"鮪(しび)"、四十五貫三百匁(≒170kg)
  ・播州(はりま)明石(あかし)の"比目魚(ひらめ)"、六百四十匁(≒2.4kg)
  ・豆州(いづ)下田(しもだ)の"鮪(しび)"、四十五貫三百匁(≒170kg)
  ・薩州(さつま)出水(いづみ)の"眞鰺(まあぢ)"
  ・"障泥魷魚(あふりいか)"
  ・"牀臥(とこぶし)"
  ・豆州(いづ)下田(しもだ)の"鮪(しび)"、四十五貫三百匁(≒170kg)
  ・伯州(はうき)境港(さかひみなと)の"松葉蟹(まつばがに)="楚蟹(すはへがに)"

(しるもの)】:
  ・椀種(わんだね):
     筑前(ちくぜん)八女(やめ) の笋(たけのこ)、
     獨活(うど)、
     大葉擬寶珠(うるい、=おほばぎばうし)
  ・吸口(すひくち):
     椒芽(きのめ)

果子(くわし)】:
  ・阿州(あは)"さくらもゝ草莓(いちご)"
  ・白草莓(しろいちご) 、"初恋の香り"
  ・"金柑(きんかん)"二色(ふたいろ)
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【暗箱】 :東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【受象珠】:旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
以西巴爾亞(イスハニヤ)の繪師(ゑし)の手(て)になる石版印刷畫(リトグラフ)は、
先代(さきつおやかた)の所藏(もの)」と云ふ。
この日(ひ)の廚(つけば)には、"肥前(ひぜん)五島(ごたう)の垢穢(くゑ)"に、
"子籠(こゞもり)の公魚(わかさぎ)"、雌雄(めすとをす)"楚蟹(すはへがに)"。

はや、
"蜂斗菜(ふきのたう)"に加(くは)へ、
"(わん)"には、(たけのこ)と麪條魚(しらうを)に椒芽(きのめ)。
一足(ひとあぢ)早(はや)き靑陽(はる)の宴(うたげ)

對照的(これとはさかしま)、
名殘(なごり)の、"せこ蟹(がに)"に、"濱名湖(はまなこ)の(むなぎ)"。
やはり鰻魚(むなぎ)は龝(あき)が吉(よい)。
同席(せきをおなじくせ)し臺灣(あちら)の食通(かた)と蟹談義(かにばなし)。

稚拙(つたな)き漢語・英語(あちらのことば)にて會話(やりとり)するに、
楚蟹(すはへがに)は蟹身(み)、大閘蟹(もろこしもくづがに)は蟹黃(かにみそ)」
と互(たが)ひに打點頭(うちうなづ)く。
結局(とゞのつまり)、彼儕(かれら)とは日語(ひのもとのことば)が最適(よい)

"烏魚子(からすみ)二種(ふたくさ)"の内(うち)の一種(ひとつ)は、
「仕入値(しいれね)瓩(キロ)六萬五千圓(ろくまんごせんゑん)」。
奴僕(やつかれ)、
熟成(ひの)淺(あさ)き二萬五千圓(にまんごせんゑん)が嗜好(このみ)

酒足飯飽(ごちさうさまでござつた)!」
前述(くだん)の臺灣(たいわん)よりの貴人(たふときひと)も、
同意之(これにうなづく)。
很好吃(いとよきあぢなり)!」

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・松前漬(まつまへづけ)
     鯡魚子(かどのこ)
     魷魚乾絲(するめせん)
     昆布絲(ひろめせん)
     胡蘿蔔絲(せりにんじんせん)
  ・肥前(ひぜん)小長井(こながゐ)の蠔(かき)
  ・油煠(てんぷら)
     蜂斗菜(ふきのたう)
     公魚(わかさぎ)
  ・胾(さしみ)
     蝦夷地(えぞち)濱中(はまなか)の馬糞靈螺子(ばふんうに)
     肥前(ひぜん)五島(ごたう)の垢穢(くゑ)
  ・清蒸赤鯥(あかむつむしもの)
  ・せこ蟹(がに)釜飯(かまめし)
  ・遠州(とほとほみ)濱名湖(はまなこ)の鰻(むなぎ)、二百十三匁(≒800g)
  ・烏魚子(からすみ)二種(ふたくさ)

(すし)】:
  ・雞卵燒(たまごやき)
  ・佐渡(さど)の鰤(ぶり)
  ・蝦夷地(えぞち)松前(まつまへ)の金槍魚(しび)
  ・因州(いなば)or伯州(はうき)の"松葉蟹(まつばがに)="楚蟹(すはへがに)"

(わん)】:
  ・清湯(すましゞる)
     椀種(わんだね):
       薩州(さつま)の笋(たけのこ)
       雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の銀魚(しらうを)
     吸口(すひくち):
       椒芽(きのめ)

果子(くわし)】:
  ・下總(しもつふさ)香取(かとり)の"アイベリ"
  ・肥前(ひぜん)"せとか"
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
烏魚子(からすみ)にせばや」と、
仕込最中(しこみさなか)の鯔魚子(ぼらこ)に眼眶(まなこ)釘附(くぎづけ)。
雌雄(をすめす)楚蟹(すはへがに)の姿(すがた)も、、。
やはり不可缺(かゝせぬ)江州琵琶湖(あふみびはこ)の諸子(もろこ)。

蝦夷地利尻(えぞぢりしり)の牙鮃(ひらめ)は八百匁(≒3kg)の大物(おほもの)。
(さしみ)→(すし)→潮汁(うしほじる)、
美味(うまさ)の三段活用(さんだんかつやう)
三段腹卍(さんだんばらまんじ)、遣繰算段(やりくりさんだん)四苦八苦(しくはつく)。

無理强(むりじ)ひせし"雞卵燒(たまごやき)":
薯蕷(いも)を(す)り、車鰕(くるまえび)、雞蛋(たまご)を加(くは)へ、
日向備長炭(しろずみ)にて叮嚀(ねんごろ)に燒成(やきあぐ)るぞ尤(いと)をかし。
感謝感激雛霰(かんしやかんげきひなあられ)もなき三段腹卍(さんだんばらまんじ)。

この日(ひ)、
唸(うな)り、腕組(うでをく)み、うち點頭(うなづ)きしは"炊合(たきあはせ)"。
聖護院菘根(しやうごいんだいこん)、金時胡蘿蔔(きんときせりにんじん)、
各々(おのおの)調味(あぢつけ)して、火候(ひいれ)完璧(ひのうちどころなし)。

山葵(わさび)にも瞠目(めをみはる)ほか術(てだて)なし。
卸金(おろしがね)を變(か)へ、
鮫皮(さめがは)にも無遜色(ひけをとらぬ)滑(なめ)らかさと黏(ねば)り
同(おな)じ山葵(わさび)でこれほどまでに變貌(かはる)とは、、。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・吉備(きび)と蝦夷地昆布森(えぞちこんぶもり)の眞蠔(まがき)
  ・炊合(たきあはせ)の類(たぐひ):
    ・聖護院菘根(しやうごいんだいこん)
    ・金時胡蘿蔔(きんときせりにんじん)
    ・蝦夷地餘市(えぞちよいち)の鮟鱇肝(あんきも)二種(ふたくさ)
  ・但馬津居山(たじまつゐやま)の勢子蟹(せこがに)
  ・魥(さしみ):
    ・蝦夷地利尻(えぞぢりしり)の牙鮃(ひらめ)、八百匁(≒3kg)
    ・蝦夷地昆布森(えぞちこんぶもり)の海膽(うに)
  ・江州琵琶湖(あふみびはこ)の諸子(もろこ)鹽炙(しほやき)
  ・羽州(では)"にかほ"楚蟹(すはへがに)、二百四十匁(≒900g)
       ※脚身(あしのみ)は撮影失念(とりわすれ)!
  ・羽州八郎潟(ではゝちらうがた)の鰻(むなぎ)、二百十六匁(≒810g)

(すし)】:
  ・雞卵燒(たまごやき)
  ・蝦夷地利尻(えぞぢりしり)の牙鮃(ひらめ)、八百匁(≒3kg)
  ・能州(のと)の鰤(ぶり)、二百七十匁(≒10kg超)
  ・蝦夷地(えぞち)の鯷(いはし)
  ・蝦夷地羽幌(えぞちはぼろ)の特大富山鰕(いとおほきなるとやまえび)
  ・紀州那智勝浦(きゐなちかつうら)の金槍魚(しび)

(わん)】:
  ・牙鮃(ひらめ)骨邊肉(あら)潮汁(うしほじる)

菓子(くわし)】:
  ・肥後(ひご)"太龝柹"(たいしゆうがき)
  ・正體不明(よくわからぬ)、尤(いと)柔(やは)らかなる柹(かき)
  ・ウズベキスタン柘榴(ざくろ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
當家(こちら)の招牌(かんばん)たる"紅椒ムース(パプリカむうす)":
明石鯛(あかしだひ)の骨邊肉(あら)より魚溏油(フュメ・ド・ポアソン)を引(ひ)き、
幾種(いくつ)もの香味(かをり)ある蔬菜(あをもの)と合(あ)はせ、
裏漉(うらごし)せし紅椒(パプリカ)と奶油(くれむ)と混合(まぜあはす)。

信州(しなの)ゝ松茸(まつたけ)に、鵡川(むかは)の柳葉魚(しゝはむ)、
(ゆ)を吸口(すひくち)とし、(わん)となす。
松茸(まつたけ)は勿論(いふまでもなく)、
柳葉魚(しゝはむ)の超絶美味(くらぶるものなきうまさ)に絶句(ことばをうしなふ)。

八百卅匁(≒3.1kg)と演述(い)ふ、
淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)にも悶絶(たましひみにそはず)。
(さしみ)、(すし)、(しる)の遣繰(やりくり)三段活用(さんだんかつやう)。
祕密蓄財(へそくり)、燒栗(やきぐり)、我同意(I agree)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・蝦夷地仙鳳趾(えぞちせんぽうし)の蠔(かき)
  ・丹波(たんば)黑菽(くろえだまめ)+菱實(ひしのみ)
  ・蝦夷地濱中(えぞちはまなか)蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
    +淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)、八百卅匁(≒3.1kg)、魥(さしみ)
  ・明石鯛(あかしだひ)骨邊肉(あら)による紅椒(ぱぷりか)のムース
  ・蝦夷地余市(えぞちよいち)鮟鱇肝臟(あんきも)燻製(いぶし)
    +蝦夷仙鳳趾(えぞせんぱうし)の蠔(かき)時雨煮(しぐれに)
  ・羽州(では)の鰆(さはら)、藁燒(わらやき)
  ・播州明石(はりまあかし)の蛸(たこ)、六百九十匁(≒2.6kg)、煮章魚(にだこ)
  ・常州霞ヶ浦(ひたちかすみがうら)の鰻(むなぎ)、百四十七匁(≒550g)、
    白燒(しらやき)

(すし)】:
  ・蝦夷地戸井(えぞちとゐ)の鮪(しび)、廿七貫(にじふなゝくわん、≒110kg)
  ・眞鯖(さば)
  ・薩州出水(さつまいづみ)の墨烏賊(すみいか)新子(しんこ)
  ・蝦夷地戸井(えぞちとゐ)の鮪(しび)、肥肉(あぶらみ)
  ・蝦夷地根室(えぞちねむろ)の鯷(いはし)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)漿醤漬(しやうゆづけ)
  ・羽州(では)鰆(さはら)の藁燒(わらやき)
  ・蝦夷地戸井(えぞちとゐ)の鮪(しび)、紅肉(あかみ)

(わん)】:
  ・蝦夷地鵡川(えぞちむかは)の柳葉魚(しゝはむ)+信州松茸(しなのまつたけ)、
    +吸口(すひくち)柚(ゆ)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)骨邊肉(あら)、潮汁(うしほじる)

菓子(くわし)】:
  ・肥前唐津(ひぜんからつ)の無花果(いちじく)"ビオレ・ソリエ"
  ・筑紫(つくし)の無花果(いちじく)"とよみつひめ"
  ・吉備(きび)葡萄(ぶだう)"シャイン・マスカット"
  ・信州(しなの)葡萄(ぶだう)"紫苑(しゑん)"
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss)微距(Makro)Planar T* 2/50 ZK @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
先(さき)の大地震(おほなゐ)に配慮(かんが)み、
此度(こだみ)は蝦夷地(えぞち)山海(うみやま)の幸(さち)が主體(おも)
小人(それがし)嗜(この)む陶藝家(やきものし)長谷川奈津(はせがはなつ):
その(さら)と豬口(ちよく)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはふ)。

蝦夷(えぞ)釧路(くしろ)の狹眞魚(さまうを)、
肥後(ひご)球磨川(くまがは)の子持香魚(こもちあゆ)、
蝦夷(えぞ)松茸(まつたけ)などの美味(よきあぢ)こそあれ、
當日(このひ)の白眉(はくび)は雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)。

時季(とき)を得(え)
三百廿匁(≒1.2kg)と理想(ねがふべき)大(おほ)きさ
活〆(いけじめ)されたるものなれど、
猶(なほ)身(み)は活(い)きて庖丁(はうちやう)に頼哩(あらが)ふ

脆皮(もろきかは)に蕩(とろ)けんばかりの(み)。
素材(そざい)も然(さ)ることながら、
偏(ひとへ)に小宮親方(こみやおやかた)の技倆(うで)に依存(よる)
實言(まこと)、今季一(こんきいち)の美味(うまさ)

蝦夷(えぞ)余市(よいち)の鮟鱇肝臟(あんきも)も、
時季(いまどき)には稀有(めづらし)きほどの濃密(あぢのこ)さ。
實(げ)に、
海(うみ)の鵞鳥肝(フォアグラ)」と號(い)ふも諾(うべ)なる哉(かな)!

今季初(はじめて)の栗(くり):
常州(ひたち)友部(ともべ)の栗(くり)を澀皮煮(しぶかはに)と爲(な)す。
善哉(よき)、善哉(よき)!
野州(しもつけ)白無花果(しろいちじく)は今一(いまひとつ)。

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(さかな)】:
  ・蝦夷仙鳳趾(えぞせんぽうし)の蠔(かき)
   +京師(みやこ)萬願寺蕃椒(まんぐわんじたうがらし)
  ・京師(みやこ)小薯蕷(こいも)
   +陸州(むつ)土圞兒(ほどいも)
  ・丹波(たんば)菽(えだまめ)
  ・蝦夷釧路(えぞくしろ)の狹眞魚(さまうを)
   +肥後球磨川(ひごくまがは)の年魚(あゆ)
  ・四百卅匁(≒1.6kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)
  ・蝦夷利尻(えぞりしり)の紫海膽(むらさきうに)
  ・三百廿匁(≒1.2kg)雲州宍道湖(いづもしんじこ)鰻(むなぎ)、白燒(志らやき)
   +肥後(ひご)赤茄子(あかなす)
   +蝦夷(えぞ)余市(よいち)の鮟鱇肝臟(あんかうきも)

(すし)】:
  ・江戸灣(えどわん)眞子鰈(まこがれひ)
  ・土州(とさ)縞鰺(しまあぢ)
  ・蝦夷戸井(えぞとゐ)の鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
  ・蝦夷戸井(えぞとゐ)の鮪(しび)
  ・蝦夷(えぞ)松茸(まつたけ)
  ・陸前高田(りくぜんたかだ)蝦夷石影貝(えぞいしかげがひ)
  ・黑鰒(くろあはび)

(わん)】:
  ・淡路(あはぢ)海鰻(はむ)+松茸(まつたけ)+吸口(すひくち)菊花(きくのはな)

菓子(くわし)】:
  ・野州(しもつけ)白無花果(しろいちじく)
  ・常州友部(ひたちともべ)栗澀皮煮(くりしぶかはに)
  ・吉備(きび)シャイン・マスカット
  ・信州(しなの)甲斐路(かひぢ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4~F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
掃愁帚(さけ)は"天狗舞山廃(てんぐまひやまはい)"。
嗜好(このみ)に適合(あ)ひ、一合半(いちがふはん、≒正一合)。
此度(こだみ)も尋常(つね)のごとく、山海珍味(うみやまのさち)盡(づ)くし。
就中(わきても)、六百四十匁(≒2.4kg)明石鯛(あかしだひ)は特異(とびきり)。

百八十七匁(≒700g)雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の(むなぎ):
紛(まぎ)れもなく今季一(こんきいち)!
肥後天草(ひごあまくさ)の小鰭新子(こはだのしんこ)は二枚漬(にまいづけ)。
やはり、二枚漬(にまいづけ)~三枚漬(さんまいづけ)が適切(よい)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・山科(やましな)無花果(いちじく)黑芝蔴(くろごま)和(あ)へ
  ・海膽(うに)+秋葵(おくら)+酸桔仔(シークワーサ)、
     眞子鰈潮汁魚凍(まこがれひ、うしほじるにこゞり)
  ・蝦夷地釧路(えぞちくしろ)狹眞魚(さまうを)
  ・酢物(すのもの)、
     奧州(むつ)海鞘(ほや)+能州(のと)岩水雲(いはもづく)
  ・魥(さしみ)
    ・六百四十匁(≒2.4kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)身(み)
    ・六百四十匁(≒2.4kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)鱗(うろこ)
    ・蝦夷地利尻(えぞちりしり)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
     +豆州御殿塲(いづごてんば)眞妻山葵(まづまわさび)
      ※田代惠一(たしろけいゝち)栽培(さいばい)
  ・土州清水(とさしみづ)の赤鯥(あかむつ)煮附(につけ)
  ・百九十匁(≒700g)雲州宍道湖(いづもしんじこ)鰻(むなぎ)、白燒(志らやき)

(すし)】:
  ・二十七貫(≒100kg)陸州大間(むつおほま)の鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
  ・眞子鰈(まこがれひ)
  ・二十七貫(≒100kg)陸州大間(むつおほま)の鮪(しび)精肉(あかみ)~肥肉
  ・六百四十匁(≒2.4kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)
  ・相州松輪(さがみまつわ)の眞鯖(さば)
  ・肥後天草(ひごあまくさ)の小鰭新子(こはだのしんこ)

(わん)】:
  ・武州羽根田(むさしはねだ)の星鳗(はかりめ)+藝州(あき)松茸(まつたけ)

菓子(くわし)】:
  ・吉備(きび)"瀬戸ジャイアンツ"葡萄(ぶだう)
  ・筑紫博多(つくしはかた)”とよみつひめ”無花果(いちじく)
  ・琉球(りうきう)酸桔仔(シークワーサ)
  ・"長野パープル"葡萄(ぶだう)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
塑料袋(ビニルぶくろ)に悠然(ゆるり)と泅(およ)ぐ "手長鰕(てながえび)":
袋(ふくろ)より出(いづ)るや、
己(おの)が運命(さだめ)を覺悟(し)りて歟(か)?
のたうち、脚(て)を伸(の)ばし、師傅(おやかた)が指(ゆび)に頼哩(あらが)ふ。

南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)、南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)!
廚(つけば)には、"宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)"、二百七十匁(≒1kg)。
その三分之一(さんぶんのいち)を、さらに三人(みたり)で再分割(わかちあ)ふ。
i.e.,鰻九分之計(むなぎをこゝのつにわくるはかりごと)。

"鹿ヶ谷蒲柬瓜(しゝがたにかぼちや)"は、
甘長蕃椒(あまながたうがらし)、壺盧(ゆふがほ)とゝもに、烹(に)て餐(くら)ふ。
近會(ちかごろ)の甜(あまみ)の强(つよ)き唐茄(かぼちやうり)に比較(くら)べ、
淡麗(あはくきよらか)なる味(あぢはひ)

今季一(こんきいちばん)、"雲州宍道湖(いづもしんじこ)の(むなぎ)"。
脆皮(もろきかは)、皮下(かはのした)の明膠(ゼラチン)と(あぶら)、
さらには、蕩(とろ)けんばかりの身肉(み)の三層(みかさね)。
風味(あぢかをり)と齒觝觸(はごたへ・したざはり)も三段活用(みかさね)。

これには、辭(ことば)を失(うしな)ふほか術(てだて)なし。
佐渡嶋(さどがしま)(しび)も、
"中膩(ちゆうあぶ)"、"鮮肉漿醤(あかみしやうゆづけ)"、"膩肉(あぶ)"と、
强力(いとつよき)三段火箭(みかさね)。

因(ちな)みに、
"鮪膩肉(あぶ)"は備長炭(しろずみ)以て叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る。
氷見(ひみ)は寒鰤(かんぶり)、野球(やきう)は素振(すぶ)り、
鮪(しび)の膩(あぶ)には"炙(あぶ)り"が奢(まさ)る。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・先附(さきづけ)の類(たぐひ)一
    ・鹿ヶ谷蒲柬瓜(しゝがたにかぼちや)
    ・甘長蕃椒(あまながたうがらし)
    ・壺盧(ゆふがほ)
    ・芝蔴麩(ごまふ)
  ・先附(さきづけ)の類(たぐひ) 二
    ・淡路(あはぢ)海鰻卵巣(はむのこ)
    ・星鳗(あなご)
    ・眞子鰈(まこがれひ)
    ・藕(はちすのね)
    ・實山椒(みざんせう) 
  ・魥(さしみ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)、朝〆(あさじめ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)、縁側(えんがは)
    ・蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
  ・江州(あふみ)琵琶鱒(びはます)、炭火炙(すみびやき)
  ・房州千倉(あはちくら)の黑蚫(くろあはび)、酒蒸(さかむし)
  ・手長鰕(てながえび)
  ・雲州宍道湖(しんじこ)鰻(むなぎ)、百九十匁(≒700g) 、白燒(志らやき)

(すし)】:
  ・縞鰺(しまあぢ)
  ・淡路(あはぢしま)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)
  ・大坂灣(おほざかわん)鯔(ぼら)
  ・豆州式根島(いづしきねじま)劍先魷魚(けんさきいか、=あかいか)
  ・淡路嶋(あはぢしま)胡麻鯖(ごまさば)
  ・佐渡嶋(さどがしま)鮪(しび)、中膩肉(ちゆうあぶ)
  ・佐渡嶋(さどがしま)鮪(しび)、鮮肉(あかみ)豆油漬(しやうゆづけ)
  ・江戸灣(えどわん)下總行德(しもふさぎやうとく)の小鰭(こはだ)
  ・佐渡嶋(さどがしま)鮪(しび)、膩肉(あぶ)
  ・星鳗(はかりめ)

(わん)】:
  ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)、朝〆(あさじめ)

菓子(くわし)】:
  ・シャインマスカット
  ・ピオーネ
  ・芒果(マンゴ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss)C Sonnar T* 1.5/50 ZM @F2
      旭光學 S-M-C 微距琢磨(Macro Takumar)4/50 @F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
腰痛(こしのいたみ)も多少(いくらか)緩和(やはら)ぎ、
藜杖(あかざのつゑ)にも頼(たよ)らで寺島町(てらじまゝち)に、、。
漬塲(つけば)には、
五十三匁(200g)を超(こ)す、勢州桑名(そのてはくはな)の本蛤(ほんはまぐり)。

魚市塲(うをいちば)に文蛤(はまぐり)多(おほ)しと云へど、
本蛤(ほんはまぐり)は稀有(まれ)。
縱令(たとひ)、本蛤(ほんはまぐり)ありと云へど、
これほどに巨大(SMGRP©ドクシマせんせ、≒おほきなる)ものは稀少(たふとし)。

九十九里(くじふくり)~鹿島灘(かしまなだ)に漁(すなどら)れ、
高名(なだか)き鯗店(すしや)にて用(つか)はるゝは、朝鮮蛤(てうせんはまぐり)。
努々(ゆめゆめ)、兩者(このふたつ)を混同(あやま)つこと勿(なか)れ
當日(このひ)の文蛤(くはなのほんはまぐり)は大(おほ)きさも頂點(いたゞき)

朝〆(あさじめ)、淡路(あはぢ)の星鰈(ほしがれひ)は六百四十匁(≒2.4kg)。
その身(み)の厚(あつ)さ、一寸(いつすん)にも及(およ)ぶ。
五枚(ごまい)に下(お)ろさば、厚(あつ)さを忘(わす)れ、
雪(ゆき)よりもなほ白(しろ)きその(み)に陶然(ことばをうしなふことしばし)。

雲州宍道湖(しんじこ)の(むなぎ):
百九十匁(≒700g)と、そこそこの大(おほ)きさなれど、
良質(よ)き膩(あぶら)に富(と)む。
秋毫(つゆ)無議論(まよふまでもな)く、「今季一(こんきいちばん)」!

必(かならず)しも得手(えて)とせぬ鮪肥肉(しびあぶらみ)も、
日向備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)られ、
臼齒(おくば)どころか、舌先(したさき)に崩潰(もろくもくづれさる)
風韻(かをり)また佳絶(すばらしきもの)。

<魚荒>(あら)は、
骨邊肉(あら)を潮汁(うしほじる)、(み)は(すし)にて餐(くら)ふ。
いづれも、至高(このうへな)き鮮(うまみ)。
夜(よる)の怪人(ひと)」の噂(うはさ)をして辭別(いとまをこふ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・先付(さきづけ)の類(たぐひ)
    ・蒸蚫(むしあはび)
    ・賀茂茄子(かもなす)
    ・雜魚(ざこ)+實山椒(みざんせう)
  ・勢州桑名(そのてはくはな)の炸文蛤(あげはまぐり)、五十三匁(200g)超
  ・差味(さしみ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百四十匁(≒2.4kg)、朝〆(あさじめ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百四十匁(≒2.4kg)、縁側(えんがは)
    ・紫海膽(むらさきうに)
  ・蝦夷地余市(よいち)鮟鱇肝臟(あんかうのきも)
  ・鰖(たかべ)一夜干(ひとよぼし)
  ・潮汁椀(うしほじるわん)
    ・椀種(わんだね):[魚荒](あら)の骨邊肉(あら)
    ・椀褄(わんづま):羽州(では)蓴菜(ぬなは)
    ・吸口(すひくち):青柚(あをゆ)
  ・雲州宍道湖(しんじこ)鰻(むなぎ)、百九十匁(≒700g)

(すし)】:
  ・[魚荒](あら)、二日目(ふつかめ)
  ・境港(さかいみなと)鮪(しび)、十六貫(≒60kg)
  ・鰹(かつを)藁燒(わらやき)
  ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百四十匁(≒2.4kg)、朝〆(あさじめ)
  ・境港(さかいみなと)鮪(しび)、十六貫(≒60kg)
  ・下總行德(しもふさぎやうとく)の小鰭(こはだ)
  ・境港(さかいみなと)鮪(しび)、十六貫(≒60kg)、炙(あぶ)り

菓子(くわし)】:
  ・夕張甜瓜(ゆふばりメロン)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)1.4/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
此度(こだみ)は、氣鋭(いとするど)き食通(たべて)と一緒(とも)に、、。
眼前(めのまへ)に解體(ふわけ)されゆくは、城下鰈(しろしたがれひ)、
i.e.,、豐後(ぶんご)眞子王餘魚(まこがれひ)、四百五十匁(≒1.7kg)に、
肥後天草(ひごあまくさ)(むなぎ)、百八十七匁(≒700g)。

倩(つらつら)この城下王餘魚(しろしたがれひ)を吟味(うかゞ)ふに、
縁側(えんがは)の鮮(うまみ)は格別(ことのほか)。
肝臟(きも)には朝〆(あさじめ)固有(ならでは)の美味(よきあぢ)。
蝦夷地余市(えぞちよいち)鮟鱇肝(あんきも)をも凌駕(しのぐ)ほど。

次(つ)いで、久方(ひさかた)ぶりの"雞卵燒(たまごやき)"に舌鼓(したつゞみ)。
およそ雞卵燒(たまごやき)なるもの、
鮓店(みせ)に依(よ)り、鮓職人(ひと)に應(よ)り、多種多樣(さまざま)。
これぞ、僕(やつかれ)最喜歡(このうへなくこのむ)"煎雞蛋(たまごやき)"!!

"潮汁(うしほじる)"また然(しか)り。
眞子王餘魚(あまてがれひ、=まこがれひ)に、蓴菜(ぬなは)の椀(わん)。
愚按(やつがれおもふに)、
鮓店(すしや)の椀(わん)としては、尾根(をね)のそのまた頂點(いたゞき)

相州葉山(さがみのくにはやま)"障泥烏賊(あふりいか)":
漫(みだり)に黏(ねば)る食感(はごたへ・したざはり)が特徴(しるし)なれど、
實(げ)に、心持(こゝち)良(よ)き齒觝觸(はあたり)
平身低頭(ひたすらうやま)ふべきは、薄(うす)く削(そ)ぐ庖丁技(はうちやうわざ)。

"肥後天草(ひごあまくさ)の(むなぎ)"は今二(いまふた)つ。
やはり、鰻(むなぎ)餐(くら)ふなら龝(あき)が最善(よい)。
"春子(かすご)"・"小鰭(こはだ)"の醋〆(すじめ)は今樣(いまをときめくやりかた)。
瑞瑞(みづみづ)しく、鮮(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る

舎利(すめし)はさらに白醋(しろず)を多(おほ)めに、、。
如何(いか)ほどの混合比(まぜかた)を最適解(いとをかし)とする歟(か)?
今(いま)なほ、試行錯誤中(あれやこれやとこゝろみつゝあるところ)。
當家(うち)は白身(しろみ)が主體(おも)なれば、、」とのよし。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・上總大原(かずさおほはら)蒸蚫(むしあはび)
  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)に花山椒(はなざんせう)
  ・豐後(ぶんご)眞子王餘魚(まこがれひ、しろしたがれひ)、四百五十匁(≒1.7kg)
    ・身(み)
    ・縁側(えんがは)
    ・肝臟(きも)
  ・小川水産(をがは)、蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
  ・蕨(わらび)
  ・鰻(むなぎ)魚凍(にこゞり) ※濱名湖(はまなこ)?
  ・蝦夷地餘市(えぞちよいち)鮟鱇肝(あんきも)
  ・雞蛋(たまご)
  ・潮汁(うしほじる)の椀(わん)、
    ・椀種(わんだね):播州(はりま)眞子鰈(あまてがれひ)骨邊肉(あら)
    ・椀褄(わんづま):羽州(では)蓴菜(ぬなは)
    ・吸口(すひくち):青柚(あをゆ)
  ・肥後天草(ひごあまくさ)鰻(むなぎ)、百八十七匁(≒700g)

(すし)】:
  ・相州葉山(さがみはやま)障泥烏賊(あふりいか)
  ・薩州出水(さつまいづみ)春子(かすご)
  ・紀州那智勝浦(なちかつうら)鮪(しび)
  ・蝦夷地(えぞち)鰊(にしん)
  ・薩州出水(さつまいづみ)眞鰺(まあぢ)
  ・豐後(ぶんご)城下王餘魚(しろしたがれひ)、=眞子鰈(まこがれひ))
  ・能州(のと)鳥貝(とりがひ)
  ・紀州那智勝浦(なちかつうら)鮪(しび)
  ・小鰭(こはだ)
  ・紀州那智勝浦(なちかつうら)鮪(しび)

菓子(くわし)】:
  ・阿州(あは)"珊瑚樹(さんごじゆ)"蕃茄(とまと)
  ・羽州村山(ではむらやま)"佐藤錦(さたうにしき)"櫻桃(さくらんぼ)
  ・米利堅(めりけん)櫻桃(さくらんぼ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 S-M-C 微距琢磨(Macro Takumar)4/50 @F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
葛飾郡(かつしかのこほり)松伏(まつぶし)『三笠鮨』:
最上質(とびきり)の魚介(うみのさち)を用(つか)ひ、
確乎(たしか)なる技倆(うで)以(も)て鯗(すし)を提供(いだす)
しかし、掉尾(いやはて)の土瓶蒸(どびんむし)は「旨過(うます)ぎ」。

これ、必(かな)ずしも賞賛(ほめことば)に非(あら)ず
子曰(あのかたのたまは)く、「過猶不及 (すぎたるはなほおよばざるがごとし)」
車鰕(くるまえび)、文蛤(はまぐり)、櫻鰕(さくらえび)、香茹(しいたけ)。
これほどまでに濃厚(あぢこ)きものが重(かさ)なると首捻(くびゝぬ)るほかなし。

心(こゝろ)の片隅(かたすみ)に蟠(わだかまり)を抱(かゝ)へ、
當家(こちら)『うを德』に、、。
劈頭(いやさき)の"(わん)"から、
"石蓴醋物(あをさすのもの)"、"(ふき)"、 "花山椒鍋(はなざんせうなべ)"、、。

漫(みだり)に"鮮(うまみ)"を足(た)すことなく
必要最小限(ぎりぎり)の調味(あぢつけ)
それでも猶(なほ)、秋毫(つゆ)無所不足(たらざるところな)きは、
偏(ひとへ)に、小宮健一親方(こみやけんいちおやかた)が技倆(うで)

對價(しはらひ)は『三笠鮨』が幾分高(いくぶんたか)く、
居心地(ゐごゝち)と綜合的滿足度(みちたりかた)を競(あらそ)ふなら、
やはり、『うを德』に軍配(ぐんばい)。
この先(さき)、未來永劫(とこしへ)に續(つゞ)かんことを祈念(いの)る

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
 ・"眞鯛(まだひ)、卵巣(まこ)+精巣(しらこ)+花山椒(はなざんせう)"
 ・越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)の螢烏賊(ほたるいか)
 ・江州琵琶湖(あふみびはこ)の稚鮎(ちあゆ)天麩羅(てんぷら)
 ・石蓴(あをさ)醋物(すのもの)
 ・蝦夷地釧路(えぞちくしろ)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
 ・播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)、一貫目弱(≒3.7kg)、魥(さしみ)
 ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の鰹(かつを)、藁燒(わらやき)
 ・阿州吉野川(あはよしのがは)の鰻(むなぎ)、百七匁(≒400g)、白燒(しらやき)
 ・花山椒鍋(はなざんせうなべ)
    ・和州(やまと)の花山椒(はなざんせう)@十萬圓(きろじふまんゑん)
    ・城州(やましろ)物集女笋(もづめだけ)
    ・越前勝山(ゑちぜんかつやま)の赤鯥(あかむつ、=のどぐろ)

(すし)】:
 ・豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)
 ・房州勝浦(あはかつうら)の鮪(しび)、四十三貫四百匁(≒163kg)
 ・陸州大間(むつおほま)の櫻鱒(さくらます) 、一貫百四十匁(≒4.2kg)
 ・春子(かすご)
 ・房州勝浦(あはかつうら)の鮪(しび)、四十三貫四百匁(≒163kg)
 ・三州(みかは)の鳥貝(とりがひ)
 ・明石(あかし)の眞鯛(まだひ)
 ・小鰭(こはだ)

菓子(くわし)】:
 ・羽州村山(ではむらやま)の櫻桃(さくらんぼ)、"佐藤錦(さたうにしき)"
 ・三州蒲郡(みかはがまごほり)の蜜柑(みかん)
 ・日向(ひむか)の芒果(まんご)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F2.8
時季(いまごろ)固有(ならでは)、
"四万十川(しまんとがは)の「ごり有馬煮(ありまに)"、
"城下鰈(しろしたがれひ)"、
i.e.,(すなはち、)豐後(ぶんご)日出城下(ひのでじやうした)眞子鰈(まこがれひ)。

"越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)螢烏賊(ほたるいか)"に"蕗未醤(ふきみそ)"、
"山州(やましろ)の(たけのこ)"は"飯蒸(いひむし)"と"燒物(やきもの)"。
しかし、この日(ひ)の白眉(とびぬけてすぐれたるもの)は、
豐後佐賀關(ぶんごさがのせき)の雞魚(いさき)。

丸々(まる)と肥滿(こえふと)り力士(りきし)のごとき太鼓腹(たいこばら)
膩(あぶら)に冨(と)み、鮮(うまみ)も顯著(あらは)
これほどの雞魚(いさき)なら、
"鹽燒(しほやき)"に好適(よし)、"煮附(につけ)"でもまた可以(よし)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
 ・土州四万十川(とさしまんとがは)の"ごり" 有馬煮(ありまに)
 ・甘鯛(あまだひ)、鰒精巣(ふぐしらこ)、(たけのこ)の飯蒸(いひむし)
 ・蝦夷地箱館(えぞちはこだて)の馬糞海膽(ばうんうに)
 ・豐後(ぶんご)眞子鰈(まこがれひ、="城下鰈")、530匁(≒2kg)、魥(さしみ)
 ・越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)螢烏賊(ほたるいか)+蕗未醤(ふきみそ)
 ・豐後(ぶんご)眞子鰈(まこがれひ、="城下鰈")骨邊肉(あら)、潮汁(うしほじる)
 ・山州(やましろ)の(たけのこ)
 ・豐後佐賀關(ぶんごさがのせき)の雞魚(いさき)、差味(さしみ)

(すし)】:
 ・失念(...)
 ・壹岐(いき)の鮪肥肉(しびあぶらみ)
 ・小鰭(こはだ)
 ・甲烏賊(かふいか、=墨烏賊) 
 ・豐後(ぶんご)眞子鰈(まこがれひ、="城下鰈")
 ・三州三河灣(さんしうみかはわん)の鳥貝(とりがひ)
 ・蝦夷地羽幌(えぞちはぼろ)富山鰕(とやまえび、=ボタンエビ) 
 ・豐後佐賀關(ぶんごさがのせき)の雞魚(いさき)
 ・雞蛋燒(たまごやき)

菓子(くわし)】:
 ・羽州山形(ではやまがた)の佐藤錦(さたうにしき)
 ・遠州(とほとほみ)の獼猴桃(キウイフルーツ)
 ・檸檬(レモン)
 ・肥前唐津(ひぜんのくにからつ)の"麗紅橘(れいこうオレンジ)"
 ・ウズベキスタン柘榴(ざくろ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
謹(つゝし)みて御零(おこぼ)れ頂戴(ちやうだい)仕(つかまつ)る
小人(それがし)に虎狼之意(とらおほかめのこゝろ)有之(これあり)。
否(いな)!
"鬣狗(たてがみいぬ)"、"禿鷲(はげわし)"、"毛賊(こそどろ)"の類(たぐひ)。

この日(ひ)は稀有(まれにみ)るほどの山海八珍(うみやまのさち)盡(づ)くし。
(いけ)が、"諸子(もろこ)"、"花咲蟹(はなさきがに)"、
朝〆魚(あさじめうを)として、"明石鯛(あかしだひ)"、"眼拔(めぬけ)"、
さらに、"虎鰒精巢(とらふぐしらこ)"に、"長岡京笋(ながをかのたけのこ)"、、。

獅子(しゝ)の眼(め)掠(かす)めての竊喰(ぬすみぐひ)
實(げ)に、"密夫(まをとこ)"の心境(こゝち)ぞしたりける。
"活諸子(いけのもろこ)"は初(はじめて)、
茹上(うであげ)"花咲蟹(はなさきがに)"の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり) 。

やはり、この日(ひ)の白眉(とりわけすばらしきしな)こそ、"目拔(めぬけ)":
巷間(ちまた)では「超高級魚(いとたかきねのうを)」と云ふ。
目拔類(めぬけのたぐひ)夥(あまた)あれど、
就中(わきても)、最貴(すぐれてたふと)きが"赤魚鯛(あかうをだひ)"とも。

小人(それがし)、幼(いとけな)き砌(みぎり)、
赤貧如洗(あらふがごときまづしさ)なれば、
"眞鯛(たひ)"も"(ふぐ)"も口(くち)にせし前例(ためし)なく、
"狹眞魚(さまうを)"すら膓(はらわた)なき魚乾(ほしうを)。

偶(たま)の"差味(しびさしみ)"を除外(のぞ)くなら、
"梶木(かぢき)"、"眞鱈(まだら)"、
そして何(なに)より前述(くだん)の"赤魚鯛(あかうをだひ)"。
すなはち、六十年前(むそとせまへ)なら「下魚中(げうをのなか)の下魚(げうを)」。

それが、瓩(キロ)一萬三千圓(いちまんさんぜんゑん)と云ふから愕(おどろ)き。
一貫二百五十匁(≒4.7kg)の大(おほ)きさとのことなれば、
すなはち、沽(あたひ)、大畧(およそ)、六萬一千圓(ろくまんいつせんゑん)ぼど。
價格(ね)はともかく、その味(あぢはひ)は絶品・至高(このうへなきもの)

陳腐(ありきたり)の譬喩(たとへ)ながら、
"石狗公(きちじ)"をその儘(まゝ)巨大化(おほきく)したるがごとき形(なり)。
幼少時(いとけなきころ)の煮附(につけ)を想像(おもひゑがき)しに、
"長岡笋(ながをかたけのこ)"とゝもに最上(いとよ)き椀(わん)に、、。

堪(たま)りかね、
絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。
周圍(まはり)からも、一齊(ひとし)く、絶賛(はげしくほめたゝ)ふる聲(こゑ)
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)!

今朝(けさ)〆たばかりの明石眞鯛(あかしだひ)は、
未熟成(いまだうれず)と云へど、眞鯛(まだひ)固有(ならでは)の芳香(かをり)
臼齒(おくば)に噛締(かみし)むるや
鮮(うまみ)浮騰(ほとばし)りて、四角八方(をちこち)に旋(かけめぐ)る

心做(こゝろな)し歟(か)?
舎利(すめし)も、不尋常(つねなら)ず嗜好(このみ)に適合(あふ)
粒(つぶ)が立(た)ち、しかも、舌(した)に滑(なめ)らか
膨滿(はらふく)るゝ豫兆(きざし)もなく辭別(いとまごひ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
 ・琵琶湖(びはこ)の冰魚(ひうを)
 ・淀蘿蔔(よどすゞしろ)
 ・蝦夷噴火灣(えぞふんくわゝん)馬糞海膽(えぞばふんうに)
   +朝〆(あさじめ)明石(あかし)眞鯛(まだひ)、七百五十匁(≒2.8kg)
 ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の小鮪(めじ)藁燒(わらやき)+菜花(なばな)
 ・琵琶湖(びはこ)の活諸子(いけもろこ)
 ・擇捉嶋(えとろふじま)、活花咲蟹(いけはなさきがに)
 ・【椀(わん)】、
   朝〆(あさじめ)房州勝浦(あはかつうら)目拔(めぬけ)、
   一貫二百五十匁(≒4.7kg)
   +長岡京(ながをか)の笋(たけのこ)
 ・蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぽうし)の眞蠔(かき)
 ・虎鰒(とらふぐ)精巣(しらこ)

(すし)】;
 ・日向油津(ひむかあぶらつ)の中鮪(ちゆうばう)、十六貫(≒60kg)、肥肉(あぶ)
 ・玉珧(たひらぎ)
 ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の小鮪(めじ)藁燒(わらやき)
 ・朝〆(あさじめ)明石(あかし)眞鯛(まだひ)、七百五十匁(≒2.8kg)
 ・朝〆(あさじめ)房州勝浦(あはかつうら)目拔(めぬけ)、一貫二百五十匁
 ・日向油津(ひむらあぶらつ)の中鮪(ちゆうばう)、中肥肉(ちゆうあぶ)
 ・朝〆(あさじめ)明石(あかし)眞鯛(まだひ)、七百五十匁(≒2.8kg)
 ・日向油津(ひむらあぶらつ)の中鮪(ちゆうばう)、紅肉(あかみ)
 ・星鳗(はかりめ)

菓子(くわし)】:
 ・さくらもゝ草莓(いちご)+甘柑(かんかん)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
毎年恆例(まいとしならひ)の新年會(あらたなるとしをことほぐうたげ)。
其處(そこ)には、病(やまひ)癒(い)えたる友(とも)の顏(かほ)も、、。
漬塲(つけば)に鎭坐(おは)しますは、
鱈塲蟹(たらばがに)、鯨鯢畝須(くぢらのうねす)に明石眞鯛(あかしだひ)。

劈頭(いやさき)に"胡桃入干柹(くるみいりほしがき)"と"唐墨(からすみ)"。
雙方(ともに)見覺(みおぼ)えあり!
次(つ)いで、湯氣(ゆげ)の立(た)つ加須底羅雞蛋(かすていらたまご)。
(くれなゐ)鮮烈(あざかや)なる車蝦(くるまえび)が顯著(めだつ)。

"鰤藁燒(ぶりのわらやき)"には"冬茹甘露煮(どんこかんろに)"。
(ぶり)は米藁(こめわら)にて炙(あぶ)り、大蒜(おほひる)を利(き)かす。
當家(こちら)固有(ならでは)の味(あぢはひ)
冬茹(どんこ)は半點(いさゝか)甜(あま)め歟(か)?

扨(さて)、"鯨鯢畝須(くぢらうねす)の(わん)":
底(そこ)に蝦薯蕷(えびいも)が沈(しづ)み、山椒木芽(きのめ)が浮(う)く。
風味佳絶(たぐひまれなるすばらしきあぢかをり)なれど、
鯨鯢肉(くぢらにく)、臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ひて止(や)むことなし

備長炭(しろすみ)に炙(あぶ)りたる"鱈塲蟹(たらばがに)"、
さらには、"紅椒ムウス(ぱぷりかむうす)"と、
豫想(おもひ)に寸毫(つゆ)と違(たがは)ぬ味(あぢ)・風韻(かをり)。
卍(まんじ)、善哉(よき)、善哉(よき)!

倩(つらつら)舎利(すめし)を窺(うかゞ)ふに、
以前(まへ)に比較(くら)べて顏色(いろ)淡(あは)し
横井(よこゐ)"與兵衞(よへゑ)"を減量(へら)し、
中埜(なかの)"白菊(しらぎく)"を増量(ふや)したとの説明(はなし)。

掉尾(いやはて)に、
今季初(このふゆはじめて)の"さくらもゝ草莓(いちご)":
阿州(あは)の誇(ほこ)る草莓(いちご)の皇帝(すめらみこと)
その名(な)に相違(たがは)で、(さくら)と(もゝ)の芳香(かをり)を有(も)つ。

宴(うたげ)は、掃愁帚(さけ)を除(のぞ)き如下(つぎのごとし)。

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(さかな)】:
 ・胡桃入干柹(くるみいりほしがき)+唐墨(からすみ)
 ・蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)+明石(あかし)眞鯛(まだひ)八百匁(≒3kg)
 ・藁燒鰤(わらやきぶり)+冬茹(どんこ)
 ・鱈塲蟹(たらばがに)
 ・紅椒(ぱぷりか)のムウス

(すし)】;
 ・鮪(しび)、白川(しろあまだひ)、眞鯖(さば)、鮪(しび)、皮剥(かはゝぎ)、
 ・小鰭(こはだ)、墨烏賊(かふいか)、鰒(あはび)、鮪(しび)

菓子(くわし)】:
 ・さくらもゝ草莓(いちご)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
新年(あらたしきとし)を壽(ことほ)ぐ三段重(みかさねのぬりもの)。
對價(あたひ)、三萬二千四百圓也(さんまんにせんよんひやくゑんなり)。
今年(ことし)はこれを一人(ひとり)で啖(くら)ふ。
大雜把(あほまか)なる内容(うちわけ)は、如斯(かくのごとし)。

當家(こちら)の御節料理(おせちれうり)は、
七年連續(なゝとせつゞけて)、七度目(なゝたびめ)で最後(いやはて)。
これで永遠(とは)の離別(わかれ)
扨(さて)、來年(つぎのとし)は、如何(いか)にせん?

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
      精機光學 佳能(Canon)nFD2.8/300 L @F4 ※元旦日出
      富山玩具 Borg 71FL 8/560 (5.6/400 + ×1.4Extender)  @F8 ※元旦日出
晝(ひる)九(こゝの)つ。
引戸(ひきど)を開(ひら)くと、(むしろ)には小人(それがし)一人(ひとり)
三年前(みとせまへ)ならいざ知(し)らず、
近會(ちかごろ)では稀有(めづらし)きこと。

今季一(こんきいち)」、
と號(い)ふ"松茸(まつたけ)"は、陸州(むつ)岩手(いはて)の産(もの)。
その優雅(みやび)この上(うへ)なき風韻(かをり)に霎時(しばし)陶醉(ゑふ)
これが夷僚(ゑびす)に理解(わから)ぬとは疑問(くびかし)ぐるばかり

播州(はりま)明石(あかし)の"眞鯛(まだひ)"が七百七十匁(≒2.9kg)。
中骨(なかぼね)には明石鯛(あかしだひ)固有(ならでは)の(こぶ)。
朝締(あさじ)めゆゑ、(うまみ)は未熟(これから)ながら、
齒觝觸(はあたり)拔群(むれよりぬきんいでたり)。

雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の" (むなぎ)"百六十匁(≒600g)。
時季(とき)ならず、半點(いさゝか)脂(あぶら)稀薄(うすめ)
今(いま)や、「鰻(むなぎ)の皇(すめらみこと)」と賞賛(もてはや)さるゝも、
かくのごとき淡白(あぢあは)き(もの)も、、。

愈々(いよいよ)盛(さか)りに向成(なりな)んとするは、
蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぱうし)の"眞蠔(まがき)"。
やはり「眞蠔(まがき)の頂點(いたゞき)
" (ぶり)"も蝦夷地(えぞち)より越後(ゑちご)へと遷移(うつる)。

"娃娃菜(わゝさい)"と號(よびな)すは、
最小(いとちいさ)なる白菜(はくさい)。
房總(ばうさう)の花生(なんきんまめ)"おほまさり"も美味(よきあぢ)。
この日(ひ)も平生(つね)のごとく尋常(つね)のごとし

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
 ・先附(さきづけ)
   ・娃娃菜(わゝさい)
   ・房總(ばうさう)花生(らつくわせい)"おほまさり" 
   ・蝦夷(えぞ)サロマ湖(こ)の眞蠔(まがき)
   ・蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぱうし)の眞蠔(まがき)
 ・但州(たじま)香住(かすみ)の雌蟹(せこがに)
   +山城(やましろ)蝦薯蕷(えびいも)

 ・椀(わん)
   ・陸州(むつ)松茸(まつたけ)
   ・蝦夷(えぞ)雲子(くもこ)
   ・金時胡蘿蔔(きんときにんじん)
   ・蕪(かぶら)
 ・向附(むかふづけ)
   ・播州(はりま)明石(あかし)の眞鯛(まだひ)
   ・明石鯛(あかしだひ)の肝臟(きも)
   ・蝦夷(えぞ)濱中(はまなか)蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
 ・雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)

(すし)】:
 ・奧州(むつ)大間(おほま)の鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
 ・播州(はりま)明石(あかし)の眞鯛(まだひ)
 ・奧州(むつ)大間(おほま)の鮪(しび)
 ・肥後(ひご)天草(あまくさ)の小鰭(こはだ)
 ・越後(ゑちご)の鰤(ぶり)藁燒(わらやき)
 ・對馬(つしま)の星鳗(はかりめ)

菓子(くわし)】:
 ・小蜜(こみつ)
 ・蕃茄(あかなす)
 ・柹(かき)
 ・グレープフルーツ
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4

染垂阿爺(しみたれおやぢ)卍(まんじ)、
唐墨(からすみ)」の報(しらせ)に觸(ふ)れ、俄頃(にはか)に色(いろ)めきたつ。
慌(あは)てふためき、鈔(ぜに)を工面(くめん)、
鼻息(はないき)荒(あら)く玉の井(たまのゐ)へと驀地(まつしぐら)。

その容(さま)、
將棋(しやうぎ)の香車(やり)かと疑(うたが)はれ、
西班牙(イスパニア)の猛牛(たけきうし)、
英國(エゲレス)筆學所(てならひ)の吶喊小僧(とつかんこぞう)に髣髴(さもにたり)。

劈頭(いやさき)に、
加賀藕(かゞはちすのね)と鮟鱇肝臟(あんきも)を摘(つ)まみ一安堵(ひとおちゐ)。
次(つ)いで早(はや)くも"唐墨(からすみ)"の登場(おでまし)。
素材(そざい)そのものは『やす秀』が上(うへ)歟(か)?

芯(しん)嫩(やはらか)にして、未完成(いまだならず)。
當家(こちら)の烏魚子(からすみ)は、その變化(かはりやう)を愉(たの)しむもの
童女(わらんべ)→少女(おいなご)→(をんな)→(うば)、、。
この唐墨(からすみ)、さしづめ、「少女(おいなご)」に喩(たと)ふべき歟(か)?

この日(ひ)の白眉(はくび)は、
奧州(むつ)小川原湖(おがはらこ)(むなぎ)、四百匁(≒1.5kg)。
「今季(こんき)二番目(にばんめ)」
と、主人(あるじ)自慢(むねをは)る巨大鰻(いとおほきなるむなぎ)。

江戸生艷氣樺燒(えどうまれうはきのかばやき)、
陸州生鰻白燒(むつうまれむなぎのしらやき)。
今(いま)まさに時季(とき)を得(え)て炙(や)くのは輙(たやす)く
"はしり"なら四十分(よんじつぷん)のところ、纔(わづ)かに二十分(にじつぷん)

法國渡來(ふらんすわたり)の黒無花果(くろいちじく)、
"ヴィオレ・ソリエ(Viollette de sollies)":
これまた今季初(こんきはじめて)。
未熟(いまだうれず)、甜(あまみ)・芳香(かをり)ともに不足(いまひとつ)

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

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(さかな)】:
  ・雲州(いづも)鮟鱇肝臟(あんきも)+加賀藕(かゞはちすのね)
  ・唐墨(からすみ)
  ・鯳卵巣(すけこ)
  ・蝦夷地(えぞち)鮃(ひらめ)五百三十匁(≒2kg)+馬糞海膽(ばふんうに)
  ・阿波(あは)蝦薯蕷(えびいも)+奧州(むつ)松茸(まつたけ)
  ・陸州(むつ)小川原湖(おがはらこ)鰻(むなぎ)、四百匁(≒1.5kg)
  ・蝦夷地(えぞち)鮃(ひらめ)潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・琉球(りうきう)宮古島(みやこじま)鰆(さはら)
  ・五島列島(ごたうれつたふ)垢穢(くゑ)
  ・蝦夷地根室(ねむろ)眞鰯(まいはし)
  ・蝦夷地(えぞち)鮃(ひらめ)
  ・蝦夷地標津(しべつ)鮏(さけ)卵巣(はらこ)

菓子(くわし)】:
  ・無花果(いちじく)、"ヴィオレ・ソリエ"
  ・葡萄(ぶだう)、"シャイン・マスカット"
  ・刀根柹(とねがき)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
此度(こだみ)特選素材(ひとめをうばふもの)は、
紀州八幡濱(やはたはま)白尼鯛(しろあまだひ)九百六十匁(≒3.6kg)、
琵琶湖(びはこ)本諸魚(もろこ)、奧州(では)松茸(まつたけ)、
雲州宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)、百十匁(≒400g)。

白尼鯛(しろあまだひ):
魚市塲(うをいちば)では"白川(しらかは)"と喚做(よびな)すが通例(つね)。
(さしみ)に好適(よし)、(わん)にまた佳良(よし)。
そのあまりの美味(よきあぢ)に、自(おの)づと頬(ほゝ)も緩(ゆる)む

"賀茂茄子(かもなす)の揚滲(あげびた)し":
尋常(つね)のことながら、
味覺(した)は怡(よろこ)び、胃腑(い)は驅(か)け巡(めぐ)る。
吾輩(われ)夢心持(ゆめごゝち)で啖之(これをく)ふ。

鰻(むなぎ)は、
宍道湖(しんじこ)に八郎潟(はちらうがた)。
各々(おのおの)、白炙(しらやき)、蒲炙(かばやき)となす。
時季(とき)を得(え)て、鮮(うまみ)頂點(いたゞき)を極(きは)めんとす

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

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【殽(さかな)】:
  ・水菜(みづな)、菊花(かきのもと)、松茸(まつたけ)、花生(なんきんまめ)
  ・蝦夷根室(ねむろ)の秋刀魚(さんま)
    +紀州(きしう)中山栗(なかやまぐり)特選(よりすぐり)
  ・蝦夷地利尻島(りしり)の紫海膽(むらさきうに)
    +紀州八幡濱(やはたはま)の白川(しらかは、=しろあまだひ)魥(さしみ)
  ・賀茂茄子(かもなす)揚滲(あげびた)し
  ・めじ藁燒(わらやき)
  ・白川(しらかは、=しろあまだひ)鱗煎餠(うろこせん遍゛以)
  ・白川(しらかは)と松茸(まつたけ)、蝦芋(えびいも)の椀(わん)
  ・琵琶湖(びはこ)本諸魚(ほんもろこ)
    +雲州宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)白燒(しらやき)
  ・羽州八郎潟(はちらうがた)の鰻(むなぎ)蒲燒(かばやき)
    +蝦夷地標津(しべつ)の鮏腹子(さけはらこ)

【鮓(すし)】:
  ・星鳗(あなご)
  ・陸州大間(おほま)の鮪(しび)
  ・墨烏賊(すみいか、=かふいか)新子(しんこ)
  ・鰤(ぶり)藁燒(わらやき)
  ・奧州大間(おほま)の鮪(しび)

【菓子(くわし)】:
  ・富有柿(ふいうがき)、洋梨(やうなし)、ピオーネ
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F4

此度(こだみ)特選素材(ひとめをうばふもの)は、
淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)六百九十匁(≒2.6kg)、
紀州(きいのくに)活蝦蛄(いけしやこ)茹上(ゆであ)げ、
雲州(いづも)神西湖(じんざいこ)の(むなぎ)百三十匁(≒500g)。

劈頭(いやさき)の小皿(こざら):
松茸(まつたけ)、丹波黒(たんばぐろ)(えだまめ)、
花生(なんきんまめ)、水菜(みづな)を溏油(だし)に烹(に)たるもの。
うむ、これこれ、これッ!」、と膝(ひざ)を敲(う)つ。

「師傅(おやかた)、やはり、東都(あづま)に稀有(まれ)なる名匠(たくみ)!」
鹽(しほ)を抑制(おさ)へ
鰹(かつを)の馨(かをり)、昆布(こんぶ)の旨味(うまみ)を控(ひか)へ
なほ、不足(たらざるところ)皆無(なし)

松茸(まつたけ)完一本(まるいつぽん)に麪麭粉(ぱんのこな)塗(まぶ)し
炸之(これをあぶらにあ)ぐるがごときは、
徒(いたづら)に門牙(まへば)に挾(はさ)まり
臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふばかりの惡趣味(いまいまし)き烹調法(やりかた)。

蝦蛄(いけしやこ)の茹上(ゆであげ):
溜池(ためいけ)『壽々』など、
活(い)ける蝦蛄(しやくなげ)、若(わか)き小僧(みならひ)を走(はし)ら」せ、
茹(う)でゝ、これを鮓(すし)と爲(な)す肆(みせ)も在(あ)るには存在(あり)

當家(こちら)の小宮親方(こみやおやかた)、
能(よ)くこの技法(わざ)を自家藥籠中(みにつけ、わがものとなせ)り
この日(ひ)の茹上(ゆであげ)は、
瞬間(またゝくうち)に沸騰水(にえたぎれるゆ)に潛(くゞ)らすもの。

これを迅速(すばや)く冷水(ひやみづ)に取(と)り
冷(さ)ますことあらで、その儘(まゝ)齧附(かじりつ)く
その容(さま)、
(ひぐま)の遡上鮏(かはさかのぼるさけ)を貪(むさぼ)り啖(くら)ふがごとし。

眞美味也(いとうまし、マ・ジ・ヤ・バ・ク・ネ・ッ)!
芯(しん)は半生(はんなま)にして、その肉(み)なほ活(い)くるがごとし
"漬込(つけこみ)"は勿論(いふまでもなく)、
尋常(なみ)の"茹上(ゆであげ)"をも凌駕(はるかにしの)ぐ。

この塲(ば)での即興(おもひつき)」と、恥(は)ぢ、謙遜(へりくだ)る。
俗(よ)に言ふ「定番(おはこ)」を重視(おもん)じつゝ、
時折(ときをり)、暴(にはか)に閃(ひらめ)き、創作(あらたなるものあみだす)
師傅(おやかた)、徒者(たゞもの)に非(あら)ず!

"根室(ねむろ)の秋刀魚(さんま)"。
"指身(さしみ)"と、"肝臟附(きもつき)秋刀魚飯(さんまめし)"で堪能(いたゞく)。
"つくり身(み)"は、三枚(さんまい)に下(お)ろし、
骨(ほね)を去(さ)り、肉(み)に鹿子庖丁(かのばうちやう)入(い)れたるのみ。

生薑醤油(はじかみじやうゆ)を滲(つ)け、口中(くちのなか)に抛込(はうりこ)むや、
膩(あぶら)混(ま)じりの旨味(うまみ)炸裂(はじけちる)
その容(さま)、鳳仙花(ほうせんくわ)に接觸(ふ)るゝや否(いな)や、
その種子(たね)の四角八方(あちこち)に飛散(とびち)るに似(に)たり。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

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(さかな)】:
  ・奧州(むつ)松茸(まつたけ)、丹波黒菽(たんばくろえだまめ)、
   花生(なんきんまめ)、水菜(みづな)
  ・鰯(いはし)星鳗肝(はかりめきも)梅煮(むめに)
  ・鰒(あはび)、衣被(きぬかつぎ)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)六百九十匁(≒2.6kg)
  ・蝦夷地(えぞち)箱館(はこだて)蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
  ・蝦夷地(えぞち)仙鳳趾(せんぽうし)蠔(かき)、鳴門金時(なるときんとき)
  ・紀州(きいのくに)蝦蛄(しやこ)
  ・奧州(むつ)松茸(まつたけ)に星鳗(はかりめ) 椀
  ・蝦夷地(えぞち)根室(ねむろ)秋刀魚(さんま)指身(さしみ)
  ・雲州(いづも)神西湖(じんざいこ)鰻(むなぎ)百三十匁(≒500g)
  ・蝦夷地(えぞち)根室(ねむろ)秋刀魚(さんま)飯(めし)、肝附(きもつき)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・大間(おほま)鮪(しび)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)
  ・雉子羽太(きぢはた)
  ・淡路(あはぢ)眞鯖(さば)
  ・星鳗(はかりめ)

菓子(くわし)】:
  ・葡萄(ぶだう)四色(よいろ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 賓得(Pentax)S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.4


"海鞘(ほや)"に惡臭(あしきにほひ)なきことに駭(おどろ)く。
小人(それがし)、生來(うまれてよりこのかた)海鞘(ほや)は得手(えて)とせず。
その縁由(ことのよし)如何(いかに)とならば、
海鞘(ほや)固有(ならでは)の強(つよ)き臭氣(くさみ)にあり。

惡臭(あしきかをり)なき"海鞘(ほや)"は、
纔(わづ)かに、津輕(つがる)『未來』なる家(ところ)で口(くち)にせしのみ。
この日(ひ)の"海鞘(ほや)"はそれに匹敵(ならぶ)。
師傅(おやかた)曰(いへら)く「鮮度(あたらしさ)の相違(たがひ)

"琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)魚凍(ゼリよせ)"の、
尋常(つね)とは異(こと)なる烹調法(たつき)を訝(いぶか)る。
小宮親方(こみやおやかた)應答(いらへ)て曰(いは)く、
因循守舊(マニエリスム)を打破(うちやぶ)らんがため

"蝦夷昆布森(えぞこんぶもり)の蠔(かき)"にも愕(おどろ)く。
これが眞夏(まなつ)の眞蠔(まがき)とは、、、
と、絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。
"蝦夷根室(えぞねむろ)の新秋刀魚(しんさんま)"もまた同樣(しかり)。

百十匁(≒400g)と小振(こぶ)りの"(むなぎ)"は大坂灣(おほざかわん)。
この大(おほ)きさにして、この脂肪(あぶら)。
その美味(あぢ)、口(くち)にせずとも、一目瞭然(ひとめであきらか)
惜(を)しむらくは、肉(み)が薄(うす)く、脆皮(もろきかは)ならざること。

"鮏卵(さけのはらこ)"は(なま)。
その塲(ば)で煮切(にきり)に潛(くゞ)らせ、即坐(すぐさま)鮓(すし)となす
これを臼齒(おくば)に噛(か)みしむるや、
旨味(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

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(さかな)】:
  ・鱸(すゞき)に毛豆(えだまめ)、意太利蕃茄(イタリあかなす)味(あぢ)
  ・江州琵琶湖(あうみびはこ)稚鮎(ちあゆ)魚凍(ゼリよせ)
  ・蝦夷昆布森(えぞこんぶもり)の蠔(かき)
  ・陸奥(むつ)の海鞘(ほや)に生榨菜(なまさくさい)
  ・佐渡島(さどがしま)<魚荒>(あら)+
   蝦夷積丹(えぞしやこたん)紫海膽(むらさきうに)
  ・上総大原(かずさおほはら)黒蚫(くろあはび)+
   播州明石(はりまあかし)章魚(たこ)櫻煮(さくらに)
  ・蝦夷根室(えぞねむろ)の秋刀魚(さんま)
  ・陸州氣仙沼(むつけせんぬま)の鰹(かつを)藁燒(わらやき)
  ・<魚荒>(あら)の骨邊肉(あら)潮汁(うしほじる)
  ・大坂灣(おほざかわん)の鰻(むなぎ)、百十匁(≒400g)

(すし)】:
  ・大間(おほま)の鮪(しび)
  ・佐渡島(さどがしま)<魚荒>(あら)
  ・相州小柴(さがみこしば)の新子(しんこ)
  ・鮏(さけ)肚子(はらこ)

菓子(くわし)】:
  ・加州(かゞ)”ルビーロマン”葡萄(ぶだう)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
この日(ひ)の眼玉(めだま)は、
"淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)"、五百八十六匁(≒2.2kg)。
"(むなぎ)"は霞ヶ浦(かすみがうら)、二百九十三匁(≒1.1kg)。
前囘(まへ)の"兒島灣(こぢまわん)"が半點(いさゝか)上(うへ)歟(か)?

此度(こだみ)うち點頭(うなづ)きしは、"小蕪菁(こかぶら)"への火候(ひいれ)。
そもそも、蕪菁(かぶら)なるもの、
蘿蔔(すゞしろ)とは對照的(ことな)り、火(ひ)の通(とほ)り易(やす)きもの
懐石(くわいせき)・割烹(かつぱう)の蕪菁(かぶら)は過柔(やはらかすぎ)。

愚按(やつがれおもふに)、
和食(わしよく)なら糠漬(ぬかづ)け、
洋食(やうしよく)なら煸炒(ソテ)が吉(よし)。
烹之(これをに)るは蕪菁(かぶら)の個性(もちあぢ)を毀損(そこな)ふばかり。

これに膝(ひざ)を叩(たゝ)き、その情由(わけ)を薀(たづ)ぬれば、
「かゝる火候(ひいれ)を着想(ひらめ)きし契機(きつかけ)、
修業先(わざをならひおぼえしさき)や他家(よそ)に非(あら)ず。」
「寧(むし)ろ、その濫觴(みなもと)、法國菜(ふれんすれうり)にあり。」

實(げ)にも!
當家(こちら)で一際(ひときは)名高(なだか)き"鰻白燒(むなぎ志らやき)":
脆皮(かはサクサクにもろく)、
その身(み)を蕩(とろ)けんばかりに炙(や)くは唯一無二(よそになきもの)

これもまた、法國菜(ふれんすれうり)の秘儀(ひめわざ):
"poêlé(ポアレ)"こそ手本(てほん)・嚆矢(さきがけ)。
能(よ)くこれに倣(なら)ひ、やがて自家藥籠中(みづからのものと)したるは、
嘗(かつ)て、小人(それがし)に物語(ものがたり)せし記憶(おぼえ)あり。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

=======================================
(さかな)】:
 ・吉次(きちじ)煮附(につけ)
 ・炊合(たきあ)はせの類(たぐひ)
   蛸(たこ)、壺盧(ゆふがほ)、小蕪菁(こかぶら)、小薯蕷(こいも)、
   萬願寺蕃椒(まんぐわんじたうがらし)
 ・藝州太田川(あきのくにおほたがは)の香魚(あゆ)、有馬煮(ありまに) 、 
   加州(かゞ)金時草(きんじさう)
 ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、五百八十六匁(≒2.2kg)
 ・蝦夷奧尻(えぞおくしり)の紫海膽(むらさきうに) 
 ・蝦夷噴火灣(えぞふんくワわん)の"めじ"
 ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、潮汁(うしほじる)
 ・霞ヶ浦(かすみがうら)の鰻(むなぎ)、二百九十三匁(≒1.1kg)
 
(すし)】:
 ・新烏賊(しんいか)
 ・鰯(いはし)
 ・星鰈(ほしがれひ)
 ・丹後舞鶴(たんごまひづる)の鮪(しび)
 ・淡路(あはぢ)胡麻鯖(ごまさば)
 ・雞卵燒(かひごやき)

水果(みづぐわし)】:
 ・蕃茄(あかなす)
 ・白桃(もゝ)
 ・櫻桃(さくらんばう)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4
"紅椒(パプリカ)ムウス":
當家(こちら)の招牌(かんばん)とも云ふべき佳餚(よきさかな)
この日(ひ)の溏油(だし、フュメ・ド・ポアソン)は、
<魚荒>(あら)の骨邊肉(あら)より抽出(ひきいだ)せしもの。

これを制作(つく)るには、
西洋時辰儀(せいやうどけい)にして八時間(はちじかん)要(かゝ)ると云ふ。
"魚凍(にこゞり)"と"紅椒(パプリカ)ムウス"が二層(ふたへにをりか)さなり、
實言(まこと)、口(くち)に美味(あまし)!

しかし、この日(ひ)の白眉(きはめつき)は、
"備州(きびのくに)兒島灣(こじまわん)の(むなぎ)"。
百六十匁(≒600g)と小振(こぶ)りであるにもかゝはらず、
膩(あぶら)に富(と)み、旨味(うまみ)四角八方(よも)に炸裂(はじけちる)

やはり、當家(こちら)、
"蒲燒(かばやき)"ではなく、"白燒(志らやき)"が吉(よし)。
首級(みしるし)もまた頗(すこぶ)る味覺(した)に旨(あま)く
貪之(これをむさぼ)りて飽(あ)くことなし。

莫迦貝(あをやぎ、=ばかゞひ):
蝦夷地(えぞち)野附(のつけ)が近會(ちかごろ)の風習(ならひ)なれど、
この日(ひ)は、稀有(いとめづらし)き、桑名(くはな)の莫迦貝(ばかゞひ)。
小柱(こばしら)もまた、その手(て)は桑名(くはな)の大莫迦貝(おほばかゞひ)。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(さかな)】:
 雲州(いづも)高津川(たかつがは)年魚(あゆ)
 紅椒(パプリカ)ムウス+<魚荒>(あら)骨邊肉(あら)の魚凍(にこゞり)
 上総(かづさ)大原(おほはら)黑鰒(くろあはび)に山科蕃椒(やましなたうがらし)
 豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたかれひ)四百八十匁(≒1.8kg)
 利尻(りしり)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
 羽州(では)白神(しらかみ)の蓴菜(ぬなは)
 蝦夷(えぞ)厚岸(あつけし)の眞牡蠣(まがき)に蕃茄醤(あかなすびしほ)
 備州(きび)兒島灣(こじまわん)の鰻(むなぎ) 百六十匁(≒600g)
 豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたかれひ)潮汁(うしほじる)

(すし)】:
 佐渡嶋(さとがしま)の鮪(しび) 廿一貫(≒80kg)
 鰯(いはし)
 肥後(ひご)天草(あまくさ)小鰭(こはだ)
 豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたかれひ)
 佐渡嶋(さとがしま)の鮪(しび)
 その手(て)は桑名(くはな)の大莫迦貝(おほばかゞひ)に小柱(こばしら)
 相州(さがみ)松輪(まつわ)の胡麻鯖(ごまさば)
 佐渡嶋(さとがしま)の鮪(しび) 廿一貫(≒80kg)
 鐵火卷(てつくわまき)

水果(みづぐわし)】:
 蝦夷(えぞ)夕張甜瓜(ゆふばりメロン)
 琉球(りうきう)菠蘿(パインアプル)"タヾヲゴールド"
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
尋常(つね)のことながら、
劈頭(いやさき)から掉尾(いやはて)に至(いた)る惣(すべ)ての品(しな)、
一(ひと)つとして不味(あぢあ)しきもの皆無(なし)
實言(まこと)、「飯足酒飽(ごちさうさまにござる)!」

上總國(かずさのくに)大原(おほはら)。
當地(このち)で(あはび)と云ふと、
鮓店(すしや)が眼精(まなこ)の色(いろ)を變(か)ふる"眼高鰒(まだかあはび)"。
この日(ひ)は大(おほ)きな"黑鰒(くろあはび)"。

一時半(いつときはん、≒3h)ほど酒蒸(さかむ)しせしもの」と云ふ。
"眼高鮑(まだかあはび)"ともまた異(こと)なる風韻(かをり)。
嫩(やはらか)ながらも、適度(ほどよ)き齒應(はごた)へを殘(のこ)す
"たまげ茄子(なすび)"が絶味(このうへなきうまさ)には絶句(ことばをうしなふ)。

扨(さて)、この日(ひ)の白眉(はくび)"星鰈(ほしがれひ)"。
淡州(あはぢ)、八百廿七匁(≒3.1kg)と云ふ大物(おほもの)。
鰈(かれひ)は、大(おほきなるもの)能(よ)く小(ちいさなるもの)を制(せい)す
身(み)佳味(よし)、縁側(えんがは)さらに絶味(よし)。

播州(はりまのくに)三田(さんだ)にも負(ま)けぬ羽州(では)の蓴菜(ぬなは)。
その顏色(いろ)は翡翠(ひすい)かと疑(うたが)はれ、
その舌觸(したざは)りの滑(なめ)らかさたるや、
極樂淨土(ごくらくじやうど)の果凍(にこゞり)もかくやあらん」と思(おも)ふほど。

季(とき)至(いた)らず、色(いろ)なほ淡(あは)き"西瓜(すいか)"。
因州(いなば)・伯州(はうき)の山海(うみやま)の僥倖(さち)を用(つか)ひ、
これを割烹(さきてに)るを活業(なりはひ)とする方(かた)よりの音物(おくりもの)。
訝(いぶか)りつゝ口(くち)にするや、驚異的(おどろくばかり)の甜(あまさ)

因(ちな)みに、この日の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(さかな)】:
 芋莖(ずいき)+伏見(ふしみ)黒毛荳(くろえだまめ)+荏胡麻(えごま)
 上總(かずさ)大原(おほはら)黑鰒(くろあはび)+"たまげ茄子(なすび)"
 芝蔴淮南子(ごまどふふ)+羽州(では)蓴菜(ぬなは)
 淡州(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、八百廿七匁(≒3.1kg)
 蝦夷(えぞ)餘市(よいち)の鮟鱇肝(あんきも)
 相州(さがみ)佐島(さじま)の章魚(たこ)
 土州(とさ)四万十川(しまんとがは)の手長蝦(てながえび)
 九十九里(くじふくり)朝鮮蛤(てうせんはまぐり)の潮汁(うしほじる)
 備前(びぜん)兒島湖(こじまこ)の鰻(むなぎ)、百廿八匁(≒480g)

(すし)】:
 淡州(あはぢ)の星鰈(ほしがれひ)、八百廿七匁(≒3.1kg)
 紀州(きい)那智勝浦(なちかつうら)の鮪(しび)、廿一貫三百匁(≒80kg)
 陸前(りくぜん)閖上(ゆりあげ)の赤貝(あかゞひ)
 星鰈(ほしがれひ)潮汁(うしほじる)
 荳州(いづ)式根島(しきねじま)の縞鰺(しまあぢ)
 紀州(きい)那智勝浦(なちかつうら)の鮪(しび)、廿一貫三百匁(≒80kg)
 淡路(あはぢ)の眞鰺(まあぢ)
 帆立貝(ほたてがひ)
 有明灣(ありあけわん)の小鰭(こはだ)
 紀州(きい)那智勝浦(なちかつうら)の鮪(しび)、廿一貫三百匁(≒80kg)
 奧州(むつ)馬糞海膽(ばふんうに)

水果(みづぐわし)】:
 紅毛(こうまう)阿蘭陀(おらんだ)の草莓(いちご)
 日向(ひむか)の芒果(まんご)
 因州(いなば)or伯州(はうき)の西瓜(すいか)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
獅子(しゝ)の食殘(たべのこ)しを鬣狗(たてがみいぬ)が咋(くら)ひ、
鬣狗(たてがみいぬ)の剩餘(あまり)は禿鷲(はげわし)が銜(ついば)む。
これ、獸(けだもの)が世(よ)の風習(ならひ)。
この晝飧(ひる)の小人(それがし)は正(まさ)しく"禿鷲(はげわし)"。

"<魚荒> (あら)"、"葡萄蝦(ぶだうえび)"、"宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)"、
と、前日(まへのひ)の殘留物(のこりもの)には、
美味(うまきもの)・珍味(めづらしきも能)の數々(かずかず)
殘留物(のこりもの)には福(ふく)があり、肩(かた)の凝(こ)りには"●●メルツ"。

最初(いやさき)に"毛蟹(けがに)白瓜卷(しろうりまき)"。
黄身酢(きみず)の圓(まろ)やかさに駭(おどろ)く。
千鳥酢(ちどりす)は出汁(だし)にて割(わ)るりたるものと云ふ。
尋常(つね)のことながら、優(やさ)しき味(あぢはひ)。

當家(こちら)の玄關先(げんくわんさき)に山椒(さんせう)の木(き)あり。
この日(ひ)、木の芽(きのめ)はこの木(き)より摘(つ)み、
潮汁(うしほじる)の吸口(すひくち)としてあしらふ。
若(わか)く嫋(たを)やかなる風韻(かをり)。

築地市場(つきぢ)には稀有(まれ)なる"葡萄蝦 (ぶだうえび)":
標準和名(たゞしくは)、"緋衣蝦 (ひごろもえび)"。
本來(もともと)の"葡萄蝦(ぶだうえび)"は、
駿河灣(するがわん)にて極稀(きはめてまれ)に漁(すなど)らるゝものと云ふ。

"牡丹蝦(ぼたんえび)"同樣(と、おなじく)、
"踊(をど)り"では甜(あまさ)を難感(わかりがた)く
死(し)ゝて權(しばらく)置(お)き、膠粘(ねば)るほどが吉(よい)」。
慥(たしか)に、味(あぢ)は"牡丹蝦(ぼたんえび)"に似(に)る。

"雲州宍道湖(いづものくにしんじこ)の(むなぎ)":
百九十匁(ひやくきふじふもんめ、≒600g)斗(ばかり)なれど、
脂肪(あぶら)があり、旨味(うまみ)に富(と)む。
疑念(うたがひ)もなく、今季一(こんきいち)

(に)る」、「(や)く」が多(おほ)き"赤鯥(あかむつ)":
鮓種(すしだね)としてもなかなかのもの。
豫想(おもひ)に秋毫(つゆ)と相違(たがは)ぬは、
"賀茂茄子(かもなす)"、"琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)"の美味(うまさ)。

最後(いやはて)に、
四種(よくさ)にも及(およ)ぶ"水果(みづぐわし)";
佐藤錦(さたうにしき)、日向(ひむか)芒果(まんご)、臺灣茘枝(たいわんれいし)、
冰酪(あいすくりん)、これなり。

因(ちな)みに、この日の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(さかな)】:
 毛蟹(けがに)白瓜卷(しろうりまき)
 厚岸(あつけし)眞牡蠣(まがき)
 賀茂茄子(かもなす)
 燻(いぶし)鮟鱇肝臟(あんきも)
 宍道湖(しんじこ)鰻(むなぎ)
 琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)有馬煮(ありまに)
 <魚荒>(あら)
 芋莖(いもがら)に榮螺(さゞえ)
 <魚荒>(あら)潮汁(うしほじる)
 琵琶湖(びはこ)鰻(むなぎ)

(すし)】:
 鮪(しび)
 虎魚(おこぜ)
 鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
 竹岡沖(たけおかおき)赤鯥(あかむつ)
 舞鶴(まひづる)殼附(からつき)鳥貝(とりがひ)
 "緋衣蝦(ひごろもえび)"、俗稱(よにいふ)"葡萄蝦(ぶだうえび)"
 眞鯖(さば)藁燒(わらやき)
 障泥魷魚(あふりいか)
 鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)
 蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)

水果(みづぐわし)】:
 佐藤錦(さたうにしき)、日向(ひむか)芒果(まんご)、臺灣茘枝(たいわんれいし)、
 冰酪(あいすくりん)

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Macro Elmarit R 2.8/60 @F2.8
      萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Super Angulon R 4/21 @F8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
夏(なつ)も近(ちか)づき、
誘(さそ)はれて、"山菜(さんさい)盡(づ)くめ"の旅(たび)に出(い)づ。
野獸肉(のゝけだものがしゝ)も加(くは)へ、
山幸(やまさち)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはひつくしぬ)。

楤芽(たらのめ)、漉油 (こしあぶら)、(こゞみ)、(わらび)、老茸 (くろかは)、
蕗薹(ふきのたう)、(ふき)、行者大蒜 (ぎやうじやにんにく)、野蒜 (のびる)、
山獨活(やまうど)、山五加(やまうこぎ)、二輪草(にりんさう)、藤花(ふじのはな)、
花筏 (はないかだ)、花山椒(はなざんせう)、蒲公英(たんぽゝ)、などなど。

東都(えど)に囘(かへ)りて二日後(ふつかのゝち)の宴會(うたげ)。
この日(ひ)もまた山菜(さんさい)塗(まみ)れ。
花山椒(はなざんせう)に加(くは)へ、
漉油 (こしあぶら)、堅香子(かたかご)、芋莖(ずいき)、大葉擬寶珠(おほばぎぼし)。

季(とき)を得(え)たる魚介(うを・かひ)として、
銀寶(ぎんぱう)、城下鰈(しろしたがれひ)、初鰹(はつがつを)、稚鮎(ちあゆ)、
鳥貝(とりがひ)、その手(て)は鹿島(かしま)の燒蛤(やきはまぐり)。
因(ちな)みにこの蛤(はまぐり)は斧文蛤(てうせんはまぐり)。

銀寶(ぎんぱう)への火候(ひいれ)は完璧(ひとつとしてあやまちなし)
加熱(ねつがくは)ゝり、膠原纖維(こらあげんせんゐ)が明膠(ぜらちん)と化(な)り、
臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふことなく、咽喉(のみど)に踊(をど)る
星鳗(あなご)に勝(まさ)るとも劣(おと)らぬ美味(よきあぢ)。

鳥貝(とりがひ)と城下鰈(しろしたがれひ)の肝臟(きも)と云ふ、
駭(おどろ)くべき搭配(くみあはせ)。
實(げ)に、「爲虎傅翼(とらにつばさをそふるがごとし)」。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

詳細(くはし)くはこちらを御覽(ごらん)あれ!
https://tabelog.com/rvwr/giblets/rvwdtl/B27568416/#67773091

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
「今(いま)を盛(さか)り」と、
彼此(をちこち)に咲(さ)き誇(ほこ)る櫻花(さくら)。
折(をり)しも、張替(はりかへ)たばかりの疉(たゝみ)に心躍(こゝろをど)らせ、
隅(すみ)の席(むしろ)に一安堵(ひとおちゐ)。

"塚原白子筍(つかはらしらこだけ)"、
"琵琶湖(びはこ)、子持(こも)ち本諸子 (ほんもろこ)、
四万十川(しまんとがは)の近江葦登 (ごり、=あふみよしのぼり)"、
"滑川螢烏賊(なめりかはほたるいか)"、"駿河灣櫻蝦(するがわんさくらえび)"など。

體長(みのたけ)、三寸五分(さんずんごぶ)を超(こ)え、
四寸(よんすん)に垂(なんな)んとする"本諸子(ほんもろこ)":
備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)り、その儘(まゝ)貪(むさぼ)り餐(くら)ふ。
實言(まこと)、美味也(よきあぢなり)!

"塚原白子筍(つかはらしらこだけ)"は勿論(いふもさらなり) 。
"若筍煮椀(わかたけにわん)"美味(よし)、
"筍豆腐(たけのこどうふ)"を木芽未醤(きのめみそ)にて啖(くら)ふもまた吉(よし)。
「筍(たけのこ)では、"合馬(あふま)"と雙璧(ふたつにならぶ)」との定評(はなし)。

巧妙(たくみ)に油炸(あ)げられたる"螢烏賊(ほたるいか)"に"櫻蝦(さくらえび)":
"螢烏賊(ほたるいか)"の天麩羅(てんぷら)は初(はじめて)。
火候(ひいれ)絶妙(ほどよ)く
膓(わた) もまた複雜玄妙(ふかくいつくしみあるあぢはひ)

勿論(いはずもがな)の"櫻蝦(さくらえび)":
"櫻蝦(さくらえび)"天麩羅(あ)ぐる舖(みせ)夥(あまた)あれど、
寸毫(つゆ)雞卵(かひご)に頼(たよ)らで
最上質(いとよ)き麪粉(うどんこ)を薄衣(うすごろも)に用(つか)ふ

尋常(つね)のごとく、
頗(すこぶ)る美味(うま)き"薩州出水(さつしういづみ)の眞鰺(まあぢ)":
瓩(きろ)七千圓(なゝせんゑん)と云ふ。
その價格(ね)、野生鰻(てんねんむなぎ)に肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss)C Sonnar T* 1.5/50 ZM @F2.5
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影))
平身低頭(をがみたふ)し、半(なか)ば無理強(むりじ)ひすることにより、
漸(やうや)う實現(とゝの)ひし、「甲魚(すつぽん)盡(づく)し」の宴會(うたげ)。
天降川(あもりがは)の天然物(てんねんもの)は唐揚(からあげ)、
服部中村養鼈場(はつとり)のものは(わん)と肝臟刺身(きもさし)に、、。

その他(ほか)、
琵琶鰉 (びはひがい)、鳴門鯛(なるとだひ)、明石章魚(あかしだこ)、
箱館(はこだて)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)、銚子(てうし)の梶木(かぢき)、
陸中(りくちゆう)(さはら)、山城(やましろ)菜花(なばな)などなど。

小宮親方(こみやおやかた)歎息(ためいきつ)きて云ふやう:
隈(くま)なく魚河岸(かし)一帶(あたり)を探索(さがしもと)むれど
琵琶湖(びはこ)の"諸子 (もろこ)"、"稚鮎(ちあゆ)"、
絶(た)えてその姿(すがた)を見(み)ず!

「已(や)むことを得(え)ずして、この" (ひがい)"なる魚(うを)に、、」
との辯明(はなし)。
勿驚(おどろくなかれ)、
吾儕(わなみ)のみならず、親方(おやかた)も初(はじめて)となむ。

今(いま)は昔(むかし)、
明治天皇(めいじのすめらみこと)、これを大(おほ)いに賞賛(ほめたゝ)へたまひ、
後世(のち)、
"ひがい "に""なる字(じ)を當(あ)てるやうになりき、との故事(はなし)あり。

これを炭火(すみび)に炙(あぶ)りて"鹽燒(しほや)き"となす。
香魚(あゆ)固有(ならでは)の芳香(かぐはしきかをり)こそなけれ、
その身(み)の肌理細(きめこまか)さ、嫋(たを)やかさたるや、
若年魚(わかあゆ)に肉薄(せま)るほど。

但(たゞ)し、骨(ほね)の硬(かた)さは"杜父魚 (かじか)"竝(なみ)。
(あゆ)も、諸子 (もろこ)も、近江葦登 (あふみよしのぼり、=ゴリ)も、
悉(ことごと)く琵琶湖(びはこ)の財(たから)
琵琶湖(びはこ)、必守(かならずまもるべし)!

鳴門(なると)の"眞鯛(まだひ)":
その重量(めかた)、五百卅匁(ごひやくさんじふもんめ、≒2kg)ばかり。
捌(さば)くや、鳴門骨 (なるとこぶ)も顯著(あらは)。
皮(かは)と皮下(かはした)の旨味(うまみ)に驚愕(おどろく)。

扨(さて)、"水魚(すつぽん)":
"油炸(からあげ)"好吃(よし)、"肝臟刺身(きもさし)"美味(よし)、
"(わん)"また佳味(よし)。
その味(あぢはひ)、先頃(さきごろ)訪問(たづ)ねし『』より上(うへ)か?

(わん)は、平生(つね)のごとく、
調味料(あぢつけ)は、纔(わづ)かに、淡口醤油(うすくち)と(さけ)のみ。
昆布(こんぶ)に頼(たよ)らで、生薑(はじかみ)の佐(たす)けを受(う)けず。
裙邊(えんぺら)に、陶然(われをわす)ること霎時(しばし)。

久方(ひさかた)ぶりの"雞卵燒(たまごやき)":
燒(や)き方(かた)は、毎囘(そのつど)隱々(かすか)に搖(ゆ)らぎ
その搖(ゆ)れを心持(こゝち)よきものとして堪能(あぢはふ)
この日(ひ)は、瑞々(みづみづ)しく、柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
      旭光學 smc 賓得(Pentax) A☆ 1.4/85 @F2
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影))
この日(ひ)は、
舊友(ふるきとも)との新年會(あらたしきとしをことほぐうたげ)。
菜(れうり)の内容(うちわけ)は冩眞(ゑ)のごとし。
掃愁帚(さけ)を含(ふく)め、一萬四千圓也(いちまんよんせんゑんなり)。

今春(ことし)より、柳刄(やなぎば)は、
堺(さかい)の鍛冶名匠(かじのたくみ)の手(て)になる、
本燒(ほんやき)鏡面仕上(きやうめんしあ)げとなる。
掛軸(かけじく)を髣髴(おもは)す桐筥(きりばこ)入(い)り。

明石(あかし)の"眞鯛(まだひ)":
六百七十匁(ろうぴやくなゝじふもんめ、=2.5kg)。
仲卸(なかおろし)より、態々(わざわざ)"星鰈(ほしがれひ)"を避(さ)け、
選(え)りすぐりたるほどの逸品(よきしな)。

刺身(さしみ)、潮汁(うしほじる)、(すし)、何(いづ)れも、
筆舌(ふでやことば)で(つ)くせぬ美味(うま)さ。
眞鯛(まだひ)は五百匁(ごひやくもんめ、=1.9kg)ばかりが最善(よい)
とは云ふものゝ、この日(ひ)の"眞鯛(まだひ)"は別格(とびきり)。

雲州(いづも)の"活(い)け松葉蟹(まつばがに)":
三百五十匁(さんびやくごじふもんめ、=1.3kg)の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり)。
備長炭(すみ)に炙(あぶ)りて甜(あま)さを堪能(あぢは)ひ
茹(ゆ)でゝ蟹内臟(かにみそ)と和(あ)へ絶味(すばらしきあぢ)に陶然(ゑふ)

"(さはら)"の藁燒(わらやき):
尋常(つね)に倣(なら)ひて、大蒜醤油(おほひるじやうゆ)を塗(まぶ)す。
めじ(ぶり)、(かつを)に優(まさ)るとも劣(おと)らぬ味(あぢはひ)。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
【2016-12-04追記】:
利尻羅臼眞昆布利尻へと囘歸(もどる)。
この日の舎利は米醋(よねず)。
活車蝦(いきくるまえび)の雞卵焼(たまごやき)、美味(よきあぢ)なり。

【2016-10-01追記】:
昆布(こんぶ)が利尻(りしり)から羅臼(らうす)に、、。

【2016-07-30追記】:
竹岡沖(たけおかおき)銀寶(ぎんぱう)、桑名(くはな)の(しゞみ)など、、。

【2016-04-10追記】:
走(はし)りの花山椒(はなざんせう)を愉(たの)しむ。
白身(しろみ)も(しび)も、眞鰺(あぢ)、鶏卵焼(たまごやき)も、
うを徳』、『与志乃』を凌駕(はるかにしのぐ)。
以爲(おも)ふに、『与志乃』が雋(すぐ)るは”穴子(あなご)”のみ。

此度(こだみ)は新規(あらた)なる試行(こゝろみ)あり。
 1)鮟鱇肝(あんきも)を燻(いぶ)す。     ※美味(うまし)
 2)敢(あ)へて章魚(たこ)を叩(たゝ)かず。 ※臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふ

【2015-11-08追記】:
倩(つらつら)當家(こちら)の菜(れうり)を惟(おもんみ)るに、
二(ふた)つの弱點(よはみ)ありき。
一(ひと)つは、魚(うを)炙(あぶ)るに、瓦斯(がす)に頼(たよ)ること。
今一(いまひと)つは、舎利(しやり)。

已(すで)に、舎利(すめし)の大(おほ)きさ水分量(みづけ)は改(あらた)まり、
此度(こだみ)は、米醋(よねず)より紅醋(あかず)へと變更(きりかへ)。
口(くち)に含(ふく)むや、鳳仙花(ほうせんくわ)のごとくに四散(ほどけち)り、
瞬(またゝ)く中(うち)に臼齒(おくば)より吭(のみど)に到達(いた)る。

瓦斯(がす)より備長炭(びんちやうたん)への轉換(きりかへ)は、
來年(きたるとし)の早々(はじめ)。
東道(あるじ)曰(いへら)く、「馨(かをり)の佳(よ)さは、炭(すみ)ならでは。」、
「吾(われ)、漸(やうや)う、瓦斯(がす)の限界(かぎり)を曉得(さと)れり。」

"(しほ)ぽんす"に"橙鹽(だいだいじほ)"も新(あら)たなる試行(こゝろみ)。
鹽(しほ)は法蘭西(ふらんす)ゲランド産(さん)。
とまれ、若(も)し、二(ふた)つの弱點(よはみ)解消(きえう)さば
忽地(たちまち)、理想(のぞむべ)き姿(すがた)の舗(みせ)となるべし。

【2015-09-28追記】:
龜戸(かめゐど)の御大盡(おだいじん)が希望(のぞみ)に從(したが)ひ、
この度(たび)、新設(あらたにまうけ)し"御大盡(おだいじん)コース"。
"丹州(たんば)の松茸(まつたけ)"など、價格(ね)の張(は)るものがザクザク
無縁(ゆかりなし)とは云へ、金二萬圓也(きんにまんゑんなり)。

最初(いやさき)は"茸盡(きのこづ)くし":
松茸(まつたけ)、本占地(しめぢ)、黒茸(くろたけ)、舞茸(まひたけ)。
徒(いたづら)に出汁(だし)の勝(か)つことのなき佳味(よきあぢ)
丹州(たんば)の松茸(まつたけ)は纔(わづ)かばかりを味見(あぢみ)。

旨味(うまみ)彈(はじ)くる蝦夷利尻(えぞりしり)(ひらめ)の縁側(えんがは)。
羽州八郎潟(ではゝちらうがた)の(むなぎ)は四百五十匁。
この日(ひ)は、敢(あ)へて齒應(はごた)へを殘(のこ)す烹調法(やりかた)
噛(か)むほどに、美味(うまみ)溢れて、口中(くちのなか)へど浮騰(ほとばし)る

薩州(さつま)出水(いづみ)の眞鰺(あぢ)も、この日(ひ)は酢〆(すじめ)。
しみづ』、かつて四谷(よつや)に在(あ)りし『』を彷彿(おもはす)。
倩(つらつら)(むなぎ)、眞鰺(あぢ)を瞻(み)るに、小宮親方(おやかた)、
近來(ちかごろ)は、無人境(ひとなきところ)を獨行(ゆ)くがごとし

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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @1.8~2.0

【2015-03-14追記】:
近會(ちかごろ)、俄頃(にはか)に若(わか)き客(きやく)が増(ふ)へ、
剩(あまッ)さへ、異人客(いじんきやく)までと云ふ形勢(ありさま)
古(ふる)くからの客(きやく)、地元(ぢもと)の民(たみ)が行(ゆ)きづらくなるは
致(いた)し方(かた)のなきところか、、、。

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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:...蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZK @F2.0

【2013-09-20追記】:
鯵ヶ澤(あぢがさは)の[魚荒](あら)、大原目高鰒(まだかあはび)、などなど。
[魚荒](あら)は久繪(くゑ)にあらず。
姿形(すがた)は(すゞき)に似(に)、口味(あぢ)は眞鯛(まだひ)を髣髴(おもはす)。
頗(すこぶ)る美味也(びみなり)!

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【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 @F2.0 (By Sony)

【2013-05-25追記】:
"茄子(なす)の揚(あ)げ浸(びた)し"、"淡竹(はちく)に水菜(みづな)"など。
(むなぎ)は琵琶湖(びはこ)。
"城下鰈(しろしたがれひ)"は指身(さしみ)、潮汁の三種(みくさ)。
〆は"能登大納言(のとだいなごん)のアイス"。

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【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :東蔡(Carl Zeiss Jena) 紅MC Pancolar 1.8/50 @F2.4

【2013-03-10追記】:
此度(こだみ)は琵琶湖(びはこ)の"いさゞ"、"諸子(もろこ)"など。
頗(すこぶ)る美味(びみ)也。
名殘(なご)りの"(ふぐ)"に"炙(あぶ)りめじ"また佳(よ)し。
目新(めあたら)しきは岩手(いはて)の"雁喰豆(がんくひまめ)"。

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【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :Kern Macro Switar 1.8/50 @F2.0

【2012-07-21追記】:
フィレンツェ茄子(なす)+ズッキーニ(しろ)バルサミコ
濱名湖(はまなこ)の(むなぎ)、百七十三匁(=650g) 、
球磨川(くまがは)の(すつぽん)、二百六十七匁(=1000g)、
小川原湖(おがはらこ)の(ごり)有馬煮(ありまに)、などなど。

【2012-07-07追記】:
武州羽根田(ぶしうはねだ)の鰻(むなぎ)、百卅匁(ひやくさんじふもんめ、=500g)。
脂(あぶら)こそ少(すく)なめなれど舌觸(したざは)り頗(すこぶ)る滑(なめ)らか。
古來(いにしへより)、江戸前海(えどまへうみ)の鰻(むなぎ)はを盛りとす。
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)!

【2012-06-23追記】:

【2012-06-10追記】:
この日は京師(みやこ)より東下(あづまくだ)りせし師匠(おやかた)と鉢合せ。
小宮(こみや)親方(おやかた)を交(まじ)へ四方山話(よもやまばなし)に花(はな)。
鰻(むなぎ)のほどよき大(おほ)きさ、海鰻(はむ)の産地(さんち)は勿論(いふにおよばず)、
師匠(おやかた)生(む)まれし能登(のと)の魚(うを)などとゞまるところを知らず。

【2012-05-26追記】:
胡麻鰒(ごまふぐ)の白子、豐後(ぶんご)三隅川(みくまがは)の香魚(あゆ)、
雲州(うんしう)中海(なかうみ)の二百十三匁(にひやくじふさんもんめ、=800g)、
賀茂茄子(かもなす)の田樂(でんがく)、淡路(あはぢ)の牡丹海鰻(ぼたんはむ)、
明石(あかし)の小豆羽太(あづきはた)、大原目高鮑(おほはらまだかあはび)など。

【2012-05-12追記】:
喜界嶋(きかいじま)大名笋(だいみやうだけ)、琵琶湖二百十匁、
石川芋(いしかはいも)、明石鯛(あかしだひ)、江戸灣(えどわん)の鳥貝
四万十川(しまんとがは)の(ごり)、大和丸茄子(やまとまるなす)など。
出水(いづみ)と淡路(あはぢ)の眞鰺(まあぢ)比(くら)べも、、。

【2012-05-04追記】:
此度(こだみ)は、遠州濱名湖(ゑんしうはまなこ)の(むなぎ)、百六十匁、
豐州(ほうしう)城下鰈(しろしたがれい)五百卅三匁(ごひやくさんじふさんもんめ)など。
江戸灣(えどわん)の穴子(あなご)に大車蝦(おほくるまえび)はひさかたぶりの品。
紅椒(ぱぷりか)ムウスに咖啡(こおふィ)葛切(くづき)りは鮓屋らしからぬ品。

【2012-04-21追記】:
今季(こんき)の初鰻(はつむなぎ)は、備州兒嶋湖(びしうこじまこ)。
大約(およそ)一百三十匁(いつぴやくさんじふもんめ、=500g)と小振(こぶ)り。
脂(あぶら)も少なく、龝(あき)盛りの鰻(むなぎ)とは雲壌(うんじやう)の相違(たがひ)。
しかはあれど、これぞ正眞正銘(まがふかたなき)天然物(てんねんもの)。

この日(ひ)の白眉(はくび)は"コンソメ"に"蕨餠(わらびもち)"。
"コンソメ"は牛脛肉芹菜(せろり)、洋葱迷迭香(ろーずまり)など、
菜蔬(あをもの)・香艸、胡椒百里香(たいむ)など香辛料(かうしんれう)を加へ、
さらに鳴門鯛(なるとだひ)骨邊肉(あら)の潮汁(うしほじる)を加へたる逸品(しな)。

居多(あまた)洋食屋ですら尻込みする"コンソメ"に挑(いど)むとは見上げたもの。
最初(いやさき)の"コンソメ"より初鰻(はつむなぎ)、(にぎ)りを經(へ)て、
最後(いやはて)は本蕨粉(ほんわらびこ)にて製(こしら)へたる"蕨餠(わらびもち)":
上にかゝるは丹波黒豆黄粉(きなこ)にて、その旨さ、勿論(いふもさら)なり。

【2012-04-07追記】:
この日の目當(めあ)ては今季初塚原(つかはら)の"白子筍(しらこだけ)"に、
"備州(びしう)白小豆(しろあづき)"の"水羊羹(みづやうかん)"。
偶(たまさ)か、朝〆(あさじめ)したる鳥羽(とば)の"星鰈(ほしがれひ)"と、
これまた今季初、肥州八代(ひしうやつしろ)の"(すつぽん)"も、、。

倩(つらつら)筍(たけのこ)の優劣(いうれつ)を考察(かんがみ)るに、
塚原(つかはら)の"白子筍(しらこだけ)"は、
"長岡京(ながおかきやう)"の筍(たけのこ)と比(くら)べても、一枚上手なるべし。
寸毫(つゆ)えぐみや癖の類(たぐひ)あらで、寔(まこと)、筍の頂點(いたゞき)

鳥羽(とば)の"星鰈(ほしがれひ)":
縁側(えんがは)もさることながら、 潮汁(うしほじる)の出來榮えが類稀(たぐひまれ)。
半月前(はんつきまへ)の明石鯛(あかしだひ)を凌(しの)ぎ、
一月前(ひとつきまへ)の"城下鰈(しろしたがれひ)"に竝(なら)ぶほどの美味(うまきあぢ)。

五百卅匁(=2kg)と云ふ"鼈(すつぽん)"は肥州八代(ひしうやつしろ)の産。
半晌(はんとき、=1時間)かけて鍋(なべ)に仕立(した)てたるものにて、
震旦(もろこし)の佳き清湯(すましゞる)か上質のコンソメを髣髴(おもはす)。
惜(を)しむらくは、身(み)頗(すこぶ)る硬(かた)く大味(おほあぢ)なること。

"薩州出水(さつしういづみ)眞鰺"の甘美(うま)さは勿論(いふもさら)なり。
扨(さて)、"備州白小豆(しろあづき)"の"水羊羹"に"黒豆あいすくりん":
實(げ)に、鮨屋(すしや)で供(いだ)すものとも思(おも)はれぬ出來(でき)。
就中(わきても)、"あいすくりん"は居多(あまた)卵黄ヴァニラビンズが光る一品。

【2012-03-25追記】:
此度(こだみ)は、長岡京(ながおかきやう)の稚鮎明石鯛など。
閖上(ゆりあげ)の赤貝(あかゞひ)は『峯八』に續き、大地震(おほなゐ)の後二度目。
明石鯛(あかしだひ)は子持ちにて、やはり龝(あき)の紅葉鯛(もみぢだひ)に分。
待ち遠しきは塚原(つかはら)の"白子筍(しらこだけ)"。

牛乳(うしのちゝ)を吉野葛にて固(かた)めたる"牛乳豆腐(ぎうにゆうどうふ)"が、
この日の白眉(はくび)。
生の米粒(こめつぶ)のごとき塊(かたまり)を訝(いぶか)しく思ひ、これを問(と)ふと、
「自(みづか)ら編出(あみいだ)せしものにて、葛(くづ)の粒(つぶ)にてござる」と。

【2012-03-11追記】:
銀寶(ぎんぽう)、山獨活(やまうど)、、走りの明石櫻鯛(さくらだひ)。
それに、琵琶湖(びわこ)の"もろこ"。
潮汁(うしほじる)は時季(じき)も向去(さりなん)とする(ひらめ)。
小振(こぶ)りなれど、口味(あぢ)はなかなかのもの。

【2012-02-19追記】:
漸(やうや)う生業(なりはひ)からも解放(ときはなた)れ、この日久々の『うを徳』。
最初(いやさき)は椀(わん)。
雲子(くもこ)、菜花(なのはな)、蘿蔔(すゞしろ)、吸口(すひくち)は柚子。
"淀蘿蔔(よどだいこん)"と號(よびな)す聖護院蘿蔔(しやうごいんだいこん)の一つ。

とは云へ、この日(ひ)の白眉(はくび)は"城下鰈(しろしたがれひ)"。
身(み)は二百四十匁(にひやくよんじふもんめ、900g)と聊(いさゝ)か小振(こぶ)り。
この日の旦(あさ)活け〆にしたばかりなれば、旨味(うまみ)乏(とも)しきは明白(あきらか)。
さらば、亭主(あるじ)の捌(さば)く姿(すがた)を虚(うつ)ろに眺(なが)む。

刺身(さしみ)を箸(はし)に取(と)り、ゆるりこれを吟味(あぢは)へど、
冬の青森鮃(あをもりひらめ)、龝(あき)の明石鯛(あかしだひ)を仰(あふ)ぎ見、
星鰈(ほしがれひ)、否、高名(なだか)き鮨店(すしや)の眞子鰈(まこがれひ)にも劣る。
時季(じき)に外れ、身の締まり、香氣(かをり)、旨味(うまみ)ともに今一つ

"城下鰈(しろしたがれひ)"と云ふは遍(あまね)く知(し)らるゝごとく、
豐後(ぶんご)は城下海岸(しろしたのはま)にて漁(すなど)らるゝ眞子鰈(まこがれひ)。
まともに口(くち)にするはこれが初(はじめて)。
求むるまでもなく、阿吽(あうん)の呼吸(いき)にて供(いださ)れし"潮汁(うしほじる)"。

上面(おもて)には珠(たま)のごとき油脂(あぶら)が浮(う)かみ、
湯氣(ゆげ)とゝもに、芳香(かぐはしきかをり)四方(よも)に漂(たゞよ)ふ。
これを口に含(ふく)むに、ほどよき鹽加減(しほかげん)と無限(かぎりな)き旨味
味覺(した)を搖(ゆ)さぶり、鼻竅(はな)を穿(うが)ち、吭(のんど)を貫(つらぬ)く

想定外(おもひのほか)に柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか。
これを噛み締むれば、奧齒(おくば)に抗(あらが)ふ方策(すべ)もなく蕩(とろ)け、
骨(ほね)の周圍(まはり)より旨味(うまみ)滾々(こんこん)と溢(あふ)れ出(い)づ
これを舐(ねぶ)り、慈(いつく)しみ、最後(いやはて)の一滴(ひとしづく)まで飮み干す

およそ、鮃(ひらめ)の骨邊肉(あら)なるは、
朝(あさ)〆なれば硬(かた)く、舌に逆らひ、:旨味(うまみ)乏(とも)しきもの
日を置くに從(したが)ひ旨味(うまみ)を増し、味はひを深(ふか)むるが通例(つね)
眞鯛(まだひ)また然(しか)り。

俗(よ)に鮃(ひらめ)は生で啖(くら)ふがよく、鰈(かれひ)は煮るが何よりと云ふ。
とは云へ、大(おほ)きなる眞子鰈(まこがれひ)は鮃(ひらめ)に似(に)て、
煮ては舌(した)に逆(さか)らひ、鮨(すし)・刺身(さしみ)に好適(む)く。
この日の鰈(かれひ)は鮃・眞鯛と云ふより鮎魚女(あゆなめ)に彷彿(さもにたり)。

【2012-01-01追記】:
■□■□謹賀新年■□■□、御節料理
2012-01-01日記に、、。

【2011-12-19追記】:
2011-12-19日記に、、。

【2011-12-10追記】:
2011-12-10日記に、、。

【2011-11-20追記】:
2011-11-20日記に、、。

【2011-11-09追記】:
2011-11-07、11-09日記に、、。

【2011-10-29追記】:
2011-10-29日記に、、。

【2011-10-19追記】:
備前(びぜん)兒嶋湖(こじまこ)の蝦蛄鰻(しやこむなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-10-19日記に、、。

【2011-10-08追記】:
綸子(りんず)”天草緑川(みどりかは)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-10-08日記に、、。

【2011-09-29追記】:
琵琶湖(びわこ)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-09-29日記に、、。

【2011-09-22追記】:
宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-09-22日記に、、。

【2011-09-10追記】:
球磨川(くまがは)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-09-10日記に、、。

【2011-09-04追記】:
此度(こだみ)は、『とよみつひめ』なる新種(しんしゆ)無花果(いちじく)。
殘(のこ)りは2011-09-04日記に、、。

【2011-08-18追記】:
土州(としう)鏡川(かゞみがは)の(すっぽん)。
生姜(はじかみ) を加(くは)へず、掃愁箒(さけ)も嘗(かつ)ての三分(さんぶん)の一(いち)。
纔(わづ)かな臭(くさ)みこそあれ、なかなかのもの。
鼈裙(えんぺら)、頭(かうべ)も、、。

殘(のこ)る冩眞(しやしん)は2011-08-18日記に、、。

【2011-08-10追記】:
四万十川(あゆ)、佐島(さじま)の章魚櫻煮(さくらに)、土州(としう)の鰹、
蝦夷地(えぞち)釧路(くしろ)の秋刀魚(さんま)など。
家苞(いへつと)ゝして『ばらちらし』。
秋刀魚(さんま)は身(み)も膓(わた) もなかなかの旨(うま)さ。

殘(のこ)る冩眞(しやしん)は2011-08-10日記に、、。

【2011-07-03追記】:
此度(こだみ)の白眉(はくび)は紅椒(ぱぷりか)のムウス
眞子鰈(まこがれひ)のあらより出汁(だし、"Fumet de poisson")を引(ひ)き、
牛(うし)の出汁(だし、"Consommé de bœuf")を併(あは)せ六日(むいか)かけたものと云ふ。
紅椒(ぱぷりか)の苦味)、凝乳(くりいむ)のまろやかさ、ほどよき鹽氣(しほけ)と非のうちどころなし。

握りとして、茹で上げ蝦蛄(しやこ)、三枚漬(さんまいづ)けの新子(しんこ)、
大原の蒸鮑(むしあはび)、明石鯛、佐島(さじま)の章魚(たこ)櫻煮(さくらに)など。
で上げ蝦蛄に舌鼓(したつゞみ)を打つは大約(およそ)一年(ひとゝせ)ぶり。
時季(じき)の穴子(あなご)はまづまづ。

【2011-06-15追記】:
此度(こだみ)は、『四万十川香魚(あゆ)』、『北上川山女(やまめ)』、
『丹後舞鶴(まひづる)の鳥貝』、『房州勝浦(ばうしうかつうら)の(かつを)』、
淡路(あはぢ)の(はむ)』、『江戸前(えどまへ)の穴子(あなご)』など。
『吉野川』の鮎(あゆ)の比(くら)べ、四万十川(しまんとがは)には力強(ちからづよ)さ。

(かつを)、(あぢ)にも優(まさ)るこの日の白眉(はくび)は穴子(あなご)。
皮(かは)甚(いと)柔(やは)らかにして、身(み)も崩(くづ)れんばかり。
身皮(みかは)の間(はざま)なる脂(あぶら)が舌に纏(まと)はりつゝ、 吭(のんど)の奧に、、。
やはり鰻(むなぎ)は龝(あき)穴子(あなご)は初夏(なつのはじめ)が何より。

鳥貝(とりがひ)を解體(さば)く過程(かてい)2011-06-15日記(につき)に。

【2011-06-03追記】:
・・・・・・(略)・・・・・・
此度(こだみ)の酒菜(さかな)は、吉野川、京師(みやこ)賀茂茄子(かもなす)、
壹岐(いき)の岩牡蠣(いはがき)など。

鮎(あゆ)には楓(かえで)と加賀太胡瓜(かゞぶときうり)があしらはれ目にも鮮やか。
これを貪(むさぼ)るに、身と膓(わた) より心持(こゝち)よき香(かをり)迸(ほとばし)る。
岩牡蠣(いはがき)はその儘(まゝ)でも旨(うま)く、ぽん酢(ず)もまた佳(よ)し。
賀茂茄子(かもなす)はほどよき齒應(はごた)へを殘(のこ)し、出汁(だし)も上々。

握(にぎ)りは生平(つね)のごとし。
出水(いづみ)の眞鰺(あぢ)は時季(じき)に適(かな)ひ旨さ口中(くち)に横溢(あふ)る。
肥後(ひご)の本蛤(ほんはまぐり)も朝鮮蛤(てうせんはまぐり)と見紛(みまが)ふ大きさ。
天草(あまくさ)の車蝦(くるまえび)は俗(よ)に云ふ『大車(おほぐるま)』。

【2011-04-28追記(拔粹)】:
蝦夷(えぞ)苫小牧馬糞海膽、洛(みやこ)塚原白子筍(しらこだけ)、
越中富山喉黒(のどぐろ)などを貰(もら)ひ杯(さかづき)を傾(かたぶ)く。
握りで、鮃(ひらめ)縁側(えんがは)、眞鰺(まあぢ)、小鰭(こはだ)、黄肌(きはだ)、
赤貝(あかゞひ)、穴子(あなご)。

音(おと)に聞(き)く『白子筍(しらこだけ)』を口にするはこれが初(はつ)。
鹽茹(しほゆ)でに見(み)えしかど、出汁(だし)を加(くは)へたるものとなむ、、。
滑らかなる舌觸(したざは)りは絹に似て、えぐみのなさは泉(いづみ)を髣髴(おもはす)。
慥(たしか)に笋(たけのこ)の皇(すめらみこと)。

喉黒(のどぐろ)は兜(かぶと)ばかりを擇(えら)み、ほどよく炙りて供(いださ)る。
豫(あらかじ)め降り鹽(じほ)が施(ほどこ)され、その旨味も一入(ひとしほ)。
遉(さすが)に閖上(ゆりあげ)の赤貝はなく、周防にて漁(いさ)りしものゝみ。
殼(から)を剥(む)き、肝(きも)を燒(や)き、身(み)と紐(ひも)は握りとなす。

【2011-04-17追記】:
・・・・・・(略)・・・・・・
漬け場に目立つ九十九里(くじふくり)の朝鮮蛤鶏卵燒(たまごや)き。
車蝦山芋を擂り込み、四十分かけて燒上(やきあ)げたるもの。

主人(あるじ)、『大地震(おほなゐ)に遭ひて閖上(ゆりあげ)の赤貝など皆無』と、、。
掃愁箒(さけ)を貰ひ、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)に主人(あるじ)心盡くしの品。
最初(いやさき)に、越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)の螢烏賊(ほたるいか)。
獨活(うど)を添(そ)へ酢未醤(すみそ)で戴(いたゞ)く。

酒菜(さかな)として、品書きより、琵琶湖(びわこ)のもろこ鹽燒(しほやき)と、
洛(みやこ)は長岡京(たけのこ)の炙り燒きを注文(たのむ)。
もろこは二寸斗(にすんばかり)の大(おほ)きさで子持(こも)ち。
築地(つきぢ)で琵琶湖(びわこ)のもろこを扱ふは纔(わづ)かに一軒のみとか。

穴子肝煮(きもに)、走りの淡路島(あはぢしま)海鰻(はむ)落とし、
それに、海鰻(はむ)のあら汁(じる)は、 主人(あるじ)の好意(かうい)。
握り十二、鶏卵燒、玉薤(さけ)、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)で八千二百圓也。
價格(ね)の廉きは、家族(うから)ばかりで商(あきな)ひ、廛(みせ)も持ち家なればこそ。

銀座『青木』とは互ひに先代(せんだい)よりの附き合ひとか。
主人(あるじ)、今は『はしぐち』となりし紀尾井町時代をも知る。
京師(みやこ)の馨(かをり)漂ふは、先代女將(さきつおかみ)の生まれもさることながら、
偏(ひとへ)に主人(あるじ)の修業先(しゆげふさき)にあり。

力みがなく、『某(それがし)、鮨より懐石料理(くわいせき)が得手(えて)』とポツリ。
扨(さて)、鮓職人が力量(うで)を餘すところなくあらはす鶏卵燒(たまごや)き。
些(いさゝ)か滑(なめら)かさに虧(かく)と云ふとも、
車蝦(くるまえび)の色尤(いと)鮮烈(あざやか)にして味はひもまたなかなかに深淵(ふかし)。

昆布〆に用(つか)ふ昆布(こんぶ)は利尻(りしり)と、これまた京風(きやうふう)。
江戸(えど)の鮨屋(すしや)では眞昆布(まこんぶ)を用(つか)ふが通例(ならひ)。
煮切(にき)りは醤油(しやうゆ)七に味醂(みりん)三で配合(ま)ぜ、
出汁(だし)を加へたるもの。

驚(おどろ)くべきは主人(あるじ)の記憶力(ものおぼえ)の凄(すご)さ。
四月(よつき)も前の客(きやく)の呑み啖ひしたるものをつぶさに憶(おぼ)えてをり、
剩(あまッ)さへ、話のやりとりまでもが審(つまびらか)。
以爲(おも)ふに、☆☆☆を爭ふ賈(みせ)にはあらねど、實(げ)に居心地よき廛(みせ)

【2010-12-04記(拔粹)】:
最初(いやさき)に掃愁箒(さけ)。
酒菜(さかな)は豊後(ぶんご)冬茹(どんこ)の含(ふく)め煮(に)。
一日(いちにち)西洋時辰儀(せいやうとけい)にして六時間煮詰(につ)め、
それを幾日(いくにち)も繰(く)り返(かへ)すと云ふ驚(おどろ)くほどの手間隙(てまひま)。

次いで『星鰈(ほしがれひ)の卵巣(こ)』。
主人(あるじ)の修業先(しゆげふさき)は洛(みやこ)木屋町通り『やました』。
慥(たしか)に味附けは淡く、京師(みやこ)の割烹(かつぱう)を髣髴(おもはす)。
この星鰈(ほしがれひ)、常磐(じやうばん)のものにて、主人(あるじ)誇りの品。

握りは、星鰈(ほしがれひ)、星鰈縁側(えんがは)、眞鯖(まさば)、小鰭(こはだ)、
墨烏賊(すみいか)を煮切(にき)りと鹽(しほ)で、
鮪(しび)の赤身(あかみ)醤油漬(しやうゆづ)けに、赤身(あかみ)に近き脂身(あぶらみ)、
蛤(はまぐり)、卷き、煮穴子(にあなご)、燒穴子(やきあなご)、冬茹(どんこ)卷き。

途中(とちゆう)、唐墨(からすみ)に蟹汁(かにじる)を挾(はさ)み、
握(にぎ)り十三(とあまりみつ)、卷物(まきもの)一つ、合はせて値(あたひ)八千五百圓也。
口惜(くちをし)きは鶏卵燒(たまごや)きなきこと。
勿驚(おどろくなかれ)、各々(おのおの)品の價格(ね)が黒板(こくばん)に審(つまびらか)。

この日は午の刻より未の刻まで一時(いつとき,=2時間)ばかり。
僕(やつかれ)のほか、絶(た)へて客(ひと)の姿(すがた)を見ず。
近傍(ちかく)に寺多く、粗方(あらかた)休日(やすみのひ)の法事客(はふじきやく)とか。
饗應(もてなし)に用(つか)ふ廛(みせ)なれば、價段(ね)を明かす道理(ことわり)なし。

唐墨(からすみ)は自家製。
鹽(しほ)ばかりで製造(こしら)へたるものとは明らかに異なる圓(まろ)やかさ。
その理(ことわり)を訊(たづ)ぬれば、燒酎(せうちう)に暫し漬け込みたるものとのよし。
傍(かたは)らの紅芯蘿蔔(こうしんだいこん)は鮨屋(すしや)には珍しき品。

要求(もとめ)に應(おう)じ、唐墨(からすみ)に添(そ)ふると、、。
そも、蘿蔔(すゞしろ)は徒(いたづら)に強き鹽氣(しほけ)を和(やはら)ぐるもの。
鹽(しほ)強(つよ)からざれば、そのまゝに味(あぢ)はふが何より。
こゝろみに紅芯蘿蔔一片(ひとひら)を齧(かじ)るに、爽やかなること梨(なし)に似たり。

萬願寺唐辛子(まんぐわんじたうがらし)も東都(えど)の鮨屋にはなき菜蔬(あをもの)。
舎利(しやり)は粒(つぶ)が立ち、舌(した)に滑(なめ)らか。
暖(あたゝ)かさは人肌(ひとのはだ)ほどならん。
酢は尾州半田(びしうはんだ)の白酢に、纔(わづ)かながら沙糖を用(つか)ふ。

甘酢(あまず)漬け生姜(はじかみ)の自家製(じかせい)なるは勿論(いふもさらなり)。
くどさなく、口直(くちなほ)しにはほどよし。
近會(ちかごろ)の行きつけ に比(くら)ぶれば、聊か冷たく、酢も弱め。
山葵(わさび)は本物(ほんもの)ながら、高名(なのある)廛(みせ)には遠く及ばず。

主人(あるじ)の誇る『星鰈(ほしがれひ)』は〆てより三日目(みッつかめ)。
この時季の、『喜久好』か『ほかけ』のの美味(うまきあぢ)にはとてもとても、、。
喜久好』なれば〆て間(ま)もなきものを厚(あつ)めに切りつく。
身が活き、噛み締むるほどに旨味(うまみ)奔(ほとばし)るが通例(つね)。

(はまぐり)』は他店(よそ)で用(つか)ふ鹿島灘(かしまなだ)朝鮮蛤とは異なり、
肥後(ひご)の濱(はま)にて漁(すなど)られし本蛤(ほんはまぐり)。
これを『漬け込み』となし、煮詰(につ)めを寸毫(つゆ)施(ほど)さずに味はふ。
僅(はつ)かながらも火の入り過ぎたるけはひこそあれ、なかなかの出來榮(できば)え。

主人(あるじ)が『今一つ』と羞(は)ぢらふ『煮穴子(にあなご)』は江戸前(えどまへ)。
煮工合(にぐはひ)もほどよく、この時季(じき)としては、まづまづ。
最(いと)面白(おもしろ)きは『燒穴子(やきあなご)』。
洛(みやこ)に倣ひて、骨切(ほねき)りを行ひたる後これを炙(あぶ)る。

やはり『燒穴子』に限るなら『468』に一日(いちじつ)の長(ちやう)。
鶏卵(たまご)の代替(かはり)に『尤(いと)自信(じゝん)あるもの』と、問はゞ、
『含ませ煮の冬茹(どんこ)』を海苔(のり)に卷くは如何(いか)に、と、囘答(いら)ふ。
ぬばたまの黒さながらも、味は海苔卷きの干瓢(かんぺう)よりも穩(おだ)やか。

さても、握り鮨の華(はな)たる光物(ひかりもの)ゝはと檢(あらた)むるに、
鯖(さば)はやゝ淺(あさ)め、小鰭(こはだ)は聊(いさゝ)か強き酢〆
主人(あるじ)に據(よ)らば、鯖は、鹽(しほ)二時間半、酢(す)四十分、
小鰭(こはだ)は、鹽(しほ)を五十分、酢(す)を四十分とか。

豐後(ぶんご)の鯖(さば)は、その身頗(すこぶ)る肥(こ)え、
脂(あぶら)は鹽(しほ)を蹴散(けちら)らし、酢を四方(よも)に彈き飛ばさんばかり。
小鰭(こはだ)には"卷き"より拵(こしら)へたる朧(おぼろ)を挾(はさ)む。
〆の強さたるや、九段下『壽司政』、烏森稻荷『しみづ』に次ぐ。

そも『うを徳』なる屋號(やがう)、小宮徳造(こみやとくざう)が魚屋に因む。
倅(せがれ)(たけし)、當地(このち)に開きし鮨屋こそ『おすもじ處(どころ)うを徳』。
二代目(にだいめ)重病(おもきやまひ)に仆(たふ)れ、跡を繼ぎしが、三代目(さんだいめ)。
すなはち、現行(いま)の親方(おやかた)小宮健一(こみやけんいち)その人(ひと)。

  • 小宮健一(こみやけんいち)親方(おやかた) 【撮影許可濟】 2011年6月撮影、2019-01モザイク處理
  • "鮑魚(あはび)"+《越中滑川(なめりかは)》"螢烏賊(ほかるいか)"
  • 『服部中村養鼈塲(はつとりなかむらやうべつじやう)』"鼈(かはかめ)"

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2位

趙楊 (新橋、内幸町、汐留 / 中華料理、四川料理、火鍋)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2016/10訪問 2016/11/08

これやこの 匠(たくみ)の腕に かゝりては 茸(きのこ)獸(けもの)も 『趙楊』の席(せき)

【2016-11-01追記】:
-------------------------------------
"冷盤(さきづけ)"
"醉蝦(ゑはせえび)"
"鱘魚頭骨湯(てふざめとうこつじる)"
"三大菌排翅(みくさきのことふかひれにこみ)"
"松露囘鍋肉(しやうろくわいくわにく)"
"鵞蛋菌魷魚(がてうたまごだけとするめのにこみ)"
"香辣川絲鴨(うしにくとしせんあひるにくせんぎりのきのこいため)"
"松茸明蝦(まつたけとえびのしせんふういためもの)"
"白茹海參雞(しろきのこときんこにはとりにこみ)"
"珍菌燴蘿蔔(みくさのきのことすゞしろにこみ)"
"香茹松茸豆腐(とうふのしいたけにくもどきまつたけあん)"
"山菌牛肉麪(やまのきのことうしにくのそばきり)"
"松露甜燒白(しようろもちごめとぶたばらのくわし)"
-------------------------------------

久方(ひさかた)ぶりの『趙楊』。
東道(あるじ)と御内儀(おかみ)に子女(こども)兩名(ふたり)、
莞忝(につか)とうち笑(え)み、小人(それがし)を歡迎(むかふ)。
懐(なつ)かしき哉(かな)!

通例(つね)のごとく天下無雙(よにならぶものな)き"冷盤(さきづけ)":
次(つ)いで"醉蝦 (ゑはせえび)"。
六匁七分(=25g)の"卷(ま)き"ほどの對蝦(くるまえび)を用(つか)ひ、
黄酒(もろこしのさけ)と白酒(もろこしせうちう)を混合(あ)はせて七日(なぬか)。

そも、"醉蝦 (ゑはせえび)"には大別(おほまかにわけ)て二種(ふたくさ)あり。
一(ひと)つめは、醉(ゑ)ひたるをその儘(まゝ)啖(くら)ふ流儀(やりかた)。
今一(いまひと)つは、これを白灼蝦(ゆでえび)のごとく煮(ゆ)づる做法(やりかた)。
當家(こちら)、前者(まへ)なれど、醉蟹(ゑはせがに)のごとく漬込(つけこ)む。

小人(それがし)杭州(くいしう)にて啖(くら)ひしは、
(さけ)の代替(かは)りに(す)を用(つか)ふ烹調法(やりかた)。
"隨園食單(ずいゑんしよくたん)"にも、
熱酒(あつきさけ)をかけ、醋醤油(すじやうゆ)に漬(つ)くる做法(やりかた)が、、。

有左程(さるほど)に、
爰(こゝ)で老板(あるじ)趙楊師傅(てうやうおやかた)沈吟(うちあん)ずるは、
「"鱘魚頭骨湯(てふざめとうこつじる)"出(いだ)すを何時(いつ)にするや?」
と云ふ件(ことがら)。

すなはち、貴重(いとたふと)き(てふざめ)の頭骨(とうこつ)に加(くは)へ、
姬茹(アガリクス) 、羊肚菌(あみがさだけ)、松露(しようろ) など、
十三種(とくさあまりみくさ)に及(およ)ぶ蘑菇(きのこ)よりなる、
至高(このうへな)き上湯(よきしる)の饗應(いだ)し方(かた)。

何時(いつ)か?
慈雨(めぐみのあめ)は旱(ひでり)に限定(かぎ)りて成立(なりたつ)もの。
敢(あ)へて"鱘魚頭骨湯(てふざめとうこつじる)"を後半(あと)に囘(まは)すは、
宛然(あたかも)、梅雨季(つゆどき)に長雨(ながあめ)の降(ふ)るがごとし。

(てふざめ)の頭骨(あたまのほね)は軟骨(やはらかきほね)。
清代(しんのみよ)には、
有鱘魚頭骨美勝燕窩(てふざめのあたまのほねは、つばめのすにもまさる」
と賞賛(ほめたゝ)えられ、貢品(みつぎもの)に列(つら)なれりとぞ。

心靜(こゝろしづ)かにこれを堪能(あぢは)ふに、
その(しる)、複雜玄妙(おくふかく、いはくいひがた)き味(あぢはひ)
長時間(ながら)く燉(に)こまれたる頭骨(てふざめとうこつ)は、
鹿筋(しかのアキレスけん)に髣髴(さもにたり)。

"三大菌排翅(みくさきのことふかひれにこみ)":
すなはち、
鵞蛋菌(がてうたまごだけ)、牛肝菌(やまどりだけ)、虎掌菌(こしやうだけ)に、
排翅(ふかのまるびれ)を燉(ゆるりに)こみたるもの。

奶湯(ちゝのごときしる)を髣髴(おもは)す白色(しろ)く濃厚(こ)き湯(しる)
その味道(あぢはひ)は、丸(まろ)みを帶(お)び究極(このうへな)き美味(うま)さ
排翅(ふかひれ)の齒應(はごた)へも適度(ほどよ)く、
實(げ)に、「この宵(よひ)の白眉(はくび)」。
  
正宗(ほんばもの)」とも呼(よ)ぶべき"松露囘鍋肉(しやうろくわいくわにく)":
五花肉(ばらにく)の塊(かたまり)に火(ひ)を通(とほ)し
冷却(さ)ましたる後(のち)、いみじう薄(うす)く削(そ)ぐ
これを「囘鍋(なべにもど)」し、蒜苗(めorはにんにく)?と炒(いた)め合(あ)はす。

大蒜(おほひる)固有(ならでは)の馨(かをり)希薄(うす)く、
外見(みため)も淺葱(あさつき)に似(に)る。
豆瓣辣酱(たうがらしそらまめみそ)と松露(しようろ)に油(あぶら)が加(くは)ゝり、
得(え)も言(ゆ)はれぬ風味(あぢとかをり)

"鵞蛋菌魷魚(がてうたまごだけとするめのにこみ)":
海(うみ)より遠(とほ)き(しせん)。
生(なま)の北魷(するめいか)を入手困難(てにいれがた)く、
往古(いにしへ)より乾魷魚(ほしたるするめ)を用(つか)ふが尋常(つね)。

味(あぢ)の濃厚(こ)さでは、
本朝(わがくに)が魷魚絲(するめ)齧(かぢ)るが優(まさ)れど、
(しせん)では貴重(たふと)き乾貨(ひもの)。
"鵞蛋菌(がてうたまごだけ)"は誕生以來(うまれてよりこのかた)これが初(はじめて)。

これにて、
意(わがこゝろ)、半(なか)ば、「酒足飯飽(ごちさうになりまうしてござる)」。
一櫡(ひとはし)着(つ)くるや、
須臾(たちまち)、周圍(まはり)に佐(たす)けを乞(こ)ふと云ふ爲體(てゐたらく)。

"香辣川絲鴨(うしにくとしせんあひるにくせんぎりのきのこいため)"と云ふは、
四川(しせん)の燻鴨(いぶしあひる)と牛肉(うしにく)に、
牛肝菌(やまどりだけ)、猿頭(やまぶしたけ)、姬茹(アガリクス)、笋(たけのこ)を、
(せんぎり)とし、花椒風味(かほくざんせうのかをり)もて炒(いた)めたるもの。

菜譜(しながき)になき"松茸明蝦(まつたけとえびのしせんふういためもの)":
烹調(つくりかた)は"宮保(ぐうほ)"と思(おぼ)しき做法(やりかた)。
"宮保(ぐうほ)"と喚做(よびな)すは、(さんとう)に源流(みなもと)あれど、
今(いま)や、「四川名菜(しせんめいさい)」とも云ふべき現状(ありさま)。

"白茹海參雞(しろきのこときんこにはとりにこみ)":
"白茹(まぼろしのしろきのこ)"、すなはち"雞腿菇(さゝくれひとよだけ)"は
吐蕃(チベット)石渠縣(せきゝよけん)、
海拔一千五百丈(うみより≒4500m)の高山(たかきやま)に生育(そだつ)とぞ。

海參(きんこ)、鹿筋(しかのアキレスけん)、魚唇(さめのくちびる)入(い)り。
勿論(いふまでもなく)、この三品(みしな)は貴重(たふた)き乾貨(ひもの)。
魚唇(さめのくちびる)は稀少(めづらし)き鯨鯊(じんべいざめ)とのよし。
滿腹(はらふく)れ、その味道(あぢ)、審(つまびらか)ならず。

牛肝菌(やまどりだけ) 、猿頭(やまぶしたけ) 、竹蓀(きぬがさだけ)。
三種(みくさ)の珍菌(まれなるきのこ)を用(つか)ふ、
"珍菌燴蘿蔔(みくさのきのことすゞしろにこみ)":
竹蓀(きぬがさだけ)は傘(かさ)の部分(ところ)を燴(に)こむ。

"香茹松茸豆腐(とうふのしいたけにくもどきまつたけあん)":
香茹(しいたけ)を猪肉(ぶたにく)に擬(なぞら)へ餡(あん)と爲(な)す。
豆腐(とうふ)は自家製(てづからこしらへたるもの)。
味(あぢ)、不詳(つまびらかならず)。

"山菌牛肉麪(やまのきのことうしにくのそばきり)":
外見(みため)、"擔擔麪(しるのなきしせんやたいそば)"に瓜兩個(うりふたつ)。
蘑菇(きのこ)は、白靈茸(あわびだけ)、虎掌菌(こしやうだけ)とのよし。
これまた、その味(あぢ)を不知(しらず)。

最後(いやはて)の甜點心(あまきもの)として、
"松露甜燒白(しようろもちごめとぶたばらのくわし)"を貰(もら)ふ。
松露(しようろ)、五花肉(ぶたばら)、糯米(もちごめ)、豆沙(あづきあん)。
實言(まこと)、能(よ)く鹹(しほからみ)と甜(あまみ)が協調(たすけあふ)

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :徠卡(Leica)Apo Summicron M 2/50 Asph. @F2.4~F4.5

【2015-10-05追記】:
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"前菜(さきづけ)"
"雪域山珍湯(ゆきやまろつかくさいじる)"
"白松露排翅(しろとりゆふいりふかひれすがたにこみ)"
"緑豆<火會>海參(りよくたうほしなまこにこみ)"
"蟲草花甲魚(とうちゆうかさうばなにすつぽん)"
"覇王花椒魚(さぼてんのはないり、うをのさんせうあぢ)"
"松露炒飯(とりゅふやきめし)"
"擔擔麪(やたいそば)"
"麻婆豆腐(からみだうふ)"
"白松露銀耳羹(しろとりゆふにしろきくらげ)"
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およそ"雪域山珍鹿角菜(ゆきやまろつかくさい)"なるもの、
高(たか)き雪山(ゆきやま)、淡水中(たんすいちゆう)に生(しやう)ず。
先(さき)が割(わ)れ、その姿(すがた)、鹿角(しかづの)に彷彿(にたり)
これを清湯(すましゞる)にせしものこそ、"雪域山珍湯(ゆきやまろつかくさいじる)"。

高名(なだか)き宣威火腿(=雲南火腿、うんなんはむ)など、
嚴選素材(よくえらみしゝな)を用(つか)ひ、ゆるり引(ひ)きたる上湯(よきしる)。
東道(あるじ)趙楊(ちやうやう)に據(よ)らば、
宣腿(せんたい)は金腿(きんたい)に雋(まさ)る。」

(しよく)より拿囘(もちかへ)りたる"白松露(しろとりゆふ)"、竝(なみ)にあらず。
強烈(つよ)く芳香(かぐはしきかをり)、
四方(よも)に漂(たゞよ)ひ鼻竅(はな)を穿(うが)つ。
これを前(まへ)には、"松露(しようろ)"と云へど、なほ、馨(かをり)なきがごとし。

"蟲草花 (とうちゆうかさうばな)"と喚做(よびな)すは、
"冬蟲夏草(とうちゆうかさう)"と同(おな)じ菌類(きんるい)なれど、
その容姿(すがたかたち)は"冬蟲夏草(とうちゆうかさう)"と大異(おほいにことなる)。
これもまた高貴(たふた)き中藥(くすり)の一(ひとつ)。

琵琶湖産(びはこの)三斤(さんきん)近(ちか)き甲魚(すつぽん)。
他店(よそ)の厨師(いたまへ)とは思想(かんがへ)を異(こと)にし、
これほどの大(おほ)きさならねば、佳味(よきあぢ)たりえず!」
と、力説(ちからをこめてとく)。

"覇王花椒魚(さぼてんのはなにうをのさんせうあぢ)" :
覇王花(さぼてんのはな)は初(はじめて)。
竹蓀(きぬがさだけ)と思(おぼ)しきものを問ふに、應答(いらへ)て曰(いは)く、
竹蓀(きぬがさだけ)の蛋(たまご)の胎盤(たいばん)?」とのよし。

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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZK @F2.4

【2015-06-17追記】:
此度(こだみ)の宴會(うたげ)は"河魚(かはうを)(づ)くし"。
鯉魚(リーユイ、こひ)、鯽魚(ジーユイ、ふな)、鯰魚(ニェンユイ、なまづ)、
草魚(ツァオユイ、さうぎよ)、鰻魚(マンユイ、うなぎ)、生魚(シェンユイ、らいぎよ)、と、
枚舉(かぞふる)に遑(いとま)なし。

過半(あらかた)西土(もろこし)渡來(わたり)の産(もの)なれど、
鰻魚(うなぎ)と香魚(あゆ)ばかりは扶桑(わがくに)の産(もの)と云ふ。
鰉魚(ファンユイ、てふざめ)鱖魚(ジェーユイ、けつぎよ)は無理(むり)にせよ、
鱔魚(シャンユイ、たうなぎ)缺(か)くは寂(さび)しきところ。

この夜(よ)の菜譜(こんだて)は、如下(つぎのとほり)。
 ・十二單碟(とさらあまりふたさらのさきづけ)
 ・清湯魚漿(かはうをすりみのすましゞる)
 ・豆腐鯽魚(ふなどうふ)
 ・香辣鰻魚(からみうなぎ)
 ・軟烤鮎魚(あゆのとろびあぶり)
 ・大蒜鯰魚(なまづにんにく)
 ・糖醋鯉魚(こひのあげものあまずあん)
 ・宋嫂湯麪(さうさうしるめん)
 ・三色涼糕(みいろのもちぐわし)

倩(つらつら)"十二單碟(とさらあまりふたさらのさきづけ)"を瞻(み)るに、
通常(つね)と異(こと)なり、河魚(かはうを)が主體(おも)。
濃(こ)きに過(す)ぎず、淡(あは)きに流(なが)るゝこともなし
實(げ)に、「佳菜(よきしな)の數々(かずかず)」と云ふべきか。

およそ、舖(みせ)の格(かく)、厨師(いたまへ)の技倆(うで)を窺(うかゞ)ふに、
湯(しる)を吟味(み)るに如(し)くはなし。
この日(ひ)の"清湯魚漿(かはうをすりみのすましゞる)"も、
尋常(つね)に變(か)はることのなき美味(よきあぢ)。

"麻婆豆腐(しせんからみどうふ)"を髣髴(おもは)す"豆腐鯽魚(ふなどうふ)"。
老板(あるじ)胸(むね)張(は)りて曰(いへら)く、
脂(あぶら)多(おほ)き海魚(うみのうを)は清蒸(むしもの)が適(よ)く
鯽魚(ふな)ゝど河魚(かはうを)はかくのごとき烹調法(やりかた)が吉(よい)」と。

小人(それがし)、杭州(かうしう)、北京(ほくけい)にて、
河魚(かはうを)の清蒸●魚(むしうを)啖(くら)ひし例(ためし)あり。
寔(まこと)に佳味(よきあぢ)なりしかど、
老板(あるじ)趙楊(てうやう)が作法(やりかた)にも一理(ことわり)あるは慥(たしか)。

本朝(わがくに)で"香魚(あゆ)"と云ふは、
その芳香(かをり)と苦味(にがみ)を愉(たの)しむもの。
一方(かたや)、この日(ひ)の"軟烤鮎魚(あゆのとろびあぶり)"には、
勿驚(おどろくなかれ)、牛酪(バター)と羊油(ひつぢあぶら)を用(つか)ふ。

幼少(いとけなき)以來(よりこのかた)、
吾儕(わなみ)に馴染(なじ)みの深(ふか)き"糖醋鯉魚(こひのあげものあまずあん)"。
想定外(おもひのほか)に、糖(さたう)・醋(す)ともに穩(おだ)やかにして、
滋味(やさしきあぢはひ)深(ふか)し

扨(さて)、"宋嫂湯麪(ソンサオタンミェン、さうのあによめしるめん)"。
南宋(なんさう)の名菜(なだかきれうり)、
"宋嫂魚羹(ソンサオユイガン、さうのあによめじる)"に由來(ちな)むは明白(あきらか)。
八百年(やもゝとせ)の歴史(れきし)を誇(ほこ)る。

宋高宗趙構(さうのかうさうてうかう)西湖(せいこ)に遊(あそ)びたまひし折(をり)、
宋五嫂(さうごさう)なる魚羹(うをのあつもの)賈(う)る姥(うば)ありき。
高宗(かうさう)この魚羹(あつもの)を甚(いた)く滿悦(おきにめ)したまひ、
老女(おみな)に金銀(こがねしろかね)絹(きぬ)を賜(たま)ひしとぞ。

(す)を主(おも)なる佐料(てうみれう)とし、
生姜(はじかみ)、大蒜(おほひる)、(さたう)、(しほ)を加(くは)へ、
新(あらた)なる味(あぢはひ)となしき。
"宋嫂湯麪(ソンサオタンミェン)"が酸辣(さんみとからみ)、尤(はなはだ)強(つよ)し

最後(いやはて)の"三色涼糕(みいろのもちぐわし)"。
元來(もとより)、"三色涼糕(サンセーリャンガオ)"と喚做(よびな)すは、
糯米(もちごめ)に、豆沙(あづき)など三種(みくさ)三色(みいろ)の餡(あん)に、
白糖(しろざたう)などを合(あは)せて製造(つくる)。

河魚(かはうを)用(つか)ひて安排(あんばい)せしが當家(こちら)の品(しな)。
つぶさに檢(あらた)むれど、
年糕(もち)と紅豆(あづき)のほか、色(いろ)と叫(よ)ぶべきものを見(み)ず。
ともあれ、尤(いと)も愉快(たのし)き宴會(うたげ)なりしは勿論(いふもさらなり) 。

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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.8/25 ZK @F3.5
      蔡司(Carl Zeiss) 微距(Makro)Planar T* 2.0/50 ZK @F2.0  

【2015-02-16追記】:
この宵(よひ)は甲午歳(きのえうまどし)十二月(しはす)廿八日(はつかあまりやうか)。
來(きた)る乙未歳(きのとひつぢどし)を眞近(まぢか)に控(ひか)へ、
異朝(もろこし)の春節(せうがつ)を壽(ことほ)ぐ宴會(うたげ)。
壁(かべ)には福(ふく)を呼(よ)ぶ"磚茶 (ジュアンチャ、かはらちや)"も、、。

案下某生再説(それはさておき)、此度(こだみ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのごとし)。

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"迎春冷盤(はるをむかふるさきづけ)"
"則天小壜子(ぶそくてんがつぼ)"
"熗蓮白菜(かんらんのたうがらしいため)"
"大蒜牛肉(うしにくのおほひるにこみ)"
"人參砂鍋鴨(あひるとおたねにんじんどなべにこみ)"
"<火扁>冬笋(ふゆたけのこいためもの)"
"香辣茭白(まこもからみいため)"
"黄酒滊鍋魚(うをのさかむし)"
"春節湯圓(せうがつをことほぐしらたまだんご)"
-------------------------------------

"武則天(ぶそくてん)"は唐(たう)の高宗(かうさう)が皇后(きさき)。
唐山三大惡女(もろこしみたりのおぞましきをんな)の一(ひとり)として、
漢(かん)の"呂雉(りよち)"、清(しん)の"西太后(せいたいごう)"に竝(なら)ぶ。
"呂雉(りよち)"と云ふはかの漢高祖(かんのかうそ)劉邦(りうはう)が夫人(おくがた)。

"武則天"、皇后(きさき)となるや、前皇后(さきつきさき)を打擲(うちす)へたる後(のち)
四肢(てあし)をば"ばらりんずん"と切斷(きりきざ)み
生(い)きながらに酒壺(さかつぼ)に抛(はふ)り込(こ)みしは遍(あまね)く知(し)らる。
前后(さきつきさき)喚叫(をめきさけ)びつ絶命(いきた)へしとなむ。

嗚呼(あゝ)、語(かた)るも泪(なみだ)の故事(はなし)に因(ちな)む宴會(うたげ)
、、、、、、、、
と云ふは眞赤(まつか)な虚談(うそ)にて、
"武則天(ぶそくてん)"嗜(この)みし罐子(つぼ)と云ふ意(こゝろ)とぞ。

小壜子(ちいさなつぼ)に、豬(ぶた)の排骨(あばらぼね)、肉丸子(にくだんご)、
泡菜(パオツァイ)、冬菜(ドンツァイ)などを加(くは)へ、
蓋(ふた)の隙間(すきま)を塞(めばり)して燉(とろとろにこむ)こと、
西洋時辰儀(せいやうどけい)にして大約(およそ)十六時間(じふとろくじかん)。

......(以下略)......

----------------------------------
【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZK @F2.0

【2014-12-29追記】:
年(とし)の暮(くれ)は藥膳(やくぜん)の宴會(うたげ)。
この日の會(つどひ)は、土橋(どばし)近傍(ちかく)の大厦(びる)七樓(なゝかい)。
電梯(えれう゛ェいた)用(つか)ひて上に昇り、件(いつも)の客房(ざしき)に、、。
此度(こだみ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのごとし)。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
十二單碟(とあまりふたくさのさきづけ)
醉蟹(ゑはせがに)
野參甲魚羊肉{/}(のゝてうせんにんじんとすつぽんとひづぢのしる)
天麻松蘑魚肚(てんまとまつたけとうをのうきぶくろのにこみ)
鹿茸杜仲燒排翅(しかのふくろづのととちゆうとふかひれにこみ)
官燕蟲草鴨子(つばめのすとうちゆうかさうのあひるにくむしもの)
烏鶏貝母燒梨(うこつけいとばいもになしのにこみ)
手掌參章魚炖肉(しゆしやうさんにひだことぶたすねにくのにこみ)
藥膳湯麪(やくぜんつゆそば)
麻婆豆腐(しせんからみどうふ)
人參果蜜桂花羹(にんじんくわとしろきくらげとゆりのくわし)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

......(以下略)......

----------------------------------
【照相機】:日本光學 尼康(Nikon) Df 數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 ZF.2 @F2.0
...................蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.8/21 ZF.2 @F5.6

【2014-10-20記】:
日記に移動

  • 老板(あるじ)趙楊師傅(てうやうおやかた)【撮影許可濟】
  • 御内儀(おかみ)【撮影許可濟】
  • 男兒(むすこ)【撮影許可濟】

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3位

初音鮨 (蒲田、蓮沼、京急蒲田 / 寿司)

1回

  • 夜の点数: 4.4

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.4

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 ¥20,000~¥29,999

2014/12訪問 2015/11/09

生(なま)忌めど 香住(かすみ)の蟹は 子澤山(こだくさん) この世はつねに 謎と不可思議

【2014-12-12追記】:
櫃臺前(かうんたまへ)に坐(すは)ると同時(ひとし)く、カタコトと小氣味(こきみ)よき音。
主人(あるじ)、飯切(はんぎり)に炊上(たきあ)がりたる飯(いひ)を空(あ)け、
醋(す)を合(あ)はす作業(しごと)に大童(おほわらは)。
鮓店(すしや)として異質(いしつ)、あまりに異様(いやう)なる行爲(ふるまひ)。

およそ舎利(しやり)と云ふもの、
始(はじ)めは醋(す)親和(なじ)むことなく
やがて落着(おちつ)き、馴染(なじ)み
終(つひ)には冷(さ)めてボソボソとなるが通常(つね)。

故(ゆゑ)に、(ちまた)の鮓舖(すしや)は樣々(さまざま)なる手段(てだて)を凝らし、
親和(なじ)ませた上(うへ)で保温(あたゝかさたも)たんと四苦八苦(しくはッく)
ある舖(みせ)は(わら)の"(ふご)"、またある廛(みせ)は"電子ジャー"、
また別(べつ)の鋪(みせ)は櫃(ひつ)ごと"湯煎(ゆせん)"と云ふ工合(ぐあひ)。

倩(つらつら)東都(えど)で高名(なだか)き鮓店(すしや)を覽(み)るに、
開店(みせびらき)より遡(さかのぼ)ること、
西洋時辰儀(せいやうどけい)一時間(いちじかん)乃至(ないし)三時間(さんじかん)、
豫(あらかじ)め醋(す)を親和(なじ)ませ、保温(あたゝかさをたもつ)が習慣(ならひ)。

亭主(あるじ)、かくのごとき因習(ならはし)を侮(あなど)り譏(そし)る。
曰(いへらく)、「保温(ほおん)とは低温火傷(ていおんやけど)に異ならず」、と、、。
當家(こちら)の流儀(やりかた)に遵(したが)ふなら、
最初(いやさき)は熱(あつ)く、最後(いやはて)は冷(つめ)たきに過ぐるが理(ことわり)。

然(しか)るに、最初(いやさき)より最後(いやはて)に至(いた)る二時間(にじかん)
一(ひと)つとして首傾(くびかし)ぐる品(しな)なかりき
東道(あるじ)、温度(あたゝかさ)に應(おう)じ、親和工合(なじみぐあひ)に從ひ
鮓種(すしだね)を擇(えら)み、烹調法(やりかた)を組合(くみあ)はす

鮓種(すしだね)は傳統(いにしへからのやりかた)を踏(ふ)まへつ
時(とき)にそれに囚(とら)はるゝことなく
時季(じき)に適(かな)ふ上質(よ)きものばかりを嚴選(えらびぬく)
(なつ)の車蝦(くるまえび)を(ふゆ)には楚蟹(すはへがに)、と云ふ工合。

鮪(しび)、鰆(さはら)、鰤(ぶり)、雲子(くもこ)、鮭腹子(いくら)、牡蠣(かき)、
何(いづ)れもこの時季(じき)ならでは。
鮪(しび)は手を變(か)へ品を變(か)へ吾儕(わなみ)が舌(した)に迫(せま)る。
小鰭(こはだ)は〆淺(あさ)きものと、熟(う)れたるものゝ二種(ふたくさ)。

就中(わきても)魂消(たまげ)しは(しび)醤油漬(しやうゆづけ)。
亭主(あるじ)に遵(したが)ひ口中(くちのなか)に留(と)め置(お)くこと霎時(しばし)。
忽地(たちまち)、芳香(かぐはしきかをり)四方(よも)に漂ひ鼻竅(はな)を穿(うが)つ
宛然(あたかも)、最上質(いとよ)き燻製(くんせい)でも啖(くら)ふがごとし。

(ひらめ)は振鹽(ふりじほ)施(ほどこ)して五日(いつか)。
さりながら、倣(なら)ひの昆布(こぶ)〆を忌嫌(いみきら)ふ。
生の儘(まゝ)とも昆布(こぶ)〆とも異(こと)なる主人(あるじ)ならではの鮃(ひらめ)。
見目(みため)に逆(さか)らひ佳味(よきあぢ)なるは勿論(いふもさらなり)。

山葵(わさび)卸(おろ)すは銅製(あかゞね)
擂(す)ること都合(あはせて)纔(わづ)かに二度(ふたゝび)。
鮫皮(さめがは)は割烹修業(かッぱうあがり)、鮓修業(すしや)なら銅(あかゞね)」、
「何者(なんとなれば)、角(つの)立(た)つを嫌(きら)へばなり」と説(と)く。

実家(いへ)と加州(かゞ)の地(ち)にて料理(れうり)を習得(ならひおぼ)へ、
今(いま)や斯界(そのみち)では、紛(まが)ふ方(かた)なき手煆煉(てだれ)。
かく腕(うで)を持ちながら、敢(あ)へて"摘(つま)み"の類(たぐひ)を避(さ)け
鮓(すし)にその技藝(わざ)全(すべ)てを傾注(そゝぎこむ)

これ宛然(あたかも)、劍(けん)の達人(たつじん)が刀(かたな)を捨(す)て
徒手空拳(としゆくうけん)にて荒(あら)くれ者(もの)に立向(たちむか)ふに似たり。
あるいは、高名(たかきな)を捨(す)て世俗(よ)を嫌(きら)ひ
奥山(おくやま)の方丈(はうぢやう)に棲(す)まふ仙人(せんにん)と云ふべきか?

以爲(おも)ふに、徒(いたづら)なる保温(ほおん)避(さ)くるは、
水(みづ)の高(たか)きより低(ひく)きに流(なが)れ、
夏(なつ)の暑(あつ)きを避けず、冬(ふゆ)の寒(さむ)きを愉(たの)しむがごとし。
自然(じねん)を敬(うやま)ひ、天道(てんたう)に逆(さか)らはず

これほど自然(じねん)の攝理(せつり)に遵(したが)ひつゝも、
温度(あたゝかさ)を檢知(し)るに、勘(かん)に頼(たよ)らずセンサを用(つか)ふ
傳統(ふるき)を尊(たふと)び、新(あらた)なるものを拒否(こばま)ぬ姿勢(すがた)。
これ、今(いま)をときめく凄腕(すごうで)杜氏(とうじ)に彷彿(さもにたり)。

【2011-12-18記】:
"獨善(どくぜん)"と"獨創(どくさう)"の相違(たがひ)は紙一重(かみひとへ)。
この日(ひ)の開店前(みせびらきまへ)當店(こちら)に伺(うかゞ)ふに、
鮨飯(すめし)を飯臺(はんだい)の上(うへ)に切(き)る杓文字(しやもじ)の音(おと)
これ一(ひと)つ目(め)の驚(おどろ)き。

高名(なのある)廛(みせ)なれば、
一時間三時間は舎利(しやり)馴染(なじ)ますが尋常(つね)。
しかるに、小さな櫃(ひつ)に移し、蓋(ふた)開(あ)けた儘(まゝ)それをうち遣(や)る
これ二(ふた)つ目(め)の驚(おどろ)き。

小振(こぶ)りの中伊豆産(なかいづさん)山葵(わさび)の皮(かは)を剥(む)き、
完(まる)ごと一氣呵成(ひといき)に擂(す)り卸(おろ)す。
最後(いやはて)まで再(ふたゝ)び卸(おろ)すことなく、氣の拔くるに任(まか)す
これ三(みッ)つ目(め)の驚(おどろ)き。

四(よッ)つ目(め)の驚(おどろ)きは疱丁(はうちやう)。
手煆煉(てだれ)が嗜(この)む本燒(ほんやき)と異(こと)なるみすぼらしき品(しな)。
一尺三寸(いッしやくさんずん)の柳刄武州馬込(ぶしうまごめ)"定康(さだやす)"。
刀鍛冶(かたなかじ)の流れを汲む由緒(すぢめ)正(たゞ)しき家柄(いへがら)とぞ。

舎利(しやり)・生薑(はじかみ) は勿論(いふにおよばず)、
煮切(にき)りまでもが寸毫(つゆ)甜味(あまみ)を含まぬキリヽとした口味(あぢ)
主人(あるじ)語るに、「沙糖(さたう)は鮨種(すしだね)の持味(もちあぢ)を殺す」と。
これ五(いつ)ゝ目(め)の驚(おどろ)き。

一(ひと)つとして生(なま)の儘(まゝ)の鮨種(すしだね)はなく、
あるいは煮切(にきり)に漬(つ)け、あるいは鹽(しほ)を打ち、酢(す)に通(とほ)す
墨烏賊(すみいか)、細魚(さより)、赤貝(あかゞひ)、いづれもしかり。
これ六(むッ)つ目(め)の驚(おどろ)き。

加旃(しかのみならず)、煮切(にき)りは雀(すゞめ)の涙(なみだ)ほど纔(わづ)か。
豫(あらかじ)め施(ほどこ)したる鹽(しほ)が生(い)き
かくのごとく僅少(すく)なき煮切(にき)りにても適當(ほどよ)き鹽梅となりつらん。
これ七(なゝ)つ目(め)の驚(おどろ)き。

鮃(ひらめ)は六百十三匁(ろッぴやくじふさんもんめ、=2.3kg)、
鰤(ぶり)四貫三百四十七匁(よんくわんさんびやくよんじふなゝもんめ、=16.3kg)と大振り。
就中(わきても)眞鯛九百七匁(きゆうひやくなゝもんめ、=3.4kg)と、
常識(じやうしき)*)を覆(くつがへ)す大きさ。

眞鯛(まだひ)と(ぶり)は"背側(せがは)"と"腹身(はらみ)"を合(あ)はせ、
(かに)は"楚蟹(すはえがに)"**)と"せいこ蟹"を併(あ)はせて用(つか)ふ。
鮃(ひらめ)の縁側(えんがは)や骨邊肉(あら)を使(つか)ふ景色(けしき)なし。
これ九(こゝの)つ目(め)の驚(おどろ)き。

海苔(のり)は三河(みかは)の"あおさ"入(い)り。
名(な)にし負(お)ひ、音(おと)に聞(き)く舖(みせ)なら炙(あぶ)るが倣(なら)ひ。
仕入(しい)れて炙(あぶ)らぬまゝなれど、香(かをり)と口溶(くちど)けに秀(ひい)づ
これにて十(とほ)の驚(おどろ)き。

半晌(はんとき)經(た)ち、一晌(いッとき)經(た)つほどに、
山葵(わさび)は氣(き)が拔け、舎利(しやり)の冷(つめ)たくなるばかりなれど、
想定外(おもひのほか)に違和感(いわかん)なし
これ十一(とあまりひとつ)めの驚(おどろ)き。

"鶏卵燒(かひごや)き"には大約(およそ)二時間半(にじかんはん)の手間隙(てまひま)。
芝蝦(しばえび)を叮嚀(ねんごろ)に擂(す)り、薯蕷(やまいも)鶏卵(かひご)を加ふ。
燒(や)くだけで一時間十分(いちじかんじッぷん)と云ふ。
これ十二(とあまりふたつ)めの驚(おどろ)き。

この日は、墨烏賊(すみいか)、細魚(さより)、赤貝(あかゞひ)、小鰭(こはだ)、鮃、
眞鯛、鮪(しび)、牡蠣(かき)、眞鯖(さば)、鮭腹子(いくら)、鰤(ぶり)、鰆(さはら)、
鮪(しび)脂身に近きところ、雲子(くもこ)、鮪(しび)脂身(あぶ)、楚蟹(すはえがに)、
鐵火卷(てつくわまき)、干瓢卷(かんぺうまき)、鶏卵燒(たまごやき)。

鶏卵燒(たまごや)きは名(な)のある廛(みせ)のそれが長(た)け、
(ひらめ)はに如かず、縁側(えんがは)骨邊肉(あら)なきは口惜(くちを)しきかぎり。
されど、(しほ)を打(う)ち、厚(あつ)きところを開(ひら)きたる細魚(さより)、
醤油漬(しやうゆづ)けの(しび)脂身(あぶらみ)に近きところは眞(まこと)の美味(びみ)。

漬臺(つけだい)と(まないた)は(ひのき)にて手入(てい)れがゆき屆(とゞ)き、
(ひつ)は誂(あつら)への漆塗(うるしぬ)り。
網代天井(あじろてんじやう)も見事(みごと)なる立派(りッぱ)な普請(ふしん)。
落着きを缺(か)く設(しつら)へながら、これはこれで亭主(あるじ)が嗜(この)み。

亭主(あるじ)の手附(てつ)きに淀(よど)み少なく、舎利(しやり)捨(す)つるは稀(まれ)
左拇(ひだりおやゆび)を效かすことなく、包(つゝ)むがごとくに鮨(すし)を握(にぎ)る。
惜(を)しむらくは、疱丁(はうちやう)を一息(ひといき)に引(ひ)かぬこと
彼(かれ)が"定康(さだやす)"本燒(ほんやき)を凌駕(しの)ぐか審(つまびらか)ならず

此度(こだみ)口(くち)にせし鮨(すし)は合はせて大約(およそ)二十貫(にじッくわん)。
握(にぎ)り十八貫(じふはちくわん)に卷物(まきもの)二種(ふたくさ)。
これで支拂(しはら)ひは二萬圓(にまんゑん)ほど。
銀座(ぎんざ)の☆☆☆よりは廉(やす)く、行きつけの賈(みせ)よりは割高(わりだか)

倩(つらつら)當店(こちら)の流儀(やりかた)を惟(おもんみ)るに、
手に負へぬ "獨善(ひとりよがり)"か、はたまた類稀(たぐひまれ)なる"獨創(どくさう)"か?
久兵衞』、『與志乃』、『鶴八』などいづれの一門(いちもん)・系譜(けいふ)にも屬さず、
東都(えど)の鮨界(すしかい)では異端(いたん)の存在(そんざい)なるは疑ふべくもなし。

同(おな)じ鮨好(すしず)きと云ふとも、
ある人はその異端(いたん)ぶりを許(ゆる)しがたき邪道(よこしまなるみち)と斷(だん)じ、
またある客(ひと)は"目から鱗(うろこ)"、"頂門(ちやうもん)の一針(いッしん)"となさん。
僕(やつかれ)は紛(まぎ)れもなく後者(こうしや)。

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*)(たひ)は五百匁(ごひやくもんめ、=1.8kg)ほどのものを最善(もつともよし)とす。
**)この日(ひ)は但州(たんしう)"香住(かすみ)"のもの。

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4位

東洋軒 (赤坂見附、永田町、赤坂 / 洋食)

1回

  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥6,000~¥7,999

2014/11訪問 2015/02/11

これぞ、"平成洋食(へいせいやうしよく)"の嚆矢濫觴(はじまり)

【2014-11-13追記】:
此度(こだみ)は"スペシャルランチ"。
蝦夷(えぞ)昆布森(こんぶもり)の牡蠣(かき):
名(な)こそ"厚岸(あつけし)"、"的矢(まとや)"に劣(おと)れど、
味(あぢ)では天下無雙(てんげにくらぶるものな)き眞牡蠣(まがき)の皇(すめらぎ)

魚(うを)は淡路(あはぢ)の(すゞき)。
時季(じき)に外(はづ)れ、僕(やつかれ)嗜(この)まざる魚(うを)なれど、
想定外(おもひのほか)に佳味(よきあぢ)。
菜蔬(あをもの)、汁(しる)とも、寔(まこと)、心持(こゝち)よき味(あぢ)。

咖哩飯(からみいりしるかけめし):
驚(おどろ)くばかりの洋葱(たまねぎ)を終日(ひねもす)炒(いた)め續(つゞ)け、
小麥粉(めりけんこ)を煎(い)りて加(くは)へ、
葡萄酒(さけ)と(けだもの)の出汁(だし)にて、煮込(にこみ)みたるは明白(あきらか)。

加旃(しかのみならず)、それを幾日(いくにち)か寢(ね)かし熟成(う)らしたるものか?
その濃厚(こ)さたるや、月竝(つきなみ)の咖哩(かれい)に倍(ばい)するほど。
惜(を)しむらくは、香辛料(かうしんれう)の效(き)ゝ甘(あま)きこと
敢(あ)へて惡(あ)しざまに罵(のゝし)るなら、「咖哩(かれい)味(あぢ)のシチウ」。

食後(しよくご)の菓子類(くわしるい)は、
洋食店(やうしよくや)と云ふより法國菜(ふらんすれうりや)のそれ。
頗(すこぶ)る美味也(よきあぢなり)。
押竝(おしな)めて、價格(ね)こそ高(たか)めなれど、それに相應(ふさは)しき水準(もの)

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【照相機】:日本光學 尼康(Nikon) Df 數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 ZF.2 @F2.4

【2014-04-18記】:
近會(ちかごろ)、法國菜(ふれんち)・意大利菜(いたりあん)を口(くち)にするは稀(まれ)。
その故(ゆゑ)如何(いかん)となれば、
麪麭(ぱん)を鷲掴(わしづか)みにすると云ふに、御絞(おしぼ)りなく
そもそも、かゝる餐廳(めしや)には婦人(ふじん)伴(ともな)ふが風習(ならひ)なればなり。

魚(うを)を宰(き)らせては日本(ひのもと)に劣(おと)り
豬(ぶた)を屠(ほふ)らせては震旦(もろこし)に讓(ゆず)る
牛(うし)は不味(まづ)く、元來(もとより)、羊(ひつぢ)も嗜(この)むところにあらず
鵞鳥肝(ふおあぐら)は少量(すこし)なれば美味(びみ)なれど、徒(いたづら)に脂強し

但(たゞ)し、菜蔬(あをもの)ゝ處理(あつかひ)にかけては優(すぐ)れ、
妄(みだ)りに沙糖(さたう)に頼(たよ)らぬは實(げ)に讃(たゝ)ふべきことなり。
西班牙(いすぱにあ)の火腿(はむ)、佛蘭西乾酪(ちいず)に葡萄酒(ぶだうしゆ)など、
遍(あまね)く四海(しかい)にその名(な)を轟(とゞろ)かすものも、、。

およそ俗(よ)に云ふ"洋食(やうしよく)"なるもの、
明治以降(めいじよりこのかた)、西洋菜(あちらのめし)が獨自進化(どくじしんくわ)
明治五壬申歳(めいじごみづのえさる)、皇(すめらぎ)獸肉(けだもの)を啖(くら)ひたまふ
築地精養軒(つきぢせいやうけん)』創業(あきなひのはじまり)もこの年(とし)。

築地精養軒(つきぢせいやうけん)』の『上野精養軒』へと連なるは勿論(いふもさら)なり。
因みに、散髮脱刀令(さんぱつだつとうれい)・廢藩置縣(はいはんちけん)はその前年、
切支丹禁教令廢止(きりしたんきんきやうれいはいし)は翌年(つぎのとし)。
假名垣魯文(かながきろぶん)"安愚樂鍋(あぐらなべ)"も前年(まへのとし)。

倩(つらつら)、今に續く老舖(ふるきみせ)の創業(あきなひのはじまり)を覽 (み)るに、
精養軒(つきぢせいやうけん)』は格別(かくべつ)として、
煉瓦亭』が明治廿八乙未歳(きのとひつぢ)、『松本樓』が明治卅六癸卯歳(みづのとう)、
香味屋』が大正十四乙丑歳(きのとうし)、『資生堂パーラー』が昭和三戊辰歳(つちのえたつ)。

これら老舖(しにせ)の多(おほ)くは、
手間隙(てまひま)かけて"コンソメ"、すなはち牛骨出汁(うしぼね)の澄まし汁(じる)を作り、
叮嚀(ねんごろ)に"ドゥミグラス・ソース"を仕込(しこ)む。
英國(あんげりあ)傳來(わたり)の"ウスターシャ・ソース"用(つか)はすも尋常(つね)のこと。

明治(めいじ)、大正(たいしやう)、昭和(せうわ)と時(とき)を經(へ)
代(だい)を重(かさ)ぬるほどに、技藝(わざ)を砥(と)ぎ、贅肉(むだ)を削(そ)ぎ
"洋食"として慥(たしか)なる地位(くらゐ)を成せしは衆知(あまねくしらる)ゝところ。
蓋(けだ)し、その頂點(いたゞき)は『香味屋』、『南蠻銀圓亭』なるべし。

かくのごとく、現今(いま)をときめく洋食(やうしよく)なるは、
粗方(あらかた)、明治(めいじ)、大正(たいしやう)近邊(あたり)に確立(かくりつ)。
それより百年(もゝとせ)の春秋(つきひ)を重(かさ)ぬれど
"昭和(せうわ)の洋食"、"平成(へいせい)の洋食"は未成(いまだならず)。

旬香亭』などの試行(こゝろみ)こそあれ、成功例(よきためし)を知(し)らず。
現行(いま)の"洋食(やうしよく)"が、
幕末(ばくまつ)~明治(めいじ)の法國菜(ふらんすれうり)を下敷(したじき)とせしものなら、
昭和平成法國菜(ふらんすれうり)を基礎(もとゐ)とするものもあるべき

閑話休題(それはさておき)、當舖(こちら)『東洋軒』。
高名(なだか)き"メンチカツ"に加(くは)へ、"コンソメ"を選(えら)まばやと思(おも)ふに、
給仕(きふじ)、"スープ・セット"なるものを奬(すゝ)む。
汁物は、舖(みせ)の格、板前(いたまへ)の力量(うで)を冩(うつ)す鏡(かゞみ)

かくて、"ビスク"に釣(つ)られ、"スープ・セット"に。
葡萄酒(わいん)、洋菓子(でせーる)、咖啡(こおふィ)も注文(たのむ)。
程(ほど)なくして運(はこ)ばれ來(き)たりし"ビスク"。
味の基礎(もとゐ)赤蝦(あかえび)に、山薯蕷(やまいも)、菊芋(きくいも)、奶油(くれむ)。

近會(ちかごろ)、法國菜(ふれんち)を謳(うた)ふ舖(みせ)の晝飧(らんち)に、
"ヴィシソワーズ"のごとき御坐(おざ)なり汁(じる)供(いだ)さるゝ例(ためし)少なからず
はて、この"ビスク"を匙(さじ)にて掬(すく)ひ舌(した)に流(なが)すに、
能(よ)く僕(やつかれ)が味覺(した)をして欣喜雀躍(をどりあがりてよろこ)ばしむ

甲殼類(えびかにのたぐひ)の出汁(だし)に、
薯蕷(いも)の齒應(はごた)へ、泡立(あはだ)ちたる奶油(くれむ)の舌觸(したざは)り。
金屬洋食器(かとらり)も眞新(まあたら)しく、類稀(たぐひまれ)なる旨(うま)さ。
これぞ、名にし負ふ佛蘭西料理店(ふらんすれうりてん)仕込(じこみ)の業(わざ)か?

招牌(かんばん)の"メンチカツ"もなかなか。
甚(いと)(こま)やかなる麪麭粉(ぱんこ)を塗(まぶ)し揚(あ)げ、
その姿形(すがた)、丸(まろ)く厚(あつ)く均一(ひとし)き狐色(きつねいろ)を爲(な)す。
兩斷(ふたつにき)るや、忽地(たちまち)肉汁(にくじる)迸(ほとばし)りて皿へと流る。

心靜(こゝろしづ)かにその味(あぢ)を窺(うかゞ)ひ、その香(かをり)を聞(き)くに、
儚(はかな)く、柔(やはら)らかく、清々(すがすが)しき味(あぢ)はひ
薩州(さつま)の放牧豚(はうぼくぶた)に松坂牛(まつざかうし)を合(あ)はせたるものと云ふ。
姿形(すがた)の麗(うるは)しさは『香味屋』に肩(かた)を竝(なら)ぶるほど。

微(かす)かながらも、中心(なか)には生(なま)と思(おぼ)しき茜色(あかねいろ)。
ソースは二種(ふたくさ)。
すなはち、一(ひと)つは"自家製(じかせい)"を誇(ほこ)る"ウスターシャ・ソース"、
今一(いまひと)つは、定番(ならひ)の"ソース・ドゥミグラス"。

日本一(ひのもといち)か?」と問(と)はるれば、疾(と)く應答(いら)へがたし。
このごろ、贅(ぜい)を盡(つ)くし、素材を窮(きは)めたる拉麪(らあめん)が流行(はやり)。
巧妙(たくみ)に拵(こしら)へたるは明白(あきらか)なれど、
昔(むかし)ながらの拉麪(らあめん)に勝(まさ)るか否(いな)かは人(ひと)それぞれ。

以爲(おも)ふに、"古典(こてん)"とは頓(にはか)に乘越(のりこ)えがたきもの
僕(やつかれ)、"メンチカツ"なら、
洋食屋(やうしよくや)としては盛(さかり)を過ぎ苔むせる『煉瓦亭』のそれを嗜(この)む。
黴(かび)すら生えんばかりの古式(こしき)"メンチカツ"なれど、好きなものは好き。

食後洋菓子(でせーる)として、"焦糖(キャラメル)アイスクリン"を貰(もら)ふ。
ヴァニラビーンズが顯著(めだ)ち、頗(すこぶ)る濃(こ)き味(あぢ)。
意大利咖啡(えすぷれッそ)もなかなか。
沙糖(さたう)は細(こまか)めの黄雙目(きざらめ)。

良質(よ)き御絞り、杉の利休箸(りきゆうばし)、黒文字(くろもじ)の楊枝(やうじ)。
卓布(てえぶるくろす)こそなきものゝ、餐巾(なぷきん)は眞白(ましろ)き亞麻布(りんねる)。
成澤親方(なりさはおやかた)、法國菜(ふれんち)に通曉(つふ)じながら
本朝(わがくに)作法(さはふ)の美點(よきところ)も亦(ま)た能(よ)く知(し)る

メンチカツの芯が生、飯碗(めしわん)が白色(しろ)と云ふに首傾(くびかし)げつゝも、
これぞ、"平成洋食(へいせいやうしよく)"の嚆矢濫觴(はじまり)
なる賛辭(ことば)を贈(おく)るに、寸毫(すこしも)躊躇(ためら)ひ憚(はゞか)ることなし
文字通り「劃期的(かつきてき)」、すなはち、後世(のちのよ)に殘るべき舖(みせ)

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【照相機】:日本光學 尼康(Nikon) Df 數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 ZF.2 @F2.8
......................蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.8/21 ZF.2 @F4.0~8.0

  • 赤葡萄酒(さけ、ピノ・ノワール)
  • カトラリ
  • 水(みづ)のある卓(てえぶる)

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5位

天冨良 いわ井 (銀座、日比谷、有楽町 / 天ぷら)

1回

  • 夜の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.4
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: -

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 ¥5,000~¥5,999

2014/05訪問 2014/12/23

背をば折(を)り 『いはゐ』揚げたる 鞘巻(さやまき)は われの口にも 合ふとぞ思ふ

【2014-05-24追記】:
久方(ひさかた)ぶりの『いは井』。
掃愁帚(さけ)を酌(く)み交(か)はし、友們(ともら)と談話(かたら)ひあふ宴(うたげ)。
この宵(よゐ)の内容(うちわけ)は粗方(あらかた)冩眞(しやしん)のごとし。
支拂(しはら)ひは大約(およそ)一萬三千圓(いちまんさんぜんゑん)ほど。

一(ひと)つとして不味(あぢあし)きものなしと云ふも、
最(もつと)も舌(した)を悦(よろこ)ばしめたは未(いま)だ幼(いとけな)き"唐黍(たうきび)"。
"阿蘭陀獨活(あすぱら)"揚(あ)ぐる凄技(すごわざ)は尋常(つね)のごとく、
東都(えど)でも屈指(ゆびをり)の手練(てだれ)なるは勿論(いふもさらなり)。

銀杏(いちやう)の俎(まないた)に蔬菜(あをもの)を載(の)せ、
目(め)にも止(と)まらぬ早技(はやわざ)にて疱丁(はうちやう)を用(つか)ふ。
魚(うを)なれば時(とき)に粉(こな)を打(う)ち、衣(ころも)を纏(まと)はせ、
揚上(あげあ)がり端(ばな)を供(いだ)すさま、隼(はやぶさ)の鳩(はと)を襲(おそ)ふに似たり。

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【照相機】:日本光學 尼康(Nikon) Df 數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 ZF.2 @F2.0

【2008-9-30追記】:
數寄屋橋で用を濟ますと午(むま)の刻も間近(まぢか)。勇み立ち久々にいわ井の暖簾を潛(くゞ)る。主(あるじ)の他は誰もをらず、中ほどに腰を下ろす。女將(おかみ)現れ出(いで)品書きとお絞りを手渡す。つぶさに品書き檢(あらた)むるに、「天丼」がなくなり、天麩羅も四點二みなほんからと零點七みなほんの値上げ。

穴子と併(あは)せて、五點二五みなほん。前は同じ内容で四點二みなほんなれば、およそ一みなほんの値上げ。内譯は、蝦脚、蝦、鱚、茄子、女鯒(めごち)、緑色西洋獨活(アスパラガス)、蓮根、穴子、掻き揚げ。この日の突き出しは原木なめこ。茄子と緑色西洋獨活(アスパラガス)に隱し庖丁が入り、揚げ工合絶妙。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
素材      揚げ時間(1) 揚げ時間(2) 揚げ時間(3)    注
===================================================
蝦(卷き)脚    35″              55″
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
蝦         40″    45″~55″  40″,36″, 53″  一人の場合、36″~ 40″
                          大人數で混在の場合、45″~55″
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
墨烏賊              30″
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
鱚               1'20″      1'30″
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アスパラガス          1'20″
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
穴子              4'10″       2'30″    あるいは測定誤りか
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
掻き揚げ                     1'30″
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【2006-10-14追記】:
野暮を承知の時間測定。鞘卷きは今囘四十五乃至五十五秒。最短の墨烏賊が三十秒。鱚は一分二十秒で穴子四分十秒。驚かされた綠色西洋獨活(アスパラ)の祕密が分かつた。隱し疱丁を細かく入れ、百八十度反對側にも輕く疱丁を入れる。揚げ時間およそ一分二十秒ばかり。墨烏賊にも周圍を中心に隱し疱丁が入る。

穴子を揚げて貰(もら)つた時、「前囘に比べて幾分脂が拔けてをりまする」と斷られた。驚く勿(なか)れ、一度お邪魔したゞけの自分を憶えてゐる。手捌(さば)きを眺(なが)むるに一分の隙もなし。滿席であるにも拘(かゝ)はらず、客毎に前菜を用意し、魚を捌(さば)き、揚げて天紙に盛り附ける作業を手際よく一人でこなす。

【2006-05-27記、一部略】:
週末、「片雲の風にさそはれて漂泊の思ひやまず」銀座を彷徨(さまよ)ふ。普段は外濠通りの海側。この日は意を決して山側に歩を進める。鮨水谷寿司幸本店、に數度、奈可久銀座店きよ田は一度も伺(うかゞ)つた例(ためし)なし。實のところ、figeac氏とcrossbiker氏の遣り取りを見てゐて矢も盾も堪らなくなつたのだ。

店の佇(たゝづ)まひは頗(すこぶ)る近代的でカウンタはメラミン板と至つて素つ氣無し。だが厨房内は淸潔であり、道具の類(たぐひ)も磨き込まれてゐる。天丼を含め總て「活けの卷き」であることを確認。天丼好きとは云へ客は自分一人ゆゑ天麩羅でなければ主(あるじ)の技は堪能出來ぬと判斷し、品書きより「梅」を選擇。

 ・「梅」、卷き二本、鱚、椎茸、綠色西洋獨活(アスパラガス)、蓮根、穉鮎(ちあゆ)、蒟蒻(こんにやく)、穴子、掻揚げ天丼、値四千二百圓也。(値三千五百圓+穴子)

熟々(つらつら)主(あるじ)の所作を眺(なが)むるに、活けの卷きを取り出して捌(さば)き、油の温度を何度も確かめ、少しづゝ衣を溶き、やをら、脚を揚げ始める。所要時間およそ三十五秒。淡雪の如く美(うるは)しき結晶鹽?にて戴く。旨い。次いで卷きの胴體部分が一尾づつ供される。揚げ時間およそ四十秒。

これまたほどよき鹽(しほ)で戴く。芯部分は見事な生で甘み充分。二本目は僅(わづ)かに強目に火が通つてゐる。卷きは天麩羅種として中庸の五乃至六匁か。個人的にはみかわ茅場町店の如く八匁ばかりの車蝦が最善だと思ふ。楽亭等で用ゐる「鞘卷き」は、江戸の昔からの傳統とは云へ、聊(いさゝ)か小さきに過ぎる。

鱚はこれまた並の大きさにて揚げ方も月並ながら、味は文句なし。椎茸は立派なものを揚げた後、二つに切つて供す。天汁(てんつゆ)で戴いてみる。この天汁、出汁(だし)が確りしてゐる上、甘過ぎず好み。甘過ぎる天汁、丼汁(どんつゆ)は素材の持ち味を臺無しにして仕舞ふ。これだけの出來なれば天汁も惡くない。

綠色西洋獨活(アスパラ)は白眉。煮ても揚げても、柔らかき穗先と硬い根本でほどよき齒應(ごた)へを兩立させるのは無理。根本の部分の皮を剥(む)くか、二つか三つに切り時間差を設ける他(ほか)はなし。今迄どれだけ穗先の蕩(とろ)けてしまつた綠色西洋獨活(アスパラ)天麩羅や串揚げに泣かされて來たことか。

交叉するやうに天紙に置かれた西洋獨活の根本側を取り出し一口。うむ、絶妙なる齒應(ごた)へで筋一つない。天汁(てんつゆ)では勿體ないので鹽(しほ)で戴く。穗先も齒應(ごた)へ良好。野暮を承知で一つ假説を立てるなら根本部分を捨てるのが鍵か。根本を使はず全體的に適度な齒應へを保つてゐるやうに思ふ。

蓮根は厚味のあるものをこれまたほどよき齒應(ごた)へを殘して揚げてゐる。穉鮎は苦味が心地良い。相當時間を掛けて揚げてあり頭から尻尾迄その儘(まゝ)戴ける。「銀寶あらばお願ひ申す」と註文せしに「江戸前ならざれば用ゐる能はず」との由。で、旬を迎へる穴子に。穉鮎同樣、相當長時間掛けて狐色になる迄揚げる。

金箸で二つに切つて見せるところは他の名のある店と同じ。これまた上身が上になるやうに交叉して天紙に置かれたものを敢(あ)へて尾の方から戴いてみる。みかわ茅場町店の遣り方では、穴子に充分な時間を掛ける代償として、尾の尖端(さき)が過脱水されて仕舞ふ。尚、鍋に入れる際、皮側の餘分な衣を落としてゐる。

およそ一分半を掛けて揚げる芝蝦掻揚げには天一風に柚子が載る。丼汁(どんつゆ)は鹹口(からくち)ながら先週伺(うかゞ)つた一宝のやうに「汁だく」ではないので美味しく戴ける。香の物と蜆の赤出汁付き。香の物は、胡瓜、大根、茄子、白菜で、大根は糠漬け、胡瓜は芥子風味。蜆は小さいながらも肥えてをり、量も充分。

ナプキンは布製、楊枝は穗先長き黑文字で實用性に富む。物靜かな主(あるじ)に氣の利く女將による客あしらひは必要にして充分。小僧さんすら居ない店の中は隅々迄神經が行き屆いてゐる。「梅」に穴子がないと云ふのは寂しいものゝこれだけの丁寧さでこの値段と云ふのはあり得ない。行くなら荒らされてゐない今の内。

  • 水雲(もづく)に赤貝(あかがひ)
  • 麥酒(びいる)
  • 檸檬(れもん)

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6位

鮨竹 (銀座、東銀座、新橋 / 寿司)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2014/12訪問 2015/01/13

丸刈りの 竹内史恵(たけうちふみゑ) 切る烏賊(いか)の 味見る時ぞ 俺(あし)は愉(たの)しき

そも、"(やすけ)"と云ふは誂物(あつらへもの)。
時(とき)に依(よ)り、腹(はら)に應(おう)じ、嗜(この)みに從(したが)ふ
しかるに近會(ちかごろ)は"お任(まか)"強(し)ひる者(もの)數(かず)を不知(しらず)。
鮓(すし)を客(ひと)に合(あ)はせで、客(ひと)を鮓(すし)に合(あ)はす

これ、希臘(ぐれこ)の常言(ことわざ)に、"プロクルステスの寢牀(ねどこ)"と云ふ。
舖(みせ)も店(みせ)なら、客(きやく)も客(きやく)。
麾(さいはひ)、當家(こちら)、修業先(しゆげふさき)の『しみづ』に倣(なら)ひてか、
"お好(この)"、すなはち、"(あつら)"も利(き)く。

寔(まこと)、今(いま)や稀有(まれ)なる若手(わかて)哉(かな)!
若手鮓職人(わかて)の中(うち)、客(きやく)が我儘(わがまゝ)を承(き)くは、
當家(こちら)の外(ほか)は、『青空』など纔(わづ)か一握(ひとにぎ)り。
然(さ)れば、僕(やつかれ)が悦(よろこ)び斜(なゝめ)ならず

最初(いやさき)に、鮓種(すしだね)を示(しめ)す木札(きふだ)を一瞥(ひとにらみ)。
難讀(よみがた)く見苦(みぐる)しき文字(もんじ)。
武●●●(たけ●●●●●)に劣(おと)るとも優(まさ)らぬ、
蛟(みづち)のたうち廻(まは)り、蚯蚓(みゝず)這(は)ひたるがごとき墨跡(すみあと)*)

櫃臺(かうんた)はと覽(み)るに、厚(あつ)さ二寸(にすん)の(ひのき)。
加旃(くはふるに)、楊枝(やうじ)黑文字(くろもじ)、(はし)利休(りきふ)。
適度(ほどよ)き明(あか)るさの照明(あかり)を
檜(ひのき)、柔(やは)らかく四方(よも)に散亂(ち)らし返(かへ)すぞあはれなり。

女(をんな)の命(いのち)が顏(かを)なら、鮓(やすけ)が要諦(かなめ)は舎利(しやり)
二種(ふたくさ)の赤醋(あかず)を用(つか)ひ、(しほ)と(す)を效(き)かす。
就中(わきても)醋(す)は強(つよ)め
炊(た)くは一日一度(ひにひとたび)、一時(いッとき、=2時間)寢(ね)かし置(お)く」とぞ。

酢飯(すめし)は電子保温器(じやー)の中(なか)に留(とゞ)め、
頻繁(こまめ)に小櫃(こびつ)に移(うつ)し用(つか)ふ。
鮓(すし)漬(つ)くる砌(みぎり)、
右(めて)に飯(いひ)を取(と)りてこれを丸(まる)め舎利玉(しやりだま)となす

その所作(ふるまひ)は、牛歩(うしのあゆみ)のごとく緩慢(ゆるやか)。
古來(いにしへより)の惡習(あしきならひ)"(す)て舎利(しやり)"はなし。
底部(そこ)を形成(つく)るに、
多(おほ)くの親方(おやかた)は左拇(ひだりおやゆび)用(つか)ふが尋常(つね)。

反之(しかるに)、 當家(こちら)女東道(あるじ)は右拇(みぎおやゆび)に頼(たよ)る。
小手(こて)に返(かへ)し、掌上(たなぞこ)を旋轉(まは)すこと三度(みたび)。
穴子(あなご)に至(いた)りては六度(むたび)と云ふ多(おほ)さ。
元來(もとより)、六面(ろくめん)なら唯一度(たゞのひとたび)にて足(た)る筈(はづ)

以爲(おも)ふに、これ、『しみづ』より受繼(うけつ)ぎし惡弊(あしきならひ)。
今(いま)はなき『喜久好』清水(しみづ)親方(おやかた)なれば、
神速(と)きこと、隼(はやぶさ)の鳩(はと)を襲撃(おそ)ふに彷彿(に)たり
あるいは、蟷螂(かまきり)の蝉(せみ)捕捉(とら)ふるに異(こと)ならず

扨(さて)、
握(にぎ)り終(を)へたる鮓(やすけ)を口中(くちのなか)へと抛(はう)り込(こ)むや
須臾(たちまち)にして彼此(をちこち)に彈(はぢ)け散(ち)る
宛然(あたかも)、水滴(みづたま)の油(あぶら)に爆(は)づるがごとし。

飯(しやり)の一粒(ひとつぶ)一粒(ひとつぶ)立(た)つは明白(あきらか)なれど、
生憎(あやにく)、その舌觸(したざは)りは今一(いまひと)つ
押竝(おしな)めて、舎利(しやり)に沙糖(さたう)用(つか)はざれば
すなはち、冷(さ)むるに從(したが)ひ滑(なめ)らかさを喪失(うしな)ひゆくが通例(つね)。

(しお)は西班牙(いすぱにあ)。
その儘(まゝ)舐(な)むるに秋毫(つゆ)舌(した)刺(さ)すことあらで、
穴子(あなご)にも好適(よくあふ)。
鹽角(しほかど)なく旨味(うまみ)に富(と)むは、かのゲランド鹽(えん)に肉薄(せま)る。

近會(ちかごろ)偶然(たまさか)口(くち)にせし、
土州(とさ)、能州(のと)、小笠原(おがさはら)の鹽(しほ)は舌先(したさき)を刺(さ)す
本朝(わがくに)の鹽(しほ)で圓(まろ)やかなるは、
龍圓』好(この)みて用(つか)ふ"麥飯石(ばくはんせき)"より精(こしら)へたる(しほ)。

山葵(わさび)卸(おろ)すは(あかゞね)。
鮫皮(さめがは)なら芳香(かをり)立(た)ちて糊(のり)のごとき粘(ねば)りに富(と)む
辛味(からみ)の強(つよ)く出(いづ)るも鮫皮(さめがは)ならでは
上質(よ)き眞妻山葵(まづまわさび)なれば銅(あかゞね)とても粘(ねば)りを生(う)む

その限(かぎ)りでは、當家(こちら)の山葵(わさび)には滑(なめ)らかさを缺(か)く
山葵(わさび)の所爲(せゐ)か、
はたまた卸金(おろしがね)が目(め)の粗(あら)きに過(す)ぐる所爲(せゐ)か?
老舖(しにせ)の多(おほ)くは、鮫皮(さめがは)を敬(うやま)ひて遠(とほ)ざく

この日(ひ)の白眉(はくび)は、春子昆布(かすごゝぶ)(しび)、鶏卵燒(たまごやき)。
ほかけ』、否(いな)、『しみづ』をも凌(しの)ぐ旨(うま)さの春子(かすご):
瑞々(みづみづ)しさを寸毫(つゆ)失(うしな)ふことなく、舌(した)に滑(なめ)らか
しかも、徒(いたづら)に昆布(こぶ)の勝(か)つことのなきに只顧(ひたすら)驚(おどろ)く。

外見(みため)と對照的(うらはら)に奥深(おくぶか)き旨味(うまみ)に富(と)み、
適度(ほどよ)き酸味(さんみ)と鐵分(かなけ)に溢(あふ)るゝ(しび)。
倩(つらつら)、その色(いろ)を窺(うかゞ)ひ、その味(あぢ)を檢(あらた)むるに、
しみづ』と同(おな)じ仲卸(しいれさき)。

就中(わきても)一際(ひときは)魂(たましひ)消(け)したるは鶏卵燒(かひごやき)。
修業先(しみづ)と同(おな)じ播州鶏蛋(はりまのかひご)に添加(くは)ふるは、
芝蝦(しばえび)の(おぼろ)、三州味醂酒(みかはみりんざけ)、沙糖(さたう)のみ。
味(あぢ)濃(こ)く、半片(はんぺん)かと見紛(みまが)ふ滑(なめ)らかさ、柔(やは)らかさ

江戸(えど)にその名(な)を轟(とゞろ)かす鋪(みせ)は、粗方(あらかた)、
山薯蕷(やまいも)擂込(すりこ)みたる厚燒(あつやき)蛋糕(かすていら)。
今(いま)や東都(えど)にも稀有(まれ)なる薄燒(うすやき)にして、
かくのごとく上質(よ)き鶏蛋炙(かひごやき)を不知(しらず)

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*)私見(しけん)にて御座候(ござゝふらふ)。

【照相機】:日本光學 尼康(Nikon) Df 數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 ZF.2 @F2.0

  • 玉薤(さけ)のある櫃臺(かうんた)
  • 菜花(なばな)
  • 鮃(ひらめ)

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7位

鮨 おとわ (こどもの国、恩田 / 寿司)

1回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.8
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥15,000~¥19,999

2014/12訪問 2015/02/11

かの『おとわ』 聞きて久しく なりぬれど 月日(つきひ)流れて 今(いま)食(は)みにけり

有一日(あるひ)、若(わか)き鮓好(すしず)きが評(はなし)に觸發(いざなは)れ、
音(おと)に聞(き)く當家(こちら)『おとわ』の暖簾(のれん)を潛(くゞ)る。
勿驚(おどろくなかれ)、客(きやく)、纔(わづ)に僕(やつかれ)一人(ひとり)。
現今(いま)や晝飧(ひる)も"お任(まか)"のみの商賣(あきなひ)。

一人(ひとり)のために米(こめ)を炊(た)き、
鹽(しほ)・醋(す)を調合(あ)はせ舎利(すめし)となしたるは明白(あきらか)
只管(ひたすら)恐縮(おそれかしこむ)ほかに術(すべ)なし。
支拂(しはらひ)は玉薤(さけ)一合(いちがふ)を含(ふく)め、大約(およそ)一萬五千圓。

■【普請(ふしん)・(しつら)】:
倩(つらつら)賈内(なか)の光景(ありさま)を窺(うかゞ)ふに、
櫃臺(かうんた)は(ひのき)、厚(あつ)さ三寸(さんずん)の一枚板(いちまいゝた)。
見上(みあ)ぐれば網代天井(あじろてんじやう)、
見下(みお)ろせば黑文字(くろもじ)に利休箸(りきふばし)と手拔(てぬ)かりなし。

漬場(つけば)には不銹鋼(すていんれす)の機構(からくり)兩個(ふたつ)。
一(ひと)つは茶釜(ちやがま)、今一(いまひと)つは蒸籠(せいろう)、これなり。
この兩個(ふたつ)には火(ひ)入(い)りて常時(つねに)絶(た)えることなし
隣(となり)には土州備長炭(とさびんちやうたん)を熱源(ねつげん)とする燒臺(やきだい)。

■【舎利(すめし)】:
案下某生再説(それはさておき)、當家(こちら)の鮓(すし)。
握鮓(にぎりずし)が根幹(ね・みきをなすもの)は舎利(しやり)
舎利(しやり)こそ握鮓(にぎり)の味(あぢ)の決手(きめて)たるは疑(うたが)ふべくもなし。
(こめ)、(す)、(しほ)、沙糖(さたう)、温度(あたゝかさ)、水加減(みづ)、、。

適當(ほどよ)き含水量(みづけ)にせばや」と、
古米(こまい)・新米(しんまい)を時季(じき)に應(おう)じて混合(まぜあはす)
口(くち)に含(ふく)むや、忽地(たちまち)解(ほど)けて粒(つぶ)と化(な)る
その容(さま)、宛然(あたかも)、風(かぜ)に彈(はじ)くる鳳仙花(ほうせんくわ)のごとし

米(こめ)は粒立(つぶだ)ちて、舌(した)に滑(なめ)らか
これを吟味(あぢは)ふに、沙糖(さたう)由來(ゆらい)の甜(あまみ)は纔(わづ)か。
亭主(あるじ)に據(よ)らば、沙糖(さたう)は「ほんの一摘(ひとつま)み」。
鹽梅(すとしほのかげん)も僕(やつかれ)が嗜(この)みに秋毫(つゆ)異(こと)なることなし。

(す)・(しほ)、ともに、
弱(よは)からず、強(つよ)きに過(す)ぎず、穩當(おだやか)なる味(あぢ)はひ。
青空』のごとく妄(みだ)りに醋(す)が勝(か)つこともなく、
二葉鮨』のごとく徒(いたづら)に鹽(しほ)が優(まさ)ることもなき鹽梅(あんばい)。

醋(す)は米醋(よねず)。
今(いま)をときめく赤醋(あかず)避(さ)くるはそれなりの意(こゝろ)ありてこそ
すなはち、その理由(ことわり)、
鮓種(すしだね)への邪魔(じやま)を嫌(きら)へばなり」と、、。

主人(あるじ)謂(い)ひて曰(いは)く、
調合(てうがふ)は握鮓(にぎり)より逆算(ぎやくさん)して半晌前(はんときまへ)
すなはち、開店(みせびらき)小半晌前(こはんときまへ)に酢飯(すめし)となす。」と、、。
ジャーを嫌(きら)ひ、櫃(ひつ)を湯煎(ゆせん)にかけ保温(あたゝかさをたもつ)」とも。

握鮓(にぎりずし)漬(つ)くるにあたり、
櫃(ひつ)より小(こ)まめに、より小(ちい)さな櫃(ひつ)へと移(うつ)す。
これを活(い)かすは、慣(な)れたる手附(てつ)き、無駄(むだ)なき手捌(てさば)き
それを前(まへ)に、形状(かたち)、「(しづ)む、沈(しづ)まぬ」は些末(とるにた)らぬ。

■【鮓種(すしだね)に施(ほどこ)す技藝(わざ)】:
最初(いやさき)に小鰭(こはだ)はと檢(み)るに、
(しほ)●●分(ふん)*)(す)●●分(ふん)と眞鯖(さば)竝(なみ)。
でありながら、『壽司政』、『しみづ』のごとき強(つよ)さを感(かん)じさせぬ。
仕込(しこ)みの最中(さなか)、新子(しんこ)のごとき小鰭(こはだ)はその半分(なかば)

(おもて)●●分(ふん)、(うら)●●分(ふん)と、
壽司幸』なみに手間暇(てまひま)惜(を)しまぬ鶏卵燒(たまごやき)。
燒斑(やきむら)なく、しかも舌(した)に滑(なめ)らか
(あまみ)・酒精分(さけ)、ともに控(ひか)へめながらも適當(ほどよし)。

烏骨鶏蛋(うこつけいのたまご)に加(くは)ふるは、
生(なま)の芝蝦(しばえび)に大和薯蕷(やまといも)の二種(ふたくさ)。
若(も)しこれらの中(うち)何(いづ)れか一(ひと)つでも缺(か)くれば
則(すなは)ち、鶏卵(たまご)燒(や)くを斷念(あきら)むるほどの凝(こ)りやう。

人膚(ひとはだ)ほどに温(あたゝか)き穴子(あなご)。
蕩(とろ)けんばかりに茹上(ゆであ)げたるを氷室(ひむろ)に冷(ひ)やし置(お)き
供(いだ)す間際(まぎは)、件(くだん)の蒸器(むしき)以(も)て温(あたゝ)む
寔(まこと)、新(あらた)なる試(こゝろ)み

(しび)は「背上(せかみ)のみ、その外側(そとがは)より用(つか)ふ」となむ。
不圖(はからずも)、『喜壽司』、今(いま)はなき『喜久好』を聯想(おもふ)。
亭主(あるじ)嫌(きら)ふは、近會流行(ちかごろはやり)の長期熟成(ちやうきじゆくせい)。
當家(こちら)、「寝(ね)かしてもせいぜい、●日~●週間」とのよし。

上質(よ)きものはなるべく生(なま)の儘(まゝ)」を旨(むね)とし、
振鹽(ふりじほ)を避(さ)け、昆布〆(こぶじめ)を嫌(きら)ふ。
但(たゞ)し、魚(うを)の鹽燒(しほやき)はこの限かぎ)りにあらず。
「白鱚(きす)なれば尋常(つね)のごとく昆布締(こぶじ)めとなす」とも、、。

煮切(にきり)は二種(ふたくさ)。
穴子(あなご)が煮詰(につめ)の薄(うす)きこと『すきやばし』に髣髴(さもにたり)。
亭主(あるじ)に據(よ)らば、
煮詰(につ)めもまた「鮓種(すしだね)に從(したが)ひ、これを使(つか)ひ分(わ)く」と。

倩(つらつら)酒菜(さかな)の(しほ)を窺(うかゞ)ふに、
かの南蠻渡來(なんばんわたり)、ゲランド鹽(えん)に瓜兩個(うりふたつ)。
曰(いは)く、「仕込(しこ)みにまで悉(ことごと)くこの鹽(しほ)を用(つか)ふ
その故(ゆゑ)如何(いかん)となれば、味、能(よ)く鮓(すし)に適(かな)へばなり」。

山葵(わさび)はと着目(み)るに、
鮫皮(さめがは)用(つか)ひ、 圓(まどか)描(ゑが)くがごとくに擂卸(すりおろ)す。
粘(ねば)りに富(と)み香(かを)り豐(ゆた)か
蓋(けだ)し、最上(もつともよ)き豆州(いづ)眞妻山葵(まづまわさび)なるべし。

■【とりわけ味覺(した)に合(あ)ひたるは】:
舎利(すめし)
小鰭(こはだ)
(しび)
鶏卵燒(たまごやき)
(ぶり).............所謂(よに云ふ)"(ぶり)しやぶ"

■【(いさゝ)か嗜(この)みに合(あ)はざるは】:
穴子(あなご).........舊來技法(むかしながらのやりかた)が優(まさ)る。
唐墨(からすみ).......鹽(しほ)勝(か)ちて旨味(うまみ)に缺(か)く
柚子(ゆず)・酢橘(すだち)を濫用(みだりにもちゐ)ること。

■【(やつかれ)が意(かんがへ)に一致(あ)ふところ】:
(すし)は舎利(すめし)が(いのち)。
白身魚(しろみ)には(しほ)、就中(わきても)ゲランド鹽(えん)が最適(あふ)。
赤身(あかみ)は醤油(しやうゆ)に限(かぎ)る。
過度(みだり)に(ね)かすは罪(つみ)。
生(なま)でよきものはその儘(まゝ)とし、徒(いたづら)に弄(もてあそ)ぶを嫌(きら)ふ

■【(やつかれ)が意(かんがへ)に沿(そ)はざるは】:
・「人手(ひとで)足(た)らざるにより鮓(すし)を專(もつぱら)らにす」と言(い)ひ、
海苔卷(のりまき)、(わん)供(いだ)すを拒(こば)むも、"お任"のみ。
・「客(まらうど)に供(いだ)すものにあらず」とて、骨邊肉(あら)を垂準(さげし)む。
・「素材(すしだね)を活(い)かす」と云ひつゝ、柑橘類(たちばなのたぐひ)に頼ること。

■【管待(もてなし)ぶり、居心持(ゐごゝち)】:
文句(もんく)なし
この日(ひ)、客(きやく)は纔(わづ)かに僕(やつかれ)一人(ひとり)
米(こめ)もわざわざそのために炊(た)き
茶釜(ちやがま)・蒸籠(せいろう)にも常時(つね)に火(ひ)が燈(とも)る

■【結論(まとめ)】:
"お任(まか)"としては尻切蜻蛉(しりきれとんぼ)の恨(うら)みあり。
鮓(すし)を專(もつぱら)らに」と云ふなら、
"お好(この)"**)、せめて、數千圓(すうせんゑん)の""を供(いだ)すべき。
その値なら、『壽々』、嘗(かつ)ての『橋口』竝(なみ)、もしくはそれらを凌(しの)がん。

さいとう』など『かねさか』一門(いちもん)ですら晝(ひる)ならそのくらゐの價格(ね)。
かの『すきやばし』ですら、一昔前(ひとむかしまへ)まで「お決まり」なるものありき。
ともに舎利(しやり)の素晴(すば)らしき『とかみ』も五千圓餘(ごせんゑんあまり)。
"(やと)はれ"ながら、『とかみ』佐藤親方(さとうおやかた)も見上(みあ)げたもの。

うを徳』なら西洋時辰儀(せいやうどけい)にして二~四時間ほど(くつろ)
玉薤(さけ)と上質(よ)き酒菜(さかな)に潮汁(うしほじる)、
さらには時季(じき)の水菓子(みづぐわし)まで含め大約(およそ) 一萬圓(いちまん)。
唐墨(からすみ)は『おとわ』を凌駕(はるかにしの)ぎ、鶏卵燒(たまごやき)すら優る。

(かつを)、(むなぎ)***)の割烹調理法(あつかひ)も『うを徳』に分(ぶ)。
ともに(わら)にて燻す(かつを)も、『うを徳』は大蒜(おほひる)を忌(い)まず。
(むなぎ)、就中(わきても)、(かは)の扱(あつか)は勿論(いふもさらなり) 。
おとわ』の雋(すぐ)るは、舎利(しやり)、惜しみなく佳鹽(よきしほ)用(つか)ふこと。

滯在時間(たいざいじかん)一時間半(いちじかんはん)。
般若湯(さけ)こそ貰(もら)へど、
卷物(まきもの)も(わん)も水菓子(みづぐわし)もなしに一萬五千圓は廉(やす)からず。
綜合的(すべてくるめ)て判斷(みきは)むるなら、僕(やつかれ)、『うを徳』を擇(えら)む。

----------------------------------
*)亭主(あるじ)が智慧(ちゑ)に關(かゝ)はることでもあり、敢(あ)へて伏(ふ)す。
**)食材(すしだね)の損失(むだ)を考慮(かんが)みるに、それは無理(むり)か?
***)ともに、この日(ひ)の獻立(こんだて)にはなし。

【照相機】:日本光學 尼康(Nikon) Df 數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 ZF.2 @F2.4

  • 山葵(わさび)を卸(おろ)す
  • 櫃(ひつ)のある漬場(つけば)
  • 山葵(わさび)

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8位

鮨 とかみ (新橋、内幸町、銀座 / 寿司)

1回

  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥8,000~¥9,999

2015/02訪問 2015/03/03

握りなら 箸さへ要らず 鮓『とかみ』 訪(たづ)ぬる今日(けふ)は 鮓をこそ啖(くら)へ

【2015-02-28追記】:
此度(こだみ)は兩個(ふたり)の友(とも)と、、。
舎利(しやり)は前囘(まへ)に秋毫(つゆ)異(こと)なるところなし。
すなはち、鹽(しほ)と醋(す)を效(き)かす流儀(やりかた)
就中(わきても)、赤醋(あかず)は不意(おもは)ず背筋(せすぢ)が伸(の)ぶるほど

「抑(そも)、鮓(すし)には"自(おの)づと背筋(せすぢ)伸(の)ぶる鮓(すし)"と、
"背筋(せすぢ)伸(の)びざる鮓(すし)"の二種(ふたくさ)あり。」
かく曰(のたま)ふは、年少(としゝた)ながらも兄(このかみ)と仰(あふ)ぐ友(とも)。
不意(おもは)ず膝(ひざ)を敲(たゝ)き頬(ほゝ)緩(ゆる)ませ打點頭(うちうなづ)く

鹽梅(あんばい)、(ほど)け方(かた)、舌觸(したざは)り、齒應(はごた)へ、
舎利(しやり)の素性(すぢめ)の強烈(つよさ)たるや
東都(えど)が鮓(やすけ)でも屈指(ゆびをり)て數(かぞ)ふるほど
時(とき)に纖細(こまやか)なる味(あぢはひ)の白身魚(しろみ)を辱(はづか)しむ。

しかはあれど、最初(いやさき)より最後(いやはて)に至(いた)るまで
口(くち)に抛(はう)り込(こ)む都度(たび)
背筋(せすぢ)が伸(の)び、魂(たましひ)搖(ゆ)さぶられて飽(あ)くことなし
紛(まが)ふ方(かた)なき上質(よ)き鮓(すし)

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鮃(ひらめ)縁側(えんがは)、墨烏賊(すみいか)下足(げそ)、細魚(さより)、
鮪(しび)、鮪(しび)肥的(あぶらみ)、小鰭(こはだ)、春子(かすご)、車蝦(くるまえび)、
金目(きんめ)、蛤(はまぐり)、眞鯖(さば)、玉珧(たひらぎ)、穴子(あなご)、
鐵火卷(てつくわまき)、鶏卵燒(たまごやき)。
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(しび)は醤油漬(しやうゆづけ)、金目(きんめ)は昆布(こぶ)〆。
(ひらめ)は八百匁(はつぴやくもんめ、=3kg)を超(こ)す巨大(おほ)きなもの。
縁側(えんがは)としては齒應(はごた)へと浮騰(ほとばし)る旨味(うまみ)に缺(か)く。
とは云へ、晝(ひる)の握(にぎ)りに縁側(えんがは)とは豪儀(ふとつぱら)。

春子(かすご)の〆淺(あさ)かりしかば、その理(ことわり)を訊(たづ)ぬるに、
東道(あるじ)應答(いらへ)て曰(いへら)く、
これ醋〆(すじめ)にあらず!
鹽(しほ)にて〆、朧(おぼろ)*)漬(づ)けせしものなり」と。

倩(つらつら)車蝦(くるまえび)の茹(ゆ)で工合(ぐあひ)を窺(うかゞ)ふに、
僕(やつかれ)が好(この)みに寸毫(つゆ)相違(ことな)るところなし。
「均一(ひと)しき味(あぢはひ)にせばやと、茹(ゆ)で時間(じかん)は、
質量(おほきさ)に應(おう)じ、個體(もの)に從(したが)ふ」。

この日(ひ)の(はまぐり)は"漬込(つけこみ)"としては滑(なめ)らかさに缺(か)く。
穴子(あなご)、(はまぐり)とも煮詰(につめ)は薄目(うすめ)。
稀薄(うす)き煮詰(につめ)は近會(ちかごろ)の流行(はやり)。
とは云へ、ともに、今一(いまひと)つか、、?

(しび)醤油漬(しやうゆづけ)はあまりに鹹(しほから)く、
不圖(はからずも)、東道(あるじ)に漬込(つけこ)み時間(じかん)を質問(とひたゞ)す。
纔(わづ)かながらも口中(くち)に冷(つめ)たき細魚(さより)。
燒(や)き目(め)の焦(こ)げが舌(した)を混亂(まど)はす玉珧(たひらぎ)。

眞鯖(さば)を二枚(にまい)に削(そ)ぎて重(かさ)ね用(つか)ふは、
此方(こちら)の親方(おやかた)が發案(かんがへ)と云ふ。
一枚(いちまい)では厚(あつ)く、三枚(さんまい)では薄(うす)きに過(す)ぐ」と。
猫(ねこ)も杓子(しやくし)も"三枚(さんまい)"とは笑止千萬(あざわらふべきこと)。

上面(うへ)を炙(あぶ)りたる"鶏卵燒(たまごやき)"に眼精(まなこ)白黒(しろくろ)。
沙糖(さたう)の粒(つぶ)となりて殘(のこ)る容(さま)『福砂屋』カステイラのごとし。
何(なん)でも「クレーム・ブリュレに倣(なら)ひたるもの」とか。
未完成(いまだならず)と雖(いへど)も、新(あら)たなる實驗(こゝろみ)

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*)蓋(けだ)し、黄身朧(きみおぼろ)のごときものならん。
【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZF.2 @F2.0

【2014-11-19記】:
有一日(あるひ)、氣(き)にかゝりて久(ひさ)しき當鋪(こちら)『とかみ』に、、。
嘗(かつ)て、かの『水谷』在(あ)りし地(ところ)。
神泉 (しんせん)にて技藝(わざ)を習得(ならひおぼ)え、
外堀通(そとぼりどほ)り土橋(どばし)近傍(ちかく)に創業(みせびらき)。

通(かよ)ひ慣(な)れたるこの界隈(あたり)。
さはあれど、目印(めじるし)の日航飯店(につくわうほてる)は跡形(あとかた)もなし。
懼(おそ)る懼(おそ)る前(まへ)を進(すゝ)むに、それらしき大厦(びる)。
地下(ちか)への階段(きざはし)降(を)りるや、見覺(みおぼ)えのある扉(とびら)。

扉(とびら)開(ひら)きて賈内(なか)の光景(ありさま)を窺(うかゞ)ふに、
嘗(かつ)ての『水谷』に寸毫(つゆ)異(こと)なるところなし。
俗(よ)に云ふ"居拔(ゐぬ)き"。
最初(いやさき)に、辛口(からくち)の掃愁帚(さけ)を冷(ひや)で貰(もら)ふ。

この日(ひ)の獻立(こんだて)は、
鮃(ひらめ)、白烏賊(しろいか)、魳(かます)、鮪(しび)、小鰭(こはだ)、
春子(かすご)、鮭腹子(さけはらこ)、眞鯖(さば)、穴子(あなご)、鶏卵燒(たまごやき)。
追加(ついか)で朝鮮蛤(てうせんはまぐり)。

豫(かね)てより音(おと)に聞(き)く當家(こちら)の舎利(しやり):
噂(うはさ)に相違(たが)はず沙糖(さたう)に頼(たよ)らで、
二種(ふたくさ)の赤酢(あかず)を巧妙(たくみ)に用(つか)ひこなす。
すなはち、江戸(えど)横井釀造(よこゐ)に尾州(びしう)中埜酢店 (みつかん)、これなり。

親方(おやかた)が手(て)になる鮓(すし)を口中(くちのなか)に抛(はふ)り込(こ)むや、
米粒(こめつぶ)の彈(はぢ)くること熟(う)れたる鳳仙花(ほうせんくわ)に似(に)たり。
粒(つぶ)が立(た)ちて、舌(した)に滑(なめ)らか
奧齒(おくば)の舎利(しやり)は瞬(またゝ)く中(うち)に、咽喉(のみど)に消(き)ゆ。

そも、米粒(こめつぶ)の立易(たちやす)さと滑(なめ)らかは、相反(あひはん)するもの。
しかも砂糖(さたう)を避(さ)けつゝ、これらを兩立(ふたつながらにならべたゝ)すは、
寔(まこと)、手煆煉(てだれ)の技藝(わざ)。
宛然(あたかも)、鬼神(きしん)の所業(ふるまひ)でも眺(なが)むるがごとし。

(す)と(しほ)の用法(つかひかた)は大膽(だいたん)にして細心(さいしん)。
就中(わきても)、鹽(しほ)使(づか)ひには驚(おどろ)くばかり。
今(いま)はなき千川(せんかは)『すゞ木』、
あるいは、今(いま)なほ續(つゞ)く木挽町(こびきちやう)『二葉鮨』を髣髴(おもはす)。

温度(あたゝかさ)、齒應(はごた)へ、舌觸(したざは)り、鹽梅(あんばい)、
悉(ことごと)く、僕(やつかれ)嗜(この)みに適(かな)ふ。
酢(す)の顯著(きはだ)つ『青空』、萬人向(ばんにんむ)けの『さいとう』より上(うへ)。
否(いな)、「上下(うへした)」と云ふより、「僕好(やつかれごの)み」と云ふべきか?

親方(おやかた)に據(よ)らば、(ひらめ)は〆てより四日目(よつかめ)。
齒應(はごた)へこそ失(う)せぬれど、旨味(うまみ)頗(すこぶ)る強(つよ)し。
生(なま)の儘(まゝ)ではなく、振鹽(ふりじほ)を施(ほどこ)し、寢(ね)かしたるもの。
白身魚(しろみ)は身(み)の活(い)きたものが嗜(この)みなれど、これはこれで吉(よし)。

追加(ついか)の(はまぐり):
九十九里(くじふくり)にて漁(すなどら)れし朝鮮蛤(てうせんはまぐり)。
これを甚(いと)輕(かろ)く茹(ゆ)で、風習(ならひ)の"漬込(つけこみ)"となす。
朝鮮蛤(てうせんはまぐり)とは云へ、本蛤(ほんはまぐり)にも劣(おと)らぬ口味(あぢ)。

鹽(しほ)強(つよ)く、酢(す)極(いと)輕(かる)き眞鯖(さば):
酢(す)は纔(わづ)か數分(すうふん)と云ふ。
秋毫(つゆ)臭(くさ)みなく、輕(かろ)やかなる味(あぢ)はひ。
すきやばし』・『しみづ』とは好對照(かうたいしやう)の流儀(やりかた)。

春子(かすご)、小鰭(こはだ)の輕(かろ)やかさも眞鯖(さば)に同(おな)じ。
與兵衞鮓(よへゑずし)』の昔(むかし)は(ひらめ)を醤油漬(しやうゆづけ)、
眞鯵(あぢ)を酢締(すじめ)、烏賊(いか)は醤油煮(しやうゆに)となせしかど、
今(いま)や生(なま)固有(ならでは)の性質(もちあぢ)を活(い)かすが習慣(ならひ)

(はまぐり)の漬込(つけこみ)も、眞鯖(さば)の酢締(すじめ)も、
年々歳々(としをかさぬるほどに)、淺(あさ)く、輕(かろ)く成(な)りゆくは
時代(とき)の趨勢(ながれ)
これに逆(さか)らふ者(もの)、もはや、滅亡(ほろび)を待(ま)つほか術(すべ)なし。

骨邊肉(あら)の未醤椀(みそわん):
主人(あるじ)に據(よ)らば、白身(しろみ)の骨邊肉(あら)はその儘(まゝ)、
青魚(あをざかな)は(ほね)を干(ほ)し、これを汁(しる)となすとか。
以爲(おも)ふに、骨邊肉(あら)は未醤仕立(みそじたて)より潮汁(うしほじる)が吉(よい)

鶏卵燒(たまごやき)は銀座(ぎんざ)『Q 』讓(ゆづ)り。
薯蕷(いも)の類(たぐひ)を避(さ)け、芝蝦(しばえび)ばかりを用(つか)ふ。
(しび)の美味(うま)さは勿論(いふもさらなり)*)
脂分(あぶら)、鐵分(てつぶん)、(さんみ)、その都(すべ)てが心持(こゝち)よし。

(まないた)は(ひのき)なるに、
(ひつ)は漆塗(うるしぬ)り、種筥(たねばこ)は煌(きら)びやかなる螺鈿(らでん)。
その理由(ことわり)を訊(たづ)ぬれば、應答(いらへ)て曰(いは)く、
「その故(ゆゑ)如何(いかん)となれば、黴(かび)を嫌(きら)へばなり」と。

舎利(しやり)の巧妙(うま)さは東都(えど)でも屈指(ゆびをりてかぞえる)ほど
鮓種(すしだね)の扱(あつか)ひも他所(よそ)の若手(わかて)に劣(おと)らず
寧(むし)ろ勝(まさ)るほど。
實(げ)に、想定外(おもひのほか)に佳店(よきみせ)

辭別(いとまごひ)せんとするに、隣席(となり)より聲(こゑ)あり。
その顏(かんばせ)を窺(うかゞ)ふに人品骨柄(じんぴんこつがら)卑(いや)しからず。
紛(まが)ふ方(かた)なき湯島(ゆしま)のK親方(おやかた)。  
「遠(とほ)からず、再(ま)た伺(うかゞ)ふべし」と告(つ)げ遑(いとま)を乞(こ)ふ。

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*) 近會(ちかごろ)築地魚市場(つきぢ)で威勢(いくほひ)ある"山●"が背後(うしろ)とか。
別説(べつせつ)では、香港(しやんがん)"板●壽司(いた●●すし)"とも、、。

【照相機】:日本光學 尼康(Nikon) Df 數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 ZF.2 @F2.4

  • 微笑(ほゝゑ)む佐藤親方(さたうおやかた)【撮影許可濟】
  • 佐藤親方(さたうおやかた)【撮影許可濟】
  • 鮪(しび)漬(つ)くる佐藤親方(さたうおやかた)【撮影許可濟】

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