【これぞ旨い鮨】手間暇惜しまずただシンプルに素材の良さを引き出す技量に感銘♪＠北新地 : 髙橋 謙太郎

大阪北新地にある髙橋謙太郎さんに再訪。
前回ももちろんよかったんですが、今回はすべてにおいてそれを上回る感想でした。

まず、大将自身も自負されておりますが、僕は寿司屋の中では一番仕込みに時間かけてます、と。
そうだと思います、つまみ一つとってもどれだけ計算尽くして客に提供するかのシミュレーション
が半端なく伝わってきます。

ただ、それだけならまじめにお鮨屋さんしている方なら当たり前といわれるかもしれません。
謙太郎さんのすごいのは、それでいてものすごくシンプルに素材の良さを引き出していらっしゃるんです。
余計なことをしないという意味でのシンプルではなくて、足し算でも引き算でも掛け算でも
割算でもすべての四則演算結果が極めていい方向に出ているんです。

ところで、とある京都の有名割烹店について、とある京都の別の超有名割烹のご主人が言ったそうです。
「お前のんは料理とちゃう」と。この場合は足しも引きもしないのであれば、それはお客さんを
もてなしたことにならへんという意味合いで使われたとのこと。

前にも書きましたが、お鮨屋さんだから、握りの前のあては和食屋さんと比べるなと思う
節もあるのですが、やはりおいしいお鮨屋さんはアテもおいしいんです。
それでいうと、同じく新地の天ぷらのぬま田さんのあても変態レベルですけどね笑

今回も頂いたお料理は記憶がある限り写真欄に内容書きましたが、最初のホタテと落花生の一品から
すごかったですね。謙太郎大将はあまり素材の産地だったり、でかさだったりを自慢、いや強調
しません。なんなら、それがタネが何かを言わないときもあります。
ただ、この時期のこはだは一番おいしいんですよ、とか、この帆立を食べてから落花生を口に
いれていただくと面白いかもしれませんといった「提案」はしてくれはります。

それでも、内心何度も何度も試行錯誤してるはずだから、こうやって食べろと強要したいところ
だと思いますよ笑
今回もいろんな出汁出てきましたが、さすがにラーメンを商品化しないと割に合わないとおっしゃってて、
そのニュアンスに笑いかけましたが、それだけ必死に仕事を追求しているということですよね。

話があっちゃこっちゃ言って申し訳ないですが、今回のあての中には醤油を一つも使っていないと
いうなかなかに強烈なことをおっしゃっていて、キンキの味噌漬けがあるから、醤油みたいなもんや
といわれればうそになるけど、それでも皮目に味噌を塗って数日おいただけなのでというように、
クエの蒸し物の上にある山椒も辛味を抜いてほんの少しの香りだけ、あとは重湯とお塩だけとか、
先ほどのキンキもなにかけはるんかなって思ったらトリュフみたいに栗ですよ？これ自体は栗が
少し早いからこそ冒険されたのかもしれないけど、山のものの甘味を＋してます。

握りも前回ほど赤酢の特徴が出すぎておらず、程よい香りと酸味でした。
狙っていたいくらもほとんど味付けしてないとおっしゃっていて、まさしく鶏卵の黄身のようで、
ねっとりまったりとしているけど、くどすぎず初めての味わいでした。
この食感を冷凍で再現しようと試みたけど、どうしても回答する過程で浸透圧でこのねっとり感
が失われてしまうので、これはさすが今の時期しか無理とのことです。

あと、量がめっちゃ多いので、かなりお腹いっぱいになります。
女性のお客さんには多いといわれるので、小さめに握ることもできますという女性客が
多い気遣いもされます。一見こわもてですけど、とてもきめ細やかにお客さんのことを
見ておられ、お弟子さんたちもまたしっかりと客の要望を組んで前もって動いてくれます。

ちなみに、僕がもう一つ大好きな谷六の三心さんとは一緒に旅行も行く間柄だそうで、
とても親しいそうです。お二人の仕事ぶりしか知ることはできませんが、仕事に対する
真摯さでは共通しているように感じます。タイプは違うとおもいますが。

この日はたくさん飲んで追加もいただいて34000円也。十分に満喫しました。
次回は三心さんはさんで12月位かなあ。
なお、三月に西天満界隈に移転されるそうです。新地からすぐですね。
大将、お店の方ありがとうございました。また、寄らせてください。

大阪北新地の超人気店髙橋謙太郎さんへ。
北新地にあって優れたコストパフォーマンスが幅広い客層に受けて
今や超のつく予約困難店の一つとしても知られています。

2023年2月時点でのおまかせコースは税込み25,000円（20品前後）。
大阪の人気鮨店の中では平均的な価格帯といったところではないでしょうか。
食べログの口コミ数は134件、☆3.84と高級店の口コミ数としては多い中、
高い点数を維持していることからも口コミサイトのヘビーユーザーからも
極めて高い評価を得ているという印象があり〼。

平日6時におひとり様（ぼっち）で予約。
場所は北新地の中心エリア。雑居ビルの4階に上がると階に唯一の店舗。
左手に扉があり入ると想像より奥行きのある想像よりも広々とした空間。
大将を中心に頭を丸められたお弟子さんたちが出迎えてくださいます。

時間的に同伴の男女のお客さんが大半でしたが、私以外にも男性の一人客
もいらっしゃいました。大将いわく、最近だと女性のおひとりさまもいる
とのことでした。確かに、後述する一人でも全く気後れしない点がこちら
の良さでもあるように思います。

携帯電話や香水に関する注意書きを見ながら生ビールを注文。
お酒のお値段はおそらくかなり安く設定されているのではないでしょうか？
この日はビールと追加一品と日本酒3種類いただいて29,000円でしたので、
追加の料金が取られていなかったとしてもお酒だけで4000円ですから、
一杯当たり1,000円ということになります。よく飲まれる方向けの情報です。

さて、こちらのお店の特徴はまず、大将の客あしらいの巧さ。
すごく丁寧というわけではないので、こういう客あしらいが苦手な方もいる
とは思います。ただ、肩ひじ張らずにリラックスして食事をするということ
を重視する方に関していえば常連ではなくても、あるいは常連さん中心であっても
疎外感を感じるということはないので重宝するという意味です。

料理に関してはつまみと握りがランダムに出てくるという構成。
今となってはさほど珍しくないとは思いますが、それもこちらのお店の見せ方
であり食べさせ方という台本がしっかりしている思わせるほど考えられています。
以下、この日いただいたもの（☆つまみ□握り◎ウマい！）。

☆聖護院大根とクエのお椀
□タイラギ貝
□平目
☆河豚の白子
□メジマグロ
☆あん肝◎
□赤貝
□赤貝ひも
☆マナガツオ焼と国産ゴマ
□漬け
□中トロ
☆くわいと唐墨
☆のれそれの春巻き
□アオリイカ
□こはだ◎
□松葉カニ
□鰆◎
☆黒龍の酒粕汁◎
□蛤
□車エビ（追加）
□巻物
□お米のプリン

シャリは赤酢を使用してキレはありますが割とマイルドな口当たりで
どのタネとも喧嘩はせずおいしくいただけました。
あとは、タネはいいなと思うものとそこまでかなと思うものをバランスよく
イイ感じでも織り交ぜながら提供してくださるので、緩急のある印象で楽しく
食べ進められるというのも人気店らしさかなと思いました。

あと、一品が特徴的。
鮨屋の一品というとアテとして楽しむ限度でどうしてもお料理としては懐石
店と比べるとどうかなという切り口を持つ方、いや鮨屋なんだから握りあって
なんぼでしょうという考えの方、様々いますけどだからこそこの提供の仕方
何だろうと思います。スペシャリテのあん肝はこれはここでしか食べられない
でしょうし他のお客さんがこれをお代わりするのもわかります。

この日面白かったのは、のれそれを春巻きの皮で揚げたもの。
火を通すことで味が出るというあまりなさそうは発想で激熱の状態でいただきます。
確かにのれそれそのものの味を楽しむという経験はなかったのでこのあたりも
大将の先鋭さではないでしょうか。

大将もお話しされてましたがタネによってはいいものが確保できないという悩み
だったり、おそらくもっと大将の中で納得のいく素材や食べさせ方を追求されたい
という想いを言葉の端々に感じ、少なくともその日できうるベストを尽くそうと
いうお仕事ぶりを感じることのできるお店でした（個人的に一番感じたいポイントです）。
まだお若い大将で、今後より良いお店になっていくんだろうと思いますし、次回、次々回
行くごとに美味しくなっていることが容易に想像できます。

SNSなどで情報が世界レベルで瞬時に行き交う中、そこから本物を探すのは探す側ですが、
だからこそ本物を発見した時の喜びや感謝もまた今時だなとよく感じます。
探される側は予期せぬところから予期せぬ粗さがしをされたり予期せぬことをいわれたりするので、
常に襟を正し続けなければならない息苦しさが時代のデメリットととらえる向きもあります
でしょうが、おそらく本物は今も昔もそうした姿勢でいらっしゃったのかもしれません。
私も若くはないですが、こちらをはじめすばらしい飲食店さんから学ぶところが多いです。

大将の所作、一挙手一投足すべて見逃さず、素敵な時間を過ごしたボッチタイム！
これだからボッチ寿司はやめられへんねん！
ごちそうさまでした。大好き（はーと