権堂の大辛カレー : ビアホールトピ

水曜日は映画の日
というのが一時習慣づいていたのだが、昨年の始めから暮れにかけていろいろとバタバタする事が多く、映画鑑賞そのものがごく少なくなってしまった。コロナにも罹ってしまったし。今年に入ってからやや落ち着いてきたし、そろそろ映画館の暗闇が恋しくなってきた。という事で久しぶりに権堂へ参った次第


1本目はフランス映画
かの国の映画は、いつも接しているアメリカのそれとは少々赴きが違う。メロドラマであってもアクションあるいはコメディであっても、湿潤感がちがうというか、潤いを帯びているというか。今回観せてもらった作品はミステリー。これがまたジャン・ギャバンが出てきそうな雰囲気でたまらない。主演俳優とも久しぶりの出会いでとても嬉しかった


しっとりした後は
ランチタイム。名画に接すると腹が空いてならない。いやまぁ接しなくとも腹はへるのだが。憂いを帯びた『静かな刺激』を受けたので、少ししっかりとした刺激をうけて中和したい。というわけでお邪魔したのがこちらだ


「ビアホールトピ」
こちらには何度かお邪魔しているがカレーしか食べたことがない。それが主なメニューだからなのだが、考えてみれば名前からしてビールをいただかねばならぬ筈だ。いずれゆっくり訪れることとしよう。


「焼きたてナンと熟成カレーセット」980円
ランチメニューのトップを飾る看板ともいえるメニューだ。3種のカレーの中からふたつ、3種のナンまたはライスからひとつ、そこにサラダとドリンクが搭載されるという豪勢なランチとなる。


カレーは

・やさい（定番のお野菜とお豆のカレー）
・キーマ（自家製ひき肉と本格スパイスのカレー）
・チキン（よ〜く煮込んだ鶏肉のオリジナルカレー）

この3種からふたつを選択する。
熟考の末、やさいカレーとキーマカレーとした。


辛さは

レベル0（マイルド）
レベル1（小辛）
レベル2（中辛）
レベル3（大辛）

の4種からの選択となる。しっかりした刺激を受けたいと言った以上、最高級レベル3（大辛）とせねばならぬであろう。


主食はナンまたはライス
からの選択となる。ナンは

・プレーン
・バター
・チーズ

の3種から、+100円で

・ほんのりあ〜い ココナッツチーズ
・ガーリックナン

という豪華なメンバーからも選択できる。しかも一度だけおかわりもできるというのだから、涙が止まらない


熟考の末
選択したのは

やさいカレー
キーマカレー
チーズナン

カレーは双方ともに大辛、そしてチーズをこよなく愛する私がチーズナンを無視することなどできない


やさいカレー
といってもしっかり煮込まれているので野菜類の形状はほぼわからない。ニンジン、じゃがいもの類いはかろうじて、それかなぁ？という感じのものは残っているが。それにしても野菜の旨味って最強だよね


キーマカレー
というのも様々な定義があろうが、ここでは「ひき肉を用いたカレー」らしい。スパイシーな味わいを帯びた、褐色ポロポロとしたひき肉、という感じだ。大辛にして満足ではあるのだが辛すぎる


チーズナン
プレーンナンも美味いけど、やはりチーズが入ると俄然味わいが増してくる。ひと噛みすると、中からトロリ熱々のチーズが飛び出してきて、口中がヤケド状態に至るが、快感でもあるという素晴らしい事態が展開される。


美味かった
しみじみ美味かった。さぁ腹もいっぱいになったし2本目の作品鑑賞と参ろうか。次はドキュメンタリー、なかなかハードな内容みたいだが、気張って観ていこう

『月日は百代の過客にして行きかふ年もまた旅人なり』
とは「奥の細道」の冒頭部にしてこれを知らない日本人はかなり少ないのではないか。というくらいポピュラーな文章であろう。時間など勝手に進んでいくものであって、その時々、その事ごとひとつひとつに想いを馳せたところで何にもならない。というのは私の超訳だがまんざら間違いではなかろう。

ただ人間は記憶の生き物、感情の動物なのだ。あの時はこうだった、この時はどうだったとよく覚えている者がいる。一番最初に会ったときの印象とか、最初のデートでなにを食べたとか、どんな事を話したとか事細かに記憶しているのは家内の事だが、私のような過去を振り返る習慣のない者からするとどうにも理解出来ない事でもある。

とはいえ
昔からそこにあるもの、物心つく前から、あるいは子どもの頃出来上がって、一時はそこに入り浸ったことがある。そのような記憶がある、いや思い入れがあるものであれば、郷愁という言葉だけで片づけるわけにはいかないかもしれない。なにを言いたいかといえば、権堂のイトーヨーカドー長野店がいよいよ閉店の運びとなった。以前から取り沙汰されてはいたが、この6月7日で42年の歴史に幕を閉じるという。

42年！
オギャアと生まれた赤ちゃんが、そこそこなオッさんと化すには充分な時間である。わが身であれば11歳小学5年のころ。そんな時代のことなどきれいさっぱりと忘れ果ててしまった。そのような存在がなくなってしまえば、様々な方が様々な感慨をもって当たり前であろう。だからここしばらくの間、最後の日を過ごそうと連日の大混雑らしい。

ところが私のような長野新参組、しかもこちらを日常的に使っていない者にとっては、なくなってしまうのは残念だが、それはそれでいて仕方がないでしょう。地下の食料品売り場もあまり使ったことはないし、イートインスペースのポッポの今川焼きもこすげ亭の富士山盛りも嫌いではないが、そんなにしょっちゅう食べるものでもない。

と、聞く人によっては感情を害されるかもしれないが思い入れの対象でなければそんなものだ。しかし、そんな冷たい私ではあるが一点のみ残念でたまらない場所がある。それは5階のシネマポイントだ。映画館、いや小屋、いいや"スペース"といった方がしっくりきそうな小さな施設で、わずか80席しかない。以前からシブい作品やるなぁ、と思っていたのだが、一昨年タルコフスキー「ストーカー」を上映しているのを知り、あわてて観に行ったのがつきあいの始まりだった。

またチョイスが泣かせるのだ。
私のように古い映画好きが観ることが出来なかった作品をかけてくれるのだ。先のタルコフスキーやヘルツォーク、ベルトリッチなんて涙を流しながら観ていたと思う。「暗殺のオペラ」はよく分からなかったけど。

そして最後がイングマル・ベルイマン「ファニーのアレクサンデル」（1982）であるという。20歳のとき躊躇して見逃してしまった作品だ。なにしろ上映時間311分、5時間もあるのだ。一般人はは観に行かないよなぁ。だが、50すぎた決して一般人とはいえないオヤジは観るのだ。DVDであればいつでも観ることは出来るが、映画館での鑑賞など二度とは巡り合えないだろう。これは行くしかない。

という事で野暮用すませて体調ととのえ、後先の段取りを終えいざ権堂へ。開始が13:00だからまずは腹ごしらえから入るのが本寸法なことであろう。話のながれからすれば、こすげ亭で富士山盛りというのが正当であろうが、大混雑および三密必至の空間で食事は出来るだけ避けたい。そして選択したのがこちらだ。


「ビアホール トピ」
権堂アーケード中ほどに位置するインド料理店、兼カフェ、ビアホールという事になるのか。蒼のファサードが印象的な店舗だ。決まった曜日に生バンドによるLIVEが行われるときいたが、現在はどうなっているのだろうか。薄暗い内部の奥にドラムセットが置かれていたが、見るだけでドキドキしてきてしまう。ああ生でLIVEを観たい。休日にもランチメニューがあるというので注文はそこからのチョイスとした。

「焼きたてナンと熟成カレーセット」1100円
基本メニューという事でこれにしたのだが、なかなか楽しみなものであった。カレー、ナンともに選択制で、カレー3種やさい、キーマ、チキンの中から2種を、ナンはプレーン、バター、チーズの中から選択。ドリンクはホットコーヒー、アイスコーヒー、ホットティー、アイスティー、アイスウーロン茶の中から選択。
熟考の末カレーはやさいとキーマ、レベル3（大辛）とした。ナンはチーズ。ドリンクはウーロン茶。
千切りキャベツを主としたサラダは楚々として美味い。正円形のチーズナンは折り込まれたチーズがトロトロでよい。やさいカレーはよく煮込まれているのでジャガイモ以外の野菜は確認出来ないほど。キーマはひき肉たっぷりでよし。大辛にしてよかった。


エネルギーチャージ完了。気力・体力横溢となった。さぁ行くぞ、スウェーデン映画の大傑作「ファニーとアレクサンデル」5時間11分、気合入れていこう！