酔狂老人卍さんのマイ★ベストレストラン 2011

『此世をハ と里(り)や お暇尓(に) せん古(こ)う能(の) 煙りと供尓(に) 者(は)ひ 左樣なら』 (十返舎一九)

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酔狂老人卍 (70代以上・男性) 認証済

マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
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コメント

『一風庵』、『徳山鮓』、『縄屋』、『料亭川柳』、『旅舎右馬允』は感慨(おもひ)で深(ぶか)き鄙(ひな)の名店。

『うを徳』は、近會(ちかごろ)特に足繁く通ふ鮨屋。
『なか田』でも屈指(ゆびをり)の手煆煉(てだれ)たりし先代讓りの江戸前の技藝(わざ)に加へ、
自らは京師(みやこ)にて割烹修業せし技藝(わざ)を活かす。
鮪の質、鍋・疱丁の手入れこそ銀座の高名(なだか)き廛(みせ)に見劣りすれど、
  ・混まず、
  ・價格(ね)も廉く、
  ・居心持(ゐごゝち)よく、
  ・季節・旬が肌で感じられ、
  ・口味(あぢ)も慥(たしか)

何氣なきやりとりを經て天然鰻を置くやうになるなど、日々、努力・精進・工夫を怠らず。
天然鰻白燒きの出來は專門店を凌ぐほど。

  ・玉薤(さけ)
  ・(京風)割烹
  ・鮨
  ・鰻
  ・鼈
  ・時季の水菓子
が一つの店で堪能できるのも魅力。

淺草で晝飧(ひるめし)となれば鰻の『つるや』に鮨の『橋口』。

『つるや』は刺身・天丼まで扱ふ大衆店なれど、時季には各地の天然鰻を供(いだ)す。
燒き・タレが好み。

『橋口』は、醋(す)キリヽと締りて、舎利(しやり)もよく、三千圓とは思へぬ充實ぶり。

マイ★ベストレストラン

1位

うを徳 (東向島、曳舟、京成曳舟 / 寿司)

51回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 -
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.8

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 ¥20,000~¥29,999

2024/03訪問 2024/03/20

「龍膽鳳髄(うみやまの めづらしきあぢ)」 盡(づ)くしにも 安堵(こゝろのなご)む "款冬未醤(ふきみそ)"の佳味(あぢ)

"櫻鯛(さくらだひ)"に"螢烏賊(ほたるいか)"、"若銀口魚(わかあゆ)"、
"櫻鰕(さくらえび)"、"飯蛸(いひだこ)"、"油菜(なばな)"、"款冬(ふき)"、"(たかむな)"、、
と、靑陽(はる)の息吹(いぶき)を、眼(め)で知(し)り、舌(した)で悟(さと)る
"棘鬣魚(まだひ)"は、"卵巢(たまご)"に"精巢(しらこ)"まで、、。

「"鳥蛤(とりがひ)"は初夏(なつのはじめ)のもの」、、
と思(おも)ひきや、「早春(はるのはじまり)にも」との(よし)。
"身肉(み)"ばかりでなく、"(きも)"も"螢烏賊(ほたるいか)"と一緒(とも)に堪能(あぢはふ)。
×忻(だま)し、×嵩増(かさま)し、〇雋永(いとうまし)

久方(ひさかた)ぶりの"(かはかめ)"。
"野生(いけやかはにすむもの)"歟(か)?、"養殖(ひとがやしなひそだてたるもの)"歟(か)?、
"大小(おほきさ)"、"性別(めすをす)"、"時季(とき)"、"(え)"、、等々(などなど)、
それらに依存(よ)り、その"味(あぢはひ)"千差萬別(さまざま)

そこは高名(よにかくれな)き、
遠州濱名湖(はまなこ)《服部中村養鼈塲(はつとりなかむらやうべつじやう)》の"(かはかめ)"。
"小宮親方(こみやおやかた)"の廚藝(わざ)と相乘效果(あひま)り、
不味(あぢあし)き理由(ことわり)あるべからず

《上總竹岡(たけをか)》"(たちうを)"、《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、
"魨精巣(ふぐのしらこ)"、亦(また)然(しかり)。
可特筆(かきしるすべき)は"この鯖(まさば)"! (※産地失念)
時季(いまどき)あり得(え)ぬに寸尺(おほきさ)肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。

掉尾(いやはて)の"菓子(このみくさのみ)"は勿論(いふもさらなり)。
龍膽鳳髄(うみやまのめづらしきあぢ)」盡(づ)くしの内(うち)、敢(あ)へて一(ひとつ)、
、、となると、"款冬未醤(ふきみそ)"を推舉(あぐ)。
其處其所(そこいら)に自生(お)ふる山野草(のゝくさ)故(ゆゑ)の佳美(よきあぢ)

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
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(さかな)】:
  ・"擬制櫻餈(さくらもちひもどき)"+《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)卵巣(たまご)"
  ・"鮑魚(あはび)"+《越中滑川(なめりかは)》"螢烏賊(ほかるいか)"
  ・"炊合(たきあ)はせ"の等類(たぐひ)
    ・《駿河灣(するがわん)》"櫻鰕蛋捲(さくらえびいりだしまきたまご)"
    ・"油菜(なばな)"
    ・《播州明石(あかし)?》"飯蛸(いひだこ)"
    ・《薩州(さつま)》"笋(たかむな)"、w/裙带菜(わかめ)
  ・刺躬(さしみ):
   ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"
    ・《蝦夷地(えぞち)》"蝦夷馬糞靈臝子(えぞばふんうに)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚精巣(まだひしらこ)"
  ・"款冬(ふき)未醤(みそ)"
  ・《蝦夷餘市(よいち)》"華臍魚肝(あんかうきも)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》"若銀口魚(わかあゆ)"
  ・"山蓼莖(わさびのくき)"
  ・《上總竹岡(かみつふさたけをか)》"魛(たちうを)"

(しるもの)】:
  ・『服部中村養鼈塲(はつとりなかむらやうべつじやう)』"鼈(かはかめ)"

(すし)】:
  ・《豐後姫島(ひめじま)》"基圍蝦(くるまえび)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"
  ・"鰤(ぶり)"
  ・《薩州甑島(こしきじま)》"縱帶鰺(しまあぢ)"
  ・《丹後宮津(みやつ)》"鳥蛤(とりがひ)"
  ・《丹後宮津(みやつ)》"鳥蛤肝(とりがひきも)"
      +《越中滑川(なめりかは)》"螢烏賊(ほたるいか)"
  ・《陸州八戸(はちのへ)》"鮪(しび)"、中肥(ちうあぶ)
  ・"魨精巣(ふぐのしらこ)"
  ・"鯖(あをさば)"
  ・《薩州出水(いづみ)》"眞烏賊(すみいか、かふいか)"
  ・《肥後天草(あまくさ)》"小鰶(こはだ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・柑橘類(たちばなのみのたぐひ)
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【暗匣】:日本光學 尼康(Nikon)Zf 無反光鏡可換鏡頭照相機(MILC、みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)APO-LANTHAR 2/50 @F2.8
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(DSLR、ディジいち) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
切支丹暦(きりしたんごよみ)甲辰歳一月(きのえたつのとしむつき)は、
毎年恆例(いつもの)"新年會(ふるくからのまじはりをなつかしみ、あらたなるとしをいはふうたげ)"。
此度(こだみ)は"虎魨(とらふぐ)盡(づ)くし"。
何(なん)でも、「《上總大原(おほはら)》の九百匁(≒3.4kg)」と云ふ。

劈頭(いやさき)に堪能(あぢは)ふは"精巢(しらこ)"の"蕪蒸(かぶらむし)"。
掉尾(いやはて)には、紀州備長炭(すみび)に炙(あぶ)り"(すし)"仕立(じた)てに、、。
"蕪蒸(かぶらむし)"に續(つゞ)き、
(ひれ)の"魚凍(にこゞり)"、(み)の"油炸(からあげ)"と、三所攻撃(みところぜめ)。

加旃(しかのみならず)、
五百八十七匁(≒2.2kg)《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"、
八百五十三匁(≒3.2kg)《豫洲八幡濱(やはたはま)》"白黃檣魚(しろくづな、あまだひ)"、
、、、と、「卍殺(まんじごろ)し、白身地獄(しろみのぢごく)」。

《蝦夷地根室落石(おちいし)》"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"、
名殘(なごり)の"鱲子(からすみ)"に《遠州濱名湖(はまなこ)》"鰻鱺(むなぎ)"まで、、。
《奧州氣仙沼(けせんぬま)》の"(しび)"に《陸州閖上(ゆりあげ)》の"(あかゞひ)"も、
不可不觸(ふれぬわけにはゆかぬ)顏(かほ)の彌次郎兵衞喜多八(やじらべゑきたはち)。

擂鉢(すりばち)、王八蛋(わうはち)、犬(いぬ)のハチ
曾根奈津子(なつこ)愕(おどろ)く、大食虛談(おほぐひ、うそ?)の『萬八樓(まんぱち)』、
舞妓(まひこ)白塗(しろぬ)り、卍(まんじ)の得手(とくい)恥(はぢ)の上塗(うはぬ)り
、、と云ふ次第(わけ)にて今年(ことし)も夜露死苦(しくよろ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《上總大原(おほはら)》"虎魨精巢(とらふぐしらこ)"、九百匁(≒3.4kg)
  ・《上總大原(おほはら)》"虎魨魚凍(とらふぐにこゞり)"
  ・《上總大原(おほはら)》"炸虎魨(とらふぐからあげ)"、
            w/《山背(やましろ)》"京芋(えびいも)"
  ・刺躬(さしみ):
    ・《上總大原(おほはら)》"虎魨(とらふぐ)"、九百匁(≒3.4kg)
    ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"、五百八十七匁(≒2.2kg)
    ・蝦夷地根室落石(おちいし)》"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・完熟(ねかしおきたる)"鱲子(からすみ)"
  ・《陸州大間(おほま)》"赤沙噀(あかなまこ)"+《蝦夷地箱館(はこだて)》"鱈精巢(くもこ)"
  ・《雲州五十猛(いそだけ)》"(かつを)"藁燒(わらやき)大蒜醬油(おほひるまめびしほ)
  ・《遠州濱名湖(はまなこ)》"鰻鱺(むなぎ)"

(しるもの)】:
  ・《豫洲八幡濱(やはたはま)》"白方頭魚(しろくづな)"骨邊肉(あら)、
      w/聖護院蕪菁(せうごいんかぶら)の"淸湯(すましゞる)"

(すし)】:
  ・《勢州桑名(そのてはくはなの)》"膾殘魚(しらうを)"
  ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"
  ・《上總大原(おほはら)》"虎魨精巢(とらふぐしらこ)"
  ・《奧州氣仙沼(けせんぬま)》"(しび)"
  ・《陸州閖上(ゆりあげ)》"(きさ、あかゞひ)"
  ・《越中氷見(ひみ)》"(ぶり)"
  ・《豫洲八幡濱(やはたはま)》"白黃檣魚(しろくづな)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・(みかん、たちばなのみ)两種(ふたくさ)
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【暗匣】:日本光學 尼康(Nikon)Zf 無反光鏡可換鏡頭照相機(MILC、みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)APO-LANTHAR 2/50 @F2.8
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(DSLR、ディジいち) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
〆(しめ)の『うを德』。
「♪會得(えとく)、逃得(にげどく)、中(あた)れば死(し)ぬのは"魨毒(ふぐのどく)"。
 解毒(げどく)、積讀(つんどく)、歌(うた)つて踊(をど)るは"TikTok(ティックトク)"。」
てなこと口遊(くちづさ)みつゝ、人(ひと)を俟(ま)つ。

「♪松樹(まつのき)ばかりが松(まつ)じやなし~、
 おそ松(まつ)、ちよろまつ、十姊妹(じふしまつ)~~、市松(いちまつ)、とゞ松(まつ)ッ、、、」
とかなんとか一節(ひとふし)吟(うな)るうちに、待人(まちびと)來(きた)れり。
來(き)たか朝三(てうさん)、暮四(くれにはよつぶ)。

、、と云ふ仔細(わけ)にて、
劈頭(いやさき)に、《江州琵琶湖(びはこ)》の"冰魚(ひうを)"に"幅海苔(はゞのり)"。
遉(さすが)、”小宮親方(おやかた)”、
深奧(おくふか)くして、淸冽(きよらかにすめ)る味(あぢはひ)

(つぎ)は、
能州(のと)》の"赤沙噀(あかなまこ)"に《蝦夷網走(えぞちあばしり)》"大口魚精巢(くもこ)"。
これ亦(また)、風味佳絕(たぐひまれなるあぢかをり)!
"蘿蔔泥(おほねおろし)"も吉(よし)。

久方(ひさかた)ぶりの《陸州閖上(むつのくにゆりあげ)》"(きさ、あかゞひ)"。
當日(このひ)は"(はらわた)"も、、。
"(かに)"は、×"森香澄(もりかすみ)"〇《但馬香住(たじまのかすみ)》"雌楚蟹(せこがに)"ゝ、
隱岐(おき)》の"雪蟹(すはへがに)"。

今季(ことし)の掉尾(いやはて)を飾(かざ)る”鰻魚(むなぎ)”は、
《遠州濱名湖(とうとうみのくに、はまなこ)》に揚(あ)がりし、一百八十七匁(≒700g)。
"(うをのあぶら)"少(すく)なめなれど、
皮下(かはのした)の"明膠(ゼラチン、にかはのたぐひ)"が舌(した)に纏(まと)はりつく。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》冰魚(ひうを)+"幅海苔(はゞのり)"
  ・《能州(のと)》"赤沙噀(あかなまこ)"+《蝦夷網走(あばしり)》"大口魚精巣(たらくもこ)"
  ・《蝦夷利尻(りしり)》"牙鮃(ひらめ)"、七百四十七匁(≒2.8kg)
  ・"靈臝子(うに)"
  ・《陸州閖上(ゆりあげ)》"蚶(きさ、あかゞひ)膓(わた)"
  ・《隱岐(おき)》"雪蟹(すはへがに)"
  ・"雲紋石斑魚(くゑ)"
  ・"芋(さといも)"
  ・"鮞(いをのこ)"
  ・《遠州濱名湖(はまなこ)》の"鰻鱺(むなぎ)"、百八十七匁(≒700g)、"素燒(しらやき)"

(しるもの)】:
  ・"淸湯(すましゞる)"
    《但馬香住(かすみ)》"雌楚蟹(せこがに、=めすのすはへがに)"+"鴨脚子(ぎんなん)"
      +"壬生菜(みぶな)"

(すし)】:
  ・《隱岐(おき)》"雪蟹(すはへがに)"
  ・《越中氷見(ひみ)》"鰤(ぶり)"
  ・《奧州氣仙沼(けさんぬま)》"鱵魚(さより)"
  ・《薩州出水(いづみ)》"竹筴魚(まあぢ)"
  ・《蝦夷戸井(とゐ)》"鮪(しび)"
  ・《越中氷見(ひみ)》"鰹《越中氷見(ひみ)》"鰹(かつを)堅魚(かつを)"
  ・"雞蛋糕(たまごやき)"
  ・《陸州閖上(ゆりあげ)》"蚶(きさ、あかゞひ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・覆盆子(いちご)
  ・橘(みかん、たちばなのみ)
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
劈頭(いやさき)に"法式淸湯(コンソメ、すましゞる)"。
「"黃蓋鰈(まこがれひ)"の骨邊肉(あら)ゟ(より)烹調(こしらへ)まして、、」
とは"亭主(あるじ)"の辯(はなし)なれど、"(うし)"の風韻(かをり)。
「"牛脛肉(うしのすね)"も、、」と附言(つけくはふ)。

ついで、"小宮親方(おやかた)"十八番(おはこ)の"燈籠椒泡沫(パプリカ・ムース)"。
當日(このひ)の"法式淸湯(コンソメ、すましゞる)"や、
過日(あのひ)の"醉蠘(ゑはせがに)"ともども、
異鄕(よそ)の(うけ)・廚藝(くりやわざ)に精通(くはし)き證明(あかし)

と、眼前(めのまへ)には、
《壹岐(いき)》"雲紋石斑魚(くゑ)"、四百八十匁(≒1.8kg)がドーーーーーン!
これを捌(さば)きて"薄作(うすづく)り"の"刺躬(さしみ)"に、、。
後(のち)、"(すし)"にも用(つか)ふ。

"棘鬣魚(まだひ)"、"牙鮃(ひらめ)"、"(しび)"は"非加熱(なま)"が適切(よ)く、
"雲紋石斑魚(くゑ)"など"石斑魚(はたのたぐひ)"、
加之(くはふるに)、"六線魚(あゆなめ)"、"大翅鮶鮋(きちじ)"などは、
"加熱・煮熟(ひをとほす)"が最善(なにより)。

豫(かね)て噂(おとにき)く"蓬莱枾(ほうらいし)"。
そも《蓬莱枾(ほうらいし)》とは震旦渡來(もろこしわたり)の"無花果(からがき)"。
かの《とよみつひめ》は、
蓬莱枾(ほうらいし)》と《桝井ドーフィン》の交雜種(かけあはせ)とか、、。

扨(さて)、
茲(こゝ)で《蝦夷根室(ねむろ)》の"狹眞魚(さまうを)"。
いや、"狹眞魚(これ)"は"(なま)"で吉(よし)、"(やく)"も吉(よし)!
"煮熟(にる)"も亦吉(またよし)!

《備州兒島灣(こじまわん)》の"鰻鱺(むなぎ)"。
百六匁(≒400g)と小振(こぶ)りなれど、
皮下(かはのした)は、"(うをのあぶら)"と"明膠(にかはしつ)"に豐富蓄積(とむ)。
《雲州宍道湖(しんじこ)》は一貫目(いつかんめ)十萬圓超(じふまんゑんごえ)とか。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・"燈籠椒泡沫(パプリカ・ムース)"、w/蕃茄醬(あかなすびしほ)
     ※『C』譲(ゆづ)りの招牌(かんばん)
  ・《越後魚沼津南(うをぬまつなん)》 〔鬼もろこし〕"玉蜀黍(なんばんきび)"
     
  ・《長良川(ながらがは)》"香魚(あゆ)"
     ※頭(かぶと)は油炸(あげ)て、その儘(まゝ)口中(くち)に、、、
  ・《飛州高山(ひだゝかやま)》"宿儺南瓜(すぐなかぼちやうり)"
     ※蔥頭(たまねぎ)+鮪大肥(しびおほあぶ)を黃油炒(バタいため)して、、
  ・《常州(ひたち)》"笠間栗澁皮煮(かさまぐりしぶかはに)"
  ・《壹岐(いき)》"雲紋石斑魚(くゑ)"、四百八十匁(≒1.8kg)、
     "(さしみ)"、w/"酢橘(すだち)"+"山蓼(わさび)"
  ・《蝦夷禮文島(れぶんたう)》"紫靈螺子(むらさきうに)"
  ・《蓬莱枾(ほうらいし)》"無花果(からがき)"
     ※保管熟成(しばらくうら)したるもの
  ・《蝦夷根室(ねむろ)》"狹眞魚(さまうを)"、
     "指身(さしみ)"、w/蘿蔔絲(せんろふ、おほねせん)
  ・《備州兒島灣(こじまわん)》の"鰻鱺(むなぎ)"、百六匁(≒400g)
     "素焼(しらやき)"

(しるもの)】:
  ・"法式淸湯(コンソメ)"
    黃蓋鰈(まこがれひ)の骨邊肉(あら)+牛脛肉(うしのすね)ゟ(より)

(すし)】:
  ・《下總銚子 (しもつふさてうし)》"(しび)"
  ・《壹岐(いき)》"雲紋石斑魚(くゑ)"
  ・《下總銚子(しもつふさてうし)》"(まいはし)"
  ・"黃蓋鰈(まこがれひ)"
  ・《陸州渡會(とかい)》"魁蛤(あかゞひ)"、w/"外套膜(ひも)"
  ・"墨魚(すみいか、かふいか)"
     ※新烏賊(わかきいか)
  ・"(あはび)"
     ※酒煮(さかに)

果子(このみくさのみ)】: ※撮影失念(とりわすれ)
  ・《羽州庄内刈屋(かりや)》"刈屋梨(かりやなし)"
  ・《陸州(むつ)》"黃桃(きもゝ)"
  ・《甲州(かひ)》〔甲斐路(かひぢ)〕"葡萄果實(えびかづらのみ)"
  ・"柘榴(ざくろ)"
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
早起(はやお)きは三文(さんもん)の得(とく)、
JK(ジェイケイ)嵌(はま)まる"抖音(TIKTOK)"。
ごね得(どく)、背德(はいとく)、魨毒(ふぐのどく)、
當日(このひ)嚮(むか)ふは、武州葛飾郡寺島村(てらしまむら)の『うを德』。

眼前(まのまへ)には"蠑螺(さゞい)"。
產海(すなどりしはま)は「西伊豆(にしいづ)」との説明(よし)。
嘗(かつ)ては"中華蠑螺(こやつ)Turbo cornutus 1786"に一括(くゝら)れしかど、
六年前(むとせまへ)、"蠑螺(さゞい)Turbo sazae 2017"として辯別(しわけらる)。

仍(すなは)ち、
分類學上(しわけのうへ)では"新種(しんしゆ)"扱(あつか)ひ。
この新聞(しらせ)、「驚天動地(ちをふるはせ、あめおどろかさずといふことなし)」。
蒙(それがし)、亦(また)、「肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)」。※←ウソデス

活(いけ)の"錦鳚(ぎんぽ)"も眼前(めのまへ)に、、。
これを油炸(あぶらにあげ)、"淸湯(すましゞる)"と做(な)す。
"錦鳚(このうを)"、"膠原質(にかはのもと)"を多量(おほ)く含有(ふく)むゆゑ、
"火候(ひいれ)"不足(たらざ)れば、彊(つよ)き齒應(はごた)へを遺(のこ)す。

そこはそれ、百戰錬磨(あまたのいくさたゝひた)る"小宮健一親方(おやかた)"のこと。
適切無比(ほどよく、たゞしき)"火候(ひいれ)"に依(よ)り、
"膠原質(にかはのもと)"は"明膠(やはらか)"と化(な)る。
"油炸錦鳚(てんぷら)"が最善(なにより)なれど、"淸湯(これ)"も、また、吉(よし)。

茲(こゝ)で、"吸口(すひくち)"の"椒芽(きのめ)":
勿論(いふまでもなく) 、"山椒(なるのはじかみ)"の若芽(わかめ)であり、
"小宮健一親方(おやかた)"丹精(こゝろ)込(こ)めたる葉(は)。 ※←チトオホゲサダケド
そもそも、"はじかみ"とは"山椒(なるのはじかみ)"を意味(さ)す。

近來(ちかごろ)では、"(くれのはじかみ)"、
それも、"かくのごときそへもの"を指(さ)すが風習(ならひ)。
元祖・本家・家元(もともと)の"はじかみ"は"山椒(さんせう、なるのはじかみ)"、
などゝ喚做(よびな)さるゝ憂目(うきめ)に、、。

掉尾(いやはて)には"果子(くだもの)"の一(ひとつ)、"桃實(もゝのみ)"。
"(もゝ)"とは震旦渡來(もろこしわたり)の果樹(ものなるき)にして、
"●●●"所緣(ゆかり)"の纏向遺蹟(あそこ)"から"(たね)"が出土(ほりいださ)れ、
更(さら)に古(ふる)くは、六千年前(むちとせまへ)まで遡(さかのぼ)ると云ふ。

だがしかし、さはあれ、However、しかはあれど、
"もゝ"なる辭(ことば)、
元來(もとより)、在來種(いにしへよりこのちにねづく)"山桃(やまもゝ)"を指(さ)す。
蒙(それがし)が陋屋(あばらや)近傍(ちかく)にも、かゝる"山桃(やまもゝ)"。

漢土傳來(もろこしよりつたはり)し"(こやつ)"が、
自生(そこいらにおふ)る"山桃(これ)"に換(か)はりて"もゝ"と呼(よ)ばれ、
"山桃(もともとの、もゝ)"は"からもゝ"と改名(なをあらたむ)。
嗚呼(あゝ)、南無三寶(なむさん)!

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・"玉蜀黍(なんばんきび)豆腐(どうふ)"、
     w/《羽州白神山地(しらかみさんち)》の"蓴(ぬなは)"
  ・《紀州白濱(しらはま)》の"鰒(あはび)"、w/《豆州(いづ)》の山蓼(わさび)
     +"靑茄子(あをなすび)"、w/"鱁鮧(うるか)の"風味(あちとかをり)
  ・"冬瓜(かもうり)"、w/"海扇(ほたてがひ)"+"紅椒(パプリカ)"
     +天狗印"神綠"牌"菽(えだまめ)"
  ・《西伊豆(にしいづ)》の"蠑螺(さゞい)"、壺燒(つぼやき)
  ・"Baccarat"の盤(さら)に〔刺躬(さしみ)〕
    ・《豐後(ぶんご)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ)"、四百匁(≒1.5kg)
    ・《淡路(あはぢ)》"棘鬣魚(まだひ)"
    ・《蝦夷禮文島(れぶんたう)》の"靈螺子(うに)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"吻鰕虎魚(ごり、≒よしのぼりorぬまちゝぶ)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"鰻鱺(むなぎ)"、百四匁(≒390g)

(しるもの)】:
  ・《奧州松島灣(まつしまわん)》油炸(あげ)"錦鳚(ぎんぽ)"、
     w/椒芽(きのめ)

(すし)】:
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"鰻魚(むなぎ)"、蒲燒(かばやき)
  ・《豐後(ぶんご)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"
  ・《豫州(いよ)》の"赤海膽(あかうに)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"香魚(あゆ)"
  ・《蝦夷羽幌(はぼろ)》の"富山鰕(ぼたんえび、=とやまえび)"
  ・萬願寺辣椒(まんがんじなんばんこせう)
  ・《丹後舞鶴(まひづる)》のの"竹筴魚(まあぢ)"
  ・《三州三河灣(みかはわん)》の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・e.t.c.(などなど)

果子(このみくさのみ)】:
  ・"桃實(もゝのみ)"
  ・"靑檸雪葩(ライムソルベ)"
  ・"シャインマスカット"、葡萄實(えびかづらのみ)
  ・"紅秀峯"、櫻桃(さくらんぼ)
=======================================

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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06

またもや"活烏賊(いきいか)"。
前囘(まへ)は《相州佐島(さじま)》の"唇瓣烏賊(かみなりいか)"、
此度(こだみ)は同(おな)じ《相州佐島(さじま)》の"眞烏賊(すみいか、かふいか)"。
好醜(よしあし)は保留(さてお)き、差異(ひらき)灼然(いやちこ)。

だが、"障泥烏賊(あふりいか)"となるとその相違(たがひ)は顯著(いちじるし)く
(し)ゝて、周知(みながし)る"甘味(あまみ)"と"黏性(ねばり)"が生(うま)る。
熟々(つらつら)そのその原理(ことわり)を推察(うかゞ)ふに、
かの"富山鰕(とやまえび)"や"北國赤鰕(ほつこくあかえび)"に酷似(よくにる)。

仍(すなは)ち、
これらは"蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)"を比較多(ほかよりおほ)く含(ふく)み
死(し)するや、
"グリシン"などの"甘味(あまみ)"と"黏性物質(ねばり)"を生(う)む。

加旃(しかのみならず)、
"黏性物質(ねばり)"は味覺(した)をして鋭敏(さと)から强(し)む
×「死諸葛走生仲達(しせるこうめい、いけるちゆうだつをはしらす)」
〇「死北國赤鰕惑生饕餮(しせるほつこくあかえび、いけるものずきのしたをまどはす)」

愚按(やつがれおもふに)、
"唇瓣烏賊(かみなりいか)"や此度(このひ)の"眞烏賊(すみいか、かふいか)"も、
蝦夷(えぞ)の"活魷(いけするめいか)"と同樣(おなじく)、
"(いけ)"固有(ならでは)の特長(よさ)が顯著(きはだつ)。

當日(このひ)の白眉(とびきりよきもの)は、
"うすゐまめ"と喚做(よびな)す"豌豆(のらまめ)"。
能(よ)く、"顏色(いろみ)"を留(とゞ)め、"食感(はごたへ)"を殘(のこ)す。
「"黏性(とろみ)"は"葛粉(くづのこ)"」との説明(よし)。

丹後(たんごのくに)《宮津(みやつ)》と讀(よ)み違(たが)へしは、
上總(かみつふさ)《富津(ふッつ)》の"鳥蛤(とりがひ)"。
宮津(みやつ)》の産(もの)より小振(こぶ)りながらも"天然物(てんねんもの)"。
この"(はらわた)"も鮮美(すこぶるよきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《阿州(あは)》の"笋(たかむな)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》の"冰魚(ひうを)"
           +"万願寺辣椒(まんぐわんじなんばんこせう)"
  ・《相州佐島(さじま)》の"活(いけ)眞烏賊(すみいか、かふいか)"、
           w/「田代農園(たしろなうゑん)の」"山蓼(わさび)"
  ・《陸州下北(しもきた)》の"櫻鱒(さくらます)"
  ・《陸州鹽釜(むつしほがま)》の"蚫(あはび)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、八百八十匁(≒3.3kg)刺躬(さしみ)
  ・《蝦夷(えぞ)》、"蝦夷馬糞靈臝子(えぞばふんうに)"
  ・《房州富津(ふッつ)》の"鳥蛤(とりがひ)"、膓(はらわた)+外套膜(ひも)
  ・"豌豆(うすゐまめ)"
  ・《越中滑川(なめりかは)》の"螢烏賊(ほたるいか)"

(しるもの)】:
  ・《播州明石(あかし)》の"眞鯛(まだひ)"、潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・《上總富津(ふッつ)》の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、皮(かは)
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、身(み)
  ・《相州佐島(さじま)》の"眞烏賊(すみいか、かふいか)"
  ・《三州(みかは)》の"江瑤(たひらぎ)"
  ・《上總竹岡(たけをか)》の"鱵(さより)"
  ・《長州宇部(うべ)》の"基圍蝦(くるまえび)"
  ・《蝦夷余市(よいち)》の"鰮(まいはし)"
  ・《房州勝浦(かつうら)》の"鮪(しび)"
  ・"虎河魨精巢(とらふぐしらこ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・"日向夏橘(ひむかなつみかん)"
  ・"古都華(ことくわ)"覆盆子(いちご)
  ・"冰酪(あいすくりん)"
=======================================

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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T5 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
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【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06


×永劫不變〇毎年恆例(つねにかはら)ぬ、
切支丹暦新年(きりしたんごよみのあらたなるとし)を祝(いは)ふ醼(うたげ)。
"白身魚(しろみうを)"比較(くらべ)」の需(もとめ)に應(したが)ひ、
《明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"に《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"。

稀有(いとめづらし)き《相州佐島(さじま)》"(いけ)唇瓣烏賊(かみなりいか)"、
"黃金蠘(こがねかに)"、"鰕虎子(はぜからすみ)"、"魁蛤肝臓(あかゞひのきも)"、
×"特殊鷺"〇"特殊野味(なにやらいはくありげな、のゝとりけだもの)"、
《越前(ゑちぜん)》産(のゝにかりし)、"(まがも)"に"鹿肉(かのしゝ)"も。

"(あはび)"、"鳥蛤(とりがひ)"の"肝臟(きも)"ならいざ不知(しらず)、
"魁蛤(あかゞひ)"の"肝臟(きも)"は初體驗(はじめて)。
幼少期(いとけなきころ)"罐頭(かんづめ)"にて噉(くら)ひし例(ためし)あるも、
"款冬未醤(ふきみそ)"とは、遉(さすが)、"小宮親方(おやかた)"!

(いけ)」の"唇瓣烏賊(かみなりいか)"には興味津々(こゝろひかるゝものあり)。
"障泥魷魚(あふりいか)"に"富山鰕(ぼたんえび、とやまえび)"は、
(いけ)」と、「(なま)」とでは大差(おほきなるたがひ)
その緣由 (ことのよし)、死後(しにたるのち)の"黏性物質(ねばりけ)"に有(あり)。

"黏性物質(ねばりけ)"は人(ひと)の味覺(した)を欺瞞(あざむ)く
その限(かぎ)りでは、
"唇瓣烏賊(かみなりいか)"は死後(しにたるのち)"黏性(ねばり)"を生(う)まで、
(いけ)」と、「(なま)」の差異(たがひ)は僅少(わづか)

掉尾(いやはて)の"巧克力冰酪(シヨクラトヲあいすくりん)"製造(つくる)に、
「"攪拌機(かきまぜからくり)"無(な)かりしゆゑ、
 只顧(ひたすら)手(て)にて攪拌(かきま)ぜ捏繰(こねく)り廻(まは)し、、
とは"主人(おやかた)"の苦勞談(はなし)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》"香魚(あゆ)"+"魦(いさゞ)"、有馬煮(ありまに)
  ・《相州佐島(さじま)》"唇瓣烏賊(かみなりいか)"、墨煮(すみに)
  ・"魁蛤肝臟(あかゞひきも)款冬未醤(ふきみそ)"
  ・《肥前小長井(こながゐ)》"鮮蠔(かき)"
  ・《越前(ゑちぜん)》"鳧(まがも)"、w/笋(たかむな)
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"、八百五十匁(≒3.2kg)刺躬(さしみ)
  ・《相州佐島(さじま)》"唇瓣烏賊(かみなりいか)"刺躬(さしみ)
  ・"靈臝子(うに)"
  ・《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"、五百十匁(≒1.9kg)刺躬(さしみ)
  ・"鰕虎子(はぜからすみ)"
  ・"鱲子(からすみ≒ぼらのこ)"

(しるもの)】:
  ・《越前(ゑちぜん)》"鹿肉羹(かのしゝのあつもの)"
  ・《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)潮汁(うしほじる)"

【鮓(すし)】:
  ・《房州勝浦(かつふら)》"鰹(かつを)"
  ・《相州佐島(さじま)》"唇瓣烏賊(かみなりいか)"
  ・《淡州(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)
  ・"黃金蠘(こがねがに)"、三百四十匁(≒0.9kg)
  ・《陸州鹽釜(しほがま)》"鮪(しび)"中肥肉(やゝあぶより)
  ・《播州明石(あかし)》"棘鬣魚(まだひ)"
  ・《陸州鹽釜(しほがま)》"鮪(しび)"精肉(あかみ)
  ・"魁蛤(あかゞひ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・"さくらもゝ草莓(いちご)"
  ・"はるか金柑(きんかん)"
  ・"橘(みかん、たちばなのみ)"
  ・"巧克力冰酪(シヨクラトヲあいすくりん)"
=======================================

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率爾(にはか)に罹病(やまひをわづら)ひし"小宮親方(おやかた)"。
先(ま)づは治癒之(これをなほし・いやす)が最重要・最優先課題(なにより)
斯(か)くして、鮓店(みせ)は臨時休業(ときならぬやすみ)と相成(あひな)り、
蒙(それがし)、右往左往(ゆきばをうしなふ)。

未完治(いまだやみあがらぬ)とは云へ、
再開業(ふたゝびあきなひはじめたり)」との速報(しらせ)せを受(う)け、
疾(と)く疾(と)く再見參(あしをはこびなほす)。
迎(むか)ふるは、未熟(いまだうれざ)る《淡路(あはぢ)》"鱲子(からすみ)"。

同(おな)じく、《淡路(あはぢ)》の"圓斑星鰈(ほしがれひ)"は七百廿匁(≒2.7kg)、
《備州兒島灣(こじまわん)》の"鰻鱺(むなぎ)"が二百匁(≒740g)、
加旃(しかのみならず)、《江州琵琶湖(びはこ)》の"諸子(もろこ)"、
《伯州境港(さかひみなと)》"楚蟹(まつばがに、≒すはへがに)"まで、、。

斯樣(かやう)に、通例(つね)の若(ごと)く"美饌(よきうけ)"盡(づく)くしなれど、
就中(わきても)、《相州橫須賀(よこすか)》"剝皮魚(かはゝぎ)"、
これを"潮汁(うしほじる)"、
仍(すなは)ち、"淸湯(すましゞる)"仕立(じた)てと做(な)すは初體驗(はじめて)。

女(をんな)醉(ゑ)はすは色男(いろをとこ)。 ※←ザンネンナガラ、ワシデハナイ!
"雌蠘(めがに)"(ゑ)はすは、夏華四千年(もろこしよちとせ)の祕技(ひめわざ)。
"小宮師傅(おやかた)"、それを自家藥籠中(みづからのてのうち)にするばかりか、
自製(てづから)の"洋梨雪葩(やうなしソルベ)"までへ眼前(めのまへ)に、、。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《淡路(あはぢ)》"鱲子(からすみ≒とゞのこ)"
       w/"聖護院菘根(しやうごいんかぶら)"
  ・《泉州灘(いづみなだ)》"烏魚子(からすみ)" ※無写真(とりわすれ)
  ・《蝦夷地(えぞち)》"狹眞魚(さまうを)"、有馬煮(ありまに)
  ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)刺躬(さしみ)"、七百廿匁(≒2.7kg)
  ・《米利堅(めりけん)》"靈臝子(うに)"
  ・《蝦夷仙鳳址(せんぽうし)》"鮮蠔(なまがき)"
  ・《蝦夷斜里(しやり)》"大口魚(たら)精巢(くもこ、≒しらこ)"
  ・《江州琵琶湖(びはこ)》"諸子(もろこ)"
  ・《伯州(はうき)~因州(いなば)》"醉蠘(よはせがに)"
  ・《伯州境港(さかひみなと)》"楚蟹(まつばがに、≒すはへがに)"
  ・《備州兒島灣(こじまわん)》"鰻鱺(むなぎ)"、二百匁(≒740g)
  ・《陸州大間(おほま)》目鹿鮪(めじ、≒こぶりのしび)

(しるもの)】:
  ・《相州橫須賀(よこすか)》"剝皮魚(かはゝぎ)"、潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・《相州橫須賀(よこすか)》"剝皮魚(かはゝぎ)"
  ・《伯州境港(さかひみなと)》"楚蟹(まつばがに、≒すはへがに)"
  ・《豊前海(ぶぜんのうみ)》"蚶(あかゞひ)"
  ・《淡路(あはぢ)》"圓斑星鰈(ほしがれひ)"
  ・"基圍蝦(くるまえび)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・洋梨(やうなし)"雪葩(ソルベ)"
  ・無花果(からがき)、二種(ふたくさ)
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當日(このひ)は久々(ひさびさ)老骨(それがし)唯一人(たゞひとり)。
眼前(めのまへ)の竹笊(たけざる)には"楤芽(たらのめ)"。
通例(つね)のごとく"掃愁帚(さけ)"も用意(を)かれてをり、
劈頭(いやさき)に、《土州四万十(しまんと)》の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"。

貴價(いとねのたか)き"花山椒(なるのはじかみのはな)"まで被添(そへら)れ、
これを慢慢地(ゆるり)と堪能(こゝろゆくまであぢはふ)。
次(つ)いで、《山州塚原(やましろのくにつかはら)》の"白子笋(しらこだけ)"。
こちらには風習(ならひ)の"椒芽(きのめ、=くれのはじかみのわかば)"。

と、俎上(まないたのうへ)には、
×天狗(てん●)〇《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"、
その重量(めかた)五百六十匁(≒2.1kg)と云ふ。
"身肉(み)"と"裙邊(えんがは)"それに"肝臟(きも)"を刺躬(さしみ)に、、。

上述(くだん)の"楤芽(たらのめ)"と《江州琵琶湖(びはこ)》"稚年魚(ちあゆ)"は、
"天麩羅(てんぷら)と烹飪(な)す。
敢然(あへて)雞蛋(にはとりのたまご)不使用(つかは)ねど、
"油煠楤芽(こ)"の美(うまさ)、常態(つね)に寸毫無變(つゆことなるところなし)。

"炸稚年魚(ちあゆあげ)"は、
火候(ひいれ)を两段階(ふたとほり)に變化(かへ)て提供(いだす)。
"第一組(ひとくみめ)"は(あさ)く"第二組(ふたくみめ)"は(ふか)く、、。
仍(すなは)ち、『』の"對蝦(くるまえび)"と同樣(おな)じ烹調法(やりかた)。

"花山椒鍋(なるのはじかみのはなのなべ)"として二種類(ふたくさ)。
最初(いやさき)に《泉州岸和田(きしわだ)》の"鳥蛤(とりがひ)"、肝臟(きも)つき。
"身肉(み)"の食感(はごたへ・したざはり)は勿論(いふまでもなく)、
"肝臟(きも)"特有(ならでは)の鮮味(うまみ)に失魂(たましひをうしなふ)

次(つ)いで俎(まないた)には《蝦夷壽都(えぞちすッつ)》"櫻鱒(さくらます)"。
一貫九十匁(≒4.1kg)といふ肥胖(ふくよかさ)に、
茫然自失(ことばをうしなひ、そのばにたちつくす)こと霎時(しばし)。
"これ"に依據(よ)らば、「板鱒(いたます)」と喚做(よびな)す固體(しろもの)。

"楤芽(たらのめ)"・"椒芽(きのめ)"と一緒(とも)に"(なべ)"に投入(い)れ、
"(わん)"へと移(うつ)す。
不味(あぢあし)き理由(ことわり)皆無(あるべからず)
"(すし)"にまで不惜(をしむことな)く"櫻鱒(このます)"を活用(つかひまはす)。

今季初(ことしはじめて)、活(いけ)の"鰻鱺(むなぎ)"は、
《備州兒島灣(きびのくにこじまわん)》、大畧(およそ)一百匁(≒380g)のもの。
通常(つね)のごとくこれを"志ら燒(しらやき)"に、、。
"(かは)"酥脆(さくさく)、その"(み)"は向崩潰(いまにもくづれんばかり)。

然(しか)はあれど、當日(このひ)の白眉(はくび)は"雞蛋糕(たまごやき)"。
活(いけ)"對蝦(くるまえび)"+"富山蝦(ぼたんえび、=とやまえび)"の泥(すりみ)。
平成二十八丙申歳(へいせんいじふはちひのえさるどし、=2016)に經驗(あぢは)ひし、
"雞蛋糕(たまごやき)"にも匹敵(ならぶ)鮮美(よきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・《土州四万十(とさのくにしまんと)》"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)",
      w/花山椒(なるのはじかみのはな)
  ・《山州塚原(やましろのくにつかはら)》"白子筍(しらこだけ)",w/椒芽(きのめ)
  ・《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ)"、五百六十匁(≒2.1kg)
    ・身肉(み)
    ・裙邊(えんがは)
    ・肝臟(きも)
  ・《油煠(あげもの)》
    ・"楤芽(たらのめ)"
    ・《江州琵琶湖(あふみのくにびはこ)》"稚年魚(ちあゆ)"、
        淺火候(あさきひいれ)+深火候(ふかきひいれ)
  ・《備州兒島灣(きびのくにこじまわん)》"鰻鱺(むなぎ)"、一百匁(≒380g)

(しるもの)】:
  ・《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"、
      骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"
  ・《花山椒鍋(なるのはじかみのはなゝべ)》
    ・《蝦夷壽都(えぞちすッつ)》"櫻鱒(さくらます)"、一貫九十匁(≒4.1kg)
    ・《泉州岸和田(いづみのくにきしわだ)"鳥蛤(とりがひ)"

(すし)】:
  ・《豐後(ぶんごのくに)》"黃蓋鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)"
  ・《薩州出水(さつまのくにいづみ)》"竹筴魚(まあぢ)"
  ・"(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・《泉州岸和田(いづみのくにきしわだ)"鳥蛤(とりがひ)"
  ・"雞蛋糕(たまごやき)"、
     活(いけ)對蝦(くるまえび)+富山蝦(ぼたんえび、=とやまえび)

果子(このみくさのみ)】:
  ・玻瓈杯盛(ぎやまんさかづきもり)
    ・無花果(からがき)、"ビオレ・デ・ソリエ"果凍(にこゞり)
    ・小玉西瓜(こだますいか)
    ・蕃茄(あかなす)など
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭暗匣(みらーれす)
【鏡珠】:Voigtländer NOKTON 1.2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06

恆例(いつも)の新年會(あらたなるとしをいはふうたげ)。
年年歳歳(としごと)に增長(つけあが)り「あれやこれや」の無理難題(むりなんだい)
i.e.,"東星斑(あかじんみーばい)"、"絲尾紅鑽魚(あかまち)"、"藤壺(ふぢつぼ)"、
"馬鹿蛤柱(こばしら)"、"海膓(ゆむし)"、"白未醤椀(しろみそわん)"まで。

主人(あるじ)"小宮親方(こみやおやかた)"説明(いへらく)、
"魚市塲(いちば)"に無(な)きものは通販調達(あれによりかひもとめ)、、」となん。
就中(わきても)、"海膓(ゆむし)"は"釣餌(つりえ)"として、、。
その奇怪(あや)しく蠕動(うごめ)く容(さま)、難盡言舌(ことばにはつくしがたし)

劈頭(いやさき)に肥前五島(ごたう)の"淸蒸東星斑(すぢあらのむしもの)"。
この魚(うを)「"流虬(宇留麻廼久尓)"三大高級魚之一(いとたふときうをのひとつ)」。
"東星斑(すぢあら)"そのものは『風ら坊』にて啖(くら)ひ經驗(ためし)あれど、
當日(このひ)の"淸蒸東星斑(むしもの)"も、眞言(まこと)、鮮美(よきあぢ)なり!

"東星斑(このうを)"、その"骨邊肉(あら)"も亦(また)最美(いとうま)し
そも、"石斑魚(はた)"の類(なかま)は、
總體(おしなべ)て、割烹法(さきかたにかた)を不問(とはで)旨(あぢよ)きもの
"淸蒸(むしもの)"、"紅燒(につけ)"、"生魚片(さしみ)"、などなど、、。

次(つ)いで前述(くだん)の「釣餌(つりえ)」"海膓(ゆむし)"。
蝦夷(えぞ)サロマ湖(こ)の"鮮蠔(なまがき)"と碟兒(こざら)に盛(も)られ、
背水之陣(もはや、しりぞくことあたはず)」
南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)」を三度(みたび)唱(とな)へ口中(くちのなか)に。

外見(みため)も食感(はごたへ・したざはり)も"貝外套膜(かひのひも)"なれど、
"サロマ湖鮮蠔(さろまのかき)"にて漱口(くちすゝぐ)。
蝦夷(えぞ)"サロマ湖鮮蠔(さろまこのかき)"は淸冽(きよらかにすめ)み
肥大(こえ)て濃厚(あぢこ)き"仙鳳趾鮮蠔(せんぱうし)"とは對極(さかしま)。

江州琵琶湖(びはこ)の"小香魚(ひうを)"には奧州(むつ)の"疣革菌(かうたけ)"。
"香魚(あゆ)"は越年(としをこす)こと稀有(まれ)にして、
"冰魚(ひうを)"→"稚年魚(ちあゆ)"→"香魚(あゆ)"→"落香魚(おちあゆ)"となり、
終(つひ)には海(うみ)へと下(くだ)り、命數盡(いのちをうしなふ)

"香魚(あゆ)"・"香蕈(かうたけ)"、雙方(どちらも)"貴馨(かをり)"が命(いのち)
とは云へ、遉(さすが)に"靑鱂めだか)"ほどの"小香魚(ひうを)"では、
風味(あぢもかをり)も缺乏(とぼし)。
やはり、"新小鰶(このしろのしんこ)"のごとく"走(はし)り"を愉(たの)しむ魚(いを)

"海宮(わだつみのうみのみや)"では"あかまち"として認知(し)らるゝ、
奄美鬼界島(あまみきくわいじま)"絲尾紅鑽魚(はまだひ)":
"刺躬(さしみ)"と"(なべ)"にて堪能(いたゞく)。
"東星斑(すぢあら)"ほどの濃厚(あぢこのこさ)こそあらねど、ともに佳味(よきあぢ)

陸州下北(しもきた)の"藤壺(ふぢつぼ)":
冢中枯骨(それがし)、嘗(かつ)て西伊豆賀茂郡松嵜濱(にしいづまつざきのはま)に、
"笠藤壺(これ)"咋(くら)ひし例(ためし)あり。
"藤壺(ふぢつぼ)"は、實(げ)に"龜足(かめのて)"と雙璧(なら)ぶ華美(よきあぢ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・肥前松浦五島(ごたう)"淸蒸東星斑(あかじんみーばい、=すぢあら)"
  ・蝦夷網走(あばしり)"海膓(ゆむし)"
  ・蝦夷サロマ湖(さろまこ)"鮮蠔(なまがき)"
  ・江州琵琶湖(びはこ)"小香魚(ひうを)"+奥州(むつ)"疣革菌(かうたけ)"
  ・肥前五島(ごたう)"豹紋鰓棘鱸(あかじんみーばい、=すぢあら)"の骨邊肉(あら)
  ・"鱲子(からすみ)"+"豇豆(さゝげ)"
  ・《胾(さしみ)》
    ・奄美鬼界島(きくわいじま)"絲尾紅鑽魚(あかまち、=はまだひ)"
    ・蝦夷苫小牧(とまこまひ)"馬鹿蛤柱(こばしら)"
    ・"膾殘魚(しらうを)"
    ・蝦夷根室(ねむろ)蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)
  ・蝦夷余市(よいち)"華臍魚肝臟(あんかうきも)"
  ・"油菜(なばな)"
  ・遠州濱名湖(はまなこ)"鰻鱺(むなぎ)"、三百廿匁(1.2kg))

(しるもの)】:
  ・陸州下北(しもきた)"藤壺(ふぢつぼ)"白未醤椀(しろみそわん)
  ・壹岐(いき)"楚蟹(まつばがに、すはへがに)"と
   奄美鬼界島(きくわいじま)"絲尾紅鑽魚(あかまち、=はまだひ)"の鍋(なべ)

(すし)】:
  ・"虎河魨(とらふぐ)"
  ・蝦夷野付(のつけ)の"海扇(ほたてがひ)"
  ・阿波鳴門(なると)"棘鬣魚(まだひ)"
  ・"蠔(かき)"
  ・"鰮(まいはし)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・無花果(からがき)、"ビオレ・デ・ソリエ"
  ・草莓(いちご)、"ひのしづく"
  ・橘(みかん、たちばなのみ)、"せとか"
  ・信州(しなの)ゝ"林檎(りんご)" ※品種不詳
=======================================

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
【鏡珠】:蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
結實・收穫(みのり)の白藏(あき)。
と來(く)ると、"狹眞魚(さまうを)"、"栗子(くり)"、"松蕈(まつたけ)"となるが、
社會通念(©毒さま✨.:*゚:.。:.、よのならひ)であり、人情(ひとのこゝろ)と云ふもの。
あるいは、偏(ひとへ)に"膓内細菌(こやつ)"のなせる所業(わざ)歟(か)?

《陸州宮古(みやこ)》の"狹眞魚(さまうを)"は"刺躬(さしみ)"、
豫州(いよ)》"中山栗(なかやまぐり)"は"澁皮煮(しぶかはに)"、
丹波(たんば)》の"松蕈(まつたけ)"は
油煠鰕芋(あぶらにあげたるえびいも)と一緒(とも)に"吸物(すひもの)"と成(な)す。

實(げ)に稀有(めづらし)き"徘徊堅魚(まよひがつを)"は《佐渡産(さどのもの)》。
藁(わら)以て燻(いぶ)し、"(たゝき)"に做(つく)る。
などて不味(あぢあし)き理由(ことわり)やある
これを「口福(くちにするや、よろこびあふれほどばしる)」と云ふ。

當日(このひ)の"舎利(すめし)":
あまりの變貌(かはりぶり)に肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。※←オオゲサ
同行(せきをともにせ)し食通(したたしかなるたべて)に依據(よる)なら、
口(くち)にすると同時(ひとし)く驚歎之(これにおどろき)まして厶(ござ)る。」

「"(こめ)"を變更(か)へ、"(かま)"を更新(あらた)め、、云々(うんぬん)。」
とは"親方(おやかた)"が説明(はなし)。
それすら聞(き)ゝ逃(のが)したるは、
老骨(それがし)、一世一代(このうへな)き恥辱(みのはぢ)。

三種(みくさ)"無花果(からがき)"。
輒(すなは)ち、
"ヴィオレ・ド・ソリエ"、"とよみつひめ"、"枡井ドーフィン"、これなり。
此度(こだみ)の"ヴィオレ・ド・ソリエ"は想定外(おもひのほか)に淡泊(あぢうすし)。

換言(いひかへ)るなら、"(あまみ)"弱(よは)めで"(すみ)"が立(た)つ。
對照之(これにひきかへ)、"枡井ドーフィン"の何(なん)たる變身(かはりみ)!!。
廿日餘(はつかあまり)熟(う)らし、、」とは、親方(おやかた)が呟(つぶや)き。
"とよみつひめ"の"(あまみ)"强(つよ)きは勿論(いふもさらなり)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・蝦夷昆布森(こんぶもり)の"蠔(かき)" ※昆布〆(ゑびすめじめ)
  ・陸州宮古(みやこ)の"狹眞魚(さまうを)"
  ・豫州(いよ)"中山栗(なかやまぐり)"、澁皮煮(しぶかはに)
  ・《胾(さしみ)》
    ・陸州宮古(みやこ)の"狹眞魚(さまうを)"
    ・佐渡(さど)の"徘徊堅魚(まよひかつを)"
    ・播州明石(あかし)の"棘鬣魚(まだひ)"、五百九十匁(≒2.2kg)
  ・常州霞箇浦(かすみがうら)の"鰻鱺(むなぎ)"、一百三十匁(≒480g)
  ・蝦夷餘市(よいち)の"華臍魚肝臟(あんかうきも)"

(しるもの)】:
  ・丹波(たんば)"松蕈(まつたけ)"+山州(やましろ)"鰕芋(えびいも)"
     吸口(すひくち):"野蜀葵(みつばぜり)"
  ・播州明石(あかし)の"棘鬣魚(まだひ)"、五百九十匁(≒2.2kg)、
     骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"

(すし)】:
  ・佐渡(さど)の"徘徊堅魚(まよひかつを)"
  ・志州鳥羽(とば)の"馬鮫魚(さはら)"
  ・播州明石(あかし)の"棘鬣魚(まだひ)"
  ・"雞蛋糕(たまごやき)" ...※周氏新對蝦(しばえび)+佛掌薯(つくねいも)
  ・"富山鰕(ぼたんえび、=とやまえび)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・"無花果(からがき)"三種(みくさ)
    ・"ヴィオレ・ド・ソリエ"
    ・"とよみつひめ"
    ・"枡井ドーフィン"
=======================================

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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭暗匣(みらーれす)
【鏡珠】:Voigtländer NOKTON 1.2/35 @F2.8~F4
           * * * * * 
【暗匣】:旭光學 賓得(Pentax)K-5 數字式暗匣(ディジカメ) ※2011-06
     蔡司(Carl Zeiß)Planar T* 1.4/85 ZK @F2      ※2011-06
久方(ひさかた)ぶりの"燈籠椒幕斯(パプリカムース)"に舌鼓(したつゞみ)。
これまた再會(まみへ)て嬉(うれ)しや"鳥蛤肝臟(とりがひのきも)"。
"鳥蛤肝臟(これ)"ッて、丹後(たんご)『繩屋』にて鮮美(よきあぢ)を認識(し)り、
"小宮親方(おやかた)"に話題提供(はな)したが嚆矢濫觴(はじまり)。

"岩蠔(いはがき)"からは"珍珠(しらたま)"、
否(いな)、將(まさ)に"眞珠(しらたま)"に爲(な)らんとする"白玉(しらたま)"。
"鰻鱺(むなぎ)"から"釣針(つりばり)"は當家(こちら)を含(ふく)め二度(にど)。
だが、"岩蠔(いはがき)"から"珍珠(しらたま)"とは吃驚(びつくり)。

"赤鯥(あかむつ)"は"紅燒(につけ)"。
纔(わづ)かながらも、"味(あぢ)"、就中(わきても)"甜(あまみ)"强(つよ)めか?
"醬油蟹醤(カンジャンケジャン、わたりがにてうせんづけ)"は淡麗(あはくきよらか)。
これぞ、"小宮親方(おやかた)"の廚藝(わざ)!

長良川(ながらがは)の"香魚(あゆ)"は油煮(コンフィ、あぶらに)に、、。
"燈籠椒幕斯(パプリカムース)"同樣(とおなじく)、
拂郎西察(おふらんす)の烹調(きりさきにたて)を自家藥籠中(わがもの)とせし、
"小宮親方(おやかた)が"眞骨頂(まことのそこぢから)。

いや、俟(ま)て、俟(ま)て!
その前(まへ)の"淸湯(コンソメ、きりしたんばてれんのすましゞる)"からして、
その確乎(たしか)なる技倆(うで)の爲(な)せる技(わざ)
"黃蓋鰈(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"の骨邊肉(あら)を活用(いかす)。

これと"牛脛肉(うしのすねにく)"、"百里香(タイム)"、"月桂樹(ローリエ)"、
"芹菜(セロリ)"、"胡蘿蔔(せりにんじん)"、"蔥頭(たまねぎ)"、を燉(にこ)み、
この"一盌(ひとまり)"に、、。
凄腕(すごうで)、稀(まれ)に遭(み)る手煆煉(てだれ)と斷言(いはざるべからず)。

當日(このひ)の"鰻鱺(むなぎ)"は、かの"宍道湖(しんじこ)"。
"(やき)"の廚藝(わざ)と相俟(あひま)り、至高(このうへなき)味(あぢはひ)
和燈ろ』の"熟成鰻(うらしねかしむなぎ)"と比較(くら)べても、
雲壤懸隔(くもとつちほどのたがひ)」。

しかはあれど、"割刀(めしがたな)"ばかりは『和燈ろ』が頂點(いたゞき)。
うを德』の"割刀(それ)"は居酒屋(ゐざかや)竝(なみ)。
まッ、そんなところも"小宮親方(おやかた)"特有(ならでは)。
脱力系名工(かたのちからのぬけたるたくみ)」と説明(い)ふべき歟(か)?

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・羽州(では)の"蓴(ぬなは)"+"蕃茄(あかなす)"
  ・"燈籠椒幕斯(パプリカムース)"
  ・丹後舞鶴(まひづる)"鳥蛤(とりがひ)"肝臟(きも)
    +"櫻鰕(さくらえび)"+"白瀧(しらたき)"+"實山椒(なるはじかみのみ)"
    +"萬願寺辣椒(まんぐわんじなんばんこせう)"
  ・"岩蠔(いはがき)"
  ・"赤鯥(あかむつ)"、紅燒(につけ)
  ・《胾(さしみ)》
    ・"鱸(すゞき)"
    ・"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・肥後(ひご)"醋藕(すづけのはちすのね)"
  ・"醬油蟹醤(カンジャンケジャン、わたりがにてうせんづけ)"
  ・豫州西條(いよさいじやう)"絹皮茄子(きにかはなすび)" ※冩眞なし
  ・長良川(ながらがは)の"香魚(あゆ)"、油煮(コンフィ、あぶらに)
    +長州萩(ながとのくにはぎ)の"黑蚫(くろあはび)"
  ・雲州宍道湖(いづもしんじこ)の"鰻鱺(むなぎ)"、一百四十一匁(≒530g)

(しるもの)】:
  ・"黃蓋鰈(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"の骨邊肉(あら)による
     "淸湯(コンソメ、ばてれんのすましゞる)"
     ※+牛脛肉(うしのすねにく)、香味蔬菜(かをりあるあをもの)など
  ・"鱸(すゞき)"、骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"

(すし)】:
  ・"鱸(すゞき)"
  ・豐後(ぶんご)"黃蓋鰈(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"
  ・"小鰶(こはだ)"
  ・"赤鯥(あかむつ)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"竹筴魚(まあぢ)"
  ・"鰮(まいはし)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・櫻桃(さくらんぼ)"佐藤錦(さたうにしき)"
  ・櫻桃(さくらんぼ)"米利堅(めりけん)"
  ・蕃茄(あかなす)
  ・失念(わすれた)
=======================================

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtlaender)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
今年(ことし)も、
山州塚原(やましろのくにつかはら)の"白子笋(しろきたかむな)"を喰(く)ひそびれ、
信州(しなのゝくに)の"楤芽(たらのめ)"に、
陸州(むつのくに)"花山椒(なるのはじかみのはな)"を堪能(おほいにたのしむ)。

"花山椒(なるのはじかみのはな)"は、
土州四万十川(しまんとがは)の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"、
備州兒島灣(こじまわん)"鰻鱺(むなぎ)"、陸州宮古(みやこ)"帝王鮏(ますのすけ)"、
房州勝浦(かつうら)"黑鯥(くろむつ)"にと「八面六臂(めざましきはたらきぶり)」。

駿州由比(ゆひ)"櫻鰕(さくらえび)"も靑陽(はる)ならではの悦樂(よろこび)。
活魚(いけ)」と云ふ、
相州佐島(さじま)の"墨魚(すみいか、=かふいか)"、二百六十七匁(≒1kg)。
刀工(きりかた)のせゐか?、唯一無二(ほかになき)食感(はごたへ・したざはり)

「走(はし)り」の備州兒島灣(こじまわん)の"鰻鱺(むなぎ)"、九十三匁(≒350g):
想定外(おもひのほか)に魫(あぶら)に富(と)み佳味(なかなかのあぢはひ)
師傅(おやかた)が"炙(やき)"の超絶技巧(わざ)は勿論(いふもさらなり)。
この廚藝(わざ)、奧州遠野(とほの)『』と雙璧(ふたつながらにならびたつ)。

和泉灘(いづみなだ)"鳥蛤(とりがひ)"の"外套膜(ひも)"は初體驗(はじめて)。
その風韻(かをり)、"御本尊(み)"にも優越(まさる)。
"文鰩(とびいを)"鮮(なま)で噉(くら)ふも初(はじめて)。
小宮親方(こみやおやかた)、感謝(ありがたや)、!

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・土州四万十川(しまんとがは)の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"+
     "花山椒(なるのはじかみのはな)"
  ・相州佐島(さじま)の"墨魚(すみいか、=かふいか)"、二百六十七匁(≒1kg)

  ・《(さしみ)》
    ・"北紫靈臝子(きらむらさきうに)"
    ・淡路(あはぢ)"黃蓋鰈(あまてがれひ、≒まこがれひ)"、五百三十三匁
     ・精肉(み)
     ・裙邊(えんがは)
     ・肝臟(きも)

  ・《天麩羅(てんぷら)》
    ・信州(しなの)"楤芽(たらのめ)"
    ・駿河灣(するがわん)駿州由比(ゆひ)"櫻鰕(さくらえび)"

  ・備州兒島灣(きびこじまわん)の"鰻鱺(むなぎ)"、九十三匁(≒350g)

(しるもの)】:
  ・淡路(あはぢ)"黃蓋鰈(あまてがれひ、≒まこがれひ)"、五百三十三匁(≒2kg)、
     骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"

花山椒鍋(はなざんせうなべ)》:
  ・陸州宮古(みやこ)"帝王鮏(ますのすけ)"
  ・房州(あは)"黑鯥(くろむつ)"

(すし)】:
  ・淡路(あはぢ)"黃蓋鰈(あまてがれひ、≒まこがれひ)"
  ・肥後天草(あまくさ)"小鰶(こはだ)"
  ・房州勝浦(あはかつうら)"黑鯥(くろむつ)"
  ・陸州鹽釜(しほがま)の"鮪(しび)"
  ・和泉灘(いづみなだ)の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・和泉灘(いづみなだ)の"鳥蛤(とりがひ)"、外套膜(ひも)
  ・相州小柴(こしば)の"烏賊(すみいか、かふいか)"
  ・"文鰩(とびいを)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・日向(ひむか)"芒果(マンゴ)"
  ・土州(とさ)"狼桃(おほかみもゝ)"蕃茄(あかなす)
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtlaender)Apo-Lanter 2/50 Asph. @F2.8~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
"味神樣(あぢがみさま)"の託宣(おつげ)に遵(したが)ひ、"黃金蠘(こがねがに)"、
i.e.,(すなはち)、
"楚蟹(すはへがに)"と"紅楚蟹(べにすはへ)"とが交合(みとのまぐはひ)をし、
十月十日後(とつきとほかのゝち ←※ウソ)に誕生(うまれ)たのがこの"(かに)"だッ!

「今年(ことし)四杯(しはい)の×蒸氣船(じやうきせん)〇"黃金蠘(こがねがに)"、
 たッた四杯(しはい)で夜(よる)も眠(ねむ)れず、
 當旦(このひのあさ)に漸(やうや)う二杯(にはい)
 午餐(ひる)に一杯(いつぱい)、晩餐(よる)にも復一杯(またいつぱい)。」

、、とは"小宮親方(こみやおやかた)"が辯(はなし)。
背(そびら)の錦繪(にしきゑ)は、
伊斯把泥亞(いすはにあ)の繪師(ゑし)"P.ピカソ"による石版印刷畫(リトガラフ)。
「先代(さきつおやかた)の所藏品(もの)」とのよし。

遉(さすが)に"幻魚(げんげ)"までは不能調達(そろへられず)、
代替(かはり)に食感(はごたへ・したざはり)の類似(にた)る"魚(もの)"を、、
と、示(しめ)す先(さき)には"これ"、"華臍魚(あんぐうを)"。
淡路(あはぢ)の"星鰈(ほしがれひ)"は七百廿匁(≒2.7kg)。

扨(さて)"黃金蠘(こがねがに)":
正眞正銘(まがふかたなき)、但州美含郡香住(かすみ)の"黃金蠘(こがねがに)"。
生"黃金蠘(いけるこがねがに)"喜冢中枯骨卍(くたばりそこなひまんじをよろこばす)
"楚蟹(すはへがに)"を知悉(しりつく)したる面々(かたがた)また然(しかり)

濃厚(あぢのこ)さでは"楚蟹(すはへがに)"に肉薄(せま)り、
甘(あま)く滑(なめ)らかなること"紅楚蟹(べにすはへがに)"の若(ごと)し。
"蠘肉(かにゝく)"吉(よし)、"黃(かにみそ)"、さらに吉(よし)。
これを「×鈴木福(すゞきふく)〇口福(こうふく)」と云ふ。

三ヶ月前(みつきまへ)には(なま)にて口(くち)にせし"鱲子(ぼらこ、からすみ)"。
×十月十日後(とつきとほかのゝち)〇三ヶ月後(みつきあと)には、
かくのごとき景狀(ありさま)に、、。
これを「匠(たくみ)による"熟成(うらし・ねかし)"の廚藝(わざ)」と云ふ。

否(いな)!
名匠(なだかきたくみ)單獨(ひとり)と云ふより、
歳月(つきひ)と人智(ひとのちゑ)の合力・協業(たすけあひ)の精華(なせるわざ)
"未醤(みそ)"、"醤油(まめびしほ)"、"(さけ)"にも通底(つらなる)。

"星鰈(ほしがれひ)"、"大翅鮶鮋(きちじ)"の美(うまさ)は勿論(いふもさらなり)。
白身魚(しろみうを)の皇帝(すめらぎ)"星鰈(ほしがれひ)":
類稀(たぐひまれ)なる"牙鮃(ひらめ)"愛好家(ずき)の老骨(それがし)も、
この味(あぢ)には脱帽(かぶとをぬぐほかなし)。

有左程(さるほど)に、
"大翅鮶鮋(きちじ)"は、"紅燒(しやうゆに)"より"淸蒸(すがたむし)"が吉(よい)。
かの"淸蒸石斑魚(はたのすがたむし)"にも優越(まさ)る鮮美(よきあぢ)
努々(ゆめゆめ)、勿疑(うたがふことなかれ)!

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
=======================================
(さかな)】:
  ・炊合風(たきあはせふう)"小菜碟兒(こざら)"
    ・"鱲子(からすみ)"、熟成三ヶ月(うらすことみつき)
    ・能州(のと)"靑沙噀(あをなまこ)"
    ・山州(やましろ)"金時胡蘿蔔(きんときせりにんじん)"
    ・山州(やましろ)"淀蘿蔔(よどおほね)"
    ・山州(やましろ)"菜花(なばは)"

  ・"紅燒大翅鮶鮋(きちじのにつけ)"
  ・但州美含郡香住(かすみ)の"黃金蠘(こがねがに)"、二百四十匁(≒900g)
  ・《(さしみ)》
    ・淡路(あはぢ)"星鰈(ほしがれひ)"、七百廿匁(≒2.7kg)
        w/ 豆州御殿塲(いづごてんば)の"山蓼(わさび)"
    ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の"鮪幼魚(めじ)"、一貫八百七十匁(≒0.7kg)
    ・蝦夷濱中(えぞはまなか)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
    ・自家製(てづからの)"雲丹(うに)"

(しるもの)】:
  ・陸州石卷(むついしのまき)華臍魚(あんかう)"どぶ汁(じる)"
  ・"魨精巢(とらふぐしらこ)"+"堀川牛蒡(ほりかはきたきす)"

(すし)】:
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、肥肉(ちゆうあぶ)
  ・陸州鰺ヶ澤(むつあぢがさは)の"牙鮃(ひらめ)"
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・蝦夷野附(えぞのつけ)の"馬珂蛤閉殼筋(ばかゞひ、こばしら)"
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、紅肉(あかみ)
  ・淡路(あはぢ)"星鰈(ほしがれひ)"、七百廿匁(≒2.7kg)
  ・下總銚子(しもつふさてうし)の"鯖(まさば)"
  ・對蝦(くるまえび)
  ・丹後舞靏(たんごまひづる)の"鰤(ぶり)"、三貫二百匁(≒12kg)
  ・房州勝浦(あはかつふら)の"黑鯥(くろむつ)" ※滿腹(はらくち)く辭退

果子(このみくさのみ)】:
  ・草莓(いちご)、"ロイヤル・クイーン"
  ・草莓(いちご)、"スカイ・ベリー"
  ・"あまおう草莓(いちご)"の幕斯(ムース)
  ・"巧克力冰酪(シヨクラトヲあいすくりん)"
=======================================

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:高千穗光學(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 微距(Macro)2/50 @F2~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
"鱣魚(むなぎ)"は[白藏(あき)が最美(なにより、3150)。
此度(こだみ)は、雲州宍道湖(いづもしんじこ)"、二百四十匁(≒900g)。
(あぶら)に富(と)み、溶融(とろけ)んばかりの"(み)"ながら、
"(かは)"酥脆(さくさく)は親方固有(おやかたならでは)の超絶廚藝(すごわざ)。

名殘(なごり)の"松蕈(まつたけ)"は信州伊那辰野(しなのゝくにいなたつの)。
未曾有(いまだかつてな)き不漁(ふりやう)」と云ふ"狹眞魚(さまうを)":
今龝初(このあきはじめて)、最上質(いとよきもの)なれど、
例年(いつも)の蝦夷根室(ねむろ)ならで奧州久慈(くじ)とのよし。

舊暦(むかしのこよみ)長月十三日(ながつきじふさんにち、Oct.29)を控(ひか)へ、
常州友部(ひたちのくにともべ)の"栗子澁皮煮(くりしぶかはに)"。
「大畧(およそ)半日(はんにち)かけ、叮嚀(ねんごろ)に煮(に)たるもの」と云ふ。
廣義(ひろく)は、"友部(ともべ)"は"笠間(かさま)"に含(ふく)まる。

"鱲子(からすみ)"の(うま)さは勿論(いふもさらなり)。
小鹹多鮮(しほけすくなく、うまみにとむ)」こと難盡筆舌(ことばにつくしがたし)。
"(はし)り"故(ゆゑ)、
"日向(ひむか)"は熟成過程(うらしのさなか)、"土州(とさ)"は(なま)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・蝦夷羅臼(えぞらうす)の"雲子(くもこ)"
  ・煮滲(にびたし)
    ・《溏油(だし)》:利尻海帶(りしりあらめ)+鮪乾(しびぶし)
    ・信州伊那辰野(しなのゝくにいなたつの)ゝ"松蕈(まつたけ)"
    ・筑紫(つくし)"菱實(ひしのみ)"
    ・丹州(たんば)"黑荳(くろまめ)"
  ・"鱲子(からすみ)"競演(かほあはせ)
    ・日向(ひむか)熟成過程(うらしのさなか)
    ・土州(とさ)の鮮(なま)
  ・對馬(つしま)"(かつを)"稭炙(わらやき) 
  ・蝦夷餘市(えぞよいち)"松皮鰈(まつかはがれひ)"、八百廿七匁(≒3.1kg)
  ・蝦夷仙鳳趾(えぞせんぱうし)の"眞蠔(まがき)" 
  ・陸州久慈(むつくじ)の"狹眞魚(さまうを)"
  ・常州(ひたち)"柳蟲鰈(やなぎむしがれひ、≒さゝがれひ、わかさがれひ)"
  ・(さしみ)
    ・蝦夷余市(えぞよいち)"松皮鰈(まつかはがれひ)"
    ・蝦夷小川商店(えぞをがは)の"蝦夷馬糞靈臝子(えぞばふんうに)
  ・常州友部(ひたちのくにともべ)の"栗子(くり)澁皮煮(しぶかはに)"
  ・雲州宍道湖(いづもしんじこ)の"鱣魚(むなぎ)"、二百四十匁(≒900g)

(しるもの)】:
  ・《吸地(すひぢ)》:利尻海帶(りしりあらめ)+鮪乾(しびぶし)
  ・《椀種(わんだね)》:
    ・信州伊那辰野(しなのいなたつの)ゝ"松蕈(まつたけ)"
    ・播州明石(はりまのくにあかし)の"眞棘鬣魚(まだひ)"、五百六十匁(≒2.1kg)
  ・《吸口(すひくち)》:柚(ゆ)、食用菊花(もつてのほか、≒かはらよもぎのはな)

(すし)】:
  ・蝦夷余市(えぞよいち)"松皮鰈(まつかはがれひ)"、八百廿七匁(≒3.1kg)
  ・陸州大間(むつおほま)の"(しび)"、三十七貫三百匁(≒140kg)
  ・"春子鯛(かすごだひ)"
  ・"白纜魚(しろいか、≒けんさきいか)"
  ・"剝皮魚(かはゝぎ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・肥後(ひご)"太秋枾(たいしうがき)"
  ・紀州(きい)"富有枾(ふいうがき)"
  ・蝦夷(えぞ)"らいでん甜瓜(からうり、まくは)"
  ・洋梨(やうなし)"極光(アウロラ)"
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.8~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
旣(すで)に、
同日(おなじひ)、and/or 翌日(つぎのひ)の訪問記(たづねしはなし)存在(あり)。
かゝるがゆゑに、敢(あ)へて反復之(これをくりかへ)すは、
畫蛇添足(へびにあしをそへ)」、「屋上架屋(やねにやねをかさぬるがごとし)」。

「『奈可田』流(じこみ)」と説明(い)ふ"鹽蒸(しほむし):
周知(あまねくしら)るゝがごとく、"鹽蒸(しほむし)とは"煮蚫(にあはび)"のこと。
(さけ)などにより、嫩(やはらか)になるまで慢慢地(ゆるり)煮(に)こむ
老骨(それがし)知(し)る限(かぎ)り、當家(こちら)は"(むす)"が通例(つね)。

此度(こだみ)『奈可田』流(じこみ)にせし緣由 (ことのよし)、
守舊化(ふるきからを、みづからうちやぶらんがため)」となむ。
以爲(おもふに)、どちらの烹飪(やりかた)も、×「彩芽(あやめ)より(つばさ)」、
〇「いづれ、菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」。

例年(いつも)、この時季(ころ)登塲(あらは)る"鮏鮞(さけのはらゝご)":
醢醯(あぢつけ)をせで、その儘(まゝ)
との説明(はなし)に眼精(まなこ)白黑(しろくろ)
「"狹眞魚(さまうを)"は海(うみ)に魚影(そのすがた)を不見(みず)」とも、、。

今季初(ことしはじめて)、"早松蕈(はしりのまつたけ)"は富良野(ふらの)から。
奧州松島(むつまつしま)の"星鳗(はかりめ)"ともども"淸湯(すましゞる)"に、、。
"吸地(すひぢ)"は"利尻海帶(りしりあらめ)"に"鮪脯(しびぶし)"。
「"鰹脯(かつをぶし)"は"早松蕈(さまつ)"の風韻(かをり)を阻害(さまたぐ)」と。

愚按(やつがれおもふに)、
"吸口(すひくち)"に"(ゆ)"など强香(かをりつよ)きものを不使用(つかは)ぬも、
蓋(けだ)し、同(おな)じ意図(こゝろ)なるべし
寔(まこと)、「減算(ひきざん)」を實踐(みをもちてしめ)す庖丁(いたまへ)。

此度(こだみ)、肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはぬほどにこしぬか)したるは、
(しび)大肥肉(おほあぶ)の"(あぶり)"。
冢中枯骨(くたばりそこなひ)、"大肥肉(おほあぶ)"を×獼猴〇得手(えて)とせぬも、
鮮美(よきあぢ)口腔(くち)に踊(をど)り鼻腔(はなのなか)に浮騰(ほとばし)る

老骨(それがし)、"枾果(かき)"と"無花果(からがき)"には有一家言(ちとうるさい)。
その仔細(わけ)如何(いかに)となれば、
生家(うまれたるいへ)には、各二本(おのおのにほん)づゝの果樹(き)があり、
完熟(よくうれた)るを噉(くら)ふが常態(つね)なればなり。

巷(ちまた)に蔓延(はびこ)る"無花果(からがき)"は、
十中八九(あらかた)"枡井ドーフィン"なる種(たね、ちすぢ)。
加旃(しかのみならず)、樹(き)にて完熟(ほどよくうれた)るものに非(あらず)!
完熟果實(かゝるみ)は流通(いちばをとほす)に不適(むかず)

未熟(いまだうれず)と云へど、
黑(くろ)き"ビオレソリエ"、白(しろ)の"キューティーキング"なら、
その風味(あぢ・かをり)、"枡井ドーフィン"を×遼河〇凌駕(はるかにしのぐ)。
ところが、當日(このひ)の"無花果(からがき)"は敢(あ)へての"枡井ドーフィン"。

親方(おやかた)説明(い)ふやう:
十日(とほか)ほど手許(てもと)に置(お)き、追熟(うらし)たるものにて、、」
その"斷面(きりくち)"は飴餹色(あめいろ)を呈(お)び、
俄頃(にはか)には"枡井ドーフィン"とは難信(しんじがた)き果實(しろもの)

生家(うまれたるいへ)の、
完熟(うれ)たる"赤無花果(あかゝらがき)"と比較(くらべ)て、
なほ、勝(まさ)るとも不劣(おと)らぬこの無花果(からがき)。
たゞし、"黑無花果(くろからがき)"・"白無花果(しろからがき)"には不及(およばず)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・小菜碟兒(こざら)
    ・『奈可田』流(じこみ)、佐渡(さど)の"鹽蒸(しほむし)=煮蚫(にあはび)" 
    ・雲州(いづも)~石州(いはみ)の"魩仔魚乾(ざこ)"
        +"萬願寺辣椒(まんがんじなんばんこせう)"+"豆腐皮(うば)"
  ・"玉蜀黍(なんばんきび)"と"胡麻(ごま)"の葛寄(くづよせ)、
     "小蕃茄(ちいさなあかなす)"の果凍(にこゞり)添(ぞ)へ
  ・"赤鯥(あかむつ)"と"秋葵(おくら)"の"索麪(むぎなは)"
  ・蝦夷禮文島(えぞれぶんたう)の"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・"鹽雲丹(しはうに)"
  ・"障泥纜魚(あふりいか)"の耳(みゝ)
  ・蝦夷羅臼(えぞらうす)の"生鮏鮞(なまのさけはらゝご)"
  ・相州松輪(さがみまつわ)の"醃眞鯖(しめたるまさば)"、暸(あぶりもの)
  ・相州松輪(さがみまつわ)の"醃眞鯖(しめたるまさば)"
  ・志州尾鷲(しまをはせ)の"松魚(かつを)"
  ・常州霞ケ浦(ひたちかすみがうら)の"鰻鱺(むなぎ)"、一百三十九匁(≒520g)

(しるもの)】:
  ・蝦夷富良野(えぞふらの)ゝ"松蕈(まつたけ)"と
      奧州松島(むつまつしま)"星鳗(はかりめ)"の淸湯(すましゞる)

(すし)】:
  ・播州明石(はりまあかし)の"眞鯛(まだひ)"、五百六十匁(≒2.1kg)
  ・奧州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、中肥(ちゆうあぶ)
  ・蝦夷禮文島(えぞれぶんたう)の"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・"似海鰌(にたりくぢら)"
  ・奧州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"
  ・奧州鹽釜(むつしほがま)の"鮪(しび)"、大肥(あぶ)の暸(あぶり)
  ・蝦夷羽幌(えぞはぼろ)"富山鰕(とやまえび)"+湯瀹汁(ゆでじる)
  ・肥後天草(ひごあまくさ)"小鰭(こはだ)"、新子(しんこ)二枚醃(にまいづけ)
  ・壹岐(いき)"白纜魚(しろいか)"?

果子(このみくさのみ)】:
  ・追熟(うらし)無花果(からがき)、"枡井ドーフィン"
  ・宇留麻廼久尓(うるまのくに)"キーツ芒果(マンゴ)"
  ・羽州尾花澤(ではをばなざは)"西瓜(すいくわ)"
  ・葡萄果實(えびかづらのみ)、"瀬戸ジャイアンツ"
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:旭光學 賓得(Pentax)S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8~F4
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
向島(むかふじま)『いりむら』ゟ(より)『靑柳正家』を經由(へ)て、
寺島町(てらしまゝち)『うを德』に、、。
暖簾(のれん)潛(くゞ)るは大畧(およそ)五ヶ月(いつゝき)ぶり。
漬塲前(つけばまへ)の客人(きやく)は老骨(それがし)唯一人(たゞひとり)。

十年前(とゝせまへ)なら某(それがし)の他(ほか)、
絶(た)へて人(ひと)の姿(すがた)を不見(みざる)が常態(つね)なれど、
かゝる景色(けしき)は久方(ひさかた)ぶり。
親方(おやかた)も當時(そのかみ)を懐舊(なつかしむ)。

嘗(かつ)て"食物航海日誌(こちら)"★★★★超(よつぼしごへ)の頃(ころ)は、
上(うへ)を下(した)に覆(かへ)すほどの繁忙(いそがはし)さなりしかど、
現今(いま)は有象無象(さまざま)なる惡質客(たちあしきゝやく)も激減(へ)り、
靜謐(しづかさ)を恢復(とりもど)しつゝあるは吉兆(よきゝざし)。

しかはあれど、
"向島百花園(むかふじまひやつくわゑん)"ゟ(より)歸途(かへるみちすがら)、
偶(たま)さかフラり立寄(たちよ)るとか、
近鄕近在(ちかく)の民(たみ)の午餔處(ひるめしどころ)には不能囘歸(もどりえぬ)

覆水難收(こぼれたるみづは、もとのうつはにもどりがたし)」
小宮親方(おやかた)も懐古(そのかみをなつかしむ)と云へど、
これは黃泉(よみ)ゟ(より)死者(しにたるもの)を戻(もど)すに同等(ひとし)く
"伊邪那岐(いざなぎ)"の失錯(しくじり)を反復(くりかへ)すが限界(せきのやま)。

食材(たね)の優秀(ひいで)たるは萬民(よろづのたみ)認(みと)むるところなれど、
虚飾(いらぬかざり)と複雜怪奇(やゝこし)き調劑(あぢつけ)を排(す)て
"必要最小限(いらぬものも、たすべきものもな)き"烹調法(やりかた)は、
理會(わかる)者(もの)にのみ分(わ)かる。」と云ふもの。

これを侮(あなど)り譏(そし)る者(もの)は、
×雪花菜(きらず)×石見銀山(いはみぎんざんねこいらず)〇不知味者(あぢしらず)。
就中(わきても)、
"潮汁(うしほじる)"と"(むなぎ)"は鮓店(すしや)の巓(いたゞき)

否(いな)!
名店(なのあるみせ)の"會席膳(くわいせきぜん)"と競(くら)べても、
俄頃(にはか)に、精麁(よしあし)・雌雄(をすめす)を難判別(わかちがた)きほど。
※↑imho、≒冢中枯骨(くだばりそこなひのそれがし)が卑見(いやしきかんがへ)

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・土州四万十川(とさしまんとがは)"稚鰷(ちあゆ)"甘露煮(かんろに)
  ・對蝦(くるまえび)+薯蕷(いも)の"雞卵焼(たまごやき)"
  ・陸州鹽釜(むつしほがま)"黑鰒(くろあはび)"
  ・《刺躬(さしみ)》
    ・豐後日出(ぶんごひので)"城下王餘魚(しろしたかれひ、≒まこがれひ)"、
         四百五十匁(しひやくごじふもんめ、≒1.7kg)
  ・蝦夷濱中(はまなか)"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"+"毛蠘(けがに)"
     +上州(かうづけ)天狗牌毛豆(てんぐじるしえだまめ)"味綠(みりよく)"
  ・加州(かゞ)"加賀太黃瓜(かゞぶときうり)"
  ・吉備兒島灣(きびこじまわん)"鰻鱺(むなぎ)"、百九十五匁(≒730g)

(しるもの)】:
  ・"潮汁(うしほじる)"
    ・椀種(わんだね):
      ・"城下王餘魚(しろしたかれひ、≒まこがれひ)"の骨邊肉(あら)
      ・長州(ながと)"魂消茄子(たまげなす)"

(すし)】:
  ・"堅魚(かつを)"、稭炰(わらやき)
  ・薩州出水(さつまいづみ)"甲烏賊(すみいか、=かふいか)"
  ・蝦夷噴火灣(えぞふんくわゝん)"鮪(しび)"、十三貫(≒50kg)精肉(あかみ)
  ・下總銚子(しもつふさてうし)"金目鯛(きんめだひ)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)"竹筴魚(あぢ)"
  ・上總富津(かみつふさふッつ)"星鳗(はかりめ)"
  ・蝦夷噴火灣(えぞふんくわゝん)"鮪(しび)"、十三貫(≒50kg)中肥(ちゆうあぶ)
  ・"黃蓋鰈(まこがれひ)"

果子(このみくさのみ)】:
  ・羽州(では)櫻桃(さくらんぼ)"佐藤錦(さたうにしき)"
  ・紀州(きい)"琵琶(びは)"
  ・臺灣(たいわん)"茘枝(れいし)"
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Flektogon 2.4/35 @F4
     東蔡(Carl Zeiss Jena)紅MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
毎年恆例(ならひ)の新年會(あらたなるとしをいはふつどひ)。
"美酒佳肴(よきさけによきさかな)"の數々(かずかず)、
加旃(しかのみならず)、"龍肝豹胎(うみやまのよきあぢ)"は常態(つね)のこと。
就中(わきても)、此度(こだみ)は"赤鰩肝(あかえいのきも)"まで、、。

「長州萩(ながとのくにはぎ)の濵(はま)に揚(あ)がりしもの」と云ふ。
"肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはざるほどのおどろき)"、
とまでは行(ゆ)かぬにせよ、珍味(よにもめづらしきあぢ)なるは確實(たしか)
海驢(あしか)、馬鹿(うましか)、饗應(もてなし)歟(か)?

「扨(さて)その經緯(いきさつ)は?」と問(と)はるれば、
「如此如此(かくかくしかじか)、、)」と應答(いら)ふる他(ほか)なし。
この他(ほか)、合馬(あふま)の"竹筍(たかむな)"、"鮮鱲子(なまのぼらこ)"、
羅臼(らうす)の"帝王鮏(ますのすけ)"に、"松葉蟹(まつばがに)"までも、、。

桌上型電腦(つくゑのうへなるエレキそろばん)が異常動作(ふてくされ)、
亂暴狼藉(あばれまはりて、をちこちとりちらか)し、一無方策(てもつけられず)。
復舊(もとにもどす)は輒(たやす)からず。
二日(ふつか)三日(みつか)、、、五日(いつか)かけて、ほゞ復舊(もとのすがたに)。

備忘錄(おぼゑがき)も紛失(なく)し、
記憶(おぼえ)曖昧模糊(あやふや)、劵(けん)ならダフ屋(だふや)、
"菽乳(とうふ)"沽(か)ふなら坊(まち)の零細豆腐店(ちいさなとうふや)がよい。
"淮南(とうふ)"昆布溏油(こぶだし)、"アベヾ"は跣(はだし)。

一(ひと)つに、二(ふた)つ、
故事(むかしのこと)を執筆(か)く時(とき)にャ、
×想起(おもひだ)しだし、〇想起(おもひだ)しつゝ記述(せ)にャならぬ。
そいや、當家(こちら)の"(わん)"も昆布溏油(ひろめだし)。

昆布(ゑびすめ)"利尻(りしり)"、
結(むす)ぶは眦(まなじり)、捉(とら)へて遊(あそ)ぶ言葉尻(ことばじり)、
"潮汁(うしほじる)"の鮮美(よきあぢ)なるは慥(たしか)なれど、
當日(このひ)の白眉(はくび)は"大頭鱈精巣(くもこ、=たらのしらこ)"。

適度(ほどよ)く調劑(あぢつけ)が施(ほどこ)され、
この、最上(このうへな)き淸湯(すましゞる)に調和(よくあふ)。
會(あ)ふは別(わか)れの劈頭(はじめ)に悲慘(みじめ)、三●締(さん▲んじめ)。
濟(す)ませ、黄昏(たそがれ)の『うを德』より辭別(いとまごひ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"助子(すけこ)"
  ・雲州宍道湖(いづものくにしんじこ)の"膾殘魚(しらうを)"
  ・筑紫合馬(つくしのくにあふま)の"竹筍(たかむな)"
  ・《刺躬(さしみ)》
    ・淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"
    ・失念(わすれたり)
    ・"鮮鱲子(なまのぼらこ)"
    ・蝦夷地濱中(えぞちはまなか)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・"赤海鷂魚肝(あかゑひのきも)"+"虎魨(とらふぐ)"
  ・蝦夷地羅臼(えぞちらうす)の"帝王鮏(ますのすけ)"
  ・"烏魚子(からすみ)"
  ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の"鮪幼魚(めじ)"
  ・能州(のと)"赤沙噀(あまなまこ)"、鮮(なま)+茶振(ちやぶり)
  ・因州(いなば)or伯州(はうき)の"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"
  ・江州(あうみ)琵琶湖(びはこ)の"稚年魚(ちあゆ)"
      +城州(やましろ)"萬願寺蕃椒(まんがんじなんばんこせう)"
  ・隱州(おき)"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"

(すし)】:
  ・上總竹岡(かづさたけをか)の"鱵(さより)" 
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"甲烏賊(すみいか、=かふいか)"
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・蝦夷地野附(えぞちのつけ)の"海扇(ほたてがひ)"
  ・和泉灘(いづみなだ)の"小鰭(こはだ)"
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、痩肉(あかみ)
  ・雲州宍道湖(いづものくにしんじこ)の"鰻鱺(むなぎ)"

(しるもの)】:
  ・"潮汁(うしほじる)"
    ・椀種(わんだね):淡路(あはぢ)星王餘魚(ほしがれひ)
              蝦夷(えぞち)大頭鱈精巣(くもこ)
    ・吸口(すひくち):椒芽(きのめ)

果子(このみくさのみ)】:
  ・草莓(いちご)"アイベリー"
  ・橘子(たちばなのみ)"せとか"
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:高千穗光學(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-微距(Macro)2/50 @F2.8~F5.6
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06

强(つよ)き颱風(のわけ)に因(よ)り、訪問(のれんくゞる)は四月(よつき)ぶり。
「豐穣(ゆたか)なる白藏(あき)の幸(さち)」を喰(く)ひそびれ
はや、水(みづ)も凍(い)てつく玄英(ふゆ)。
名殘(なごり)の"(むなぎ)"は"遠州濱名湖(とほとうみはまなこ)"。

江州琵琶湖(あうみびはこ)"本諸子(ほんもろこ)"、
隱州(おき)"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"と、
(い)ける×孔明(こうめい)〇魚介(うみ・みづうみのさち)、
冢中枯骨(つかのなかにかれたるほね)卍(まんじ)を狂喜亂舞(まひをど)らす

實(げ)に、
天下無雙(よにくらぶるものな)きは小宮親方(こみやおやかた)の"鱲子(からすみ)":
適度(ほどよ)く熟成(う)れ
芯(なか)は、なほ"(やはらか)さ"と"瑞々(みづみづ)しさ"を保持(たもつ)。

美味佳肴(よきあぢ)揃(ぞろ)ひなること、
何(いづ)れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」のごとき景状(ありさま)なれど、
當日(このひ)の白眉(はくび)は、
"活天然對蝦(いけてんねんくるまえび)"用(つか)ひし"雞卵炙(たまごやき)"。

實言(まこと)、
海内一(ひのもといち)の"雞卵炙(たまごやき)"」と斷言(よぶをはゞからず)。
小宮親方(こみやおやかた)も亦(また)、
會心作(くわいしんさく)」と自慢(むねをはる)、靑陽(はる)はまだ先(さき)。

これほどに、
沈魚落雁閉月羞花(うをしづみ、かりおち、つきとぢ、はなもはぢらふ)」
ほどの殊滋異味(よきあぢ)盡(づ)くしなれど、
勘定(しはらひ)は銀座(ざぎん)の●分の一(▲▲ぶんのいち)の廉價(やすさ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・江州琵琶湖(あうみびはこ)の"冰魚(ひうを)"
  ・鱲子(からすみ)
  ・能州(のと)"赤沙噀(あまなまこ)"
  ・"活天然對蝦(いけてんねんくるまえび)"による"雞卵炙(たまごやき)"  
  ・蝦夷仙鳳趾(えぞせんぽうし)の"眞蠔(まがき)" 
  ・江州琵琶湖(あうみびはこ)"本諸子(ほんもろこ)"の天麩羅(てんぷら)
  ・蝦夷濱中(えぞはまなか)"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・播州明石(はりまあかし)の"眞鯛(まだひ)"、四百八十匁(≒1.8kg)
  ・佐渡島(さどがしま)の"阿羅魚(あら)"、五百三十匁(≒2kg)
  ・蝦夷余市(えぞよいち)"華臍魚肝(あんかうきも)"
  ・隱州(おき)"松葉蟹(まつばがに、≒楚蟹)"、二百匁(≒750g)
  ・但州香住(たじまかすみ)の"雌楚蟹(めすのすはへがに)"の澆飯(どんぶりめし)
  ・遠州濱名湖(とほとうみはまなこ)の"鰻(むなぎ)"二百七十匁(≒1kg)

(すし)】:
  ・能州(のと)の"鰤(ぶり)"、四貫五百三十匁(≒17kg)、肥肉(あぶらみ)
  ・房州勝浦(あはかつうら)の"鯥(むつ)"
  ・佐渡島(さどがしま)の"阿羅魚(あら)"、五百三十匁(≒2kg)
  ・奧州(むつ)の"金華鯖(きんくわさば)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"眞鰺(まあぢ)"
  ・陸州大間(むつおほま)の"鮪(しび)"、四十三貫(≒160kg)
  ・陸州大間(むつおほま)の"鮪(しび)"、四十三貫(≒160kg)、肥肉(あぶらみ)
  ・能州(のと)の"鰤(ぶり)"、四貫五百三十匁(≒17kg)

(しるもの)】:
  ・播州明石(はりまあかし)の"眞鯛(まだひ)潮汁(うしほじる)"、
         四百八十匁(≒1.8kg)、朝〆(あさじめ)

果子(このみくさのみ)】:
  ・越後(ゑちご)の洋梨(やうなし)"ル・レクチ"
  ・紀州(きい)"紅まどんな"
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
     旭光學 賓得(Pentax)K-5 單鏡反光數字照相機(でじいち) ※2011-06
【鏡珠】:東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2   ※2011-06
時節柄(をりしも)、
盂蘭盆會(うらぼんゑ)と颱風(のわけ)が重(かさ)なり、
魚市塲(うをいちば)も蔬菜市塲(あをものいちば)も閉鎖(しま)り、
(いを)も蔬菜(あをもの)も缺乏(とぼし)き最惡(いとあし)き慘状(ありさま)

かゝる惡條件下(あしきめぐりあはせ)での、
淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"四百五十三匁(≒1.7kg)、
雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"(むなぎ)"百七十九匁(≒670kg)、
能州(のと)の"阿羅魚(あら)"九百四十七匁(≒3.55kg)。

木砧(まないた)の上(うへ)の"星王餘魚(ほしがれひ)"は朝〆(あさじめ)。
噛(か)むほどに、心持(こゝち)よき齒觝觸(はあたり)を隨伴(ともな)ひ
風韻(かをり)・旨味(うまみ)が浮騰(ほとばし)る。
就中(わきても)、縁側(えんがは)には肝裂魄飛(きもさけたましひみにそはず)。

とは半點(いさゝか)大袈裟(おほげさ)なれど、
"星王餘魚(ほしがれひ)"も"(むなぎ)"も、實言(まこと)、美味(よきあぢ)。
"潮汁(うしほじる)"の美(あぢよき)は勿論(いふもさらなり)。
素材(そざい)秀逸(よし)、技倆(うで)さらに優秀(よし)

此度(こだみ)の米醋(よねず)と粕醋(かすゞ)の配合比(わりあひ)は、
「六(ろくぶ):四(しぶ)」との説明(よし)。
粕醋(かすゞ)は"山吹(やまぶき)"など三種(みくさ)の混合(まぜあはせ)。
舎利(すめし)に限定(かぎ)るなら、試行錯誤中(みちなかば)歟(か)?

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"雞卵炙(にはとりのたまごやき)"
        ・・・・・
  ・長良川(ながらがは)の"香魚(あゆ)"
  ・土州四萬十(とさしまんと)の"沼知々武(ごり、≒ぬまちゝぶ)"と
     "伏見蕃椒(ふしみたうがらし)"有馬煮(ありまに)
        ・・・・・
  ・蝦夷地餘市(えぞちよいち)の"鮟鱇肝臟(あんきも)"
  ・播州明石(はりまあかし)の"海蛸子(たこ)"、九百卅匁(≒3.5kg)
  ・"秋葵(おくら)"
        ・・・・・
  ・房州勝浦(あはかつうら)の"鰒(あはび)"
  ・上州(かうづけ)"茄子(なすび)"
        ・・・・・
  ・淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"、四百五十三匁(≒1.7kg)
  ・蝦夷地噴火灣(えぞちふんくわゝん)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・加州(かゞ)"加賀太胡瓜(かゞぶとそばうり)"
        ・・・・・
  ・山州(やましろ)"鹿ヶ谷柬埔塞瓜(しゝがたにかぼちやうり)"
        ・・・・・
  ・雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"鰻(むなぎ)"、百七十九匁(≒670kg)

(すし)】:
  ・能州(のと)の"阿羅魚(あら)" 、九百四十七匁(≒3.55kg)
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)" 、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・三州(みかは)の"鯷(いはし)"
  ・下總銚子(しもつふさてうし)の"堅魚(かつを)"
  ・蝦夷地奧尻(えぞちおくしり)の"北紫靈螺子(きたむらさきうに)"
  ・豐後(ぶんご)"城下王餘魚(しろしたがれひ、≒まこがれひ)"
  ・江戸前海(えどまへうみ)の"小鰭(こはだ)"
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"、四百五十三匁(≒1.7kg)
  ・豆州下田(いづしもだ)の"鮪(しび)"、醬油漬(しやうゆづけ)
  ・"星鳗(あなご)"
  ・陸前高田(りくぜんたかだ)"石影貝(いしかげがひ)"
  ・"新魷魚(しんいか)"
  ・"河童卷(かつぱまき)"

(しるもの)】:
  ・能州(のと)の"海糠魚(あら)"の骨邊肉(あら)九百四十七匁(≒3.55kg)と
      ブータン"松蕈(まつたけ)"の潮汁(うしほじる)

果子(このみくさのみ)】:
  ・宇留麻廼久尓(うるまのくに)"タヾヲゴールド"菠蘿(ぱいんあぷる)
  ・墨西哥(メキシコ)"芒果(まんご)"
  ・薩州(さつま)"茘枝(れいし)"
  ・"瀬戸(せと)ジャイアント"
  ・暹羅(しやむろ)"榴蓮(ドリアン)"
=======================================

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【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
今季初(はつもの)」と云ふ"尼手鰈(あまてがれひ、=まこがれひ)"は、
淡路島(あはじゝま)の四百八十匁(≒1.8kg)、
備前小島灣(びぜんこじまわん)の(むなぎ)が百二十八匁(≒480kg)、
佐渡(さど)の(しび)は稍(やゝ)小(ちい)さめの十八貫七百匁(≒70kg)。

劈頭(いやさき)に、"饅膾(ぬたなます)"。
名殘(なごり)の"螢魷魚(ほたるいか)"を最惜(いとをし)みつゝ、
馬鹿貝(ばかゞひ)と九條蔥(くでうねぎ)を醋未醤(すみそ)にて堪能(あぢはふ)。
何(なん)でも「千鳥醋(ちどりす)」との説明(よし)。

伏見蕃椒(ふしみたうがらし)と縠雜魚(ちりめんざこ)の煮物(にもの)には、
破顏(かをほころば)さゞるべからず。
小宮親方(こみやおやかた)特有(ならでは)の優(やさ)しき味(あぢはひ)
實(げ)に、これを家苞(いへつと)ゝして囘(かへ)りたきところ

未開(いまだひらかざる)"(ぬなは)":、
水晶(すいしやう)のごとき"それ"には「肝裂魄飛(きもさけたましひみひそはず)」。
近接(ちかより)て詳細(つぶさ)に觀察(み)るに、
實言(まこと)、嬰兒(みどりご)の如(ごと)き容姿(すがたかたち)。

備前小島灣(びぜんこじまわん)の(むなぎ)は"白炙(志らやき)"。
雲州宍道湖(いづもしんじこ)の鰻(むなぎ)にも負(ま)けぬ美味(よきあぢ)
今季一(こんきいち)」
と云ふも、强(あなが)ち嘘僞(うそいつはり)にあらず

土州(とさ)の縞鰺(しまあぢ)、上總竹岡(かみつかさたけをか)の帶魚(たちうを)、、
百花繚亂(いづれあやめかゝきつばた)」。
早晚(いづれ)彩芽(あやめ)は老板(ひと)の(つま)。
眞妻山葵(まづまわさび)は刺躬(さしみ)の"つま"。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"饅膾(ぬたなます)"
     勢州桑名(くはな)の馬鹿貝(ばかゞひ)
     越中富山滑川(ゑつちゆうとやまなめりかは)の螢魷魚(ほたるいか)
     山州(やましろ)九條葱(くでうねぎ)
  ・"煮物(にもの)"
     蝦夷余市(えぞよいち)の華臍魚肝(あんごうきも)
     山州(やましろ)伏見蕃椒(ふしみたうがらし)
     縠雜魚(ちりめんざこ)
  ・"醋物(すのもの)"
     羽州白神山地(ではのくにしらかみさんち)の蓴菜(ぬなは)
  ・"煮物(にもの)"
     床臥(とこぶし)
     冬瓜(かもうり)
     牛蒡(うまふゞき)
     實山椒(なるはじかみのみ)
  ・"臠(さしみ)"
     淡路島(あはじゝま)の尼手鰈(あまてがれひ)、四百八十匁(≒1.8kg)
     蝦夷禮文島(えぞれぶんたう)の蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)  
  ・"焼物(やきもの)"
     備前小島灣(びぜんこじまわん)の鰻(むなぎ)、百二十八匁(≒480kg)

(すし)】:
  ・房州勝浦(あはかつうら)の堅魚(かつを)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)中肥肉(ちゆうあぶ)、十八貫七百匁(≒70kg)
  ・眞鯒(まごち)
  ・土州(とさ)の縞鰺(しまあぢ)、一貫二百八十匁(≒4.8kg)
  ・淡路(あはぢ)の胡麻鯖(ごまさば)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)、十八貫七百匁(≒70kg)
  ・玉珧(たひらぎ)
  ・上總竹岡(かみつかさたけをか)の帶魚(たちうを)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)漿醬醃(しやうゆづけ)、十八貫七百匁(≒70kg)
  ・雞卵炙(にはとりのたまごやき)

(しるもの)】:
  ・吸地(すひぢ)
    利尻昆布(りしりひろめ)+鮪節(しびぶし)
  ・椀種(わんだね)
    雲州江の川(いづもごうのかは)の鰷(あゆ)
    芋莖(いもじ)
  ・吸口(すひくち)
    椒芽(きのめ) ※自家栽培(じかさいばい)

果子(このみくさのみ)】:
  ・蝦夷夕張(えぞゆふばり)甜瓜(からうり)、"夕張甜瓜(ゆふばりメロン)"
  ・羽州(では)櫻桃(さくらんぼ)、"佐藤錦(さたうにしき)"
  ・臺灣(たいわん)茘枝(れいし)
  ・葡萄(えびかづら)
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【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
劈頭(いやさき)に眼精(まなこ)を射(い)るは、
俎上(まないたのうへ)の×"天狗(てんぐ)"〇"時不知(ときしらず)"。
そも、"時不知(ときしらず、おほめます)"なるもの、
高貴(やむごとなき)こと、鮏(さけ)の夥計(なかま)でも頂點(いたゞき)。

これを紀州備長炭(きしうびんちやうたん)に炙(あぶりや)きて頂戴(いたゞく)。
i.e.,(すなはち)、"鹽燒(しほやき)"。
不味(あぢあし)き理(ことわり)もなし。
かくて、「虎咽狼呑(むさぼりつく)」せば、身・皮(みかは)の竟(をは)り

信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の山菜(さんさい)も今季(ことし)で最後(をはり)。
×雞眼目(うをのめ)〇楤芽(たらのめ)、漉油(こしあぶら)。
尾張(をはり)に駿州(するが)遠州(とほとほみ)、
駿河灣(するがわん)遠州(とほとほみ)櫻蝦(さくらえび)の"天麩羅(てんぷら)"。

佛陀(ほとけ)の骨(ほね)に鮓(すし)の米(こめ)、
「舎利(しやり)」と喚做(よびな)す鮓業界(このせかい)。
小宮親方(こみや)の舎利(しやり)は×三度(さんど)まで〇七變化(しちへんげ)。
米醋(よねず)に粕醋(あかず)、横井(よこゐ)に中㙒(なかの)。

水果(くだもの)、悉(ことごと)く"清露(シロップ、みつゞけ)"と做(な)す。
"(なま)"でも"糖漿(みつゞけ)"でも、最上級品(いとよきもの)ばかり。
就中(わきても)、
琉球(りうきう)"桃菠蘿(ピーチパイン)"は「龍肝豹胎(まれにみるうまさ)」。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・"醋未醤和(すみそあへ)"
     薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)" 
     土州(とさ)"四方竹(しはうちく)"
  ・"煮付(につけ)"
     江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"稚鰷(ちあゆ)"
     信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"楤芽(たらのめ)"
     信州篠ノ井(しなのしのゝゐ)の"漉油(こしあぶら)"
  ・駿河灣(するがわん)櫻蝦(さくらえび)の"天麩羅(てんぷら)"
  ・時不知(ときしらず、おほめます)"鹽燒(しほやき)"
  ・"刺躬(さしみ)"
     淡路(あはぢ)"星王餘魚(ほしがれひ)"
     蝦夷地釧路(えぞちくしろ)の"蝦夷馬糞霊螺子(えぞばふんうに)"
  ・"雞卵燒(たまごやき)"

(すし)】:
  ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、中肥肉(ちゆうあぶ)
  ・"櫻鱒(さくらます)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"春子鯛(かすごだひ)"
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"眞鰺(まあぢ)"
  ・江戸灣(えどわん)の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・"小鰭(こはだ)"="鯯(このしろ)"の稚魚(をさないを)
  ・蝦夷地(えぞち)"富山蝦(とやまえび)"
  ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、肥肉(あぶ)
  ・薩州出水(さつまいづみ)の"墨烏賊(すみいか)"
  ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の"鮪(しび)"、醬油漬(しやうゆづけ)
  ・越中富山(ゑつちゆうとやま)の"白蝦(しろえび)"+陸州(むつ)"蚫(あはび)"

(しるもの)】:
  ・"花山椒鍋(はなざんせうなべ)"
     和州(やまと)"花山椒(なるはじかみのはな)"
     上總竹岡(かみつかさたけをか)の"白帶魚(たちうを)"
     泉州(いづみ)"水茄子(みづなす)"
     "防風(はますかな)?"

果子(くわし)】:
  ・果子(くだもの)ゝ清露(シロップ)
     米利堅(めりけん)の"櫻桃(さくらんぼ)"
     本朝(わがくに)の"櫻桃(さくらんぼ)"
     琉球(りうきう)"桃菠蘿(ピーチパイン)"
     日向(ひむか)"芒果(マンゴ)"
     "橘(みかん)"の等類(たぐひ)
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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
備前(びぜん)兒島灣(こぢまわん)の"(むなぎ)"などの初物(はつもの)!
"(むなぎ)"には釣針(つりばり)までと云ふ邂逅(めぐりあはせ)。
炙(あぶりやき)に用(つか)ふ備長炭(しろずみ)も、
"日向備長炭(ひむかびんちやうたん)から"紀州備長炭(きしうびんちやうたん)"に、、。

勿驚(おどろくなかれ)、
"横井(よこゐ)"の"與兵衞(よへゑ)"が製造中止(もはやつくらず)とのこと。
已(や)むことを得(え)ずして、
"山吹(やまぶき)"+"江戸丹念酢(えどたんねんず)"を代替(かへとなす)。

"雞卵燒(たまごやき)":
天然對鰕(てんねんくるまえび)に鰕黃(えびみそ)まで擂込(すりこ)み、
顏色(いろ)・(あぢ)・風韻(かをり)とも 
實(げ)に、皇帝(すめらみこと)の風格(おもむき)

豐前(ぶぜん)"城下鰈(しろしたがれひ)"骨邊肉(あら)の"潮汁(うしほじる)"には、
肝裂魄飛(きもさけ、たましひみにそはず)。
最貴(いとやむごとな)き"花山椒(なるはじかみのはな)"まで散見(ちらりほらり)。
そのほか、一(ひと)つとして不味(あぢあしき)は無(なし)

倩(つらつら)、昔日(むかし)の記録(ふみ・ゑ)を繙(ひもと)くに、
足掛十年(あしかけとゝせ)、此度(こだみ)で百三十二囘目(ひやくさんじふにかいめ)。
周知(あまねくしら)るゝ、掉尾(いやはて)の果實(くだもの)と云ふ形式(かたち)、
徐々(ゆるやか)に確立(なりし)ものと氣附(きづ)く。

嘗(かつ)ては、果子(くだもの)なきこともあり、
手製(みづからつくり)し甜品(あまみ)を提供(ふるま)ふことも、、。
小宮親方(おやかた)に據(よ)らば、
手間(てま)でもあり、賓(まらうど)も果實(くだもの)を怡(よろこ)ぶ」と。

實(げ)にも!
面倒(てのかゝ)る甜品(あまみ)簡易(てのかゝら)ぬ果物(くだもの)へ、、。
と云ふのは、"菓子(くわし)"の歴史(れきし)とは逆向(さかしま)
元來(もとより)"菓子(くわし)"とは、

庭訓往來】:南北朝時代末期~室町時代前期
=========================================
>"菓子"者(くわしは)、
>
> (ゆ)、柑々子(かうかうじ)、(たちばな)、熟瓜(じゆくくわ)、
> 澤茄子(さはなすび)等(とう)、可隨時景物也(ときのけいぶにしたがふべきなり)
>
> 伏菟曲(ふとまがり)、煎餠(せんべい)、燒餠(やきもち)、粢(しどき)、
> 興米(おこしこめ)、索<米并>(さくべい)、糒(ほしい)、粽(ちまき)等(とう)、
> 爲客料可被用意(かくれうのためにやういせらるべし)。
> 御時粥(おんときかゆ)、以前(いぜん)可被調置(とゝのへおかるべし)。
=========================================

日葡辭書】: 安土桃山期(刊行は江戸初期)
=========================================
>"Quaxi(くわし)" 
>
> 果實、特に、食後の果物をいふ。
=========================================

のであり、
古(ふる)く夏華(もろこし)より傳來(つたは)りし"唐菓子(からくだもの)"、
その後(のち)の"南蠻菓子(なんばんぐわし)"を含(ふく)め、
砂糖(さたう)を用(つか)ふやうに、、。

江戸初期(えどのはじめごろ)【料理物語】には、 
各種(さまざま)なる"菓子(くわし)"が紹介(しめさ)れ、
沙糖(さたう)用(つか)ふものも過半(なかばをこす)。
"蕨餠(わらびもち)"に不使用之(これをつかはざる)は後世(のち)も同(おな)じ

料理物語】:(45~47/56) ※拔粹 ●:砂糖練、▲:砂糖掛、×無糖
=========================================
>第十八、"菓子(くわし)"之部
>
>"玉子素麺(たまごさうめん)"●
>
>"おこし米(こめ)"●
>
>"牛蒡餠(ごばうもち)"●
>
>"葛燒(くずやき)もち"●
>    くず一升、水一升、沙糖(さたう)一升、三色(いろ)すくこね、
>    あはを、みかんほどにまろめ、なべに、すこしあぶらをぬり、
>    さいさい、うちかへし、燒(やき)申候。
> 
>"葛餠(くずもち)"▲
>    くずのこ一升に、水一升五合(がう)入、ねりて、出し候。
>    もちは、いづれも、"まめのこ"、鹽(しほ)、"さたう"、かけて吉。
>    又、"くずのこ"、"わらびのこ"は、何(なん)ときも、やげんにて、
>    よくおろして、こね申也。
>
>"蕨餠(わらびもち)"×
>    粉(こ)一升に、水一升六七合(かう)入、よくときて、ねり候よし。
>    粉(こ)同。
>
>"雪餠(ゆきもち)"×
>
>"杉原(すぎはら)もち"×
>
>"枸杞餠(くこもち)"×
>
>"五加(うこぎ)餠"×
>
>"ちまき"▲
>    是も四分六分の"こ"を水にてやはらかにね、ま薦(こも)にても、 
>    篠(さゝ)のはにても、つゝみまき、よくゆで候。
>    黃には、くちなしの汁入、"沙糖(さたう)"、大豆(まめ)の"こ"、しほ。
>
>"さゝ餠"×
>
>"御所樣餠(ごしよさまもち)"▲
>
>"近衞樣雪餠(このゑさまゆきもち)"×
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江戸後期(えどのをはりちかく)、
江戸流行料理通】には、
菓子(くわし)といふは砂糖(さたう)にて製(こしらへ)たるものにあらず
と、時流(ながれ)に逆(さか)らふ發言(ものいひ)も、、。

八百善料理通】:(39/81)
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>"菓子(くわし)"の心得の事
>
>一、菓子(くわし)といふは砂糖(さたう)にて製(こしらへ)たるものにあらず
> 菓子(くわし)は"くだ物(もの)"也。
> 四季(しき)の木實(このみ)草實(くさのみ)をいふ。
> 料理(りやうり)の終(をは)りに出す事は、
> 料理の厚味(かうみ)、魚鳥(ぎよてう)を食(しよく)し
> 食熱(しよくねつ)をさますため也。
>
> 料理にかゝはりたるにもあらず。
> 後(のち)に工夫(くふう)ありて、作(つく)れる也。
> 砂糖(さたう)は冷(れい)なる物なれば、惡(あし)き物にあらず。
> 宜(よろし)といへども、さりながら、木(こ)の實(み)草(くさ)の實(み)を、
> 盛合(もりあは)せ出すが宜(よろ)し
> 此の理(り)を捨(すつ)べからず。
>
> 茶請(ちやうけ)は砂糖(さたう)にて作(つく)りたる品(しな)宜(よろ)し
> の味(あぢは)ひには●(よろし●)の第一也。   ※ ←●:不能判讀
>
> 仍(よつ)て、”茶菓子(ちやくわし)”とは獻立(こんたて)には書(かゝ)ず
> ”茶請(ちやうけ)”と書事(かくこと)なり。
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因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・"蕗未醤(ふきみそ)"
  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"冰魚(ひうを)"
  ・土州(とさ)四万十川(しまんとがは)の"沼知々武(ゴリ)"
  ・山州(やましろ)"花山椒(なるはじかみのはな)"

  ・豐前(ぶぜん)"城下鰈(しろしたがれひ)"、三百四十七匁(≒1.3kg)魥(さしみ)
  ・淡路(あはぢ)"眞子鰈(まこがれひ)"、三百廿匁(≒1.2kg)刺躬(さしみ)
  ・蝦夷地(えぞち)"蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)"
  ・山州(やましろ)長岡京(ながをかきやう) の"笋(たけのこ)"
  ・山州(やましろ)"花山椒(なるはじかみのはな)"

  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"稚鰷(ちあゆ)"鹽燒(しほやき)

  ・備前(びぜん)兒島灣(こじまわん)の"鰻(むなぎ)"、九十三匁(≒350g)

  ・"雞卵燒(たまごやき)" ※天然對鰕(てんねんくるまえび)+鰕黃(えびみそ)
  ・蝦夷地(えぞち)余市(よいち)の"華臍魚(あんかう)"肝臟(きも)

(すし)】:
  ・下總(しもつふさ)船橋(ふなばし)の"鳥蛤(とりがひ)"
  ・上總(かみつかさ)竹岡(たけをか)の"鱵(さより)"
  ・"小鯛(かすご)"
  ・長州(ながと)仙嵜(せんざき)の"鮪(しび)"
  ・豐前(ぶぜん)佐賀關(さがのせき)の"雞魚(いさき)"

(しるもの)】:
  ・椀種(わんだね):
     豐前(ぶぜん)"城下鰈(しろしたがれひ)"の骨邊肉(あら) 
  ・吸口(すひくち):
     山州(やましろ)"花山椒(なるはじかみのはな)"

果子(くわし)】:
  ・"●●柑(なんとかゝん)"
  ・吉備(きび)の"酸漿(ほゞづき)"
  ・日向(ひむか)"芒果(マンゴ)"
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【暗箱】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
劈頭(いやさき)に"海鼠子(このこ)":
現今(いま)"ナマコ"と叫(よ)ばるゝものは、
古來(いにしへより)、和名(やまとことば)で""と號(よびな)さる。
海鼠(こ)の生殖巢(こ)」故(ゆゑ)、"海鼠子(このこ)"。

倭名類聚抄】(16/65):
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  "海鼠(こ)":
    "(ひる)"に似而(にて)大者(おほきなるもの)也。
========================================

和漢三才圖會】(230~231/787):
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  "海鼠膓(このわた)":
    腹中に黃膓三條有り。
    之を淹し、"醬"と爲る者也。
    香美、不可言(いふべからず)。
      ・・・・(中畧)・・・・
    其膓中、赤黃色有て、糊の如きの者を、"海鼠子(このこ)"と名く。
    亦佳し
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"海鼠子(このこ)"に三種(みくさ)あり、
i.e.,(すなはち)、"(なま)"、"半生(はんなま)"、"(ひもの)"、これなり。
その容(かたち)から、(ひもの)は"撥子(ばちこ)"と喚做(よびな)さる。
老骨(それがし)、"(なま)"を最喜歡(なによりこのむ)。

江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"冰魚(ひうを)、=鰷稚魚(あゆをさなご)":
"海鼠子(このこ)"も"冰魚(ひうを)"も、魚河岸(いをがし)にて仕入(しい)れ、
寸毫(つゆ)不加工(てをくはへざる)ものなれど、
「實言(まこと)、佳味(よきあぢ)!」、と云ふほかなし。

肥前(ひぜん)大村(おほむら)の"靑海鼠(あをなまこ)"に、
能州(のと)"赤海鼠(あかなまこ)と云ふ競(あらそひ)。
(なま)の海鼠(こ)故(ゆゑ)、人(ひと)は"生海鼠なまこ)"と呼(よ)ぶ。
明白(あきらか)に"靑海鼠(あをなまこ)"が吉(よい)。

虎鯸(とらふく)の"精巢(しらこ)":
巨大(いとおほきな)る"精巢(しらこ)"を六等分(むつにわけ)、
振鹽(ふりじほ)をして、備長炭(しろずみ)にて叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る
不味(まづ)からう道理(わけ)もなし。

"烏魚子餈(からすみもち)"また然(しか)り。
雞(とり)が啼(な)く東國(あづまのち)では稀(まれ)なる"丸餈(まるもち)"。
越後(ゑちご)のもの」と云ふ。
"烏魚子(からすみ)"の華美(よきあぢ)なるは勿論(いふもさらなり) 。

この日(ひ)の(しるもの)は、正(まさ)に靑陽(はる)。
筑前(ちくぜん)八女(やめ) の(たけのこ)、獨活(うど)、大葉擬寶珠(うるい)、
椒芽(きのめ)の吸口(すひくち)も爽(さは)やか。
愚按(おもふに)、『うを徳』の(しるもの)は天下無雙(よにならぶものなし)。

雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"鱣魚(むなぎ)"を堪能(あぢは)ひ、
薩州(さつま)出水(いづみ)の"眞鰺(まあぢ)"に、
伯州(はうき)境港(さかひみなと)の"松葉蟹(まつばがに)"、
掉尾(いやはて)は、阿州(あは)"さくらもゝ草莓(いちご)" にて掉尾(しめ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・能州(のと)海鼠子(このこ)
  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)の"冰魚(ひうを)、=鰷稚魚(あゆをさなご)"
  ・蝦夷地(えぞち)乙部(おとんべ)の"なめた王餘魚(がれひ)"
  ・播州(はりま)明石(あかし)?の"海蛸子(たこ)"
  ・滑子(なめこ)
  ・肥前(ひぜん)大村(おほむら)"靑海鼠(あをなまこ)"
  ・能州(のと)"赤海鼠(あかなまこ)"
  ・播州(はりま)明石(あかし)の"比目魚(ひらめ)"、六百四十匁(≒2.4kg)
  ・蝦夷地(えぞち)昆布森(こんぶもり)の"蝦夷馬糞靈螺子(えぞばふんうに)"
  ・虎鯸(とらふく)"精巢(しらこ)"
  ・蝦夷地(えぞち)餘市(よいち)の"華臍魚肝臟(あんかうきも)"
  ・"烏魚子(からすみ)餈(もち)"
  ・雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の"鱣魚(むなぎ)"、三百廿匁(≒1.2kg)

(すし)】:
  ・豆州(いづ)下田(しもだ)の"鮪(しび)"、四十五貫三百匁(≒170kg)
  ・播州(はりま)明石(あかし)の"比目魚(ひらめ)"、六百四十匁(≒2.4kg)
  ・豆州(いづ)下田(しもだ)の"鮪(しび)"、四十五貫三百匁(≒170kg)
  ・薩州(さつま)出水(いづみ)の"眞鰺(まあぢ)"
  ・"障泥魷魚(あふりいか)"
  ・"牀臥(とこぶし)"
  ・豆州(いづ)下田(しもだ)の"鮪(しび)"、四十五貫三百匁(≒170kg)
  ・伯州(はうき)境港(さかひみなと)の"松葉蟹(まつばがに)="楚蟹(すはへがに)"

(しるもの)】:
  ・椀種(わんだね):
     筑前(ちくぜん)八女(やめ) の笋(たけのこ)、
     獨活(うど)、
     大葉擬寶珠(うるい、=おほばぎばうし)
  ・吸口(すひくち):
     椒芽(きのめ)

果子(くわし)】:
  ・阿州(あは)"さくらもゝ草莓(いちご)"
  ・白草莓(しろいちご) 、"初恋の香り"
  ・"金柑(きんかん)"二色(ふたいろ)
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【暗箱】 :東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【受象珠】:旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
以西巴爾亞(イスハニヤ)の繪師(ゑし)の手(て)になる石版印刷畫(リトグラフ)は、
先代(さきつおやかた)の所藏(もの)」と云ふ。
この日(ひ)の廚(つけば)には、"肥前(ひぜん)五島(ごたう)の垢穢(くゑ)"に、
"子籠(こゞもり)の公魚(わかさぎ)"、雌雄(めすとをす)"楚蟹(すはへがに)"。

はや、
"蜂斗菜(ふきのたう)"に加(くは)へ、
"(わん)"には、(たけのこ)と麪條魚(しらうを)に椒芽(きのめ)。
一足(ひとあぢ)早(はや)き靑陽(はる)の宴(うたげ)

對照的(これとはさかしま)、
名殘(なごり)の、"せこ蟹(がに)"に、"濱名湖(はまなこ)の(むなぎ)"。
やはり鰻魚(むなぎ)は龝(あき)が吉(よい)。
同席(せきをおなじくせ)し臺灣(あちら)の食通(かた)と蟹談義(かにばなし)。

稚拙(つたな)き漢語・英語(あちらのことば)にて會話(やりとり)するに、
楚蟹(すはへがに)は蟹身(み)、大閘蟹(もろこしもくづがに)は蟹黃(かにみそ)」
と互(たが)ひに打點頭(うちうなづ)く。
結局(とゞのつまり)、彼儕(かれら)とは日語(ひのもとのことば)が最適(よい)

"烏魚子(からすみ)二種(ふたくさ)"の内(うち)の一種(ひとつ)は、
「仕入値(しいれね)瓩(キロ)六萬五千圓(ろくまんごせんゑん)」。
奴僕(やつかれ)、
熟成(ひの)淺(あさ)き二萬五千圓(にまんごせんゑん)が嗜好(このみ)

酒足飯飽(ごちさうさまでござつた)!」
前述(くだん)の臺灣(たいわん)よりの貴人(たふときひと)も、
同意之(これにうなづく)。
很好吃(いとよきあぢなり)!」

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・松前漬(まつまへづけ)
     鯡魚子(かどのこ)
     魷魚乾絲(するめせん)
     昆布絲(ひろめせん)
     胡蘿蔔絲(せりにんじんせん)
  ・肥前(ひぜん)小長井(こながゐ)の蠔(かき)
  ・油煠(てんぷら)
     蜂斗菜(ふきのたう)
     公魚(わかさぎ)
  ・胾(さしみ)
     蝦夷地(えぞち)濱中(はまなか)の馬糞靈螺子(ばふんうに)
     肥前(ひぜん)五島(ごたう)の垢穢(くゑ)
  ・清蒸赤鯥(あかむつむしもの)
  ・せこ蟹(がに)釜飯(かまめし)
  ・遠州(とほとほみ)濱名湖(はまなこ)の鰻(むなぎ)、二百十三匁(≒800g)
  ・烏魚子(からすみ)二種(ふたくさ)

(すし)】:
  ・雞卵燒(たまごやき)
  ・佐渡(さど)の鰤(ぶり)
  ・蝦夷地(えぞち)松前(まつまへ)の金槍魚(しび)
  ・因州(いなば)or伯州(はうき)の"松葉蟹(まつばがに)="楚蟹(すはへがに)"

(わん)】:
  ・清湯(すましゞる)
     椀種(わんだね):
       薩州(さつま)の笋(たけのこ)
       雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の銀魚(しらうを)
     吸口(すひくち):
       椒芽(きのめ)

果子(くわし)】:
  ・下總(しもつふさ)香取(かとり)の"アイベリ"
  ・肥前(ひぜん)"せとか"
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
烏魚子(からすみ)にせばや」と、
仕込最中(しこみさなか)の鯔魚子(ぼらこ)に眼眶(まなこ)釘附(くぎづけ)。
雌雄(をすめす)楚蟹(すはへがに)の姿(すがた)も、、。
やはり不可缺(かゝせぬ)江州琵琶湖(あふみびはこ)の諸子(もろこ)。

蝦夷地利尻(えぞぢりしり)の牙鮃(ひらめ)は八百匁(≒3kg)の大物(おほもの)。
(さしみ)→(すし)→潮汁(うしほじる)、
美味(うまさ)の三段活用(さんだんかつやう)
三段腹卍(さんだんばらまんじ)、遣繰算段(やりくりさんだん)四苦八苦(しくはつく)。

無理强(むりじ)ひせし"雞卵燒(たまごやき)":
薯蕷(いも)を(す)り、車鰕(くるまえび)、雞蛋(たまご)を加(くは)へ、
日向備長炭(しろずみ)にて叮嚀(ねんごろ)に燒成(やきあぐ)るぞ尤(いと)をかし。
感謝感激雛霰(かんしやかんげきひなあられ)もなき三段腹卍(さんだんばらまんじ)。

この日(ひ)、
唸(うな)り、腕組(うでをく)み、うち點頭(うなづ)きしは"炊合(たきあはせ)"。
聖護院菘根(しやうごいんだいこん)、金時胡蘿蔔(きんときせりにんじん)、
各々(おのおの)調味(あぢつけ)して、火候(ひいれ)完璧(ひのうちどころなし)。

山葵(わさび)にも瞠目(めをみはる)ほか術(てだて)なし。
卸金(おろしがね)を變(か)へ、
鮫皮(さめがは)にも無遜色(ひけをとらぬ)滑(なめ)らかさと黏(ねば)り
同(おな)じ山葵(わさび)でこれほどまでに變貌(かはる)とは、、。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
  ・吉備(きび)と蝦夷地昆布森(えぞちこんぶもり)の眞蠔(まがき)
  ・炊合(たきあはせ)の類(たぐひ):
    ・聖護院菘根(しやうごいんだいこん)
    ・金時胡蘿蔔(きんときせりにんじん)
    ・蝦夷地餘市(えぞちよいち)の鮟鱇肝(あんきも)二種(ふたくさ)
  ・但馬津居山(たじまつゐやま)の勢子蟹(せこがに)
  ・魥(さしみ):
    ・蝦夷地利尻(えぞぢりしり)の牙鮃(ひらめ)、八百匁(≒3kg)
    ・蝦夷地昆布森(えぞちこんぶもり)の海膽(うに)
  ・江州琵琶湖(あふみびはこ)の諸子(もろこ)鹽炙(しほやき)
  ・羽州(では)"にかほ"楚蟹(すはへがに)、二百四十匁(≒900g)
       ※脚身(あしのみ)は撮影失念(とりわすれ)!
  ・羽州八郎潟(ではゝちらうがた)の鰻(むなぎ)、二百十六匁(≒810g)

(すし)】:
  ・雞卵燒(たまごやき)
  ・蝦夷地利尻(えぞぢりしり)の牙鮃(ひらめ)、八百匁(≒3kg)
  ・能州(のと)の鰤(ぶり)、二百七十匁(≒10kg超)
  ・蝦夷地(えぞち)の鯷(いはし)
  ・蝦夷地羽幌(えぞちはぼろ)の特大富山鰕(いとおほきなるとやまえび)
  ・紀州那智勝浦(きゐなちかつうら)の金槍魚(しび)

(わん)】:
  ・牙鮃(ひらめ)骨邊肉(あら)潮汁(うしほじる)

菓子(くわし)】:
  ・肥後(ひご)"太龝柹"(たいしゆうがき)
  ・正體不明(よくわからぬ)、尤(いと)柔(やは)らかなる柹(かき)
  ・ウズベキスタン柘榴(ざくろ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
當家(こちら)の招牌(かんばん)たる"紅椒ムース(パプリカむうす)":
明石鯛(あかしだひ)の骨邊肉(あら)より魚溏油(フュメ・ド・ポアソン)を引(ひ)き、
幾種(いくつ)もの香味(かをり)ある蔬菜(あをもの)と合(あ)はせ、
裏漉(うらごし)せし紅椒(パプリカ)と奶油(くれむ)と混合(まぜあはす)。

信州(しなの)ゝ松茸(まつたけ)に、鵡川(むかは)の柳葉魚(しゝはむ)、
(ゆ)を吸口(すひくち)とし、(わん)となす。
松茸(まつたけ)は勿論(いふまでもなく)、
柳葉魚(しゝはむ)の超絶美味(くらぶるものなきうまさ)に絶句(ことばをうしなふ)。

八百卅匁(≒3.1kg)と演述(い)ふ、
淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)にも悶絶(たましひみにそはず)。
(さしみ)、(すし)、(しる)の遣繰(やりくり)三段活用(さんだんかつやう)。
祕密蓄財(へそくり)、燒栗(やきぐり)、我同意(I agree)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・蝦夷地仙鳳趾(えぞちせんぽうし)の蠔(かき)
  ・丹波(たんば)黑菽(くろえだまめ)+菱實(ひしのみ)
  ・蝦夷地濱中(えぞちはまなか)蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
    +淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)、八百卅匁(≒3.1kg)、魥(さしみ)
  ・明石鯛(あかしだひ)骨邊肉(あら)による紅椒(ぱぷりか)のムース
  ・蝦夷地余市(えぞちよいち)鮟鱇肝臟(あんきも)燻製(いぶし)
    +蝦夷仙鳳趾(えぞせんぱうし)の蠔(かき)時雨煮(しぐれに)
  ・羽州(では)の鰆(さはら)、藁燒(わらやき)
  ・播州明石(はりまあかし)の蛸(たこ)、六百九十匁(≒2.6kg)、煮章魚(にだこ)
  ・常州霞ヶ浦(ひたちかすみがうら)の鰻(むなぎ)、百四十七匁(≒550g)、
    白燒(しらやき)

(すし)】:
  ・蝦夷地戸井(えぞちとゐ)の鮪(しび)、廿七貫(にじふなゝくわん、≒110kg)
  ・眞鯖(さば)
  ・薩州出水(さつまいづみ)の墨烏賊(すみいか)新子(しんこ)
  ・蝦夷地戸井(えぞちとゐ)の鮪(しび)、肥肉(あぶらみ)
  ・蝦夷地根室(えぞちねむろ)の鯷(いはし)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)
  ・佐渡(さど)の鮪(しび)漿醤漬(しやうゆづけ)
  ・羽州(では)鰆(さはら)の藁燒(わらやき)
  ・蝦夷地戸井(えぞちとゐ)の鮪(しび)、紅肉(あかみ)

(わん)】:
  ・蝦夷地鵡川(えぞちむかは)の柳葉魚(しゝはむ)+信州松茸(しなのまつたけ)、
    +吸口(すひくち)柚(ゆ)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)骨邊肉(あら)、潮汁(うしほじる)

菓子(くわし)】:
  ・肥前唐津(ひぜんからつ)の無花果(いちじく)"ビオレ・ソリエ"
  ・筑紫(つくし)の無花果(いちじく)"とよみつひめ"
  ・吉備(きび)葡萄(ぶだう)"シャイン・マスカット"
  ・信州(しなの)葡萄(ぶだう)"紫苑(しゑん)"
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss)微距(Makro)Planar T* 2/50 ZK @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
先(さき)の大地震(おほなゐ)に配慮(かんが)み、
此度(こだみ)は蝦夷地(えぞち)山海(うみやま)の幸(さち)が主體(おも)
小人(それがし)嗜(この)む陶藝家(やきものし)長谷川奈津(はせがはなつ):
その(さら)と豬口(ちよく)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはふ)。

蝦夷(えぞ)釧路(くしろ)の狹眞魚(さまうを)、
肥後(ひご)球磨川(くまがは)の子持香魚(こもちあゆ)、
蝦夷(えぞ)松茸(まつたけ)などの美味(よきあぢ)こそあれ、
當日(このひ)の白眉(はくび)は雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)。

時季(とき)を得(え)
三百廿匁(≒1.2kg)と理想(ねがふべき)大(おほ)きさ
活〆(いけじめ)されたるものなれど、
猶(なほ)身(み)は活(い)きて庖丁(はうちやう)に頼哩(あらが)ふ

脆皮(もろきかは)に蕩(とろ)けんばかりの(み)。
素材(そざい)も然(さ)ることながら、
偏(ひとへ)に小宮親方(こみやおやかた)の技倆(うで)に依存(よる)
實言(まこと)、今季一(こんきいち)の美味(うまさ)

蝦夷(えぞ)余市(よいち)の鮟鱇肝臟(あんきも)も、
時季(いまどき)には稀有(めづらし)きほどの濃密(あぢのこ)さ。
實(げ)に、
海(うみ)の鵞鳥肝(フォアグラ)」と號(い)ふも諾(うべ)なる哉(かな)!

今季初(はじめて)の栗(くり):
常州(ひたち)友部(ともべ)の栗(くり)を澀皮煮(しぶかはに)と爲(な)す。
善哉(よき)、善哉(よき)!
野州(しもつけ)白無花果(しろいちじく)は今一(いまひとつ)。

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(さかな)】:
  ・蝦夷仙鳳趾(えぞせんぽうし)の蠔(かき)
   +京師(みやこ)萬願寺蕃椒(まんぐわんじたうがらし)
  ・京師(みやこ)小薯蕷(こいも)
   +陸州(むつ)土圞兒(ほどいも)
  ・丹波(たんば)菽(えだまめ)
  ・蝦夷釧路(えぞくしろ)の狹眞魚(さまうを)
   +肥後球磨川(ひごくまがは)の年魚(あゆ)
  ・四百卅匁(≒1.6kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)
  ・蝦夷利尻(えぞりしり)の紫海膽(むらさきうに)
  ・三百廿匁(≒1.2kg)雲州宍道湖(いづもしんじこ)鰻(むなぎ)、白燒(志らやき)
   +肥後(ひご)赤茄子(あかなす)
   +蝦夷(えぞ)余市(よいち)の鮟鱇肝臟(あんかうきも)

(すし)】:
  ・江戸灣(えどわん)眞子鰈(まこがれひ)
  ・土州(とさ)縞鰺(しまあぢ)
  ・蝦夷戸井(えぞとゐ)の鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
  ・蝦夷戸井(えぞとゐ)の鮪(しび)
  ・蝦夷(えぞ)松茸(まつたけ)
  ・陸前高田(りくぜんたかだ)蝦夷石影貝(えぞいしかげがひ)
  ・黑鰒(くろあはび)

(わん)】:
  ・淡路(あはぢ)海鰻(はむ)+松茸(まつたけ)+吸口(すひくち)菊花(きくのはな)

菓子(くわし)】:
  ・野州(しもつけ)白無花果(しろいちじく)
  ・常州友部(ひたちともべ)栗澀皮煮(くりしぶかはに)
  ・吉備(きび)シャイン・マスカット
  ・信州(しなの)甲斐路(かひぢ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4~F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
掃愁帚(さけ)は"天狗舞山廃(てんぐまひやまはい)"。
嗜好(このみ)に適合(あ)ひ、一合半(いちがふはん、≒正一合)。
此度(こだみ)も尋常(つね)のごとく、山海珍味(うみやまのさち)盡(づ)くし。
就中(わきても)、六百四十匁(≒2.4kg)明石鯛(あかしだひ)は特異(とびきり)。

百八十七匁(≒700g)雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の(むなぎ):
紛(まぎ)れもなく今季一(こんきいち)!
肥後天草(ひごあまくさ)の小鰭新子(こはだのしんこ)は二枚漬(にまいづけ)。
やはり、二枚漬(にまいづけ)~三枚漬(さんまいづけ)が適切(よい)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・山科(やましな)無花果(いちじく)黑芝蔴(くろごま)和(あ)へ
  ・海膽(うに)+秋葵(おくら)+酸桔仔(シークワーサ)、
     眞子鰈潮汁魚凍(まこがれひ、うしほじるにこゞり)
  ・蝦夷地釧路(えぞちくしろ)狹眞魚(さまうを)
  ・酢物(すのもの)、
     奧州(むつ)海鞘(ほや)+能州(のと)岩水雲(いはもづく)
  ・魥(さしみ)
    ・六百四十匁(≒2.4kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)身(み)
    ・六百四十匁(≒2.4kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)鱗(うろこ)
    ・蝦夷地利尻(えぞちりしり)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
     +豆州御殿塲(いづごてんば)眞妻山葵(まづまわさび)
      ※田代惠一(たしろけいゝち)栽培(さいばい)
  ・土州清水(とさしみづ)の赤鯥(あかむつ)煮附(につけ)
  ・百九十匁(≒700g)雲州宍道湖(いづもしんじこ)鰻(むなぎ)、白燒(志らやき)

(すし)】:
  ・二十七貫(≒100kg)陸州大間(むつおほま)の鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
  ・眞子鰈(まこがれひ)
  ・二十七貫(≒100kg)陸州大間(むつおほま)の鮪(しび)精肉(あかみ)~肥肉
  ・六百四十匁(≒2.4kg)播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)
  ・相州松輪(さがみまつわ)の眞鯖(さば)
  ・肥後天草(ひごあまくさ)の小鰭新子(こはだのしんこ)

(わん)】:
  ・武州羽根田(むさしはねだ)の星鳗(はかりめ)+藝州(あき)松茸(まつたけ)

菓子(くわし)】:
  ・吉備(きび)"瀬戸ジャイアンツ"葡萄(ぶだう)
  ・筑紫博多(つくしはかた)”とよみつひめ”無花果(いちじく)
  ・琉球(りうきう)酸桔仔(シークワーサ)
  ・"長野パープル"葡萄(ぶだう)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)(8 ele.) 1.4/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
塑料袋(ビニルぶくろ)に悠然(ゆるり)と泅(およ)ぐ "手長鰕(てながえび)":
袋(ふくろ)より出(いづ)るや、
己(おの)が運命(さだめ)を覺悟(し)りて歟(か)?
のたうち、脚(て)を伸(の)ばし、師傅(おやかた)が指(ゆび)に頼哩(あらが)ふ。

南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)、南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)!
廚(つけば)には、"宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)"、二百七十匁(≒1kg)。
その三分之一(さんぶんのいち)を、さらに三人(みたり)で再分割(わかちあ)ふ。
i.e.,鰻九分之計(むなぎをこゝのつにわくるはかりごと)。

"鹿ヶ谷蒲柬瓜(しゝがたにかぼちや)"は、
甘長蕃椒(あまながたうがらし)、壺盧(ゆふがほ)とゝもに、烹(に)て餐(くら)ふ。
近會(ちかごろ)の甜(あまみ)の强(つよ)き唐茄(かぼちやうり)に比較(くら)べ、
淡麗(あはくきよらか)なる味(あぢはひ)

今季一(こんきいちばん)、"雲州宍道湖(いづもしんじこ)の(むなぎ)"。
脆皮(もろきかは)、皮下(かはのした)の明膠(ゼラチン)と(あぶら)、
さらには、蕩(とろ)けんばかりの身肉(み)の三層(みかさね)。
風味(あぢかをり)と齒觝觸(はごたへ・したざはり)も三段活用(みかさね)。

これには、辭(ことば)を失(うしな)ふほか術(てだて)なし。
佐渡嶋(さどがしま)(しび)も、
"中膩(ちゆうあぶ)"、"鮮肉漿醤(あかみしやうゆづけ)"、"膩肉(あぶ)"と、
强力(いとつよき)三段火箭(みかさね)。

因(ちな)みに、
"鮪膩肉(あぶ)"は備長炭(しろずみ)以て叮嚀(ねんごろ)に炙(あぶ)る。
氷見(ひみ)は寒鰤(かんぶり)、野球(やきう)は素振(すぶ)り、
鮪(しび)の膩(あぶ)には"炙(あぶ)り"が奢(まさ)る。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・先附(さきづけ)の類(たぐひ)一
    ・鹿ヶ谷蒲柬瓜(しゝがたにかぼちや)
    ・甘長蕃椒(あまながたうがらし)
    ・壺盧(ゆふがほ)
    ・芝蔴麩(ごまふ)
  ・先附(さきづけ)の類(たぐひ) 二
    ・淡路(あはぢ)海鰻卵巣(はむのこ)
    ・星鳗(あなご)
    ・眞子鰈(まこがれひ)
    ・藕(はちすのね)
    ・實山椒(みざんせう) 
  ・魥(さしみ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)、朝〆(あさじめ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)、縁側(えんがは)
    ・蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
  ・江州(あふみ)琵琶鱒(びはます)、炭火炙(すみびやき)
  ・房州千倉(あはちくら)の黑蚫(くろあはび)、酒蒸(さかむし)
  ・手長鰕(てながえび)
  ・雲州宍道湖(しんじこ)鰻(むなぎ)、百九十匁(≒700g) 、白燒(志らやき)

(すし)】:
  ・縞鰺(しまあぢ)
  ・淡路(あはぢしま)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)
  ・大坂灣(おほざかわん)鯔(ぼら)
  ・豆州式根島(いづしきねじま)劍先魷魚(けんさきいか、=あかいか)
  ・淡路嶋(あはぢしま)胡麻鯖(ごまさば)
  ・佐渡嶋(さどがしま)鮪(しび)、中膩肉(ちゆうあぶ)
  ・佐渡嶋(さどがしま)鮪(しび)、鮮肉(あかみ)豆油漬(しやうゆづけ)
  ・江戸灣(えどわん)下總行德(しもふさぎやうとく)の小鰭(こはだ)
  ・佐渡嶋(さどがしま)鮪(しび)、膩肉(あぶ)
  ・星鳗(はかりめ)

(わん)】:
  ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百七十匁(≒2.5kg)、朝〆(あさじめ)

菓子(くわし)】:
  ・シャインマスカット
  ・ピオーネ
  ・芒果(マンゴ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss)C Sonnar T* 1.5/50 ZM @F2
      旭光學 S-M-C 微距琢磨(Macro Takumar)4/50 @F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
腰痛(こしのいたみ)も多少(いくらか)緩和(やはら)ぎ、
藜杖(あかざのつゑ)にも頼(たよ)らで寺島町(てらじまゝち)に、、。
漬塲(つけば)には、
五十三匁(200g)を超(こ)す、勢州桑名(そのてはくはな)の本蛤(ほんはまぐり)。

魚市塲(うをいちば)に文蛤(はまぐり)多(おほ)しと云へど、
本蛤(ほんはまぐり)は稀有(まれ)。
縱令(たとひ)、本蛤(ほんはまぐり)ありと云へど、
これほどに巨大(SMGRP©ドクシマせんせ、≒おほきなる)ものは稀少(たふとし)。

九十九里(くじふくり)~鹿島灘(かしまなだ)に漁(すなどら)れ、
高名(なだか)き鯗店(すしや)にて用(つか)はるゝは、朝鮮蛤(てうせんはまぐり)。
努々(ゆめゆめ)、兩者(このふたつ)を混同(あやま)つこと勿(なか)れ
當日(このひ)の文蛤(くはなのほんはまぐり)は大(おほ)きさも頂點(いたゞき)

朝〆(あさじめ)、淡路(あはぢ)の星鰈(ほしがれひ)は六百四十匁(≒2.4kg)。
その身(み)の厚(あつ)さ、一寸(いつすん)にも及(およ)ぶ。
五枚(ごまい)に下(お)ろさば、厚(あつ)さを忘(わす)れ、
雪(ゆき)よりもなほ白(しろ)きその(み)に陶然(ことばをうしなふことしばし)。

雲州宍道湖(しんじこ)の(むなぎ):
百九十匁(≒700g)と、そこそこの大(おほ)きさなれど、
良質(よ)き膩(あぶら)に富(と)む。
秋毫(つゆ)無議論(まよふまでもな)く、「今季一(こんきいちばん)」!

必(かならず)しも得手(えて)とせぬ鮪肥肉(しびあぶらみ)も、
日向備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)られ、
臼齒(おくば)どころか、舌先(したさき)に崩潰(もろくもくづれさる)
風韻(かをり)また佳絶(すばらしきもの)。

<魚荒>(あら)は、
骨邊肉(あら)を潮汁(うしほじる)、(み)は(すし)にて餐(くら)ふ。
いづれも、至高(このうへな)き鮮(うまみ)。
夜(よる)の怪人(ひと)」の噂(うはさ)をして辭別(いとまをこふ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・先付(さきづけ)の類(たぐひ)
    ・蒸蚫(むしあはび)
    ・賀茂茄子(かもなす)
    ・雜魚(ざこ)+實山椒(みざんせう)
  ・勢州桑名(そのてはくはな)の炸文蛤(あげはまぐり)、五十三匁(200g)超
  ・差味(さしみ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百四十匁(≒2.4kg)、朝〆(あさじめ)
    ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百四十匁(≒2.4kg)、縁側(えんがは)
    ・紫海膽(むらさきうに)
  ・蝦夷地余市(よいち)鮟鱇肝臟(あんかうのきも)
  ・鰖(たかべ)一夜干(ひとよぼし)
  ・潮汁椀(うしほじるわん)
    ・椀種(わんだね):[魚荒](あら)の骨邊肉(あら)
    ・椀褄(わんづま):羽州(では)蓴菜(ぬなは)
    ・吸口(すひくち):青柚(あをゆ)
  ・雲州宍道湖(しんじこ)鰻(むなぎ)、百九十匁(≒700g)

(すし)】:
  ・[魚荒](あら)、二日目(ふつかめ)
  ・境港(さかいみなと)鮪(しび)、十六貫(≒60kg)
  ・鰹(かつを)藁燒(わらやき)
  ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、六百四十匁(≒2.4kg)、朝〆(あさじめ)
  ・境港(さかいみなと)鮪(しび)、十六貫(≒60kg)
  ・下總行德(しもふさぎやうとく)の小鰭(こはだ)
  ・境港(さかいみなと)鮪(しび)、十六貫(≒60kg)、炙(あぶ)り

菓子(くわし)】:
  ・夕張甜瓜(ゆふばりメロン)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 超琢磨(Super Takumar)1.4/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
此度(こだみ)は、氣鋭(いとするど)き食通(たべて)と一緒(とも)に、、。
眼前(めのまへ)に解體(ふわけ)されゆくは、城下鰈(しろしたがれひ)、
i.e.,、豐後(ぶんご)眞子王餘魚(まこがれひ)、四百五十匁(≒1.7kg)に、
肥後天草(ひごあまくさ)(むなぎ)、百八十七匁(≒700g)。

倩(つらつら)この城下王餘魚(しろしたがれひ)を吟味(うかゞ)ふに、
縁側(えんがは)の鮮(うまみ)は格別(ことのほか)。
肝臟(きも)には朝〆(あさじめ)固有(ならでは)の美味(よきあぢ)。
蝦夷地余市(えぞちよいち)鮟鱇肝(あんきも)をも凌駕(しのぐ)ほど。

次(つ)いで、久方(ひさかた)ぶりの"雞卵燒(たまごやき)"に舌鼓(したつゞみ)。
およそ雞卵燒(たまごやき)なるもの、
鮓店(みせ)に依(よ)り、鮓職人(ひと)に應(よ)り、多種多樣(さまざま)。
これぞ、僕(やつかれ)最喜歡(このうへなくこのむ)"煎雞蛋(たまごやき)"!!

"潮汁(うしほじる)"また然(しか)り。
眞子王餘魚(あまてがれひ、=まこがれひ)に、蓴菜(ぬなは)の椀(わん)。
愚按(やつがれおもふに)、
鮓店(すしや)の椀(わん)としては、尾根(をね)のそのまた頂點(いたゞき)

相州葉山(さがみのくにはやま)"障泥烏賊(あふりいか)":
漫(みだり)に黏(ねば)る食感(はごたへ・したざはり)が特徴(しるし)なれど、
實(げ)に、心持(こゝち)良(よ)き齒觝觸(はあたり)
平身低頭(ひたすらうやま)ふべきは、薄(うす)く削(そ)ぐ庖丁技(はうちやうわざ)。

"肥後天草(ひごあまくさ)の(むなぎ)"は今二(いまふた)つ。
やはり、鰻(むなぎ)餐(くら)ふなら龝(あき)が最善(よい)。
"春子(かすご)"・"小鰭(こはだ)"の醋〆(すじめ)は今樣(いまをときめくやりかた)。
瑞瑞(みづみづ)しく、鮮(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る

舎利(すめし)はさらに白醋(しろず)を多(おほ)めに、、。
如何(いか)ほどの混合比(まぜかた)を最適解(いとをかし)とする歟(か)?
今(いま)なほ、試行錯誤中(あれやこれやとこゝろみつゝあるところ)。
當家(うち)は白身(しろみ)が主體(おも)なれば、、」とのよし。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
  ・上總大原(かずさおほはら)蒸蚫(むしあはび)
  ・江州(あふみ)琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)に花山椒(はなざんせう)
  ・豐後(ぶんご)眞子王餘魚(まこがれひ、しろしたがれひ)、四百五十匁(≒1.7kg)
    ・身(み)
    ・縁側(えんがは)
    ・肝臟(きも)
  ・小川水産(をがは)、蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
  ・蕨(わらび)
  ・鰻(むなぎ)魚凍(にこゞり) ※濱名湖(はまなこ)?
  ・蝦夷地餘市(えぞちよいち)鮟鱇肝(あんきも)
  ・雞蛋(たまご)
  ・潮汁(うしほじる)の椀(わん)、
    ・椀種(わんだね):播州(はりま)眞子鰈(あまてがれひ)骨邊肉(あら)
    ・椀褄(わんづま):羽州(では)蓴菜(ぬなは)
    ・吸口(すひくち):青柚(あをゆ)
  ・肥後天草(ひごあまくさ)鰻(むなぎ)、百八十七匁(≒700g)

(すし)】:
  ・相州葉山(さがみはやま)障泥烏賊(あふりいか)
  ・薩州出水(さつまいづみ)春子(かすご)
  ・紀州那智勝浦(なちかつうら)鮪(しび)
  ・蝦夷地(えぞち)鰊(にしん)
  ・薩州出水(さつまいづみ)眞鰺(まあぢ)
  ・豐後(ぶんご)城下王餘魚(しろしたがれひ)、=眞子鰈(まこがれひ))
  ・能州(のと)鳥貝(とりがひ)
  ・紀州那智勝浦(なちかつうら)鮪(しび)
  ・小鰭(こはだ)
  ・紀州那智勝浦(なちかつうら)鮪(しび)

菓子(くわし)】:
  ・阿州(あは)"珊瑚樹(さんごじゆ)"蕃茄(とまと)
  ・羽州村山(ではむらやま)"佐藤錦(さたうにしき)"櫻桃(さくらんぼ)
  ・米利堅(めりけん)櫻桃(さくらんぼ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 S-M-C 微距琢磨(Macro Takumar)4/50 @F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
葛飾郡(かつしかのこほり)松伏(まつぶし)『三笠鮨』:
最上質(とびきり)の魚介(うみのさち)を用(つか)ひ、
確乎(たしか)なる技倆(うで)以(も)て鯗(すし)を提供(いだす)
しかし、掉尾(いやはて)の土瓶蒸(どびんむし)は「旨過(うます)ぎ」。

これ、必(かな)ずしも賞賛(ほめことば)に非(あら)ず
子曰(あのかたのたまは)く、「過猶不及 (すぎたるはなほおよばざるがごとし)」
車鰕(くるまえび)、文蛤(はまぐり)、櫻鰕(さくらえび)、香茹(しいたけ)。
これほどまでに濃厚(あぢこ)きものが重(かさ)なると首捻(くびゝぬ)るほかなし。

心(こゝろ)の片隅(かたすみ)に蟠(わだかまり)を抱(かゝ)へ、
當家(こちら)『うを德』に、、。
劈頭(いやさき)の"(わん)"から、
"石蓴醋物(あをさすのもの)"、"(ふき)"、 "花山椒鍋(はなざんせうなべ)"、、。

漫(みだり)に"鮮(うまみ)"を足(た)すことなく
必要最小限(ぎりぎり)の調味(あぢつけ)
それでも猶(なほ)、秋毫(つゆ)無所不足(たらざるところな)きは、
偏(ひとへ)に、小宮健一親方(こみやけんいちおやかた)が技倆(うで)

對價(しはらひ)は『三笠鮨』が幾分高(いくぶんたか)く、
居心地(ゐごゝち)と綜合的滿足度(みちたりかた)を競(あらそ)ふなら、
やはり、『うを德』に軍配(ぐんばい)。
この先(さき)、未來永劫(とこしへ)に續(つゞ)かんことを祈念(いの)る

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
 ・"眞鯛(まだひ)、卵巣(まこ)+精巣(しらこ)+花山椒(はなざんせう)"
 ・越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)の螢烏賊(ほたるいか)
 ・江州琵琶湖(あふみびはこ)の稚鮎(ちあゆ)天麩羅(てんぷら)
 ・石蓴(あをさ)醋物(すのもの)
 ・蝦夷地釧路(えぞちくしろ)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
 ・播州明石(はりまあかし)の眞鯛(まだひ)、一貫目弱(≒3.7kg)、魥(さしみ)
 ・紀州那智勝浦(きいなちかつうら)の鰹(かつを)、藁燒(わらやき)
 ・阿州吉野川(あはよしのがは)の鰻(むなぎ)、百七匁(≒400g)、白燒(しらやき)
 ・花山椒鍋(はなざんせうなべ)
    ・和州(やまと)の花山椒(はなざんせう)@十萬圓(きろじふまんゑん)
    ・城州(やましろ)物集女笋(もづめだけ)
    ・越前勝山(ゑちぜんかつやま)の赤鯥(あかむつ、=のどぐろ)

(すし)】:
 ・豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたがれひ、=まこがれひ)
 ・房州勝浦(あはかつうら)の鮪(しび)、四十三貫四百匁(≒163kg)
 ・陸州大間(むつおほま)の櫻鱒(さくらます) 、一貫百四十匁(≒4.2kg)
 ・春子(かすご)
 ・房州勝浦(あはかつうら)の鮪(しび)、四十三貫四百匁(≒163kg)
 ・三州(みかは)の鳥貝(とりがひ)
 ・明石(あかし)の眞鯛(まだひ)
 ・小鰭(こはだ)

菓子(くわし)】:
 ・羽州村山(ではむらやま)の櫻桃(さくらんぼ)、"佐藤錦(さたうにしき)"
 ・三州蒲郡(みかはがまごほり)の蜜柑(みかん)
 ・日向(ひむか)の芒果(まんご)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F2.8
時季(いまごろ)固有(ならでは)、
"四万十川(しまんとがは)の「ごり有馬煮(ありまに)"、
"城下鰈(しろしたがれひ)"、
i.e.,(すなはち、)豐後(ぶんご)日出城下(ひのでじやうした)眞子鰈(まこがれひ)。

"越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)螢烏賊(ほたるいか)"に"蕗未醤(ふきみそ)"、
"山州(やましろ)の(たけのこ)"は"飯蒸(いひむし)"と"燒物(やきもの)"。
しかし、この日(ひ)の白眉(とびぬけてすぐれたるもの)は、
豐後佐賀關(ぶんごさがのせき)の雞魚(いさき)。

丸々(まる)と肥滿(こえふと)り力士(りきし)のごとき太鼓腹(たいこばら)
膩(あぶら)に冨(と)み、鮮(うまみ)も顯著(あらは)
これほどの雞魚(いさき)なら、
"鹽燒(しほやき)"に好適(よし)、"煮附(につけ)"でもまた可以(よし)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

=======================================
(さかな)】:
 ・土州四万十川(とさしまんとがは)の"ごり" 有馬煮(ありまに)
 ・甘鯛(あまだひ)、鰒精巣(ふぐしらこ)、(たけのこ)の飯蒸(いひむし)
 ・蝦夷地箱館(えぞちはこだて)の馬糞海膽(ばうんうに)
 ・豐後(ぶんご)眞子鰈(まこがれひ、="城下鰈")、530匁(≒2kg)、魥(さしみ)
 ・越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)螢烏賊(ほたるいか)+蕗未醤(ふきみそ)
 ・豐後(ぶんご)眞子鰈(まこがれひ、="城下鰈")骨邊肉(あら)、潮汁(うしほじる)
 ・山州(やましろ)の(たけのこ)
 ・豐後佐賀關(ぶんごさがのせき)の雞魚(いさき)、差味(さしみ)

(すし)】:
 ・失念(...)
 ・壹岐(いき)の鮪肥肉(しびあぶらみ)
 ・小鰭(こはだ)
 ・甲烏賊(かふいか、=墨烏賊) 
 ・豐後(ぶんご)眞子鰈(まこがれひ、="城下鰈")
 ・三州三河灣(さんしうみかはわん)の鳥貝(とりがひ)
 ・蝦夷地羽幌(えぞちはぼろ)富山鰕(とやまえび、=ボタンエビ) 
 ・豐後佐賀關(ぶんごさがのせき)の雞魚(いさき)
 ・雞蛋燒(たまごやき)

菓子(くわし)】:
 ・羽州山形(ではやまがた)の佐藤錦(さたうにしき)
 ・遠州(とほとほみ)の獼猴桃(キウイフルーツ)
 ・檸檬(レモン)
 ・肥前唐津(ひぜんのくにからつ)の"麗紅橘(れいこうオレンジ)"
 ・ウズベキスタン柘榴(ざくろ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
謹(つゝし)みて御零(おこぼ)れ頂戴(ちやうだい)仕(つかまつ)る
小人(それがし)に虎狼之意(とらおほかめのこゝろ)有之(これあり)。
否(いな)!
"鬣狗(たてがみいぬ)"、"禿鷲(はげわし)"、"毛賊(こそどろ)"の類(たぐひ)。

この日(ひ)は稀有(まれにみ)るほどの山海八珍(うみやまのさち)盡(づ)くし。
(いけ)が、"諸子(もろこ)"、"花咲蟹(はなさきがに)"、
朝〆魚(あさじめうを)として、"明石鯛(あかしだひ)"、"眼拔(めぬけ)"、
さらに、"虎鰒精巢(とらふぐしらこ)"に、"長岡京笋(ながをかのたけのこ)"、、。

獅子(しゝ)の眼(め)掠(かす)めての竊喰(ぬすみぐひ)
實(げ)に、"密夫(まをとこ)"の心境(こゝち)ぞしたりける。
"活諸子(いけのもろこ)"は初(はじめて)、
茹上(うであげ)"花咲蟹(はなさきがに)"の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり) 。

やはり、この日(ひ)の白眉(とりわけすばらしきしな)こそ、"目拔(めぬけ)":
巷間(ちまた)では「超高級魚(いとたかきねのうを)」と云ふ。
目拔類(めぬけのたぐひ)夥(あまた)あれど、
就中(わきても)、最貴(すぐれてたふと)きが"赤魚鯛(あかうをだひ)"とも。

小人(それがし)、幼(いとけな)き砌(みぎり)、
赤貧如洗(あらふがごときまづしさ)なれば、
"眞鯛(たひ)"も"(ふぐ)"も口(くち)にせし前例(ためし)なく、
"狹眞魚(さまうを)"すら膓(はらわた)なき魚乾(ほしうを)。

偶(たま)の"差味(しびさしみ)"を除外(のぞ)くなら、
"梶木(かぢき)"、"眞鱈(まだら)"、
そして何(なに)より前述(くだん)の"赤魚鯛(あかうをだひ)"。
すなはち、六十年前(むそとせまへ)なら「下魚中(げうをのなか)の下魚(げうを)」。

それが、瓩(キロ)一萬三千圓(いちまんさんぜんゑん)と云ふから愕(おどろ)き。
一貫二百五十匁(≒4.7kg)の大(おほ)きさとのことなれば、
すなはち、沽(あたひ)、大畧(およそ)、六萬一千圓(ろくまんいつせんゑん)ぼど。
價格(ね)はともかく、その味(あぢはひ)は絶品・至高(このうへなきもの)

陳腐(ありきたり)の譬喩(たとへ)ながら、
"石狗公(きちじ)"をその儘(まゝ)巨大化(おほきく)したるがごとき形(なり)。
幼少時(いとけなきころ)の煮附(につけ)を想像(おもひゑがき)しに、
"長岡笋(ながをかたけのこ)"とゝもに最上(いとよ)き椀(わん)に、、。

堪(たま)りかね、
絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。
周圍(まはり)からも、一齊(ひとし)く、絶賛(はげしくほめたゝ)ふる聲(こゑ)
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)!

今朝(けさ)〆たばかりの明石眞鯛(あかしだひ)は、
未熟成(いまだうれず)と云へど、眞鯛(まだひ)固有(ならでは)の芳香(かをり)
臼齒(おくば)に噛締(かみし)むるや
鮮(うまみ)浮騰(ほとばし)りて、四角八方(をちこち)に旋(かけめぐ)る

心做(こゝろな)し歟(か)?
舎利(すめし)も、不尋常(つねなら)ず嗜好(このみ)に適合(あふ)
粒(つぶ)が立(た)ち、しかも、舌(した)に滑(なめ)らか
膨滿(はらふく)るゝ豫兆(きざし)もなく辭別(いとまごひ)。

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
 ・琵琶湖(びはこ)の冰魚(ひうを)
 ・淀蘿蔔(よどすゞしろ)
 ・蝦夷噴火灣(えぞふんくわゝん)馬糞海膽(えぞばふんうに)
   +朝〆(あさじめ)明石(あかし)眞鯛(まだひ)、七百五十匁(≒2.8kg)
 ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の小鮪(めじ)藁燒(わらやき)+菜花(なばな)
 ・琵琶湖(びはこ)の活諸子(いけもろこ)
 ・擇捉嶋(えとろふじま)、活花咲蟹(いけはなさきがに)
 ・【椀(わん)】、
   朝〆(あさじめ)房州勝浦(あはかつうら)目拔(めぬけ)、
   一貫二百五十匁(≒4.7kg)
   +長岡京(ながをか)の笋(たけのこ)
 ・蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぽうし)の眞蠔(かき)
 ・虎鰒(とらふぐ)精巣(しらこ)

(すし)】;
 ・日向油津(ひむかあぶらつ)の中鮪(ちゆうばう)、十六貫(≒60kg)、肥肉(あぶ)
 ・玉珧(たひらぎ)
 ・越中氷見(ゑつちゆうひみ)の小鮪(めじ)藁燒(わらやき)
 ・朝〆(あさじめ)明石(あかし)眞鯛(まだひ)、七百五十匁(≒2.8kg)
 ・朝〆(あさじめ)房州勝浦(あはかつうら)目拔(めぬけ)、一貫二百五十匁
 ・日向油津(ひむらあぶらつ)の中鮪(ちゆうばう)、中肥肉(ちゆうあぶ)
 ・朝〆(あさじめ)明石(あかし)眞鯛(まだひ)、七百五十匁(≒2.8kg)
 ・日向油津(ひむらあぶらつ)の中鮪(ちゆうばう)、紅肉(あかみ)
 ・星鳗(はかりめ)

菓子(くわし)】:
 ・さくらもゝ草莓(いちご)+甘柑(かんかん)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
毎年恆例(まいとしならひ)の新年會(あらたなるとしをことほぐうたげ)。
其處(そこ)には、病(やまひ)癒(い)えたる友(とも)の顏(かほ)も、、。
漬塲(つけば)に鎭坐(おは)しますは、
鱈塲蟹(たらばがに)、鯨鯢畝須(くぢらのうねす)に明石眞鯛(あかしだひ)。

劈頭(いやさき)に"胡桃入干柹(くるみいりほしがき)"と"唐墨(からすみ)"。
雙方(ともに)見覺(みおぼ)えあり!
次(つ)いで、湯氣(ゆげ)の立(た)つ加須底羅雞蛋(かすていらたまご)。
(くれなゐ)鮮烈(あざかや)なる車蝦(くるまえび)が顯著(めだつ)。

"鰤藁燒(ぶりのわらやき)"には"冬茹甘露煮(どんこかんろに)"。
(ぶり)は米藁(こめわら)にて炙(あぶ)り、大蒜(おほひる)を利(き)かす。
當家(こちら)固有(ならでは)の味(あぢはひ)
冬茹(どんこ)は半點(いさゝか)甜(あま)め歟(か)?

扨(さて)、"鯨鯢畝須(くぢらうねす)の(わん)":
底(そこ)に蝦薯蕷(えびいも)が沈(しづ)み、山椒木芽(きのめ)が浮(う)く。
風味佳絶(たぐひまれなるすばらしきあぢかをり)なれど、
鯨鯢肉(くぢらにく)、臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ひて止(や)むことなし

備長炭(しろすみ)に炙(あぶ)りたる"鱈塲蟹(たらばがに)"、
さらには、"紅椒ムウス(ぱぷりかむうす)"と、
豫想(おもひ)に寸毫(つゆ)と違(たがは)ぬ味(あぢ)・風韻(かをり)。
卍(まんじ)、善哉(よき)、善哉(よき)!

倩(つらつら)舎利(すめし)を窺(うかゞ)ふに、
以前(まへ)に比較(くら)べて顏色(いろ)淡(あは)し
横井(よこゐ)"與兵衞(よへゑ)"を減量(へら)し、
中埜(なかの)"白菊(しらぎく)"を増量(ふや)したとの説明(はなし)。

掉尾(いやはて)に、
今季初(このふゆはじめて)の"さくらもゝ草莓(いちご)":
阿州(あは)の誇(ほこ)る草莓(いちご)の皇帝(すめらみこと)
その名(な)に相違(たがは)で、(さくら)と(もゝ)の芳香(かをり)を有(も)つ。

宴(うたげ)は、掃愁帚(さけ)を除(のぞ)き如下(つぎのごとし)。

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(さかな)】:
 ・胡桃入干柹(くるみいりほしがき)+唐墨(からすみ)
 ・蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)+明石(あかし)眞鯛(まだひ)八百匁(≒3kg)
 ・藁燒鰤(わらやきぶり)+冬茹(どんこ)
 ・鱈塲蟹(たらばがに)
 ・紅椒(ぱぷりか)のムウス

(すし)】;
 ・鮪(しび)、白川(しろあまだひ)、眞鯖(さば)、鮪(しび)、皮剥(かはゝぎ)、
 ・小鰭(こはだ)、墨烏賊(かふいか)、鰒(あはび)、鮪(しび)

菓子(くわし)】:
 ・さくらもゝ草莓(いちご)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
新年(あらたしきとし)を壽(ことほ)ぐ三段重(みかさねのぬりもの)。
對價(あたひ)、三萬二千四百圓也(さんまんにせんよんひやくゑんなり)。
今年(ことし)はこれを一人(ひとり)で啖(くら)ふ。
大雜把(あほまか)なる内容(うちわけ)は、如斯(かくのごとし)。

當家(こちら)の御節料理(おせちれうり)は、
七年連續(なゝとせつゞけて)、七度目(なゝたびめ)で最後(いやはて)。
これで永遠(とは)の離別(わかれ)
扨(さて)、來年(つぎのとし)は、如何(いか)にせん?

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)※肖像
      精機光學 佳能(Canon)nFD2.8/300 L @F4 ※元旦日出
      富山玩具 Borg 71FL 8/560 (5.6/400 + ×1.4Extender)  @F8 ※元旦日出
晝(ひる)九(こゝの)つ。
引戸(ひきど)を開(ひら)くと、(むしろ)には小人(それがし)一人(ひとり)
三年前(みとせまへ)ならいざ知(し)らず、
近會(ちかごろ)では稀有(めづらし)きこと。

今季一(こんきいち)」、
と號(い)ふ"松茸(まつたけ)"は、陸州(むつ)岩手(いはて)の産(もの)。
その優雅(みやび)この上(うへ)なき風韻(かをり)に霎時(しばし)陶醉(ゑふ)
これが夷僚(ゑびす)に理解(わから)ぬとは疑問(くびかし)ぐるばかり

播州(はりま)明石(あかし)の"眞鯛(まだひ)"が七百七十匁(≒2.9kg)。
中骨(なかぼね)には明石鯛(あかしだひ)固有(ならでは)の(こぶ)。
朝締(あさじ)めゆゑ、(うまみ)は未熟(これから)ながら、
齒觝觸(はあたり)拔群(むれよりぬきんいでたり)。

雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の" (むなぎ)"百六十匁(≒600g)。
時季(とき)ならず、半點(いさゝか)脂(あぶら)稀薄(うすめ)
今(いま)や、「鰻(むなぎ)の皇(すめらみこと)」と賞賛(もてはや)さるゝも、
かくのごとき淡白(あぢあは)き(もの)も、、。

愈々(いよいよ)盛(さか)りに向成(なりな)んとするは、
蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぱうし)の"眞蠔(まがき)"。
やはり「眞蠔(まがき)の頂點(いたゞき)
" (ぶり)"も蝦夷地(えぞち)より越後(ゑちご)へと遷移(うつる)。

"娃娃菜(わゝさい)"と號(よびな)すは、
最小(いとちいさ)なる白菜(はくさい)。
房總(ばうさう)の花生(なんきんまめ)"おほまさり"も美味(よきあぢ)。
この日(ひ)も平生(つね)のごとく尋常(つね)のごとし

因(ちな)みに、當日(このひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

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(さかな)】:
 ・先附(さきづけ)
   ・娃娃菜(わゝさい)
   ・房總(ばうさう)花生(らつくわせい)"おほまさり" 
   ・蝦夷(えぞ)サロマ湖(こ)の眞蠔(まがき)
   ・蝦夷(えぞ)仙鳳趾(せんぱうし)の眞蠔(まがき)
 ・但州(たじま)香住(かすみ)の雌蟹(せこがに)
   +山城(やましろ)蝦薯蕷(えびいも)

 ・椀(わん)
   ・陸州(むつ)松茸(まつたけ)
   ・蝦夷(えぞ)雲子(くもこ)
   ・金時胡蘿蔔(きんときにんじん)
   ・蕪(かぶら)
 ・向附(むかふづけ)
   ・播州(はりま)明石(あかし)の眞鯛(まだひ)
   ・明石鯛(あかしだひ)の肝臟(きも)
   ・蝦夷(えぞ)濱中(はまなか)蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
 ・雲州(いづも)宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)

(すし)】:
 ・奧州(むつ)大間(おほま)の鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
 ・播州(はりま)明石(あかし)の眞鯛(まだひ)
 ・奧州(むつ)大間(おほま)の鮪(しび)
 ・肥後(ひご)天草(あまくさ)の小鰭(こはだ)
 ・越後(ゑちご)の鰤(ぶり)藁燒(わらやき)
 ・對馬(つしま)の星鳗(はかりめ)

菓子(くわし)】:
 ・小蜜(こみつ)
 ・蕃茄(あかなす)
 ・柹(かき)
 ・グレープフルーツ
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4

染垂阿爺(しみたれおやぢ)卍(まんじ)、
唐墨(からすみ)」の報(しらせ)に觸(ふ)れ、俄頃(にはか)に色(いろ)めきたつ。
慌(あは)てふためき、鈔(ぜに)を工面(くめん)、
鼻息(はないき)荒(あら)く玉の井(たまのゐ)へと驀地(まつしぐら)。

その容(さま)、
將棋(しやうぎ)の香車(やり)かと疑(うたが)はれ、
西班牙(イスパニア)の猛牛(たけきうし)、
英國(エゲレス)筆學所(てならひ)の吶喊小僧(とつかんこぞう)に髣髴(さもにたり)。

劈頭(いやさき)に、
加賀藕(かゞはちすのね)と鮟鱇肝臟(あんきも)を摘(つ)まみ一安堵(ひとおちゐ)。
次(つ)いで早(はや)くも"唐墨(からすみ)"の登場(おでまし)。
素材(そざい)そのものは『やす秀』が上(うへ)歟(か)?

芯(しん)嫩(やはらか)にして、未完成(いまだならず)。
當家(こちら)の烏魚子(からすみ)は、その變化(かはりやう)を愉(たの)しむもの
童女(わらんべ)→少女(おいなご)→(をんな)→(うば)、、。
この唐墨(からすみ)、さしづめ、「少女(おいなご)」に喩(たと)ふべき歟(か)?

この日(ひ)の白眉(はくび)は、
奧州(むつ)小川原湖(おがはらこ)(むなぎ)、四百匁(≒1.5kg)。
「今季(こんき)二番目(にばんめ)」
と、主人(あるじ)自慢(むねをは)る巨大鰻(いとおほきなるむなぎ)。

江戸生艷氣樺燒(えどうまれうはきのかばやき)、
陸州生鰻白燒(むつうまれむなぎのしらやき)。
今(いま)まさに時季(とき)を得(え)て炙(や)くのは輙(たやす)く
"はしり"なら四十分(よんじつぷん)のところ、纔(わづ)かに二十分(にじつぷん)

法國渡來(ふらんすわたり)の黒無花果(くろいちじく)、
"ヴィオレ・ソリエ(Viollette de sollies)":
これまた今季初(こんきはじめて)。
未熟(いまだうれず)、甜(あまみ)・芳香(かをり)ともに不足(いまひとつ)

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

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(さかな)】:
  ・雲州(いづも)鮟鱇肝臟(あんきも)+加賀藕(かゞはちすのね)
  ・唐墨(からすみ)
  ・鯳卵巣(すけこ)
  ・蝦夷地(えぞち)鮃(ひらめ)五百三十匁(≒2kg)+馬糞海膽(ばふんうに)
  ・阿波(あは)蝦薯蕷(えびいも)+奧州(むつ)松茸(まつたけ)
  ・陸州(むつ)小川原湖(おがはらこ)鰻(むなぎ)、四百匁(≒1.5kg)
  ・蝦夷地(えぞち)鮃(ひらめ)潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・琉球(りうきう)宮古島(みやこじま)鰆(さはら)
  ・五島列島(ごたうれつたふ)垢穢(くゑ)
  ・蝦夷地根室(ねむろ)眞鰯(まいはし)
  ・蝦夷地(えぞち)鮃(ひらめ)
  ・蝦夷地標津(しべつ)鮏(さけ)卵巣(はらこ)

菓子(くわし)】:
  ・無花果(いちじく)、"ヴィオレ・ソリエ"
  ・葡萄(ぶだう)、"シャイン・マスカット"
  ・刀根柹(とねがき)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
此度(こだみ)特選素材(ひとめをうばふもの)は、
紀州八幡濱(やはたはま)白尼鯛(しろあまだひ)九百六十匁(≒3.6kg)、
琵琶湖(びはこ)本諸魚(もろこ)、奧州(では)松茸(まつたけ)、
雲州宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)、百十匁(≒400g)。

白尼鯛(しろあまだひ):
魚市塲(うをいちば)では"白川(しらかは)"と喚做(よびな)すが通例(つね)。
(さしみ)に好適(よし)、(わん)にまた佳良(よし)。
そのあまりの美味(よきあぢ)に、自(おの)づと頬(ほゝ)も緩(ゆる)む

"賀茂茄子(かもなす)の揚滲(あげびた)し":
尋常(つね)のことながら、
味覺(した)は怡(よろこ)び、胃腑(い)は驅(か)け巡(めぐ)る。
吾輩(われ)夢心持(ゆめごゝち)で啖之(これをく)ふ。

鰻(むなぎ)は、
宍道湖(しんじこ)に八郎潟(はちらうがた)。
各々(おのおの)、白炙(しらやき)、蒲炙(かばやき)となす。
時季(とき)を得(え)て、鮮(うまみ)頂點(いたゞき)を極(きは)めんとす

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

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【殽(さかな)】:
  ・水菜(みづな)、菊花(かきのもと)、松茸(まつたけ)、花生(なんきんまめ)
  ・蝦夷根室(ねむろ)の秋刀魚(さんま)
    +紀州(きしう)中山栗(なかやまぐり)特選(よりすぐり)
  ・蝦夷地利尻島(りしり)の紫海膽(むらさきうに)
    +紀州八幡濱(やはたはま)の白川(しらかは、=しろあまだひ)魥(さしみ)
  ・賀茂茄子(かもなす)揚滲(あげびた)し
  ・めじ藁燒(わらやき)
  ・白川(しらかは、=しろあまだひ)鱗煎餠(うろこせん遍゛以)
  ・白川(しらかは)と松茸(まつたけ)、蝦芋(えびいも)の椀(わん)
  ・琵琶湖(びはこ)本諸魚(ほんもろこ)
    +雲州宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)白燒(しらやき)
  ・羽州八郎潟(はちらうがた)の鰻(むなぎ)蒲燒(かばやき)
    +蝦夷地標津(しべつ)の鮏腹子(さけはらこ)

【鮓(すし)】:
  ・星鳗(あなご)
  ・陸州大間(おほま)の鮪(しび)
  ・墨烏賊(すみいか、=かふいか)新子(しんこ)
  ・鰤(ぶり)藁燒(わらやき)
  ・奧州大間(おほま)の鮪(しび)

【菓子(くわし)】:
  ・富有柿(ふいうがき)、洋梨(やうなし)、ピオーネ
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4~F4

此度(こだみ)特選素材(ひとめをうばふもの)は、
淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)六百九十匁(≒2.6kg)、
紀州(きいのくに)活蝦蛄(いけしやこ)茹上(ゆであ)げ、
雲州(いづも)神西湖(じんざいこ)の(むなぎ)百三十匁(≒500g)。

劈頭(いやさき)の小皿(こざら):
松茸(まつたけ)、丹波黒(たんばぐろ)(えだまめ)、
花生(なんきんまめ)、水菜(みづな)を溏油(だし)に烹(に)たるもの。
うむ、これこれ、これッ!」、と膝(ひざ)を敲(う)つ。

「師傅(おやかた)、やはり、東都(あづま)に稀有(まれ)なる名匠(たくみ)!」
鹽(しほ)を抑制(おさ)へ
鰹(かつを)の馨(かをり)、昆布(こんぶ)の旨味(うまみ)を控(ひか)へ
なほ、不足(たらざるところ)皆無(なし)

松茸(まつたけ)完一本(まるいつぽん)に麪麭粉(ぱんのこな)塗(まぶ)し
炸之(これをあぶらにあ)ぐるがごときは、
徒(いたづら)に門牙(まへば)に挾(はさ)まり
臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふばかりの惡趣味(いまいまし)き烹調法(やりかた)。

蝦蛄(いけしやこ)の茹上(ゆであげ):
溜池(ためいけ)『壽々』など、
活(い)ける蝦蛄(しやくなげ)、若(わか)き小僧(みならひ)を走(はし)ら」せ、
茹(う)でゝ、これを鮓(すし)と爲(な)す肆(みせ)も在(あ)るには存在(あり)

當家(こちら)の小宮親方(こみやおやかた)、
能(よ)くこの技法(わざ)を自家藥籠中(みにつけ、わがものとなせ)り
この日(ひ)の茹上(ゆであげ)は、
瞬間(またゝくうち)に沸騰水(にえたぎれるゆ)に潛(くゞ)らすもの。

これを迅速(すばや)く冷水(ひやみづ)に取(と)り
冷(さ)ますことあらで、その儘(まゝ)齧附(かじりつ)く
その容(さま)、
(ひぐま)の遡上鮏(かはさかのぼるさけ)を貪(むさぼ)り啖(くら)ふがごとし。

眞美味也(いとうまし、マ・ジ・ヤ・バ・ク・ネ・ッ)!
芯(しん)は半生(はんなま)にして、その肉(み)なほ活(い)くるがごとし
"漬込(つけこみ)"は勿論(いふまでもなく)、
尋常(なみ)の"茹上(ゆであげ)"をも凌駕(はるかにしの)ぐ。

この塲(ば)での即興(おもひつき)」と、恥(は)ぢ、謙遜(へりくだ)る。
俗(よ)に言ふ「定番(おはこ)」を重視(おもん)じつゝ、
時折(ときをり)、暴(にはか)に閃(ひらめ)き、創作(あらたなるものあみだす)
師傅(おやかた)、徒者(たゞもの)に非(あら)ず!

"根室(ねむろ)の秋刀魚(さんま)"。
"指身(さしみ)"と、"肝臟附(きもつき)秋刀魚飯(さんまめし)"で堪能(いたゞく)。
"つくり身(み)"は、三枚(さんまい)に下(お)ろし、
骨(ほね)を去(さ)り、肉(み)に鹿子庖丁(かのばうちやう)入(い)れたるのみ。

生薑醤油(はじかみじやうゆ)を滲(つ)け、口中(くちのなか)に抛込(はうりこ)むや、
膩(あぶら)混(ま)じりの旨味(うまみ)炸裂(はじけちる)
その容(さま)、鳳仙花(ほうせんくわ)に接觸(ふ)るゝや否(いな)や、
その種子(たね)の四角八方(あちこち)に飛散(とびち)るに似(に)たり。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

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(さかな)】:
  ・奧州(むつ)松茸(まつたけ)、丹波黒菽(たんばくろえだまめ)、
   花生(なんきんまめ)、水菜(みづな)
  ・鰯(いはし)星鳗肝(はかりめきも)梅煮(むめに)
  ・鰒(あはび)、衣被(きぬかつぎ)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)六百九十匁(≒2.6kg)
  ・蝦夷地(えぞち)箱館(はこだて)蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
  ・蝦夷地(えぞち)仙鳳趾(せんぽうし)蠔(かき)、鳴門金時(なるときんとき)
  ・紀州(きいのくに)蝦蛄(しやこ)
  ・奧州(むつ)松茸(まつたけ)に星鳗(はかりめ) 椀
  ・蝦夷地(えぞち)根室(ねむろ)秋刀魚(さんま)指身(さしみ)
  ・雲州(いづも)神西湖(じんざいこ)鰻(むなぎ)百三十匁(≒500g)
  ・蝦夷地(えぞち)根室(ねむろ)秋刀魚(さんま)飯(めし)、肝附(きもつき)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)潮汁(うしほじる)

(すし)】:
  ・大間(おほま)鮪(しび)
  ・淡路(あはぢ)松皮鰈(まつかはがれひ)
  ・雉子羽太(きぢはた)
  ・淡路(あはぢ)眞鯖(さば)
  ・星鳗(はかりめ)

菓子(くわし)】:
  ・葡萄(ぶだう)四色(よいろ)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 賓得(Pentax)S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.4


"海鞘(ほや)"に惡臭(あしきにほひ)なきことに駭(おどろ)く。
小人(それがし)、生來(うまれてよりこのかた)海鞘(ほや)は得手(えて)とせず。
その縁由(ことのよし)如何(いかに)とならば、
海鞘(ほや)固有(ならでは)の強(つよ)き臭氣(くさみ)にあり。

惡臭(あしきかをり)なき"海鞘(ほや)"は、
纔(わづ)かに、津輕(つがる)『未來』なる家(ところ)で口(くち)にせしのみ。
この日(ひ)の"海鞘(ほや)"はそれに匹敵(ならぶ)。
師傅(おやかた)曰(いへら)く「鮮度(あたらしさ)の相違(たがひ)

"琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)魚凍(ゼリよせ)"の、
尋常(つね)とは異(こと)なる烹調法(たつき)を訝(いぶか)る。
小宮親方(こみやおやかた)應答(いらへ)て曰(いは)く、
因循守舊(マニエリスム)を打破(うちやぶ)らんがため

"蝦夷昆布森(えぞこんぶもり)の蠔(かき)"にも愕(おどろ)く。
これが眞夏(まなつ)の眞蠔(まがき)とは、、、
と、絶句(ことばをうしなふ)こと霎時(しばし)。
"蝦夷根室(えぞねむろ)の新秋刀魚(しんさんま)"もまた同樣(しかり)。

百十匁(≒400g)と小振(こぶ)りの"(むなぎ)"は大坂灣(おほざかわん)。
この大(おほ)きさにして、この脂肪(あぶら)。
その美味(あぢ)、口(くち)にせずとも、一目瞭然(ひとめであきらか)
惜(を)しむらくは、肉(み)が薄(うす)く、脆皮(もろきかは)ならざること。

"鮏卵(さけのはらこ)"は(なま)。
その塲(ば)で煮切(にきり)に潛(くゞ)らせ、即坐(すぐさま)鮓(すし)となす
これを臼齒(おくば)に噛(か)みしむるや、
旨味(うまみ)口中(くちのなか)へと浮騰(ほとばし)る。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

=======================================
(さかな)】:
  ・鱸(すゞき)に毛豆(えだまめ)、意太利蕃茄(イタリあかなす)味(あぢ)
  ・江州琵琶湖(あうみびはこ)稚鮎(ちあゆ)魚凍(ゼリよせ)
  ・蝦夷昆布森(えぞこんぶもり)の蠔(かき)
  ・陸奥(むつ)の海鞘(ほや)に生榨菜(なまさくさい)
  ・佐渡島(さどがしま)<魚荒>(あら)+
   蝦夷積丹(えぞしやこたん)紫海膽(むらさきうに)
  ・上総大原(かずさおほはら)黒蚫(くろあはび)+
   播州明石(はりまあかし)章魚(たこ)櫻煮(さくらに)
  ・蝦夷根室(えぞねむろ)の秋刀魚(さんま)
  ・陸州氣仙沼(むつけせんぬま)の鰹(かつを)藁燒(わらやき)
  ・<魚荒>(あら)の骨邊肉(あら)潮汁(うしほじる)
  ・大坂灣(おほざかわん)の鰻(むなぎ)、百十匁(≒400g)

(すし)】:
  ・大間(おほま)の鮪(しび)
  ・佐渡島(さどがしま)<魚荒>(あら)
  ・相州小柴(さがみこしば)の新子(しんこ)
  ・鮏(さけ)肚子(はらこ)

菓子(くわし)】:
  ・加州(かゞ)”ルビーロマン”葡萄(ぶだう)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
この日(ひ)の眼玉(めだま)は、
"淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)"、五百八十六匁(≒2.2kg)。
"(むなぎ)"は霞ヶ浦(かすみがうら)、二百九十三匁(≒1.1kg)。
前囘(まへ)の"兒島灣(こぢまわん)"が半點(いさゝか)上(うへ)歟(か)?

此度(こだみ)うち點頭(うなづ)きしは、"小蕪菁(こかぶら)"への火候(ひいれ)。
そもそも、蕪菁(かぶら)なるもの、
蘿蔔(すゞしろ)とは對照的(ことな)り、火(ひ)の通(とほ)り易(やす)きもの
懐石(くわいせき)・割烹(かつぱう)の蕪菁(かぶら)は過柔(やはらかすぎ)。

愚按(やつがれおもふに)、
和食(わしよく)なら糠漬(ぬかづ)け、
洋食(やうしよく)なら煸炒(ソテ)が吉(よし)。
烹之(これをに)るは蕪菁(かぶら)の個性(もちあぢ)を毀損(そこな)ふばかり。

これに膝(ひざ)を叩(たゝ)き、その情由(わけ)を薀(たづ)ぬれば、
「かゝる火候(ひいれ)を着想(ひらめ)きし契機(きつかけ)、
修業先(わざをならひおぼえしさき)や他家(よそ)に非(あら)ず。」
「寧(むし)ろ、その濫觴(みなもと)、法國菜(ふれんすれうり)にあり。」

實(げ)にも!
當家(こちら)で一際(ひときは)名高(なだか)き"鰻白燒(むなぎ志らやき)":
脆皮(かはサクサクにもろく)、
その身(み)を蕩(とろ)けんばかりに炙(や)くは唯一無二(よそになきもの)

これもまた、法國菜(ふれんすれうり)の秘儀(ひめわざ):
"poêlé(ポアレ)"こそ手本(てほん)・嚆矢(さきがけ)。
能(よ)くこれに倣(なら)ひ、やがて自家藥籠中(みづからのものと)したるは、
嘗(かつ)て、小人(それがし)に物語(ものがたり)せし記憶(おぼえ)あり。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

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(さかな)】:
 ・吉次(きちじ)煮附(につけ)
 ・炊合(たきあ)はせの類(たぐひ)
   蛸(たこ)、壺盧(ゆふがほ)、小蕪菁(こかぶら)、小薯蕷(こいも)、
   萬願寺蕃椒(まんぐわんじたうがらし)
 ・藝州太田川(あきのくにおほたがは)の香魚(あゆ)、有馬煮(ありまに) 、 
   加州(かゞ)金時草(きんじさう)
 ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、五百八十六匁(≒2.2kg)
 ・蝦夷奧尻(えぞおくしり)の紫海膽(むらさきうに) 
 ・蝦夷噴火灣(えぞふんくワわん)の"めじ"
 ・淡路(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、潮汁(うしほじる)
 ・霞ヶ浦(かすみがうら)の鰻(むなぎ)、二百九十三匁(≒1.1kg)
 
(すし)】:
 ・新烏賊(しんいか)
 ・鰯(いはし)
 ・星鰈(ほしがれひ)
 ・丹後舞鶴(たんごまひづる)の鮪(しび)
 ・淡路(あはぢ)胡麻鯖(ごまさば)
 ・雞卵燒(かひごやき)

水果(みづぐわし)】:
 ・蕃茄(あかなす)
 ・白桃(もゝ)
 ・櫻桃(さくらんばう)
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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4
"紅椒(パプリカ)ムウス":
當家(こちら)の招牌(かんばん)とも云ふべき佳餚(よきさかな)
この日(ひ)の溏油(だし、フュメ・ド・ポアソン)は、
<魚荒>(あら)の骨邊肉(あら)より抽出(ひきいだ)せしもの。

これを制作(つく)るには、
西洋時辰儀(せいやうどけい)にして八時間(はちじかん)要(かゝ)ると云ふ。
"魚凍(にこゞり)"と"紅椒(パプリカ)ムウス"が二層(ふたへにをりか)さなり、
實言(まこと)、口(くち)に美味(あまし)!

しかし、この日(ひ)の白眉(きはめつき)は、
"備州(きびのくに)兒島灣(こじまわん)の(むなぎ)"。
百六十匁(≒600g)と小振(こぶ)りであるにもかゝはらず、
膩(あぶら)に富(と)み、旨味(うまみ)四角八方(よも)に炸裂(はじけちる)

やはり、當家(こちら)、
"蒲燒(かばやき)"ではなく、"白燒(志らやき)"が吉(よし)。
首級(みしるし)もまた頗(すこぶ)る味覺(した)に旨(あま)く
貪之(これをむさぼ)りて飽(あ)くことなし。

莫迦貝(あをやぎ、=ばかゞひ):
蝦夷地(えぞち)野附(のつけ)が近會(ちかごろ)の風習(ならひ)なれど、
この日(ひ)は、稀有(いとめづらし)き、桑名(くはな)の莫迦貝(ばかゞひ)。
小柱(こばしら)もまた、その手(て)は桑名(くはな)の大莫迦貝(おほばかゞひ)。

因(ちな)みに、この日(ひ)の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(さかな)】:
 雲州(いづも)高津川(たかつがは)年魚(あゆ)
 紅椒(パプリカ)ムウス+<魚荒>(あら)骨邊肉(あら)の魚凍(にこゞり)
 上総(かづさ)大原(おほはら)黑鰒(くろあはび)に山科蕃椒(やましなたうがらし)
 豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたかれひ)四百八十匁(≒1.8kg)
 利尻(りしり)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)
 羽州(では)白神(しらかみ)の蓴菜(ぬなは)
 蝦夷(えぞ)厚岸(あつけし)の眞牡蠣(まがき)に蕃茄醤(あかなすびしほ)
 備州(きび)兒島灣(こじまわん)の鰻(むなぎ) 百六十匁(≒600g)
 豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたかれひ)潮汁(うしほじる)

(すし)】:
 佐渡嶋(さとがしま)の鮪(しび) 廿一貫(≒80kg)
 鰯(いはし)
 肥後(ひご)天草(あまくさ)小鰭(こはだ)
 豐後(ぶんご)城下鰈(しろしたかれひ)
 佐渡嶋(さとがしま)の鮪(しび)
 その手(て)は桑名(くはな)の大莫迦貝(おほばかゞひ)に小柱(こばしら)
 相州(さがみ)松輪(まつわ)の胡麻鯖(ごまさば)
 佐渡嶋(さとがしま)の鮪(しび) 廿一貫(≒80kg)
 鐵火卷(てつくわまき)

水果(みづぐわし)】:
 蝦夷(えぞ)夕張甜瓜(ゆふばりメロン)
 琉球(りうきう)菠蘿(パインアプル)"タヾヲゴールド"
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)MC Pancolar 1.8/50 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
尋常(つね)のことながら、
劈頭(いやさき)から掉尾(いやはて)に至(いた)る惣(すべ)ての品(しな)、
一(ひと)つとして不味(あぢあ)しきもの皆無(なし)
實言(まこと)、「飯足酒飽(ごちさうさまにござる)!」

上總國(かずさのくに)大原(おほはら)。
當地(このち)で(あはび)と云ふと、
鮓店(すしや)が眼精(まなこ)の色(いろ)を變(か)ふる"眼高鰒(まだかあはび)"。
この日(ひ)は大(おほ)きな"黑鰒(くろあはび)"。

一時半(いつときはん、≒3h)ほど酒蒸(さかむ)しせしもの」と云ふ。
"眼高鮑(まだかあはび)"ともまた異(こと)なる風韻(かをり)。
嫩(やはらか)ながらも、適度(ほどよ)き齒應(はごた)へを殘(のこ)す
"たまげ茄子(なすび)"が絶味(このうへなきうまさ)には絶句(ことばをうしなふ)。

扨(さて)、この日(ひ)の白眉(はくび)"星鰈(ほしがれひ)"。
淡州(あはぢ)、八百廿七匁(≒3.1kg)と云ふ大物(おほもの)。
鰈(かれひ)は、大(おほきなるもの)能(よ)く小(ちいさなるもの)を制(せい)す
身(み)佳味(よし)、縁側(えんがは)さらに絶味(よし)。

播州(はりまのくに)三田(さんだ)にも負(ま)けぬ羽州(では)の蓴菜(ぬなは)。
その顏色(いろ)は翡翠(ひすい)かと疑(うたが)はれ、
その舌觸(したざは)りの滑(なめ)らかさたるや、
極樂淨土(ごくらくじやうど)の果凍(にこゞり)もかくやあらん」と思(おも)ふほど。

季(とき)至(いた)らず、色(いろ)なほ淡(あは)き"西瓜(すいか)"。
因州(いなば)・伯州(はうき)の山海(うみやま)の僥倖(さち)を用(つか)ひ、
これを割烹(さきてに)るを活業(なりはひ)とする方(かた)よりの音物(おくりもの)。
訝(いぶか)りつゝ口(くち)にするや、驚異的(おどろくばかり)の甜(あまさ)

因(ちな)みに、この日の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(さかな)】:
 芋莖(ずいき)+伏見(ふしみ)黒毛荳(くろえだまめ)+荏胡麻(えごま)
 上總(かずさ)大原(おほはら)黑鰒(くろあはび)+"たまげ茄子(なすび)"
 芝蔴淮南子(ごまどふふ)+羽州(では)蓴菜(ぬなは)
 淡州(あはぢ)星鰈(ほしがれひ)、八百廿七匁(≒3.1kg)
 蝦夷(えぞ)餘市(よいち)の鮟鱇肝(あんきも)
 相州(さがみ)佐島(さじま)の章魚(たこ)
 土州(とさ)四万十川(しまんとがは)の手長蝦(てながえび)
 九十九里(くじふくり)朝鮮蛤(てうせんはまぐり)の潮汁(うしほじる)
 備前(びぜん)兒島湖(こじまこ)の鰻(むなぎ)、百廿八匁(≒480g)

(すし)】:
 淡州(あはぢ)の星鰈(ほしがれひ)、八百廿七匁(≒3.1kg)
 紀州(きい)那智勝浦(なちかつうら)の鮪(しび)、廿一貫三百匁(≒80kg)
 陸前(りくぜん)閖上(ゆりあげ)の赤貝(あかゞひ)
 星鰈(ほしがれひ)潮汁(うしほじる)
 荳州(いづ)式根島(しきねじま)の縞鰺(しまあぢ)
 紀州(きい)那智勝浦(なちかつうら)の鮪(しび)、廿一貫三百匁(≒80kg)
 淡路(あはぢ)の眞鰺(まあぢ)
 帆立貝(ほたてがひ)
 有明灣(ありあけわん)の小鰭(こはだ)
 紀州(きい)那智勝浦(なちかつうら)の鮪(しび)、廿一貫三百匁(≒80kg)
 奧州(むつ)馬糞海膽(ばふんうに)

水果(みづぐわし)】:
 紅毛(こうまう)阿蘭陀(おらんだ)の草莓(いちご)
 日向(ひむか)の芒果(まんご)
 因州(いなば)or伯州(はうき)の西瓜(すいか)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2.8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
獅子(しゝ)の食殘(たべのこ)しを鬣狗(たてがみいぬ)が咋(くら)ひ、
鬣狗(たてがみいぬ)の剩餘(あまり)は禿鷲(はげわし)が銜(ついば)む。
これ、獸(けだもの)が世(よ)の風習(ならひ)。
この晝飧(ひる)の小人(それがし)は正(まさ)しく"禿鷲(はげわし)"。

"<魚荒> (あら)"、"葡萄蝦(ぶだうえび)"、"宍道湖(しんじこ)の(むなぎ)"、
と、前日(まへのひ)の殘留物(のこりもの)には、
美味(うまきもの)・珍味(めづらしきも能)の數々(かずかず)
殘留物(のこりもの)には福(ふく)があり、肩(かた)の凝(こ)りには"●●メルツ"。

最初(いやさき)に"毛蟹(けがに)白瓜卷(しろうりまき)"。
黄身酢(きみず)の圓(まろ)やかさに駭(おどろ)く。
千鳥酢(ちどりす)は出汁(だし)にて割(わ)るりたるものと云ふ。
尋常(つね)のことながら、優(やさ)しき味(あぢはひ)。

當家(こちら)の玄關先(げんくわんさき)に山椒(さんせう)の木(き)あり。
この日(ひ)、木の芽(きのめ)はこの木(き)より摘(つ)み、
潮汁(うしほじる)の吸口(すひくち)としてあしらふ。
若(わか)く嫋(たを)やかなる風韻(かをり)。

築地市場(つきぢ)には稀有(まれ)なる"葡萄蝦 (ぶだうえび)":
標準和名(たゞしくは)、"緋衣蝦 (ひごろもえび)"。
本來(もともと)の"葡萄蝦(ぶだうえび)"は、
駿河灣(するがわん)にて極稀(きはめてまれ)に漁(すなど)らるゝものと云ふ。

"牡丹蝦(ぼたんえび)"同樣(と、おなじく)、
"踊(をど)り"では甜(あまさ)を難感(わかりがた)く
死(し)ゝて權(しばらく)置(お)き、膠粘(ねば)るほどが吉(よい)」。
慥(たしか)に、味(あぢ)は"牡丹蝦(ぼたんえび)"に似(に)る。

"雲州宍道湖(いづものくにしんじこ)の(むなぎ)":
百九十匁(ひやくきふじふもんめ、≒600g)斗(ばかり)なれど、
脂肪(あぶら)があり、旨味(うまみ)に富(と)む。
疑念(うたがひ)もなく、今季一(こんきいち)

(に)る」、「(や)く」が多(おほ)き"赤鯥(あかむつ)":
鮓種(すしだね)としてもなかなかのもの。
豫想(おもひ)に秋毫(つゆ)と相違(たがは)ぬは、
"賀茂茄子(かもなす)"、"琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)"の美味(うまさ)。

最後(いやはて)に、
四種(よくさ)にも及(およ)ぶ"水果(みづぐわし)";
佐藤錦(さたうにしき)、日向(ひむか)芒果(まんご)、臺灣茘枝(たいわんれいし)、
冰酪(あいすくりん)、これなり。

因(ちな)みに、この日の菜譜(こんだて)は如下(つぎのとほり):
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(さかな)】:
 毛蟹(けがに)白瓜卷(しろうりまき)
 厚岸(あつけし)眞牡蠣(まがき)
 賀茂茄子(かもなす)
 燻(いぶし)鮟鱇肝臟(あんきも)
 宍道湖(しんじこ)鰻(むなぎ)
 琵琶湖(びはこ)稚鮎(ちあゆ)有馬煮(ありまに)
 <魚荒>(あら)
 芋莖(いもがら)に榮螺(さゞえ)
 <魚荒>(あら)潮汁(うしほじる)
 琵琶湖(びはこ)鰻(むなぎ)

(すし)】:
 鮪(しび)
 虎魚(おこぜ)
 鮪(しび)肥肉(あぶらみ)
 竹岡沖(たけおかおき)赤鯥(あかむつ)
 舞鶴(まひづる)殼附(からつき)鳥貝(とりがひ)
 "緋衣蝦(ひごろもえび)"、俗稱(よにいふ)"葡萄蝦(ぶだうえび)"
 眞鯖(さば)藁燒(わらやき)
 障泥魷魚(あふりいか)
 鮪(しび)醤油漬(しやうゆづけ)
 蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)

水果(みづぐわし)】:
 佐藤錦(さたうにしき)、日向(ひむか)芒果(まんご)、臺灣茘枝(たいわんれいし)、
 冰酪(あいすくりん)

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Macro Elmarit R 2.8/60 @F2.8
      萊茨(Leitz)徠卡(Leica)Super Angulon R 4/21 @F8
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
夏(なつ)も近(ちか)づき、
誘(さそ)はれて、"山菜(さんさい)盡(づ)くめ"の旅(たび)に出(い)づ。
野獸肉(のゝけだものがしゝ)も加(くは)へ、
山幸(やまさち)を存分(こゝろおきな)く堪能(あぢはひつくしぬ)。

楤芽(たらのめ)、漉油 (こしあぶら)、(こゞみ)、(わらび)、老茸 (くろかは)、
蕗薹(ふきのたう)、(ふき)、行者大蒜 (ぎやうじやにんにく)、野蒜 (のびる)、
山獨活(やまうど)、山五加(やまうこぎ)、二輪草(にりんさう)、藤花(ふじのはな)、
花筏 (はないかだ)、花山椒(はなざんせう)、蒲公英(たんぽゝ)、などなど。

東都(えど)に囘(かへ)りて二日後(ふつかのゝち)の宴會(うたげ)。
この日(ひ)もまた山菜(さんさい)塗(まみ)れ。
花山椒(はなざんせう)に加(くは)へ、
漉油 (こしあぶら)、堅香子(かたかご)、芋莖(ずいき)、大葉擬寶珠(おほばぎぼし)。

季(とき)を得(え)たる魚介(うを・かひ)として、
銀寶(ぎんぱう)、城下鰈(しろしたがれひ)、初鰹(はつがつを)、稚鮎(ちあゆ)、
鳥貝(とりがひ)、その手(て)は鹿島(かしま)の燒蛤(やきはまぐり)。
因(ちな)みにこの蛤(はまぐり)は斧文蛤(てうせんはまぐり)。

銀寶(ぎんぱう)への火候(ひいれ)は完璧(ひとつとしてあやまちなし)
加熱(ねつがくは)ゝり、膠原纖維(こらあげんせんゐ)が明膠(ぜらちん)と化(な)り、
臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふことなく、咽喉(のみど)に踊(をど)る
星鳗(あなご)に勝(まさ)るとも劣(おと)らぬ美味(よきあぢ)。

鳥貝(とりがひ)と城下鰈(しろしたがれひ)の肝臟(きも)と云ふ、
駭(おどろ)くべき搭配(くみあはせ)。
實(げ)に、「爲虎傅翼(とらにつばさをそふるがごとし)」。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

詳細(くはし)くはこちらを御覽(ごらん)あれ!
https://tabelog.com/rvwr/giblets/rvwdtl/B27568416/#67773091

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
「今(いま)を盛(さか)り」と、
彼此(をちこち)に咲(さ)き誇(ほこ)る櫻花(さくら)。
折(をり)しも、張替(はりかへ)たばかりの疉(たゝみ)に心躍(こゝろをど)らせ、
隅(すみ)の席(むしろ)に一安堵(ひとおちゐ)。

"塚原白子筍(つかはらしらこだけ)"、
"琵琶湖(びはこ)、子持(こも)ち本諸子 (ほんもろこ)、
四万十川(しまんとがは)の近江葦登 (ごり、=あふみよしのぼり)"、
"滑川螢烏賊(なめりかはほたるいか)"、"駿河灣櫻蝦(するがわんさくらえび)"など。

體長(みのたけ)、三寸五分(さんずんごぶ)を超(こ)え、
四寸(よんすん)に垂(なんな)んとする"本諸子(ほんもろこ)":
備長炭(しろずみ)に炙(あぶ)り、その儘(まゝ)貪(むさぼ)り餐(くら)ふ。
實言(まこと)、美味也(よきあぢなり)!

"塚原白子筍(つかはらしらこだけ)"は勿論(いふもさらなり) 。
"若筍煮椀(わかたけにわん)"美味(よし)、
"筍豆腐(たけのこどうふ)"を木芽未醤(きのめみそ)にて啖(くら)ふもまた吉(よし)。
「筍(たけのこ)では、"合馬(あふま)"と雙璧(ふたつにならぶ)」との定評(はなし)。

巧妙(たくみ)に油炸(あ)げられたる"螢烏賊(ほたるいか)"に"櫻蝦(さくらえび)":
"螢烏賊(ほたるいか)"の天麩羅(てんぷら)は初(はじめて)。
火候(ひいれ)絶妙(ほどよ)く
膓(わた) もまた複雜玄妙(ふかくいつくしみあるあぢはひ)

勿論(いはずもがな)の"櫻蝦(さくらえび)":
"櫻蝦(さくらえび)"天麩羅(あ)ぐる舖(みせ)夥(あまた)あれど、
寸毫(つゆ)雞卵(かひご)に頼(たよ)らで
最上質(いとよ)き麪粉(うどんこ)を薄衣(うすごろも)に用(つか)ふ

尋常(つね)のごとく、
頗(すこぶ)る美味(うま)き"薩州出水(さつしういづみ)の眞鰺(まあぢ)":
瓩(きろ)七千圓(なゝせんゑん)と云ふ。
その價格(ね)、野生鰻(てんねんむなぎ)に肉薄(せま)る威勢(いきほひ)。

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss)C Sonnar T* 1.5/50 ZM @F2.5
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影))
平身低頭(をがみたふ)し、半(なか)ば無理強(むりじ)ひすることにより、
漸(やうや)う實現(とゝの)ひし、「甲魚(すつぽん)盡(づく)し」の宴會(うたげ)。
天降川(あもりがは)の天然物(てんねんもの)は唐揚(からあげ)、
服部中村養鼈場(はつとり)のものは(わん)と肝臟刺身(きもさし)に、、。

その他(ほか)、
琵琶鰉 (びはひがい)、鳴門鯛(なるとだひ)、明石章魚(あかしだこ)、
箱館(はこだて)の蝦夷馬糞海膽(えぞばふんうに)、銚子(てうし)の梶木(かぢき)、
陸中(りくちゆう)(さはら)、山城(やましろ)菜花(なばな)などなど。

小宮親方(こみやおやかた)歎息(ためいきつ)きて云ふやう:
隈(くま)なく魚河岸(かし)一帶(あたり)を探索(さがしもと)むれど
琵琶湖(びはこ)の"諸子 (もろこ)"、"稚鮎(ちあゆ)"、
絶(た)えてその姿(すがた)を見(み)ず!

「已(や)むことを得(え)ずして、この" (ひがい)"なる魚(うを)に、、」
との辯明(はなし)。
勿驚(おどろくなかれ)、
吾儕(わなみ)のみならず、親方(おやかた)も初(はじめて)となむ。

今(いま)は昔(むかし)、
明治天皇(めいじのすめらみこと)、これを大(おほ)いに賞賛(ほめたゝ)へたまひ、
後世(のち)、
"ひがい "に""なる字(じ)を當(あ)てるやうになりき、との故事(はなし)あり。

これを炭火(すみび)に炙(あぶ)りて"鹽燒(しほや)き"となす。
香魚(あゆ)固有(ならでは)の芳香(かぐはしきかをり)こそなけれ、
その身(み)の肌理細(きめこまか)さ、嫋(たを)やかさたるや、
若年魚(わかあゆ)に肉薄(せま)るほど。

但(たゞ)し、骨(ほね)の硬(かた)さは"杜父魚 (かじか)"竝(なみ)。
(あゆ)も、諸子 (もろこ)も、近江葦登 (あふみよしのぼり、=ゴリ)も、
悉(ことごと)く琵琶湖(びはこ)の財(たから)
琵琶湖(びはこ)、必守(かならずまもるべし)!

鳴門(なると)の"眞鯛(まだひ)":
その重量(めかた)、五百卅匁(ごひやくさんじふもんめ、≒2kg)ばかり。
捌(さば)くや、鳴門骨 (なるとこぶ)も顯著(あらは)。
皮(かは)と皮下(かはした)の旨味(うまみ)に驚愕(おどろく)。

扨(さて)、"水魚(すつぽん)":
"油炸(からあげ)"好吃(よし)、"肝臟刺身(きもさし)"美味(よし)、
"(わん)"また佳味(よし)。
その味(あぢはひ)、先頃(さきごろ)訪問(たづ)ねし『』より上(うへ)か?

(わん)は、平生(つね)のごとく、
調味料(あぢつけ)は、纔(わづ)かに、淡口醤油(うすくち)と(さけ)のみ。
昆布(こんぶ)に頼(たよ)らで、生薑(はじかみ)の佐(たす)けを受(う)けず。
裙邊(えんぺら)に、陶然(われをわす)ること霎時(しばし)。

久方(ひさかた)ぶりの"雞卵燒(たまごやき)":
燒(や)き方(かた)は、毎囘(そのつど)隱々(かすか)に搖(ゆ)らぎ
その搖(ゆ)れを心持(こゝち)よきものとして堪能(あぢはふ)
この日(ひ)は、瑞々(みづみづ)しく、柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
      旭光學 smc 賓得(Pentax) A☆ 1.4/85 @F2
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影))
この日(ひ)は、
舊友(ふるきとも)との新年會(あらたしきとしをことほぐうたげ)。
菜(れうり)の内容(うちわけ)は冩眞(ゑ)のごとし。
掃愁帚(さけ)を含(ふく)め、一萬四千圓也(いちまんよんせんゑんなり)。

今春(ことし)より、柳刄(やなぎば)は、
堺(さかい)の鍛冶名匠(かじのたくみ)の手(て)になる、
本燒(ほんやき)鏡面仕上(きやうめんしあ)げとなる。
掛軸(かけじく)を髣髴(おもは)す桐筥(きりばこ)入(い)り。

明石(あかし)の"眞鯛(まだひ)":
六百七十匁(ろうぴやくなゝじふもんめ、=2.5kg)。
仲卸(なかおろし)より、態々(わざわざ)"星鰈(ほしがれひ)"を避(さ)け、
選(え)りすぐりたるほどの逸品(よきしな)。

刺身(さしみ)、潮汁(うしほじる)、(すし)、何(いづ)れも、
筆舌(ふでやことば)で(つ)くせぬ美味(うま)さ。
眞鯛(まだひ)は五百匁(ごひやくもんめ、=1.9kg)ばかりが最善(よい)
とは云ふものゝ、この日(ひ)の"眞鯛(まだひ)"は別格(とびきり)。

雲州(いづも)の"活(い)け松葉蟹(まつばがに)":
三百五十匁(さんびやくごじふもんめ、=1.3kg)の旨(うま)さは勿論(いふもさらなり)。
備長炭(すみ)に炙(あぶ)りて甜(あま)さを堪能(あぢは)ひ
茹(ゆ)でゝ蟹内臟(かにみそ)と和(あ)へ絶味(すばらしきあぢ)に陶然(ゑふ)

"(さはら)"の藁燒(わらやき):
尋常(つね)に倣(なら)ひて、大蒜醤油(おほひるじやうゆ)を塗(まぶ)す。
めじ(ぶり)、(かつを)に優(まさ)るとも劣(おと)らぬ味(あぢはひ)。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2~F4
      蔡司(Carl Zeiss)Planar T* 1.4/85 ZK @F2 (2011年6月撮影)
【2016-12-04追記】:
利尻羅臼眞昆布利尻へと囘歸(もどる)。
この日の舎利は米醋(よねず)。
活車蝦(いきくるまえび)の雞卵焼(たまごやき)、美味(よきあぢ)なり。

【2016-10-01追記】:
昆布(こんぶ)が利尻(りしり)から羅臼(らうす)に、、。

【2016-07-30追記】:
竹岡沖(たけおかおき)銀寶(ぎんぱう)、桑名(くはな)の(しゞみ)など、、。

【2016-04-10追記】:
走(はし)りの花山椒(はなざんせう)を愉(たの)しむ。
白身(しろみ)も(しび)も、眞鰺(あぢ)、鶏卵焼(たまごやき)も、
うを徳』、『与志乃』を凌駕(はるかにしのぐ)。
以爲(おも)ふに、『与志乃』が雋(すぐ)るは”穴子(あなご)”のみ。

此度(こだみ)は新規(あらた)なる試行(こゝろみ)あり。
 1)鮟鱇肝(あんきも)を燻(いぶ)す。     ※美味(うまし)
 2)敢(あ)へて章魚(たこ)を叩(たゝ)かず。 ※臼齒(おくば)に頼哩(あらが)ふ

【2015-11-08追記】:
倩(つらつら)當家(こちら)の菜(れうり)を惟(おもんみ)るに、
二(ふた)つの弱點(よはみ)ありき。
一(ひと)つは、魚(うを)炙(あぶ)るに、瓦斯(がす)に頼(たよ)ること。
今一(いまひと)つは、舎利(しやり)。

已(すで)に、舎利(すめし)の大(おほ)きさ水分量(みづけ)は改(あらた)まり、
此度(こだみ)は、米醋(よねず)より紅醋(あかず)へと變更(きりかへ)。
口(くち)に含(ふく)むや、鳳仙花(ほうせんくわ)のごとくに四散(ほどけち)り、
瞬(またゝ)く中(うち)に臼齒(おくば)より吭(のみど)に到達(いた)る。

瓦斯(がす)より備長炭(びんちやうたん)への轉換(きりかへ)は、
來年(きたるとし)の早々(はじめ)。
東道(あるじ)曰(いへら)く、「馨(かをり)の佳(よ)さは、炭(すみ)ならでは。」、
「吾(われ)、漸(やうや)う、瓦斯(がす)の限界(かぎり)を曉得(さと)れり。」

"(しほ)ぽんす"に"橙鹽(だいだいじほ)"も新(あら)たなる試行(こゝろみ)。
鹽(しほ)は法蘭西(ふらんす)ゲランド産(さん)。
とまれ、若(も)し、二(ふた)つの弱點(よはみ)解消(きえう)さば
忽地(たちまち)、理想(のぞむべ)き姿(すがた)の舗(みせ)となるべし。

【2015-09-28追記】:
龜戸(かめゐど)の御大盡(おだいじん)が希望(のぞみ)に從(したが)ひ、
この度(たび)、新設(あらたにまうけ)し"御大盡(おだいじん)コース"。
"丹州(たんば)の松茸(まつたけ)"など、價格(ね)の張(は)るものがザクザク
無縁(ゆかりなし)とは云へ、金二萬圓也(きんにまんゑんなり)。

最初(いやさき)は"茸盡(きのこづ)くし":
松茸(まつたけ)、本占地(しめぢ)、黒茸(くろたけ)、舞茸(まひたけ)。
徒(いたづら)に出汁(だし)の勝(か)つことのなき佳味(よきあぢ)
丹州(たんば)の松茸(まつたけ)は纔(わづ)かばかりを味見(あぢみ)。

旨味(うまみ)彈(はじ)くる蝦夷利尻(えぞりしり)(ひらめ)の縁側(えんがは)。
羽州八郎潟(ではゝちらうがた)の(むなぎ)は四百五十匁。
この日(ひ)は、敢(あ)へて齒應(はごた)へを殘(のこ)す烹調法(やりかた)
噛(か)むほどに、美味(うまみ)溢れて、口中(くちのなか)へど浮騰(ほとばし)る

薩州(さつま)出水(いづみ)の眞鰺(あぢ)も、この日(ひ)は酢〆(すじめ)。
しみづ』、かつて四谷(よつや)に在(あ)りし『』を彷彿(おもはす)。
倩(つらつら)(むなぎ)、眞鰺(あぢ)を瞻(み)るに、小宮親方(おやかた)、
近來(ちかごろ)は、無人境(ひとなきところ)を獨行(ゆ)くがごとし

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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】 :東蔡(Carl Zeiss Jena)紅 MC Pancolar 1.8/50 @1.8~2.0

【2015-03-14追記】:
近會(ちかごろ)、俄頃(にはか)に若(わか)き客(きやく)が増(ふ)へ、
剩(あまッ)さへ、異人客(いじんきやく)までと云ふ形勢(ありさま)
古(ふる)くからの客(きやく)、地元(ぢもと)の民(たみ)が行(ゆ)きづらくなるは
致(いた)し方(かた)のなきところか、、、。

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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:...蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZK @F2.0

【2013-09-20追記】:
鯵ヶ澤(あぢがさは)の[魚荒](あら)、大原目高鰒(まだかあはび)、などなど。
[魚荒](あら)は久繪(くゑ)にあらず。
姿形(すがた)は(すゞき)に似(に)、口味(あぢ)は眞鯛(まだひ)を髣髴(おもはす)。
頗(すこぶ)る美味也(びみなり)!

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【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 @F2.0 (By Sony)

【2013-05-25追記】:
"茄子(なす)の揚(あ)げ浸(びた)し"、"淡竹(はちく)に水菜(みづな)"など。
(むなぎ)は琵琶湖(びはこ)。
"城下鰈(しろしたがれひ)"は指身(さしみ)、潮汁の三種(みくさ)。
〆は"能登大納言(のとだいなごん)のアイス"。

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【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :東蔡(Carl Zeiss Jena) 紅MC Pancolar 1.8/50 @F2.4

【2013-03-10追記】:
此度(こだみ)は琵琶湖(びはこ)の"いさゞ"、"諸子(もろこ)"など。
頗(すこぶ)る美味(びみ)也。
名殘(なご)りの"(ふぐ)"に"炙(あぶ)りめじ"また佳(よ)し。
目新(めあたら)しきは岩手(いはて)の"雁喰豆(がんくひまめ)"。

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【照相機】:富士胶片(ふじふぃるむ) X-E1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :Kern Macro Switar 1.8/50 @F2.0

【2012-07-21追記】:
フィレンツェ茄子(なす)+ズッキーニ(しろ)バルサミコ
濱名湖(はまなこ)の(むなぎ)、百七十三匁(=650g) 、
球磨川(くまがは)の(すつぽん)、二百六十七匁(=1000g)、
小川原湖(おがはらこ)の(ごり)有馬煮(ありまに)、などなど。

【2012-07-07追記】:
武州羽根田(ぶしうはねだ)の鰻(むなぎ)、百卅匁(ひやくさんじふもんめ、=500g)。
脂(あぶら)こそ少(すく)なめなれど舌觸(したざは)り頗(すこぶ)る滑(なめ)らか。
古來(いにしへより)、江戸前海(えどまへうみ)の鰻(むなぎ)はを盛りとす。
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)!

【2012-06-23追記】:

【2012-06-10追記】:
この日は京師(みやこ)より東下(あづまくだ)りせし師匠(おやかた)と鉢合せ。
小宮(こみや)親方(おやかた)を交(まじ)へ四方山話(よもやまばなし)に花(はな)。
鰻(むなぎ)のほどよき大(おほ)きさ、海鰻(はむ)の産地(さんち)は勿論(いふにおよばず)、
師匠(おやかた)生(む)まれし能登(のと)の魚(うを)などとゞまるところを知らず。

【2012-05-26追記】:
胡麻鰒(ごまふぐ)の白子、豐後(ぶんご)三隅川(みくまがは)の香魚(あゆ)、
雲州(うんしう)中海(なかうみ)の二百十三匁(にひやくじふさんもんめ、=800g)、
賀茂茄子(かもなす)の田樂(でんがく)、淡路(あはぢ)の牡丹海鰻(ぼたんはむ)、
明石(あかし)の小豆羽太(あづきはた)、大原目高鮑(おほはらまだかあはび)など。

【2012-05-12追記】:
喜界嶋(きかいじま)大名笋(だいみやうだけ)、琵琶湖二百十匁、
石川芋(いしかはいも)、明石鯛(あかしだひ)、江戸灣(えどわん)の鳥貝
四万十川(しまんとがは)の(ごり)、大和丸茄子(やまとまるなす)など。
出水(いづみ)と淡路(あはぢ)の眞鰺(まあぢ)比(くら)べも、、。

【2012-05-04追記】:
此度(こだみ)は、遠州濱名湖(ゑんしうはまなこ)の(むなぎ)、百六十匁、
豐州(ほうしう)城下鰈(しろしたがれい)五百卅三匁(ごひやくさんじふさんもんめ)など。
江戸灣(えどわん)の穴子(あなご)に大車蝦(おほくるまえび)はひさかたぶりの品。
紅椒(ぱぷりか)ムウスに咖啡(こおふィ)葛切(くづき)りは鮓屋らしからぬ品。

【2012-04-21追記】:
今季(こんき)の初鰻(はつむなぎ)は、備州兒嶋湖(びしうこじまこ)。
大約(およそ)一百三十匁(いつぴやくさんじふもんめ、=500g)と小振(こぶ)り。
脂(あぶら)も少なく、龝(あき)盛りの鰻(むなぎ)とは雲壌(うんじやう)の相違(たがひ)。
しかはあれど、これぞ正眞正銘(まがふかたなき)天然物(てんねんもの)。

この日(ひ)の白眉(はくび)は"コンソメ"に"蕨餠(わらびもち)"。
"コンソメ"は牛脛肉芹菜(せろり)、洋葱迷迭香(ろーずまり)など、
菜蔬(あをもの)・香艸、胡椒百里香(たいむ)など香辛料(かうしんれう)を加へ、
さらに鳴門鯛(なるとだひ)骨邊肉(あら)の潮汁(うしほじる)を加へたる逸品(しな)。

居多(あまた)洋食屋ですら尻込みする"コンソメ"に挑(いど)むとは見上げたもの。
最初(いやさき)の"コンソメ"より初鰻(はつむなぎ)、(にぎ)りを經(へ)て、
最後(いやはて)は本蕨粉(ほんわらびこ)にて製(こしら)へたる"蕨餠(わらびもち)":
上にかゝるは丹波黒豆黄粉(きなこ)にて、その旨さ、勿論(いふもさら)なり。

【2012-04-07追記】:
この日の目當(めあ)ては今季初塚原(つかはら)の"白子筍(しらこだけ)"に、
"備州(びしう)白小豆(しろあづき)"の"水羊羹(みづやうかん)"。
偶(たまさ)か、朝〆(あさじめ)したる鳥羽(とば)の"星鰈(ほしがれひ)"と、
これまた今季初、肥州八代(ひしうやつしろ)の"(すつぽん)"も、、。

倩(つらつら)筍(たけのこ)の優劣(いうれつ)を考察(かんがみ)るに、
塚原(つかはら)の"白子筍(しらこだけ)"は、
"長岡京(ながおかきやう)"の筍(たけのこ)と比(くら)べても、一枚上手なるべし。
寸毫(つゆ)えぐみや癖の類(たぐひ)あらで、寔(まこと)、筍の頂點(いたゞき)

鳥羽(とば)の"星鰈(ほしがれひ)":
縁側(えんがは)もさることながら、 潮汁(うしほじる)の出來榮えが類稀(たぐひまれ)。
半月前(はんつきまへ)の明石鯛(あかしだひ)を凌(しの)ぎ、
一月前(ひとつきまへ)の"城下鰈(しろしたがれひ)"に竝(なら)ぶほどの美味(うまきあぢ)。

五百卅匁(=2kg)と云ふ"鼈(すつぽん)"は肥州八代(ひしうやつしろ)の産。
半晌(はんとき、=1時間)かけて鍋(なべ)に仕立(した)てたるものにて、
震旦(もろこし)の佳き清湯(すましゞる)か上質のコンソメを髣髴(おもはす)。
惜(を)しむらくは、身(み)頗(すこぶ)る硬(かた)く大味(おほあぢ)なること。

"薩州出水(さつしういづみ)眞鰺"の甘美(うま)さは勿論(いふもさら)なり。
扨(さて)、"備州白小豆(しろあづき)"の"水羊羹"に"黒豆あいすくりん":
實(げ)に、鮨屋(すしや)で供(いだ)すものとも思(おも)はれぬ出來(でき)。
就中(わきても)、"あいすくりん"は居多(あまた)卵黄ヴァニラビンズが光る一品。

【2012-03-25追記】:
此度(こだみ)は、長岡京(ながおかきやう)の稚鮎明石鯛など。
閖上(ゆりあげ)の赤貝(あかゞひ)は『峯八』に續き、大地震(おほなゐ)の後二度目。
明石鯛(あかしだひ)は子持ちにて、やはり龝(あき)の紅葉鯛(もみぢだひ)に分。
待ち遠しきは塚原(つかはら)の"白子筍(しらこだけ)"。

牛乳(うしのちゝ)を吉野葛にて固(かた)めたる"牛乳豆腐(ぎうにゆうどうふ)"が、
この日の白眉(はくび)。
生の米粒(こめつぶ)のごとき塊(かたまり)を訝(いぶか)しく思ひ、これを問(と)ふと、
「自(みづか)ら編出(あみいだ)せしものにて、葛(くづ)の粒(つぶ)にてござる」と。

【2012-03-11追記】:
銀寶(ぎんぽう)、山獨活(やまうど)、、走りの明石櫻鯛(さくらだひ)。
それに、琵琶湖(びわこ)の"もろこ"。
潮汁(うしほじる)は時季(じき)も向去(さりなん)とする(ひらめ)。
小振(こぶ)りなれど、口味(あぢ)はなかなかのもの。

【2012-02-19追記】:
漸(やうや)う生業(なりはひ)からも解放(ときはなた)れ、この日久々の『うを徳』。
最初(いやさき)は椀(わん)。
雲子(くもこ)、菜花(なのはな)、蘿蔔(すゞしろ)、吸口(すひくち)は柚子。
"淀蘿蔔(よどだいこん)"と號(よびな)す聖護院蘿蔔(しやうごいんだいこん)の一つ。

とは云へ、この日(ひ)の白眉(はくび)は"城下鰈(しろしたがれひ)"。
身(み)は二百四十匁(にひやくよんじふもんめ、900g)と聊(いさゝ)か小振(こぶ)り。
この日の旦(あさ)活け〆にしたばかりなれば、旨味(うまみ)乏(とも)しきは明白(あきらか)。
さらば、亭主(あるじ)の捌(さば)く姿(すがた)を虚(うつ)ろに眺(なが)む。

刺身(さしみ)を箸(はし)に取(と)り、ゆるりこれを吟味(あぢは)へど、
冬の青森鮃(あをもりひらめ)、龝(あき)の明石鯛(あかしだひ)を仰(あふ)ぎ見、
星鰈(ほしがれひ)、否、高名(なだか)き鮨店(すしや)の眞子鰈(まこがれひ)にも劣る。
時季(じき)に外れ、身の締まり、香氣(かをり)、旨味(うまみ)ともに今一つ

"城下鰈(しろしたがれひ)"と云ふは遍(あまね)く知(し)らるゝごとく、
豐後(ぶんご)は城下海岸(しろしたのはま)にて漁(すなど)らるゝ眞子鰈(まこがれひ)。
まともに口(くち)にするはこれが初(はじめて)。
求むるまでもなく、阿吽(あうん)の呼吸(いき)にて供(いださ)れし"潮汁(うしほじる)"。

上面(おもて)には珠(たま)のごとき油脂(あぶら)が浮(う)かみ、
湯氣(ゆげ)とゝもに、芳香(かぐはしきかをり)四方(よも)に漂(たゞよ)ふ。
これを口に含(ふく)むに、ほどよき鹽加減(しほかげん)と無限(かぎりな)き旨味
味覺(した)を搖(ゆ)さぶり、鼻竅(はな)を穿(うが)ち、吭(のんど)を貫(つらぬ)く

想定外(おもひのほか)に柔(やは)らかく、舌(した)に滑(なめ)らか。
これを噛み締むれば、奧齒(おくば)に抗(あらが)ふ方策(すべ)もなく蕩(とろ)け、
骨(ほね)の周圍(まはり)より旨味(うまみ)滾々(こんこん)と溢(あふ)れ出(い)づ
これを舐(ねぶ)り、慈(いつく)しみ、最後(いやはて)の一滴(ひとしづく)まで飮み干す

およそ、鮃(ひらめ)の骨邊肉(あら)なるは、
朝(あさ)〆なれば硬(かた)く、舌に逆らひ、:旨味(うまみ)乏(とも)しきもの
日を置くに從(したが)ひ旨味(うまみ)を増し、味はひを深(ふか)むるが通例(つね)
眞鯛(まだひ)また然(しか)り。

俗(よ)に鮃(ひらめ)は生で啖(くら)ふがよく、鰈(かれひ)は煮るが何よりと云ふ。
とは云へ、大(おほ)きなる眞子鰈(まこがれひ)は鮃(ひらめ)に似(に)て、
煮ては舌(した)に逆(さか)らひ、鮨(すし)・刺身(さしみ)に好適(む)く。
この日の鰈(かれひ)は鮃・眞鯛と云ふより鮎魚女(あゆなめ)に彷彿(さもにたり)。

【2012-01-01追記】:
■□■□謹賀新年■□■□、御節料理
2012-01-01日記に、、。

【2011-12-19追記】:
2011-12-19日記に、、。

【2011-12-10追記】:
2011-12-10日記に、、。

【2011-11-20追記】:
2011-11-20日記に、、。

【2011-11-09追記】:
2011-11-07、11-09日記に、、。

【2011-10-29追記】:
2011-10-29日記に、、。

【2011-10-19追記】:
備前(びぜん)兒嶋湖(こじまこ)の蝦蛄鰻(しやこむなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-10-19日記に、、。

【2011-10-08追記】:
綸子(りんず)”天草緑川(みどりかは)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-10-08日記に、、。

【2011-09-29追記】:
琵琶湖(びわこ)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-09-29日記に、、。

【2011-09-22追記】:
宍道湖(しんじこ)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-09-22日記に、、。

【2011-09-10追記】:
球磨川(くまがは)の鰻(むなぎ)など。
殘(のこ)りは2011-09-10日記に、、。

【2011-09-04追記】:
此度(こだみ)は、『とよみつひめ』なる新種(しんしゆ)無花果(いちじく)。
殘(のこ)りは2011-09-04日記に、、。

【2011-08-18追記】:
土州(としう)鏡川(かゞみがは)の(すっぽん)。
生姜(はじかみ) を加(くは)へず、掃愁箒(さけ)も嘗(かつ)ての三分(さんぶん)の一(いち)。
纔(わづ)かな臭(くさ)みこそあれ、なかなかのもの。
鼈裙(えんぺら)、頭(かうべ)も、、。

殘(のこ)る冩眞(しやしん)は2011-08-18日記に、、。

【2011-08-10追記】:
四万十川(あゆ)、佐島(さじま)の章魚櫻煮(さくらに)、土州(としう)の鰹、
蝦夷地(えぞち)釧路(くしろ)の秋刀魚(さんま)など。
家苞(いへつと)ゝして『ばらちらし』。
秋刀魚(さんま)は身(み)も膓(わた) もなかなかの旨(うま)さ。

殘(のこ)る冩眞(しやしん)は2011-08-10日記に、、。

【2011-07-03追記】:
此度(こだみ)の白眉(はくび)は紅椒(ぱぷりか)のムウス
眞子鰈(まこがれひ)のあらより出汁(だし、"Fumet de poisson")を引(ひ)き、
牛(うし)の出汁(だし、"Consommé de bœuf")を併(あは)せ六日(むいか)かけたものと云ふ。
紅椒(ぱぷりか)の苦味)、凝乳(くりいむ)のまろやかさ、ほどよき鹽氣(しほけ)と非のうちどころなし。

握りとして、茹で上げ蝦蛄(しやこ)、三枚漬(さんまいづ)けの新子(しんこ)、
大原の蒸鮑(むしあはび)、明石鯛、佐島(さじま)の章魚(たこ)櫻煮(さくらに)など。
で上げ蝦蛄に舌鼓(したつゞみ)を打つは大約(およそ)一年(ひとゝせ)ぶり。
時季(じき)の穴子(あなご)はまづまづ。

【2011-06-15追記】:
此度(こだみ)は、『四万十川香魚(あゆ)』、『北上川山女(やまめ)』、
『丹後舞鶴(まひづる)の鳥貝』、『房州勝浦(ばうしうかつうら)の(かつを)』、
淡路(あはぢ)の(はむ)』、『江戸前(えどまへ)の穴子(あなご)』など。
『吉野川』の鮎(あゆ)の比(くら)べ、四万十川(しまんとがは)には力強(ちからづよ)さ。

(かつを)、(あぢ)にも優(まさ)るこの日の白眉(はくび)は穴子(あなご)。
皮(かは)甚(いと)柔(やは)らかにして、身(み)も崩(くづ)れんばかり。
身皮(みかは)の間(はざま)なる脂(あぶら)が舌に纏(まと)はりつゝ、 吭(のんど)の奧に、、。
やはり鰻(むなぎ)は龝(あき)穴子(あなご)は初夏(なつのはじめ)が何より。

鳥貝(とりがひ)を解體(さば)く過程(かてい)2011-06-15日記(につき)に。

【2011-06-03追記】:
・・・・・・(略)・・・・・・
此度(こだみ)の酒菜(さかな)は、吉野川、京師(みやこ)賀茂茄子(かもなす)、
壹岐(いき)の岩牡蠣(いはがき)など。

鮎(あゆ)には楓(かえで)と加賀太胡瓜(かゞぶときうり)があしらはれ目にも鮮やか。
これを貪(むさぼ)るに、身と膓(わた) より心持(こゝち)よき香(かをり)迸(ほとばし)る。
岩牡蠣(いはがき)はその儘(まゝ)でも旨(うま)く、ぽん酢(ず)もまた佳(よ)し。
賀茂茄子(かもなす)はほどよき齒應(はごた)へを殘(のこ)し、出汁(だし)も上々。

握(にぎ)りは生平(つね)のごとし。
出水(いづみ)の眞鰺(あぢ)は時季(じき)に適(かな)ひ旨さ口中(くち)に横溢(あふ)る。
肥後(ひご)の本蛤(ほんはまぐり)も朝鮮蛤(てうせんはまぐり)と見紛(みまが)ふ大きさ。
天草(あまくさ)の車蝦(くるまえび)は俗(よ)に云ふ『大車(おほぐるま)』。

【2011-04-28追記(拔粹)】:
蝦夷(えぞ)苫小牧馬糞海膽、洛(みやこ)塚原白子筍(しらこだけ)、
越中富山喉黒(のどぐろ)などを貰(もら)ひ杯(さかづき)を傾(かたぶ)く。
握りで、鮃(ひらめ)縁側(えんがは)、眞鰺(まあぢ)、小鰭(こはだ)、黄肌(きはだ)、
赤貝(あかゞひ)、穴子(あなご)。

音(おと)に聞(き)く『白子筍(しらこだけ)』を口にするはこれが初(はつ)。
鹽茹(しほゆ)でに見(み)えしかど、出汁(だし)を加(くは)へたるものとなむ、、。
滑らかなる舌觸(したざは)りは絹に似て、えぐみのなさは泉(いづみ)を髣髴(おもはす)。
慥(たしか)に笋(たけのこ)の皇(すめらみこと)。

喉黒(のどぐろ)は兜(かぶと)ばかりを擇(えら)み、ほどよく炙りて供(いださ)る。
豫(あらかじ)め降り鹽(じほ)が施(ほどこ)され、その旨味も一入(ひとしほ)。
遉(さすが)に閖上(ゆりあげ)の赤貝はなく、周防にて漁(いさ)りしものゝみ。
殼(から)を剥(む)き、肝(きも)を燒(や)き、身(み)と紐(ひも)は握りとなす。

【2011-04-17追記】:
・・・・・・(略)・・・・・・
漬け場に目立つ九十九里(くじふくり)の朝鮮蛤鶏卵燒(たまごや)き。
車蝦山芋を擂り込み、四十分かけて燒上(やきあ)げたるもの。

主人(あるじ)、『大地震(おほなゐ)に遭ひて閖上(ゆりあげ)の赤貝など皆無』と、、。
掃愁箒(さけ)を貰ひ、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)に主人(あるじ)心盡くしの品。
最初(いやさき)に、越中滑川(ゑつちゆうなめりかは)の螢烏賊(ほたるいか)。
獨活(うど)を添(そ)へ酢未醤(すみそ)で戴(いたゞ)く。

酒菜(さかな)として、品書きより、琵琶湖(びわこ)のもろこ鹽燒(しほやき)と、
洛(みやこ)は長岡京(たけのこ)の炙り燒きを注文(たのむ)。
もろこは二寸斗(にすんばかり)の大(おほ)きさで子持(こも)ち。
築地(つきぢ)で琵琶湖(びわこ)のもろこを扱ふは纔(わづ)かに一軒のみとか。

穴子肝煮(きもに)、走りの淡路島(あはぢしま)海鰻(はむ)落とし、
それに、海鰻(はむ)のあら汁(じる)は、 主人(あるじ)の好意(かうい)。
握り十二、鶏卵燒、玉薤(さけ)、酒菜(さかな)二種(ふたくさ)で八千二百圓也。
價格(ね)の廉きは、家族(うから)ばかりで商(あきな)ひ、廛(みせ)も持ち家なればこそ。

銀座『青木』とは互ひに先代(せんだい)よりの附き合ひとか。
主人(あるじ)、今は『はしぐち』となりし紀尾井町時代をも知る。
京師(みやこ)の馨(かをり)漂ふは、先代女將(さきつおかみ)の生まれもさることながら、
偏(ひとへ)に主人(あるじ)の修業先(しゆげふさき)にあり。

力みがなく、『某(それがし)、鮨より懐石料理(くわいせき)が得手(えて)』とポツリ。
扨(さて)、鮓職人が力量(うで)を餘すところなくあらはす鶏卵燒(たまごや)き。
些(いさゝ)か滑(なめら)かさに虧(かく)と云ふとも、
車蝦(くるまえび)の色尤(いと)鮮烈(あざやか)にして味はひもまたなかなかに深淵(ふかし)。

昆布〆に用(つか)ふ昆布(こんぶ)は利尻(りしり)と、これまた京風(きやうふう)。
江戸(えど)の鮨屋(すしや)では眞昆布(まこんぶ)を用(つか)ふが通例(ならひ)。
煮切(にき)りは醤油(しやうゆ)七に味醂(みりん)三で配合(ま)ぜ、
出汁(だし)を加へたるもの。

驚(おどろ)くべきは主人(あるじ)の記憶力(ものおぼえ)の凄(すご)さ。
四月(よつき)も前の客(きやく)の呑み啖ひしたるものをつぶさに憶(おぼ)えてをり、
剩(あまッ)さへ、話のやりとりまでもが審(つまびらか)。
以爲(おも)ふに、☆☆☆を爭ふ賈(みせ)にはあらねど、實(げ)に居心地よき廛(みせ)

【2010-12-04記(拔粹)】:
最初(いやさき)に掃愁箒(さけ)。
酒菜(さかな)は豊後(ぶんご)冬茹(どんこ)の含(ふく)め煮(に)。
一日(いちにち)西洋時辰儀(せいやうとけい)にして六時間煮詰(につ)め、
それを幾日(いくにち)も繰(く)り返(かへ)すと云ふ驚(おどろ)くほどの手間隙(てまひま)。

次いで『星鰈(ほしがれひ)の卵巣(こ)』。
主人(あるじ)の修業先(しゆげふさき)は洛(みやこ)木屋町通り『やました』。
慥(たしか)に味附けは淡く、京師(みやこ)の割烹(かつぱう)を髣髴(おもはす)。
この星鰈(ほしがれひ)、常磐(じやうばん)のものにて、主人(あるじ)誇りの品。

握りは、星鰈(ほしがれひ)、星鰈縁側(えんがは)、眞鯖(まさば)、小鰭(こはだ)、
墨烏賊(すみいか)を煮切(にき)りと鹽(しほ)で、
鮪(しび)の赤身(あかみ)醤油漬(しやうゆづ)けに、赤身(あかみ)に近き脂身(あぶらみ)、
蛤(はまぐり)、卷き、煮穴子(にあなご)、燒穴子(やきあなご)、冬茹(どんこ)卷き。

途中(とちゆう)、唐墨(からすみ)に蟹汁(かにじる)を挾(はさ)み、
握(にぎ)り十三(とあまりみつ)、卷物(まきもの)一つ、合はせて値(あたひ)八千五百圓也。
口惜(くちをし)きは鶏卵燒(たまごや)きなきこと。
勿驚(おどろくなかれ)、各々(おのおの)品の價格(ね)が黒板(こくばん)に審(つまびらか)。

この日は午の刻より未の刻まで一時(いつとき,=2時間)ばかり。
僕(やつかれ)のほか、絶(た)へて客(ひと)の姿(すがた)を見ず。
近傍(ちかく)に寺多く、粗方(あらかた)休日(やすみのひ)の法事客(はふじきやく)とか。
饗應(もてなし)に用(つか)ふ廛(みせ)なれば、價段(ね)を明かす道理(ことわり)なし。

唐墨(からすみ)は自家製。
鹽(しほ)ばかりで製造(こしら)へたるものとは明らかに異なる圓(まろ)やかさ。
その理(ことわり)を訊(たづ)ぬれば、燒酎(せうちう)に暫し漬け込みたるものとのよし。
傍(かたは)らの紅芯蘿蔔(こうしんだいこん)は鮨屋(すしや)には珍しき品。

要求(もとめ)に應(おう)じ、唐墨(からすみ)に添(そ)ふると、、。
そも、蘿蔔(すゞしろ)は徒(いたづら)に強き鹽氣(しほけ)を和(やはら)ぐるもの。
鹽(しほ)強(つよ)からざれば、そのまゝに味(あぢ)はふが何より。
こゝろみに紅芯蘿蔔一片(ひとひら)を齧(かじ)るに、爽やかなること梨(なし)に似たり。

萬願寺唐辛子(まんぐわんじたうがらし)も東都(えど)の鮨屋にはなき菜蔬(あをもの)。
舎利(しやり)は粒(つぶ)が立ち、舌(した)に滑(なめ)らか。
暖(あたゝ)かさは人肌(ひとのはだ)ほどならん。
酢は尾州半田(びしうはんだ)の白酢に、纔(わづ)かながら沙糖を用(つか)ふ。

甘酢(あまず)漬け生姜(はじかみ)の自家製(じかせい)なるは勿論(いふもさらなり)。
くどさなく、口直(くちなほ)しにはほどよし。
近會(ちかごろ)の行きつけ に比(くら)ぶれば、聊か冷たく、酢も弱め。
山葵(わさび)は本物(ほんもの)ながら、高名(なのある)廛(みせ)には遠く及ばず。

主人(あるじ)の誇る『星鰈(ほしがれひ)』は〆てより三日目(みッつかめ)。
この時季の、『喜久好』か『ほかけ』のの美味(うまきあぢ)にはとてもとても、、。
喜久好』なれば〆て間(ま)もなきものを厚(あつ)めに切りつく。
身が活き、噛み締むるほどに旨味(うまみ)奔(ほとばし)るが通例(つね)。

(はまぐり)』は他店(よそ)で用(つか)ふ鹿島灘(かしまなだ)朝鮮蛤とは異なり、
肥後(ひご)の濱(はま)にて漁(すなど)られし本蛤(ほんはまぐり)。
これを『漬け込み』となし、煮詰(につ)めを寸毫(つゆ)施(ほど)さずに味はふ。
僅(はつ)かながらも火の入り過ぎたるけはひこそあれ、なかなかの出來榮(できば)え。

主人(あるじ)が『今一つ』と羞(は)ぢらふ『煮穴子(にあなご)』は江戸前(えどまへ)。
煮工合(にぐはひ)もほどよく、この時季(じき)としては、まづまづ。
最(いと)面白(おもしろ)きは『燒穴子(やきあなご)』。
洛(みやこ)に倣ひて、骨切(ほねき)りを行ひたる後これを炙(あぶ)る。

やはり『燒穴子』に限るなら『468』に一日(いちじつ)の長(ちやう)。
鶏卵(たまご)の代替(かはり)に『尤(いと)自信(じゝん)あるもの』と、問はゞ、
『含ませ煮の冬茹(どんこ)』を海苔(のり)に卷くは如何(いか)に、と、囘答(いら)ふ。
ぬばたまの黒さながらも、味は海苔卷きの干瓢(かんぺう)よりも穩(おだ)やか。

さても、握り鮨の華(はな)たる光物(ひかりもの)ゝはと檢(あらた)むるに、
鯖(さば)はやゝ淺(あさ)め、小鰭(こはだ)は聊(いさゝ)か強き酢〆
主人(あるじ)に據(よ)らば、鯖は、鹽(しほ)二時間半、酢(す)四十分、
小鰭(こはだ)は、鹽(しほ)を五十分、酢(す)を四十分とか。

豐後(ぶんご)の鯖(さば)は、その身頗(すこぶ)る肥(こ)え、
脂(あぶら)は鹽(しほ)を蹴散(けちら)らし、酢を四方(よも)に彈き飛ばさんばかり。
小鰭(こはだ)には"卷き"より拵(こしら)へたる朧(おぼろ)を挾(はさ)む。
〆の強さたるや、九段下『壽司政』、烏森稻荷『しみづ』に次ぐ。

そも『うを徳』なる屋號(やがう)、小宮徳造(こみやとくざう)が魚屋に因む。
倅(せがれ)(たけし)、當地(このち)に開きし鮨屋こそ『おすもじ處(どころ)うを徳』。
二代目(にだいめ)重病(おもきやまひ)に仆(たふ)れ、跡を繼ぎしが、三代目(さんだいめ)。
すなはち、現行(いま)の親方(おやかた)小宮健一(こみやけんいち)その人(ひと)。

  • 小宮健一(こみやけんいち)親方(おやかた) 【撮影許可濟】 2011年6月撮影、2019-01モザイク處理
  • "鮑魚(あはび)"+《越中滑川(なめりかは)》"螢烏賊(ほかるいか)"
  • 『服部中村養鼈塲(はつとりなかむらやうべつじやう)』"鼈(かはかめ)"

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2位

一風庵 (西中野、広貫堂前、小泉町 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2011/08訪問 2011/08/20

彼此(をちこち) に 越中富山(ゑつちゆうとやま)の 漆塗(うるしぬ)り 器に柱 天井までも

越中(ゑつちゆう)の逆旅(たび)も佳境(かきやう)にさしかゝり、
山(やま)を距(こ)え、川(かは)を渡(わた)りて、
直走(ひたはし)る轎(くるま)は一息(ひといき)に千里(せんり)を驅(か)くる勢(いきほ)ひ。
喰(く)ひ慣(な)れぬ洋菓子(やうぐわし)の想定外(おもひのほか)の旨(うま)さに刮目(くわつもく)。

味神樣(あぢがみさま)の御託宣(おつげ)に從(したが)ひ、
今宵(こよひ)の夕飧(ゆふげ)は當家(こちら)越中富山(ゑつちゆうとやま)の『一風庵』。
一夜(ひとよ)一組(ひとくみ)限定(かぎり)の料理茶屋(れうりぢャや)。
まだ暮(く)れ泥(なづ)む天(そら)に浮(う)かむは『一風庵』の燈火(あかり)。

その形状(かたち)圓(まどか)ならねば月(つき)と見紛(みまが)ふことなし。
門構(もんがま)へは頗(すこぶ)る立派(りつぱ)で、垣(かき)玄關(げんくわん)へと連(つら)なる。
あまりの美(うつく)しさに眼精(まなこ)奪(うば)はれ氣(き)も漫(すゞろ)。
足(あし)まで取(と)られて溝(どぶ)へと輾(まろ)び、瀝青(れきせい)の地(ち)に塗(まみ)る。

瀝青(れきせい)なほ熱(あつ)く火照(ほて)り、背(せ)を焦(こ)がして尻(しり)を炙(あぶ)る。
氣(き)を取(と)り直(なほ)し、いざ、盛鹽(もりじほ)の門(もん)を踰(こ)え玄關(げんくわん)に、、。
『御免下(ごめんくだ)され』と云ふと同時(ひとし)く、
廊下(ほそどの)に平伏(ひれふ)したる女將(おかみ)首(かうべ)を低(たれ)て出迎(でむか)へ。

教導(あなひ)されしは待合(まちあ)ひの間(ま)。
見目(みめ)麗(うるは)しき茶碗(ちやわん)に佳(よ)き茶(ちや)。
膝(ひざ)を揃(そろ)へ坐布團(ざぶとん)に坐(すは)りて姿勢(せ)を直(たゞ)すに、
女將(おかみ)、『どうか、疾(と)く御膝(みひざ)を崩(くづ)したまへ』と庶幾(こひねが)ふ。

ほどなくして、夏向(なつむ)きの(すだれ)のかゝる宴會(うたげ)の間(ま)に、、。
(すだれ)と茣蓙(ござ)はこの時季(じき)ならでは。
脇息(けふそく)附(つ)きの席(むしろ)に坐(すは)れば、
俄(には)かに、殿樣(とのさま)か、やむごとなき方々(かたがた)にでもなりたる心持(こゝち)。

向(む)かひには輪島塗(わじまぬり)の蒔繪膳(まきゑぜん)。
朱漆(しゆうるし)に(こがね)鍍(ほどこ)したる(さかづき)も輪島塗(わじまぬり)。
女將(おかみ)拿(も)ち來(き)たりし桶(おけ)には當地(このち)の玉薤(さけ)。
それを盛(も)る酒盞(ぐらす)には紺青(こんじやう)の(き)り子(こ)。

向附(むかふづけ)』と思(おぼ)しき玻璃鉢(びいどろばち)には、
(かへで)挾(はさ)みたる兩(ふた)つ折(を)りの(ぬ)れ和紙(がみ)が被覆(おほひかぶさ)る。
これ、乾燥(かは)くを防(ふせ)ぎ、見(み)た目(め)に涼(すゞ)やかなるを慮(おもんばか)る、
亭主(あるじ)の心遣(こゝろづか)ひなるは猜疑(うたが)ひもなし。

汁物椀(しるものわん)も朱漆(しゆうるし)に(こがね)の輪島塗(わじまぬり)。
(あかゞね)に錫引(すゞび)きしたる高脚皿(たかあしざら)、高麗青磁(こませいじ)の鉢(はち)、
織部(おりべ)や呉須赤繪(ごすあかゑ)の小皿(こざら)。
何(いづ)れをとりても僕(やつかれ)ごときが用(つか)ふを憚(はゞ)る逸品(よきしな)。

床(とこ)の間(ま)を飾(かざ)る生花(いけばな)、
後方(しりへ)にましますは薪能(たきゞなう)に因(ちな)むと云ふ人形(にんぎやう)、
(はしら)と云はず、天井板(てんじやういた)と云はず、(かゞみ)と紛(まが)ふ漆塗(うるしぬり)。
床(とこ)の間(ま)には遙(はる)か南蠻渡來(なんばんわたり)の黒檀(こくたん)まで、、。

一(ひと)つとして疵附(きづゝ)き、毀(こぼ)れ、缺(か)けたるものなし
女將(おかみ)、器(うつは)下(さ)ぐるに、唯(たゞ)の一度(ひとたび)たりと重(かさ)ぬることなく
盆(ぼん)に載(の)る限(かぎ)りの數(かず)を運(はこ)ぶ。
その理由(ことわり)を訊(たづ)ぬれば、應答(いら)へて、『主人(あるじ)に叱(しか)られまするゆゑ』と。

器(うつは)に見(み)とれ、女將(おかみ)の所作(ふるまひ)に心奪(こゝろうば)ゝれ
口味(あぢ)にさしたる驚歎(おどろき)なし
しかはあれど、蓼(たで)の色鮮(いろあざ)やかなること、翠玉(えめらるど)かと疑(うたが)はれ
鉈豆(なたまめ)の色(いろ)、翡翠(ひすい)に寸毫(つゆ)異(こと)なるところなし

女將(おかみ)に據(よ)らば、およそ(たで)なるもの、これを擂(す)るや、
忽地(たちまち)に色褪(いろあ)せ、くすみ、元來(もと)の色(いろ)を失(うしな)ふとか。
慥(たしか)に、僕(やつかれ)行(い)きつけの鮨屋(すしや)もかく證言(かた)りぬ。
これもまた亭主(あるじ)と女將(おかみ)の心配(こゝろくば)りに相違(たが)ひなし。

宴會(うたげ)も酣(たけなは)。
地(ぢ)の時季(じき)に適(かな)ふもの斗(ばかり)を次々(つぎつぎ)に平(たひ)らげ、一安堵(ひとおちゐ)。
暑(あつ)き盛(さかり)の懐石(くわいせき)に缺(か)ゝせぬ(はむ)なきを不審(いぶかし)く思(おも)へど、
宿(やど)で放送局數(はうさうきよくすう)の少(すく)なさを知(し)り撲地(はた)と膝(ひざ)を打(う)つ。

東都(とうと)なれば蝦夷(えぞ)から琉球(りうきう)までなきものはなく、思(おも)ふが儘(まゝ)。
しかはあれど、その東都(とうと)ですら、今(いま)では何處(いづく)にても目(め)にする海鰻(はむ)、
寂(さび)れたる超級市場(すうぱ)にもある酢橘(すだち)、はたまた素麪(そうめん)ですら、
五十年前(いそとせまへ)は上方(かみがた)の傳手(つて)なくば入手(てにい)れがたきものと憶(おぼ)ゆ。

水菓子(みづぐわし)で〆たる後(のち)、誘(いざな)はるゝ儘(まゝ)奧(おく)の間(ま)に、、。
豆球(まめきう)のほか、部屋(へや)を照(て)らすは纔(わづ)かに蠟燭(らふそく)二燈(にとう)。
かゝる暗(くら)さ、久(ひさ)しく經驗(あぢは)ひたる記憶(おぼえ)なし。
惜(を)しむらくは和蠟燭(わらふそく)ならで、西洋蠟燭(せいやうらふそく)なること。

最後(いやはて)に、茶菓子(ちやぐわし)とゝもに抹茶(まつちや)を堪能(あぢは)ふ。
女將(おかみ)心盡(こゝろづ)くしの薄茶(うすちや)。
茶菓子(ちやぐわし)は甜(あま)きに過(す)ぎざれば、
小赤豆(あづき)の滋味(あぢ)味覺(した)に殘(のこ)りて、茶(ちや)で流(なが)すを躊躇(ためら)ふ。

辭別(いとまごひ)に當(あ)たり主人(あるじ)に挨拶(あいさつ)。
辻留』先代(せんだい)辻嘉一(つじかいち)直々(じきじき)の薫陶(てほどき)受(う)けし高弟(かうてい)。
由緒(すぢめ)正(たゞ)しきを鼻(はな)にかくるでもなく、居住(ゐず)まひを正(たゞ)し、
にこやかに僕等(やつかれら)見送(みおく)るぞありがたき。

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】
  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】
  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】

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3位

徳山鮓 (余呉 / 郷土料理、オーベルジュ)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 3.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 3.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 ¥10,000~¥14,999

2012/03訪問 2012/03/24

湖(うみ)の幸 山の幸すら擅(ほしいまゝ) 〆て一萬 まさに『徳山』

【2012-03-24追記】:
此度(こだみ)は"鴨(かも)盡(づ)くし"の宴(うたげ)。
"小鴨(こがも)"に"青首(あをくび)"、すなはち、雄(をす)の"眞鴨(まがも)"。
炙(あぶ)り、燻(いぶ)し、鍋(なべ)となし、肝(きも)は有間煮(ありまに)として餘(あま)すところなし。
山椒(さんせう)の色(いろ)の翡翠(ひすい)なるは勿論(いふもさら)なり。

これ、主人(あるじ)自(みづか)ら裏山(うらやま)に分(わ)け入(い)り、
新暦(しんれき)六月(ろくがつ)の纔(わづ)か五日(いつか)に限(かぎ)りて摘(つ)みしもの。
眼(め)に麗(うるは)しく香(かをり)も高(たか)き實山椒(みざんせう)。
鮒鮓(ふなずし)の(いひ)と竝(なら)び、これぞ當家(こちら)ならではの香(かをり)。

山葵(わさび)もまた、亭主(あるじ)自(みづか)ら艸木(くさき)を踏分(ふみわ)け、澤(さは)、
否(いな)、水(みづ)すらなきに、地下(つちのした)なる伏流水(ふくりうすい)を探知(さぐ)り當(あ)て、
地下(つちのした)深(ふか)くより堀出(ほりいだ)したるものと云ふ。
最長(おほきなるもので)一尺七寸(いつしやくなゝすん)と、弓削道鏡(ゆげのだうきやう)竝(なみ)。

伊豆(いづ)の山葵(わさび)の甘(あま)さこそあらねど、
山葵(わさび)の特徴(もちあぢ)たる芳香(かぐはしきかをり)僕(やつかれ)が鼻竅(はな)を穿(うが)つ。
辛味(からみ)も『比良山莊』のそれに比(くら)ぶれば遙(はる)かに穩(おだ)やか。
"けん"は蘿蔔(すゞしろ)の纖切(せんぎ)りにて、庖丁遣(はうちやうづか)ひは神技(かみわざ)

この山葵(わさび)と"けん"の載(の)る"作(つく)り"は"てり鮒(ぶな)"の皿(さら)。
"てり鮒(ぶな)"なるを口(くち)にし、目(め)にし、耳(みゝ)にするのはこれが初(はじめて)。
遠目(とほめ)には、烏賊(いか)ゝ(ひらめ)かと見紛(みまが)ふ細作(ほそづく)り。
橙色(だいだいゝろ)の魚卵(たまご)は、寔(まこと)、上質(よ)き唐墨(からすみ)を髣髴(おもはす)。

稚鮎(ちあゆ)の天麩羅(てんぷら)にも吃驚(びつくり)栗栗栗栗(くりくりくりくり)。
小麥粉(めりけんこ)ばかりと云ふに、外皮(そと)はからりと揚(あ)がり、
加旃(しかのみならず)、中(なか)の稚鮎(ちあゆ)はなほ瑞々(みづみづ)しさを保(たも)つ
その力量(うで)月竝(つきなみ)ならざるは明白(あきらか)。

鶏卵(たまご)の有無(ありやなしや)を言問(ことゝ)はゞ、
主人(あるじ)應答(いら)へて曰(いは)く、「鶏卵(たまご)は用(つか)ひてござりませぬ」と。
そもそも揚物(あげもの)に鶏卵(たまご)用(つか)ふは世(よ)の倣(なら)ひ
知(し)る限(かぎ)り、高名(なだゝる)天麩羅店(てんぷらや)にして、鶏卵(たまご)を用(つか)はざるはなし。

僕(やつかれ)知(し)る限(かぎ)りでは、揚物(あげもの)に鶏卵(たまご)を用(つか)はぬ店(みせ)は、
一)當家(こちら)『徳山鮓
ニ)越中富山(ゑつちゆうとやま)『川柳
三)僕(やつかれ)足繁(あしゝげ)く通(かよ)ふ玉の井(たまのゐ)『うを徳

川柳』の主人(あるじ)も、『うを徳』の主人(あるじ)も、異口同音(ことばこそたがへどくちをそろへて)、
紆餘曲折(あれやこれやと)自(みづか)ら編(あ)み出(いだ)したる祕技(ひめわざ)」と證言(かた)る。
そして、おそらくは當家(こちら)の主人(あるじ)も、、、。
豈(あに)、これぞ"引算(ひきざん)の美(び)"と言(い)はざるべけんや?

姥(おみな)の手(て)になると云ふ"澤庵漬(たくあんづけ)"も珠玉(たふたきたま)の一品(ひとしな)。
鮒鮓(ふなずし)の飯(いひ)にも似(に)たる乳酸醗酵(にゆうさんはつかう)の滋味(ふかきあぢはひ)。
主人(あるじ)渾身(こんしん)の作(さく)、"飯漬(いひづけ)鶏卵(たまご)"も面白(おもしろ)き品(しな)。
莞爾(につか)とうち笑(ゑ)み、「當初(はじめ)、生鶏卵(なまたまご)にて試(こゝろ)みたりしかど、、、」と。

案下某生再説(それはさておき)、この日(ひ)の鴨(かも)。
小鴨(こがも)の脚(あし)より湧(わ)き立(た)つは、野鳥(のゝとり)ならではのほどよき匂(にほ)ひ
それに釣(つ)られ、思(おも)はずこれを貪(むさぼ)り骨(ほね)まで舐(ねぶ)り盡(つ)くす。
因(ちな)みに、震旦(もろこし)では鴨(かも)の"水掻(みづか)き"を珍重(おほいにおもんず)。

想定外(おもひのほか)に癖(くせ)少(すく)なきは青首(あをくび)の鴨(かも)。
脂(あぶら)の家鴨(あひる)・合鴨(あひがも)より少(すく)なきは、當然(あたりまへ)のことながら、
その身(み)甚(いと)柔(やは)らかく、頗(すこぶ)る瑞々(みづみづ)しく、寸毫(つゆ)臭氣(くさみ)なし
あまりのことに拍子拔(ひやうしぬ)けするほど。

【2011-08-15記】:
衆知(あまねしらる)ゝごとく、東都(とうと)は四海(しかい)に冠(かん)たる美食(びしよく)の都(みやこ)。
およそ美味(うまきあぢ)にして、この地(ち)にあらざるはなし。
就中(わきても)、魚介(うをのたぐひ)は江都(えど)で名(な)のある鮨屋(すしや)に限(かぎ)り、
築地(つきぢ)には津々浦々(つゝうらうら)より秀逸(とびきり)の品(しな)が集(つど)ふ。

倩(つらつら)その理由(ことわり)を探究(たづ)ぬれば、
電氣氷室(えれきひむろ)、流通(りうつふ)・輸送(ゆさう)の劇的進歩(いちじるしきあゆみ)に伴(ともな)ひ、
味覺(した)の肥(こ)え、裕福(ふところゆた)かなる大城市(おほきなるみやこ)に物(もの)集中(あつ)まるが、
商賣(あきなひ)の常道(つね)なればなり。

京師(みやこ)もまた往古(そのかみ)より傳承(つた)はる技藝(わざ)に加(くは)へ、
明石鯛(あかしだひ)、大間鮪(おほましび)など、活(い)きた儘(まゝ)にこれを錦市場(にしき)に運(はこ)ぶ。
古(いにしへ)より活(い)けで運(はこ)ばれたと云ふ海鰻(はむ)ですら、
近會(ちかごろ)では、淡路(あはぢ)より、遠(とほ)き朝鮮(てうせん)のものを嗜(この)むとか。

力量(うで)の立(た)つ料理人(れうりにん)手煆煉(てだれ)職人(しよくにん)もまた、
東都(とうと)や京都(きやう)に偏(かたよ)り聚(あつま)る。
(ゐなか)にはその地(ち)ならではの食材(しよくざい)ありと云ふとも、
可惜(あたら)寶(たから)の持(も)ち腐(ぐさ)れとなるが通例(つね)。

嗚呼(あゝ)、都(みやこ)に山(やま)なく海(うみ)なく、鄙(ゐなか)には人材(ひと)なし
時季(じき)に適(かな)ふ地(ぢ)の食材(もの)斗(ばかり)を用(つか)ひ、
割烹(かつぱう)の手煆煉(てだれ)、凄腕(すごうで)の板前(いたまへ)の技藝(わざ)以(も)て
調理(てうり)するは、僕(やつかれ)望(のぞ)みてなほ叶(かな)はぬ儚(はかな)き願(ねが)ひ。

ある時(とき)、一天(そら)俄(には)かにかき曇(くも)り、電光(いなびかり)彼此(をちこち) を走(はし)りぬ。
雷鳴(いかづち)耳(みゝ)を劈(つんざ)き、激(はげ)しき雨(あめ)肩(かた)を濡(ぬ)らす。
驟雨(にはかあめ)が止(や)み、雲間(くもま)より覘(のぞ)くは蒼穹(あをぞら)。
霽(はれ)たる空(そら)には七色(なゝいろ)の虹(にじ)も、、。

不圖(ふと)耳(みゝ)を澄(す)ませば、虹(にじ)の彼方(かなた)より玉(たま)の御聲(みこゑ)。
『汝(なんぢ)卍老(まんじらう)、朕(わ)が託宣(ことのは)、努々(ゆめゆめ)疑(うたが)ふこと勿(なか)れ!』。
越中(えつちゆう)、近江(あふみ)に類稀(たぐひまれ)なる廛(みせ)あるに因(よ)り、
 疾(と)く疾(と)く朕(われ)の下(もと)に馳(は)せ參(さん)じて供(とも)すべし』と、、。

かくて、味神樣(あぢがみさま)の託宣(おつげ)に從(したが)ひ、
越中(えつちゆう)『一風庵』より『川柳』を經(へ)て、最後(いやはて)は近江(あふみ)の『徳山鮓』。
直走(ひたはし)る轎(くるま)は賤ヶ嶽(しづがたけ)近傍(ちかく)を過(す)ぎ、
北國街道(ほつこくかいだう)木之本宿(きのもとじゆく)に到(いた)れり。

能(よ)く往古(いにしへ)の街竝(まちなみ)の姿形(すがた)を留(とゞ)めながらも、
徒(いたづら)に流行(はやり)の『街興(まちおこ)し騒(さは)ぎ』に與(くみ)することもなく、
頑(かたく)なに己(おの)が生業(なりはひ)を墨守(まも)る。
周邊(まはり)の民家(いへ)も古(ふる)きと新(あたら)しきを問(と)はず、昔(むかし)ながらの普請(ふしん)。

軈(やが)て轎(くるま)は余呉湖(よごのうみ)に。
琵琶湖(びはこ)に連(つら)なると云ふとも、より高(たか)きところに在(あ)り、
山(やま)に圍(かこ)まれ、水(みづ)は澄(す)み、夥(あまた)の魚(うを)が棲(すみか)となす。
泥龜(すつぽん)、(むなぎ)など枚舉(かぞふ)るに遑(いとま)なし。

當家(こちら)『徳山鮓』の所在地(あるところ)、
余呉湖(よごのうみ)の畔(ほとり)、湖(うみ)を一望(いちばう)の下(もと)にする高臺(たかだい)。
亭主(あるじ)自(みづか)ら湖(うみ)に出(いで)ゝ魚(うを)ゝ漁撈(すなど)り、
山(やま)を登攀(よぢのぼ)りて季節(きせつ)の幸(さち)を採取(つ)む。

この日(ひ)轎(くるま)を下(お)りるや、桶(おけ)を手(て)にせし主人(あるじ)の姿(すがた)。
その中身(なかみ)はと檢(あらた)むれば、勢(いきほ)ひよく跳(は)ぬる香魚(あゆ)。
絶(た)へ間(ま)なく水(みづ)の流(なが)れ溢(あふ)るゝ籠(かご)には、
優(いう)に一貫目(いつくわんめ)を超(こ)す(すつぽん)に、さまざまなる大(おほ)きさの(むなぎ)。

湖畔(みづうみのほとり)の部屋(へや)へと誘(いざな)はれ、一安堵(ひとおちゐ)。
棚(たな)に所狹(ところせま)しと竝(なら)ぶは小泉武夫(こいづみたけを)の書籍(しよじやく)。
醗酵(はつかう)を説(と)きては右(めて)に出(いづ)る者(もの)なき賢者(かしこびと)。
不圖(ふと)窗玻璃(まどがらす)を覽 (み)るに、守宮(やもり)を髣髴(おもは)す小(ちひ)さな蛙(かはづ)。

最初(いやさき)は玉薤(さけ)擇(えら)み。
迷(まよ)ふことなく、『賤ヶ嶽(しづがたけ)の七本槍(しちほんやり)』など二種(ふたくさ)に。
吭(のんど)潤(うるほ)さんと(みづ)を口(くち)にするや、忽地(たちまち)絶句(ことばをうしな)ふ。
甘(あま)く清(きよ)らかなること、かの八功徳水(はちくどくすい)と錯覺(あやま)つばかり。

此度(こだみ)口(くち)にせし美味(うまきもの)數(かず)ある中(なか)に、
就中(わきても)感慨(おもひで)深(ふか)きはこの清水(しみづ)。
この水(みづ)の前(まへ)には、吟釀酒(たくみにかもされたるさけ)すら重(おも)く、甜(あま)きに過(す)ぎ、
舌(した)に纏(まと)はるほど。

この夜(よ)の宴(うたげ)は余呉湖(よごのうみ)の前面(むかひ)より昇(のぼ)る月(つき)を愛(め)でつゝ、、。
雲(くも)に霞(かす)む十三夜(じふさんや)の圓(まどか)なる朧月(をぼろづき)も、
軈(やが)て煌々(くわうくわう)たる光(ひかり)を放(はな)ち、その姿(すがた)を湖(うみ)に映(うつ)す。
宴(うたげ)の菜(な)の仔細(しさい)は冩眞(しやしん)に審(つばら)なればこれを省(はぶ)く。

過半(おほかた)余呉湖(よごのうみ)と丹生川(にぶがは)にて漁獵(すなど)れたる魚(うを)。
すなはち、香魚(あゆ)に泥龜(すつぽん)、煮頃鮒(にごろぶな)に琵琶鱒(びはます)これなり。
大(おほ)きさに合(あ)はせて調理法(やりかた)を選(えら)み、
吾儕(わなみ)が味覺(した)を寸毫(つゆ)飽(あ)きさせぬは、偏(ひとへ)に主人(あるじ)の力量(うで)。

疱丁捌(はうちやうさば)きより比類(たぐひまれ)なる技藝(わざ)の巧(たく)みさを窺(うかゞ)ふは、
宛然(あたかも)闇夜(やみよ)に火(ひ)を見(み)靜夜(せいや)に雷鳴(いかづち)を聞(き)くがごとし。
それを證明(しめ)すは甚(いと)輒(たやす)きことなれど、
一(ひと)つ例(ためし)を舉(あ)ぐれば『胡瓜(きうり)の"けん"=纖切(せんぎ)り』。

(むなぎ)は、『落(お)とし』、『白燒(志らや)き』、『蒲燒(かばや)き』、『鰻雜炊(うざうすい)』と、
手(て)を變(か)へて口(くち)を欺(あざむ)き、品(しな)を變(か)へて目(め)を愉(たの)します。
大鰻(おほむなぎ)は炙(あぶ)りて齒應(はごた)へを殘(のこ)し、
小(ちひ)さめの口細鰻(くちぼそむなぎ)は雜炊(ざうすい)として絹(きぬ)の滑(なめ)らかさを留(とゞ)む。

山椒(さんせう)の最(いと)も麗(うるは)しき(みどり)には思(おも)はず瞠目(めをみは)り、
暫(しば)し絶句(ことばをうしな)ふ他(ほか)に方策(すべ)はなし。
實(げ)に、『一風庵』の(たで)に優(まさ)るとも劣(おと)らぬ鮮(あざ)やかさ。
この青(あを)さを保(たも)つは纔(わづ)かに五日(いつか)とも十日(とほか)とも云ふ。

揚(あ)げ物(もの)ゝ冴(さ)へは天麩羅職人(てんぷらしよくにん)に遜色(そんしよく)なし。
傍(かたは)らなる味神樣(あぢがみさま)さしおきて、
敢(あ)へて出汁(だし)と鹽梅(あんばい)を語(かた)るは、烏滸(をこ)がましきかぎり。
主人(あるじ)が技藝(わざ)の由緒(すぢめ)正(たゞ)しきは勿論(いふもさら)なり。

白眉(はくび)は當店(こちら)の招牌(かんばん)たる鮒鮓(ふなずし)。
米(こめ)の飯(いひ)は元(もと)の容(かたち)をとゞめ、
癖(くせ)少(すく)なくして能(よ)く蜂蜜(はちみつ)とも調和(てうわ)。
粥(かゆ)のごとき飯(いひ)をかくも薄(うす)く切(き)るとは驚歎(おどろ)くほかになし。

亭主(あるじ)に據(よ)らば、よき頃合(ころあ)ひを見計(みはか)らひて冷凍(こほら)せ、
これを纔(わづ)かに解凍(とか)したる後(のち)薄(うす)く削(そ)ぎたるものとか。
(いひ)の凍結凝乳(あいすくりん)は飯粒(めしつぶ)柔(やは)らか。
匂(にほ)ひを伴(とも)ひ癖(くせ)も強(つよ)め。

元來(もとより)鮒鮓(ふなずし)なるもの、
土地(とち)に因(よ)り家(いへ)に從(したが)ひ、千差萬別(さまざま)。
當店(こちら)、幾種(いくゝさ)もの仕込(しこ)みを施(ほどこ)し、
菜(しな)ごとに最適(もつともよくあ)ふ漬(つ)かり工合(ぐあひ)の飯(いひ)を選(えら)むとなむ。

乾酪(ちいず)・蕃茄(とまと)に橄欖油(おりぶあぶら)まで用(つか)ひこなすは意太利(いたり)の、
蒸(む)し物(もの)に油(あぶら)注(そゝ)ぐは唐山(もろこし)傳來(わたり)の技法(わざ)。
山椒(さんせう)や鮓(すし)の旬(しゆん)を逃(のが)すまじと、冷凍(れいとう)すら厭(いと)はぬは、
主人(あるじ)が研究(けんきう)の賜物(たまもの)にして、類稀(たぐひまれ)なる力量(うで)の證明(あかし)

そもそも『熟(な)れ鮓(ずし)』なるは最(もつと)も古(ふる)き鮓(すし)。
その源流(みなもと)を温(たづ)ぬれば遠(とほ)く震旦(もろこし)の南方(みなみ)にあり。
鹽(しほ)を施(ほどこ)し飯(いひ)で釀(かも)し、その身(み)、時(とき)には飯(いひ)も啖(くら)ふ
これに較(くら)ぶれば、握鮓(にぎりずし)はおろか、押鮓(おしずし)ですら即製物(まがひもの)。

(すし)』とは元來(もとより)鹽辛(しほから)のごときものなれば、
すし』に『』の字(じ)當(あ)つるは誤(あやま)りにて、『徳山鮓』の『』こそ正(たゞ)しきもの。
握鮓(にぎりずし)の嚆矢濫觴(さきがけ)『與兵衞鮓(よへゑずし)』が末裔(すゑ)、
小泉迂外(こいづみうがい)こと小泉清三郎(こいづみせいざぶらう)もまたこの字(じ)を用(つか)ふ。

冷藏(れいざう)・流通(りうつふ)の整(とゝの)ひたる現今(いま)、
紛(まぎ)れもなく、握鮓(にぎりずし)こそ最(もつと)も"(せい)"なる鮓(すし)。
その威光(ひかり)、京坂(けいはん)、關八州(くわんはつしう)、蝦夷地(えぞち)はもとより、
普(あまね)く四海(しかい)の隅々(すみずみ)を照(て)らす勢(いきほ)ひ。

甚(いと)"(そ)"なる熟(な)れ鮓(ずし)はもはや風前(かぜのまへ)の燈火(ともしび)に異(こと)ならず。
その熟(な)れ鮓(ずし)にかくも"精(せい)にして"新(あら)たなる技藝(わざ)を凝(こ)らすは
宛然(あたかも)、古代魚(しいらかんす)を池(いけ)に放(はな)ちて錦鯉(にしきごひ)となし
あるいは、鄙娘(ゐなかむすめ)に化粧(けはひ)施(ほどこ)して太夫(たいふ)となすに似(に)たり

口味(あぢ)と技藝(わざ)の凄(すご)さに一點(いつてん)の曇(くも)りもあらねど、
客(かく)些(いさゝ)か多(おほ)かりしかば、主人(あるじ)の遽(いそがは)しきが玉(たま)に瑕(きず)
廛(みせ)の設(しつら)へ、居心地(ゐごゝち)、心盡(こゝろづ)くしの管待(もてなし)ぶりでは、
一風庵』と、『月(つき)と鼈(すつぽん)』、『挑燈(ちやうちん)に鐘(つりがね)』ほどの相違(たが)ひ。

悉(ことごと)く平(たひ)らげ、啖(くら)ひ盡(つ)くし、玻璃盞(こつぷ)の水(みづ)まで飮干(のみほ)し、
亭主(あるじ)と談笑(よもやまばなし)にうち興(きやう)ずること霎時(しばし)。
已(すで)に相知(なじみ)の味神樣(あぢがみさま)とは宛然(あたかも)舊友(ふるきはらから)のごとし。
相互(たがひ)に記念冩眞(きねんしやしん)を撮(と)りあひ、再訪(さいはう)を誓(ちか)ひて辭別(いとまごひ)。

  • 亭主(あるじ) 【撮影許可濟】
  • "てり鮒(ぶな)"細作(ほそづく)り
  • 鴨(かも)

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4位

魚菜料理 縄屋 (峰山 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 ¥10,000~¥14,999

2012/07訪問 2015/04/26

蟹盡(かにづ)くし 宴會(うたげ)も酣(たけなは) 燒蟹(やきがに)を ほぐして啖(くら)ひ 舐(ねぶ)り貪(むさぼ)る

【2012-07-19追記】:
此度(こだみ)は"鳥貝(とりがひ)盡(づ)くし"の晝飧(ひるげ)。
最初(いやさき)に麥茶(むぎちや)とおぼしき冷たき水にて咽喉(のみど)を潤(うるほ)す。
傍(かたは)らのには"婦人畫報"なる繪草紙(ゑざうし)。
勿驚(おどろくなかれ)、當家(こちら)と夕飧(ゆふげ)の『しのはら』が同じ頁(ぺいじ)に竝ぶ。

先づは玻璃盞(ぐらす)なる"海膽(うに)"、"蕃茄(とまと)"、"西葫蘆(ずッきいに)"。
次いで"汁椀(しるわん)"。
その蓋(ふた)を檢(あらた)むるに、藥玉(くすだま)あしらひたる輪島塗(わじまぬり)。
中(なか)には蒸鮑(むしあはび)、唐墨(からすみ)、銀耳(しろきくらげ)。

扨(さて)、その次に控(ひか)へしは待ちかねたる宮津(みやつ)の"鳥貝(とりがひ)"。
舞鶴(まひづる)の鳥貝(とりがひ)は築地市場(つきぢ)でも夙(つと)に名高(なだか)く、
名(な)のある鮨屋(すしや)にしてこれを扱(あつか)はざるはなし。
あるじに據(よ)らば、宮津(みやつ)の鳥貝(とりがひ)は舞鶴(まひづる)をも凌ぐと、、。

そもそもこの貝を"鳥貝(とりがひ)"と號(よびな)すはその形状(かたち)にあり。
殼(から)より取出(とりいだ)すに、その容(さま)、鳥の横顏(よこがほ)に似(に)る。
憐(あはれ)、貝は已(すで)に剥(む)かれて貝殼(かひがら)の中(なか)に畏(かしこ)まる。
これを堪能(あぢは)ふに、指身(さしみ)と炙物(やきもの)ゝ二種(ふたくさ)。

就中(わきても)珍奇(めづら)しきは鳥貝(とりがひ)の(きも)。
豫(かね)てその美味(うまきあぢ)は音(おと)に聞(き)くところなれど、
口(くち)にするのも目(め)にするのもこれが初(はじめて)。
色、鮑(あはび)に似て、味、皮剥(かはゝぎ)に迫り、鮃(ひらめ)を髣髴(おもはす)

"甘鯛(あまだひ)が指身(さしみ)"は生(なま)に見えて生(なま)にあらず。
その身、元來(もとより)尤(いと)柔(やは)らかく水氣(みづけ)に富むものなれば、
鹽氣(しほけ)を感(かん)じさせぬほどに振鹽(ふりじほ)を施(ほどこ)す。
鹽(しほ)は餘所(よそ)の鮓店(すしや)・割烹(かッぱう)より聊(いさゝ)か淺目

扨(さて)、「今年(ことし)は炙(や)き倒(たお)して、、」と胸を張る(すゞき)。
皮には細(こま)やかなる庖丁(はうちやう)が施(ほどこ)され、みごとなる炙目(やきめ)。
しかはあれど、鱸(すゞき)は鱸(すゞき)
如何(いか)なる手煆煉(てだれ)たりとも、雀(すゞめ)は鷹(たか)たり得(え)ず

(はまぐり)の火入(ひい)れは完璧(かんぺき)。
火が通(とほ)りてなほ、隅々(すみずみ)まで柔(やは)らかさを保つ素晴(すば)らしさ
その技藝(わざ)、名(な)のある鮨職人(すしゝよくにん)のそれに似(に)るも、
俗(よ)に云ふ"漬込(つけこ)み"とは異(こと)なる。

この界隈(あたり)で"赤水(あかう)"と號(よびな)す"雉子羽太(きじはた)"。
築地(つきぢ)では"小赤豆羽太(あづきはた)"とも云ひ、羽太(はた)の中でも最高價(さいかうか)。
本朝(わがくに)ばかりか、震旦(もろこし)にてもこれを大(おほ)いに珍重(おもん)ず。
その身、色白(いろしろ)く、口味(あぢ)と締(しま)りは鰒(ふく)にも迫(せま)る

【2012-05-03追記】:
春も酣(たけなは)なれば、それに相應(ふさは)しき海山(うみやま)の幸(さち)盡くし。
主人(あるじ)、裏山(うらやま)に菜を摘み、前濱(まへはま)に魚(うを)を求(もと)む
最初(いやさき)に掃愁箒(さけ)をもらひ、舌を洗(あら)ひて吭(のみど)を潤(うるほ)す。
おもむきある杯(さかづき)には金繼(きんつ)ぎがほどこされ、あぢはひ一入(ひとしほ)。

赤貝(あかゞひ)と蕨(わらび)の小皿(こざら)に續(つゞ)き汁物椀(しるものわん)。
椀種(わんだね)は鯛白子(たひしらこ)と山獨活(やまうど)に丸餠(まるもち)。
鯛(たひ)は雌(めす)に比(くら)べ雄(をす)が少なく、白子(しらこ)をみるも稀(まれ)。
その溶(と)くるがごとき口味(あぢ)は勿論(いふもさら)なり。

山獨活(やまうど)は土より纔(わづ)かに伸(の)びたところをすかさず摘み採りしもの。
皮(かは)を剥(む)かず、薄(うす)く削(そ)ぎてこれを用(つか)ふ
椀(わん)の蓋(ふた)を去り、手に拿(も)ち、これを口近(くちゝか)くに寄するや、
頓(にはか)に、馨(かぐは)しき香(かをり)鼻竅(はな)を穿(うが)つ。

吸口(すひくち)に敢(あ)へて時季(じき)の木(き)の芽(め)を用(つか)はざるは、
その力量(うで)慥(たしか)なる證(あかし)
木の芽の強(つよ)き香(かをり)は獨活(うど)の芳香(かぐはしきかをり)を損(そこ)なふ。
實(げ)に、これほどに魂(たましひ)を搖(ゆ)さぶる獨活(うど)も稀有(まれ)

とは云へ、何(なに)より素晴(すば)らしきは出汁(だし)。
以爲(おも)ふに、出汁(だし)は椀種(わんだね)を引(ひ)き立(た)つる黒衣(くろご)
それを辯(わきま)えず妄(みだ)りに強(つよ)き出汁(だし)を引(ひ)くは
主客(しゆきやく)・天地(あまつち)を逆(さかしま)にするに等(ひと)し

加旃(しかのみならず)、その庖丁(はうちやう)捌(さば)きは、もはや神業(かみわざ)
およそ蕎麥切(そばきり)の巧拙(よしあし)は、蕎麥(そば)を口(くち)にするまでもなく、
葱(ねぎ)の小口切(こぐちぎ)りを檢(あらた)むれば自明(おのづとあきらか)。
かゝる鋭き切味(きれあぢ)を誇るも、"本燒(ほんやき)"ならで"(かすみ)"とか。

次いで、野山(のやま)に分け入り手づから摘(つ)みたる菜蔬(あをもの)。
皿には"大葉擬寶珠(うるい)"、"甘野老(あまどころ)"、"片栗(かたくり)"の三品(みしな)。
"甘野老(あまどころ)"なる菜は見るも聞くも啖(くら)ふもこれが初(はじめて)。
"片栗(かたくり)"には紫色(むらさきいろ)のやむごとなき花瓣(はなびら)も、、。

菜の色、碧(みどり)をなし、齒應(はごた)へは硬からず柔(やは)らかに過(す)ぎず
心(こゝろ)野山を驅け、春の息吹(いぶき)を存分(こゝろゆくまで)堪能(あぢは)ふ。
あるじにその旨を傳(つた)ふるや、「たゞ湯掻(ゆが)きたるばかり」と鰾膠(にべ)もなし。
やはり只者(たゞもの)にあらず。

"つくり"、すなはち"刺身(さしみ)"は"甘鯛(ぐじ)"に"(あはび)"。
"鮑(あはび)の口"なるを啖(くら)ふは生(む)まれてよりこれが初(はじめて)。
藥味(やくみ)は伊豆(いづ)の山葵(わさび)。
各々(おのおの)梅割り醤油(じやうゆ)、鮑(あはび)肝醤油(きもじやうゆ)にて味はふ。

この日の白眉(はくび)は"吭黒(のどぐろ)燻製(くんせい)"。
巷(ちまた)に溢(あふ)るゝ所謂(いはゆる)"燻製(くんせい)"とは大いに異(こと)なり、
櫻(さくら)の木屑(きくづ)以(も)て甚(いと)輕(かろ)く燻(いぶ)したるもの
一噛みするや、脂(あぶら)溢れて馥郁(ふくいく)たる香(かをり)四方(よも)に漂ふ

生(なま)かと見紛(みまが)ふばかりの火加減(ひかげん)にも脱帽(だつぼう)。
"喉黒(のどぐろ)"、すなはち"赤鯥(あかむつ)"の燒物、干物(ひもの)ゝ類(たぐひ)は、
いくたびと口にせし前例(ためし)こそあれ、これほどの佳味(よきあぢ)は初(はじめて)。
櫻にせよ藁(わら)にせよ、煙(けぶり)で燻すは魂(たましひ)を奪ふ妖刀(えうたう)。

惜(を)しむらくは、その身(み)のみにて首(かうべ)なかりしこと
東道(あるじ)に據(よ)らば、
「まかなひとなすが常にて、わが娘(むすめ)嗜(この)みて目玉を啖(くら)ふ」と、、。
滿三歳(まんさんさい)にしてその美味(うまきあぢ)を知るとは末恐(すゑおそ)ろしき限り。

"〆鯖(さば)"も驚(おどろ)きの品(しな)。
甚(いと)淺(あさ)き〆と思(おも)ひきや、さにあらず。
輕(かろ)く鹽(しほ)を打ち丸一日(まるいちにち)置き、酢に小半晌(こはんとき)
修業先(しゆげふさき)とは異(こと)なる獨自(おのが)流儀(やりかた)とか。

そもそも"(しゆん)"なるは、必(かなら)ずしも時季(じき)に依(よ)らで、
專(もつぱ)ら己(おの)が眼力(まなこ)に頼(たよ)る
これ、この時季(じき)敢へて眞鯖(まさば)を用(つか)ふ所以(ゆゑん)なり。
この地に根差し、習得(ならひおぼ)へし技藝(わざ)すら反古(ほご)にするは見上げたもの。

"櫻鱒(さくらます)"と"和蘭芥子(くれそん)"の鍋(なべ)また、
旨味(うまみ)が汁(しる)に逃げ、菜の萎(しを)るゝ前(まへ)に引き揚げ、
これを吾儕(わなみ)が前(まへ)に供(いだ)す。
火を巧妙(たくみ)に操る者(もの)、能(よ)く人心(ひとのこゝろ)を掴(つか)む

この出汁(だし)に(たけのこ)、
それもみづから鍬(くは)を持ち掘出(ほりいだ)せしを滲(ひた)してこれを堪能(あぢは)ふ。
(かます)の土鍋飯(どなべめし)には香(かう)の物(もの)。
尤(いと)細(こま)やかなる味はひの"山蕗(やまぶき)"には目(め)から鱗(うろこ)。

最後(いやはて)は"蓬餠(よもぎもち)"を髣髴(おもはす)"氷菓子(そるべ)"にて〆。
話、海鰻(はむ)の骨切(ほねぎ)り鰹節削(かつをぶしけづ)りの刄(は)から、
銀杏樹(いちやう)の俎(まないた)煤竹(すゝだけ)の利休箸(りきゆうばし)に及び、
名殘(なごり)を惜(を)しみつゝ辭別(いとまごひ)。

【2011-11-29記】:
ありがたき誘ひありて、紅葉狩(もみぢが)りで賑はふ京師(みやこ)を經て丹後(たんご)に。
此度(こだみ)の狙(ねら)ひは解禁(かいきん)間(ま)もなき"楚蟹(すはえがに)"。
生憎(あやにく)名にし負(お)ふ"間人蟹(たいざがに)"は手に入るゝこと能(あた)はで、
近くの但馬(たじま)津居山(つゐやま)の湊(みなと)に揚がりし楚蟹(すはえがに)"。

店鋪(みせ)は亭主(あるじ)の家(いへ)。
見事なる普請(ふしん)なれど、賈内(なか)想定外(おもひのほか)に近代的(あらたし)
照明(あかり)、(うつは)、(てえぶる)は勿論(いふにおよばず)、
厠(かはや)の花(はな)一輪(いちりん)に至るまでをさをさ怠慢(おこたり)なし。

櫃臺(かうんた)は(けやき)の一枚板(いちまいゝた)。
(ひのき)は水に強く燈火(あかり)を柔(やは)らかに照り返す材木(き)。
とは云へ、今や木曾(きそ)ですら佳(よ)きものは稀(まれ)にて、
厚く長き柾目板(まさめいた)ともなると黄金(こがね)にも等(ひと)しき高價格(たかね)。

古來(いにしへより)(けやき)は、
箪笥(たんす)廊下(ほそどの)に用ふが風習(ならひ)なれど、 これもなかなか。
檜(ひのき)に較(くら)べて色淺黒く、鋪内(なか)の暗きが玉(たま)に瑕(きず)。
眼前(めのまへ)には俎(まないた)、右(めて)には紀州備長炭が熾(おこ)る。

主人(あるじ)は鬚面(ひげづら)の四十(よそぢ)前(まへ)。
倩(つらつら)その面(おもて)を眺め、眼精(まなこ)の麗(かゞや)きを窺(うかゞ)ふに、
現今(いま)をときめく伊太利料理人(いたりあれうりにん)のごとき風貌(つらがまへ)。
脇(わき)に控(ひか)へ彼(かれ)を補佐(たす)くるは御内儀(おかみ)に母堂(はゝおや)。  

この夜(よ)の蟹(かに)を主(おも)とした獻立(こんだて)は、
"先附(さきづけ)"、"茶碗蒸(ちやわんむ)し"、"造(つく)り"、""、"燒蟹(やきがに)"、
"口直(くちなほ)し"に蕎麥(そば)と揚げ物を挾(はさ)み、"蟹未醤(かにみそ)"、
"蟹鍋(かになべ)"、〆に"水菓(みづぐわし)"、合はせて大約(およそ)二萬圓(にまんゑん)。

"先附(さきづけ)"は"鰤(ぶり)の熟(な)れ鮓(ずし)"。
鰤(ぶり)の姿形(すがたかたち)も見えぬほどに長期(ながら)く漬けられたる貨物(しろもの)。
どれが飯(いひ)やら鰤(ぶり)やら見當(けんたう)も附(つ)かず
さりとて近江(あふみ)鮒鮓(ふなずし)の飯(いひ)とも異なる風味(あぢかをり)

"栗(くり)とマッシュルームの茶碗蒸(ちやわんむ)し"にも吃驚(びつくり)。
先(ま)づは(うつは)。
金繼(きんつ)ぎ施(ほどこ)されたる味はひ深(ぶか)き骨董品(ふるだうぐ)。
茶碗蒸(ちやわんむし)に胡椒(こせう)と云ふ摩訶不思議なる組合はせ。

"造(つく)り"は、平鱸(ひらすゞき)、(つぶ)に(かつを)叩(たゝ)き。
土佐醤油(とさじやうゆ)とぽん酢醤油(ずしやうゆ)の二種(ふたくさ)。
戻り鰹(がつを)の脂滲(にじ)みて、驚(おどろ)くほどぽん酢(ず)に馴染(なじ)む
組(く)み合(あ)はせは思(おも)ふが儘(まゝ)。

"津居山蟹(つゐやまがに)"は數(かず)ある"楚蟹(すはえがに)"の一(ひとつ)。
居多(あまた)蟹蛭(かにびる)が甲羅(かふら)を覆(おほ)ひ、
僕等(やつかれら)をして上質(よ)き蟹(かに)なるを窺(うかゞ)はしむ。
備長炭(びんちやうたん)による炙り方を變(か)へ、次々(つぎつぎ)目の前に、、。

最(もつと)も印象(いんしやう)深(ぶか)きは半生(はんなま)の脚肉(あしにく)
噛み締め舐(ねぶ)るほどに甘味(あまみ)口中(くちのなか)へと奔(ほとばし)る
その滑らかにして瑞々(みづみづ)しき味覺(あぢはひ)は言舌(ごんぜつ)に盡くしがたし
身離れがよく、出汁(だし)の素晴(すば)らしき蟹鍋(かになべ)これに次(つ)ぐ。

蟹未醤(かにみそ)は玉薤(さけ)を加へ、炭火(すみび)にかけてゆるりと炙りたるもの。
すこぶる美味(びみ)なれど、蟹未醤(かにみそ)に限らば大閘蟹(どざは)が雋(すぐ)る
皿(さら)の酢橘(すだち)は用(つか)ふまでもなし。
面取りを施(ほどこ)さず、眞二(まふた)つに切るは主人(あるじ)の哲學(かんがへ)か。

修業先(しゆげふさき)にて習得(おぼ)えし技藝(わざ)と云ふ"掻揚げ"も驚歎(おどろき)。
鬼蝦(をにえび)、百合根(ゆりね)に香菜(かめむしさう)加へたるもの。
本朝(わがくに)では、三(み)つ葉(ば)、芹(せり)ならいざ知(し)らず、
蕺草(どくだみ)のごとき強き香(かをり)を放つ香菜(かめむしさう)を忌み嫌ふ

胡椒(こせう)と云ひ、香菜(かめむしさう)と云ひ、奇を衒(てら)ふものかと疑へど、
その慥(たしか)なる出汁(だし)に、竝々ならぬ技量(うで)の冴えを窺(うかゞ)ひ知る。
鍋(なべ)の出汁(だし)は蟹(かに)と利尻昆布(りしりこんぶ)のみとか。
挽きぐるみを延し細(ほそ)く均一(ひとし)く打たれたる蕎麥(そば)もまた然(しか)り。

"海老芋(えびいも)"にかゝる手間隙(てまひま)も月竝(つきなみ)にあらず。
先(ま)づは薄味(うすあぢ)に煮(た)き、これを油(あぶら)で揚(あ)げ
さらに炭火(すみび)でゆるりとこれを炙(あぶ)る
紀州備長炭と云へど、火勢(ひのいきほひ)衰へ、ほどよき火加減(ひかげん)に、、。

香の物、赤出汁(だし)の未醤椀(みそわん)も寸毫(つゆ)手拔(てぬ)かりなし。
惜(を)しむらくは米(こめ)の飯(いひ)些(いさゝ)か柔(やは)らかめなること。
洛(みやこ)ではこれが常なるも、僕(やつかれ)嗜(この)むは粒が立つほどの飯(めし)。
さはあれ、芳香(よきかをり)鼻竅(はな)を穿ちて、忽地(たちまち)吭(のみど)を過ぐ。

"水菓(みづぐわし)"は林檎(りんご)の氷菓(そるべ)
これまた驚歎(おどろき)を禁(きん)じ得(え)ず。
出來合(できあ)ひの氷菓(そるべ)とは異(ことな)り、擂り卸しの林檎(りんご)が、
こちらでは生のごとく、こなたでは氷の粒(つぶ)となりて躍動(はねをど)る。

押(お)し竝(な)めて、鄙(ひな)には稀(まれ)なる料理茶屋(れうりぢャや)
地(ぢ)の時季(じき)に適(かな)ふ食材(しよくざい)ばかりを択(えら)み、
洛(みやこ)で習得(ならひおぼ)えし技藝(わざ)を惜しげもなく注入(そゝぎこむ)
これ、かの餘呉湖(よごのうみ)畔なる『徳山鮓』に彷彿(さもにた)り。

  • (説明なし)
  • 活花(いけばな)
  • 先附(さきづけ)

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5位

川柳 (不二越、栄町、稲荷町 / 薬膳、オーガニック、日本料理)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥15,000~¥19,999

2011/08訪問 2014/07/16

川柳は 越中富山(ゑつちうとやま)の 藥膳(くすりめし) うるか丸めて 値千金

僕(やつかれ)、先祖(とほつおや)が狂句(きやうく)で名(な)をなし、
谷中(やなか)の菩提寺(てら)には、鴨居(かもゐ)に今猶(いまなほ)句會(くゝわい)の額(がく)、
庭(には)に辭世(じせい)の句碑(くひ)を遺(のこ)す。
されば俗(よ)に『川柳(せんりう)』と號(よびな)す狂句(きやうく)には淺(あさ)からぬ縁(ゆかり)あり。

當家(こちら)、その屋號(やがう)『川柳(せんりう)』となし、三代續(さんだいつゞ)く料理茶屋(れうりぢャや)。
先代(せんだい)までは月竝(つきな)みなる割烹(かつぱう)なりしが、
三代目(さんだいめ)大島政文(おほしま万さふみ)親方(おやかた)となりて以來(よりこのかた)、
只顧(ひたすら)『藥膳(やくぜん)』の道(みち)を窮(きは)めんとす。

勿論(いふまでもなく)、本朝(ほんてう)で云ふ『藥膳(やくぜん)』とは、
震旦(もろこし)に古(ふる)くより傳承(つた)はる祕技(ひめわざ)にて、
正(たゞ)しくは『食療(しよくれう)』と稱(とな)ふ。
和食(わしよく)にこれを應用(おうやう)せし魁(さきがけ)こそ大島政文(おほしままさふみ)親方(おやかた)

その長(なが)きに亙(わた)る惡戰苦鬪(あくせんくとう)・苦心慘憺(くしんさんたん)ぶりは、
彼(かれ)が著作(ちよさく)に審(つまびらか)。
親(おや)の諫(いさ)めも用(もち)ゐずに割烹(かつぱう)の殼(から)を打破(うちやぶ)り、
巷(ちまた)の謗(そし)りに耳(みゝ)塞(ふさ)ぎて調理(てうり)の常石(じやうせき)を覆(くつがへ)す。

まさしく、『和尚打傘無髮(法)無天(やりたいはうだい)』。
唐山(もろこし)・朝鮮(てうせん)は勿論(いふにおよばず)、遠(とほ)く天竺(てんじく)まで、、。
柚餠子(ゆべし)は(うるし)の力(ちから)に閃(ひらめ)き、
揚(あ)げ物(もの)は中華(もろこし)の割烹調理法(やりかた)に倣(なら)ふ。

あれやこれやと試行錯誤(まよひつ)ゝ、研鑽(けんさん)積(つ)むこと幾星霜(いくせいさう)。
竟(つひ)に、その奧義(あうぎ)を窮(きは)め、
今(いま)や押(お)しも押(お)されもせぬ斯界(このみち)の第一人者(だいゝちにんしや)
藥膳革命(やくぜんかくめい)』かく成就(なり)ぬ。

閑話休題(それはさておき)、この日(ひ)の獻立(こんだて)。

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杜仲藥茶(とちうやくちや)
・八年物(やとせもの)鮎(あゆ)肝(きも)うるか丸藥風(ぐわんやくふう)川貝母(せんばいも)*)添(ぞ)へ
白蝦(しろえび)茯苓(ぶくりやう)揚(あ)げ、銀杏(ぎんなん)、
  藥膳(やくぜん)おかき ←--海松子(まつのみ)、枸杞子(くこ)、南瓜子(かぼちやのたね)
欝金(うこん)螢烏賊(ほたるいか)南蠻漬(なんばんづけ)
炊合(たきあ)はせ   ←翡翠(ひすい)を髣髴(おもはす)冬瓜(たうがん)
海蠃(ばいがひ)煮物(にもの)

紅燒海參(きんこふくめに)
鐵刺(てつさ)
能登(のと)の岩牡蠣(いはがき)
紅燒鮑魚(にあはび)

神通川(じんづふがは)"かくぶつ"**)鹽燒(しほやき)
庄川(しやうがは)香魚(あゆ)鹽燒(しほやき)  +黄蓮酢(わうれんず)?
・菜蔬(あをもの)煮凝(にこゞ)り

藥膳(やくぜん)柚餠子(ゆべし)、河豚(ふぐ)煮凝(にこゞ)り、螢烏賊(ほたるいか)干物(ひもの)、
 "いなだ"***)、"(さぢ)おもだか"滲(ひた)し、輪胡瓜(わきうり)

・立山(たてやま)、紅燒熊掌(くまのたなぞこに)

松茸(まつたけ)に(たひ)の汁椀(しるわん)

・炸(さそりからあげ)、炸人參(あげてうせんにんじん)

索麪(むぎなは)

甜瓜(めろん)

拔絲地瓜(さつまいもあめだき)
雪茶(ゆきちや)

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押(お)し竝(な)めて、漢方藥(かんぱうやく)の目立(めだ)つは諾(うべ)なるかな。
目(め)に附(つ)くところでも、
杜仲茶(とちうちや)、川貝母(せんばいも)、茯苓(ぶくりやう)、海松子(まつのみ)、枸杞子(くこ)、
欝金(うこん)、黄蓮(わうれん)?、雪茶(ゆきちや)、、。

一(ひと)つとして藥臭(くすりくさ)き品(しな)はなく、瞬(またゝ)く中(うち)にこれを平(たひ)らぐ。
蓋(けだ)し、調理(てうり)の力量(うで)、組(く)み合(あ)はせの妙(めう)と云ふべし。
鮎(あゆ)の酢(す)の色鮮(いろあざ)やかならざるを訝(いぶか)しく思(おも)ひしかど、
風習(ならひ)の蓼(たで)ならで、あるいは黄蓮(わうれん)か?

今一(いまひと)つ顯著(きはだ)ちたる特徴(しるし)は、唐山(もろこし)の技藝(わざ)
鶏卵(たまご)の白身(しろみ)を用(つか)ひて物(もの)を揚(あ)げ、
海參(きんこ、ほしなまこ)を戻(もど)して『紅燒海參(きんこしようゆふくめに)』となす。
紅燒熊掌(くまのたなぞこに)』、『拔絲地瓜(さつまいもあめだき)』は勿論(いふもさら)なり。

色淡(いろあは)きにより、『熊掌(くまのたなぞこ)』を『紅燒(ほんしャお)』とするは誤(あやまり)か?
拔絲地瓜(さつまいもあめだき)』は本朝(ほんてう)『大學芋(だいがくいも)』とは別物(べつもの)。
鍋(なべ)で糖蜜(みつ)からめたる地瓜(いも)を客前(かくまへ)で水(みづ)に取(と)るが風習(ならひ)。
人參(てうせんにんじん)に蜂蜜(はちみつ)加(くは)ふるは、朝鮮(てうせん)の智慧(ちゑ)。

熊掌(くまのたなぞこ)』は人生初(うまれてはじめて)。
無論(いふまでもなく)、滿漢全席(まんかんぜんせき)でも高名(なだか)き龍肝豹胎(ちんみ)。
仔熊(こぐま)なれば臭(くさ)みもなく、濃厚(こ)き旨味(うまみ)口中(くちのなか)に奔(ほとばし)る。
つけあはせの豆芽(もやし)は、名(な)のある厨師(いたまへ)の『紅燒扒翅(ふかひれ)』にあしらふがごとし。

更(さら)には、乾燥(かんさう)と長期熟成(ちやうきじゆくせい)。
百年(もゝとせ)の保存(ほぞん)を目指(めざ)す『柚餠子(ゆべし)』、八年物(やとせもの)ゝ『うるか』、
螢烏賊(ほたるいか)の干物(ひもの)。
その齒應(はごた)へと深(ふか)き味(あぢ)はひには、眼精(め)から鱗(うろこ)の落(お)つる感慨(おもひ)。

(かじか)の(わた) 、雲南産(うんなんさん)と云ふ松茸(まつたけ)の芳香(よきかをり)、
ほどよき甜瓜(めろん)の熟(う)れ工合(ぐあひ)、能登(のと)の岩牡蠣(いはがき)の大(おほ)きさ、、、。
これら、『藥膳(やくぜん)』ならねど、主人(あるじ)の誠心(まごゝろ)の傳(つた)はる逸品(よきしな)。
時季(じき)に適(かな)ふ地(ぢ)の物(もの)はそれだけでありがたきもの。

三代目主人(さんだいめ)大島政文(おほしま滿さふみ)、
學(まな)びながらも眞似(まね)に陷(おちい)らず、己(おの)が道(みち)を開拓(きりひら)く
思(おも)ひ込(こ)みに囚(とら)はれず、敢(あ)へて不味(まづ)きもの口(くち)にするを厭(いと)はず
俗(ぞく)なる言舌(ごんぜつ)を覆(くつがへ)し、新(あらた)なる口味(あぢ)を創造(つくりだ)さんとす

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*)http://www.yakuzenjoho.net/chuyaku/baimo.html
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%82%AC%E3%82%B5%E3%83%A6%E3%83%AA
**)(かじか)のことなり
 http://daiwa.globeride.co.jp/fish/rever/kajika.html
***)鰤干物(ぶりひもの)ゝことなり

  • (説明なし)
  • 欝金(うこん)螢烏賊(ほたるいか)南蠻漬(なんばんづけ)
  • 海蠃(ばいがひ)煮物(にもの)

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6位

旅舎右馬允 (大鹿村その他 / 日本料理、オーベルジュ)

1回

  • 夜の点数: 4.4

    • [ 料理・味 4.3
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.4

    • [ 料理・味 4.3
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2013/07訪問 2015/02/23

旨(うま)いのは 鯉の膓(はらわた) 朴葉未醤(ほふばみそ) 姥(おみな)のつくる 艸餠(くさもち)もよし

【2013-07-25追記】:
二年(ふたとせ)ぶりの『右馬允』。
夏(なつ)の盛(さか)りの松茸盡(まつたけづ)くしは想定外(おもひのほか)。
ほかに、天龍川(てんりようがは)の(むなぎ)、蜂子(はちのこ) 、(あゆ)、岩魚(いはな)。
珍(めづら)しき(きのこ)に山菜(さんさい)も、、。

地(ぢ)の時季(じき)に適(かな)ふ物(もの)ばかりを慥(たしか)なる力量(うで)にて調理(てうり)
これ、實(げ)に稀有(まれ)なることなり。
金澤『つる幸』ですら、この時季(じき)に、(かつを)(ひらめ)(しび)を供(いだ)す。
當家(こちら)の他では丹後峰山(たんごみねやま)『繩屋』など屈指(ゆびをゝり)て數ふるほど。

暖(あたゝ)かきものは暖(あたゝ)かき皿(さら)に
冷(つめ)たきものは冷(つめ)たき器(うつは)に盛(も)る心遣(こゝろづか)ひ。
舊家(ふるきうち)に傳(つた)はる器(うつは)の綻(ほころ)びに金繼(きんつ)ぎを施し、
惜(を)しげもなく客(まらうと)に供(いだ)す。

(うぐひす)と(ひぐらし)が競(きそ)ひ啼き、空調機(えあこん)なしにこの涼しさ。
春は桃花(もゝ)が咲き誇(ほこ)り、實(みの)りの龝(あき)には松茸(まつたけ)、
しかして、夏(なつ)には夏(なつ)の風情(おもむき)あり。
信州(しなの)大鹿村(おほしかむら)は世にも稀(まれ)なる郷(さと)哉(かな)!

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【照相機】:東京通信工業、索尼(そに) RX1R 小型數碼照相機(こんぱくとでじたるかめら)
/w Carl Zeiss Sonnar T* 2.0/35 @F2.2~F5.0 (By Sony)

【2011-05-13記】:
今(いま)は昔(むかし)、頃(ころ)は元弘三(げんこうさん)癸酉年(みづのとゝりどし)。
大覺寺統(だいがくじとう)後醍醐天皇(ごだいごてんなう)兵を舉げ軍(ぐん)を率い、
竟(つひ)に北條氏(ほうじやうし)を滅ぼし社稷(くに)を奪還(うばひかへ)したまひぬ。
しかるに、皇(すべらき)政治(まつりごと)を誤りて綸旨(りんじ)を濫發(らんぱつ)。

もはや、武士(ものゝふ)は從(したが)はず、民心(たみのこゝろ)は離れ、
國(くに)麻(あさ)のごとくに亂(みだ)れぬ。
皇(すべらき)は吉野に逃(のが)れ、第八皇子(だいはちわうじ)宗良親王(むねよしゝんなう)、
信濃國(しなのゝくに)伊那谷(いなだに)は大河原(おほがはら)へと落ち延びたまひき。

かくて、宗良親王(むねよしゝんなう)は失意(しつい)の儘この地に薨去(みみかりたま)ひぬ。
當地(このち)の民の宗良親王(むねよしゝんなう)を敬親(うやまひした)ふこと、
宛然(あたかも)、柳(やなぎ)の暴風(あかしまかぜ)に靡(なび)き、
あるいは、小舟(こぶね)が荒波(あらなみ)にたゆたふがごとし。

案下某生再説(それはさておき)、當家(こちら)『右馬允』。
現今(いま)の當主(あるじ)で三十八代(さんじふはちだい)と云ふ名主(なぬし)の家柄。
先祖(さきつおや)より代々(だいだい)り酒屋を營(いとな)みしが、
今の代より旅籠(はたご)を始め、家族(うから)ばかりでこれを生業(なりはひ)となす。

すなはち、東道(あるじ)に御内儀(おかみ)と、それに齢(よはひ)九十二(きうじふに)の
當主(あるじ)、元(もと)を糺(たゞ)さば測量士(そくりやうし)。
調理士學校(てうりしがつけう)に通ひて割烹(かつぽう)の技藝(わざ)を學(まな)び、
當地(このち)に溢るゝ山の幸(さち)を活(い)かし自(みづか)ら腕(うで)を振るふ。

生(む)まれは昭和廿三(せうわにじふさん)戊子年(つちのえねどし)。
その顏(かんばせ)を窺(うかゞ)ふに、人品骨柄(じんぴんこつがら)賤(いや)しからず。
まだ明けやらぬ頃より風呂(ふろ)を沸かし、朝飧(あさげ)の支度(したく)に勤(いそ)しむ。
風呂(ふろ)の薪(まき)は自(みづか)ら集(あつ)めしもの。

朝の庭に出(いで)ゝみると、彼方(かなた)より(うぐひす)の啼(な)き聲(こゑ)。
その囀(さへづ)りに誘(いざな)はれ、いまだなほ櫻花(さくら)の殘(のこ)る野をふらつき、
遠(とほ)くの川(かは)のせゝらぎに耳(みゝ)を澄(す)ます。
鶯(うぐひす)が止まるは何れの梢(こずゑ)なるや竟(つひ)に審(つまびらか)ならず。

裏庭(うらには)には名殘(なご)りの櫻花(さくら)。
房(へや)の彼此(をちこち) にも庭より摘みしと思(おぼ)しき野の艸花(くさばな)。
その器(うつは)、生(い)け方(かた)とも人(ひと)の竝(なみ)に外(はづ)る。
勿驚(おどろくなかれ)、厠(かはや)の花(はな)だけでも三(み)つに及(およ)ぶ。

の普請(ふしん)は悉(ことごと)く文政二(ぶんせいに)己卯歳(つちのとうどし)。
古き藏一棟(ひとむね)は修繕(つくらひ)に手が廻(まは)りかね、かくのごとくなりぬ。
母屋(おもや)は大正八(たいしやうはち)己未年(つちのとみどし)の築(ちく)。
き板玻璃(いたがらす)の窗(まど)よりの眺(なが)めは今や稀有(まれ)。

裏庭(うらには)の鶏舎(とりごや)には岡嵜横斑(おかざきおうはん)なる地鶏(ぢどり)。
曉(あかとき)を告げ、鶏卵(たまご)を生み、時にその身を肉(にく)として捧(さゝ)ぐ。
朝飧(あさめし)としてその生鶏卵(なまたまご)を啖(くら)はゞやとするに、
箸(はし)にて突き破(やぶ)れど、黄身(きみ)、寸毫(つゆ)崩れるゝ兆(きざ)しなし。

(うつは)は代々(だいだい)當家(こちら)に傳(つた)はるもの。
缺(か)け・綻(ほころ)びは金繼(きんつ)にて修覆(つくら)ふ。
管待(もてなし)は頗(すこぶ)る叮嚀(ねんごろ)。
配膳(はいぜん)の娘さん、見送る御内儀(おかみ)の笑顏(ゑがほ)は忘れがたし。

食材(しよくざい)は粗方(あらかた)時季(じき)に適(かな)ふ(ぢ)のもの。
すなはち、春の山菜、龝(あき)には松茸(まつたけ)、冬なら百獸(もゝんじう)
此度(こだみ)、水(うみ)のものは茶碗蒸しの小蝦(こえび)に眞鯛(まだひ)のみ。
食材を無駄(むだ)なく用(つか)ひ、獨活(うど)の皮は金平(きんぴら)となす。

禽獣肉(とりけだもの)は、鹿(もみぢ)(さくら)(きじ)の三種(みくさ)。
山奧(やまおく)ならではのものとして、の子の飴煮(あめに)、岩魚
蜂(はち)は地蜂(ぢばち)。
目印(めじるし)附(つ)けて蜂(はち)を追ひ、巣の在處(ありか)を探るとぞ。

就中(わきても)、鯉(こひ)の飴煮(あめに)には絶句(ことばをうしな)ふ。
(はらわた)、血合(ちあ)ごと煮込(にこ)みたるものにて、
いさゝか甜鹹(あまから)めなるも、膓(はらわた)の旨さは筆舌(ひつぜつ)に盡しがたし。
當主(あるじ)に據らば、當地(このち)では身よりも膓(わた)を嗜(この)むと、、。

滋味(じみ)溢(あふ)るゝ朴葉未醤(ほふばみそ)、
想像(おもひ)もかけぬ酒粕水羊羹(さけかすぶらんまんじえ)の美味(うま)さ、
就中(わきても)、九十二歳の姥(おみな)の手になる艸餠(くさもち)は白眉(はくび)。
纔(わづ)かに硬めながら、餡の出來(でき)は鄙(ひな)のものとも思はれず。

  • 主人(あるじ) 【撮影許可濟】
  • 主人(あるじ) 【撮影許可濟】
  • 名殘(なごり)の櫻花(さくら)

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7位

鮨 橋口 (浅草(東武・都営・メトロ)、浅草(つくばEXP)、田原町 / 寿司)

2回

  • 夜の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.2
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 ¥6,000~¥7,999

2017/06訪問 2017/06/06

親方(おやかた)の 代替(か)はれる『橋口』 "奧(おく)"さんの 握(にぎ)りをみれば 余(よ)ぞ滿足(う)けにける

五年(いつとせ)ぶりの『橋口』。
馬道(うまみち)沿(ぞ)ひ、
辯天山(べんてんやま)近傍(ちかく)に移轉(うつ)りてより初(はじめて)。
この夜(よ)、橋口(はしぐち)親方(おやかた)の弔(とむら)ひに、、。

總檜(そうひのき)の數寄屋造築(すきやづくり)。
かゝる見事(みごと)なる建築(たてもの)、
東都(えど)の鮓店(すしや)では『しまだ鮨』と雙璧(ふたつながらにならびたつ)。
いや、あるいは、こちらが上手(うはて)か?

赤坂(あかさか)、向島(むかふじま)の料亭(れうてい)竝(なみ)の設(しつら)へ。
都(すべ)て、故(いまはなき)橋口親方(はしぐちおやかた)が嗜好(このみ)。
この舎(いへ)を守(まも)るは、
二代目(にだいめ)親方(おくおやかた)と先代御内儀(さきつおかみ)。

櫃臺(かうんた)は(ひのき)の一枚板(いちまいゝた)。
厚(あつ)さと柾目(まさめ)の通(とほ)りこそ『小笹壽し』に不及(およばね)ど、
平滑(なめら)かさでは、東都一(えどでめてにいづるものなし)
糠(ぬか)での手入(てい)れを懈(おこた)ることなし」と胸(むね)を張(は)る。

下手味(げてみ)」と見做(みな)すなら、かゝる設(しつら)へは野暮(やぼ)。
しかはあれど、徳川時代(とくがはさまのみよ)、
第(やしき)構(かま)ふるほどの舖(みせ)"は
現在(いま)とは比較(くら)ぶるべくもない貴價(たかね)で知(し)らる。

すなはち、
安宅(あたけ)『松が鮓』、兩國(りやうごく)『與兵衞鮓』などなど、、。
松が鮓』は金澤(かなざは)『松乃鮨』にその技藝(わざ)を留(とゞ)め、
與兵衞鮓』は『喜壽司』に華(はな)やかなりし頃(ころ)の俤(おもかげ)。

勿論(いふまでもなく)、
橋口親方(はしぐちおやかた)は、
淺草象潟町(あさくさきさかたちやう)『高勢』の出身(で)。
高勢』高橋親方(たかはしおやかた)は去年(いぬるとし)鬼籍(おなくなり)に、、。

橋口親方(はしぐちおやかた)が兄弟子(あにでし)紺野親方(こんのおやかた)が、
淺草 高勢』の暖簾(のれん)を守(まも)る。
場所(ところ)は、かつて『橋口』在(あ)りし雷門(かみなりもん)近傍(ちかく)。
高勢』三代目(さんだいめ)の倅(せがれ)が根岸(ねぎし)『明 高勢』。

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高勢』:
  初代(しよだい)根岸(ねぎし)に廛(みせ)を構(かま)ふ。
    初代(しよだい)倅(せがれ)兄(このかみ)二代目として後繼(あとをつ)ぐも、
    泡沫(うたかた)の夢幻(ゆめまぼろし)と儚(はかな)く消(き)ゆ。

 →『新高勢』:初代(しよだい)の倅(せがれ)が弟(おとうと)、
    淺草(あさくさ)象潟町(きさかたちやう)に店(みせ)を構(かま)へ、
    後(のち)に『高勢』を襲名(なのる)。
    三代目(さんだいめ)なれど、2016、鬼籍入(うせぬ)。

   →『橋口』:『新高勢』(後の淺草『高勢』)に弟子入(でしい)り。
      雷門(かみなりもん)近傍(ちかく)に店(みせ)を構(かま)ふ。
      後(のち)、馬道通(うまみちどほ)りに移轉(うつりぬ)。 
      橋口親方(はしぐちおやかた)、2017-03、死去(うせぬ)。
      奧親方(おくおやかた)が『橋口』二代目(にだいめ)に、、。

   →『淺草 高勢』:紺野親方(こんのおやかた)。
      三代目(さんだいめ)の弟子(でし)。

   →『明 高勢』:高橋明義親方(たかはしあきよしおやかた)
      三代目(さんだいめ)の倅(せがれ)
 
 →『大塚高勢』:初代(しよだい)が弟子(でし)、
    大塚(おほつか)に店(みせ)を構(かま)ふ。
=========================================

この日(ひ)の菜譜(こんだて)は、
"餚(さかな)"一(ひとつ)、"握鮓(にぎり)"十二(とあまりふたつ)、
"卷物(まきもの)"一(ひとつ)に玉薤(さけ)。
對價(あたひ)、一萬二千圓也(いちまんにせんゑんなり)。

眞子鰈(まこがれひ)、小鰭(こはだ)、墨烏賊(すみいか)、鮪(しび)、
鮪(しび)、肥肉(あぶらみ)、蛤(はまぐり)、車蝦(くるまえび)、
黑鰒(くろあはび)、赤鯥(あかむつ)、眞鰺(まあぢ)、星鳗(あなご)、
雞卵燒(たまごやき)、鐵火卷(てつくわまき)、と云ふ構成(ながれ)。

嘗(かつ)ての『橋口』と比較(くら)べ、
歴然(あきらか)に舎利(すしめし)の色(いろ)と味(あぢ)が變化(ことなる)
米酢(よねず)から紅酢(あかず)へ變貌(かはりぬ)。
與兵衞(よへゑ)に米酢(よねず)を混合(まぜあは)せたるものとか、、。

甘蔗(さたう)も以前(まへ)よりさらに抑(おさ)へ、
鹽(しほ)と同量(おなじかさ)に、、。
口(くち)に抛込(はうりこ)むや鳳仙花(ほうせんくわ)のごとく四散(とびち)れど
滑(なめ)らかさは纔(わづ)かながらも後退(しりぞく)

舎利(しやり)は扇(あふぎ)の地紙形(ぢがみがた)に成形(とゝのへら)れ、
米粒(こめつぶ)一粒一粒(ひとつぶひとつぶ)が屹立(そゝりたつ)
鮨種(すしだね)との調和(つりあひ)・嵌合(かみあはせ)も良好(よ)く
生來一身同體(うまれながらにひとつ)と云ふも、あながち嘘僞(うそいつはり)ならず。

鮨種(すしだね)への熟成(うらし・ねかし)を嫌(きら)ふこと、
宛然(あたかも)、吸血鬼(ちすひをに)が陽光(ひのひかり)を忌避(さ)くるがごとし。
とは云へ、(しび)は七日目(なのかめ)、
(はまぐり)は漬込(とけこ)みて翌日(つぎのひ)と云ふ配慮(こゝろくばり)。

朝締(あさじめ)の"眞子鰈(まこがれひ)"も、
鮓(すし)には硬(かた)きに過(す)ぎ不適(むかず)
とて、刺身(さしみ)に、、。
味(あぢ)淡(あはし)と云へど、その齒應(はごたへ)には絶句(ことばをうしなふ)。

"(あはび)":
西洋時辰儀(せいやうどけい)にして三時間(さんじかん)、
(さけ)、(しほ)、昆布(こんぶ)のみにて蒸煮(むしに)となす。
風味(あぢかをり)・食感(はごたへ・したざはり)とも理想的(このうへなきもの)

對照的(これとはことな)り、
"(はまぐり)"への火候(ひいれ)は最小限(かすか)。
嫩(やはらか)にして舌(した)に滑(なめら)か
同(おな)じ貝類(かひのたぐひ)でも、これほどまでの相違(たがひ)。

"車蝦(くるまえび)"には優(やさ)しき甜(あまみ)を随伴(ともなふ)。
「"黄身酢魚鬆(きみずおぼろ)"の類(たぐひ)」との説明(はなし)。
實言(まこと)、かの『奈可久』ばり。
小人(それがし)、"茹上(ゆであげ)"を嗜好(この)むも、これはこれで吉(よし)!

高勢』とは明確(あきらか)に異形(こと)なる"雞卵燒(かひごやき)":
所謂(よにいふ)「蛋糕燒(かすていらやき)」。
卵白(しろみ)は泡立(あはだ)つほどに攪拌(かきまぜ)
具(ぐ)に、甘鯛(あまだひ)、芝蝦(しばえび)、薯蕷(やまいも)、胡桃(くるみ)。

その嫩(やはらか)きこと、
棉花糖(マシュマロ)かと疑(うたが)はれ、蛋奶酥(スフレ)かと錯覺(あやまつ)。
甜(あまみ)は『高勢』より控(ひか)へめ。
先代(さきつおやかた)と試行錯誤(さまざまにこゝろみた)る賜物(たまもの)

とは云へ、
小人(それがし)が口(くち)には、『うを徳』のそれが優越(まさる)。
甜(あまさ)、燒(やき)、適度(ほどよ)き硬(かた)さ、、。
與志乃』一門(いちもん)、『壽司幸』また美味也(よきあぢなり)!

さいとう』同樣(とおなじく)、
缺點(たらざるところ)・瑕疵(かけたるところ)なきは立派(みあげたもの)。
さはあれ、『初音鮨』、『豬股』、『やまだ』のごとく、
驚天動地(よをさはが)し、常識(しきたり)を顚覆(くつがへ)すほどのものもなし

辭別(いとまごひ)に當(あ)たり、
先代(さきつおやかた)の靈前(たましひ)に線香(せんかう)を手向(たむ)く。
酒好(さけず)きの橋口親方(はしぐちおやかた)の顏(かんばせ)を追憶(おも)ひ、
感慨一入(こゝろはゆれ、おもひいだすことおほかりき)。

さはあれ、「この設(しつら)へ、管待(もてなし)ぶり、味(あぢ)で
この價格(ね)は破格(おどろくほどのやすさ)」と斷言(いひきる)べし。
小人(それがし)、 日常利用(ふだんづかひ)の鮓店(すしや)として、
(さかな)なら『うを徳』、(すし)なら當家(こちら)『橋口』を選擇(えらむ)。

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto-Macro 2/50 @F2
      高千穗光學 奧林巴斯(Olympus)瑞光(Zuiko)Auto 2/21 @F8~F11
【2012-07-09追記】:
淺草象潟町(あさくさきさかたちやう)『高勢』亭主(あるじ)の消息(せうそく)が氣(き)にかゝり、
久々(ひさびさ)當家(こちら)に、、。
橋口親方(はしぐちおやかた)に據(よ)らば、何(なん)でも、二郎(じなん)任(まか)せの、
根岸(ねぎし)『高勢』に身(み)を寄(よ)せ、親子(おやこ)兩個(ふたり)して漬場(つけば)に立(た)つとか。

赤坂(あかさか)みすぢ通(どほ)り『喜久好』に續(つゞ)き、
象潟町(あさくさきさかたちやう)『高勢』まで閉店(みせじまひ)とは寂(さび)しき限(かぎ)り。
若手(わかて)ばかりが持(も)て囃(はや)され、
手煆煉(てだれ)職人(しよくにん)が、一人(ひとり)、また一人(ひとり)と消(き)えゆくは寂(さび)しきこと。

案下某生再説(それはさておき)、この日(ひ)の獻立(こんだて)。
眞鯛(まだひ)、眞子鰈(まこがれひ)、鮪(しび)、墨烏賊(すみいか)、海膽(うに)、新子(しんこ)、
平貝(たひらぎ)、小鰭(こはだ)、穴子(あなご)、卷物(まきもの)。
やはり舎利(しやり)は僕(やつかれ)が嗜(この)みに寸毫(つゆ)異(こと)なるところなし

【2012-06-02追記】:
有一日(あるひ)、相知(なじみ)の鮓店(すしや)でもと狙(ねら)へども、この日(ひ)は貸切(かしきり)。
已(や)む事(こと)を得(え)ずして、『まさる』を窺(うかゞ)へど門前如市(もんのまへいちばのごとし)。
かくて當家(こちら)『橋口』に向(む)かふ。
幸(さひは)ひ、客(きやく)の姿(すがた)は皆無(なし)。

最初(いやさき)に玉薤(さけ)を冷(ひや)で貰(もら)ふ。
奧州(あうしう)合津(あひづ)"國權(こッけん)"の純米大吟釀(じゆんまいだいぎんじやう)。
掃愁箒(さけ)の酒菜(さかな)は眞子鰈(まこがれひ)(きも)の炙(あぶ)り。
當店(こちら)、眞子鰈(まこがれひ)も眞鰺(まあぢ)も穴子(あなご)も悉(ことごと)く江戸灣(えどわん)。

この日(ひ)は、眞子鰈(まこがれひ)、墨烏賊(すみいか)、北寄貝(ほッきがひ)、眞鰺(まあぢ)、小鰭(こはだ)、
鮪(しび)二種(ふたくさ)、海膽(うに)、鮑(あはび)、穴子(あなご)、海苔卷(のりまき)。
鮑(あはび)は、かの大原(おほはら)の"眼高鮑(まだかあはび)"を追加(つひか)で、、。
近會(ちかごろ)、彼此(をちこち) で大原(おほはら)の"眼高鮑(また)"を眼(め)にすること少(すく)なからず。

煮汁(にじる)は魚翅湯(ふかひれじる)の椀(わん)となす。
膠原(こらあげん)→明膠(ぜらちん)に富(と)む鮑(あはび)の煮汁(にじる)を活(い)かす試(こゝろ)み。
生憎(あやにく)、"魚翅(ふかひれ)"とは云ひながら、"散翅(はぎれ)"とも呼(よ)ぶべき貨物(しろもの)。
阿娑縛』など四方山話(よもやまばなし)に花(はな)が咲(さ)き辭別(いとまごひ)。

【2012-05-11追記】:
此度(こだみ)は、江戸灣(えどわん)の眞子鰈(まこがれひ)、墨烏賊(すみいか)、鮪(しび)ニ種(ふたくさ)、
三河(みかは)の鳥貝(とりがひ)、蝦夷(えぞ)の鹽水海膽(えんすいうに)、小鰭(こはだ)、
越前若狹(えちぜんわかさ)の眞鯖(まさば)、穴子(あなご)、海苔卷(のりま)き。
海苔卷(のりま)きの干瓢(かんぺう)は『松波』とは對極(いちじるしきたがひ)。

手捌(てさば)き、鮓(すし)の姿形(すがたかたち)、甜(あま)さ、硬(かた)さ、解(ほぐ)るゝ容(さま)など、
仔細(こまかなること)はさておき、口(くち)に含(ふく)みて甚(いと)心持(こゝち)よき鮓(すし)
この強(つよ)めの酢(す)、粒(つぶ)が立(た)ちてなほ舌(した)に滑(なめ)らかなる舎利(しやり)は、
口(くち)にするや、忽地(たちまち)背筋(せすじ)が伸(の)び、知(し)らず口許(くちもと)も綻(ほころ)ぶ。

【2012-02-04追記】:
有一日(あるひ)、商賣(あきなひ)のため遠出(とほで)。
最初(いやさき)に、髮結(かみゆ)ひを兼(か)ね腹拵(はらごしら)へせんと淺草(あさくさ)に。
轎(かご)の中(なか)、頓(にはか)に面白(おもしろ)き智慧(ちゑ)が湧(わ)き、
辛(つら)き生業(なりはひ)の中(なか)、一筋(ひとすぢ)の光明(あかり)を見(み)る。

欣喜雀躍(をどりあがりてよろこ)び、晝飧(ひるめし)は久々(ひさびさ)の『橋口』。
(しび)は大間(おほま)から壹岐(いき)へと移(うつ)ろひ、眞鯖(まさば)も九州(きうしう)。
谷町(たにまち)に頼(たよ)ることなく鈔(ぜに)を借(か)り
吃驚(おどろ)くほどの原價(もと)を掛(か)け當地(このち)で商(あきな)ふは見上(みあ)げたもの。

【2011-11-22追記】:
鮃(ひらめ)煮切(にき)り、鮃(ひらめ)ぽん酢(ず)、墨烏賊(すみいか)、眞鯖(まさば)、赤貝(あかゞひ)、
鮪(しび)脂身(あぶらみ)*二、小鰭(こはだ)、車蝦(くるまえび)、穴子(あなご)、海苔卷(のりま)き。
追加(ついか)で鮃(ひらめ)縁側(えんがは)。
舎利(しやり)、醋(す)、鹽(しほ)、通常(つね)のごとし

【2011-09-27追記】:
此度(こだみ)は、鮃(ひらめ)、眞鯖(まさば)、墨烏賊(すみいか)、黒北寄貝(くろほつきがひ)、
鮪(しび)、鮪(しび)赤身(あかみ)に近(ちか)き脂身(あぶらみ)、小鰭(こはだ)、車蝦(くるまえび)、
穴子(あなご)、鐵火卷(てつくわま)き、に追加(ついか)で海膽(うに)。
鮃(ひらめ)は今季(こんき)一番(いちばん)、眞鯖(まさば)もなかなか。

何(なに)かにつけ『うを徳』とは對照的(たいしやうてき)。
舎利(しやり)の酢加減(すかげん)は『橋口』が強(つよ)く、『うを徳』は弱(よは)め。
疱丁(はうちやう)の手入(てい)れ、山葵(わさび)の質(しつ)は『橋口』が勝(まさ)り、
居心地(ゐごゝち)と酒菜(さかな)の出來(でき)は『うを徳』が秀(ひい)づ。

【2011-07-22追記】:
土用(どよう)の鰻(むなぎ)なる習慣(ならひ)を冷笑(あざわら)ひつゝも、
その時季(じき)ともなると、そこはかとなく血(ち)が騒(さは)ぐは内心忸怩(ないしんじくじ)たるものあり。
かくて十一字半(じふいちじはん)につるや を覘(のぞ)けど、
已(すで)に『高梁川(たかはしがは)天然鰻(てんねんむねぎ)賣(う)り切(き)れ』の貼(は)り紙(がみ)。

已(や)む事(こと)を得(え)ずして、あの名物親爺(おやぢ)でも伏拜(ふしをが)まんと思(おも)へど、
廛(みせ)の前(まへ)には黒山(くろやま)の人(ひと)だかり。
かくて鰻(むなぎ)を諦(あきら)め鮨(すし)に、、、。
向(む)かふは目(め)と鼻(はな)の先(さき)の當店(こちら)『橋口』。

辭別(いとまごひ)まで僕(やつかれ)一人(ひとり)。
此度(こだみ)は、眞子鰈(まこがれひ)、墨烏賊(すみいか)、北寄貝(ほッきがひ)、縞蝦(しまへび)、
鮪赤身(しびあかみ)、鮪脂身(しびあぶらみ)、赤貝(あかゞひ)、新子(しんこ)、穴子(あなご)、
鐵火卷(てつかま)き、追加(ついか)で眞鰺(まあぢ)。

當店(こちら)でも眞子鰈(まこがれひ)は江戸前(えどまへ)、赤貝(あかゞひ)は豐後(ぶんご)と、
大地震(おほなゐ)の痛手(いたで)、恢復(かいふく)の道(みち)なほ險(けは)し
通常(つね)なれば、眞子鰈(まこがれひ)は常磐(じやうばん)、赤貝(あかゞひ)は閖上(ゆりあげ)。
(しび)は今季初(こんきはつ)の津輕(つがる)大間(おほま)のもの。

眞鰺(まあぢ)は房州富津(ばうしうふッつ)。
甘味(あまみ)、脂乘(あぶらの)りとも薩州出水(さッしういづみ)が優(まさ)る。
そもそも冷(つめ)たきに過(す)ぎ、甘味(あまみ)を感(かん)じがたし。
眞鰺(まあぢ)は『うを徳』が上(うへ)、凛(りん)とした清々(すがすが)しさでは『橋口』に軍配(ぐんばい)。

【2011-06-29追記】:
鮨下駄(すしげた)が備前燒(びぜんやき)から黒漆(くろうるし)となり面目一新(めんもくいつしん)。
此度(こだみ)は、眞鯛(まだひ)、墨烏賊(すみいか)、眞鰺(まあぢ)、鳥貝(とりがひ)、鮪(しび)、
鮪(しび)脂身(あぶらみ)、小鰭(こはだ)、車蝦(くるまえび)、穴子(あなご)、海苔卷(のりま)き、
追加(ついか)で眞鰺(まあぢ)。

時季(じき)の穴子(あなご)は今一(いまひと)つ。
八百匁(はつぴやくもんめ)と些(いさゝ)か大振(おほぶ)りの眞鯛(まだひ)は能登(のと)のものとか。
今朝(けさ)活(い)け締(じ)めにしたばかりとのことなれど、齒應(はごた)へは弱(よは)め。
干瓢(かんぺう)は今時(いまどき)稀(まれ)な鹹(しほから)さ。

主人(あるじ)の控(ひか)へめなるは、『うを徳』似(に)。
上(うわ)ッ張(ぱ)りの白(しろ)さ疱丁(はうちやう)の手入(てい)れは當家(こちら)が優(まさ)る。
主人(あるじ)、今年(ことし)滿(まん)で四十(よそぢ)になるとか。
淺草(あさくさ)界隈(あたり)の鰻屋(むなぎや)談義(だんぎ)の後(のち )辭別(いとまごひ)。

【2010-11-11追記】:
半年(はんとせ)ぶりのこの日(ひ)は、鮃(ひらめ)、墨烏賊(すみいか)、赤貝(あかゞひ)、小鰭(こはだ)、
鮪(しび)赤身(あかみ)に近(ちか)き脂身(あぶらみ)、鮪(しび)脂身(あぶらみ)、眞鰺(まあぢ)、
穴子(あなご)、海苔卷(のりま)き。
眞鯖(さば)に床伏(とこぶし)をこれに追加(くは)へ、値(あたひ)四千圓也。

倩(つらつら)舎利(しやり)を覧 (み)るに、醋(す)の輪廓(ふち)は『高勢』よりも慥(たしか)。
解(ほど)け工合(ぐあひ)も心持(こゝち)よく、奧齒(おくば)への殘(のこ)り方(かた)も文句(もんく)なし。
甘醋(あまず)漬(づ)けの生姜(はじかみ)も心(こゝろ)なしか當店(こちら)が爽(さは)やか。
小鰭(こはだ)の優(やさ)しき〆方(かた)は『高勢』に瓜(うり)が二個(ふたつ)の生(い)き冩(うつ)し。

頑(かたく)なに江戸灣(えどわん)の魚(うを)に拘(こだは)るは見上(みあ)げたもの。
穴子(あなご)に松輪(まつわ)の眞鯖(さば)はともかく、富津(ふッつ)の眞鰺(あぢ)に、
(ひらめ)までもが江戸灣(えどわん)のものとは畏(おそ)れ入谷(いりや)の朝顏市(あさがほいち)。
鮪(しび)、色(いろ)變(かは)りやすしとて『』を嗜(この)まず『』なれど、近會(ちかごろ)『』に。

橋口親方(おやかた)、温厚篤實(やさしくおだやか)なる口(くち)ぶりの中(なか)にも、
媒體(ばいたい)の口(くち)から出任(でまか)せ、嘘八百(うそはつぴやく)には呆(あき)れ果(は)て、
時(とき)に憤懣(ふんまん)やるかたなき表情(さま)を露(あら)はに。
親方(おやかた)語(かた)る『高勢』の系譜(ちすじ)は概略(あらかた)如下(つぎのごとし)。

============================================
高勢』:初代(しよだい)根岸(ねぎし)に廛(みせ)を構(かま)ふ。
         初代(しよだい)倅(せがれ)兄(このかみ)二代目として後(あと)を繼(つ)ぐも、
         泡沫(うたかた)の夢幻(ゆめまぼろし)と儚(はかな)く消(き)ゆ。

   →『新高勢』:初代(しよだい)の倅(せがれ)弟(おと)、淺草に店(みせ)を構(かま)へ、
         後(のち)に『高勢』を襲名(なのる)。

       →『橋口』:『新高勢』(後の淺草『高勢』)に弟子入(でしい)り。
             數年前(すねんまへ)、この地(ち)に店(みせ)を構(かま)ふ。

   →『大塚高勢』:初代(しよだい)の弟子(でし)大塚(おほつか)に店(みせ)を構(かま)ふ。

維納(ういん)の若旦那(わかだんな)述(の)ぶるところに寸毫(つゆ)相違(たがひ)なし。
============================================

【2010-05-11追記】:
この日(ひ)は、眞子鰈(まこがれひ)、松魚(かつを)、墨烏賊(すみいか)、鮪(しび)赤身(あかみ)、
鮪(しび)ほどよき脂身(あぶらみ)、小鰭(こはだ)、莫迦貝(ばかゞひ)、縞蝦(しまえび)、穴子(あなご)、
海苔卷(のりま)き。
追加(ついか)で、眞子鰈(まこがれひ)縁側(えんがは)、蛤(はまぐり)、鮑(あはび)。

三百匁(もんめ)ほどの眞子鰈(まこがれひ)は前(まへ)の日(ひ)に〆たとのことなれど、
なほ身(み)は活(い)き、他店(よそ)では使(つか)はぬ縁側(えんがは)にも強(つよ)き旨味(うまみ)。
漬(つ)け込(こ)みの蛤(はまぐり)は生(なま)かと見紛(みまが)ふ。
湯氣(ゆげ)沸(わ)き立(た)つ鮑(あはび)は小振(こぶ)りながらも香(かをり)豐(ゆた)か。

「淺草 高勢」と比(くら)べても(す)の強(つよ)き醋飯(すめし)、
淺(あさ)き漬(つ)け込(こ)みの(はまぐり)、(わら)で(いぶ)した(かつを)、
滑(なめ)らかに茹(ゆ)で上(あ)げたばかりの香(かをり)高(たか)き「(む)し鮑(あはび)」、、、。
やはり晝(ひる)にこの周邊(あたり)で鮨(すし)となれば竝(なら)ぶものなき廛(みせ)。

【2010-01-13記】:
心(こゝろ)ならずも都(みやこ)落(お)ちしてよりはや一月(ひとつき)近(ちか)く。
田舎(ゐなか)には田舎鮨(ゐなかずし)よりほかになく、まともな鮨(すし)より遠(とほ)ざかりて久し。
已(や)む事(こと)を得(え)ずして、闇雲(やみくも)な淺草(あさくさ)鮨屋(すしや)檢索(さがし)。
鮨 一新は夜(よる)のみの商(あきな)ひ、辯天山美家古壽司鮨 久いちとは反(そ)りが合(あ)はず。

かくて、ふらりと訪(たづ)ねし鮨 橋口
家(いへ)の構(かま)へは白金臺鮨匠 岡部を髣髴(おもはす)。
扉(とびら)を開(ひら)くや、鄭重(うやうやし)く迎(むか)ふる四十(よそぢ)近(ちか)くの女將(おかみ)。
漬(つ)け場(ば)を守(まも)るは主(あるじ)、齢(よはひ)四十(よそぢ)斗(ばかり)。

「八海山」を燗(かん)で貰(もら)ひ、暫(しば)しまどろむほどに、
主(あるじ)、「握(にぎ)りで宜(よろ)しうござりまするか?」と僕(やつがれ)に問(と)ふ。
その内譯(うちわけ)を訊(たづ)ぬるに、ほゞ好(この)みの鮨種(ねた)。
さあらば、これを頼(たの)み、足(た)らざるを補(おぎな)ふことに。

【内譯(うちわけ)】:
縞鯵(しまあぢ)、墨烏賊(すみいか)、小柱(こばしら)、ほどよき脂身(あぶらみ)の鮪(しび)二(ふた)つ、
小鰭(こはだ)、車蝦(くるまえび)、穴子(あなご)、鐵火卷(てつくわま)き、未醤椀(みそわん)附(つ)き。
追加(ついか)で、鯖(さば)二(ふた)つに赤貝(あかゞひ)。
酒(さけ)一合(いちがふ)、握(にぎ)り十一(とあまりひとつ)に卷物(まきもの)で、値(あたひ)六千圓也。

劈頭(いやさき)に來(き)たりしは三宅島(みやけじま)にて漁(いさ)りしと云ふ縞鯵(しまあぢ)。
時季(じき)に外(はづ)るゝとは云へ、なかなかの美味(あぢ)。
墨烏賊(すみいか)もまた然(しか)り。
蝦夷(えぞ)の地(ち)で漁(すなど)られたる小柱(こばしら)の大星(おほゞし)は見事(みごと)。

津輕(つがる)の港(みなと)に揚(あ)がしと云ふ鮪(しび)はほどよき脂身(あぶらみ)。
切(き)り附(つ)け、冷(つめ)たさ、何(いづ)れもほどよく、口(くち)に蕩(とろ)けんばかり。
先頃(さきごろ)喰(く)らひし田舎鮨(ゐなかずし)と比(くら)ぶれば月(つき)と鼈(すつぽん)
煮切(にき)りとの相性(あひしやう)もよく、名(な)のある鮨屋(すしや)の鮪(しび)に迫(せま)る。

小鰭(こはだ)は江戸の海(うみ)で漁(いさ)りし身(み)の厚(あつ)きものを片身漬(かたみづ)けに。
主人(あるじ)、「今(いま)の時季(じき)は、、」と口惜(くちをし)がるとこ頻(しき)り。
芝蝦(しば)の朧(おぼろ)を插(はさ)みたる車蝦(くるま)は茹(ゆ)で置(お)きで口に冷(つめ)たし。
蝦(えび)蝦蛄(しやこ)の類(たぐひ)は、何(なに)より茹(ゆ)で上(あ)げに限(かぎ)る。

羽根田(はねだ)の穴子(あなご)は薄(うす)めに煮(に)て炙(あぶ)り、煮詰(につ)めを垂(た)らす。 
煮詰(につ)めは古來(いにしへ)よりも薄(うす)めながら、昨今(いま)となりては竝(なみ)の濃(こ)さ。
江戸前(えどまへ)なるを悦(よろこ)ぶや、主人(あるじ)、 わが意(い)を得(え)たりとばかりに、
「西(にし)の明石、北(きた)に松嶋と云ふも、やはり穴子(あなご)は、、」と顏(かほ)を綻(ほころ)ばす。
  
椀(わん)は、蜆(しゞみ)と生海苔(なまのり)の未醤汁(みそしる)。
鐵火卷(てつくわま)きは、 四日(よつか)ほど寢(ね)かしたる鮪(しび)の赤身(あかみ)。
金華(きんくわ)鯖(さば)は聊(いさゝ)か小振(こぶ)りながらも、鹽(しほ)・酢(す)ともほどよし。
閖上(ゆりあげ)の赤貝(あかゞひ)はその場(ば)で剥(む)きて、身(み)と紐(ひも)に分(わ)かつ。

【技藝(わざ)】:
舎利(しやり)は粒(つぶ)が立(た)ち、舌觸(したざは)り非常(すこぶ)る滑(なめ)らか。
熱(あつ)過(す)ぎず、冷(つめ)たきに過(す)ぎず、口(くち)欣喜雀躍(おほいによろこぶ)。
酢(す)は白酢(しろず)で、僅(わづ)かなる糖(たう)の類(たぐひ)が加(くは)ゝる。
酢(す)は聊(いさゝ)か強(つよ)く、舎利(しやり)の輪廓(かほかたち)鮮明(あざやか)。

その姿形(すがたかたち)を檢(あらた)むるに、鮨種(ねた)・舎利(しやり)ともに小(ちひ)さめ。
僕(やつがれ)蛇蝎(だかつ)のごとく忌(い)み嫌(きら)ふ捨(す)て舎利(しやり)こそせざるも、
稀(まれ)に手(て)に餘(あま)れる舎利(しやり)を千切(ちぎ)るこそ訝(いぶか)し。
弓手(ゆんで)の拇(おやゆび)を利(き)かさで、指(ゆび)と掌(たなごゝろ)に鮨(すし)を包(つゝ)む。

おし竝(な)めて無駄(むだ)な所作(うごき)はなく、宛然(あたかも)水(みづ)の流(なが)るゝがごとし。
生姜(はじかみ)は甘(あま)きに過(す)ぎず、口(くち)に爽(さは)やか。
山葵(わさび)はそこそこ立派(りつぱ)なものを頻繁(こまめ)に卸(おろ)す。
皮(かは)を大膽(おほきく)剥(む)かず、汚(よご)れをこそげ落(お)とす程度(くらゐ)。

庖丁(はうちやう)の減(へ)り方(かた)に顯著(いちゞる)しき特徴(しるし)あり。
切(き)り附(つ)くるところばかりあやしく凹(へこ)みて變曲點(へんきよくてん)*)を持(も)つ。
嘗(かつ)て藤居親方(あ●き)僕(やつがれ)に謂(い)ひて曰(いは)く、
「庖丁(はうちやう)の砥(と)ぎやうは、能(よ)く職人(しよくにん)の技量(うで)を表(あらは)す」と。

合板(がふはん)と思(おぼ)しきカウンタは安(やす)き普請(ふしん)。
とは云へ、店(みせ)の中(なか)は明(あか)るく、居心地(いごゞち)頗(すこぶ)る良好(りやうかう)。
恭(うやうや)しき神棚(かみだな)が最(いと)眩(まぶ)しく、僕(やつがれ)が眼精(まなこ)を射(い)る。
山(やま)のかみ奧方(おくがた)=女將(おかみ)のほか、奧(おく)には小僧(こざう)さん一個(ひとり)。

惜(を)しむらくは晝(ひる)に鶏卵(たまご)燒(や)きなきこと。
華屋與兵衞の昔(むかし)より鶏卵(たまご)燒(や)きは鮨屋(すしや)の招牌(かんばん)。
鮨下駄(すしげた)に相當(あた)る器(うつは)は誂(あつら)へものゝ備前燒(びぜん)。
聊(いさゝ)か虚假(こけ)脅(おど)し氣味(ぎみ)ながら、なかなかに出來(でき)た代物(しろもの)。

【總評(まとめ)】:
紀尾井町鮨 はしぐちとの所縁(ゆかり)・繋(つな)がりを訊(たづ)ぬるに、
主(あるじ)、「知(し)らぬことゝは云ひながら、多畏(おそれおほ)し」と縮(ちゞ)こまること頻(しき)り。
大言壯語(だいげんさうご)せず謙虚(ひかへめ)なるは壽司處 壽々藤居親方(あ●き)に似(に)たり。
値(ね)に比(くら)べて味(あぢ)の佳(よ)きこと、件(くだん)の壽司處 壽々に肉迫(せま)る。

-----------------------------
*)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%89%E6%9B%B2%E7%82%B9

  • 二代目(にだいめ)奥親方(おくおやかた)
  • 大厦高樓(たかどの)の硲(はざま)なる外觀(かまへ)
  • 小鰭(こはだ)

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8位

つるや (浅草(東武・都営・メトロ)、浅草(つくばEXP)、田原町 / うなぎ、天ぷら、どじょう)

1回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス -
    • | 雰囲気 2.0
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥8,000~¥9,999

2015/06訪問 2015/07/05

淺草の 天然うなぎ こゝ『つるや』 南無三(なむさん)中に よもや階段(かいだん)

【2015-06-20追記】:
三年(みとせ)も足遠(あしとほ)のきたる縁由(ことのよし)、
一(ひと)つに『うを徳』が"志ら燒(やき)"に魅(み)せられての嵌(はま)り過(す)ぎ。
今一(いまひと)つは、當家(こちら)鰻(むなぎ)の價格(ね)の、
年々歳々(としごと)に昂騰(あが)りて止(とゞ)まることを知(し)らざればなり。

有一日(あるひ)、舖(みせ)の前(まへ)に"江戸前(えどまへ)"の貼紙(はりがみ)。
對價(あたひ)、八千圓也(はつせんゑんなり)。
五年前(いつとせまへ)の五千圓(ごせんゑん)と比較(くら)ぶれば、
雲壤(うんじやう)の相違(たがひ)。

僕(やつかれ)ごとき染垂阿爺(しみたれおやぢ)には高嶺(たかね)の花(はな)。
うを徳』では"江戸前(えどまへ)"志ら焼(や)き啖(くら)ひしこと三度(みたび)。
蒲燒(かばやき)の"江戸前(えどまへ)"は口(くち)にせし前例(ためし)なかりしかば、
清水(きよみづ)の舞臺(ぶたい)より跳(と)ぶ心持(こゝち)で賈内(なか)に、、。

初(はじめて)の二樓(にかい)。
階(きざはし)を昇(のぼ)りつ、四代目御内儀(よだいめおかみ)と思しき仲居(なかゐ)に、
江戸前(えどまへ)の有無(ありやなしや)」を言問(ことゝ)ふに、
「御坐(ござ)ります。」との應答(いらへ)。

隅(すみ)に腰(こし)を下(お)ろし、
年嵩(としかさ)の仲居(なかゐ)に「江戸前(えどまへ)の、、」と云ひもあへず、
仲居(なかゐ)應答(いらへ)て曰(いは)く、
まう已(すで)に注文(ちゆうもん)が通(とほ)りてをりまする。」

エ、エッエッ、エ~ーーーーーーーーーーッ!
菜譜(こんだて)にも"鰻重(うなぢゆう)"と"蒲燒(かばやき)"があり、
そもそも、有無(ありやなしや)を問(と)ひたるのみ
良(よ)くも惡(あ)しくも、當家(こちら)固有(ならでは)の作法(やりかた)。

俟(まつ)こと大約(およそ)廿五分(にじふとごふん)。
平生(つね)のごとく、こちらにも件(くだん)の品(しな)運(はこ)ばれ來(きた)る。
茶(ちや)の差(さ)し替(か)へは二度(にど)、
加旃(しかのみならず)、御絞(おしぼ)りの差(さ)し替(か)へまで、、。

重箱(ぢゆう)より溢(あふ)れんばかりの江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)。
否(いな)、江戸生鰻樺焼(えどうまれうなぎのかばやき)。
かくのごとく、已(すで)に天明五乙巳歳(てんめいごきのとみどし、=1785)には、
鰻蒲焼(むなぎかばやき)の東都(えど)の名物(めいぶつ)なりしは晰(あきら)か。

ありがたき江戸(えど)前海(まへうみ)の(むなぎ)とは云へ、この價格(ねだん)。
故(ゆゑ)に、「脂(あぶら)少(すく)なくば、當家(こちら)に見切(みき)りをつけ
護謨(ごむ)の齒應(はごた)へあらば、即(すなはち)絶縁(えんきり)!」
と、自(みづか)らに固(かた)く警(いまし)め盟(ちか)ひて一齧(ひとかじり)。

尾側(をがは)も頭側(かしらがは)も、適度(ほどよ)き旨(うま)さ・齒應(はごた)へ
口惜(くちを)しき哉(かな)!
"江戸前(えどまへ)"も、"球磨川(くまがは)"も、"天龍川(てんりうがは)"も、
"琵琶湖(びはこ)"も、"淀川(よどがは)"も、寸毫(つゆ)異(こと)なるところなし。

初夏(なつのはじめ)も晩龝(あきのをはり)も、(おほ)きさまでも、、。
(うなぎ)なるもの、(うみ)、(みづうみ)、河川(かは)では異(こと)なり、
時季(じき)に應(おう)じ、(おほ)きさに跟(したが)ひ、
その味(あぢはひ)は天(あめ)と地(つち)ほどの相違(たがひ)あるが尋常(つね)。

うを徳』が"志ら燒(や)き"なれば、その差異(さ)は顯著(いちじるし)。
百匁(ひやくもんめ、=375g)ほどの大(おほ)きさの鰻(むなぎ)は、
脂(あぶら)も薄(うす)く、況(ま)して、蒸(む)しをかくるとなると
野田岩』のごとき爲體(てゐたらく)となるが倣(なら)ひ。

しかはあれど、 當家(こちら)、
百匁(=375g)左右(ほど)の鰻(むなぎ)に蒸(む)しをかけてのこの美味(うま)さ
就中(わきても)、皮下(かはした)の(あぶら)と明膠(ぜらちん)には、
只顧(ひたすら)魂消(たま)ぐるほか術策(すべ)はなし。

玻璃(がらす)の表演窗(ショーウィンド)に居多(あまた)蝋型模型(さんぷる)、
普請(しつらへ)は淺草(あさくさ)の街場食堂(めしや)そのもの。
菜譜(こんだて)には、天丼(てんどん)、鰻重(むなぢゆう)、何(なん)でもあり
賈内(なか)には一見(いちげん)の觀光客(ものみゆさん)だらけ。

天麩羅(てんぷら)の(ころも)は(あつ)く、(えび)は陳腐(ありきたり)。
山葵(わさび)も尤(いと)怪(あや)しげ、
蒲燒(かばやき)の熱源(ひ)も、また、さらに訝(いぶか)しと、
猫(ねこ)すら跨(また)ぐ飮食店(めしや)なるは明々白々(あきらか)。

然(さ)ればこそ、
野田岩』にも勝(まさ)る天然物(てんねんもの)提供(いだ)すは、
寔(まこと)、心底(こゝろのそこ)よりの驚(おど)き。
驚(おど)きを通(とほ)り越(こ)し、もはや、ほくそ笑(ゑ)むほか術(てだて)なし

備長炭(びんちやうたん)を用(つか)ひ、返(かへ)し百遍(ひやつぺん)」が、
常識(あたりまへ)の京坂(けいはん)"地燒(ぢやき)"。
うを徳』は、瓦斯火(がすび)にかけ、これを放置(うちやる)。
これまた、通念(つねのやりかた)を覆(くつがへ)す掟破(おきてやぶ)りの技藝(わざ)

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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】 :smc 賓得(Pentax)A 2.0/35 @F2.4

【2012-05-24追記】:
當店(こちら)の鰻(むなぎ)は今季(こんき)初(はじめて)。
一昨年(おとゝし)が五千圓(ごせんゑん)、去年(こぞ)が六千圓(ろくせんゑん)
今年(ことし)が七千圓(なゝせんゑん)とその價格(ね)正しく鰻登(うなぎのぼ)り。
この日(ひ)の産地(さんち)は琵琶湖(びはこ)。

おほ葉』が八十匁(はちじふもんめ、300g)で七千圓(なゝせんゑん)、
當店(こちら)は百卅匁(ひやくさんじふもんめ、488g)ほどの鰻(むなぎ)。
とは云へ、その八割餘(はちわりあまり)、すなはち、百十匁(=410g)ほどなれば、
おほ葉』などに比(くら)ぶれば割安(わりやす)。

此度(こだみ)も注文(たのみ)てより廿六分(にじふろッぷん)。
その身(み)甚(いと)る厚(あつ)く、奧齒(おくば)に抗(あらが)ふことなく、
さりとて、柔(やは)らかに過ぐることもなく、すこぶる心持(こゝち)よき齒應(はごた)へ。
甜鹹(あまさからさ)、米飯(こめのいひ)また尋常(つね)に異(こと)なるところなし。

【2011-10-11追記】:
時季(じき)の此度(こだみ)は"球磨川(くまがは)"。
綸子模樣(りんずもやう)の有無(ありなし)は審(つばら)ならず。
脂(あぶら)の乘(の)りはまだまだ
いづれまた!

【2011-08-26追記】:
此度(こだみ)は去年(こぞ)の龝(あき)に續(つゞ)き"小川原湖(をがはらのうみ)"。
"淀川(よどがは)"と同じく兩(ふた)つに切られしかど、上半身(うはゝんみ)。
皮(かは)の粘(ねば)りは想定外(おもひのほか)に少(すく)なく
脂(あぶら)は龝(あき)の鰻(むなぎ)に比(くら)ぶれば些(いさゝ)か淡(うす)め

【2011-07-28追記】:
近會(ちかごろ)不本意(こゝろならず)も養殖鰻(やうしよくむなぎ)續(つゞ)き。
當店(こちら)には二度(にど)續(つゞ)けて這入(はい)ること不能(あたは)ざりしかば、
この日(ひ)、親(おや)の讐敵(あだかたき)とばかりに驀地(まつしぐら)。
此度(こだみ)の鰻は攝州(せつしう)"淀川(よどがは)"で漁(すなど)られしもの。

待(ま)つこと廿七分(にじふとなゝふん)。
通常(つね)と異(こと)なり、甚(いと)大きなる鰻(むなぎ)半匹分(はんびきぶん)。
勿驚(おどろくなかれ)、厚(あつ)みは大約(およそ)三分(さんぶ)に及(およ)ぶ。
脂(あぶら)の乘(の)りは宛然(あたかも)龝(あき)の鰻(むなぎ)のごとし。

【2011-06-09追記】:
此度(こだみ)は備州高梁川産(びしうたかはしがはさん)。
近會(ちかごろ)の價(ね)の昂騰(かうとう)に伴ひ、五千圓→六千圓(ろくせんゑん)に。
肝(きも)は通常(つね)のごとく頗(すこぶ)る立派(りつぱ)。
身も生平(つね)に異なるところなしと云ふとも、脂(あぶら)の乘りは今一(いまひと)つ。

鰻は、時季産地場所(ところ)、個體(こたい)により千差萬別(さまざま)。
しかはあれど、當家(こちら)の仕入れはそれを感じさせぬ見事(みごと)なる力量(うで)。
食(た)べ進(すゝ)むほどに、齒(は)に觸(さは)る硬(かた)きものあり。
勿驚(おどろくなかれ)、中程(なかほど)で折れ””の字となりし釣(つ)り針(ばり)

【2011-05-14追記】:
今季初(こんきはつ)は"球磨川(くまがは)"産(さん)。
↓に記(しる)せしごとく、鰻の口味(あぢ)を左右(さいう)する要素(やうそ)は樣々
就中(わきても)産地(さんち)・時季(じき)による相違(たが)ひは最も氣になるところ。
當家(こちら)で瞻(み)るかぎり、産地(さんち)・時季(じき)に依る差異は大きからず

むしろ、仕入れの目利(めゝ)き蒸し・炙(や)きなどの調理法(てうりはふ)に依存(よる)。
野田岩』は"志ら燒"はまだしも"蒲燒(かばやき)"は貧弱(ひんじやく)。
押(お)し竝(な)めて天然物(てんねんもの)は大きなものならねば口味(あぢ)よろしからず
當家(こちら)、大(おほ)きさ蒸(む)しタレ、何(いづ)れも嗜(この)み。

辭別(いとまごひ)に當(あ)たり四万十川(しまんとがは)の鰻(むなぎ)を問ふに、
主人(あるじ)應答(いら)へて曰(いへら)く、
四万十川(しまんと)のものは入(い)らねど、仁淀川(によどがは)のものは時折(ときをり)」
仁淀川(によどがは)は四万十川(しまんとがは)よりも澄みて水清(みづきよ)し」、と、、。

【2010-11-09追記】:
この日(ひ)は小川原湖(をがはらこ)産(さん)。
倩(つらつら)鰻(むなぎ)の盛(さかり)を薀(たづ)ぬるに、
江戸前(えどまへ)なれば夏、利根川(とねがは)など"(たび)のもの"は龝(あき)とぞ。
冬眠(ふゆごもり)に備(そな)へ身の肥ゆるは獸(けだもの)に寸毫(つゆ)異なることなし。

此度(こだみ)は待(ま)つこと西洋時辰儀(せいやうどけい)にして廿五分(にじふごふん)。
女給(こしもと)、暇つぶしにとて、繪草紙(ゑざうし)の類(たぐひ)を拿(も)ち來たる。
三代目主人(さんだいめ)に據(よ)らば、豫(あらかじ)め"割(さ)き"まで濟(す)ませ、
注文(ちゆうもん)を受けてより志ら燒きし、蒸しをかけ、タレにて附(つ)け炙(や)くとか。

蓋(ふた)を去(さ)るや、忽地(たちまち)白き湯氣(ゆげ)立(た)ち昇(のぼ)り、
薫香(かぐはしきかをり)周邊(あたり)に漂(たゞよ)ふ。
今までにも増して大振(おほぶ)りで、重箱(ぢゆうばこ)よりはみ出(いだ)さんばかり。
炙き目は『尾花』、『野田岩』より強く、京坂(けいはん)地燒(ぢや)きを髣髴(おもはす)。

當店(こちら)は此度(こだみ)で三度目(みたびめ)。
一際(ひときは)大振りで脂乘(あぶらの)りのよき所以(ことわり)、時季の所爲(せゐ)か、
はたまた産地(さんち)の所爲(せゐ)か、知る術(すべ)も縁(よすが)もなし。
とまれ、實(げ)に川魚(かはうを)の中の須明樂美御德(すめらみこと)の風格(ふうかく)。

近會(ちかごろ)、街場鮨(まちばずし)・大衆食堂(めしや)の風情(おもむき)ながら、
たしかなる力量(うで)の舗(みせ)に邂逅(であ)ふは無上(このうへもなき)悦(よろこ)び。
壽司清』、そしてこちら『つるや』。
物見遊山(ものみゆさん)の衆人(もろびと)犇(ひし)めく淺草も侮(あなど)りがたし。

【2010-07-31追記】:
暑き盛りのこの時季(じき)、名のある鰻屋(むなぎや)は、 何(いづ)れをとりても、
商賣(あきなひ)を表(あらは)す互聯網(いんたァねッと)ドメイン名(めい)のごとし。
さて、その意(こゝろ)はと薀(たづ)ぬれば、これすなはち「どッとこむ」。  (←すまぬ!)
かくて、穴場(あなば)として狙ひ定(さだ)めし、爰(こゝ)『つるや』。

前を通(とほ)る度(たび)、貼り紙に眼(まなこ)凝らさゞる例(ためし)あらざるも、
"天龍川(てんりやうがは)"の後(あと)、しばらく"利根川(とねがは)"うち續(つゞ)きしに、
この日、「球磨川(くまがは)」の貼(は)り紙(がみ)に俄(には)かにいろめき立つ。
氣もそゞろ、一も二もなく轉(まろ)び入れりし賈(みせ)の内(なか)。

待(ま)つこと、西洋時辰儀(せいやうどけい)にしておよそ廿(にじふ)と五分(ごふん)。
恭(うやうや)しげに運ばれ來たりし盆には「鰻重(むなぢゆう)」の一揃(ひとそろ)ひ。
蓋(ふた)を去(さ)るや、現(あらは)れ出(いで)し大ぶりの蒲燒(かばやき)。
前囘(まへ)の"天龍川"に同じく、『野田岩』"志ら燒"ほどの大きさ。

燒き」は小塚原(こづかッぱら)『尾花』、飯倉『野田岩』ほどに叮嚀(ねんごろ)ならざれど、
近傍(ちかく)の『色川』、『初小川』とて同じこと。
先づは恐(おそ)る恐(おそ)る箸(はし)を入れ、護謨(ごむ)鰻ならざることを覺(し)る。
これを一口するに、脂(あぶら)は養殖物(やうしよくもの)と雲壤(うんじやう)の違(たが)ひ。

しかはあれど、『野田岩』の"蒲燒(かばやき)"のごとく、
豆腐滓(おから)眞綿(まわた)でも口に含むに似た貨物(しろもの)にもあらず。
以爲(おもへらく)は、徒(いたづら)に身の痩せた鰻(むなぎ)を長らく蒸さば、
脂(あぶら)悉(ことごと)く拔(ぬ)け落(お)ちてかくのごとくならん。

慥(たしか)に『野田岩』の天然物(てんねんもの)は"志ら燒"に限り、
"蒲燒(かばやき)"なれば養殖物(やうしよくもの)こそ理(ことわり)に適(かな)ふべし。
熟々(つらつら)こちらの"天然鰻(てんねんむなぎ)"を檢(あらた)むるに、
"天龍川"・"球磨川"ともに、ほどよき齒應(はごた)へ油脂(あぶら)乘り。

そも、嘗(かつ)てこの時季(じき)なれば江戸前海(えどまへうみ)の鰻(もの)。
就中(わきても)、濱川沖(はまかはおき)臺場近邊(だいばあたり)のものを最上とす。
江戸ッ兒は利根川(とねがは)など「(たび)のもの」を甚(いた)く蔑(さげす)み、
何處(いづく)も"江戸前(えどまへ)蒲燒(かばやき)"を招牌(かんばん)に、、。

内藤新宿(ないうとうしんじゆく)に「江戸前鰻(えどまへ)」うたふ舗(みせ)あるも、
好ましからざるざる評(ひやう)に、烈火(れッくわ)のごとく怒(いか)りて因縁(いんねん)。
眞實(まこと)を捻じ曲げ、惡口雜言(あッこうざふごん)の限(かぎ)りを盡(つ)くし、
剩ッさへ、脅迫(おど)して二年分(ふたとせぶん)の損害を賠償(つぐな)
はせんとす。

嗚呼(あゝ)、淺猿(あさまし)きかな!
箱根山(はこねやま)の雲助(くもすけ)、どこぞの護摩(ごま)の灰なほこれに及ばじ。
"(たび)のもの"なれば盛(さか)りは龝(あき)と云ふ。
庶幾(ねが)はくは、涼しくなりて後、その眞僞(しんぎ)のほど檢(あらた)めんことを。

【2010-06-25記(拔粹)】:
この日も「天然うなぎ入荷しました」、「天龍川産」なる貼り紙)。
もはや、爆裂彈(ばくれつだん)もろとも米利堅(めりけん)の兵船(ふね)に飛び込む
神風(かみかぜ)特別攻撃隊(とくべつこうげきたい)か、
聖戰(ひじりいくさ)に挺身(みをさゝぐ)る囘教徒(くわいきやうと)が心地(こゝち)。

扉(とびら)開(ひら)きて内を窺(うかゞ)ふに、紛ふ方なき淺草(あさくさ)めしや。
帖場(てふば)を預(あづ)かるは、こちらの主人(あるじ)にして三代目(さんだいめ)。
客(かく)あしらひに當たるは、見るからに福々(ふくぶく)しき面(おもて)の仲居(なかゐ)。
ほかには同(おな)じ年頃(としごろ)の姥(うば)が一個(ひとり)。

茶(ちや)の一口(ひとくち)だに啜(すゝ)るもあへず、矢庭(やには)に、
天然鰻(てんねんむなぎ)鰻重(うなぢゆう)」、値(あたひ)五千圓也!
「暫くかゝりまする」とのことなれど、鰻屋(むなぎや)で待つの廊下(らうか)は、
淺野内匠頭長矩(ながのり)くらゐが吉良上野介義央(よしひさ)。

俟(まつ)ことおよそ廿(にじふ)と五分(ごふん)。
恭(うやうや)しげに運ばれ來たりし鰻重(ぢゆう)に肝吸(きもす)ひの一番(ひとつがひ)。
つぶさに器(うつは)を檢(あらた)むれば、蓋(ふた)の中(なか)ほどに臍(ほぞ)ありて、
樹脂成形(じゆしせいけい)なりと覺(さと)る。

鰻重(ぢゆう)と吸物椀(わん)より蓋(ふた)を去りて、その姿(すがた)を眺(なが)む。
身(み)は大(おほ)きく厚(あつ)く、炙(や)き目はほどほど。
小塚原(こづかッぱら)『尾花』、飯倉(いひくら)『野田岩』のごとき、
焦(こ)げ目の一つも附(つ)かぬ蒲焼(かばや)きとは雲壤(うんじやう)の違(たが)ひ。

恐(おそ)る恐(おそ)る箸(はし)を入(い)れて先(ま)づは一安堵(ひとあんど)。
嘗(かつ)て、銀座「ひら井」で一度(いちど)ならず二度(にど)までも、
護謨(ごむ)に寸毫(つゆ)と違(たが)はぬ天然鰻(てんねんむなぎ)に號慟(なき)、
野田岩』では豆腐糟(おから)のごと鰻(むなぎ)に幾度(いくたび)となく煮え湯。

京師(みやこ)は錦市場(にしき)で贖(もと)めし小振りの天然鰻(てんねんむなぎ)は、
姿も味も穴子(あなご)そのもの、瓜(うり)が二(ふた)つの生き冩(うつ)し。
こちらの鰻(むなぎ)、口に含むや、身は厚(あつ)くほどよく脂(あぶら)が乘(の)り、
仄(ほの)に芳香(かぐはしきかをり)すら漂(たゞよ)ふ。

上半身(うはゝんみ)と下半身(しもはんみ)による食感(あぢはひ)の差(さ)こそあれ、
久々(ひさびさ)に口(くち)も悦(よろこ)ぶ天然鰻(てんねんむなぎ)。
沙糖(さたう)用(つか)はぬタレはキリヽと締(し)まり、
米(こめ)の飯(いひ)もほどよく粒が立ち、口に撥(は)ねて舌(した)に踊(をど)る。

香(かう)の物(もの)は、胡瓜(きうり)と茄子(なす)の糠漬(ぬかづ)けに加(くは)へ、
蘿蔔(すゞしろ)、甘藍(きやべつ)の鹽漬(しほづ)け。
甘藍(きやべつ)の鹽漬(しほづ)けに紫蘇(しそ)の實(み)のごときものが混じるは、
味覺(した)を欺(あざむ)き、鰻(むなぎ)の味(あぢ)を損(そこ)なふ。

そもそも、鰻(うなぎ)の味覺(あぢ)を左右(さいう)する要因(えういん)として、

 【素材(そざい)】
   ・時季(じき)...........粗方(あらかた)龝(あき)が旬(しゆん)とさる
   ・産地(さんち).....利根川、宍道湖、四萬十川、天龍川、荒川、江戸前海、、、など
   ・漁場(れふば)...「下(くだ)り」と稱(とな)ふる、産卵(さんらん)に向かふ、
              河口近くで漁(すなど)られしものが上(じやう)とさる
   ・大(おほ)きさ.....大きなものほど油脂(あぶら)も乘り易(やす)し
  
 【技藝(わざ)】
   ・小骨(こぼね).........拔(ぬ)くや否(いな)や
   ・蒸(む)し..................蒸すや否や、蒸す場合(ばあひ)その程度(ほど)
   ・熱源(ねつげん)...備長炭(すみ)か瓦斯(がす)か天火(ぐりる)か
   ・火加減(ひかげん).火の強(つよ)さ・火の近(ちか)さ
   ・燻(いぶ)し..............團扇(うちは)にて煽(あふ)ぐや否(いな)や
   ・タレ..............................糖(さたう)を使(つか)ふや否(いな)や、
                使(つか)ふならその量(りやう)

と夥(あまた)ありて、その組合(くみあ)はせ如何(いかん)で千變萬化(せんぺんばんくわ)。

徳川時代(とくがはさまのみよ)から明治までは、大川(おほかは)から濱川(はまかは)、
御臺場(おだいば)周邊(あたり)で漁(すなど)らるゝ江戸前鰻(えどまへ)は夏
利根川(とねがは)など「旅(たび)のもの」は秋(あき)が旬(しゆん)とか、、。 
江戸前鰻(えどまへ)を口にしたる例(ためし)なくば眞僞(しんぎ)のほどを知らず。

野田岩』などは柔らかになるまで強く蒸し、小骨(こぼね)を去(さ)り、
遠火(とほび)で焦(こ)げ目(め)を作(つく)らぬやうに炙(や)く。
思ふに、養殖物(やうしよくもの)には好適(む)くも、天然物(てんねんもの)には不向き。
やはり『野田岩』なれば「蒲燒(かばやき)」よりも「志ら燒」か。

こちらの鰻は、『野田岩』"志ら燒"ほどの大きさのもの。
蒸しは控へめ、小骨(こぼね)なほ口に殘(のこ)ると云ふとも、氣にはならず。
燒き方も『尾花』、『野田岩』ほどの叮嚀(ねんごろ)さこそあらねど、
豫想(よさう)を凌(しの)ぐ出來榮(できば)え。

食べ了(をは)りて女將(おかみ)と二言(ふたこと)三言(みこと)。
歸(かへ)り際には帖場(てふば)の主人(あるじ)より舗(みせ)の歴史など伺(うかゞ)ふ。
創業(あきなひはじめ)は昭和(せうわ)六辛未(かのとひつじ)年(どし)、
七十九年(なゝそとせあまりこゝとせ)の商賣(あきなひ)にて、主人(あるじ)で三代目。

  • 三代目主人(あるじ)  【撮影許可濟み】
  • 山椒(さんせう)容器(いれ)
  • 江戸生鰻樺焼(えどうまれうなぎのかばやき)、皮(かは)

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9位

赤坂とゝや魚新 (赤坂、赤坂見附、溜池山王 / 日本料理、海鮮)

1回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2013/08訪問 2015/04/05

とゝやこの 燒きたる魚(うを)を 啖(くら)ふには しるもしらぬも 赤坂のせき

【2013-08-02追記】:
久方(ひさかた)ぶりの『とゝや魚新』。
晝(ひる)の板場(いたば)を預(あづ)かる菊池(きくち)さんが『にほん者゛し』に赴任(おもむ)き、
入(い)れ替(か)はりに『にほん者゛し』の村松(むらまつ)さんが當舖(こちら)に、、。
職人(ひと)も(はし)も變(か)はり、裝(よそほひ)を新(あら)たむ。

その餘(ほか)は、矢床鍋(やッとこなべ)の鏡(かゞみ)のごとき容(さま)も、赤出汁(あかだし)も、
叮嚀(ねんごろ)に漬(つ)けられたる(かう)の物(もの)も、(ちや)も、菓子(くわし)の類(たぐひ)も、
往古(そのかみ)に寸毫(つゆ)異(こと)なるところなし。
給仕(きふじ)に擔當(あた)る方々(かたがた)の優(やさ)しき管待(もてなし)ぶりもまた然(しか)り。

米(こめ)は近會(ちかごろ)夙(つと)に名高(なだか)き"ゆめぴりか"。
纔(わづ)かに濃(こ)いめの味附(あぢつ)けが、能(よ)く米飯(こめのいひ)に適合(あ)ふ
生憎(あやにく)、この日(ひ)の"鮎竝(あゆなめ)有馬燒(ありまやき)"は今一(いまひと)つ。
やはり、當店(こちら)、佳(よ)き魚(うを)の"(かぶと)"、"かま"に限(かぎ)る。

そもそも、鮎竝(あゆなめ)は煮付(につけ)が最適(もッともこのまし)く、
(くづ)を打(う)ち(わん)と爲(な)すがこれに次(つ)ぐ。
とは云へ、これはこれでなかなかのもの。
板場(いたば)を預(あづ)かる方(かた)と給仕(きふじ)の方們(かたゝち)とはにこやかに辭別(いとまごひ)。

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【照相機】:富士胶片(ふじふいるむ) XE-1無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれすかめら)
【鏡頭】  :蔡司(Carl Zeiss) Touit Planar T* 1.8/32 @F2.2 (By Carl Zeiss AG)

【2012-05-07追記】:
此度(こだみ)は味神樣(あぢがみさま)と、、。
幸運(さいはひ)にも、"甘鯛(あまだひ)"と"櫻鱒(さくらます)"の兜(かぶと)がうち揃(そろ)ひしかば、
これを各々(おのおの)一(ひと)つづゝ注文(たのむ)。
近會(ちかごろ)では"かま"を求(もと)むる客(きやく)が増(ふ)へ、仕入(しい)れも一苦勞(ひとくらう)とか。

最初(いやさき)に先附(さきづ)けのごとき一皿(ひとさら)。
"肝煮(きもに)"に"黒鯟(くろむつ)の白子(しらこ)煮凝(じゆれ)がけ"、"豌豆(ゑんどう)"。
"肝煮(きもに)"は漬込(つけ)みのごとく寢(ね)かせて味(あぢ)を滲(し)み込(こ)ませたるものと云ふ。
彩(いろどり)鮮(あざ)やかにして、滋(いつくし)みある味(あぢ)はひ。

霎時(しばし)待(ま)つほどに、件(くだん)の品(しな)運(はこ)ばれ來(きた)る。
米飯(こめのいひ)、香(かう)の物(もの)、赤出汁(あかだし)附(つ)き。
香(かう)の物(もの)は紅椒(ぱぷりか)、黒皮蘿蔔(くろかはすゞしろ)、青菜(あをな)。
赤出汁(あかだし)は豆腐(とうふ)と見紛(みまが)ふばかりの賽(さい)の目(め)鶏卵(たまご)。

案下某生再説(それはさておき)、肝腎(かんじん)の燒魚(やきうを)。
直前(すぐまへ)の旅(たび)にて、三度(みたび)啖(くら)ひし"櫻鱒(さくらます)"。
一(ひと)つは、『めくみ』の鮓種(すしだね)として、今一(いまひと)つは『繩屋』の鍋(なべ)、
殘(のこ)る一(ひと)つは『さか本』の燒物(やきもの)。

どれもなかなかの出來榮(できばえ)にて、
就中(わきても)、『めくみ』の醤油漬(しやうゆづ)けは忘(わす)れ難(がた)き一品(ひとしな)。
火(ひ)の通(とほ)る刹那(せつな)に鍋(なべ)より引(ひ)き揚(あ)げこれを供(いだ)す『繩屋』、
金串(かなぐし)を打(う)ち業務用天火(さらまんだ)にて叮嚀(ねんごろ)に燒(や)く『さか本』。

それぞれ際立(きはだ)ちたる特徴(しるし)こそあれ、
鹽燒(しほやき)せし兜(かぶと)に啖(くら)ひつきて、身(み)を食(は)み、骨(ほね)を舐(ねぶ)り
思(おも)ふが儘(まゝ)貪(むさぼ)り盡(つ)くすに如(し)くはなし
最後(いやはて)の黒胡麻豆腐(くろごまどうふ)にて〆。

【2011-07-30追記】:
相知(なじみ)の少女(むすめ)が甚(いと)怪(あや)しげなる活動冩眞(かつだうしやしん)の端役(はやく)に、、。
舞臺挨拶(ぶたいあいさつ)にも列席(れつせき)との報(しらせ)ありて、俄(には)かに色(いろ)めき立(た)つ。
場所(ところ)は内藤新宿(ないとうしんじゆく)にもほど近(ちか)き四谷大京町(よつやだいきやうちやう)。
さらば、晝飧(ひるげ)は、荒木町(あらきちやう)、信濃町(しなのまち)、、と惱(なや)み、赤坂(あかさか)に。

狙(ねら)ふは鮓(すし)の『喜久好』。
かの藤本繁藏(ふじもとしげざう)の技藝(わざ)を繼承(うけつ)ぐ數少(かずゝく)なき手煆煉(てだれ)。
手(て)の素早(すば)きこと、巾着切(きんちやくきり)かと疑(うたが)はれ、
握(にぎ)りの端正(すがたうつくしき)こと、さながら鮨教本(すしきやうほん)を覧 (み)るがごとし。

後(あと)を繼(つ)ぐものあらざれば、いづれは店(みせ)疉(たゝ)むほか方策(すべ)なからん。
近傍(ちかく)の書肆(ほんや)で頃合(ころあ)ひを見計(みはから)らひ、
店(みせ)の前(まへ)に着(つ)きしは、西洋時辰儀(せいやうどけい)十一字半(じふいちじはん)。
無情(むじやう)にも、『七八月(しちはちがつ)は土日晝(どにちひる)休(やす)み』なる貼(は)り紙(がみ)。

かくて、已(や)む事(こと)を得(え)ずして當店(こちら)『とゝや魚新』に、、。
暖簾(のれん)潛(くゞ)るは大約(およそ)二年(ふたとせ)ぶり。
板場(いたば)で迎(むか)ふるは見慣(みな)れぬ三番手(さんばんて)。
見(み)るからに風前(ふうぜん)の艸木(くさき)のごとく女(をんな)も靡(なび)く色男(いろをとこ)。

品書(しなが)きを前(まへ)に躊躇(たゆた)ふこと暫(しば)し。
何者(なんとなれば)、かつて僕(やつかれ)が嗜(この)むものは阿吽(あうん)の呼吸(いき)なりしかど、
品書(しなが)きには一(ひと)つとしてそれらしきものあらざればなり。
鹽燒(しほやき)』は『(すゞき)』に『たかべ』。

それとなく二番手(にばんて)職人(しよくにん)を懐(なつ)かしむや、
奧(おく)より現(あらは)れ出(いで)し二番手(にばんて)菊池某(きくちなにがし)さん。
僕(やつかれ)が嗜(この)みを識(し)り拔(ぬ)き、能(よ)くわが意(こゝろ)を覺(さと)る。
かくて『(すゞき)のかま』を鹽燒(しほやき)にしてもらふことに、、。

先(ま)づは先附(さきづ)け。
海鰻(はむ)の卵巣(こ)に浮袋(うきぶくろ)を混(ま)ぜて固(かた)めたるものにて、
ほどよく出汁(だし)が效(き)ゝ、味(あぢ)はひ頗(すこぶ)る爽(さは)やか。
傍(かたは)らの燒(や)き茄子(なす)もまた然(しか)り。

今(いま)や遅(おそ)しと待(ま)つほどに件(くだん)の『(すゞき)のかま』。
附(つ)け合(あ)はせは、獨活皮(うどかは)の金平(きんぴら)に枝豆(えだまめ)。
纔(わづ)かに鹽(しほ)強(つよ)めなるも、白米(しろきこめ)の飯(いひ)には好適(かうてき)。
淡味(うすあぢ)なるものとの相比(たがひ)が、舌(した)を震(ふる)わせ、目(まなこ)を刮(こそ)ぐ。

眼球(めんたま)周圍(まはり)、(ほゝ)、(あぎと)、、、。
骨(ほね)を殘(のこ)して、悉(ことごと)く啖(くら)ひ盡(つ)くし舐(ねぶ)り盡(つ)くす。
先頃(さきごろ)口(くち)にせし三州(さんしう)吉田(よしだ)の鱸(すゞき)とは、
月(つき)と泥龜(すつぽん)、挑燈(てうちん)に鐘(つりがね)。

赤出汁(あかだし)、(かう)の物(もの)、菓子(くわし)も、
巷(ちまた)のそれとは雲壤(うんじやう)の相違(たがひ)。
就中(わきても)菓子(くわし)は手(て)のかゝりし逸品(しな)。
小赤豆(あづき)は丹波大納言(たんばだいなごん)、牛蒡(ごばう)も手(て)の込(こ)みたる品(しな)。

眩(まばゆ)いばかりの達磨鍋(だるまなべ)に、雪(ゆき)と見紛(みまが)ふ上(うは)ッ張(ぱ)り
手入(てい)れ行(ゆ)き屆(とゞ)きて妖(あや)しき光(ひかり)を放(はな)つ疱丁(はうちやう)
それだけで口味(あぢ)の佳(よ)さ、力量(うで)の確(たし)かさには極印(きはめいん)。
以爲(おも)ふに、汚穢(こぎたな)き廛(みせ)に美味(うまきあぢ)は稀(まれ)

【2009-06-17追記】:
一日(あるひ)、卑彌呼(ひみこ)さまの御伴(おとも)を仰(おほせつか)り久々(ひさびさ)のとゝや魚新
侮(あなど)りてふらり立ち寄るに、板場前(いたばまへ)は悉(ことごと)く埋(う)まりて空(あ)きはなし。
馴染(なじ)みの板前(いたまへ)捕(つか)まへ、質(たゞ)す一言(ひとこと)『カマはござるや?』。
『甘鯛(あまだひ)に眞名鰹(まながつを)..』とのことなれば、各々(おのおの)一つづゝ。

厚(あつ)さ四寸はあらうかと云ふ坐椅子(ざいす)に腰(こし)を下(お)ろし、四方山話(よもやまばなし)。
先附(さきづ)けに舌鼓(したつゞみ)を打ち、時(とき)に庭(には)に目を遣(や)る。
話(はなし)は盡(つ)きねど、ほどなくして待ちかねたる品々(しなじな)運(はこ)ばれ來(きた)る。
二品(ふたしな)より卑彌呼(ひみこ)さまの選(えら)びたまひしは眞名鰹(まながつを)照(て)り燒き。

某(それがし)は、甘鯛(あまだひ)鹽(しほ)燒きにて眞名鰹(まながつを)より聊(いさゝ)か小ぶり。
目玉(めだま)を卑彌呼(ひみこ)さまに殘(のこ)し、只管(ひたすら)これを貪(むさぼ)り盡(つ)くす。
卑彌呼(ひみこ)さま、いとも巧(たく)みに箸(はし)を操(あやつ)りて骨(ほね)までしやぶりたまふ。
眞名鰹(まながつを)、身・皮(みかは)終(を)はりて、瞬(またゝ)く中(うち)に骨(ほね)となる。

坐敷(ざしき)に現(あらは)れ畏(かしこ)まるは晝(ひる)の板場(いたば)を預(あづ)かる板前(いたまへ)、。
板場前(いたばまへ)に空(あ)きなきを詫(わ)び、只管(ひたすら)赦(ゆる)しを乞(こ)ふ。
女將(おかみ)、また、つぶさに皿(さら)を檢(あらた)め大(おほ)いにこれを悦(よろこ)ぶ。
遑(いとま)を乞(こ)ひ向(む)かひし先(さき)はアラボンヌなる洋菓子屋(やうぐわしや)。

【2008-02-28追記、上方修正】:
ぶらりと覗(のぞ)き導かれし儘(まゝ)カウンタの奧に坐る。晝(ひる)の板場を預(あづ)かる職人、こちらの顏を憶えてをり、問はずに語る、時季の魚、蔬菜、割烹法。この日の燒き魚は「のどぐろ(赤むつ)」。燒き上がりを待つ間、鮃昆布〆肝乘せポン酢ジュレ添へ、を味はふ。鮃は昆布の香、ポン酢の酸味を前に顏色なし。

四方山話に花が咲き、やがて來たりし「のどぐろ(赤むつ)」一皿。小さめながらも脂乘りは上々。一口するや、旨み、忽(たちま)ち口の中へと奔(ほとばし)る。澄みたる脂、なほも滾々(こんこん)と湧き出で舌に纏(まと)はる。水菓子はこの時季ならではの「甘酒ソルベ」。菱葩餠(ひしはなびらもち)のごとき牛蒡(ごばう)添へ。

【2006-11-21追記】:
この日久々に訪ねて「燒き魚定食(鰆西京燒き)」。先附として、食用菊の煮凝(にこゞ)りと、鯊(はぜ)の甘露煮。食用菊煮凝(にこゞ)りには黄身酢が添へてあり、酸味が確(しつか)りしてゐる。食感もなかなかに宜(よろ)しい。鯊は乾して炙(あぶ)りし後(のち)煮込みたるとの由。甘味少なき點は大いに好感が持てる。

やはり數年前に比べ鰆の質は隨分と落ちてゐる。だが、五分に迫る身の厚さと燒きの叮嚀さは格別。味の強さまたほどよい。附け合せは大根を油で炒め焦げ目を附けてから煮込んだものと蘿蔔(すゞしろ)の菊花造り。香の物は山芋梅酢和へ、乾し大根、それに青菜。どれもこれも手間が掛かつてをり眺めるだけで嬉しくなる。

この日、赤出汁の具は舞茸と蘿蔔(すゞしろ)に。あしらひとして芽葱の小口切り。蘿蔔(すゞしろ)の切り方・厚さには磨き拔かれし技を感じる。仄(ほの)かなる山椒がまた絶妙。生臭物が入つてゐないにも拘(かゝは)らず敢(あ)へて山椒用ゐる感覺には脱帽。水菓子は柿ソルベ。心地よき柚子の香(かをり)鼻腔を穿(うが)つ。

嘗(かつ)ては席に坐るや仲居が新聞を持つて來たのに、そんな氣遣(づか)ひも失せた。「燒き魚定食」にも水菓子が附くやうになつたのは歡迎。二番手と思(おぼ)しき職人、面立ち端正にて服裝や髮型に至る迄卒がない。話し出すや忽(たちま)ち今風の言葉遣(づか)ひが飛び出すものゝ、何處(いづく)の店でも同じこと。

【2005-12-17記、拔粹】:
赤坂圓通寺通りに佇(たゝづ)むとゝや魚新。店の濫觴(はじまり)、明治廿三年創業の魚屋に遡(さかのぼ)ると云ふ。板場に「とゝや魚新」、奧座敷入り口には「二合半(こなから)亭」なる扁額(へんがく)が掛かる。夜は訪ねたる例(ためし)なしと云えど、晝(ひる)は、五千圓、七千圓級のコース料理の他、以下の品が揃(そろ)ふ。

 ・「燒き魚定食」、値一千八百九十圓也。
 ・「二合半(こなから)辨當」、値一千五百七十五圓也。
 ・「炭籠辨當」、値二千六百二十五圓也。
 ・「松花堂辨當」、値三千九百九十圓也。

がある。この中で最もよく味はふは「燒き魚定食」。旬の燒き魚に、香の物、赤出汁、御飯が付く。魚は季節と仕入れに據(よ)り、「鰆の幽庵燒き」、「黑むつ幽庵燒き」、「甘鯛(ぐじ)若狹燒き」等樣々。感じ入るのはお馴染みの「銀鱈(ぎんだら)」など俗に阿(おもね)る異朝の魚に賴らず、近海で漁(すなど)られし魚だけ出すこと。

去年・一昨年あたりは身質や切り方が頗(すこぶ)る立派で鰆や甘鯛等感動物だつた。だが近頃は質・量ともに落ち氣味。嘗(かつ)ては、甘鯛(ぐじ)を注文すると必ず「頭か胴か?」問ひ返されたと云ふに、近頃はつゆ問ひ返されれた例(ためし)なし。小さく痩せた甘鯛の半身ゆゑ選ぶ餘地なくなつたからと云ふのがその理由。

「二合半辨當(こなからべんたう)」と稱(とな)ふるは燒魚と旬の蔬菜からなる洒落た辨當(べんたう)。これに赤出汁と水菓子が付く。朱漆の六角形二段重にて、下の段に御飯(+香の物)、上の段には、燒き魚、蔬菜類(煮物が主)、瓢箪(へうたん)型の出汁卷き玉子が入る。女の客の半(なか)ば、迷ふことなくこれを注文。

この日、燒き魚は鰆幽庵燒き。蔬菜は、筑前煮(里芋、牛蒡、金時人參、蒟蒻、鷄肉、鞘隱元)、醋の物(靑菜、蟹)。前に伺(うかゞ)ひし折は、鮭、蔬菜煮物(筍、小玉葱、新馬鈴薯、菜の花)、自家製練り物、と鯛卵の煮凍り。煮物は味が濃い。甘みは抑へられてゐるものゝ醤油が濃い。人參と里芋は聊(いさゝ)か火の通り過ぎ。

赤出汁の具は蘿蔔(すゞしろ)。水菓子は柿シャーベットにて賽(さい)の目の柿添へ。食前に焙じ茶、食後には上質の煎茶で客あしらひ頗(すこぶ)る叮嚀。魚を燒き上げるので時間が掛かり、一人客には新聞を持つて來る。雪平は鏡の如く、包丁・俎板も眩(まば)ゆいばかり。カウンタは節だらけの一枚板にニス塗り。楊枝も竹。

  • 二番手(にばんて)菊池(きくち)さん 【撮影許可濟】
  • 二番手(にばんて)菊池(きくち)さん 【撮影許可濟】
  • 三番手(さんばんて) 【撮影許可濟】

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